特許第6243049号(P6243049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243049有機半導体インク、有機半導体素子及びその製造方法、並びに、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243049
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】有機半導体インク、有機半導体素子及びその製造方法、並びに、化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20171127BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 493/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310J
   H01L29/78 618A
   H01L29/78 618B
   C07D519/00
   C07D495/04 101
   C07D493/04 101A
【請求項の数】22
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-547389(P2016-547389)
(86)(22)【出願日】2015年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2015074799
(87)【国際公開番号】WO2016039217
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-183583(P2014-183583)
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】玉國 史子
(72)【発明者】
【氏名】北村 哲
(72)【発明者】
【氏名】益居 健介
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−148725(JP,A)
【文献】 特開2007−067263(JP,A)
【文献】 特開2008−098485(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0049478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/30
C07D 493/04
C07D 495/04
C07D 519/00
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点100℃以上の溶媒と、
下記式1又は式2で表される化合物とを含有し、
下記式1又は式2で表される化合物の含有量が、有機半導体インクの総量に対し、20質量%以下であることを特徴とする
有機半導体インク。
【化1】
式1及び式2中、X11、X12、及び、X21〜X24はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y11〜Y14及びY21〜Y28はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に、単結合、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、L21及びL22はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、Mはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、nは1以上の奇数の整数を表し、kは1以上の整数を表し、T11、T12、T21及びT22はそれぞれ独立に、下記式Tで表される基を表す。
−ST−BT−ET (T)
式T中、STはスペーサー基であり、−(CRSq−で表されるアルキレン基を表し、Rsはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、qは0〜17の整数を表し、BTは単結合、下記式B−1〜B−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B−1〜B−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ETはアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す。ただし、式1においてL11及びL12が単結合であり、かつ、qが0である場合、BTは式B−13で表される基を除く。
【化2】
式B−1〜B−15中、波線部分はスペーサー基STとの結合位置を表し、*はEとの結合位置を表し、p13は0〜4の整数を表し、p14及びp15はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1、RB21、RB22、RB13、RB14、及び、RB15はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【請求項2】
前記Y11〜Y14及びY21〜Y28がいずれも水素原子である、請求項1に記載の有機半導体インク。
【請求項3】
前記X11、X12、及び、X21〜X24がそれぞれ独立に、O原子又はS原子である、請求項1又は2に記載の有機半導体インク。
【請求項4】
前記n及びkが1である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項5】
前記L11、L12、L21及びL22がそれぞれ独立に、単結合又はチエニレン基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項6】
前記ST、BT及びETに含まれる炭素数の合計が5〜18である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項7】
前記BTが、前記式B−1で表される基、前記式B−4で表される基、又は、前記式B−1で表される基と前記式B−4で表される基とが2つ以上結合した基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項8】
前記T11及びT12の少なくとも一方がアルキル基であり、かつ、前記T21及びT22の少なくとも一方がアルキル基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項9】
前記T11、T12、T21及びT22がそれぞれ独立に、アルキル基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項10】
バインダーポリマーを更に含み、前記バインダーポリマーの含有量が、有機半導体インクの総量に対し、0を超え20質量%以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機半導体インク。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機半導体インクを、インクジェット法又はフレキソ印刷法により基板上に付与する付与工程、及び、付与されたインクから溶媒を除去する除去工程を含む、有機半導体素子の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により製造された有機半導体素子。
【請求項13】
下記式3で表される化合物。
【化3】
式3中、X31〜X34はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y31〜Y38はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L31及びL32はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、M’はアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、mは1以上の整数を表し、T31及びT32はそれぞれ独立に、下記式T’で表される基を表す。
−ST’−BT’−ET’ (T’)
式T’中、ST’はスペーサー基であり、−(CRTp−で表されるアルキレン基を表し、RTはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、pは0〜17の整数を表し、BT’は単結合、下記式B’−1〜B’−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B’−1〜B’−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ET’はアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す。
【化4】
式B’−1〜B’−15中、波線部分はスペーサー基ST’との結合位置を表し、*はE’との結合位置を表し、p13’は0〜4の整数を表し、p14’及びp15’はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1’、RB21’、RB22’、RB13’、RB14’、及び、RB15’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基を表す。
【請求項14】
前記Y31〜Y38がいずれも水素原子である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記X31〜X34がそれぞれ独立に、O原子又はS原子である、請求項13又は14に記載の化合物。
【請求項16】
前記mが1である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
前記M’がアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基、エチニレン基、及び、単結合である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記L31及びL32がそれぞれ独立に、単結合、フェニレン基又はチエニレン基である、請求項13〜17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記ST’、BT’及びET’に含まれる炭素数の合計が5〜18である、請求項13〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記BT’が、前記式B’−1で表される基、前記式B’−4で表される基、又は、前記式B’−1で表される基と前記式B’−4で表される基とが2つ以上結合した基である、請求項13〜19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記T31及びT32の少なくとも一方がアルキル基である、請求項13〜20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記T31及びT32がそれぞれ独立に、アルキル基である、請求項13〜21のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体インク、有機半導体素子及びその製造方法、並びに、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量化、低コスト化、柔軟化が可能であることから、液晶ディスプレイや有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイに用いられるFET(電界効果トランジスタ)、RFID(Radio Frequency Identifier、RFタグ)等に、有機半導体膜(有機半導体層)を有する有機トランジスタが利用されている。
従来の有機半導体としては、特許文献1及び2に記載されたものが知られている。
また、優れた物性を有する液晶性化合物として、特許文献3に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−154371号公報
【特許文献2】国際公開第2007/125671号
【特許文献3】特開2005−330185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、塗布成膜性に優れ、得られる有機半導体素子のキャリア移動度及び折り曲げ耐性に優れる有機半導体インク、並びに、上記インクを用いた有機半導体素子及びその製造方法を提供することである。また、本発明が解決しようとする他の課題は、新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<11>、<12>又は<13>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<10>及び<14>〜<22>と共に以下に記載する。
<1> 沸点100℃以上の溶媒と、下記式1又は式2で表される化合物とを含有し、下記式1又は式2で表される化合物の含有量が、有機半導体インクの総量に対し、20質量%以下であることを特徴とする有機半導体インク、
【0006】
【化1】
【0007】
式1及び式2中、X11、X12、及び、X21〜X24はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y11〜Y14及びY21〜Y28はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に、単結合、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、L21及びL22はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、Mはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、nは1以上の奇数の整数を表し、kは1以上の整数を表し、T11、T12、T21及びT22はそれぞれ独立に、下記式Tで表される基を表す、
−ST−BT−ET (T)
式T中、STはスペーサー基であり、−(CRS2q−で表されるアルキレン基を表し、Rsはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、qは0〜17の整数を表し、BTは単結合、下記式B−1〜B−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B−1〜B−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ETはアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す、ただし、式1においてL11及びL12が単結合であり、かつ、qが0である場合、BTは式B−13で表される基を除く、
【0008】
【化2】
【0009】
式B−1〜B−15中、波線部分はスペーサー基STとの結合位置を表し、*はETとの結合位置を表し、p13は0〜4の整数を表し、p14及びp15はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1、RB21、RB22、RB13、RB14、及び、RB15はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す、
<2> 上記Y11〜Y14及びY21〜Y28がいずれも水素原子である、<1>に記載の有機半導体インク、
<3> 上記X11、X12、及び、X21〜X24がそれぞれ独立に、O原子又はS原子である、<1>又は<2>に記載の有機半導体インク、
<4> 上記n及びkが1である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<5> 上記L11、L12、L21及びL22がそれぞれ独立に、単結合又はチエニレン基である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<6> 上記ST、BT及びETに含まれる炭素数の合計が5〜18である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<7> 上記BTが、上記式B−1で表される基、上記式B−4で表される基、又は、上記式B−1で表される基と上記式B−4で表される基とが2つ以上結合した基である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<8> 上記T11及びT12の少なくとも一方がアルキル基であり、かつ、上記T21及びT22の少なくとも一方がアルキル基である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<9> 上記T11、T12、T21及びT22がそれぞれ独立に、アルキル基である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<10> バインダーポリマーを更に含み、上記バインダーポリマーの含有量が、有機半導体インクの総量に対し、0を超え20質量%以下である、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の有機半導体インク、
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の有機半導体インクを、インクジェット法又はフレキソ印刷法により基板上に付与する付与工程、及び、付与されたインクから溶媒を除去する除去工程を含む、有機半導体素子の製造方法、
<12> <11>に記載の方法により製造された有機半導体素子、
<13> 下記式3で表される化合物、
【0010】
【化3】
【0011】
式3中、X31〜X34はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y31〜Y38はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L31及びL32はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、M’はアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、mは1以上の整数を表し、T31及びT32はそれぞれ独立に、下記式T’で表される基を表す、
−ST’−BT’−ET’ (T’)
式T’中、ST’はスペーサー基であり、−(CRT2p−で表されるアルキレン基を表し、RTはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、pは0〜17の整数を表し、BT’は単結合、下記式B’−1〜B’−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B’−1〜B’−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ET’はアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す、
【0012】
【化4】
【0013】
式B’−1〜B’−15中、波線部分はスペーサー基ST’との結合位置を表し、*はET’との結合位置を表し、p13’は0〜4の整数を表し、p14’及びp15’はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1’、RB21’、RB22’、RB13’、RB14’、及び、RB15’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基を表す、
<14> 上記Y31〜Y38がいずれも水素原子である、<13>に記載の化合物、
<15> 上記X31〜X34がそれぞれ独立に、O原子又はS原子である、<13>又は<14>に記載の化合物、
<16> 上記mが1である、<13>〜<15>のいずれか1つに記載の化合物、
<17> 上記M’がアリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基、エチニレン基、及び、単結合である、<13>〜<16>のいずれか1つに記載の化合物、
<18> 上記L31及びL32がそれぞれ独立に、単結合、フェニレン基又はチエニレン基である、<13>〜<17>のいずれか1つに記載の化合物、
<19> 上記ST’、BT’及びET’に含まれる炭素数の合計が5〜18である、<13>〜<18>のいずれか1つに記載の化合物、
<20> 上記BT’が、上記式B’−1で表される基、上記式B’−4で表される基、又は、上記式B’−1で表される基と上記式B’−4で表される基とが2つ以上結合した基である、<13>〜<19>のいずれか1つに記載の化合物、
<21> 上記T31及びT32の少なくとも一方がアルキル基である、<13>〜<20>のいずれか1つに記載の化合物、
<22> 上記T31及びT32がそれぞれ独立に、アルキル基である、<13>〜<21>のいずれか1つに記載の化合物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布成膜性に優れ、得られる有機半導体素子のキャリア移動度及び折り曲げ耐性に優れる有機半導体インク、並びに、上記インクを用いた有機半導体素子及びその製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、新規な化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の有機半導体素子の一態様の断面模式図である。
図2】本発明の有機半導体素子の別の一態様の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。本発明において、「移動度」との記載は、キャリア移動度を意味し、電子移動度及びホール移動度のいずれか、又は、双方を意味する。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい。
【0017】
(有機半導体インク)
本発明の有機半導体インクは、沸点100℃以上の溶媒と、下記式1又は式2で表される化合物とを含有し、下記式1又は式2で表される化合物の含有量が有機半導体インクの総量に対し、20質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
【化5】
【0019】
式1及び式2中、X11、X12、及び、X21〜X24はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y11〜Y14及びY21〜Y28はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L11及びL12はそれぞれ独立に、単結合、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、L21及びL22はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、Mはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、nは1以上の奇数の整数を表し、kは1以上の整数を表し、T11、T12、T21及びT22はそれぞれ独立に、下記式Tで表される基を表す。
−ST−BT−ET (T)
式T中、STはスペーサー基であり、−(CRS2q−で表されるアルキレン基を表し、Rsはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、qは0〜17の整数を表し、BTは単結合、下記式B−1〜B−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B−1〜B−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ETはアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す。ただし、式1においてL11及びL12が単結合であり、かつ、qが0である場合、BTは式B−13で表される基を除く。
【0020】
【化6】
【0021】
式B−1〜B−15中、波線部分はスペーサー基STとの結合位置を表し、*はETとの結合位置を表し、p13は0〜4の整数を表し、p14及びp15はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1、RB21、RB22、RB13、RB14、及び、RB15はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、水素原子、ハロゲン原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基であることが好ましく、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0022】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記沸点100℃以上の溶媒及び式1又は式2で表される化合物を含有する有機半導体インクを採用することにより、塗布成膜性に優れ、得られる有機半導体素子のキャリア移動度及び折り曲げ耐性に優れることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
詳細な効果の発現機構については不明であるが、式1又は式2で表される化合物がsyn−ベンゾジチオフェン構造を含むことにより、得られる有機半導体素子のキャリア移動度に優れ、また式Tで表される基を末端に有することにより、沸点100℃以上の溶媒への溶解性が向上し、塗布成膜性に優れ、更に、得られる有機半導体素子の柔軟性(折り曲げ耐性)にも優れるものと推定される。
以下、本発明の有機半導体インク(以下、単に「インク」ともいう。)に使用される各成分について説明する。
【0023】
<沸点100℃以上の溶媒>
本発明の有機半導体インクは、沸点100℃以上の溶媒(以下、「特定溶媒」ともいう。)を含有する。
特定溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレン、テトラリン、ジメチルテトラリンなどの炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン、1−フルオロナフタレン、1−クロロナフタレンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジブチルエーテル、ジオキサン、アニソール、4−ターシャリブチルアニソール、m−ジメトキシベンゼンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のイミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
【0024】
溶媒は、1種単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒及び/又はエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼン又はアニソールがより好ましい。
上記の溶媒であると、塗布性に優れ、容易に有機半導体膜を形成することができる。
【0025】
特定溶媒は、有機半導体インクの安定性、及び、均一な膜を形成する観点から、常圧における沸点が100℃以上であり、150℃以上であることがより好ましく、175℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。また、有機半導体インクを付与後、特定溶媒を乾燥させる観点から、特定溶媒の沸点は300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。
【0026】
<式1又は式2で表される化合物>
本発明の有機半導体インクは、式1又は式2で表される化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含有する。
【0027】
式1及び式2中、X11、X12、及び、X21〜X24はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、O原子又はS原子であることが好ましく、X11、X12、及び、X21〜X24がいずれもS原子であることがより好ましい。カルコゲン原子とは、O原子を含む第16族原子をいう。
11〜Y14及びY21〜Y28はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、いずれも水素原子であることが好ましい。
11及びL12は、それぞれ独立に、単結合、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、単結合、炭素数4〜20のヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基が好ましく、単結合又はチエニレン基であることがより好ましい。上記チエニレン基は、無置換であることが好ましい。また、上記ヘテロアリーレン基のヘテロ原子としては、硫黄原子が好ましい。
21及びL22は、それぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、単結合、フェニレン基又はチエニレン基が好ましく、単結合又はチエニレン基がより好ましい。
Mはアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基、エチニレン基、又は、単結合であることが好ましく、炭素数6〜13のアリーレン基、炭素数4〜20のヘテロアリーレン基、ビニレン基、エチニレン基、又は、単結合であることがより好ましく、単結合、ビニレン基又はエチニレン基であることが更に好ましく、単結合又はビニレン基であることが特に好ましい。上記ビニレン基は、無置換であることが好ましい。また、上記ヘテロアリーレン基のヘテロ原子としては、硫黄原子が好ましい。
nは1以上の奇数の整数を表し、1又は3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
kは1以上の整数を表し、1〜3であることが好ましく、1であることがより好ましい。
11、T12、T21及びT22はそれぞれ独立に、下記式Tで表される基を表し、T11及びT12の少なくとも一方がアルキル基であり、かつ、上記T21及びT22の少なくとも一方がアルキル基であることが好ましく、T11及びT12の少なくとも一方が炭素数4〜18のアルキル基であり、かつ、上記T21及びT22の少なくとも一方が4〜18のアルキル基であることがより好ましく、T11、T12、T21及びT22がそれぞれ独立に、アルキル基であることが更に好ましく、T11、T12、T21及びT22がそれぞれ独立に、炭素数4〜18のアルキル基であることが特に好ましい。
−ST−BT−ET (T)
式T中、STはスペーサー基であり、−(CRS2q−で表されるアルキレン基を表し、単結合であることが好ましい。
sはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、水素原子であることが好ましい。
qは0〜17の整数を表し、0〜5であることが好ましく、0〜4であることがより好ましい。
Tは単結合、式B−1〜B−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、式B−1〜B−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、式B−1〜B−4若しくはB−13〜B−15のいずれかで表される二価の連結基、又は、式B−1〜B−4若しくはB−13〜B−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基であることが好ましく、式B−1〜B−4若しくはB−13〜B−15のいずれかで表される二価の連結基、又は、式B−1〜B−4若しくはB−13〜B−15のいずれかで表される二価の連結基のいずれかが2つ結合した基であることがより好ましく、式B−1〜B−4又はB−13〜B−15のいずれかで表される二価の連結基であることが更に好ましく、式B−1、B−4、又は、式B−15のいずれかで表される二価の連結基であることが特に好ましい。
なお、BTが式B−1〜式B−15のいずれかで表される二価の連結基が2つ以上結合した二価の連結基を表す場合、一方の連結基の*が、他方の連結基の波線部分と結合し、*と破線部分を1つずつ有する二価の連結基となる。その場合、*と破線部分を1つずつ有する上記二価の連結基の破線部分がスペーサー基STとの結合位置を、*がEとの結合位置をそれぞれ表す。
また、BTは式B−1で表される基、式B−4で表される基、又は、式B−1で表される基と式B−4で表される基とが2つ以上結合した基であることが好ましい。
Tはアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表し、炭素数1〜17のアルキル基、炭素数1〜17のハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、炭素数6〜13のアリール基、炭素数4〜20のヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表し、炭素数4〜18のアルキル基であることが好ましい。
また、ST、BT及びETに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。
【0028】
以下に式1又は式2で表される化合物を例示するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0029】
【化7】
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
【化16】
【0039】
【化17】
【0040】
【化18】
【0041】
【化19】
【0042】
【化20】
【0043】
【化21】
【0044】
【化22】
【0045】
【化23】
【0046】
【化24】
【0047】
【化25】
【0048】
【化26】
【0049】
【化27】
【0050】
【化28】
【0051】
【化29】
【0052】
【化30】
【0053】
【化31】
【0054】
【化32】
【0055】
式1又は式2で表される化合物の分子量は、特に制限されないが、分子量が1,500以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、800以下であることが更に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができる。一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は400以上であることが好ましく、430以上であることがより好ましく、450以上であることが更に好ましい。
特定化合物は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の有機半導体インク中、特定化合物は少なくともその一部が溶解していることが好ましく、その全部が溶解していることがより好ましいが、一部が溶解せず分散していてもよい。
【0056】
特定化合物の合成方法は特に限定されず、公知の方法を参照して合成できる。
具体的には、K.Takimiya,Adv.Mater.201,23,4347−4370.、及び、K.Takimiya et al.Mol.Cryst.Liq.Cryst,2006, 455, pp361−365.が参照される。
【0057】
本発明の有機半導体インクにおける特定化合物の含有量は、有機半導体インクの総量に対し、20質量%以下であり、0.001〜15質量%であることが好ましく、0.01〜10質量がより好ましい。なお、特定化合物を2種以上併用する場合、特定化合物の総含有量が上記範囲にあることが好ましい。特定化合物の含有量が上記範囲内であると、高いキャリア移動度及び駆動安定性を有する有機半導体素子を得ることができ、インクの保存安定性も良好である。
また、特定化合物の含有量は、固形分総量の30〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることが更に好ましい。また、後述するパンダ−ポリマーを含有しない場合は、上記総含有量が、90〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましい。
【0058】
<バインダーポリマー>
本発明の有機半導体インクは、バインダーポリマーを含有することが好ましい。
また、本発明の有機半導体素子は、上記特定化合物を含有する層と、バインダーポリマーを含む層とを有する有機半導体素子であってもよい。
バインダーポリマーの種類は特に制限されず、公知のバインダーポリマーを用いることができる。
バインダーポリマーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、及びこれらの共重合体、ポリシラン、ポリカルバゾール、ポリアリールアミン、ポリフルオレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリヘテロアセンなどの半導体ポリマー、及びこれらの共重合体、ゴム、熱可塑性エラストマーを挙げることができる。
中でも、バインダーポリマーとしては、ベンゼン環を有する高分子化合物(ベンゼン環基を有する単量体単位を有する高分子)が好ましい。ベンゼン環基を有する単量体単位の含有量は特に制限されないが、全単量体単位中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、100モル%が挙げられる。
上記バインダーポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルフェニル)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン]、ポリ[2,6−(4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4Hシクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン)−アルト−4,7−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)]などが挙げられ、ポリ(α−メチルスチレン)が特に好ましい。
【0059】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、1,000〜200万が好ましく、3,000〜100万がより好ましく、5,000〜60万が更に好ましい。
また、バインダーポリマーは、特定溶媒の溶解度が、特定化合物よりも高いことが好ましい。上記態様であると、得られる有機半導体のキャリア移動度及び熱安定性により優れる。
本発明の有機半導体インクにおけるバインダーポリマーの含有量は、有機半導体インクの総量に対し、0を超え20質量%以下であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましく、0.25〜10質量%であることが更に好ましい。上記範囲内であると、得られる有機半導体のキャリア移動度及び熱安定性により優れる。
【0060】
<その他の成分>
本発明の有機半導体インクは、更に他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、公知の添加剤等を用いることができる。
本発明の有機半導体インクにおける全固形分濃度は、1.5質量%以上であることが好ましい。なお、固形分とは、溶媒等の揮発性成分を除いた成分の量である。すなわち、特定化合物及びバインダーポリマーを含む全固形分の濃度が1.5質量%以上であることが好ましい。固形分濃度が1.5質量%以上であると、各種印刷法での膜形成性に優れるので好ましい。
有機半導体インクにおける全固形分濃度は、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。また、その上限は限定されないが、特定化合物の溶解性等の観点から、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。上記範囲であると、保存安定性及び膜形成性に優れ、得られる有機半導体のキャリア移動度により優れる。
【0061】
本発明の有機半導体インクの粘度は、特に制限されないが、各種印刷適性、特に、インクジェット印刷適性及びフレキソ印刷適性により優れる点で、3〜100mPa・sが好ましく、5〜50mPa・sがより好ましく、9〜40mPa・sが更に好ましい。なお、本発明における粘度は、25℃での粘度である。
粘度の測定方法としては、JIS Z8803に準拠した測定方法であることが好ましい。
【0062】
本発明の有機半導体インクの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、特定溶媒中に所定量の特定化合物を添加して、適宜撹拌処理を施すことにより、所望のインクを得ることができる。また、バインダーポリマーを用いる場合は、特定化合物及びバインダーポリマーを同時又は逐次に添加して好適にインクを作製することができる。
【0063】
(有機半導体膜、有機半導体素子及びそれらの製造方法)
本発明の有機半導体膜は、本発明の有機半導体インクを用いて製造されたものであり、また、本発明の有機半導体素子は、本発明の有機半導体インクを用いて製造されたものである。
本発明の有機半導体インクを用いて有機半導体膜や有機半導体素子を製造する方法は、特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、インクを所定の基材上に付与して、必要に応じて乾燥処理を施して、有機半導体膜又は有機半導体素子を製造する方法が挙げられる。
基材上にインクを付与する方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、ドロップキャスト法などが挙げられ、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、スピンコート法、ドロップキャスト法が好ましく、インクジェット印刷法及びフレキソ印刷法が特に好ましい。
なお、フレキソ印刷法としては、フレキソ印刷版として感光性樹脂版を用いる態様が好適に挙げられる。態様によって、インクを基板上に印刷して、パターンを容易に形成することができる。
中でも、本発明の有機半導体膜の製造方法、及び、有機半導体素子の製造方法は、本発明の有機半導体インクを基板上に付与する付与工程、及び、付与されたインクから溶媒を除去する除去工程を含むことが好ましく、本発明の有機半導体インクを、インクジェット法又はフレキソ印刷法により基板上に付与する付与工程、及び、付与されたインクから溶媒を除去する除去工程を含むことがより好ましい。
【0064】
上記除去工程における乾燥処理は、必要に応じて実施される処理であり、使用される特定化合物及び溶媒の種類により適宜最適な条件が選択される。中でも、得られる有機半導体のキャリア移動度及び熱安定性により優れ、また、生産性に優れる点で、加熱温度としては30℃〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましく、加熱時間としては1〜300分が好ましく、10〜120分がより好ましい。
【0065】
本発明の有機半導体膜の膜厚は、特に制限されないが、得られる有機半導体のキャリア移動度及び熱安定性の観点から、5〜500nmが好ましく、20〜200nmがより好ましい。
本発明の有機半導体膜は、有機半導体素子に好適に使用することができ、有機トランジスタ(有機薄膜トランジスタ)に特に好適に使用することができる。
本発明の有機半導体膜は、本発明の有機半導体インクを用いて好適に作製される。
【0066】
<有機半導体素子>
有機半導体素子としては、特に制限はないが、2〜5端子の有機半導体素子であることが好ましく、2又は3端子の有機半導体素子であることがより好ましい。
また、有機半導体素子としては、光電機能を用いない素子であることが好ましい。
更に、本発明の有機半導体素子は、非発光性有機半導体素子であることが好ましい。
2端子素子としては、整流用ダイオード、定電圧ダイオード、PINダイオード(p-intrinsic-n Diode)、ショットキーバリアダイオード、サージ保護用ダイオード、ダイアック、バリスタ、トンネルダイオード等が挙げられる。
3端子素子としては、バイポーラトランジスタ、ダーリントントランジスタ、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、ユニジャンクショントランジスタ、静電誘導トランジスタ、ゲートターンサイリスタ、トライアック、静電誘導サイリスタ等が挙げられる。
これらの中でも、整流用ダイオード、及び、トランジスタ類が好ましく挙げられ、電界効果トランジスタがより好ましく挙げられる。
【0067】
本発明の有機薄膜トランジスタの一態様について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ(TFT))の一態様の断面模式図である。
図1において、有機薄膜トランジスタ100は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30のゲート電極20側とは反対側の表面に接するソース電極40及びドレイン電極42と、ソース電極40とドレイン電極42との間のゲート絶縁膜30の表面を覆う有機半導体膜50と、各部材を覆う封止層60とを備える。有機薄膜トランジスタ100は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
なお、図1においては、有機半導体膜50が、上述したインクより形成される膜に該当する。
以下、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層並びにそれぞれの形成方法について詳述する。
【0068】
〔基板〕
基板は、後述するゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などを支持する役割を果たす。
基板の種類は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、セラミック基板などが挙げられる。中でも、各デバイスへの適用性及びコストの観点から、ガラス基板又はプラスチック基板であることが好ましい。
プラスチック基板の材料としては、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)又は熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフォンなど)が挙げられる。
セラミック基板の材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイドなどが挙げられる。
ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダガラス、カリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミケイ酸ガラス、鉛ガラスなどが挙げられる。
【0069】
〔ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極〕
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料としては、例えば、金(Au)、銀、アルミニウム(Al)、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、タンタル、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;InO2、SnO2、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性の酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料などが挙げられる。中でも、金属であることが好ましく、銀又はアルミニウムであることがより好ましい。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みは特に制限されないが、20〜200nmであることが好ましい。
【0070】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、基板上に、電極材料を真空蒸着又はスパッタする方法、電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法などが挙げられる。また、電極をパターニングする場合、パターニングする方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マスク蒸着法などが挙げられる。
【0071】
〔ゲート絶縁膜〕
ゲート絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾオキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物;窒化珪素等の窒化物などが挙げられる。これらの材料のうち、有機半導体膜との相性から、ポリマーであることが好ましい。
ゲート絶縁膜の材料としてポリマーを用いる場合、架橋剤(例えば、メラミン)を併用することが好ましい。架橋剤を併用することで、ポリマーが架橋されて、形成されるゲート絶縁膜の耐久性が向上する。
ゲート絶縁膜の膜厚は特に制限されないが、100〜1,000nmであることが好ましい。
【0072】
ゲート絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極が形成された基板上に、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、ゲート絶縁膜材料を蒸着又はスパッタする方法などが挙げられる。ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法)を使用することができる。
ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布してゲート絶縁膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0073】
〔バインダーポリマー層〕
本発明の有機半導体素子は、上記有機半導体層と絶縁膜との間に上記バインダーポリマー層を有することが好ましく、上記有機半導体層とゲート絶縁膜との間に上記バインダーポリマー層を有することがより好ましい。上記バインダーポリマー層の膜厚は特に制限されないが、20〜500nmであることが好ましい。上記バインダーポリマー層は、上記ポリマーを含む層であればよいが、上記バインダーポリマーからなる層であることが好ましい。
【0074】
バインダーポリマー層を形成する方法は特に制限されないが、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、インクジェット法)を使用することができる。
バインダーポリマー層形成用組成物を塗布してバインダーポリマー層を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0075】
〔封止層〕
本発明の有機半導体素子は、耐久性の観点から、最外層に封止層を備えることが好ましい。封止層には公知の封止剤を用いることができる。
封止層の厚さは特に制限されないが、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0076】
封止層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とソース電極とドレイン電極と有機半導体膜とが形成された基板上に、封止層形成用組成物を塗布する方法などが挙げられる。封止層形成用組成物を塗布する方法の具体例は、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法と同じである。封止層形成用組成物を塗布して有機半導体膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0077】
また、図2は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ)の別の一態様の断面模式図である。
図2において、有機薄膜トランジスタ200は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30上に配置された有機半導体膜50と、有機半導体膜50上に配置されたソース電極40及びドレイン電極42と、各部材を覆う封止層60を備える。ここで、ソース電極40及びドレイン電極42は、上述した本発明のインクを用いて形成されたものである。有機薄膜トランジスタ200は、トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層については、上述のとおりである。
上記では図1及び図2において、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、ボトムゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの態様について詳述したが、本発明の有機半導体素子は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、トップゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタにも好適に使用できる。
なお、上述した有機薄膜トランジスタは、電子ペーパー、ディスプレイデバイスなどに好適に使用できる。
【0078】
(高分子化合物)
本発明の高分子化合物は、下記式3で表される化合物である。
【0079】
【化33】
式3中、X31〜X34はそれぞれ独立に、カルコゲン原子を表し、Y31〜Y38はそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、L31及びL32はそれぞれ独立に、単結合、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、ビニレン基又はエチニレン基を表し、M’はアリーレン基、ヘテロアリーレン基、メチレン基、ビニレン基、エチニレン基、単結合又はこれら2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表し、mは1以上の整数を表し、T31及びT32はそれぞれ独立に、下記式T’で表される基を表す。
−ST’−BT’−ET’ (T)
式T’中、ST’はスペーサー基であり、−(CRT2p−で表されるアルキレン基を表し、RTはそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、pは0〜17の整数を表し、BT’は単結合、下記式B’−1〜B’−15のいずれかで表される2価の連結基、又は、下記式B’−1〜B’−15で表される二価の連結基のいずれかが2つ以上結合した基を表し、ET’はアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、アリール基、ヘテロアリール基、オキシエチレン単位の繰り返し数が1以上のオリゴオキシエチレン基、ケイ素原子数が1以上のオリゴシロキサン基、又はトリアルキルシリル基を表す。
【0080】
【化34】
【0081】
式B’−1〜B’−15中、波線部分はスペーサー基ST’との結合位置を表し、*はET’との結合位置を表し、p13’は0〜4の整数を表し、p14’及びp15’はそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、RB1’、RB21’、RB22’、RB13’、RB14’、及び、RB15’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アリーレン基、ヘテロアリーレン基を表し、水素原子又はハロゲン原子が好ましい。
【0082】
式3中のX31〜X34、Y31〜Y38、L31及びL32、M’、並びに、mは、式2中のX21〜X24、Y21〜Y28、L21及びL22、並びに、kとそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
31及びT32、T’、ST’、RT、p、BT’及びET’は、式2中のT21及びT22、T、ST、RS、q、BT及びETとそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
式B’−1〜B’−15中のp13’、p14’及びp15’は、式2中のp13、p14及びp15とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0084】
(特定化合物及び合成例)
有機半導体素子に用いた化合物E−1〜18、及び、比較例に用いたC−1〜5の構造を以下に示す。
【0085】
【化35】
【0086】
【化36】
【0087】
【化37】
【0088】
<E−1の合成>
化合物E−1は、出発原料として2−オクチルチオフェンを用い、下記のスキームX1にしたがって合成を行った。
【0089】
【化38】
【0090】
<E−2の合成>
化合物E−2は、出発原料として2−ブチルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−1と同様の方法で合成を行った。
【0091】
<E−3の合成>
化合物E−3は、出発原料として2−オクタデシルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−1と同様の方法で合成を行った。
【0092】
<E−4の合成>
化合物E−4は、出発原料として2−ブトキシブチルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−1と同様の方法で合成を行った。
【0093】
<E−5の合成>
化合物E−5は、出発原料として2−オクチルチオフェンを用いて上記化合物E−1のスキームで合成した中間体M1を用いて下記のスキームX2で合成を行った。
【0094】
【化39】
【0095】
<E−6の合成>
化合物E−6は、出発原料として2−ブチルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−5と同様の方法で合成を行った。
【0096】
<E−7の合成>
化合物E−7は、出発原料として2−オクタデシルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−5と同様の方法で合成を行った。
【0097】
<E−8の合成>
化合物E−8は、出発原料として2−ブトキシブチルチオフェンを使用すること以外、上記化合物E−5と同様の方法で合成を行った。
【0098】
<E−9の合成>
化合物E−9は、発原料として2−オクチルチオフェンを用い、上記化合物E−1のスキームで合成した中間体M2を用いて下記のスキームX3で合成を行った。
【0099】
【0100】
<E−10の合成>
化合物E−10は、化合物E−9の合成において1,5−ナフタレンの代わりに1,4−ジブロモ−2,6−ジメチルベンゼンを使用すること以外同様の方法で合成を行った。
【0101】
化合物E−1〜E−10のような、syn−ベンゾジチオフェン構造を複数有する化合物は、非対称中間体であるM2及びM3を経由することにより、効率的に合成できる。
M2及びM3は、片側にアルキル基を導入した中間体M1の、アルキル基が導入されていないチオフェン環の活性位を、過剰量のノルマルブチルリチウムでリチオ化し、それぞれ1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタン、塩化トリメチルスズ及び無水DMF(ジメチルホルムアミド)でクエンチする事により合成することができる。
【0102】
<E−11の合成>
化合物E−11は、下記スキームX4によって合成した中間体M4を用い、下記スキームX5に従って2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンとカップリングすることによって合成を行った。
【0103】
【化40】
【0104】
【化41】
【0105】
<E−12の合成>
化合物E−12は、化合物E−11の合成において2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンの代わりに2−ブチル−5―トリメチルスタニルチオフェンを使用すること以外同様にして合成を行った。
【0106】
<E−13の合成>
化合物E−13は、化合物E−11の合成において2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンの代わりに2−オクタデシル−5―トリメチルスタニルチオフェンを使用すること以外同様にして合成を行った。
【0107】
<E−14の合成>
化合物E−14は、化合物E−11の合成において2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンの代わりに2−ブトキシブチル−5―トリメチルスタニルチオフェンを使用すること以外同様にして合成を行った。
【0108】
<E−15の合成>
化合物E−15は、化合物E−11の合成において2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンの代わりに3−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンを使用すること以外同様にして合成を行った。
【0109】
<E−16の合成>
化合物E−16は、上記スキームX4によって合成した中間体M4を用い、下記スキームX6に従って合成を行った。
【0110】
【化42】
【0111】
<E−17、E−18の合成>
化合物E−17及びE−18は、E.Nakamura, J.Am.Chem.Soc.,2012, 134, 5448−5451に記載の方法を参考に、下記スキームX7によって合成を行った。
【0112】
【化43】
【0113】
<C−1の合成>
化合物C−1は、特開2005−330185号公報に記載の方法に従って合成を行った。
【0114】
<C−2の合成>
化合物C−2は、国際公開第2007/125671号公報に記載の方法に従って合成を行った。
【0115】
<C−3の合成>
化合物C−3は、Mol.Cryst.Liq.Cryst.2006,455,361.に記載の方法に従って合成を行った。
【0116】
<C−4の合成>
化合物C−5は、化合物E−11の合成において2−オクチル−5―トリメチルスタニルチオフェンの代わりに2−トリメチルスタニルチオフェンを使用すること以外は同様にして合成を行った。
【0117】
<C−5の合成>
化合物C−5は、特開2005−154371号公報に記載の方法に従って合成を行った。
【0118】
(実施例1〜18、比較例1〜5)
<TFT素子作製>
表1に記載の特定化合物とトルエン(1mL)を混合し(0.12質量%)、100℃に加熱したものを、有機半導体インクとした。
得られたインクをフレキソ印刷によってFET特性測定用基板上に付与した。具体的には、印刷装置としてフレキソ適性試験機F1(アイジーティ・テスティングシステムズ(株)製)、フレキソ樹脂版としてAFP DSH1.70%(旭化成(株)製)/ベタ画像を用いた。版と基板との間の圧力は、60N、搬送速度0.4m/秒で印刷を行った後、そのまま、40℃下室温で2時間乾燥することにより有機半導体膜を形成し、FET特性測定用の有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)を得た。
FET特性測定用基板としては、ソース及びドレイン電極としてくし型に配置されたクロム/金(ゲート幅W=100mm、ゲート長L=100μm)、絶縁膜としてSiO2(膜厚200nm)を備えたボトムゲート・ボトムコンタクト構造のシリコン基板を用いた。
また、上記インクをインクジェット印刷によってFET特性測定用基板上に付与した。具体的には、インクジェット装置としてDPP2831(富士フイルムグラフィックシステムズ(株)製)、10pLヘッドを用い、吐出周波数2Hz、ドット間ピッチ20μmでベタ膜を形成した。その後70℃で1時間乾燥することにより有機半導体膜を形成し、FET特性測定用の有機TFT素子を得た。
各実施例又は比較例において、インクジェット印刷により得られた有機TFT素子の、後述するキャリア移動度、折り曲げ耐性、塗布成膜性の評価は、フレキソ印刷によって得られた有機TFT素子の評価と全て同じであった。
【0119】
<キャリア移動度>
各実施例及び比較例の有機薄膜トランジスタ素子のFET特性として、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度を評価した。
各有機薄膜トランジスタ素子(FET素子)のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流Idを表わす下記式を用いてキャリア移動度μを算出した。
Id=(w/2L)μCi(Vg−Vth)2
式中、Lはゲート長、Wはゲート幅、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vthは閾値電圧を表す。
キャリア移動度の数値は、実用上0.001以上であることが必要であり、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
【0120】
<折り曲げ耐性>
PENフィルム上に作製した各有機薄膜トランジスタ素子を、曲率半径4ミリで100回折り曲げ試験を行った後に、キャリア移動度μを測定し、下記式より折り曲げ試験後のキャリア移動度維持率を算出した。
折り曲げ試験後のキャリア移動度維持率(%)=移動度(折り曲げ後)/移動度(初期値)
得られた結果を以下の評価基準にしたがって評価した。実用上A又はB評価であることが必要であり、A評価であることが好ましい。
なお、表中のN/Aとは、作成した素子がTFT特性を有していないため、折り曲げ試験を実施しなかったことを表す。
〔評価基準〕
A:95%以上
B:90%以上、95%未満
C:90%未満
【0121】
<塗布成膜性>
本発明の化合物又は比較化合物とトルエン(1mL)を混合(0.12質量%)し、100℃に加熱したものを、非発光性有機半導体溶液とした。この塗布溶液を窒素雰囲気下、90℃に加熱したFET特性測定用基板上全面にキャストすることで有機半導体薄膜を形成し、下記式より基板被覆率を算出した。
被覆率(%)=結晶膜が形成された領域の面積/基板面積
得られた結果を以下の評価基準にしたがって評価した。実用上A又はB評価であることが必要であり、A評価であることが好ましい。
〔評価基準〕
A:被覆率95%以上
B:被覆率80%以上、95%未満
C:50%以上、80%未満
D:50%未満
【0122】
(実施例19〜22、比較例6〜8)
<TFT素子作製>
表1に記載の本発明の特定化合物又は比較化合物、PαMS(ポリ(α−メチルスチレン)、Mw=300,000、Aldrich社製)1mg、トルエン(1mL)を混合し(特定化合物又は比較化合物の濃度:0.12質量%)、100℃に加熱したものを有機半導体インクとして用いる以外は実施例1〜18及び比較例1〜5と同様にして、各種評価を行った。それぞれの評価結果は表1に記載した。
【0123】
(比較例9)
化合物E−1とテトラヒドロフラン(1mL)を混合(0.12質量%)し、50℃に加熱したものを、有機半導体インクとした以外は実施例1と同様に、TFT素子を作成し、各種評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0124】
(比較例10〜31)
表1に記載の特定化合物とトルエン(1mL)を、各特定化合物の含量が21質量%となるように秤量、混合し、100℃に加熱した物を有機半導体インクとした以外は実施例1〜22と同様に有機半導体膜を形成したが、いずれも不溶物のために欠陥が多数発生し、TFT特性を発現しなかった。
【0125】
【表1】
【符号の説明】
【0126】
10:基板、20:ゲート電極、30:ゲート絶縁膜、40:ソース電極、42:ドレイン電極、50:有機半導体膜、60:封止層、100、200:有機薄膜トランジスタ
図1
図2