特許第6243053号(P6243053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243053有機電界効果トランジスタ、有機半導体結晶の製造方法、及び、有機半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243053
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】有機電界効果トランジスタ、有機半導体結晶の製造方法、及び、有機半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20171127BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618A
   H01L29/78 627G
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 310J
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 310L
【請求項の数】6
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2016-550301(P2016-550301)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2015076659
(87)【国際公開番号】WO2016047587
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-194675(P2014-194675)
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-75612(P2015-75612)
(32)【優先日】2015年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新居 輝樹
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−146637(JP,A)
【文献】 特開2009−177135(JP,A)
【文献】 特開2009−177136(JP,A)
【文献】 特表2009−543323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/28
H01L 29/786
H01L 51/00−51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体化合物からなる第一の層と、第一の層と隣接し、液晶性化合物からなる第二の層とを有しており、
第一の層における有機半導体結晶の大きさが100μm角以上であることを特徴とする
有機電界効果トランジスタ。
【請求項2】
第一の層と第二の層の厚さの合計に対する、第一の層の厚さの割合が50%以下である、請求項1に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項3】
第一の層と第二の層がラメラ相分離によって形成された、請求項1又は2に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項4】
第二の層に含まれる液晶性化合物が重合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界効果トランジスタ。
【請求項5】
有機半導体化合物と、液晶性化合物と、有機溶媒とを含む組成物を基材上に塗布して有機膜を作製する塗布工程、
前記有機膜を等方相まで加熱する加熱工程、及び、
前記有機膜を冷却し、有機半導体化合物層と液晶性化合物層を基材面に対して平行にラメラ相分離させて有機半導体化合物を結晶化させる相分離工程、をこの順で含む
有機半導体結晶の製造方法。
【請求項6】
液晶性化合物層を重合によって固定化する重合工程を更に含む、請求項5に記載の有機半導体結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界効果トランジスタ、有機半導体結晶の製造方法、及び、有機半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界効果トランジスタにおいて、高移動度を実現するためにはソース−ドレインの両電極方向に単結晶構造の有機半導体結晶を形成させる必要がある。ここで、有機半導体化合物を配向させる方法としては、下記の特許文献1又は2に記載のように、液晶性化合物を使用した方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−31458号公報
【特許文献2】国際公開第2005/043639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法では、液晶性化合物を配向能力のある溶媒として使用することにより、混合物である有機半導体化合物を配向させている。しかしながら、有機半導体と液晶化合物が均一に混合しているため、ホールキャリアを有機半導体で埋め尽くすためにはキャリアトラップとなる液晶化合物を除去しなければならない。この除去工程が減圧あるいは高温昇華など特殊な環境が必要な上に、液晶化合物の除去に関して保証することが非常に困難であった。
特許文献2に記載の方法でも、液晶状態の自己配向性を利用して有機半導体化合物を配向させているが、非液晶性である有機半導体と有機化合物とを混合することによって液晶性を持たせた上で配向させ、かつ有機化合物を除去する必要がある。すなわち、使用化合物が限定されることと有機化合物除去のための特殊な環境及び不純物除去の保証が課題であった。
本発明が解決しようとする課題は、有機半導体の配向に用いる液晶性化合物を除去する必要がなく、移動度に優れた有機電界効果トランジスタ、有機半導体素子、及び、それらに使用される有機半導体結晶の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<5>又は<7>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<4>及び<6>と共に以下に記載する。
<1> 有機半導体化合物からなる第一の層と、第一の層と隣接し、液晶性化合物からなる第二の層とを有しており、第一の層における有機半導体結晶の大きさが100μm角以上であることを特徴とする有機電界効果トランジスタ、
<2> 第一の層と第二の層の厚さの合計に対する、第一の層の厚さの割合が50%以下である、<1>に記載の有機電界効果トランジスタ、
<3> 第一の層と第二の層がラメラ相分離によって形成された、<1>又は<2>に記載の有機電界効果トランジスタ、
<4> 第二の層に含まれる液晶性化合物が重合されている、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の有機電界効果トランジスタ、
<5> 有機半導体化合物と、液晶性化合物と、有機溶媒とを含む組成物を基材上に塗布して有機膜を作製する塗布工程、上記有機膜を等方相まで加熱する加熱工程、及び、上記有機膜を冷却し、有機半導体化合物層と液晶性化合物層を基材面に対して平行にラメラ相分離させて有機半導体化合物を結晶化させる相分離工程、をこの順で含む有機半導体結晶の製造方法、
<6> 液晶性化合物層を重合によって固定化する重合工程を更に含む、<5>に記載の有機半導体結晶の製造方法、
<7> <5>又は<6>に記載の有機半導体結晶の製造方法により製造された有機半導体結晶を含む有機半導体層と、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極に対してソース電極及びドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、これらを支持する基板とを有する、有機半導体素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、有機半導体の配向に用いる液晶性化合物を除去する必要がなく、移動度に優れた有機電界効果トランジスタ、有機半導体素子、及び、それらに使用される有機半導体結晶の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の有機半導体素子の一態様の断面模式図である。
図2】本発明の有機半導体素子の別の一態様の断面模式図である。
図3】実施例において作製した、本発明の有機半導体結晶の偏光顕微鏡像である。
図4】比較例において作製した、有機半導体結晶の偏光顕微鏡像である。
図5】実施例において作製した、試料S1の厚み方向の素材分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリル及びメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
本発明において、「a1〜a3よりなる群から選ばれた少なくとも1種」等を、単に「成分A」等ともいう。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0009】
(有機電界効果トランジスタ)
本発明に用いられる有機電界効果トランジスタは、有機半導体化合物(以下、単に「有機半導体」ともいう。)からなる第一の層と、第一の層と隣接し、液晶性化合物からなる第二の層とを有しており、第一の層における有機半導体結晶の大きさが100μm角以上であることを特徴とする。
【0010】
上記の態様によれば、有機半導体の配向に用いる液晶性化合物を除去する必要がなく、移動度に優れた有機電界効果トランジスタ、有機半導体素子、及び、それらに使用される有機半導体結晶の製造方法を提供することができる。
詳細な効果の発現機構は不明であるが、有機半導体と液晶性化合物を混合し加熱によって両者を均一化した後、冷却することで相分離させることにより、液晶性化合物の配向に伴って有機半導体が液晶表面に偏在化しつつ結晶化すると推測している。
上記の結晶化の際に、液晶性化合物の配向規制力によって有機半導体結晶を配向させることが可能であり、また驚くべきことに有機半導体結晶サイズが大きくなる。
これにより、低温かつ短時間で高配向かつ大きな有機半導体単結晶が作成可能であり、有機半導体の種類に制限がなく、液晶性化合物を除去する必要がないので除去設備や保証の必要がなく、制御管理が容易な温度による相分離を利用するため簡便な環境制御で実施が可能となる。
【0011】
<第一の層>
第一の層は、半導体性を示し、キャリアを蓄積可能な層である。第一の層は、有機半導体化合物を含有する層であればよく、液晶性を併せ持つ化合物も半導体とする。すなわち、有機半導体化合物に含まれるものは、液晶性化合物には含まれない。有機半導体としては、特に限定されず、有機ポリマー及びその誘導体、低分子化合物等が挙げられる。本発明において、低分子化合物は、有機ポリマー及びその誘導体以外の化合物を意味する。すなわち、繰り返し単位を有さない化合物をいう。低分子化合物は、このような化合物である限り、分子量は特に限定されるものではない。低分子化合物の分子量は、好ましくは100〜2,000であり、更に好ましくは100〜1,000である。また、結晶化の観点から、本発明においては低分子化合物のほうがより好ましい。
また、第一の層における有機半導体結晶の大きさは100μm角以上であり、200μm角以上であることが好ましく、500μm角以上であることがより好ましい。
第一の層における有機半導体結晶の大きさの上限は、特に限定されないが、5mm角以下であることが好ましい
有機半導体結晶の大きさは、偏光顕微鏡を用い、有機半導体の表面が形成する平面に対して垂直な方向から観察により測定することができる。
第一の層の厚さは、10〜100nmであることが好ましく、15〜80nmであることがより好ましく、20〜60nmであることが更に好ましい。
第一の層は有機半導体が99質量%以上からなることが好ましく、100質量%からなることが更に好ましい。
【0012】
低分子化合物としては、縮合多環芳香族化合物が挙げられる。例えば、ナフタセン、ペンタセン(2,3,6,7−ジベンゾアントラセン)、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン等のアセン、アントラジチオフェン、ピレン、ベンゾピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセン、及び、これらの炭素原子の一部をN、S、O等の原子で置換した誘導体又は上記炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子をカルボニル基等の官能基で置換した誘導体(ペリキサンテノキサンテン及びその誘導体を含むジオキサアンタントレン系化合物、トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノン等)、並びに、上記水素原子を他の官能基で置換した誘導体を挙げることができる。
【0013】
また、銅フタロシアニンで代表される金属フタロシアニン、テトラチアペンタレン及びその誘導体、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)、N,N’−ジオクチルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド等のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミド等のアントラセンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド、C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン及びこれらの誘導体、SWNT等のカーボンナノチューブ、メロシアニン色素、ヘミシアニン色素等の色素とこれらの誘導体等を挙げることもできる。
【0014】
更に、ポリアントラセン、トリフェニレン、キナクリドンを挙げることができる。
【0015】
また、低分子化合物としては、例えば、4,4’−ビフェニルジチオール(BPDT)、4,4’−ジイソシアノビフェニル、4,4’−ジイソシアノ−p−テルフェニル、2,5−ビス(5’−チオアセチル−2’−チオフェニル)チオフェン、2,5−ビス(5’−チオアセトキシル−2’−チオフェニル)チオフェン、4,4’−ジイソシアノフェニル、ベンジジン(ビフェニル−4,4’−ジアミン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)、テトラチアフルバレン(TTF)及びその誘導体、テトラチアフルバレン(TTF)−TCNQ錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体に代表される電荷移動錯体、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−ジ(4−チオフェニルアセチリニル)−2−エチルベンゼン、1,4−ジ(4−イソシアノフェニルアセチリニル)−2−エチルベンゼン、1,4−ジ(4−チオフェニルエチニル)−2−エチルベンゼン、2,2”−ジヒドロキシ−1,1’:4’,1”−テルフェニル、4,4’−ビフェニルジエタナール、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−ビフェニルジイソシアネート、1,4−ジアセチニルベンゼン、ジエチルビフェニル−4,4’−ジカルボキシレート、ベンゾ[1,2−c;3,4−c’;5,6−c”]トリス[1,2]ジチオール−1,4,7−トリチオン、α−セキシチオフェン、テトラチアテトラセン、テトラセレノテトラセン、テトラテルルテトラセン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)、ポリ(N−アルキルピロール)ポリ(3−アルキルピロール)、ポリ(3,4−ジアルキルピロール)、ポリ(2,2’−チエニルピロール)、ポリ(ジベンゾチオフェンスルフィド)を例示することができる。
【0016】
有機半導体は、低分子化合物が好ましく、中でも、縮合多環芳香族化合物が好ましい。縮合多環芳香族化合物はキャリア移動度及び耐久性の向上効果が高く、更には優れた閾値電圧の低減効果をも示す。
【0017】
縮合多環芳香族化合物は、式1で表される化合物、式A1〜A4のいずれかで表されるアセン、及び、下記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tのいずれかで表される化合物が好ましく、下記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tのいずれかで表される化合物がより好ましい。
【0018】
縮合多環芳香族化合物は、式1で表される化合物が好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式1中、R1及びR2はそれぞれ独立に、総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数6〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基又は炭素数3〜18の置換若しくは無置換の分岐アルキル基を表し、式1中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。
【0021】
まず、式1で表される化合物の構造の好ましい態様について説明する。
式1中、R1及びR2はそれぞれ独立に、総炭素数3〜30であり、かつ、炭素数6〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基、炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基又は炭素数3〜18の置換若しくは無置換の分岐アルキル基を表す。
【0022】
1及びR2が表す炭素数6〜10であり炭素数が偶数の無置換の直鎖アルキル基としては、炭素数6又は8の直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数6の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
【0023】
1及びR2が表す炭素数3〜15であり炭素数が奇数の無置換の直鎖アルキル基は、炭素数5〜15であり炭素数が奇数の無置換直鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数7〜13であり炭素数が奇数の無置換直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数9又は11の無置換直鎖アルキル基であることが特に好ましい。
【0024】
1及びR2は直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からはR1及びR2が分枝アルキル基であってもよい。
【0025】
1及びR2が炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基又は炭素数3〜18の置換の分岐アルキル基である場合の置換基としては、特に限定はないが、ハロゲン原子、アルケニル基(エテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘプタニル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル基、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリ−i−プロピルシリルエチニル基、2−p−プロピルフェニルエチニル基等を含む)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−ペンチルフェニル基、3,4−ジペンチルフェニル基、p−ヘプトキシフェニル基、3,4−ジヘプトキシフェニル基の炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル基等を含む)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル基、ベンゾイル基等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ基等を含む)、アリールオキシ基(フェノキシ基等を含む)、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基を含む)、アルコキシ及びアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキル及びアリールチオ基(メチルチオ基、オクチルチオ基等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルキル及びアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
また、これら置換基は、更に上記置換基を有していてもよい。
これらの中でも、とりうる置換基として、ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基が好ましく、フッ素原子、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基(1−アルケニル基であることが好ましい。)、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基がより好ましい。
なお、R1及びR2がフッ素原子で置換されたアルキル基である場合は、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されていても、全てがフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。
ただし、R1及びR2は無置換の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であることが好ましい。
【0026】
1及びR2が炭素数3〜15の置換の直鎖アルキル基である場合、炭素数3〜13の置換の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数3〜11の置換の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数5〜11の置換の直鎖アルキル基が特に好ましく、炭素数7〜11の置換の直鎖アルキル基がより特に好ましい。
【0027】
1及びR2が炭素数3〜18の置換の分岐アルキル基である場合、炭素数3〜15の置換の分岐アルキル基が好ましく、炭素数3〜13の置換の分岐アルキル基がより好ましく、炭素数3〜11の置換の分岐アルキル基が特に好ましく、炭素数7〜11の置換の分岐アルキル基がより特に好ましい。
【0028】
また、R1及びR2が置換基を有する直鎖アルキル基又は分岐アルキル基である場合、直鎖アルキル基中の隣り合わない−CH2−基、あるいは、分岐アルキル基中の隣り合わない−CH2−基、3価の三級炭素原子連結基又は4価の四級炭素原子連結基は、それぞれ独立に他の原子連結基に置換されていてもよい。この場合の他の原子連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−NRCO−又は−CONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基)などを挙げることができる。
ただし、R1及びR2は、直鎖アルキル基中の隣り合わない−CH2−基、あるいは、分岐アルキル基中の隣り合わない−CH2−基、3価の三級炭素原子連結基又は4価の四級炭素原子連結基が他の原子連結基に置換されていないことが好ましい。
【0029】
1及びR2の総炭素数は、それぞれ独立に3〜30であり、7〜30であることが好ましく、7〜20であることがより好ましく、7〜15であることが特に好ましく、7〜11であることがより特に好ましく、9〜11であることが最も好ましい。R1及びR2の総炭素数は、それぞれ独立に上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなる。R1及びR2の総炭素数が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
【0030】
式1中の芳香族部分にハロゲン原子が置換してもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
式1中の芳香族部分に置換するハロゲン原子の個数は0〜6個であることが好ましく、0〜4個であることがより好ましく、0〜2個であることが特に好ましく、0個であることが最も好ましい。
【0031】
上記式1で表される化合物の具体例として、化合物1〜23を以下に示すが、本発明で用いることができる式1で表される化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
縮合多環芳香族化合物として好ましいアセンは、下記式A1又はA2で表されるものである。
【0037】
【化6】
【0038】
式A1及びA2中、RA1〜RA6、XA1及びXA2は、水素原子又は置換基を表す。
A1及びZA2は、S、O、Se又はTeを表す。
nA1及びnA2は0〜3の整数を表す。ただし、nA1及びnA2が同時に0になることはない。
【0039】
A1〜RA6で各々表される置換基としては、特に限定されないが、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、ペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、オクチル、tert−オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、イソプロペニル等)、アルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル、p−クロロフェニル、メシチル、トリル、キシリル、ナフチル、アントリル、アズレニル、アセナフテニル、フルオレニル、フェナントリル、インデニル、ピレニル、ビフェニリル等)、芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいい、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(ヘテロアリール環基等ともいい、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチオ、ドデシルチオ等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、オクチルアミノスルホニル、ドデシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、ナフチルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等)、アシル基(例えば、アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、オクチルカルボニル、2−エチルヘキシルカルボニル、ドデシルカルボニル、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、ピリジルカルボニル等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、ジメチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、ペンチルカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ、オクチルカルボニルアミノ、ドデシルカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、オクチルアミノカルボニル、2−エチルヘキシルアミノカルボニル、ドデシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、ナフチルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド、エチルウレイド、ペンチルウレイド、シクロヘキシルウレイド、オクチルウレイド、ドデシルウレイド、フェニルウレイド、ナフチルウレイド、2−ピリジルアミノウレイド等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル、2−ピリジルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、アミノ基(例えば、アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルジエチルシリル等)、下記式SG1で表される基(ただし、XAはGe又はSn)等が挙げられる。
これらの置換基は、更に置換基を複数有していてもよい。複数有していてもよい置換基としては、上記、RA1〜RA6で表される置換基が挙げられる。
【0040】
上記アセンの中でも、下記式A3又はA4で表されるものがより好ましい。
【0041】
【化7】
【0042】
式中、RA7、RA8、XA1及びXA2は、水素原子又は置換基を表す。RA7、RA8、XA1及びXA2は同じであっても異なっていてもよい。RA7及びRA8で表される置換基は、式A1及びA2のRA1〜RA6として採用しうる置換基として上記で列挙したものが好ましい。
A1及びZA2は、S、O、Se又はTeを表す。
nA1及びnA2は0〜3の整数を表す。ただし、nA1とnA2が同時に0になることはない。
【0043】
式A3又はA4において、RA7及びRA8は、下記式SG1で表されるものが好ましい。
【0044】
【化8】
【0045】
式中、RA9〜RA11は置換基を表す。XAはSi、Ge又はSnを表す。RA9〜RA11で表される置換基は、式A1及びA2のRA1〜RA6として採用しうる置換基として上記で列挙したものであることが好ましい。
【0046】
以下に、式A1〜A4で表されるアセン又はアセン誘導体の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
縮合多環芳香族化合物としては、更に、下記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される化合物も好ましい。
【0052】
【化13】
【0053】
式C中、AC1、AC2は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。好ましくはAC1、AC2共に酸素原子又は硫黄原子を表し、より好ましくはAC1、AC2共に硫黄原子を表す。RC1〜RC6は水素原子又は置換基を表す。RC1〜RC6のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
式D中、XD1及びXD2はNRD9、酸素原子又は硫黄原子を表す。AD1はCRD7又はN原子を表し、AD2はCRD8又はN原子を表し、RD9は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表す。RD1〜RD8は水素原子又は置換基を表し、RD1〜RD8のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
式E中、XE1及びXE2は酸素原子、硫黄原子又はNRE7を表す。AE1及びAE2はCRE8又は窒素原子を表す。RE1〜RE8は水素原子又は置換基を表す。RE1〜RE8のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
【0054】
式F中、XF1及びXF2は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。好ましくはXF1及びXF2は酸素原子、硫黄原子を表し、より好ましくは、硫黄原子を表す。RF1〜RF10、RFa及びRFbは水素原子又は置換基を表す。RF1〜RF10、RFa及びRFbのうち少なくとも一つは式Wで表される置換基である。p及びqは0〜2の整数を表す。
式G中、XG1及びXG2はNRG9、酸素原子又は硫黄原子を表す。AG1はCRG7又はN原子を表す。AG2はCRG8又はN原子を表す。RG9は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。RG1〜RG8は水素原子又は置換基を表す。RG1〜RG8のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
【0055】
式H中、XH1〜XH4は、NRH7、酸素原子又は硫黄原子を表す。XH1〜XH4は、好ましくは硫黄原子を表す。RH7は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。RH1〜RH6は水素原子又は置換基を表す。RH1〜RH6のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
【0056】
式J中、XJ1及びXJ2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRJ9を表す。XJ3及びXJ4は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。XJ1、XJ2、XJ3及びXJ4は好ましくは硫黄原子を表す。RJ1〜RJ9は水素原子又は置換基を表す。RJ1〜RJ9のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
式K中、XK1及びXK2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRK9を表す。XK3及びXK4は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。XK1、XK2、XK3及びXK4は好ましくは硫黄原子を表す。RK1〜RK9は水素原子又は置換基を表す。RK1〜RK9のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
式L中、XL1及びXL2は酸素原子、硫黄原子又はNRL11を表す。XL1及びXL2は好ましくは酸素原子又は硫黄原子を表す。RL1〜RL11は水素原子又は置換基を表し、RL1〜RL11のうち少なくとも1つが下記式Wで表される置換基である。
【0057】
式M中、XM1及びXM2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRM9を表す。XM1及びXM2は好ましくは硫黄原子を表す。RM1〜RM9は水素原子又は置換基を表す。RM1〜RM9のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
式N中、XN1及びXN2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRN13を表す。XN1及びXN2は好ましくは硫黄原子を表す。RN1〜RN13は水素原子又は置換基を表す。RN1〜RN13のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
式P中、XP1及びXP2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRP13を表す。XP1及びXP2は好ましくは硫黄原子を表す。RP1〜RP13は水素原子又は置換基を表す。RP1〜RP13のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
【0058】
式Q中、XQ1及びXQ2は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRQ13を表す。XQ1及びXQ2は好ましくは硫黄原子を表す。RQ1〜RQ13は水素原子又は置換基を表す。RQ1〜RQ13のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
式R中、XR1、XR2及びXR3は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRR9を表す。XR1、XR2及びXR3は好ましくは硫黄原子を表す。RR1〜RR9は水素原子又は置換基を表す。RR1〜RR9のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
【0059】
式S中、XS1、XS2、XS3及びXS4は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRS7を表す。XS1、XS2、XS3及びXS4は好ましくは硫黄原子を表す。RS1〜RS7は水素原子又は置換基を表す。RS1〜RS7のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
式T中、XT1、XT2、XT3、及びXT4は酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はNRT7を表す。XT1、XT2、XT3及びXT4は好ましくは硫黄原子を表す。RT1〜RT7は水素原子又は置換基を表す。RT1〜RT7のうち少なくとも1つは下記式Wで表される置換基である。
【0060】
以下に、上記各式において、水素原子又は置換基を表す、RC1〜RC6、RD1〜RD8、RE1〜RE8、RF1〜RF10、RFa及びRFb、RG1〜RG8、RH1〜RH6、RJ1〜RJ9、RK1〜RK9、RL1〜RL11、RM1〜RM9、RN1〜RN13、RP1〜RP13、RQ1〜RQ13、RR1〜RR9、RS1〜RS7及びRT1〜RT7(以下、置換基RC〜RTともいう。)について、説明する。
【0061】
置換基RC〜RTが、とりうる置換基として、ハロゲン原子、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等の炭素数1〜40のアルキル基、ただし、2,6−ジメチルオクチル、2−デシルテトラデシル、2−ヘキシルドデシル、2−エチルオクチル、2−デシルテトラデシル、2−ブチルデシル、1−オクチルノニル、2−エチルオクチル、2−オクチルテトラデシル、2−エチルヘキシル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、トリシクロアルキル等を含む)、アルケニル基(1−ペンテニル、シクロアルケニル、ビシクロアルケニル等を含む)、アルキニル基(1−ペンチニル、トリメチルシリルエチニル、トリエチルシリルエチニル、トリ−i−プロピルシリルエチニル、2−p−プロピルフェニルエチニル等を含む)、アリール基(フェニル、ナフチル、p−ペンチルフェニル、3,4−ジペンチルフェニル、p−ヘプトキシフェニル、3,4−ジヘプトキシフェニルの炭素数6〜20のアリール基等を含む)、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。2−ヘキシルフラニル等を含む)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アシル基(ヘキサノイル、ベンゾイル等を含む)、アルコキシ基(ブトキシ等を含む)、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基を含む)、アルコキシ及びアリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキル及びアリールチオ基(メチルチオ、オクチルチオ等を含む)、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルキル及びアリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基(ジトリメチルシロキシメチルブトキシ基等)、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0062】
これら置換基は、更に上記置換基を有していてもよい。
【0063】
これらの中でも、置換基RC〜RTがとりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、後述の式Wで表される基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、後述の式Wで表される基がより好ましく、後述の式Wで表される基が特に好ましく、後述の式Wで表される基がより特に好ましい。
【0064】
上記RD9、RG9及びRH7の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基は、それぞれ、置換基RC〜RTがとりうる置換基で説明した、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基と同義である。
また、ヘテロアリール基は、RA1〜RA6の置換基で説明したヘテロアリール基と同義である。
【0065】
式W:−L−RW で表される基について説明する。
【0066】
式W中、Lは下記式L−1〜L−25のいずれかで表される2価の連結基又は2以上の下記式L−1〜L−25のいずれかで表される2価の連結基が結合した2価の連結基を表す。RWは置換又は無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基を表す。
【0067】
【化14】
【0068】
式L−1〜L−25中、波線部分は上記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される各骨格を形成するいずれかの環との結合位置を表す。なお、本明細書中、Lが式L−1〜L−25のいずれかで表される2価の連結基が2つ以上結合した2価の連結基を表す場合、波線部分は上記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される各骨格を形成するいずれかの環との結合位置及び式L−1〜L−25で表される2価の連結基のいずれかとの結合位置を表してもよい。
*はRwとの結合位置を表す。
式L−13におけるmは4を表し、式L−14及びL−15におけるmは3を表し、式L−16〜L−20におけるmは2を表し、L−22におけるmは6を表す。
式L−1、L−2、L−6及びL−13〜L−19及びL−21〜L−24におけるR’はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、式L−1及びL−2中のR’はそれぞれLに隣接するRWと結合して縮合環を形成してもよい。
Nは水素原子又は置換基を表し、Rsiはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0069】
この中でも、式L−17〜L−21、L−23及びL−24で表される2価の連結基は、下記式L−17A〜L−21A、L−23A及びL−24Aで表される2価の連結基であることがより好ましい。
【0070】
【化15】
【0071】
ここで、置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、式Wにおける−RW単独と解釈することもでき、式Wにおける−L−RWと解釈することもできる。
本発明では、主鎖が炭素数N個の置換又は無置換のアルキル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で式Wにおける−L−RWと解釈することとし、式Wにおける−RW単独とは解釈しない。具体的には「式WにおけるLに相当するL−1を1個」と「式WにおけるRWに相当する主鎖が炭素数N−1個の置換又は無置換のアルキル基」とが結合した置換基として解釈する。例えば、炭素数8のアルキル基であるn−オクチル基が置換基の末端に存在する場合、2個のR’が水素原子であるL−1を1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。また、式Wで表される置換基が炭素数8のアルコキシ基である場合、−O−である式L−4で表される連結基1個と、2個のR’が水素原子であるL−1で表される連結基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。
一方、本発明では、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で、式WにおけるRW単独と解釈する。例えば、−(OCH2CH2)−(OCH2CH2)−(OCH2CH2)−OCH3基が置換基の末端に存在する場合、オキシエチレン単位の繰り返し数vが3のオリゴオキシエチレン基単独の置換基として解釈する。
【0072】
Lが式L−1〜L−25のいずれかで表される2価の連結基が結合した連結基を形成する場合、式L−1〜L−25のいずれかで表される2価の連結基の結合数は2〜4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0073】
式L−1、L−2、L−6及びL−13〜L−24中の置換基R’としては、式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tの置換基RC〜RTがとりうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも式L−6中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、L−6中のR’がアルキル基である場合は、上記アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることが更に好ましい。L−6中のR’がアルキル基である場合は、上記アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
Nとしては、置換基RC〜RTが採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でもRNとしては水素原子又はメチル基が好ましい。
siは、アルキル基であることが好ましい。Rsiがとりうるアルキル基としては特に制限はないが、Rsiがとりうるアルキル基の好ましい範囲はRWがシリル基である場合に上記シリル基がとりうるアルキル基の好ましい範囲と同様である。Rsiがとりうるアルケニル基としては特に制限はないが、置換又は無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、上記アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。Rsiがとりうるアルキニル基としては特に制限はないが、置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、上記アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
【0074】
Lは、式L−1〜L−5、L−13、L−17若しくはL−18のいずれかで表される2価の連結基、又は式L−1〜L−5、L−13、L−17若しくはL−18のいずれかで表される2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることが好ましく、式L−1、L−3、L−13若しくはL−18のいずれかで表される2価の連結基又は式L−1、L−3、L−13若しくはL−18で表される2価の連結基が2以上結合した2価の連結基であることがより好ましく、L−1、L−3、L−13若しくはL−18で表される2価の連結基、あるいは式L−3、L−13又はL−18のいずれか1つで表される2価の連結基と式L−1で表される2価の連結基が結合した2価の連結基であることが特に好ましい。式L−3、L−13又はL−18のいずれか1つで表される2価の連結基と式L−1で表される2価の連結基が結合した2価の連結基は、式L−1で表される2価の連結基がRW側に結合することが好ましい。
化学的安定性、キャリア輸送性の観点から式L−1で表される2価の連結基を含む2価の連結基であることが特に好ましく、式L−1で表される2価の連結基であることがより特に好ましく、Lが式L−18及びL−1で表される2価の連結基であり、L−1を介してRWと結合し、RWが置換又は無置換のアルキル基であることが更により特に好ましく、Lが式L−18A及びL−1で表される2価の連結基であり、L−1を介してRWと結合し、RWが置換又は無置換のアルキル基であることが更により特に好ましい。
【0075】
式Wにおいて、RWは、好ましくは、置換又は無置換のアルキル基である。式Wにおいて、RWに隣接するLが式L−1で表される2価の連結基である場合は、RWは置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、RWに隣接するLが式L−2及びL−4〜L−25で表される2価の連結基である場合は、RWは置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式Wにおいて、RWに隣接するLが式L−3で表される2価の連結基である場合は、RWは置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のシリル基であることが好ましい。
【0076】
Wが置換又は無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜17であることが好ましく、6〜14であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。RWが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
Wがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
これらの中でも、式WにおけるRWとLの組み合わせとしては、式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式TのLが式L−1で表される2価の連結基であり、かつ、RWが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であるか;あるいは、Lが式L−3、L−13又はL−18のいずれか1つで表される2価の連結基と式L−1で表される2価の連結基が結合した2価の連結基であり、かつ、RWが直鎖のアルキル基であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
【0077】
Lが式L−1で表される2価の連結基であり、かつ、RWが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基である場合、RWが直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
【0078】
Lが式L−3、L−13又はL−18のいずれか1つで表される2価の連結基と式L−1で表される2価の連結基が結合した2価の連結基であり、かつ、RWが直鎖のアルキル基である場合、RWが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点から特に好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、RWが分枝アルキル基であることが好ましい。
【0079】
Wが置換基を有するアルキル基である場合の上記置換基としては、ハロゲン原子等を挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、RWがフッ素原子を有するアルキル基である場合は上記アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、RWは無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0080】
Wがエチレンオキシ基又はオリゴエチレンオキシ基の場合、RWが表す「オリゴオキシエチレン基」とは、本明細書中、−(OCH2CH2vOYで表される基のことをいう(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは水素原子又は置換基を表す。)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは2〜4であることが好ましく、2〜3であることが更に好ましい。オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわちYが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基やエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0081】
Wが、シロキサン基又はオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることが更に好ましい。また、Si原子には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。Si原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基又は水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0082】
Wに隣接するLが式L−3で表される2価の連結基である場合、RWが置換又は無置換のシリル基であることも好ましい。RWが置換又は無置換のシリル基である場合はその中でも、RWが置換シリル基であることが好ましい。シリル基の置換基としては特に制限はないが、置換又は無置換のアルキル基が好ましく、分枝アルキル基であることがより好ましい。RWがトリアルキルシリル基の場合、Si原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。Si原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。RWがアルキル基上に更に置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の上記置換基としては、特に制限はない。
【0083】
式Wにおいて、L及びRWに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。L及びRWに含まれる炭素数の合計が上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなり、駆動電圧を低くなる。L及びRWに含まれる炭素数の合計が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
L及びRWに含まれる炭素数の合計は5〜14であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましく、8〜12であることが特に好ましい。
【0084】
式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される各化合物において、置換基RC〜RTのうち、式Wで表される基は1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0085】
置換基RC〜RTのうち、式Wで表される基の位置に特に制限はない。
式Cで表される化合物においては、RC1、RC2、RC3、RC6のいずれかが式Wで表される基であることが好ましく、RC1とRC2との両方又はRC3とRC6の両方が式Wで表される基であることがより好ましい。
式Dで表される化合物においては、RD6が式Wで表される基であることが好ましく、RD5とRD6との両方が式Wで表される基であることがより好ましい。
式Eで表される化合物においては、RE6が式Wで表される基であることが好ましく、RE5とRE6との両方が式Wで表される基であることがより好ましい。また、RE5及びRE6が式Wで表される基以外の置換基である場合、2つのRE7が式Wで表される基であるのも好ましい。
【0086】
式Fで表される化合物においては、RF2、RF3、RF8及びRF9のうち少なくとも一つは式Wで表される置換基であるのが好ましい。
式Gで表される化合物においては、RG5又はRG6が式Wで表される基であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
式Hで表される化合物においては、RH4又はRH6が式Wで表される基であるのが好ましく、RH4又はRH6、及び、RH3又はRH5が式Wで表される基であるのがより好ましい。
【0087】
式Jで表される化合物においては、RJ8が式Wで表される基であるのが好ましく、RJ8とRJ4との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Kで表される化合物においては、RK7が式Wで表される基であるのが好ましく、RK7とRK3との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Lで表される化合物においては、RL2、RL3、RL6及びRL7のうち少なくとも一つが式Wで表される基であるのがより好ましい。
【0088】
式Mで表される化合物においては、RM2が式Wで表される基であるのが好ましく、RM2とRM6との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Nで表される化合物においては、RN3が式Wで表される基であるのが好ましく、RN3とRN9との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Pで表される化合物においては、RP3が式Wで表される基であるのが好ましく、RP3とRP9との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
【0089】
式Qで表される化合物においては、RQ3が式Wで表される基であるのが好ましく、RQ3とRQ9との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Rで表される化合物においては、RR2が式Wで表される基であるのが好ましく、RR2とRR7との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
【0090】
式Sで表される化合物においては、RS2が式Wで表される基であるのが好ましく、RS2とRS5との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
式Tで表される化合物においては、RT2が式Wで表される基であるのが好ましく、RT2とRT5との両方が式Wで表される基であるのがより好ましい。
【0091】
置換基RC〜RTのうち、式Wで表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましい。
【0092】
以下に、式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される各化合物の具体例を以下に示すが、本発明で用いることができる化合物は、これらの具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0093】
式Cで表される化合物Cの具体例を示す。
【0094】
【化16】
【0095】
式Cで表される化合物は、分子量が3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが更に好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量が上記範囲内にあると、溶媒への溶解性を高めることができる。
一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましい。
【0096】
式Dで表される化合物Dの具体例を示す。
【0097】
【化17】
【0098】
【化18】
【0099】
式Dで表される化合物の分子量は、上限が式Cで表される化合物と同じであるのが、溶媒への溶解性を高めることができ、好ましい。一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は400以上であることが好ましく、450以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。
【0100】
式Eで表される化合物E、式Fで表される化合物F、式Gで表される化合物G及び式Hで表される化合物Hそれぞれの具体例を、順に示す。
【0101】
【化19】
【0102】
【化20】
【0103】
【化21】
【0104】
【化22】
【0105】
【化23】
【0106】
【化24】
【0107】
上記化合物E、化合物F、化合物G及び化合物Hの分子量は、それぞれ、上限が式Cで表される化合物Cと同じであるのが、溶媒への溶解性を高めることができ、好ましい。一方で、薄膜の膜質安定性の観点から、分子量の下限は式Dで表される化合物と同じである。
【0108】
式J及び式Kで表される化合物J及び化合物Kの具体例を示す。
【0109】
【化25】
【0110】
【化26】
【0111】
上記化合物J及び化合物Kの分子量は、それぞれ、上限が式Cで表される化合物Cと同じであるのが、溶媒への溶解性を高めることができ、好ましい。一方で、薄膜の膜質安定性の観点から、分子量の下限は式Dで表される化合物と同じである。
【0112】
式Lで表される化合物L、式Mで表される化合物M、式Nで表される化合物N、式Pで表される化合物P及び式Qで表される化合物Qそれぞれの具体例を、順に示す。
【0113】
【化27】
【0114】
【化28】
【0115】
【化29】
【0116】
【化30】
【0117】
【化31】
【0118】
上記化合物L、化合物M、化合物N、化合物P及び化合物Qの分子量は、それぞれ、上限が式Cで表される化合物Cと同じであるのが、溶媒への溶解性を高めることができ、好ましい。一方で、薄膜の膜質安定性の観点から、分子量の下限は式Dで表される化合物と同じである。
【0119】
式Rで表される化合物R、式Sで表される化合物S及び式Tで表される化合物Tそれぞれの具体例を、順に示す。
【0120】
【化32】
【0121】
【化33】
【0122】
【化34】
【0123】
上記化合物R、化合物S及び化合物Tの分子量は、それぞれ、上限が式Cで表される化合物Cと同じであるのが、溶媒への溶解性を高めることができ、好ましい。一方で、薄膜の膜質安定性の観点から、分子量の下限は式Dで表される化合物と同じである。
【0124】
有機ポリマー及びその誘導体としては、例えば、ポリピロール及びその置換体、ポリジケトピロール及びその置換体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリイソチアナフテン等のイソチアナフテン、ポリチエニレンビニレン等のチエニレンビニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアズレン、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリセレノフェン、ポリフラン、ポリ(p−フェニレン)、ポリインドール、ポリピリダジン、ポリテルロフェン、ポリナフタレン、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィド等のポリマー及び縮合多環芳香族化合物の重合体等を挙げることができる。
ポリチオフェン及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、ポリチオフェンにヘキシル基を導入したポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
また、これらのポリマーと同じ繰返し単位を有するオリゴマー(例えば、オリゴチオフェン)を挙げることもできる。
【0125】
また、有機ポリマーとして、上記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される化合物が繰り返し構造を有する高分子化合物が挙げられる。
このような高分子化合物としては、下記式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される化合物が少なくとも1つ以上のアリーレン基、ヘテロアリーレン基(チオフェン、ビチオフェン等)を介して繰り返し構造を示すπ共役ポリマーや、式C〜式H、式J〜式N及び式P〜式Tで表される化合物が高分子主鎖に側鎖を介して結合したペンダント型ポリマーが挙げられる。高分子主鎖としては、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリシロキサン等が好ましく、側鎖としては、アルキレン基、ポリエチレンオキシド基等が好ましい。ペンダント型ポリマーの場合、高分子主鎖は置換基RC〜RTの少なくとも1つが重合性基由来の基を有し、これが重合してなるものであってもよい。
【0126】
これらの有機ポリマーは、重量平均分子量が3万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、10万以上であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であることにより、分子間相互作用を高めることができ、高い移動度が得られる。
なお、有機ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)法にて測定される。
【0127】
<第二の層>
第二の層は、液晶性化合物を含有する層である。
第二の層の厚さは、20〜500nmであることが好ましく、25〜450nmであることがより好ましく、30〜400nmであることが更に好ましい。
本発明で使用される液晶性化合物は加熱により液晶相転移するものであれば特に限定されない。また、薄膜作製後の耐熱性及び機械耐性の観点から、第二の層に含まれる液晶性化合物は重合されていることが好ましい。すなわち、本発明における第二の層に用いられる液晶性化合物としては、重合性基を有する液晶性化合物が好ましい。重合性基に特に制限はなく、例えば、エチレン性不飽和基(すなわち、臭素価やヨウ素価の測定で消費されるエチレン性不飽和結合(炭素−炭素二重結合)を有する基を意味する。ベンゼンのような芳香族性を示す不飽和基ではない。)、エポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基等を広く採用することができる。エチレン性不飽和基は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、ビニル基、スチリル基等として導入されていることが好ましい。重合性の液晶性化合物が有する重合性基の数に特に制限はない。例えば、1分子中の重合性基の数が1〜6の液晶性化合物を用いることができる。重合性の液晶性化合物1分子中の重合性基の数は1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
本発明に用いる重合性の液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物(円盤状液晶性化合物とも称する。)でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
【0128】
〔ディスコティック液晶性化合物〕
本発明において、重合性のディスコティック液晶性化合物を用いることができる。重合性のディスコティック液晶性化合物としては、従来公知のディスコティック液晶性化合物に重合性基を導入した形態の化合物を用いることができる。ディスコティック液晶性化合物は様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、例えば、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0129】
本発明において好ましく用いることのできる、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物の具体例としては、特開2009−97002号公報の段落0038〜0069に記載の化合物(1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物)のうち、Xが重合性基を有する基である形態が挙げられる。また、特開2007−108732号公報の段落0062〜0067に記載の化合物のうち、置換基として重合性基を有する形態のものも、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物として本発明に好適に用いることができる。
【0130】
〔棒状液晶性化合物〕
本発明において、重合性の棒状液晶性化合物を用いることもできる。重合性の棒状液晶性化合物としては、従来公知の棒状液晶性化合物に重合性基を導入した化合物を用いることができる。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。重合性の棒状液晶性化合物において、1分子中の重合性基の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性の棒状液晶性化合物としては、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0131】
<第一の層と第二の層の関係>
第一の層と第二の層の厚さの合計に対する、第一の層の厚さの割合は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましく、40%以下であることが特に好ましく、30%以下であることが最も好ましい。
第一の層と第二の層の厚さの合計に対する、第一の層の厚さの割合の下限は、特に制限されないが、5%以上であることが好ましい。
各層の厚さは、本発明の有機電界効果トランジスタにおける第一の層及び第二の層が形成された基材を、平面と垂直方向に裁断し、断面を透過型電子顕微鏡により観察することにより、測定することが可能である。
また、第一の層と第二の層はラメラ相分離によって形成されていることが好ましい。ラメラ相分離とは、限定的ではないが、構成成分の異なる層が自発的に分離した状態を指す。ラメラ相分離によって形成する方法としては、後述する本発明の有機半導体結晶の製造方法における塗布工程、加熱工程及び相分離工程をこの順で行う方法が挙げられる。
第一の層と第二の層が相分離していることは、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)により膜厚方向の素材分布を解析することにより、確認することが可能である。
【0132】
(有機半導体結晶の製造方法)
本発明の有機半導体結晶の製造方法は、有機半導体化合物と、液晶性化合物と、有機溶媒とを含む組成物を基材上に塗布して有機膜を作製する塗布工程、上記有機膜を等方相まで加熱する加熱工程、及び、上記有機膜を冷却し、有機半導体化合物層と液晶性化合物層を基材面に対して平行にラメラ相分離させて有機半導体化合物を結晶化させる相分離工程、をこの順で含むことを特徴とする。
【0133】
<塗布工程>
本発明の有機半導体結晶の製造方法は、有機半導体化合物と、液晶性化合物と、有機溶媒とを含む組成物(以下、「特定組成物」ともいう。)を基材上に塗布して有機膜を作製する塗布工程を含む。
有機半導体化合物及び液晶性化合物は、上記の第一の層及び第二の層における有機半導体化合物及び液晶性化合物と同義であり、好ましい態様も同様である。
特定組成物の全質量に対する有機半導体化合物の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることが更に好ましい。
特定組成物の全質量に対する液晶性化合物の含有量は、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜15質量%であることがより好ましく、0.1〜10質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、塗布性に優れ、容易に有機半導体膜を形成することができる。
【0134】
〔有機溶媒〕
本発明に用いられる特定組成物は、有機溶媒を含有する。
有機溶媒としては、公知の有機溶媒を用いることができる。
具体的には、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、デカリン、1−メチルナフタレンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド系溶媒、ジメチルスルフォキサイドなどのスルホキシド系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒及び/又はエーテル系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジクロロベンゼン又はアニソールがより好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0135】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられる特定組成物が、重合性基を有する液晶性化合物を含有する場合、特定組成物は重合開始剤を更に含有することが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、特定組成物に含まれる液晶性化合物が有する重合性基がラジカル重合性基である場合、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤は、活性光線により、エチレン性不飽和基を有する化合物等の重合性化合物の重合を開始、促進可能な化合物である。
「活性光線」とは、その照射により成分Dより開始種を発生させることができるエネルギーを付与することができる活性エネルギー線であれば、特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線などを包含するものである。これらの中でも、紫外線を少なくとも含む光が好ましい。
【0136】
光重合開始剤としては、a:芳香族ケトン類、b:アシルホスフィン化合物、c:芳香族オニウム塩化合物、d:有機過酸化物、e:チオ化合物、f:ヘキサアリールビイミダゾール化合物、g:ケトオキシムエステル化合物、h:ボレート化合物、i:アジニウム化合物、j:メタロセン化合物、k:活性エステル化合物、l:炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びm:アルキルアミン化合物等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、上記a:〜m:の化合物を単独若しくは組み合わせて使用してもよい。本発明におけるラジカル重合開始剤は単独若しくは2種以上の併用によって好適に用いられる。
本発明において、特定組成物は、a:芳香族ケトン類を含有することが好ましく、アルキルフェノン化合物を含有することがより好ましい。アルキルフェノン化合物としては、例えば、市販品として、IRGACURE184(BASFジャパン社製)、IRGACURE369(BASFジャパン社製)、IRGACURE379(BASFジャパン社製)、IRGACURE907(BASFジャパン社製)、IRGACURE2959(BASFジャパン社製)などが好適に挙げられる。
【0137】
硬化性の観点から、重合開始剤の含有量は、液晶性化合物の全質量に対し、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が更に好ましい。
【0138】
〔基材〕
基材の種類は特に制限されず、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、セラミック基板などが挙げられる。中でも、各デバイスへの適用性及びコストの観点から、ガラス基板又はプラスチック基板であることが好ましい。
プラスチック基板の材料としては、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)又は熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフォンなど)が挙げられる。
セラミック基板の材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイドなどが挙げられる。
ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダガラス、カリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、アルミケイ酸ガラス、鉛ガラスなどが挙げられる。
また、基材の表面にポリマー層を形成し、ラビング処理を行うことも好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。特に本発明では「液晶便覧」(発行所:丸善株式会社、2000年10月30日発行、p226〜229)に記載されている方法によりラビング処理を施すことが好ましい。上記ラビング処理により、液晶性化合物が配向しやすくなる。
基材の表面に形成されるポリマー層に用いられるポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)が好ましい。
また、上記ポリマー層はポリマー溶液を基材表面に塗布することにより形成することが好ましい。ポリマー溶液の塗布方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、ドロップキャスト法などが挙げられる。
【0139】
〔組成物の塗布方法〕
基材上に組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法、ドロップキャスト法などが挙げられ、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、スピンコート法、ドロップキャスト法が好ましい。
【0140】
<加熱工程>
本発明の有機半導体結晶の製造方法は、上記有機膜を等方相まで加熱する加熱工程を含む。上記加熱工程により、有機膜中の有機半導体と液晶性化合物が相溶する。
また、加熱工程において、有機膜中の有機溶媒を除去することが好ましい。
加熱温度としては、使用した液晶性化合物が等方相となる温度であれば特に限定されないが、100〜300℃が好ましく、120〜280℃がより好ましく、130〜260℃が更に好ましい。
加熱時間としては、特に制限はなく、有機膜全体が等方相となるまで加熱すればよいが、30秒〜10分程度が好ましい。
加熱方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができ、ホットプレート、オーブン、赤外線ヒーターなどを用いることができる。
【0141】
<相分離工程>
有機膜を冷却し、有機半導体化合物層と液晶性化合物層を基材面に対して平行にラメラ相分離させて有機半導体化合物を結晶化させる相分離工程を含むことが好ましい。
相分離工程においては、有機膜は加熱工程よりも低い温度(以下、「熟成温度」ともいう。)で保持され、熟成される。
熟成温度としては、使用した液晶性化合物が液晶状態となる温度であれば特に限定されないが、70〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。
熟成時間としては、特に制限はなく、有機膜中の有機半導体化合物と液晶性化合物がラメラ相分離するまで熟成するのがよいが、30秒〜10分間が好ましい。
加熱方法としては、加熱工程における方法と同様の方法を用いることができる。
【0142】
<重合工程>
本発明の有機半導体結晶の製造方法は、液晶性化合物層の耐熱性の観点から、液晶性化合物層を重合によって固定化する重合工程を含むことが好ましい。
重合工程は、相分離工程の後に行われることが好ましい。
本発明の有機半導体結晶の製造方法が、重合工程を含む場合、相分離工程において形成された液晶性化合物層は、重合性基を有する液晶性化合物、及び、重合開始剤を含むことが好ましく、ラジカル重合性基を有する液晶性化合物、及び、光ラジカル重合開始剤を含むことがより好ましい。硬化性の観点から、上記ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
液晶性化合物層がラジカル重合性基を有する液晶性化合物、及び、光ラジカル重合開始剤を含む場合、相分離工程における熟成後に、有機膜をUV照射温度まで冷却し、活性光線の照射を行うことにより、液晶性化合物層を重合によって固定化することができる。
【0143】
UV照射温度としては、特に限定されないが、30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましい。
活性光線の照射に用いられる照射光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、LED光源、エキシマレーザー発生装置などを用いることができ、g線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
照射装置としては、ミラープロジェクションアライナー、ステッパー、スキャナー、プロキシミティー、コンタクト、マイクロレンズアレイ、レーザー照射など各種方式の照射機を用いることができる。
照射量としては、100〜3,000mJ/cm2が好ましく、100〜1,000mJ/cm2が特に好ましい。
【0144】
(有機半導体素子、有機電界効果トランジスタ及びそれらの製造方法)
本発明の有機半導体素子は、有機半導体結晶の製造方法により製造された有機半導体結晶を含む有機半導体層と、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極に対してソース電極及びドレイン電極を絶縁するゲート絶縁層と、これらを支持する基板とを有することを特徴とする。
本発明の有機半導体素子は、有機電界効果トランジスタであることが好ましい。
上記ゲート絶縁層は膜状であってもよい。膜状のゲート絶縁層をゲート絶縁膜ともいう。
本発明の有機薄膜トランジスタの一態様について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ(TFT))の一態様の断面模式図である。
図1において、有機薄膜トランジスタ100は、基板10と、基板10上に配置された液晶化合物層52及び有機半導体膜50と、有機半導体に接するソース電極40及びドレイン電極42と、ソース電極40及びドレイン電極42上に形成されたゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30上に形成されたゲート電極20と、各部材を覆う封止層60とを備える。有機薄膜トランジスタ100は、トップゲート−トップコンタクト型の有機電界効果トランジスタである。
なお、図1においては、有機半導体膜50が本発明の有機電界効果トランジスタの第一の層に、液晶化合物層52が有機電界効果トランジスタの第二の層に、それぞれ対応している。また、有機半導体膜50及び液晶化合物層52は、特定組成物をラメラ相分離させることにより形成されることが好ましい。
以下、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び封止層並びにそれぞれの形成方法について詳述する。
【0145】
〔基板〕
基板は、有機半導体層及び液晶性化合物層や、後述するゲート電極、ソース電極、ドレイン電極などを支持する役割を果たす。
基板は、上記塗布工程において、基材として説明した物と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0146】
〔ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極〕
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の材料としては、例えば、金(Au)、銀、アルミニウム(Al)、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、タンタル、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;InO2、SnO2、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性の酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体;フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料などが挙げられる。中でも、金属であることが好ましく、銀又はアルミニウムであることがより好ましい。
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の厚みは特に制限されないが、20〜200nmであることが好ましい。
【0147】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する方法は特に制限されないが、例えば、有機半導体層又は絶縁層上に、電極材料を真空蒸着又はスパッタする方法、電極形成用組成物を塗布又は印刷する方法などが挙げられる。また、電極をパターニングする場合、パターニングする方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法;インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法;マスク蒸着法などが挙げられる。
【0148】
〔ゲート絶縁膜〕
ゲート絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリシルセスキオキサン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー;二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物;窒化珪素等の窒化物などが挙げられる。これらの材料のうち、有機半導体膜との相性から、ポリマーであることが好ましい。
ゲート絶縁膜の材料としてポリマーを用いる場合、架橋剤(例えば、メラミン)を併用することが好ましい。架橋剤を併用することで、ポリマーが架橋されて、形成されるゲート絶縁膜の耐久性が向上する。
ゲート絶縁膜の膜厚は特に制限されないが、100〜1,000nmであることが好ましい。
【0149】
ゲート絶縁膜を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ソース電極、ドレイン電極が形成された有機半導体層上に、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法、ゲート絶縁膜材料を蒸着又はスパッタする方法などが挙げられる。ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法(バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法)を使用することができる。
ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布してゲート絶縁膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0150】
〔封止層〕
本発明の有機半導体素子は、耐久性の観点から、最外層に封止層を備えることが好ましい。封止層には公知の封止剤を用いることができる。
封止層の厚さは特に制限されないが、0.2〜10μmであることが好ましい。
【0151】
封止層を形成する方法は特に制限されないが、例えば、ゲート電極とゲート絶縁膜とソース電極とドレイン電極と有機半導体膜とが形成された基板上に、封止層形成用組成物を塗布する方法などが挙げられる。封止層形成用組成物を塗布する方法の具体例は、ゲート絶縁膜形成用組成物を塗布する方法と同じである。封止層形成用組成物を塗布して有機半導体膜を形成する場合、溶媒除去、架橋などを目的として、塗布後に加熱(ベーク)してもよい。
【0152】
また、図2は、本発明の有機半導体素子(有機薄膜トランジスタ)の別の一態様の断面模式図である。
図2において、有機薄膜トランジスタ200は、基板10と、基板10上に配置されたゲート電極20と、ゲート電極20を覆うゲート絶縁膜30と、ゲート絶縁膜30上に配置された有機半導体膜50と、有機半導体膜50上に配置されたソース電極40及びドレイン電極42と、各部材を覆う封止層60を備える。なお、図示は省略したが、有機半導体膜50と、ゲート絶縁膜30の間には、有機半導体膜50と隣接する形で液晶性化合物層が存在している。ここで、ソース電極40及びドレイン電極42は、上述した本発明のインクを用いて形成されたものである。有機薄膜トランジスタ200は、ボトムゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタである。
基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び封止層については、上述のとおりである。
上記では図1及び図2において、トップゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、ボトムゲート−トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの態様について詳述したが、本発明の有機半導体素子は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ、及び、ボトムゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタにも好適に使用できる。
なお、上述した有機薄膜トランジスタは、電子ペーパー、ディスプレイデバイスなどに好適に使用できる。
【実施例】
【0153】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0154】
各実施例及び比較例で使用した成分の詳細は以下の通りである。
<有機半導体化合物>
・OSC−1(下記構造の化合物)
・OSC−2(下記構造の化合物)
・OSC−3(下記構造の化合物)
【0155】
【化35】
【0156】
OCS−1の化合物は、Tetrahedron 66 (2010) 8778〜8784に記載の方法で合成することができる。
OCS−2は、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(東京化成工業(株)製)を用いた。
OSC−3は、C8BTBT(日本化薬(株)製)を用いた。
【0157】
<液晶性化合物>
・LCC−A(下記構造の棒状液晶化合物)特開2001−328973号公報に記載の方法で合成した。
・LCC−B(下記構造のディスコティック液晶化合物)特開2009−97002号公報に記載の方法で合成した。
【0158】
【化36】
【0159】
<重合開始剤>
・IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、分子量297)
<有機溶媒>
・トルエン(和光純薬工業(株)製)
【0160】
(有機半導体を含む塗布液の調製)
下記表1に記載の各成分を、表1に記載の割合で混合する事により、有機半導体を含む塗布液T1〜T22を調製した。
重合開始剤は、液晶性化合物の全質量に対して3質量%の割合で添加した。なお、液晶性化合物及び重合性開始剤の欄に「なし」と記載されている塗布液は、該当する成分を含有していないことを示している。
【0161】
【表1】
【0162】
(塗布基板の作製)
日産化学工業(株)製ポリイミド(SE−130)の2質量%溶液(N−メチルピロリドン)をガラス基板上にスピンコート(2,000rpm/20sec.)し、110℃にて5分間前乾燥した後に、240℃60分の熱処理によりイミド化処理を行い塗布基板B1を得た。
上記塗布基板B1のポリイミド膜表面を、コットン布によりラビング処理し塗布基板B2を得た。
(結晶評価用試料の作製)
表1に記載の塗布液を表2に記載の塗布基板にスピンコート(500rpm/2分間)して塗布膜を作製した。その後、表2に記載の熱処理温度で1分間保持した後、熟成温度まで冷却して2分間の結晶熟成を行った。なお、表2中の熟成温度の欄に「なし」と記載されている例については、熟成を行わなかった。更に、UV照射温度まで冷却した後に超高圧水銀ランプの365nm付近の波長の紫外線を540mJ/cm2照射することで重合固定化を行った。なお、表2中のUV照射温度の欄に「なし」と記載されている例については、UV照射を行わなかった。
【0163】
(有機半導体層及び液晶層の厚さ)
各実施例及び比較例について、作製した結晶評価用試料を垂直方向に裁断し、断面を透過型電子顕微鏡により観察することにより、有機半導体層の厚さ及び液晶層の厚さを測定した。結果は表2に記載した。また、有機半導体層と液晶層の厚さの合計に対する、有機半導体層の厚さの割合(%)を、有機半導体層の比率(%)の欄に記載した。
表2中、液晶層の厚さの欄に「−」と記載されている例は、液晶層が観察できなかったことを示している。またその場合、有機半導体層の比率(%)の欄にも「−」と記載した。
【0164】
(結晶サイズの観察)
(株)ニコン製E600 POL偏光顕微鏡を使用し、対物10倍、対眼10倍のレンズで試料を観察し、顕微鏡用メジャーを用いて結晶サイズを測定した。視野面積は直径2mm円であった。評価基準を以下に示す。評価が1又は2であれば実用上問題はなく、1が好ましい。なお、各実施例及び比較例において、顕微鏡の視野内における複数の結晶の結晶サイズは、ほぼ同一であった。
1:500μm角を超える
2:100〜500μm角
3:100μm角未満
【0165】
(結晶配向の観察)
上記と同様の顕微鏡下に試料を設置し、クロスニコル下でステージを回転させて消光位に合わせて暗視野になる度合で配向状態を評価した。評価基準を以下に示す。評価が1又は2であれば実用上問題はなく、1が好ましい。
1:視野内全ての結晶の配向が同一方向であった
2:視野内の半分程度の結晶の配向が同一方向であった
3:配向が確認できなかった
【0166】
(トップゲート−トップコンタクト型素子の作製)
結晶評価用試料と同じ方法で作製した有機半導体膜の上面に金(厚さ50nm)を真空蒸着させ、チャネル長50μm、チャネル幅200μmのソース・ドレイン両電極を作製した。この上に絶縁膜としてサイトップ(旭硝子(株)製)を厚さ200nmでスピンコートし、金(厚さ50nm)を真空蒸着させてゲート電極を作製した。
【0167】
(移動度の測定)
トップゲート−トップコンタクト型素子について、セミオートプローバー(ベクターセミコン製、AX−2000)を接続した半導体パラメーターアナライザー(Agilent製、4156C)を用いて常圧・窒素雰囲気下で、キャリア移動度を評価した。
各素子のソース電極−ドレイン電極間に−80Vの電圧を印加し、ゲート電圧を20V〜−100Vの範囲で変化させ、ドレイン電流Idを表す下記式を用いてキャリア移動度μを算出した。
Id=(w/2L)μCi(Vg−Vth)2
式中、Lはゲート長、wはゲート幅、Ciは絶縁層の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vthは閾値電圧を表す。
評価基準を以下に示す。評価が1又は2であれば実用上問題はなく、1が好ましい。
1:1cm2/Vsを超える
2:0.5cm2/Vs〜1cm2/Vs
3:0.5cm2/Vs未満
【0168】
(実施例1)
塗布液T1と塗布基板B2を使用して、加熱温度150℃、熟成温度90℃及びUV照射温度60℃にて試料S1を作製した。得られた有機半導体結晶の偏光顕微鏡像を図3に示した。結晶サイズは約2mm角、その配向は視野内全領域において一様であった。また、TOF−SIMS(アルバック・ファイ(株)製、TRIFT V nano TOF)により膜厚方向の素材分布を確認したところ、有機半導体層及び液晶層が相分離していることが確認できた。素材分布を図5に示した。有機半導体層及び液晶層の膜厚はそれぞれ30nmと360nmであり、有機半導体層の比率は7.7%であった。試料S1のトップゲート−トップコンタクト型素子の移動度は3cm2/Vsであった。その他、評価結果は表2に記載した。
【0169】
(実施例2〜19)
塗布液T2〜T19を使用して、塗布基板、加熱温度、熟成温度、UV照射温度を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。また、TOF−SIMSにより膜厚方向の素材分布を確認したところ、全ての実施例において有機半導体層及び液晶層が相分離していることが確認できた。評価結果は表2に記載した。
【0170】
(比較例1)
塗布液T20と塗布基板B1を使用して、実施例1における結晶熟成の代わりに、60℃にて1時間溶媒乾燥を行って試料S20を作製した。結晶サイズは100μm角以下、その配向はほぼ無配向であった。得られた有機半導体結晶の偏光顕微鏡像を図4に示した。有機半導体層の膜厚は50nmであった。試料S20のトップゲート−トップコンタクト型素子の移動度は0.07cm2/Vsであった。その他、評価結果は表2に記載した。
【0171】
(比較例2〜3)
塗布液としてT21又はT22を用いた以外は、比較例1と同様に実施した。評価結果は表2に記載した。
【0172】
【表2】
【符号の説明】
【0173】
10:基板、20:ゲート電極、30:ゲート絶縁膜、40:ソース電極、42:ドレイン電極、50:有機半導体膜、52:液晶化合物層、60:封止層、100,200:有機薄膜トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5