特許第6243087号(P6243087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許6243087撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム
<>
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000003
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000004
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000005
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000006
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000007
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000008
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000009
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000010
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000011
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000012
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000013
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000014
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000015
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000016
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000017
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000018
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000019
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000020
  • 特許6243087-撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243087
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20171127BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20171127BHJP
   H04N 9/07 20060101ALI20171127BHJP
   G03B 11/00 20060101ALI20171127BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20171127BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04N5/232 290
   H04N5/232 450
   G06T5/00 710
   H04N9/07 A
   G03B11/00
   G03B15/00 S
   G03B17/02
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-514100(P2017-514100)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2016062170
(87)【国際公開番号】WO2016171088
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-88229(P2015-88229)
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】椚瀬 高志
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 洋介
【審査官】 高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−56674(JP,A)
【文献】 特開2009−10675(JP,A)
【文献】 特開平11−272849(JP,A)
【文献】 特表2014−507856(JP,A)
【文献】 特開2006−333132(JP,A)
【文献】 特開2013−172213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
G03B 11/00
G03B 15/00
G03B 17/02
G06T 5/00
H04N 9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定位置に設置された撮像装置において、
赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、
前記赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の可視光画像であってカラー画像である前記可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、前記赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である前記近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、
前記第1の撮像モードと前記第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、
前記撮像部が前記第2の撮像モードで動作している場合に、前記撮像部が取得した前記第2の画像データ内で、当該第2の画像データの前に前記撮像部が取得した前記第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出部と、
前記変化領域検出部の検出結果に基づき、前記第2の画像データ内の前記変化領域に対応する変化領域画像データに、前記撮像部により前記第2の撮像モードの直前の前記第1の撮像モードで取得された前記第1の画像データに基づき生成され且つ前記第2の画像データ内の前記変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成部と、
を備え、
前記合成画像データ生成部は、前記第1の画像データ内の前記背景領域に対応する領域から抽出した色情報と、前記第2の画像データの前記背景領域における輝度情報とに基づき、前記背景画像データを生成する撮像装置。
【請求項2】
前記合成画像データ生成部は、前記第1の画像データ内の前記背景領域に対応する領域に含まれる画像データそのものを用いて前記背景画像データを生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の撮像モードにおいて前記撮像部が異なるタイミングで取得した複数の前記第1の画像データの中の非変化領域を検出する非変化領域検出部を備え
前記合成画像データ生成部は、前記非変化領域検出部の検出結果に基づき、前記第1の画像データ内の前記非変化領域に対応する画像データから、前記背景画像データを生成する請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
少なくとも前記変化領域画像データに対して、鮮鋭化処理を行う鮮鋭化処理部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
少なくとも前記変化領域画像データに対して、倍率色収差補正処理を行う倍率色収差補正処理部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
少なくとも前記変化領域画像データに対して、近赤外光に対する前記光学系の第1の光学特性に基づく点像復元処理を行う第1の点像復元処理部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第1の光学特性は、前記近赤外光に対する前記光学系の第1の点拡がり関数であり、
前記第1の点像復元処理部が前記変化領域画像データに対して行う前記点像復元処理は、当該変化領域画像データの振幅成分と、非点対称な前記第1の点拡がり関数の形状に起因する位相成分とを復元する請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の画像データに対して、可視光に対する前記光学系の第2の光学特性に基づく点像復元処理を行う第2の点像復元処理部を備える請求項6または7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第2の光学特性は、赤色及び緑色及び青色の前記可視光に対する前記光学系の色毎の第2の点拡がり関数であり、
前記第2の点像復元処理部が前記第1の画像データに対して行う前記点像復元処理は、前記色毎の第2の点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた前記第1の画像データの位相成分の復元処理を含む請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、前記赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の可視光画像であってカラー画像である前記可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、前記赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である前記近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、前記第1の撮像モードと前記第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、を備えており、固定位置に設置されている撮像装置の画像処理方法において、
前記撮像部が前記第2の撮像モードで動作している場合に、前記撮像部が取得した前記第2の画像データ内で、当該第2の画像データの前に前記撮像部が取得した前記第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出ステップと、
前記変化領域検出ステップの検出結果に基づき、前記第2の画像データ内の前記変化領域に対応する変化領域画像データに、前記撮像部により前記第2の撮像モードの直前の前記第1の撮像モードで取得された前記第1の画像データに基づき生成され且つ前記第2の画像データ内の前記変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成ステップと、
前記第1の画像データ内の前記背景領域に対応する領域から抽出した色情報と、前記第2の画像データの前記背景領域における輝度情報とに基づき、前記背景画像データを生成するステップと、
を有する撮像装置の画像処理方法。
【請求項11】
赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、前記赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の可視光画像であってカラー画像である前記可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、前記赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された前記光学系を通して被写体を撮像し、前記被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である前記近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、前記第1の撮像モードと前記第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、を備えており、固定位置に設置されている撮像装置のコンピュータを、
前記撮像部が前記第2の撮像モードで動作している場合に、前記撮像部が取得した前記第2の画像データ内で、当該第2の画像データの前に前記撮像部が取得した前記第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出手段、
前記変化領域検出手段の検出結果に基づき、前記第2の画像データ内の前記変化領域に対応する変化領域画像データに、前記撮像部により前記第2の撮像モードの直前の前記第1の撮像モードで取得された前記第1の画像データに基づき生成され且つ前記第2の画像データ内の前記変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成手段であって、前記第1の画像データ内の前記背景領域に対応する領域から抽出した色情報と、前記第2の画像データの前記背景領域における輝度情報とに基づき、前記背景画像データを生成する合成画像データ生成手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的有形媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定位置に設置され、昼夜を問わずに被写体の撮像を行う撮像装置、及びこの撮像装置の画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設及び商業施設及び住居などにおいて固定位置(定点)に設置され、昼夜を問わずに被写体の撮像を行う監視カメラ(撮像装置)が広く用いられている。このような昼夜兼用(デイナイト機能ともいう)の監視カメラでは、昼間(日中)は被写体の可視光画像を撮像し、夜間は被写体の近赤外光画像を撮像するのが通常である。
【0003】
特許文献1には、被写体の可視光画像を撮像する可視光カメラと、被写体の熱画像を撮像する赤外線カメラとを備えるハイブリットカメラが記載されている。この特許文献1のハイブリットカメラを上述の監視カメラに適用して、2種類の撮像部を監視カメラに設けることにより、昼間の可視光画像の撮像と夜間の近赤外光画像の撮像とが可能になる。
【0004】
また、特許文献1のハイブリットカメラは、可視光画像の画像データに基づき被写体の背景領域に対応する背景画像データを生成すると共に、熱画像の画像データに基づき被写体内の動体に対応する動体画像データを生成して、背景画像データに動体画像データを合成することで合成画像データを生成する。このように、可視光画像に基づく背景画像に、熱画像に基づく動体画像を重ね合わせることにより、見易い画像を提供することができる。
【0005】
特許文献2には、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された光学系を通して被写体の可視光画像を撮像し、且つ赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された光学系を通して被写体の近赤外光画像を撮像する撮像装置が記載されている。この特許文献2の撮像装置を上述の昼夜兼用の監視カメラに適用することにより、昼間の可視光画像の撮像と夜間の近赤外光画像の撮像とが可能になる。
【0006】
この際に、赤外線カットフィルタの有無によって、光路長が変化するために焦点距離も大きく変化して画像ボケが生じるおそれがある。そこで、特許文献2に記載の撮像装置では、前述の撮像光路に位相変調素子を設けることにより、画像ボケの発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−010675号公報
【特許文献2】特開2011−128238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、監視カメラの夜間の撮像で得られる近赤外光画像は、モノクロ画像(白黒画像)であるため、昼間の撮像で得られる可視光画像と比較して見難くなるという問題が生じる。このため、前述の特許文献1に記載の技術を監視カメラに適用して、可視光画像データから生成した背景画像データに、近赤外光画像データから生成した動体画像データを合成して合成画像データを生成することで、近赤外光画像を見易くすることは可能である。しかしながら、この場合には可視光画像の撮像と近赤外光画像の撮像とを同時に行う必要がある。すなわち、監視カメラに、可視光画像の撮像用及び近赤外光画像の撮像用の2種類の撮像部を設ける必要がある。その結果、監視カメラの大型化及び部品点数が増加するという問題が生じる。
【0009】
また、前述の特許文献1に記載の技術を監視カメラに適用する場合には、低照度下の夜間における可視光画像の撮像を高感度カメラで行う必要があるが、この場合には可視光画像中のノイズが増加するという問題が生じる。
【0010】
特許文献2には、撮像光路に位相変調素子を設けて赤外線カットフィルタの有無に起因する画像ボケの発生を抑えることが記載されているものの、特許文献1のように合成画像データを生成することについての記載又は示唆はなされていない。このため、特許文献2の撮像装置では、夜間の撮像により得られるモノクロ画像の近赤外光画像が、昼間の撮像により得られる可視光画像と比較して見難いという問題は解決されていない。さらに、特許文献2の撮像装置では、撮像光路に位相変調素子を設ける必要があるため、監視カメラの大型化及び部品点数が増加するという問題が生じる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、大型化及び部品点数の増加を抑えつつ、近赤外光画像を見易くすることができる撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するための撮像装置は、固定位置に設置された撮像装置において、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の可視光画像であってカラー画像である可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、第1の撮像モードと第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、撮像部が第2の撮像モードで動作している場合に、撮像部が取得した第2の画像データ内で、第2の画像データの前に撮像部が取得した第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出部と、変化領域検出部の検出結果に基づき、第2の画像データ内の変化領域に対応する変化領域画像データに、撮像部により第2の撮像モードの直前の第1の撮像モードで取得された第1の画像データに基づき生成され且つ第2の画像データ内の変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成部と、を備える。
【0013】
本発明によれば、第1の撮像モードで取得された可視光画像(カラー画像)を示す第1の画像データに基づき、第2の撮像モードで取得された近赤外光画像(モノクロ画像)を含む第2の画像データの背景領域をカラー表示することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、合成画像データ生成部は、第1の画像データ内の背景領域に対応する領域から抽出した色情報と、第2の画像データの背景領域における輝度情報とに基づき、背景画像データを生成する。これにより、輝度情報に基づき実際の明暗を再現することができ、現実に近い画像(合成画像データ)が得られる。
【0015】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、合成画像データ生成部は、第1の画像データ内の背景領域に対応する領域に含まれる画像データそのものを用いて背景画像データを生成する。背景画像データとして可視光画像の第1の画像データをそのまま用いるので、背景画像データは前述の色収差(倍率色収差)の影響を受けることが防止される。また、背景画像データの生成に複雑な画像処理などが不要でシステムの負荷が少なくなる。
【0016】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、第1の撮像モードにおいて撮像部が異なるタイミングで取得した複数の第1の画像データの中の非変化領域を検出する非変化領域検出部を備え合成画像データ生成部は、非変化領域検出部の検出結果に基づき、第1の画像データ内の非変化領域に対応する画像データから、背景画像データを生成する。これにより、背景画像データに基づく画像内から動体を除くことができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、少なくとも変化領域画像データに対して、鮮鋭化処理を行う鮮鋭化処理部を備える。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、少なくとも変化領域画像データに対して、倍率色収差補正処理を行う倍率色収差補正処理部を備える。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、少なくとも変化領域画像データに対して、近赤外光に対する光学系の第1の光学特性に基づく点像復元処理を行う第1の点像復元処理部を備える。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、第1の光学特性は、近赤外光に対する光学系の第1の点拡がり関数であり、第1の点像復元処理部が変化領域画像データに対して行う点像復元処理は、変化領域画像データの振幅成分と、非点対称な第1の点拡がり関数の形状に起因する位相成分とを復元する。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、第1の画像データに対して、可視光に対する光学系の第2の光学特性に基づく点像復元処理を行う。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る撮像装置において、第2の光学特性は、赤色及び緑色及び青色の可視光に対する光学系の色毎の第2の点拡がり関数であり、第2の点像復元処理部が第1の画像データに対して行う点像復元処理は、色毎の第2の点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた第1の画像データの位相成分の復元処理を含む。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0023】
本発明の目的を達成するための撮像装置の画像処理方法は、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の可視光画像であってカラー画像である可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、第1の撮像モードと第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、を備えており、固定位置に設置されている撮像装置の画像処理方法において、撮像部が第2の撮像モードで動作している場合に、撮像部が取得した第2の画像データ内で、第2の画像データの前に撮像部が取得した第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出ステップと、変化領域検出ステップの検出結果に基づき、第2の画像データ内の変化領域に対応する変化領域画像データに、撮像部により第2の撮像モードの直前の第1の撮像モードで取得された第1の画像データに基づき生成され且つ第2の画像データ内の変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成ステップと、を有する。
【0024】
本発明の目的を達成するためのプログラムは、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入され、又は撮像光路から退避可能な光学系と、赤外線カットフィルタが撮像光路に挿入された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の可視光画像であってカラー画像である可視光画像を示す第1の画像データを取得する第1の撮像モードと、赤外線カットフィルタが撮像光路から退避された光学系を通して被写体を撮像し、被写体の近赤外光画像であってモノクロ画像である近赤外光画像を含む第2の画像データを取得する第2の撮像モードとを有する撮像部と、第1の撮像モードと第2の撮像モードとを交互に切り替える撮像モード切替部と、を備えており、固定位置に設置されている撮像装置のコンピュータを、撮像部が第2の撮像モードで動作している場合に、撮像部が取得した第2の画像データ内で、第2の画像データの前に撮像部が取得した第2の画像データと比較して変化がある変化領域を検出する変化領域検出手段、変化領域検出手段の検出結果に基づき、第2の画像データ内の変化領域に対応する変化領域画像データに、撮像部により第2の撮像モードの直前の第1の撮像モードで取得された第1の画像データに基づき生成され且つ第2の画像データ内の変化領域とは異なる背景領域に対応するカラー画像の背景画像データを合成した合成画像データを生成する合成画像データ生成手段、として機能させる。このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的有形媒体(a non-transitory computer-readable tangible medium)も本発明の態様に含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の撮像装置及び撮像装置の画像処理方法及びプログラムは、大型化及び部品点数の増加を抑えつつ、第2の撮像モード時の撮像により得られる近赤外光画像を見易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】昼夜兼用で用いられる監視カメラの機能構成例を示すブロック図であり、昼間(日中)に撮像を行っている状態を示すものである。
図2】監視カメラの機能構成例を示すブロック図であり、夜間に撮像を行っている状態を示すものである。
図3】カメラ本体コントローラの電気的構成を示すブロック図である。
図4】デバイス制御部による制御(特に撮像モードの切替制御)を説明するための説明図である。
図5】画像処理部の機能ブロック図である。
図6】動体領域検出部の機能ブロック図の一例を示したものである。
図7】動体領域検出部による動体領域の検出処理の流れを説明するための説明である。
図8】選択部による合成画像データの生成処理を説明するための説明図である。
図9】第1の撮像モード時における監視カメラの撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第2の撮像モード時における監視カメラの撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
図11】第2実施形態の監視カメラを構成する画像処理部の機能ブロック図である。
図12】選択部による色情報合成データの生成処理を説明するための説明図である。
図13】第1の撮像モード時における第2実施形態の監視カメラの撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
図14】第2の撮像モード時における第2実施形態の監視カメラの撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
図15】第3実施形態の監視カメラを構成する画像処理部の機能ブロック図である。
図16】第4実施形態の監視カメラを構成する画像処理部の機能ブロック図である。
図17】第1の撮像モード時の点像復元処理部による点像復元処理を説明するための説明図である。
図18】点像復元処理の位相補正と振幅補正を説明するための説明図である。
図19】第2の撮像モード時の点像復元処理部による点像復元処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態の監視カメラの全体構成]
図1は、昼夜兼用で用いられる監視カメラ10の機能構成例を示すブロック図であり、昼間(日中)に撮像を行っている状態を示すものである。図2は、監視カメラ10の機能構成例を示すブロック図であり、夜間に撮像を行っている状態を示すものである。ここで、本明細書でいう「昼間」及び「夜間」は必ずしも特定の時間帯を規定したものではなく、「昼間」及び「夜間」にはそれぞれ払暁や薄暮が含まれることがある。
【0028】
図1及び図2に示すように、本発明の撮像装置に相当する監視カメラ10は、デジタルカメラの一種であり、公共施設及び商業施設及び住居などにおいて固定位置(定点)に設置されている。この監視カメラ10は、昼間は被写体(監視領域)の可視光画像の撮像を行い、夜間は被写体の近赤外光画像の撮像を行うことにより、昼夜を問わず被写体の撮像を行う。また、監視カメラ10は、パーソナルコンピュータ(Personal Computer:PC)等のコンピュータ60に接続されており、被写体の撮像により得られた画像データをコンピュータ60に出力する。
【0029】
ここで、近赤外光画像とは、少なくとも近赤外光の波長帯域に感度をもって被写体を撮像して得られる画像である。この近赤外光の波長帯域は、特に限定されるものではないが700nmから2500nmの範囲にある。また、可視光画像とは、可視光の波長帯域(一般に380nmから780nm)に感度をもって被写体を撮像して得られる画像である。
【0030】
監視カメラ10は、レンズユニット12と、カメラ本体14とを備える。なお、監視カメラ10の外観は、図1及び図2に示した外観に限定されず、例えばレンズユニット12及びカメラ本体14が透明なドームで覆われていてもよい。
【0031】
レンズユニット12は、カメラ本体14の前面に設けられている。レンズユニット12は、近赤外光発光部15と、フォーカスレンズやズームレンズ等を含むレンズ16と、絞り17と、レンズ16及び絞り17を駆動するレンズ駆動部18とを備える。
【0032】
近赤外光発光部15は、監視カメラ10にて夜間の撮像を行う際に、被写体に向けて近赤外光を補助光として発光する。これにより、監視カメラ10により夜間の暗い状態(低照度下)での撮像を行う場合でも鮮明な被写体の近赤外光画像の画像データが得られる。
【0033】
レンズ駆動部18は、レンズユニットコントローラ20と、レンズ16及び絞り17を駆動するアクチュエータ(図示せず)とを含む。レンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14に設けられたレンズユニット入出力部22を介してカメラ本体14と電気的に接続されている。このレンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14から入力される制御信号に基づき前述のアクチュエータによりレンズ16及び絞り17を駆動する。これにより、レンズ16のレンズ移動によるフォーカス制御及びズーム制御と、絞り17の絞り量制御とが行われる。
【0034】
カメラ本体14は、前述のレンズユニット入出力部22の他に、フィルタ駆動部24と、赤外線(IR:infrared)カットフィルタ25と、撮像部26と、照度センサ27と、カメラ本体コントローラ28と、カメラ本体入出力部30と、入出力インタフェース32と、を備える。
【0035】
赤外線カットフィルタ25は、赤外光を遮断するフィルタであり、レンズユニット12のレンズ16及び絞り17と共に本発明の光学系を構成している。この赤外線カットフィルタ25は、フィルタ駆動部24によりレンズユニット12の撮像光路Lに挿入、または撮像光路Lから退避可能である。ここで、撮像光路Lとは、レンズユニット12に入射した光が後述の撮像部26に到達するまでの光路である。なお、本実施形態では、赤外線カットフィルタ25がカメラ本体14内に設けられているが、レンズユニット12内に設けられていてもよい。
【0036】
フィルタ駆動部24は、カメラ本体コントローラ28の制御の下、被写体の可視光画像の撮像時(後述の第1の撮像モード)には赤外線カットフィルタ25を撮像光路Lに挿入し、被写体の近赤外光画像の撮像時(後述の第2の撮像モード)には赤外線カットフィルタ25を撮像光路Lから退避させる。これにより、可視光画像の撮像時に後述の撮像部26に入射する赤外光を遮断することができる。なお、赤外線カットフィルタ25の種類は特に限定されず、例えば、近赤外光を遮断する近赤外光カットフィルタを用いてもよい。
【0037】
撮像部26としては、CCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子と、各種の信号処理回路とを含む。本実施形態の撮像部26の撮像素子の撮像面には、赤色(R:Red)及び緑色(G:Green)及び青色(B:Blue)の3色(3色以上でも可)のカラーフィルタを有するRGB画素がマトリクス状に配列されている。RGB画素は、可視光の波長帯域だけでなく近赤外光の波長帯域の一部(特に近赤外光発光部15が発光する近赤外光の波長帯域)にも感度を有しており、近赤外光画像の撮像時(後述の第2の撮像モード時)には近赤外光画素として機能する。
【0038】
撮像部26は、レンズユニット12を通して被写体を撮像して被写体の画像データを取得し、この画像データをカメラ本体コントローラ28に出力する。この撮像部26は、撮像モードとして、昼間の撮像に対応する第1の撮像モードと夜間の撮像に対応する第2の撮像モードとを有する。なお、撮像部26の撮像モードの切り替えは、カメラ本体コントローラ28により実行される。
【0039】
第1の撮像モードにおいて撮像部26は、赤外線カットフィルタ25が撮像光路Lに挿入された状態でレンズユニット12を通して被写体を撮像し、被写体のカラー画像である可視光画像を示す第1の画像データD1を取得する。第1の画像データD1はRGBの各色の画像データにより構成される。なお、第1の撮像モードは、赤外線カットフィルタ25が撮像光路Lに挿入されていれば、他の条件は任意である。
【0040】
また、第2の撮像モードにおいて撮像部26は、赤外線カットフィルタ25が撮像光路Lから退避された状態でレンズユニット12を通して被写体を撮像し、被写体のモノクロ画像である近赤外光画像を含む第2の画像データD2を取得する。ここで、「近赤外光画像を含む第2の画像データD2」とは、夜間であっても時間帯や周囲の環境によっては撮像部26への可視光の入射がゼロにならず、近赤外光だけでなく可視光の撮像により得られた第2の画像データD2を含むことを意味する。しかし、夜間の撮像では、可視光の光量は減少し、さらに本実施形態では近赤外光発光部15にて近赤外光を補助光として発光しているので、撮像部26に入射する可視光の光量は近赤外光の光量に比較して大幅に少なくなる。このため、第2の画像データD2は、色の情報を持たず、輝度情報(輝度信号)により構成されているモノクロ画像データとみなすことができる。なお、第2の撮像モード時に撮像部26への可視光の入射が問題になる場合には、撮像光路Lに可視光を遮断する可視光カットフィルタを挿入してもよい。
【0041】
照度センサ27は、監視カメラ10により撮像される被写体(監視領域)の照度を検出し、この照度検出結果をカメラ本体コントローラ28に出力する。照度センサ27による照度検出結果は、例えば、近赤外光発光部15による近赤外光の発光のON及びOFFの切り替えと、赤外線カットフィルタ25の挿入及び退避の切り替えと、撮像部26の撮像モードの切り替えとに用いられる。
【0042】
カメラ本体コントローラ28は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む各種形状の演算部及び処理部及び記憶部(メモリ)により構成されたものであり、監視カメラ10の全体の動作や処理を統括的に制御する。
【0043】
図3は、カメラ本体コントローラ28の電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、カメラ本体コントローラ28は、デバイス制御部34と、画像処理部35と、記憶部36と有している。
【0044】
デバイス制御部34は、記憶部36から読み出した制御用プログラム37Aを実行することで、監視カメラ10の各部の動作を制御する。例えば、デバイス制御部34は、レンズユニット12を制御するための制御信号を生成し、この制御信号をカメラ本体入出力部30からレンズユニットコントローラ20に送信する(図1及び図2参照)。これにより、前述のフォーカス制御及びズーム制御と、絞り17の絞り量制御とが実行される。また、デバイス制御部34は、撮像部26による撮像処理及び画像データの出力処理を制御する。
【0045】
さらに、デバイス制御部34は、照度センサ27による照度検出結果に基づき、撮像部26の撮像モードの切り替えと、近赤外光発光部15による近赤外光の発光のON及びOFFの切り替えと、赤外線カットフィルタ25の挿入及び退避の切り替えと、をそれぞれ制御する。すなわち、デバイス制御部34は、本発明の撮像モード切替部として機能する。
【0046】
図4は、デバイス制御部34による制御(特に撮像モードの切替制御)を説明するための説明図である。図4に示すように、デバイス制御部34は、照度センサ27から入力される被写体の照度検出結果を撮像モード切替条件として、撮像部26の撮像モードの切り替えを行う。具体的に、デバイス制御部34は、照度検出結果が予め定めた閾値以上であれば「昼間」であると判定し、撮像部26の撮像モードを第1の撮像モードに切り替える。これにより、撮像部26が第1の撮像モードでの撮像を行う。図中の符号「an−1」、「a」(nは任意の自然数)は撮像部26による撮像のタイミングを示す。
【0047】
一方、デバイス制御部34は、照度検出結果が予め定めた閾値未満であれば「夜間」であると判定し、撮像部26の撮像モードを第2の撮像モードに切り替える。これにより、撮像部26が第2の撮像モードでの撮像を行う。図中の符号「bn−1」、「b」は撮像部26による撮像のタイミングを示し、符号「A」は撮像の時間間隔を示す。なお、第1の撮像モードでの撮像の時間間隔は特に限定はされないが、第2の撮像モードと同様の時間間隔Aであってもよい。
【0048】
このようにデバイス制御部34は、照度検出結果から判別される「昼間」、「夜間」、「昼間」、「夜間」、・・・の繰り返しに応じて、撮像部26の撮像モードを第1の撮像モードと第2の撮像モードとに交互に切り替える。
【0049】
また、デバイス制御部34は、撮像部26を第1の撮像モードに切り替える場合、近赤外光発光部15を制御して近赤外光の発光をOFFさせると共に、フィルタ駆動部24を制御して撮像光路Lに赤外線カットフィルタ25を挿入させる。逆にデバイス制御部34は、撮像部26を第2の撮像モードに切り替える場合、近赤外光発光部15を制御して近赤外光の発光をONさせると共に、フィルタ駆動部24を制御して撮像光路Lから赤外線カットフィルタ25を退避させる。図中の符号「CH」は、撮像モードの切り替えのタイミング、すなわち、赤外線カットフィルタ25の挿入及び退避の切り替えのタイミングである。
【0050】
なお、本実施形態のデバイス制御部34は、照度センサ27による照度検出結果に基づき、撮像部26の撮像モードの切り替えを行っているが、撮像モード切替条件は照度検出結果に限定されるものではなく適宜変更してもよい。例えば、予め定めた時間帯(「昼間」はAM6:00〜PM6:00、「夜間」はPM6:00〜AM6:00)を撮像モード切替条件として、時間帯に応じて撮像部26の撮像モードの切り替えを行ってもよい。
【0051】
図3に戻って、画像処理部35は、記憶部36から読み出した画像処理用プログラム37Bを実行することで、撮像部26から入力される画像データ(第1の画像データD1及び第2の画像データD2)に対して後述の画像処理を行う。そして、画像処理部35は、画像処理後の画像データを入出力インタフェース32(図1及び図2参照)に出力する。
【0052】
画像処理用プログラム37Bは、本発明のプログラムに相当するものである。この画像処理用プログラム37Bは、詳しくは後述するが、監視カメラ10のコンピュータの一部を構成する画像処理部35を、本発明の変化領域検出手段(動体領域検出部48)と、本発明の合成画像データ生成手段(背景画像データ生成部43及び選択部50)と、を含む複数の処理部として機能させる(図5参照)。
【0053】
図1及び図2に戻って、入出力インタフェース32は、外部機器類(コンピュータ60等)に有線または無線接続されており、コンピュータ60等に対して画像処理後の画像データを出力する。なお、コンピュータ60等に送られる画像データのフォーマットは特に限定されず、任意のフォーマットとし得る。
【0054】
コンピュータ60は、カメラ本体14の入出力インタフェース32及びコンピュータ入出力部62を介して監視カメラ10に接続されており、監視カメラ10から送られてくる画像データ等のデータ類を受信する。このコンピュータ60は、コンピュータコントローラ64と、ディスプレイ66とを有する。
【0055】
コンピュータコントローラ64はコンピュータ60を統括的に制御する。コンピュータコントローラ64は、監視カメラ10からの画像データを画像処理し、インターネット等のネットワーク回線70を介してコンピュータ入出力部62に接続されているサーバ80等との通信を制御する。ディスプレイ66は、監視カメラ10から入力される画像を表示する。
【0056】
サーバ80は、サーバ入出力部82及びサーバコントローラ84を有する。サーバ入出力部82は、コンピュータ60等の外部機器類との送受信接続部を構成し、ネットワーク回線70を介してコンピュータ入出力部62に接続される。サーバコントローラ84は、コンピュータ60からの制御指示信号に応じ、コンピュータコントローラ64と協働し、コンピュータコントローラ64との間で必要に応じてデータ類の送受信を行い、データ類をコンピュータ60にダウンロードし、演算処理を行ってその演算結果をコンピュータ60に送信する。
【0057】
なお、監視カメラ10及びコンピュータ60及びサーバ80の間の通信は、有線通信及び無線通信のいずれでもよい。また、コンピュータ60及びサーバ80を一体的に構成してもよく、さらに両者の一方あるいは両方が省略されてもよい。また、監視カメラ10にサーバ80との通信機能を持たせ、監視カメラ10とサーバ80との間で直接的にデータ類の送受信が行われるようにしてもよい。
【0058】
[画像処理部の構成]
図5は、画像処理部35の機能ブロック図である。画像処理部35は、第1の撮像モード時において、撮像部26から入力される第1の画像データD1に対して画像処理を施し、画像処理後の第1の画像データD1を入出力インタフェース32へ出力する。また、画像処理部35は、第1の画像データD1に基づき被写体の背景領域に対応する背景画像データDBを生成する。
【0059】
一方、画像処理部35は、第2の撮像モード時において、その直前の第1の撮像モード時に生成した背景画像データDBに、第2の画像データD2内の動体領域に対応する動体画像データDM(本発明の変化領域画像データに相当、図8参照)を合成した合成画像データD3を生成する。すなわち、画像処理部35は、昼間に取得されたカラー画像の第1の画像データD1に基づき、夜間に取得されるモノクロ画像の第2の画像データD2の背景領域をカラー表示可能にする。なお、第2の撮像モード時において、その直前の第1の撮像モード時に生成した背景画像データDBとしては、第1の撮影モードから第2の撮像モードに移行する前の第1の撮影モード時(現在の第2の撮像モードの1つ前の第1の撮像モード時)に生成した背景画像データDBであれば特に限定されるものではない。例えば、第2の撮像モードに移行する前の第1の撮影モード時の最後のフレーム(第1の画像データD1)に基づき生成した背景画像データDBや、最後のフレームよりも特定の期間だけ前のフレームやこのフレームから最後のフレームまでの間のフレームに基づき生成した背景画像データDBであってもよい。また、背景画像データDBとして変化がない場合には、第1の撮影モードにおいて変化が生じなくなったタイミングから第1の撮影モードの最後のフレームまでの間のフレームに基づき生成した背景画像データDBを用いてもよい。更に、複数のフレームにおける背景画像データDBの平均値などを用いてもよい。
【0060】
図5に示すように、画像処理部35は、前述の記憶部36から読み出した画像処理用プログラム37Bを実行することで、第1の撮像モード時には第1の画像処理部35Aとして機能し、第2の撮像モード時には第2の画像処理部35Bとして機能する。なお、本実施形態では、説明の便宜上、画像処理部35を第1の画像処理部35Aと第2の画像処理部35Bとに分けているが、両者が一体であってもよい。
【0061】
[第1の画像処理部について]
第1の画像処理部35Aは、非変化領域検出部42と、背景画像データ生成部43として機能する。第1の画像処理部35Aは、図示しない画像処理回路によって撮像部26から入力される第1の画像データD1に対しホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理を施した後、画像処理後の第1の画像データD1を入出力インタフェース32へ出力する。また、第1の画像処理部35Aは、非変化領域検出部42及び背景画像データ生成部43により前述の背景画像データDBの生成を行う。
【0062】
非変化領域検出部42は、第1の撮像モードにおいて撮像部26により異なるタイミングで取得された複数の第1の画像データD1の中の非変化領域V1(図7中の背景領域V3に相当)を検出する。この非変化領域V1は、監視カメラ10の撮像対象となる被写体(監視領域)内の背景領域に相当するものであり、昼夜を問わず変化が生じないと想定される領域である。
【0063】
具体的に非変化領域検出部42は、第1の撮像モードにおいて撮像部26により取得された第1の画像データD1を予め定めた記憶タイミング毎に図示しないバッファに記憶させる。このバッファには、複数フレーム分の第1の画像データD1を記憶する記憶領域があり、新たな第1の画像データD1はバッファ内の最も古い第1の画像データD1に上書きされる。そして、非変化領域検出部42は、予め定めた非変化領域V1の検出タイミング毎に、バッファ内の複数の第1の画像データD1を解析して非変化領域V1を検出する。なお、非変化領域V1の検出方法は、後述の動体領域検出部48による動体領域検出と基本的には同じ方法が用いられるので、詳しくは後述する(図6及び図7参照)。非変化領域検出部42は、非変化領域V1の検出結果(図5中では単に「V1」と表示)を背景画像データ生成部43へ出力する。
【0064】
背景画像データ生成部43は、非変化領域検出部42から入力される非変化領域V1の検出結果と、撮像部26により取得された第1の画像データD1とに基づき、この第1の画像データD1から非変化領域V1に対応する画像データを抽出して背景画像データDBを生成する。このように、非変化領域V1の検出結果に基づき背景画像データDBの生成を行うことで、背景画像データDBに基づく画像内から動体を除くことができる。そして、背景画像データ生成部43は、生成した背景画像データDBを図示しないメモリ等に記憶させる。以下、背景画像データ生成部43は、非変化領域検出部42から非変化領域V1の検出結果が入力される度に新たな背景画像データDBを生成し、メモリ等に記憶されている背景画像データDBを更新する。
【0065】
[第2の画像処理部について]
第2の画像処理部35Bは、倍率色収差補正処理部46と、過去画像保持バッファ47と、動体領域検出部48と、変換部49と、選択部50として機能する。第2の画像処理部35Bは、直前の第1の撮像モードで第1の画像処理部35Aにより生成された背景画像データDBに、第2の撮像モードにおいて撮像部26により取得された第2の画像データD2内の動体領域に対応する動体画像データDM(図8参照)を合成した合成画像データD3を生成する。
【0066】
倍率色収差補正処理部46は、第2の撮像モードにおいて撮像部26から時間間隔A(図4参照)ごとに入力される第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を施す。本実施形態では、前述の通り、可視光画像の第1の画像データD1に基づき生成した背景画像データDBに、近赤外光画像の第2の画像データD2内の動体画像データDMを合成した合成画像データD3を生成する。この際に、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)によって、撮像部26によって撮像される可視光画像と近赤外光画像との大きさに差が生じる。このため、何らの処理を行わないと、大きさ(画像サイズ)が異なる背景画像データDBと第2の画像データD2(動体画像データDM)とを合成することになり、不自然な合成画像データD3が生成されてしまう。
【0067】
なお、昼夜兼用の監視カメラ10で用いられるレンズ16としては、可視光から近赤外域まで現実的な透過率を有しており、且つ可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を光学的に補正した昼夜兼用レンズが用いられる。ただし、一般に昼夜兼用のレンズでも近赤外域までの完全な色収差補正は現実的でなく、レンズ枚数などの制約から収差は残存する。特に、監視用の広角ズームレンズなどでは、広角端で可視光と近赤外光のピントずれを優先して抑制する必要があり、色収差(倍率色収差)を抑えきれない傾向がある。
【0068】
そこで、倍率色収差補正処理部46は、撮像部26から時間間隔A(図4参照)ごとに入力される第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を施すことにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正する。倍率色収差補正処理は、例えば、第2の画像データD2の各画素の画素位置をシフトさせるなどの公知の方法により行う。また、この際の補正量については、監視カメラ10の光学系(レンズ16及び絞り17及び赤外線カットフィルタ25)の種類に応じて予め定められた補正量を用いる。倍率色収差補正処理部46は、倍率色収差補正処理後の第2の画像データD2を過去画像保持バッファ47と、動体領域検出部48と、変換部49とにそれぞれ出力する。
【0069】
過去画像保持バッファ47は、倍率色収差補正処理部46から入力される倍率色収差補正処理後の第2の画像データD2を一時的に記憶する。例えば、過去画像保持バッファ47には2フレーム分の第2の画像データD2を記憶する記憶領域がある。倍率色収差補正処理部46から過去画像保持バッファ47に入力される新たな第1の画像データD1は、バッファ内の最も古い第2の画像データD2に上書きされる。
【0070】
動体領域検出部48は、本発明の変化領域検出部に相当する。この動体領域検出部48は、倍率色収差補正処理部46から新たに入力される第2の画像データD2(以下、単に「新たな第2の画像データD2」と略す)内で、被写体内の動体に対応する動体領域V2(図7参照)を検出する。この動体領域V2の検出は、新たな第2の画像データD2と、倍率色収差補正処理部46により先に過去画像保持バッファ47に記憶された第2の画像データD2(以下、単に「先の第2の画像データD2」と略す)との比較により行われる。
【0071】
すなわち、動体領域検出部48は、図4に示したような撮像タイミング「b」で得られた新たな第2の画像データD2内で、時間間隔Aだけ前の撮像タイミング「bn−1」で得られた先の第2の画像データD2と比較した際に変化のある変化領域を動体領域V2として検出する。従って、動体領域V2は本発明の変化領域に相当する。また、本明細書でいう「動体」は、必ずしも被写体(監視領域)内で移動しているものに限定されず、先の第2の画像データD2の取得時には被写体内に存在していなかった物体も含まれる。
【0072】
ここで時間間隔Aが極めて短く設定されている場合、新たな第2の画像データD2と先の第2の画像データD2とを比較しても、被写体内の動体の位置及び形状等に明確な差が生じていないので、被写体内の動体に対応する動体領域V2を検出することができない。このため、時間間隔Aは、新たな第2の画像データD2と先の第2の画像データD2とを比較した際に、両者の差から被写体内の動体を認識できる程度に長い時間間隔、例えば数十秒間から数分間に設定されている。
【0073】
図6は、動体領域検出部48の機能ブロック図の一例を示したものである。また、図7(A)から(D)は、動体領域検出部48による動体領域V2の検出処理の流れを説明するための説明図である。なお、図7では、先の第2の画像データD2の取得時に被写体内に存在していない動体が、新たな第2の画像データD2の取得時に被写体内に出現したものとして説明を行う。
【0074】
図6に示すように、動体領域検出部48は、差分領域抽出処理部52と、2値化処理部53と、メディアンフィルタ処理部54と、膨張演算処理部55と、収縮演算処理部56と、を含む。
【0075】
図7(A)に示すように、差分領域抽出処理部52は、新たな第2の画像データD2と先の第2の画像データD2との差分領域を抽出する差分領域抽出処理を行い、この差分領域抽出処理の結果を示す差分領域抽出画像データDFを生成する。なお、実際の撮像系において、2枚の画像データ(第2の画像データD2)の撮像間隔が離れていた場合には、時間経過による暗電流成分の変化や環境光量の変化によって、画像毎のQL(Quantum Level)値のオフセット値が変化してしまうことで、動体領域V2ではないのにもかかわらず、QL値が大きく変化してしまう現象が起こりうる。そのため、その現象を考慮して、経時オフセット補正の適用や、画像比較対象からDC(direct current)成分を無視するようなロバストな動体検出処理を設ける必要がある。しかし、ここでは処理の簡単のために、そのようなQL値の変化は生じることはなく、動体の存在領域でのみQL値の変化が生じるものと想定する。
【0076】
次いで、2値化処理部53は、差分領域抽出画像データDFに対して2値化処理を施す。これにより、差分領域抽出画像データDFの画素毎に、輝度値が予め定めた閾値以上の場合には輝度値が「1」に変換され、逆に輝度値が予め定めた閾値未満の場合には輝度値が「0」に変換される。その結果、例えば差分領域抽出画像データDF内の動体領域V2に対応する画素の輝度値が「1」に変換され、差分領域抽出画像データDF内の背景領域V3に対応する画素の輝度値が「0」に変換される。なお、背景領域V3は、実質的には前述の第1の画像データD1内の非変化領域V1と同じものになる。
【0077】
図7(B)に示すように、メディアンフィルタ処理部54は、2値化処理後の差分領域抽出画像データDFに対してメディアンフィルタ処理を施すことにより、差分領域抽出画像データDFに混入している暗ノイズ等のノイズを除去する。
【0078】
図7(C)及び図7(D)に示すように、膨張演算処理部55及び収縮演算処理部56は、メディアンフィルタ処理後の差分領域抽出画像データDFに対してクロージング(Closing)処理を施す。具体的には、膨張演算処理部55が差分領域抽出画像データDFに対して膨張演算処理を施した後(図7(C)参照)、収縮演算処理部56が差分領域抽出画像データDFに対して収縮演算処理を施す(図7(D)参照)。このクロージング処理(膨張演算処理及び収縮演算処理)によって、差分領域抽出画像データDFに含まれる細かい(小さい)パターンが除去される。その結果、差分領域抽出画像データDF内の動体領域V2と背景領域V3とが各々まだら状になることが防止される。
【0079】
このようなクロージング処理後の差分領域抽出画像データDFにおいて、輝度値が「1」の画素が集合している領域が動体領域V2となり、逆に輝度値が「0」の画素が集合している領域が背景領域V3となる。従って、動体領域検出部48は、差分領域抽出画像データDF内の動体領域V2を構成する各画素の位置座標に基づき、新たな第2の画像データD2内の動体領域V2を検出することができる。そして、動体領域検出部48は、動体領域V2を構成する各画素の位置座標を、新たな第2の画像データD2内の動体領域V2の検出結果(図5中では単に「V2」と表示)として選択部50に出力する。
【0080】
なお、前述の非変化領域検出部42は、図6及び図7に示した動体領域検出部48と基本的には同じ方法により(ここでは逆に背景領域V3を検出する)、異なるタイミングで取得された複数の第1の画像データD1内の非変化領域V1(背景領域V3に相当)を検出し、その検出結果を背景画像データ生成部43へ出力する。
【0081】
図5に戻って、変換部49は、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2を、前述の第1の画像データD1(背景画像データDB)と同様のRGB画像データに変換する。ここで第2の画像データD2は、前述の通り輝度情報(輝度信号)のみにより構成される画像データであり、色情報を有していない。このため、変換部49は、第2の画像データD2に色情報を付加した後、この第2の画像データD2をRGB画像データに変換する。
【0082】
最初に変換部49は、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2に対して、予め定めた色情報である赤外光動体色58(CbCr規定値)を付加して、第2の画像データD2をYCbCr画像データとする。これにより、合成画像データD3となる第2の画像データD2内の動体画像データDM(図8参照)に色情報が付加され、合成画像データD3内の動体画像データDMをカラー表示することができる。この赤外光動体色58は、合成画像データD3に基づく画像内に表示される動体の色を定めるものであり、任意の色を選択可能である。
【0083】
次いで、変換部49は、YCbCr画像データである第2の画像データD2をRGB画像データに変換した後、選択部50に出力する。
【0084】
選択部50は、前述の背景画像データ生成部43と共に本発明の合成画像データ生成部を構成する。選択部50は、動体領域検出部48から入力される動体領域V2の検出結果に基づき、直前の第1の撮像モードで背景画像データ生成部43が生成した背景画像データDBに、第2の画像データD2内の動体領域V2に対応する動体画像データDMを合成した合成画像データD3を生成する。
【0085】
図8は、選択部50による合成画像データD3の生成処理を説明するための説明図である。なお、図8中における第2の画像データD2内のハッチング表示は、前述の赤外光動体色58が付されていること示す。
【0086】
図8に示すように、選択部50は、動体領域検出部48から入力された動体領域V2の検出結果に基づき、合成画像データD3の第1番目の画素(例えば左下隅の画素)が動体領域V2及び背景領域V3のいずれに属するかを判定する。そして、選択部50は、合成画像データD3の第1番目の画素が背景領域V3に属する場合、背景画像データDB及び第2の画像データD2の各々の第1番目の画素(左下隅の画素)のうち、背景画像データDB内の第1番目の画素を選択して出力する。
【0087】
一方、選択部50は、合成画像データD3の第1番目の画素が動体領域V2に属する場合、背景画像データDB及び第2の画像データD2の各々の第1番目の画素のうち、第2の画像データD2内の第1番目の画素を選択して出力する。
【0088】
以下同様に、選択部50は、合成画像データD3の残りの第N番目の画素についても、動体領域V2の検出結果に基づき、背景画像データDB及び第2の画像データD2のうちの一方から選択した第N番目の画素を出力する。ここで「N」は、2以上で且つ合成画像データD3の全画素数以下の数である。これにより、合成画像データD3の各画素の中で、動体領域V2に属する画素としては第2の画像データD2の画素が選択され、背景領域V3に属する画素としては背景画像データDBの画素が選択される。その結果、背景画像データDBに、第2の画像データD2内の動体領域V2に対応する動体画像データDMを合成した合成画像データD3が生成される。
【0089】
なお、前述の動体領域検出部48により動体領域V2が検出されなかった場合、選択部50は、背景画像データDBのみに基づいて合成画像データD3を生成する。
【0090】
以下、第2の画像処理部35Bでは、撮像部26から時間間隔Aで第2の画像データD2が入力される毎に、倍率色収差補正処理部46による倍率色収差補正処理と、動体領域検出部48による動体領域検出処理と、変換部49による変換処理と、選択部50による合成画像データ生成処理とが実行されて、合成画像データD3が生成される。合成画像データD3は、図示しない画像処理回路によってホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理が施された後、第2の画像処理部35Bから入出力インタフェース32へ出力される。
【0091】
[第1実施形態の監視カメラの作用]
次に、図9及び図10を用いて上記構成の監視カメラ10の作用、特に撮像処理及び画像処理(本発明の撮像装置の画像処理方法)について説明を行う。ここで、図9は、第1の撮像モード時における監視カメラ10の撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。また、図10は、第2の撮像モード時における監視カメラ10の撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0092】
<第1の撮像モード>
図9に示すように、デバイス制御部34は、照度センサ27から入力される被写体の照度検出結果に基づき「夜間」から「昼間」に切り替わったと判定した場合には、撮像部26の撮像モードを第1の撮像モードに切り替える(ステップS1)。また同時に、デバイス制御部34は、近赤外光発光部15を制御して近赤外光の発光をOFFさせると共に、フィルタ駆動部24を制御して撮像光路Lに赤外線カットフィルタ25を挿入させる(ステップS2)。
【0093】
次いで、デバイス制御部34は、撮像部26により第1の撮像モードでの被写体(監視領域)の可視光画像の撮像を開始させる。撮像部26は、赤外線カットフィルタ25が撮像光路Lに挿入された状態でレンズユニット12を通して被写体を撮像し、カラー画像である被写体の可視光画像を示す第1の画像データD1を取得する(ステップS3)。そして、撮像部26は第1の画像データD1を画像処理部35に出力する(ステップS4)。
【0094】
撮像部26から出力された第1の画像データD1は、画像処理部35の第1の画像処理部35Aに入力される。第1の画像処理部35Aでは、図示しない画像処理回路によって第1の画像データD1に対しホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理を施した後、入出力インタフェース32へ出力する。そして、画像処理済みの第1の画像データD1は、入出力インタフェース32からコンピュータ60及びサーバ80の一方あるいは両方に出力される。以下、撮像部26から第1の画像データD1が入力される毎に、第1の画像データD1に対する画像処理及びコンピュータ60等への出力が繰り返し実行される(ステップS5でNO)。
【0095】
この際に、撮像部26から入力される第1の画像データD1は、予め定めた記憶タイミング毎に非変化領域検出部42のバッファに記憶される(ステップS5でYES)。そして、非変化領域検出部42よる非変化領域V1の検出タイミングまで、撮像部26の撮像が継続して行われることにより(ステップS5またはステップS6でNO)、異なるタイミングで取得された複数の第1の画像データD1が非変化領域検出部42のバッファに記憶される。
【0096】
非変化領域検出部42は、非変化領域V1の検出タイミングになった場合、前述の図6及び図7で説明した方法に基づき、バッファ内の複数の第1の画像データD1を解析して非変化領域V1を検出する(ステップS6でYES、ステップS7)。そして、非変化領域検出部42は、非変化領域V1の検出結果を背景画像データ生成部43へ出力する。
【0097】
背景画像データ生成部43は、非変化領域検出部42から入力される非変化領域V1の検出結果に基づき、撮像部26より入力された第1の画像データD1から非変化領域V1に対応する画像データを抽出して背景画像データDBを生成する(ステップS8)。この背景画像データDBは、背景画像データ生成部43により図示しないメモリ等に記憶される。
【0098】
以下、第1の撮像モードが継続する間、前述のステップS3からステップS8までの処理が繰り返し実行される(ステップS9でYES)。これにより、非変化領域検出部42のバッファ内への第1の画像データD1の記憶と、非変化領域検出部42による非変化領域V1の検出と、背景画像データ生成部43による背景画像データDBの生成とが繰り返し実行され、前述のメモリ等に記憶されている背景画像データDBが更新される。そして、後述のように、撮像部26の撮像モードが第2の撮像モードに切り替えられると、第1の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理が終了する(ステップS9でNO)。
【0099】
<第2の撮像モード>
図10に示すように、デバイス制御部34は、照度センサ27から入力される被写体の照度検出結果に基づき「昼間」から「夜間」に切り替わったと判定した場合に、撮像部26の撮像モードを第1の撮像モードから第2の撮像モードに切り替える(ステップS11)。また同時に、デバイス制御部34は、近赤外光発光部15を制御して近赤外光の発光をONさせると共に、フィルタ駆動部24を制御して撮像光路Lから赤外線カットフィルタ25を退避させる(ステップS12)。
【0100】
次いで、デバイス制御部34は、撮像部26により第2の撮像モードでの被写体の赤外光画像の撮像を開始させる。撮像部26は、赤外線カットフィルタ25が撮像光路Lから退避された状態でレンズユニット12を通して被写体を撮像し、モノクロ画像である被写体の近赤外光画像を含む第2の画像データD2を取得する(ステップS13)。そして、撮像部26は第2の画像データD2を画像処理部35に出力する(ステップS14)。
【0101】
撮像部26から出力された第2の画像データD2は、画像処理部35における第2の画像処理部35Bに入力される。第2の画像処理部35Bの倍率色収差補正処理部46は、撮像部26から入力された第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を施す(ステップS15)。これにより、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)が補正され、背景画像データDBと第2の画像データD2との大きさ(画像サイズ)を合わせることができるため、不自然な合成画像データD3が生成されることが防止される。
【0102】
また、倍率色収差補正処理部46による倍率色収差補正処理は、ソフトウェア処理であり、上記特許文献2に記載のように撮像光路に位相変調素子を設けるといったハードウェア的な追加を行うことなく実施することができる。その結果、監視カメラ10の大型化及び部品点数の増加を抑えることができる。
【0103】
なお、本実施形態の倍率色収差補正処理部46は、第2の画像データD2の全体に倍率色収差補正処理を行っているが、例えば、倍率色収差補正処理よりも前に動体領域検出部48による動体領域V2の検出を先に行い、この検出結果に基づき第2の画像データD2内の動体領域V2に対して倍率色収差補正処理を行ってもよい。すなわち、倍率色収差補正処理部46は、少なくとも第2の画像データD2内の動体領域V2に対して倍率色収差補正処理を行えばよい。
【0104】
次いで、倍率色収差補正処理部46は、倍率色収差補正処理後の第2の画像データD2を過去画像保持バッファ47と、動体領域検出部48と、変換部49とにそれぞれ出力する。これにより、過去画像保持バッファ47に新たな第2の画像データD2が記憶される(ステップS16)。
【0105】
なお、図示は省略するが、第2の撮像モードへの切り替え後、少なくとも撮像部26による第2の画像データD2の取得を2回以上行うことで、過去画像保持バッファ47に前述の「先の第2の画像データD2」が記憶される。これにより、動体領域検出部48による動体領域V2の検出が可能になる。以下、過去画像保持バッファ47内に前述の「先の第2の画像データD2」が記憶されているものとして説明を行う。
【0106】
動体領域検出部48は、倍率色収差補正処理部46から新たな第2の画像データD2が入力された場合、動体領域V2の検出を開始する。前述の図6及び図7で説明した通り、動体領域検出部48は、新たな第2の画像データD2と過去画像保持バッファ47内の先の第2の画像データD2とを比較して、新たな第2の画像データD2内の動体領域V2を検出する(ステップS17、本発明の変化領域検出ステップに相当)。そして、動体領域検出部48は、動体領域V2の検出結果を選択部50へ出力する。
【0107】
変換部49は、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2に対し赤外光動体色58(CbCr規定値)に基づく色情報を付加して、第2の画像データD2をYCbCr画像データとした後、RGB画像データに変換する(ステップS18)。変換部49は、RGB画像データに変換した第2の画像データD2を選択部50へ出力する。
【0108】
選択部50は、第2の撮像モードへの切り替え時に、その直前の第1の撮像モード時に背景画像データ生成部43が生成した背景画像データDBを前述のメモリ等から読み出す。そして、選択部50は、前述の図8で説明したように、動体領域検出部48から入力された動体領域V2の検出結果に基づき、背景画像データDBに、変換部49から入力された第2の画像データD2内の動体領域V2に対応する動体画像データDMを合成する。これにより、合成画像データD3が生成される(ステップS19、本発明の合成画像データ生成ステップに相当)。
【0109】
このような合成画像データD3は、第2の画像データD2内の背景領域V3に対応する部分に対して、昼間に取得されたカラー画像である第1の画像データD1の色情報(カラー情報)を当てはめて色を付けた画像データであると言える。その結果、夜間の撮像で得られた画像内で、昼間の撮像で得られた画像内に写っている被写体と同一の被写体については昼間の被写体の色情報が付される。このため、夜間の撮像により得られる近赤外光画像を見易くすることができる。
【0110】
合成画像データD3は、図示しない画像処理回路によってホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理が施された後、第2の画像処理部35Bから入出力インタフェース32へ出力される。そして、画像処理済みの合成画像データD3は、入出力インタフェース32からコンピュータ60及びサーバ80の一方あるいは両方に出力される。
【0111】
以下、第2の撮像モードが継続する間、時間間隔A毎に前述のステップS13からステップS19までの処理が繰り返し実行されて、第2の画像処理部35Bにおいて合成画像データD3が繰り返し生成される。(ステップS20でYES、ステップS21)。そして、撮像部26の撮像モードが第2の撮像モードから第1の撮像モードに切り替えられると、第2の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理が終了する(ステップS20でNO)。
【0112】
以下同様にして、「昼間」と「夜間」の切り替わりに応じて、前述の第1の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理と、前述の第2の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理とが交互に繰り返し実行される。
【0113】
[第1実施形態の効果]
以上のように、第1実施形態の監視カメラ10では、昼間の第1の撮像モードで取得されたカラー画像の第1の画像データD1に基づき生成した背景画像データDBを用いて、夜間の第2の撮像モードで合成画像データD3を生成するので、夜間の第2の撮像モードで取得されたモノクロ画像の第2の画像データD2の背景領域をカラー表示することができる。その結果、前述の特許文献1に記載のように2種類の撮像部を設けるといった大型化及び部品点数の増加を抑えつつ、夜間の撮像により得られる近赤外光画像を見易くすることができる。
【0114】
また、合成画像データD3の背景画像データDBとして可視光画像の第1の画像データD1をそのまま用いるので、背景画像データDBは前述の色収差(倍率色収差)の影響を受けない。また、背景画像データDBの生成に複雑な画像処理などが不要で監視カメラ10のシステムの負荷が少なくなる。
【0115】
[第2実施形態の監視カメラの全体構成]
次に、本発明の第2実施形態の監視カメラ90について説明を行う。上記第1実施形態の監視カメラ10では、合成画像データD3内の背景画像データDBとして可視光画像の第1の画像データD1をそのまま用いている。これに対して監視カメラ90では、第1の画像データD1の色情報と第2の画像データD2の輝度情報とを用いて合成画像データD3内の背景画像データDBを生成する。
【0116】
図11は、第2実施形態の監視カメラ90を構成する画像処理部91の機能ブロック図である。図11に示すように、監視カメラ90は、第1実施形態の画像処理部35とは異なる画像処理部91を備えている点を除けば、第1実施形態の監視カメラ10と基本的に同じ構成である。従って、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0117】
画像処理部91は、前述の記憶部36から読み出した画像処理用プログラム37Bを実行することで、第1の撮像モード時には第1の画像処理部91Aとして機能し、第2の撮像モード時には第2の画像処理部91Bとして機能する。なお、第1実施形態と同様に、第1の画像処理部91Aと第2の画像処理部91Bとが一体であってもよい。
【0118】
[第2実施形態の第1の画像処理部について]
第1の画像処理部91Aは、撮像部26から入力される第1の画像データD1に対して画像処理を施し、画像処理後の第1の画像データD1を入出力インタフェース32へ出力する点では第1実施形態の第1の画像処理部35Aと基本的に同じである。ただし、第1の画像処理部91Aは、第1実施形態の第1の画像処理部35Aとは異なり、第1の画像データD1の非変化領域V1から色情報(CbCr)の抽出を行う。この第1の画像処理部91Aは、第1変換部93と、前述の非変化領域検出部42と、色情報抽出部94として機能する。
【0119】
第1変換部93は、第1の撮像モードにおいて撮像部26から入力されるRGB画像データである第1の画像データD1をYCbCr画像データに変換し、変換後の第1の画像データD1を非変化領域検出部42へ出力する。
【0120】
非変化領域検出部42は、第1実施形態で説明したように、撮像部26により異なるタイミングで取得された複数の第1の画像データD1の中の非変化領域V1を検出し、この非変化領域V1の検出結果を色情報抽出部94へ出力する。
【0121】
色情報抽出部94は、非変化領域検出部42から入力された非変化領域V1の検出結果と、撮像部26により取得された第1の画像データD1とに基づき、この第1の画像データD1内の非変化領域V1から色情報96(CbCr)を抽出する。そして、色情報抽出部94は、非変化領域V1の色情報96を図示しないメモリ等に記憶させる。以下、色情報抽出部94は、非変化領域検出部42から非変化領域V1の検出結果が入力される度に新たな色情報96を抽出し、メモリ等に記憶されている色情報96を更新する。
【0122】
[第2実施形態の第2の画像処理部について]
第2の画像処理部91Bは、合成画像データD3の生成を行う点では第1実施形態の第2の画像処理部35Bと同じである。ただし、第2の画像処理部91Bは、第2の画像データD2から抽出した輝度情報と直前の第1の撮像モードで得られた色情報96とに基づき合成画像データD3内の背景画像データDBを生成する。この第2の画像処理部91Bは、前述の倍率色収差補正処理部46及び過去画像保持バッファ47及び動体領域検出部48と、選択部100と、輝度情報抽出部101と、第2変換部102として機能する。
【0123】
倍率色収差補正処理部46は、撮像部26から時間間隔Aごとに入力される第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を施し、倍率色収差補正処理後の第2の画像データD2を、過去画像保持バッファ47及び動体領域検出部48と、輝度情報抽出部101とにそれぞれ出力する。
【0124】
動体領域検出部48は、第1実施形態と同様に、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2内の動体領域V2を検出し(図6及び図7参照)、動体領域V2の検出結果を選択部100へ出力する。
【0125】
選択部100は、動体領域検出部48から入力された動体領域V2の検出結果に基づき、直前の第1の撮像モードで得られた非変化領域V1の色情報96(CbCr)に、動体領域V2を示す色情報を合成して、合成画像データD3の色情報を示す色情報合成データDC(CbCr)を生成する。
【0126】
図12は、選択部100による色情報合成データDCの生成処理を説明するための説明図である。図12に示すように、選択部100は、前述の動体領域V2の検出結果に基づき、色情報合成データDCの第1番目の画素(例えば左下隅の画素)が動体領域V2及び背景領域V3のいずれに属するかを判定する。そして、選択部100は、色情報合成データDCの第1番目の画素が背景領域V3に属する場合、色情報96及び動体領域V2を示す色情報である赤外光動体色58のうち、色情報96に含まれる第1番目の画素(左下隅の画素)に対応する色情報(CbCr)を選択して出力する。
【0127】
一方、選択部100は、色情報合成データDCの第1番目の画素が動体領域V2に属する場合、色情報96及び赤外光動体色58のうち、赤外光動体色58の色情報(CbCr規定値)を選択して出力する。
【0128】
以下同様に、選択部100は、色情報合成データDCの残りの第N番目の画素についても、動体領域V2の検出結果に基づき、色情報96及び赤外光動体色58のうちの一方から選択した色情報を出力する。これにより、色情報合成データDCの各画素の中で、背景領域V3に属する画素の色情報としては色情報96が選択され、動体領域V2に属する画素の色情報としては赤外光動体色58の色情報が選択される。その結果、背景領域V3に対応する前述の非変化領域V1の色情報96に、動体領域V2を示す色情報である赤外光動体色58の色情報を合成した色情報合成データDCが生成される。そして、選択部100は、色情報合成データDCを第2変換部102へ出力する。
【0129】
図11に戻って、輝度情報抽出部101は、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2から画素ごとの輝度情報を抽出し、その抽出結果である輝度情報データDYを第2変換部102へ出力する。輝度情報データDYは、第2の撮像モードの撮像で取得されたリアルタイムの輝度情報である。
【0130】
第2変換部102は、前述の色情報抽出部94及び選択部100と共に本発明の合成画像データ生成部(合成画像データ生成手段)を構成する。第2変換部102は、選択部100から入力される色情報合成データDCと、輝度情報抽出部101から入力される輝度情報データDYとに基づき、RGB画像データである合成画像データD3を生成する。
【0131】
最初に、第2変換部102は、合成画像データD3の色情報を示す色情報合成データDC(CbCr)と、リアルタイムの輝度情報データDYとに基づき、YCbCr画像データである合成画像データD3を生成する。すなわち、第2変換部102は、色情報のみで構成される色情報合成データDCの輝度情報を、リアルタイムに得られた輝度情報データDYにより補間することで、画素ごとの輝度情報及び色情報を含む合成画像データD3(YCbCr画像データ)を生成する。
【0132】
このように第2実施形態では、直前の第1の撮像モードで得られた色情報96と、第2の画像データD2の背景領域V3における輝度情報データDYとに基づき、合成画像データD3内の背景画像データDBを生成する。また、第2実施形態では、赤外光動体色58の色情報と、第2の画像データD2の動体領域V2における輝度情報データDYとに基づき、合成画像データD3内の動体画像データDMを生成する。これにより、合成画像データD3(YCbCr画像データ)が生成される。
【0133】
次いで、第2変換部102は、YCbCr画像データである合成画像データD3をRGB画像データに変換する。RGB画像データである合成画像データD3は、第1実施形態と同様に、図示しない画像処理回路によってホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理が施された後、第2の画像処理部35Bから入出力インタフェース32へ出力される。
【0134】
[第2実施形態の監視カメラの作用]
次に、図13及び図14を用いて上記構成の監視カメラ90の作用、特に撮像処理及び画像処理(本発明の撮像装置の画像処理)について説明を行う。ここで、図13は、第1の撮像モード時における監視カメラ90の撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。また、図14は、第2の撮像モード時における監視カメラ90の撮像処理及び画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0135】
<第1の撮像モード>
図13に示すように、ステップS31からステップS34までの処理の流れは、図9に示した第1実施形態(ステップS1からステップS4)と基本的に同じであるので、具体的な説明は省略する。ステップS34までの処理により、撮像部26は第1の画像データD1を画像処理部35に出力する。そして、撮像部26から出力された第1の画像データD1は、画像処理部35の第1の画像処理部35Aに入力され、図示しない画像処理回路によってホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理が施された後、入出力インタフェース32へ出力される。
【0136】
この際に、撮像部26から入力される第1の画像データD1は、予め定めた記憶タイミング毎に、第1変換部93でRGB画像データからYCbCr画像データに変換された後、非変化領域検出部42のバッファに記憶される(ステップS35でYES、ステップS36)。そして、非変化領域検出部42よる非変化領域V1の検出タイミングまで、撮像部26の撮像が継続して行われる(ステップS35またはステップS37でNO)。これにより、異なるタイミングで取得された複数の第1の画像データD1(YCbCr画像データ)が非変化領域検出部42のバッファに記憶される。
【0137】
非変化領域検出部42は、非変化領域V1の検出タイミングになった場合、前述の図6及び図7で説明した方法に基づき、バッファ内の複数の第1の画像データD1を解析して非変化領域V1を検出する(ステップS37でYES、ステップS38)。そして、非変化領域検出部42は、非変化領域V1の検出結果を色情報抽出部94へ出力する。
【0138】
色情報抽出部94は、非変化領域検出部42から入力された非変化領域V1の検出結果に基づき、撮像部26より入力された第1の画像データD1内の非変化領域V1から色情報96(CbCr)を抽出する(ステップS39)。この色情報96は、色情報抽出部94により図示しないメモリ等に記憶される。
【0139】
以下、第1の撮像モードが継続する間、前述のステップS33からステップS39までの処理が繰り返し実行される(ステップS40でYES)。これにより、非変化領域検出部42のバッファ内への第1の画像データD1の記憶と、非変化領域検出部42による非変化領域V1の検出と、色情報抽出部94による色情報96の抽出とが繰り返し実行され、前述のメモリ等に記憶されている色情報96が更新される。そして、後述のように、撮像部26の撮像モードが第1の撮像モードから第2の撮像モードに切り替えられると、第1の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理が終了する(ステップS40でNO)。
【0140】
<第2の撮像モード>
図14に示すように、ステップS41からステップS47までの処理の流れは、図10に示した第1実施形態(ステップS11からステップS17)と基本的に同じであるので、具体的な説明は省略する。ステップS47までの処理により、倍率色収差補正処理部46による倍率色収差補正処理後の新たな第2の画像データD2が、過去画像保持バッファ47及び動体領域検出部48と、輝度情報抽出部101とにそれぞれ出力される、また、動体領域検出部48による新たな第2の画像データD2内の動体領域V2の検出が実行され(本発明の変化領域検出ステップに相当)、動体領域検出部48から選択部100へ動体領域V2の検出結果が出力される。
【0141】
選択部100は、第2の撮像モードへの切り替え時に、その直前の第1の撮像モードで色情報抽出部94により抽出された非変化領域V1の色情報96(CbCr)を前述のメモリ等から読み出す。次いで、選択部100は、前述の図12で説明したように、動体領域検出部48から入力される動体領域V2の検出結果に基づき、非変化領域V1の色情報96(CbCr)に、動体領域V2を示す赤外光動体色58の色情報を合成する。これにより、色情報合成データDC(CbCr)が生成される(ステップS48)。そして、選択部100は、色情報合成データDCを第2変換部102へ出力する。
【0142】
一方、輝度情報抽出部101は、倍率色収差補正処理部46から入力される新たな第2の画像データD2から画素ごとの輝度情報を抽出し、輝度情報データDYを第2変換部102へ出力する(ステップS49)。
【0143】
第2変換部102は、合成画像データD3の色情報を示す色情報合成データDCと、リアルタイムの輝度情報データDYとに基づき、YCbCr画像データである合成画像データD3を生成する。次いで、第2変換部102は、YCbCr画像データである合成画像データD3をRGB画像データに変換する。これにより、RGB画像データである合成画像データD3が生成される(ステップS50、ステップS51、本発明の合成画像データ生成ステップに相当)。この合成画像データD3は、第1実施形態と同様に、図示しない画像処理回路によってホワイトバランス補正や階調補正などの画像処理が施された後、第2の画像処理部35Bから入出力インタフェース32へ出力される。
【0144】
以下、第2の撮像モードが継続する間、時間間隔A毎に前述のステップS43からステップS51までの処理が繰り返し実行されて、第2の画像処理部91Bにおいて合成画像データD3が繰り返し生成される。(ステップS52でYES、ステップS53)。そして、撮像部26の撮像モードが第1の撮像モードに切り替えられると、第2の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理が終了する(ステップS52でNO)。
【0145】
以下同様にして、「昼間」と「夜間」の切り替わりに応じて、前述の第1の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理と、前述の第2の撮像モードにおける撮像処理及び画像処理とが交互に繰り返し実行される。
【0146】
[第2実施形態の効果]
以上のように、第2実施形態の監視カメラ90では、第2の画像データD2から抽出した輝度情報データDYと第1の撮像モードで得られた色情報96とに基づき生成される背景画像データDBに、前述の動体画像データDMを合成した合成画像データD3を生成するので、第1実施形態と同様に、夜間の第2の撮像モードで取得されたモノクロ画像の第2の画像データD2の背景領域をカラー表示することができる。その結果、第1実施形態と同様に、大型化及び部品点数の増加を抑えつつ、夜間の撮像により得られる近赤外光画像を見易くすることができる。
【0147】
また、第1の撮像モードで得られた色情報96と、第2の撮像モードの撮像で取得されたリアルタイムの背景領域V3における輝度情報とに基づいて、合成画像データD3内の背景画像データDBを生成するので、実際の明暗を再現することができる。例えば、昼間から夜間にかけての明るさの変化や、近赤外光発光部15からの近赤外光(補助光)により照明されている状態を再現することができるので、現実に近い画像(合成画像データD3)が得られる。
【0148】
[第3実施形態の監視カメラ]
図15は、本発明の第3実施形態の監視カメラ120を構成する画像処理部121の機能ブロック図である。上記第1実施形態では、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正するため、第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を行っているが、監視カメラ120では第2の画像データD2に対して鮮鋭化処理を行うことにより前述の色収差を補正する。
【0149】
図15に示すように、監視カメラ120の画像処理部121は、第2の画像処理部35Bsに倍率色収差補正処理部46の代わりに鮮鋭化処理部123を有する点を除けば、第1実施形態の監視カメラ10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0150】
鮮鋭化処理部123は、第2の撮像モードにおいて撮像部26から時間間隔A(図4参照)ごとに入力される第2の画像データD2に対して鮮鋭化処理を施す。鮮鋭化処理は、例えばラプラシアンフィルタなどの鮮鋭化フィルタを用いたフィルタ処理(畳み込み演算)により、第2の画像データD2に基づく画像のエッジ強調を行うことである。
【0151】
ここでフィルタ処理では、鮮鋭化フィルタのフィルタ係数を適切に調整することで、第2の画像データD2の位相をずらすことができる。すなわち、鮮鋭化処理を行った場合でも、倍率色収差補正処理を行った場合と同様に、第2の画像データD2の各画素の画素位置をシフトさせることができ、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。なお、鮮鋭化処理部123の鮮鋭化処理に用いられる鮮鋭化フィルタのフィルタ係数については、監視カメラ120の光学系(レンズ16及び絞り17及び赤外線カットフィルタ25など)の種類に応じて予め定められているフィルタ係数を用いる。
【0152】
鮮鋭化処理部123は、鮮鋭化処理後の第2の画像データD2を過去画像保持バッファ47と、動体領域検出部48と、変換部49とにそれぞれ出力する。これ以降の処理については上記第1実施形態と基本的に同じであるので、説明は省略する。
【0153】
なお、第3実施形態の鮮鋭化処理部123は、第2の画像データD2の全体に鮮鋭化処理を行っているが、例えば、鮮鋭化処理よりも前に動体領域検出部48による動体領域V2の検出を先に行い、この検出結果に基づき第2の画像データD2内の動体領域V2に対して鮮鋭化処理を行ってもよい。すなわち、鮮鋭化処理部123は、少なくとも第2の画像データD2内の動体領域V2に対して鮮鋭化処理を行えばよい。
【0154】
また、第3実施形態では、上記第1実施形態の監視カメラ10の倍率色収差補正処理部46を鮮鋭化処理部123に置き換えた実施形態について説明を行ったが、上記第2実施形態の監視カメラ90の倍率色収差補正処理部46を鮮鋭化処理部123に置き換えてもよい。
【0155】
[第4実施形態の監視カメラ]
図16は、本発明の第4実施形態の監視カメラ130を構成する画像処理部131の機能ブロック図である。上記第1実施形態では、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正するため、第2の画像データD2に対して倍率色収差補正処理を行っている。これに対して、監視カメラ130では第1の画像データD1及び第2の画像データD2に対して点像復元処理を行うことにより前述の色収差(倍率色収差)を補正する。
【0156】
点像復元処理とは、監視カメラ130の光学系の収差等による劣化を示す光学特性を予め求めておき、撮像された画像(劣化している画像)を、前述の光学特性に基づいて生成した復元(回復)フィルタを使用して復元処理することにより解像度の高い画像に復元する処理である。
【0157】
図16に示すように、監視カメラ130の画像処理部131は、第1の撮像モードでは第1の画像処理部35Afとして機能し、第2の撮像モードでは第2の画像処理部35Bfとして機能する。
【0158】
ここで第1の画像処理部35Afは、本発明の第2の点像復元処理部に相当する点像復元処理部133Aを有する点を除けば、第1実施形態の第1の画像処理部35Aと基本的に同じ構成である。また、第2の画像処理部35Bsは、倍率色収差補正処理部46の代わりに本発明の第1の点像復元処理部に相当する点像復元処理部133Bを有する点を除けば、第1実施形態の第2の画像処理部35Bと基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0159】
点像復元処理部133Aは、前述の記憶部36に記憶されている後述の3種類のR,G,B用復元フィルタF,F,Fを用いて、第1の撮像モードにおいて撮像部26から入力される第1の画像データD1に対して点像復元処理を施す。また、点像復元処理部133Bは、記憶部36に記憶されている後述の赤外用復元フィルタFIRを用いて、第2の撮像モードにおいて撮像部26から入力される第2の画像データD2に対して点像復元処理を施す。
【0160】
<第1の撮像モード時の点像復元処理>
図17は、第1の撮像モード時の点像復元処理部133Aによる点像復元処理を説明するための説明図である。図17では、理解を容易にするため、被写体として点像を撮像した場合を示している(後述の図19も同様)。
【0161】
図17に示すように、第1の撮像モード時に点像を被写体として撮像を行う場合、被写体の可視光画像は監視カメラ130の光学系(レンズ16及び絞り17及び赤外線カットフィルタ25など)を通して撮像部26により撮像され、この撮像部26から第1の画像データD1が出力される。この第1の画像データD1は、可視光に対する監視カメラ130の光学系の光学特性に基づく点拡がり現象によって振幅成分と位相成分とが劣化し、本来の被写体像(点像)は、非点対称なボケ画像となる。ここで、可視光は様々な波長帯域の光から構成されているので倍率色収差が発生し、第1の画像データD1を構成するR画像データとG画像データとB画像データとの位相にずれが発生している。以下、R画像データ及びG画像データ及びB画像データを、単に「R,G,B画像データ」と略す。
【0162】
点像復元処理部133Aによる点像復元処理では、可視光に対する監視カメラ130の光学系の光学特性(本発明の第2の光学特性に相当)として、R光及びG光及びB光のそれぞれに対する色毎の点拡がり関数(PSF:Point spread function)K,K,Kを予め求めておく。これら点拡がり関数K,K,Kは、本発明の第2の点拡がり関数に相当するものである。
【0163】
なお、点拡がり関数K,K,K(PSF)の代わりに、光学伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)を予め求めてもよい。PSFとOTFとはフーリエ変換の関係にあり、PSFは実関数、OTFは複素関数である。また、これらと等価な情報を持つものとして、変調伝達関数又は振幅伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)と位相伝達関数(PTF:Phase Transfer Function)があり、それぞれOTFの振幅成分と位相成分を示す。MTFとPTFとを合わせてOTFやPSFと等価な情報量を持つ。
【0164】
本実施形態では、点拡がり関数K,K,K(PSF)が予め求められて、復元フィルタ生成部135に入力される。復元フィルタ生成部135は、例えばコンピュータ等の演算装置が用いられる。この復元フィルタ生成部135は、点拡がり関数K,K,K(PSF)に基づき、点像復元処理部133Aによる点像復元処理で用いられるR,G,B用復元フィルタF,F,Fを生成する。
【0165】
一般に、PSFによるボケ画像の復元に用いられる復元フィルタとしては、コンボリューション型のウィナー(Wiener)フィルタを利用することができる。PSF(x,y)をフーリエ変換したOTFと信号対雑音比(SNR:signal-noise ratio、SN比ともいう)の情報を参照して、以下の式によって復元フィルタの周波数特性d(ω,ω)を算出することができる。
【0166】
【数1】
【0167】
ここで、H(ω,ω)はOTFを表し、H(ω,ω)はその複素共役を表す。また、SNR(ω,ω)は信号対雑音比(SN比)を表す。
【0168】
復元フィルタのフィルタ係数の設計は、フィルタの周波数特性が、所望のWiener周波数特性に最も近くなるように係数値を選択する最適化問題であり、任意の公知の手法によってフィルタ係数が適宜算出される。
【0169】
このようにR,G,B用復元フィルタF,F,Fは、第1の画像データD1の取得時の撮像条件に応じた監視カメラ130の光学系の点像情報(PSF)から、所定の振幅復元及び位相補正フィルタ算出アルゴリズムによって得られる。光学系の点像情報は、レンズ16の種類だけではなく、絞り量、焦点距離、ズーム量、像高、記録画素数、画素ピッチ等の各種の撮像条件によって変動し得る。従って、復元フィルタ生成部135によりR,G,B用復元フィルタF,F,Fを生成(算出)する際には、これらの撮像条件が取得される。復元フィルタ生成部135は、生成したR,G,B用復元フィルタF,F,Fを前述の記憶部36に記憶させる。
【0170】
R,G,B用復元フィルタF,F,Fは、例えばα×β(α及びβは2以上の整数)のタップによって構成される実空間上のフィルタであり、処理対象の第1の画像データD1のR,G,B画像データにそれぞれ適用される。これにより、各タップに割り当てられるフィルタ係数と対応の画素データ(R,G,B画像データの処理対象画素データ及び隣接画素データ)とを加重平均演算(デコンボリューション演算)することで、回復処理後の画素データを算出することができる。R,G,B用復元フィルタF,F,Fを用いた加重平均処理を、対象画素を順番に代えながら、R,G,B画像データを構成する全画素データに適用することで、点像復元処理を行うことができる。
【0171】
図18は、点像復元処理の位相補正と振幅補正を説明するための説明図である。図18に示すように、点像復元処理は、「位相補正」(「位相復元」ともいう)と、「振幅補正」(「振幅復元」ともいう)とに大別することができる。「位相補正」は、R,G,B用復元フィルタF,F,Fを用いた第1の画像データD1のR,G,B画像データの位相成分の復元処理である。具体的に「位相補正」には、R,G,B画像データの位相ずれの復元と、非点対称な点拡がり関数K,K,K(PSF)の形状に起因する位相成分の復元とが含まれる。なお、非点対称な点拡がり関数の形状に起因する位相成分の復元とは、非点対称な点広がり形状を点対称な点広がり形状に補正することである。
【0172】
「振幅補正」は、第1の画像データD1の振幅成分(MTF)の復元処理である。振幅補正により、点広がり形状を点(デルタ関数)に補正することができる。
【0173】
図17に戻って、点像復元処理部133Aは、撮像部26から入力された原画像データ(第1の画像データD1)のR,G,B画像データに対して、振幅復元及び位相補正のためのR,G,B用復元フィルタF,F,Fを用いた点像復元処理を行う。これにより、本来の被写体像(点像)により近い像(回復画像)を表す回復画像データ(第1の画像データD1)が得られる。
【0174】
<第2の撮像モード時の点像復元処理>
図19は、第2の撮像モード時の点像復元処理部133Bによる点像復元処理を説明するための説明図である。図19に示すように、第2の撮像モード時に点像を被写体として撮像を行う場合、被写体の近赤外光画像は監視カメラ130の光学系(レンズ16及び絞り17など)を通して撮像部26により撮像され、この撮像部26から第2の画像データD2が出力される。この第2の画像データD2は、近赤外光に対する監視カメラ130の光学系の光学特性に基づく点拡がり現象によって振幅成分と位相成分とが劣化し、本来の被写体像(点像)は非点対称なボケ画像となる。
【0175】
点像復元処理部133Bによる点像復元処理では、近赤外光に対する監視カメラ130の光学系の光学特性(本発明の第1の光学特性に相当)として、近赤外光に対する点拡がり関数(PSF:Point spread function)KIRを予め求めておく。この点拡がり関数KIRは、本発明の第1の点拡がり関数に相当するものである。
【0176】
本実施形態では、近赤外光に対応する点拡がり関数KIR(PSF)が予め求められて、前述の復元フィルタ生成部135に入力される。復元フィルタ生成部135は、近赤外光に対応する点拡がり関数KIR(PSF)に基づき、点像復元処理部133Bによる点像復元処理で用いられる赤外用復元フィルタFIRを生成する。赤外用復元フィルタFIRは、第2の画像データD2の取得時の撮像条件に応じた監視カメラ130の光学系の点像情報(PSF)から、所定の振幅復元及び位相補正フィルタ算出アルゴリズムによって得られる。復元フィルタ生成部135は、生成した赤外用復元フィルタFIRを前述の記憶部36に記憶させる。
【0177】
点像復元処理部133Bは、撮像部26から入力された原画像データ(第2の画像データD2)に対して、振幅復元及び位相補正のための赤外用復元フィルタFIRを用いた点像復元処理を行う。ここで、夜間の近赤外光画像の撮像時には近赤外光以外の光の影響はほぼ無視することができるので、倍率色収差は発生しない。このため、点像復元処理部133Bによる点像復元処理では、第2の画像データD2の振幅成分の復元(振幅補正)と、非点対称な点拡がり関数KIRの形状に起因する位相成分の復元(位相補正)とが行われる。これにより、本来の被写体像(点像)により近い像(回復画像)を表す回復画像データ(第2の画像データD2)が得られる。
【0178】
<第4実施形態の効果>
以上のように第4実施形態の監視カメラ130では、点像復元処理部133A及び点像復元処理部133Bによる点像復元処理より、第1の画像データD1及び第2の画像データD2の振幅成分の復元と位相成分の復元とが行われるので、前述の倍率色収差補正処理を行った場合と同様の効果が得られ、可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)を補正することができる。
【0179】
<第4実施形態の他実施例>
第4実施形態では、第1の画像データD1及び第2の画像データD2の両方に点像復元処理を行っているが、第2の画像データD2に対してのみ点像復元処理を行ってもよい。また、上記第4実施形態では、第2の画像データD2の全体に点像復元処理を行っているが、例えば、点像復元処理よりも前に動体領域V2の検出を行い、この検出結果に基づき第2の画像データD2内の動体領域V2に対して点像復元処理を行ってもよい。すなわち、点像復元処理部133Bは、少なくとも第2の画像データD2内の動体領域V2に対して点像復元処理を行えばよい。
【0180】
また、第4実施形態では、上記第1実施形態の監視カメラ10において倍率色収差補正処理の代わりに点像復元処理を行う実施形態について説明を行ったが、上記第2実施形態の監視カメラ90において倍率色収差補正処理の代わりに点像復元処理を行う実施形態にても本発明を適用することができる。また、第4実施形態では、2つの点像復元処理部133Aと点像復元処理部133Bが設けられているが、1つの点像復元処理部で第1の画像データD1及び第2の画像データD2に対する点像復元処理を行ってもよい。
【0181】
[その他]
上記実施形態では、いわゆる定点観測を行う監視カメラを例に挙げて説明を行ったが、パンチルト機能を有しており複数の被写体(広範囲な監視領域)を撮像可能な監視カメラにも本発明を適用することができる。
【0182】
上記各実施形態では、第1の画像処理部が非変化領域検出部42として機能しているが、非変化領域検出部42を省略することも可能である。また、上記各実施形態では、倍率色収差補正処理または鮮鋭化処理または点像復元処理により可視光と近赤外光の色収差(倍率色収差)の補正を行っているが、レンズ16のレンズ枚数等に制約が無ければ色収差(倍率色収差)をある程度は抑えることができる。よって、この場合には色収差(倍率色収差)の補正を省略してもよい。
【0183】
上記実施形態では、固定位置に設置される本発明の撮像装置として監視カメラを例に挙げて説明を行ったが、本発明の撮像装置には、固定位置に設置されており特定の被写体(監視領域)を撮像する市販のデジタルカメラやスマートフォン等の各種の撮像装置が含まれる。
【0184】
上記各実施形態では、第2の撮像モードにおいて、RGB画素を有する撮像素子を備える撮像部26により第2の画像データD2を取得しているが、RGB画素の他に近赤外光画素を有する撮像素子を備える撮像部により第2の画像データD2を取得してもよい。
【0185】
上述の実施形態で説明した撮像装置(監視カメラ)として、撮像装置のコンピュータを機能させるためのプログラム(前述の画像処理用プログラム37B等)をCD−ROMや磁気ディスクやその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一時的な情報記憶媒体)に記録し、情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。このような情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
【符号の説明】
【0186】
10…監視カメラ,12…レンズユニット,16…レンズ,25…赤外線カットフィルタ,26…撮像部,35…画像処理部,37B…画像処理用プログラム,42…非変化領域検出部,43…背景画像データ生成部,46…倍率色収差補正処理部,48…動体領域検出部,49…変換部,50…選択部,90…監視カメラ,91…画像処理部,94…色情報抽出部,100…選択部,120…監視カメラ,121…画像処理部,123…鮮鋭化処理部,130…監視カメラ,131…画像処理部,133A…点像復元処理部,133B…点像復元処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19