(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、通信トラヒックの増大に伴い、光ファイバを利用した光通信ネットワークの大容量化が求められている。光通信ネットワークでは、高速・大容量通信を実現するために、光変調器を備えた光送信器が用いられる。代表的な光変調器としては、マッハツェンダ(Mach−Zehnder、以下「MZ」と称する。)変調器や電界吸収型(Electro−Absorption、以下「EA」と称する。)変調器が知られている。
【0003】
近年、光送信器は、MZ変調器やEA変調器等によって高度な変調波形を生成するために、ディジタル信号処理回路(Digtal Signal Processor、以下「DSP」と称する場合がある。)を搭載している。具体的に、光送信器は、送信すべき信号をDSPによりディジタル信号処理を行った後、ディジタル/アナログ変換回路(以下、「D/A変換回路」と称する場合がある。)によってディジタル信号処理された信号をアナログ信号に変換し、光変調器の駆動電圧として入力する。これにより、光送信器は、光変調器によって光の強度を送信すべき信号に応じて変調することにより、光信号を生成して光ファイバに送信する。このようにDSPによってディジタル信号処理を行うことにより、従来のオン・オフ変調(on−off keying)による光伝送では困難であった多値の光変調が可能となる。
【0004】
近年、より高いビットレートの多値変調を行うために、位相変調だけではなく、多値のパルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation 、以下、「PAM」と称する場合がある。)を用いて光変調を行う光送信器が検討されている。しかしながら、MZ変調器やEA変調器等の光変調器は、非線形な伝達特性を有するため、光変調器の駆動方法に工夫が必要となる。例えば、一般的なMZ変調器の駆動電圧に対する光出力の特性(伝達特性)は、
図13に示すように、サインカーブ状の非線形な特性となる。そのため、光出力の振幅を最大値まで得たい場合には、線形領域500だけでなく、非線形領域501まで使用しなければならない。
【0005】
しかしながら、MZ変調器を非線形領域501まで駆動させる場合、DSPの信号処理のみならず、ディジタル信号処理された信号をアナログ信号に変換するD/A変換回路の特性も問題となる。具体的には、一般的なD/A変換回路は、例えば
図14に示す回路構成を有し、
図15に示すような線形な入出力特性(入力したディジタル信号に対する出力されるアナログ信号の特性)を有する。そのため、線形な入出力特性を有するD/A変換回路を光送信器に用いると、MZ変調器の非線形領域501において光出力が歪んでしまい、
図16に示すように、DSPから出力されたディジタル信号の1ビット毎の変化に対して、光送信器の光出力を線形(等間隔)に制御することができない。
【0006】
光変調器の非線形領域における光出力の歪みを補償するための従来技術として、例えば特許文献1に開示がある。特許文献1には、D/A変換回路内部に設けられた各定電流源の電流値に適当な重みづけを与えてD/A変換回路の入出力特性を非線形にすることにより、光変調器の非線形領域における光出力の歪みを補償する技術が開示されている。また、特許文献1に記載のD/A変換回路は、光出力の非線形性の補償の精度を上げるために、デコーダによって、DSPから入力されたNビットのバイナリ信号を2N−1の温度計コードに変換し、変換した温度計コードに基づいて上記定電流源の合計電流量を調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のD/A変換回路では、ディジタル入力数が増加すると、バイナリ信号を温度計コードに変換するデコーダの回路規模が指数関数的に増加するという問題がある。D/A変換回路の回路規模の増大は、光送信器のコストの増大を招き、今後、4値や8値等のPAMの多値化が進んだ場合に特に問題となる。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、D/A変換回路において、回路規模を抑えつつ、所望の入出力特性を実現することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、光送信器において、コストを抑えつつ、更なる高精度化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るディジタル/アナログ変換回路は、Nビットのディジタル信号を1ビット毎に入力するN(Nは2以上の整数)個の入力端子と、入力した電流に応じた電圧を生成する電圧生成部と、前記入力端子毎に対応して設けられたN個の電流回路を含む第1電流回路群と、前記入力端子の組合せ毎に対応して設けられた電流回路を含む第2電流回路群と、夫々の前記入力端子に入力されたディジタル信号の論理レベルに応じて、前記第1電流回路群および前記第2電流
回路群に含まれる前記電流回路の電流を前記電圧生成部に供給するか否かを前記電流回路毎に制御する制御部とを備え
、前記制御部は、前記入力端子に入力されたディジタル信号が第1論理レベルである場合に、前記第1電流回路群における当該入力端子に対応した電流回路を制御して、その電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記入力端子に入力されたディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第1電流回路群における当該入力端子に対応した電流回路を制御して、その電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、少なくとも二つの前記入力端子に入力されたディジタル信号が共に前記第1論理レベルである場合に、前記第2電流回路群における当該入力端子の組合せに対応した電流回路を制御して、その電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記少なくとも二つの前記入力端子に入力されたディジタル信号の少なくとも一つが前記第2論理レベルである場合に、前記第2電流回路群における当該入力端子の組合せに対応した電流回路を制御して、その電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止することを特徴とする。
【0013】
上記
ディジタル/アナログ変換回路において、前記入力端子は、第1ディジタル入力端子と、第2ディジタル入力端子とを含み、前記第1電流
回路群は、前記第1ディジタル入力端子に対応して設けられた第1電流回路と、前記第2ディジタル入力端子に対応して設けられた第2電流回路とを含み、前記第2電流回路群は、第3電流回路を含み、前記制御部は、第1制御回路と、第2制御回路と、第3制御回路とを含み、前記第1制御回路は、前記第1ディジタル入力端子に入力された第1ディジタル信号が前記第1論理レベルである場合に、前記第1電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第1ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第1電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第2制御回路は、前記第2ディジタル入力端子に入力された第2ディジタル信号が前記第1論理レベルである場合に、前記第2電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第2ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第2電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第3制御回路は、前記第1ディジタル信号と前記第2ディジタル信号とが共に前記第1論理レベルである場合に、前記第3電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第1ディジタル信号と前記第2ディジタル信号の少なくとも一つが前記第2論理レベルである場合に、前記第3電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止してもよい。
【0014】
上記
ディジタル/アナログ変換回路において、前記入力端子は、第1ディジタル入力端子と、第2ディジタル入力端子と、第3ディジタル入力端子とを含み、前記第1電流
回路群は、前記第1ディジタル入力端子に対応して設けられた第1電流回路と、前記第2ディジタル入力端子に対応して設けられた第2電流回路と、前記第3ディジタル入力端子に対応して設けられた第3電流回路とを含み、前記第2電流回路群は、第4電流回路と、第5電流回路と、第6電流回路と、第7電流回路と、を含み、前記制御部は、第1制御回路と、第2制御回路と、第3制御回路と、第4制御回路と、第5制御回路と、第6制御回路と、第7制御回路とを含み、前記第1制御回路は、前記第1ディジタル入力端子に入力された第1ディジタル信号が前記第1論理レベルである場合に、前記第1電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第1ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第1電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第2制御回路は、前記第2ディジタル入力端子に入力された第2ディジタル信号が第1論理レベルである場合に、前記第2電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第2ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第2電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第3制御回路は、前記第3ディジタル入力端子に入力された第3ディジタル信号が前記第1論理レベルである場合に、前記第3電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第3ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第3電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第4制御回路は、前記第1ディジタル信号と前記第2ディジタル信号とが共に前記第1論理レベルである場合に、前記第4電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第4ディジタル信号が第2論理レベルである場合に、前記第4電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第5制御回路は、前記第1ディジタル信号と前記第3ディジタル信号とが共に前記第1論理レベルである場合に、前記第5電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第1ディジタル信号と前記第3ディジタル信号の何れか一方が前記第2論理レベルである場合に、前記第5電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第6制御回路は、前記第2ディジタル信号と前記第3ディジタル信号とが共に前記第1論理レベルである場合に、前記第6電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第2ディジタル信号と前記第3ディジタル信号の何れか一方が前記第2論理レベルである場合に、前記第6電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止し、前記第7制御回路は、前記第1ディジタル信号、前記第2ディジタル信号、および前記第3ディジタル信号が全て前記第1論理レベルである場合に、前記第7電流回路の電流を前記電圧生成部に供給し、前記第1ディジタル信号、前記第2ディジタル信号、および前記第3ディジタル信号の少なくとも一つが前記第2論理レベルである場合に、前記第7電流回路の電流の前記電圧生成部への供給を停止するようにしてもよい。
【0015】
上記
ディジタル/アナログ変換回路において、前記電圧生成部は、R−2R型の抵抗ラダー回路を含むようにしてもよい。
【0016】
本発明に係る光送信器は、発光素子を含み一定強度の光を出力する発光部と、入力された送信すべき信号に対して、所定の光変調方式に応じたディジタル信号処理を行うディジタル信号処理装置と、前記ディジタル信号処理装置による信号処理結果をアナログ信号に変換する上記ディジタル/アナログ変換回路と、前記
ディジタル/アナログ変換回路から出力されたアナログ信号の電圧レベルに応じて前記発光部から出力された光の強弱を変化させて出力する光変調器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、D/A変換回路において、回路規模を抑えつつ、所望の入出力特性を実現することが可能となる。また、光送信器において、コストを抑えつつ、更なる高精度化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0020】
≪光送信器の構成≫
図1に、本発明の実施形態1に係るD/A変換回路を備えた光送信器の構成を示す。
同図に示される光送信器100は、外部から入力された電気信号を光信号に変換して、光ファイバ等から成る光ネットワークに出力する装置である。光送信器100は、例えば、ディジタル信号処理装置2、ディジタル/アナログ変換回路(以下、「D/A変換回路」と称する。)1、発光部3、および光変調器4から構成される。
【0021】
ディジタル信号処理装置2は、送信対象の信号(電気信号)VINを入力し、入力信号VINに対して所定の信号処理を行う。具体的には、ディジタル信号処理装置2は、入力信号VINから例えばPAM用のディジタル信号を生成するための信号処理を行い、信号処理結果を例えばN(Nは2以上の整数)ビットのディジタル信号として出力する。ディジタル信号処理装置2は、例えばDSP等のプログラム処理装置によって実現される。以下、ディジタル信号処理装置2から出力されるNビットの信号を「ディジタル信号D0〜Dn」と称する。なお、nは1以上の整数である。
【0022】
発光部3は、半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の発光素子を含み、一定強度の光を出力する。
光変調器4は、発光部3から出力された一定強度の光に対して外部から制御を加えることにより、光の強度を変化させた光信号(光の強弱信号)OPOUTを出力する外部変調方式の変調器である。光変調器4としては、誘電体材料による電気光学効果を利用して光を変調する方式の変調器(MZ変調器等)や、半導体の電界吸収効果を用いて光を変調する方式の変調器(EA変調器等)を例示することができる。
【0023】
具体的に、光変調器4は、後述するD/A変換回路1によってディジタル信号D0〜Dnをアナログ信号に変換した駆動電圧VOUTの電圧レベルに応じて、発光部3から出力された光の強弱を変化させて出力する。
【0024】
D/A変換回路1は、ディジタル信号処理装置2から出力されたディジタル信号D0〜Dnをアナログ信号に変換する。上記アナログ信号は、例えば電圧信号であり、上述したように駆動電圧VOUTとして光変調器4に入力される。
D/A変換回路1は、光変調器4の駆動電圧に対する光出力の特性(伝達特性)に対応するように、ディジタル入力に対するアナログ出力特性(入出力特性)が調整可能に構成されている。以下、D/A変換回路1について詳細に説明する。
【0025】
≪D/A変換回路1の概要≫
図2に、D/A変換回路1の内部構成を示す。同図に示されるように、D/A変換回路1は、入力端子IN0〜INn、制御部14、第1電流回路群11、第2電流回路群12、および電圧生成部13を備える。
【0026】
入力端子IN0〜INnは、ディジタル信号処理装置2から出力されたディジタル信号D0〜Dnを入力する。入力端子IN0〜INnの個数は、ディジタル信号処理装置2から出力されるディジタル信号D0〜Dnの数に対応している。
【0027】
なお、以下では、説明の便宜上、ディジタル信号D0〜Dnの論理レベルとして、第1論理レベルをロー(Low)レベル、第2論理レベルをハイ(High)レベルとするが、これに限定されるものではない。
【0028】
電圧生成部13は、後述する第1電流回路群11および第2電流回路群12の各電流回路の電流を加算した出力電流IOUTに応じて、出力電圧VOUTを生成する。電圧生成部13は、例えば単数または複数の抵抗からなる抵抗回路によって構成され、出力電流IOUTを上記抵抗によって出力電圧VOUTに変換する。出力電圧VOUTは、D/A変換回路1の出力端子OUTから出力され、光変調器4に駆動電圧として供給される。
なお、出力電圧VOUTは、光変調器4に直接入力されても良いし、バッファ回路を介して光変調器4に入力されても良い。
【0029】
第1電流回路群11は、入力端子IN0〜INn毎に対応して設けられたN個の電流回路110_0〜110_n(総称する場合は「電流回路110」と表記する。)を含む。
【0030】
第2電流回路群12は、入力端子IN0〜INn(ディジタル信号D0〜Dn)の組合せ毎に対応して設けられた電流回路120_0〜120_m(総称する場合は「電流回路120」と表記する。)を含む。なお、mは1以上の整数である。
【0031】
例えば、D/A変換回路1が2つの入力端子IN0、IN1を有する場合、入力端子IN0、IN1の組合せは(IN0、IN1)のみである。そのため、第2電流回路群12の電流回路として、上記組合せ(IN0、IN1)に対応する電流回路120_0が設けられる。詳細は後述するが、電流回路120_0の電圧生成部13に対する電流の供給と遮断は、入力端子IN0、IN1に入力されたディジタル信号D0、D1に基づいて制御される。
【0032】
また、例えば、D/A変換回路1が3つの入力端子IN0、IN1、IN2を有する場合、入力端子IN0〜IN2の組合せは、(IN0、IN1)、(IN0、IN2)、(IN1、IN2)、および(IN0、IN1、IN2)の4つである。そのため、第2電流回路群12は、(IN0、IN1)の組合せに対応した電流回路120_0と、(IN0、IN2)の組合せに対応した電流回路120_1と、(IN1、IN2)の組合せに対応した電流回路120_2と、(IN0、IN1、IN2)の組合せに対応した電流回路120_3とを含む。詳細は後述するが、電流回路120_0〜120_3の電圧生成部13に対する電流の供給と遮断は、夫々の電流回路120_0〜120_3に対応する入力端子に入力されたディジタル信号D0〜D2に基づいて制御される。
【0033】
制御部14は、入力端子IN0〜INnに入力されたディジタル信号D0〜Dnに基づいて、第1電流回路群11および第2電流回路群12に含まれる電流回路110、120の電流を電圧生成部13に供給するか否かを電流回路110、120毎に制御する。
【0034】
具体的に、制御部14は、入力端子IN0〜INnに入力されたディジタル信号が第1論理レベル(ローレベル)である場合、当該入力端子に対応する電流回路110を制御して、その電流回路の電流を電圧生成部13に供給する。一方、入力端子IN0〜INnに入力されたディジタル信号が第2論理レベル(ハイレベル)である場合、制御部14は、当該入力端子に対応する電流回路110を制御して、その電流回路の電流の電圧生成部13への供給を停止する。
【0035】
また、制御部14は、少なくとも二つの入力端子に入力されたディジタル信号が共に第1論理レベル(ローレベル)である場合に、第2電流回路群12における当該入力端子の組合せに対応した電流回路120を制御して、その電流回路の電流を電圧生成部13に供給する。一方、上記少なくとも二つの入力端子に入力されたディジタル信号の少なくとも一つが第2論理レベル(ハイレベル)である場合に、第2電流回路群12における当該入力端子の組合せに対応した電流回路120を制御して、その電流回路の電流の電圧生成部13への供給を停止する。
【0036】
上記のD/A変換回路1によれば、光変調器4の伝達特性に対応するように、夫々の電流回路110、120の電流値を適切に設定することにより、従来のD/A変換回路よりも小さな回路規模で、ディジタル入力(ディジタル信号D0〜Dn)に対して所望の非線形なアナログ出力(駆動電圧VOUT)を生成することが可能となる。以下、このことについて、D/A変換回路1の具体的な回路構成を例示して、更に詳細に説明する。
【0037】
≪D/A変換回路1の具体例1≫
図3は、D/A変換回路1の第1の回路構成例を示す図である。同図に示されるD/A変換回路1_1は、4値のPAM(PAM4)に対応した回路構成を有する。
【0038】
具体的に、D/A変換回路1_1は、入力端子としてディジタル信号D0、D1を夫々入力する2つの入力端子IN0、IN1を含む。また、D/A変換回路1_1は、第1電流回路11群として2つの電流回路110_0、110_1と、第2電流回路12群として1つの電流回路120_0とを有する。更に、D/A変換回路1_1は、制御部14として制御回路140_0、140_1、141_0を有する。
【0039】
電圧生成部13は、例えば、電源電圧VCCが供給される電源ラインと出力端子OUTとの間に接続された抵抗R0から構成される。これにより、出力端子OUTから、電圧VOUT(=VCC−R0×IOUT)が出力される。
【0040】
制御回路140_0は、入力端子IN0に入力されたディジタル信号D0が第1論理レベル(ローレベル)である場合に、電流回路110_0を制御して、電流回路110_0の電流を電圧生成部13に供給する。一方、ディジタル信号D0が第2論理レベル(ハイレベル)である場合に、制御回路140_0は、電流回路110_0を制御して、電流回路110_0の電流の電圧生成部13への供給を停止する。
【0041】
同様に、制御回路140_1は、入力端子IN0に入力されたディジタル信号D1が第1論理レベルである場合に、電流回路110_1を制御して、電流回路110_1の電流を電圧生成部13に供給する。一方、ディジタル信号D1が第2論理レベルである場合に、制御回路140_1は、電流回路110_1の電流の電圧生成部13への供給を停止させる。
【0042】
制御回路140_0、140_1は、例えばD型フリップフロップ回路(DFF)から構成され、入力されたディジタル信号D0、D1をクロック信号CLKに同期して取り込み、取り込んだ信号の論理レベルを反転させた制御信号CN0、CN1を、対応する電流回路110_0、110_1に夫々供給する。すなわち、制御信号CN0は、ディジタル信号D0の反転信号となり、制御信号CN1は、ディジタル信号D1の反転信号となる。
【0043】
制御回路141_0は、ディジタル信号D0とディジタル信号D1が共に第1論理レベル(ローレベル)である場合に、電流回路120_0を制御して、電流回路120_0の電流を電圧生成部13に供給する。一方、ディジタル信号D0とディジタル信号D1の少なくとも一つが第2論理レベル(ハイレベル)である場合に、制御回路141_0は、電流回路120_0を制御して、電流回路120_0の電流の電圧生成部13への供給を停止させる。
【0044】
具体的に、制御回路141_0は、ディジタル信号D0、D1の両方が第1論理レベルであるときに、第2論理レベルの制御信号CN3を出力し、ディジタル信号D0、D1の何れか一方が第2論理レベルであるときに、第1論理レベルの制御信号CN3を出力する論理回路から構成される。上記論理回路としては、例えば、
図3に示されるようなディジタル信号D0、D1の反転信号(CN0、CN1)の論理積演算を行うAND回路や、
図4に示されるようなディジタル信号D0、D1の否定論理和演算を行うNOR回路等を例示することができる。
なお、上述した制御回路140_0、140_1、141_0は、所望の信号を生成することができれば、上述した回路構成例に限定されるものではない。
【0045】
電流回路110_0は、
図3に示されるように、電流源I0と、電流源I0に直列に接続されたスイッチ素子SW0とから構成される。スイッチ素子SW0は、制御信号CN0が第2論理レベル(ハイレベル)である場合にオンし、制御信号CN0が第1論理レベル(ローレベル)である場合にオフする。これにより、制御信号CN0が第2論理レベルである場合に電流源I0の電流が電圧生成部13に供給され、制御信号CN0が第1論理レベルである場合に電流源I0の電流の電圧生成部13への供給が遮断される。
【0046】
電流回路110_1は、電流回路110_0と同様に、電流源I1とスイッチ素子SW1とから構成され、制御信号CN1が第2論理レベルであるときにスイッチSW1がオンし、制御信号CN1が第1論理レベルであるときにオフすることにより、電圧生成部13に対する電流源I1の電流の供給と遮断が制御される。
【0047】
電流回路120_0は、電流回路110_0と同様に、電流源I3とスイッチ素子SW3とから構成され、制御信号CN3が第2論理レベルであるときにスイッチSW3がオンし、制御信号CN3が第1論理レベルであるときにオフすることにより、電圧生成部13に対する電流源I3の電流の供給と遮断が制御される。
【0048】
図5に、D/A変換回路1_1の入出力関係を示す。なお、同図において、I0〜I2は、電流源I0〜I2の電流値を表している。
【0049】
同図に示されるように、D/A変換回路1_1によれば、ディジタル入力D0、D1を順次変化させることにより、駆動電圧VOUTは前値のディジタル入力に対して変化量a,b,cをもって順次変化していく。出力電流IOUTは、ディジタル入力D0、D1を
図5のように順に変化させることにより、“I0+I1+I2”、“I1”、“I0”、“0(ゼロ)”の順に変化することから、駆動電圧VOUTの変化量a,b,cは、出力電流IOUTの変化量によって決まる。例えば、変化量aは“R0×|I0+I2|”であり、変化量bは“R0×|I1−I0|”であり、変化量cは“R0×|I0|”である。
【0050】
したがって、電流源I0〜I2の電流値を適宜調整すれば、ディジタル入力D0、D1に対して所望の非線形な出力電圧VOUTを生成することが可能となる。
【0051】
ここで、一例として、光送信器100において
図6に示す伝達特性200を有するEA変調器を光変調器4として採用した場合を考える。この場合において、EA変調器の伝達特性に対応するように電流源I0〜I2の電流値を調整することにより、出力電圧VOUTの変化量a,b,cを
図7に示すように設定する。
【0052】
これによれば、
図7に示すように、ディジタル入力D0、D1の値を順次変化させたときのEA変調器による光出力OPOUTの変化量を等しくすることが可能となる。
【0053】
別の一例として、光送信器100において
図8に示す伝達特性300を有するMZ変調器を光変調器4として採用した場合を考える。この場合において、電流源I0〜I2の電流値を調整して出力電圧VOUTの変化量a,b,cを
図9に示すように設定する。すなわち、伝達特性300の非線形領域が対称な特性となっているので、c=aとなるように設定する。
【0054】
これによれば、
図9に示すように、ディジタル入力D0、D1の値を順次変化させたときのMZ変調器による光出力OPOUTの変化量を等しくすることができる。
【0055】
≪D/A変換回路1の具体例2≫
図10は、D/A変換回路1の第2の回路構成例を示す図である。同図に示されるD/A変換回路1_2は、8値のPAM(PAM8)に対応した回路構成を有する。
【0056】
具体的に、D/A変換回路1_2は、入力端子としてディジタル信号D0、D1、D2を夫々入力する3つの入力端子IN0〜IN2を有する。また、D/A変換回路1_2は、第1電流回路11群として3つの電流回路110_0〜110_2と、第2電流回路12群として4つの電流回路120_0〜120_3とを有する。更に、D/A変換回路1_2は、制御部14として制御回路140_0〜140_2、141_0〜141〜141_3を有する。なお、D/A変換回路1_2において、D/A変換回路1_1と同様の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
制御回路140_2は、制御回路140_0、140_1と同様に、D型フリップフロップ回路(DFF)から構成される。具体的に、制御回路140_2は、入力端子IN2に入力されたディジタル信号D2を取り込み、取り込んだ信号の反転信号を制御信号CN2として出力する。
【0058】
制御回路141_1は、ディジタル信号D0、D2の両方が第1論理レベル(ローレベル)であるときに、第2論理レベルの制御信号CN4を出力し、ディジタル信号D0、D1の何れか一方が第2論理レベルであるときに、第1論理レベルの制御信号CN4を出力する。
【0059】
また、制御回路141_2は、ディジタル信号D1、D2の両方が第1論理レベルであるときに、第2論理レベルの制御信号CN5を出力し、ディジタル信号D1、D2の何れか一方が第2論理レベルであるときに、第1論理レベルの制御信号CN5を出力する。
【0060】
更に、制御回路141_3は、ディジタル信号D0、ディジタル信号D1、およびディジタル信号D2の全てが第1論理レベルであるときに、第2論理レベルの制御信号CN6を出力し、ディジタル信号D0、ディジタル信号D1、およびディジタル信号D2の少なくとも一つが第2論理レベルであるときに、第1論理レベルの制御信号CN6を出力する。
【0061】
上記制御回路141_1〜141_3は、制御回路141_0同様に、AND回路やNOR回路等によって実現することができる。
【0062】
電流回路110_2は、電流回路110_0、110_1と同様の回路構成を有する。具体的に、電流回路110_2は、制御信号CN2が第2論理レベルであるときにスイッチSW2がオンし、制御信号CN2が第1論理レベルであるときにオフすることにより、電圧生成部13に対する電流源I2の電流の供給と遮断が制御される。
【0063】
また、電流回路120_1〜120_3は、電流回路120_0と同様の回路構成を有する。具体的に、電流回路120_1〜120_3は、対応する制御信号CN4〜CN6が第2論理レベル(ハイレベル)であるときに対応する各スイッチSW4〜SW6がオンし、対応する制御信号CN4〜CN6が第1論理レベル(ローレベル)であるときにオフすることにより、電圧生成部13に対する各電流源I4〜I6の電流の供給と遮断が制御される。
【0064】
図11に、D/A変換回路1_2の入出力関係を示す。なお、同図において、I0〜I6は、電流源I0〜I6の電流値を表している。
【0065】
同図に示されるように、D/A変換回路1_2によれば、ディジタル入力D0、D1、D2を順次変化させることにより、駆動電圧VOUTは前値のディジタル入力に対して変化量a〜gをもって順次変化していく。出力電流IOUTは、ディジタル入力D0、D1を
図10のように順番に変化させることにより、“I0+I1…+I6”、“I1+I2+I5”、“I0+I2+I4”、“I2”、“I0+I1+I3”、“I1”、“I0”、“0(ゼロ)”の順に変化することから、駆動電圧VOUTのa〜gは、PAM4用のD/A変換回路1_1と同様に、電流IOUTの変化量によって決まる。
【0066】
したがって、電流源I0〜I6の電流値を適宜調整することにより、前述したD/A変換回路1_1と同様に、ディジタル入力D0、D1、D2に対して所望の非線形な出力電圧VOUTを生成することが可能となる。すなわち、ディジタル入力D0、D1、D2の値を順次変化させたときの光変調器4による光出力OPOUTの変化量を等しくすることが可能となる。
【0067】
≪D/A変換回路1の具体例3≫
図12は、D/A変換回路1の第3の回路構成例を示す図である。同図に示されるD/A変換回路1_3は、前述のPAM4に対応したD/A変換回路1_1と、出力電圧VOUTを生成する電圧生成部の回路構成が異なる点で相違し、その他の点はD/A変換回路1_1と同様である。なお、D/A変換回路1_3において、D/A変換回路1_1と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0068】
具体的に、D/A変換回路1_3は、電圧生成部13の代わりに電圧生成部23を備える。電圧生成部23は、R−2R型の抵抗ラダー回路から構成される。例えば、電圧生成部23は、スイッチSW0の一端が接続されるノードND0と電源ラインVCCとの間に接続されたR1と、電源ラインVCCと出力端子OUTとの間に接続された抵抗R2と、ノードND0と出力端子OUTとの間に接続された抵抗R3と、を含む。抵抗R1の抵抗値を“R”としたとき、抵抗R2の抵抗値は“2R”であり、抵抗R3の抵抗値は“R”である。
【0069】
これによれば、抵抗R1〜R3の値によって各電流源I0〜I2の電流値の重みづけを調整することができるので、各電流源I0〜I2の電流値のみによって出力電圧VOUTの変化量a,b,cを調整する場合に比べて、D/A変換回路全体の消費電流を抑えることが可能となる。
【0070】
以上、具体的な回路構成例を示して説明したように、本発明に係るD/A変換回路1によれば、電流回路110、120の夫々の電流値を適宜設定することにより、光変調器4の非線形な伝達特性に対応したD/A変換の入出力特性を容易に実現することができる。
【0071】
また、本実施の形態において示した具体例1乃至3に係るD/A変換回路1_1〜1_3(
図3、
図10、および
図12参照)によれば、上述の特許文献1に記載のD/A変換回路のような温度計コードを生成するためのデコーダ等が不要となるので、各電流回路110、120を制御するための制御回路14の回路規模(論理演算素子の個数)を縮小することが可能となる。
【0072】
すなわち、本発明に係るD/A変換回路1によれば、回路規模を抑えつつ、非線形な特性を精度よく実現することができる。これにより、
図1のように本発明に係るD/A変換回路1を光送信器に適用すれば、光変調器を精度よく制御することができるので、光出力の歪みを抑えつつ光出力の幅を拡大することができ、コストを抑えつつ、光送信器の高精度化を図ることが可能となる。
【0073】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0074】
例えば、D/A変換回路1の具体例として4値のPAMと8値のPAMに対応した回路構成を例示したが、これに限られず、その他の変調方式に対応するように、D/A変換回路1の回路構成を種々変更することが可能である。例えば、入力端子D0〜Dnの個数に応じて、電流回路110、120や制御回路140、141の個数を調整すればよい。
【0075】
また、光送信器100の光変調器4として、MZ変調器とEA変調器を例示したが、これに限られず、その他の変調器も適用することができる。この場合、適用した変調器の伝達特性に対応するように、電流回路110、120を構成する夫々の電流源の電流値を調整すればよい。
【0076】
また、
図12において、R−2R型の抵抗ラダー回路をPAM4用のD/A変換回路に適用する場合を例示したが、これに限られず、
図10に示したPAM8用のD/A変換回路1_2の電圧生成部にR−2R型の抵抗ラダー回路を適用することも可能である。これによれば、D/A変換回路1_2全体の消費電流を低減することが可能となる。