(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域は、前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられるとともに、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との間に不活性ガスを供給可能な分離領域が設けられ、
前記第1の原料ガス及び前記第2の原料ガス供給工程と前記反応ガス供給工程との間に、前記基板上に前記不活性ガスを供給する分離工程が更に設けられる請求項7に記載の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。まず、本発明の実施の形態の一例である成膜装置について、
図1〜
図12を参照して説明する。
【0012】
(成膜装置)
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る成膜装置は、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する載置台である回転テーブル2と、を備えている。そして、この成膜装置では、後で詳述するように、例えば直径寸法が300mmサイズのウエハWの表面にALD法により反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜に対してプラズマ改質を行うように構成されている。この時、プラズマ改質を行うにあたって、プラズマによって薄膜の表面が結晶化して粗化ないように成膜プロセスが行われるが、このような成膜プロセスを実現できるように成膜装置が構成されている。以下、成膜装置の各部について詳述する。
【0013】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、N
2(窒素)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。容器本体12の上面の周縁部には、例えばOリング等のシール部材13が、リング状に設けられる。
【0014】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。
図1中、回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部23と、回転軸22及び駆動部23を収納するケース体20とが設けられている。ケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、ケース体20には、回転テーブル2の下方領域にN
2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0015】
図2及び
図3に示すように、回転テーブル2の表面部には、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として設けられている。凹部24は、ウエハWを当該凹部24に落とし込む(収納する)と、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うように、直径寸法及び深さ寸法が設定されている。凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0016】
図2及び
図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる6本のノズル31、32、33、34、41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、33、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、第2の処理ガスノズル32、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル33がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル34の上方側には、
図1に示すように、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出される反応ガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部80が設けられている。このプラズマ発生部80については後で詳述する。
【0017】
処理ガスノズル31、32は、夫々第1の処理ガス供給部、第2の処理ガス供給部をなし、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。特に、第1の処理ガス供給部31及び第2の処理ガス供給部32は、それぞれ第1の原料ガス及び第2の原料ガスを供給するので、第1の原料ガス供給部31及び第2の原料ガス供給部32と呼んでもよい。また、プラズマ発生ガスノズル34は、第1及び第2の原料ガスと反応する反応ガスをプラズマ化して供給しているので、反応ガス供給部34と呼んでもよい。処理ガスノズル33は、プロセスに応じて酸化ガスや窒化ガス(例えばアンモニアガス)等の反応ガスを供給するために設けられているが、本発明の実施形態に係る成膜方法における成膜プロセスでは不要であるので、分離ガスノズル41、42と同様に不活性ガスであるN
2ガスを供給している。
【0018】
なお、
図2はプラズマ発生用ガスノズル34が見えるようにプラズマ発生部80及び後述の筐体90を取り外した状態、
図3はこれらプラズマ発生部80及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、
図1では、プラズマ発生部80について、模式的に一点鎖線で示している。
【0019】
各ノズル31、32、33、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、第1の金属元素であるチタン(Ti)を含む第1の処理ガス例えば四塩化チタン(TiCl
4)ガスなどの供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、第2の金属元素であるアルミニウム(Al)を含む例えばトリメチルアルミニウム(TMA)ガスの供給源に接続されている。第3の処理ガスノズル33は、不活性ガスである窒素(N
2)ガスの供給源に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばアルゴン(Ar)ガスと酸素(O
2)ガスとの混合ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスである窒素(N
2)ガスのガス供給源に各々接続されている。
【0020】
ガスノズル31、32、33、41、42の下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔35(
図7参照)が例えば等間隔に形成されている。プラズマ発生用ガスノズル34の側面には、回転テーブル2の回転方向上流側(第2の処理ガスノズル32側)且つ下方側(斜め下)を向くように、当該プラズマ発生用ガスノズル34の長さ方向に沿ってガス吐出孔35(
図7参照)が複数箇所に例えば等間隔で形成されている。
【0021】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々Ti含有ガス及びAl含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となり、プラズマ発生用ガスノズル34の下方領域は、ウエハWに吸着したTi含有ガス及びAl含有ガスとプラズマ化したO
2ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、
図2及び
図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガスと反応ガス同士の混合を阻止するために、凸状部4の下面である低い天井面44(第1の天井面)が配置され、この天井面44の周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガスと反応ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0022】
ここで、第1の処理領域P1には、第1の原料ガスであるTiCl
4ガスをウエハW上に供給するための処理ガスノズル31と、第2の原料ガスであるTMAガスをウエハW上に供給するための処理ガスノズル32とが隣接して設けられている。TiCl
4ガス及びTMAガスは、同時に第1の処理領域P1内でウエハW上に供給され、2つの原料ガスをウエハW上に吸着させる。そして、第2の処理領域P2でプラズマ化された酸化ガス(例えば、O
2ガス、O
3ガス等)により2つの原料ガスは酸化され、TiAlOを生成させる。このように、本実施形態に係る成膜装置は、合金膜を生成するのに極めて有利な構成となっている。
【0023】
なお、第1の処理ガスノズル31と、第2の処理ガスノズル32は、各々が第1の原料ガスと、第2の原料ガスを供給し易い個別の構成とされてよい。例えば、TiCl
4ガスを供給する第1の処理ガスノズル31は、回転テーブル2の回転速度が速い外側に対応して根本にガス吐出孔35を多く設け、TMAガスを供給する第2の処理ガスノズルは、逆に先端側のガス吐出孔35を多く設ける構成としてもよい。最終生成物が合金膜の場合であっても、1つの処理ガスノズルで混合ガスを供給するよりも、合金を構成する金属元素を含む原料ガスを種類別に分けて個別に設けることにより、ガスの特性に合わせてノズル形状を設定することができ、スムースで適切な原料ガスの供給を行うことができる。ここで、ノズル形状には、ガス吐出孔35の大きさ(孔径)、配置する位置、分布密度等が要素として含まれ、これらをガスの種類、性質に合わせて種々設定することが可能である。
【0024】
また、ノズル形状は、ウエハW上に形成される膜の膜厚の面内傾向によって分散するガス吐出孔35の位置と個数を決定してもよい。このように、種類の異なる原料ガスを個別のガスノズル31、32から供給する場合には、供給するガスの性質、ウエハW上の面内膜厚等を考慮して、適切なノズル形状に構成することができる。
【0025】
次に、プラズマ発生部80について詳述する。プラズマ発生部80は、金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されており、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように、真空容器1の天板11上に設けられている。この例では、アンテナ83は、例えば銅(Cu)の表面にニッケルメッキ及び金メッキをこの順番で施した材質により構成されている。
図4に示すように、既述のプラズマ発生用ガスノズル34の上方側(詳しくはこのノズル34よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置からこのノズル34の前記回転方向下流側の分離領域Dよりも僅かにノズル34側に寄った位置まで)における天板11には、平面的に見た時に概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0026】
この開口部11aは、回転テーブル2の回転中心から例えば60mm程度外周側に離間した位置から、回転テーブル2の外縁よりも80mm程度外側に離れた位置までに亘って形成されている。また、開口部11aは、真空容器1の中心部領域Cに設けられた後述のラビリンス構造部110に干渉しない(避ける)ように、平面で見た時に回転テーブル2の中心側における端部が当該ラビリンス構造部110の外縁に沿うように円弧状に窪んでいる。そして、この開口部11aは、
図4及び
図5に示すように、天板11の上面側から下面側に向かって当該開口部11aの開口径が段階的に小さくなるように、例えば3段の段部11bが周方向に亘って形成されている。これら段部11bのうち最下段の段部(口縁部)11bの上面には、
図5に示すように、周方向に亘って溝11cが形成されており、この溝11c内にはシール部材例えばO−リング11dが配置されている。なお、溝11c及びO−リング11dについては、
図4では図示を省略している。
【0027】
この開口部11aには、
図6にも示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成された筐体90が配置されている。この筐体90は、プラズマ発生部80において発生する磁界を真空容器1内に到達させるために、例えば石英などの誘電体などの透磁体(磁力を透過させる材質)により構成されており、
図10に示すように、前記窪んだ部分の厚み寸法tが例えば20mmとなっている。また、この筐体90は、当該筐体90の下方にウエハWが位置した時に、中心部領域C側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなり、回転テーブル2の外周側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなるように構成されている。従って、回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側における開口部11aの2つの辺と当該回転テーブル2の回転中心とのなす角度αは、例えば68°となっている。
【0028】
この筐体90を開口部11a内に落とし込むと、フランジ部90aと段部11bのうち最下段の段部11bとが互いに係止する。そして、O−リング11dによって、当該段部11b(天板11)と筐体90とが気密に接続される。また、開口部11aの外縁に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって前記フランジ部90aを下方側に向かって周方向に亘って押圧すると共に、この押圧部材91を図示しないボルトなどにより天板11に固定することにより、真空容器1の内部雰囲気が気密に設定される。このように筐体90を天板11に気密に固定した時の当該筐体90の下面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間寸法hは、4〜60mmこの例では30mmとなっている。なお、
図6は、筐体90を下方側から見た図を示している。また、
図10では筐体90などの一部を拡大して描画している。
【0029】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN
2ガスやO
3ガスなどの侵入を阻止するために、
図5〜
図7に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、回転テーブル2の回転方向上流側に、既述のプラズマ発生用ガスノズル34が収納されている。
【0030】
即ち、筐体90の下方領域(プラズマ空間10)においてプラズマ発生用ガスノズル34から供給されるガスがプラズマ化されるので、当該下方領域にN
2ガスが侵入すると、N
2ガスのプラズマとO
2ガス(O
3ガス)のプラズマとが互いに反応してNO
xガスが生成する。このNO
xガスが発生すると、真空容器1内の部材が腐食してしまう。そこで、筐体90の下方領域にN
2ガスが侵入しにくくなるように、当該筐体90の下面側に既述の突起部92を形成している。
【0031】
プラズマ発生用ガスノズル34の基端側(真空容器1の側壁側)における突起部92は、当該プラズマ発生用ガスノズル34の外形に沿うように概略円弧状に切りかかれている。突起部92の下面と回転テーブル2の上面との間の離間寸法dは、0.5〜4mmこの例では2mmとなっている。この突起部92の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmとなっている。なお、
図7は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示している。
【0032】
また、成膜処理中には回転テーブル2が時計周りに回転するので、N
2ガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、前記隙間を介して筐体90の下方側へのN
2ガスの侵入を阻止するために、隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔35について、
図5及び
図7に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対するプラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔35の向く角度θは、
図7に示すように例えば45°程度となっている。
【0033】
ここで、筐体90の下方(プラズマ空間10)側から天板11と筐体90との間の領域をシールする既述のO−リング11dを見ると、
図5に示すように、当該プラズマ空間10とO−リング11dとの間には突起部92が周方向に亘って形成されている。そのため、O−リング11dは、プラズマに直接曝されないように、プラズマ空間10から隔離されていると言える。従って、プラズマ空間10中のプラズマが例えばO−リング11d側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、O−リング11dに到達する前にプラズマが失活することになる。
【0034】
筐体90の内部には、
図4及び
図8に示すように、上面側が開口する概略箱型のファラデーシールド95が収納されており、このファラデーシールド95は、厚み寸法kが0.5〜2mmこの例では例えば1mm程度の導電性の板状体95x(
図9)である金属板により構成されると共に接地されている。この例では、ファラデーシールド95は、銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜とを下側からメッキした板材により構成されている。ファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、上方側から見た時に概略六角形となるように構成されている。この水平面95aにおける概略中央部には、真空容器1の上方側から絶縁板94及び筐体90を介して当該真空容器1内におけるプラズマの発生状態(発光状態)を確認するために、概略八角形の開口部98が窓部として形成されている。ファラデーシールド95は、例えば金属板の圧延加工により、あるいは金属板における水平面95aの外側に対応する領域を上方側に折り曲げることにより形成されている。なお、
図4はファラデーシールド95を簡略化しており、また
図8では、垂直面95bの一部を切り欠いて描画している。
【0035】
また、回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た時の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、夫々右側及び左側に水平に伸び出して支持部96をなしている。そして、ファラデーシールド95と筐体90との間には、前記支持部96を下方側から支持すると共に筐体90の中心部領域C側及び回転テーブル2の外縁部側のフランジ部90aに各々支持される枠状体99が設けられている。従って、ファラデーシールド95を筐体90の内部に収納すると、ファラデーシールド95の下面と筐体90の上面とが互いに接触すると共に、前記支持部96が枠状体99を介して筐体90のフランジ部90aにより支持される。
【0036】
ファラデーシールド95の水平面95a上には、当該ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ発生部80との絶縁を取るために、厚み寸法が例えば2mm程度の例えば石英からなる絶縁板94が積層されている。また、水平面95aには、多数のスリット97が形成されており、また各々のスリット97の一端側及び他端側には各々導電路97aが配置されているが、これらスリット97及び導電路97aの形状や配置レイアウトについては、プラズマ発生部80のアンテナ83の形状と併せて詳述する。なお、絶縁板94及び枠状体99については、後述の
図8及び
図10などでは描画を省略している。
【0037】
プラズマ発生部80は、ファラデーシールド95の内側に収納されるように構成されており、従って
図4及び
図5に示すように、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)を臨むように配置されている。このプラズマ発生部80は、アンテナ83が回転テーブル2の半径方向に伸びる帯状体領域を囲むように当該アンテナ83を鉛直軸周り(回転テーブル2からプラズマ空間10に向かって垂直に伸びる縦向きの軸周り)に3重に巻回して、平面的に見た時に回転テーブル2の半径方向に伸びる概略細長い八角形となるように構成されている。従って、アンテナ83は、回転テーブル2上のウエハWの表面に沿うように配置されている。
【0038】
アンテナ83は、プラズマ発生部80の下方にウエハWが位置した時に、このウエハWにおける中心部領域C側の端部と回転テーブル2の外縁側の端部との間に亘ってプラズマを照射(供給)できるように、中心部領域C側の端部及び外周側の端部が各々筐体90の内壁面に近接するように配置されている。また、回転テーブル2の回転方向におけるプラズマ発生部80の両端部は、回転テーブル2の回転方向における筐体90の幅寸法ができるだけ小さくなるように、互いに近接するように配置されている。即ち、筐体90は、既述のように、プラズマ発生部80において発生する磁界を真空容器1内に到達させるために、高純度の石英により構成されると共に、平面で見た時にアンテナ83よりも大きな寸法となるように(アンテナ83の下方側に亘って石英部材が位置するように)形成されている。従って、平面で見た時のアンテナ83の寸法が大きければ大きい程、当該アンテナ83の下方側の筐体90についても大きくする必要があり、装置(筐体90)のコストが嵩むことになる。一方、アンテナ83について、例えば回転テーブル2の半径方向における寸法を短くしようとすると、具体的にはアンテナ83を中心部領域C側あるいは回転テーブル2の外縁側に寄った位置に配置しようとすると、ウエハWに対して供給されるプラズマの量が面内において不均一になってしまうおそれがある。そこで、本発明では、ウエハWに対してプラズマが面内に亘って均一に供給され、且つ平面で見た時に筐体90の寸法ができるだけ小さくなるように、アンテナ83における回転テーブル2の回転方向上流側の部位及び下流側の部位同士を互いに近接させている。具体的には、アンテナ83を平面で見た細長の八角形について、長手方向の寸法は例えば290〜330mmとなっており、前記長手方向と直交する方向の寸法は例えば80〜120mmとなっている。なお、アンテナ83の内部には冷却水の通流する流路が形成されているが、ここでは省略している。
【0039】
アンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されている。
図1、
図3及び
図4などおける86は、プラズマ発生部80と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0040】
ここで、ファラデーシールド95のスリット97について、
図8及び
図9を参照して詳述する。このスリット97は、プラズマ発生部80において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるためのものである。即ち、電界がウエハWに到達すると、当該ウエハWの内部に形成されている電気配線が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。一方、ファラデーシールド95は、既述のように接地された金属板により構成されているので、スリット97を形成しないと、電界に加えて磁界も遮断してしまう。また、アンテナ83の下方に大きな開口部を形成すると、磁界だけでなく電界も通過してしまう。そこで、電界を遮断して磁界を通過させるために、以下のように寸法及び配置レイアウトを設定したスリット97を形成している。
【0041】
具体的には、スリット97は、
図8に示すように、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に各々形成されている。従って、例えばアンテナ83の長手方向(回転テーブル2の半径方向)の領域においては、スリット97は回転テーブル2の接線方向に沿って直線状に形成されている。また、前記長手方向と直交する領域においては、スリット97は当該長手方向に沿うように形成されている。そして、前記2つの領域間においてアンテナ83が屈曲する部分では、スリット97は当該屈曲する部分におけるアンテナ83の伸びる方向に対して直交するように、回転テーブル2の周方向及び半径方向に対して各々傾斜する向きに形成されている。更に、中心部領域C側及び回転テーブル2の外縁部側では、スリット97は、当該スリット97の配置領域を稼ぐために、即ちできるだけ隙間なくスリット97が配置されるように、アンテナ83の外周部側から内周部側に向かうにつれて幅寸法が小さくなるように形成されている。従って、スリット97は、アンテナ83の長さ方向に沿って多数配列されている。
【0042】
ここで、アンテナ83には、既述のように周波数が13.56MHzの高周波電源85が接続されており、この周波数に対応する波長は22mである。そのため、スリット97は、この波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように、
図10に示すように、幅寸法d1が1〜6mmこの例では2mm、スリット97、97間の離間寸法d2が2〜8mmこの例では2mmとなるように形成されている。また、このスリット97は、既述の
図8に示すように、アンテナ83の伸びる方向から見た時に、長さ寸法Lが40〜120mmこの例では各々60mmとなるように、当該アンテナ83の右端よりも30mm程度右側に離間した位置から、アンテナ83の左端よりも30mm程度左側に離間した位置までに亘って形成されている。従って、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、アンテナ83の巻回方向(長さ方向)に沿うように、ファラデーシールド95の一部をなす導電路97a、97aが各々形成されていると言える。言い換えると、ファラデーシールド95には、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側が各々開放されないように、即ち各々のスリット97の両端部が閉じるように、導電路97a、97aが設けられている。各々の導電路97a、97aの幅寸法は、例えば1〜4mm程度この例では2mmとなっている。これら導電路97a、97aを設けた理由について、始めにアンテナ83の内側領域に形成された導電路97aを例に挙げて以下に詳述する。
【0043】
スリット97は、アンテナ83により形成される電磁界のうち電界成分を遮断すると共に磁界成分を通過させるものであり、そのためウエハW側に到達する電界成分を遮断しつつ、磁界成分をなるべく多く確保するためには、できるだけ長く形成することが好ましい。しかしながら、既述のように回転テーブル2の回転方向における筐体90の寸法をできるだけ小さくするためにアンテナ83が概略細長い八角形をなしており、アンテナ83における回転テーブル2の回転方向上流側の部位と、回転テーブル2の回転方向下流側の部位とが互いに近接している。しかも、ファラデーシールド95における水平面95aには、このアンテナ83により囲まれる領域にプラズマの発光状態を確認するための開口部98が形成されている。このため、アンテナ83の内側領域では、アンテナ83により形成される電界成分を十分に遮断できる程度にスリット97の長さ寸法Lを取りにくい。一方、アンテナ83の内側領域に導電路97aを設けずにスリット97の長さ寸法を稼ごうとすると、スリット97の開口部を介して電界成分がウエハW側に漏れ出してしまう。そこで、本発明では、前記内側領域を介してウエハW側に漏れ出そうとする電界成分を遮断するために、各々のスリット97の開口部を塞ぐように導電路97aを設けている。従って、前記内側領域から下方に向かおうとする電界成分は、導電路97aによって電気力線が閉じられた状態となり、ウエハW側への侵入が阻止される。また、アンテナ83の外周側についても、同様に導電路97aを設けて、当該外周側におけるスリット97の端部から漏れ出そうとする電界成分を遮断している。こうして各々のスリット97は、上方側から見た時に、周方向に亘って接地された導電体により囲まれている。
【0044】
この例では、アンテナ83の内側領域における導電路97aにより囲まれる領域(スリット97の群により囲まれる領域)には、既述の開口部98が形成されている。そして、この開口部98を介して、例えば作業者が目視により、あるいは図示しないカメラにより、真空容器1内におけるプラズマの発光状態が確認される。なお、
図3ではスリット97を省略している。また、
図4及び
図5などではスリット97について簡略化しているが、スリット97は例えば150本程度形成されている。以上説明したアンテナ83と、スリット97及び導電路97aの形成されたファラデーシールド95とにより、プラズマ発生装置が構成される。
【0045】
続いて、真空容器1の各部の説明に戻る。回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、
図2、
図5及び
図11に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。このサイドリング100は、例えば装置のクリーニング時において、各処理ガスに代えてフッ素系のクリーニングガスを通流させた時に、当該クリーニングガスから真空容器1の内壁を保護するためのものである。即ち、サイドリング100を設けないと、回転テーブル2の外周部と真空容器1の内壁との間には、横方向に気流(排気流)が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成されていると言える。そのため、このサイドリング100は、気流通路に真空容器1の内壁面ができるだけ露出しないように、当該気流通路に設けられている。この例では、各分離領域D及び筐体90における外縁側の領域は、このサイドリング100の上方側に露出している。
【0046】
サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、前記気流通路の下方側に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32と、第1の処理ガスノズル31及び第2の処理ガスノズル32よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、プラズマ発生用ガスノズル34と、プラズマ発生用ガスノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。第1の排気口61は、第1の処理ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、第2の処理ガス及び分離ガスに加えて、プラズマ発生用ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、
図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0047】
ここで、既述のように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を形成しているので、この筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側に吐出された各ガスは、当該筐体90によって第2の排気口62に向かおうとするガス流がいわば規制されてしまう。そこで、筐体90の外側における既述のサイドリング100の上面に、第2の処理ガス及び分離ガスが流れるための溝状のガス流路101を形成している。具体的には、このガス流路101は、
図3に示すように、筐体90における回転テーブル2の回転方向上流側の端部よりも例えば60mm程度第2の処理ガスノズル32側に寄った位置から、既述の第2の排気口62までの間に亘って、深さ寸法が例えば30mmとなるように円弧状に形成されている。従って、このガス流路101は、筐体90の外縁に沿うように、また上方側から見た時に当該筐体90の外縁部に跨がるように形成されている。このサイドリング100は、図示を省略しているが、フッ素系ガスに対する耐腐食性を持たせるために、表面が例えばアルミナなどによりコーティングされているか、あるいは石英カバーなどにより覆われている。
【0048】
天板11の下面における中央部には、
図2に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて第1の処理ガスと第2の処理ガスとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。即ち、
図1から分かるように、筐体90を中心部領域C側に寄った位置まで形成しているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように前記回転中心側に寄った位置に形成されている。従って、中心部領域C側では、外縁部側よりも例えば処理ガス同士が混ざりやすい状態となっていると言える。そこで、ラビリンス構造部110を形成することにより、ガスの流路を稼いで処理ガス同士が混ざり合うことを防止している。
【0049】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば300℃に加熱するようになっている。また、
図1に示すように、ヒータユニット7の側方側にカバー部材71aが設けられ、ヒータユニット7の上方側を覆い部材7aが覆っている。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0050】
真空容器1の側壁には、
図2及び
図3に示すように図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0051】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられており、この制御部120のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0052】
(成膜方法)
次に、上述のような成膜装置を用いた本発明の実施形態に係る成膜方法について説明する。なお、本実施形態に係る成膜方法は、上述の成膜装置による実施に限定されず、他のALD装置や、ガス及び低温プラズマを用いて成膜を行う他の成膜装置にも適用可能であるが、理解の容易のため、上述の成膜装置を用いた成膜方法について説明する。
【0053】
まず、本実施形態に係る成膜方法では、パターン形成用のハードマスク等に用いることが可能な加工性が良好であり、かつ表面が結晶化されて粗化されていない膜を成膜する方法を提供する。よって、一般の電子回路に用いられる膜の種類が特定された成膜ではなく、加工性の良好な膜を製造することが重視される。なお、ここで、加工性とは、加工が容易であることを意味し、例えば、エッチング加工が容易である、等の加工容易性が例として挙げられる。
【0054】
一般に、TiO
2膜は、エッチング加工性が良好であり、ハードマスクとして適切な膜である。TiO
2膜の結晶化温度は160℃程度であり、60〜80℃程度の低温プラズマの温度設定では、理論的には結晶化温度には到達していない筈であるが、プラズマのエネルギーにより、実質的に成膜時に結晶化温度に達し、TiO
2膜の表面が結晶化してしまい、これにより表面が粗化してしまう場合がある。そのため、良好な膜を成膜できる条件が狭い範囲に限られてしまい、回転テーブルの設定回転速度等に制限が出てしまう。ハードマスクに用いるためには、表面が非晶質のアモルファス状態であることが好ましく、アモルファス状態であれば、膜の表面は滑らかであり、加工性に優れた膜となる。よって、アモルファス状態でTiO
2膜を成膜できることが最も好ましいが、プラズマを用いた膜の改質も不可欠である場合が多い。そして、プラズマを用いると、TiO
2膜の実質的な結晶化温度を低下させ、粗化した膜が形成されてしまうおそれがある。
【0055】
一方、Al
2O
3膜は、結晶化温度が300〜400℃程度であり、TiO
2膜の結晶化温度と比較すると、2〜3倍の温度であり、非常に高い温度である。そこで、本発明の実施形態に係る成膜方法では、結晶化温度の高いAl
2O
3膜を混合し、TiAlOの混合膜を生成することにより、表面が結晶化することを防止し、アモルファス状態の膜を形成して表面が滑らかな膜を成膜する。ここで、Al
2O
3膜は、エッチング加工性があまり良好ではない膜であるが、TiO
2膜より少ない混合比率とすることにより、良好なエッチング加工性は維持しつつ、アモルファス状態の合金膜を形成することが可能となる。
【0056】
このように、本発明の実施形態に係る成膜方法では、加工性が良好であるが結晶化温度が低く、プラズマを用いた改質プロセスで結晶化してしまうTiO
2膜に、加工性は劣るが結晶化温度が高いAl
2O
3膜を混合し、結晶化温度を高めて膜の表面が結晶化することを防ぎつつ、良好な加工性を維持できる合金膜を生成する。
【0057】
以下、上述の成膜装置を用いてこのような合金膜を成膜する方法について説明する。
【0058】
まず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2時計周りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを、例えば60〜80℃程度に加熱する。ウエハWの温度は、プラズマを用いることにより、プラズマを使用しないプロセスよりも低い温度に設定することができる。これにより、TiO
2膜の結晶化温度である160℃程度よりも小さな温度に設定することができるが、プラズマのエネルギーにより、実質的にTiO
2膜の表面は160℃以上に加熱したのと同様の効果を有することになる。
【0059】
回転テーブル2の回転速度は、プロセスにより異なるが、例えばTiAlO膜を成膜する場合には、30〜240rpmの範囲としてもよい。回転速度が遅すぎると、プラズマの照射時間が長くなり過ぎて膜のダメージが大きくなるおそれがある一方で、回転速度が速すぎると、原料ガスが十分にウエハW上に付着せず、カバレッジ性が悪くなるおそれがある。よって、回転テーブル2の回転速度は、プラズマの照射時間が長くなり過ぎず、かつ、カバレッジ性を低下させない適切な回転速度に設定することが好ましい。
【0060】
続いて、処理ガスノズル31、32から夫々TiCl
4ガス及びTMAガスを吐出すると共に、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びO
2ガスの混合ガスを吐出する。また、処理ガスノズル33からはN
2ガスを吐出する。同様に、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN
2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。また、プラズマ発生部80に対して高周波電力を供給する。
【0061】
第1の処理領域P1では、TiCl
4ガス及びTMAガスが処理ガスノズル31、32から同時に供給されるため、これらがウエハWの表面に付着する。なお、原料ガスは、第1の金属元素であるTiを含む原料ガス(処理ガス)と、第2の金属元素であるAlを含む原料ガス(処理ガス)が選択される。これらの原料ガスは、Tiの酸化物であるTiO
2よりも、Alの酸化物であるAl
2O
3の方が、結晶温度が高いという関係にある。また、TiO
2膜の方が、Al
2O
3膜よりもエッチング加工性に優れているので、TiO
2膜の方が主となり、TiO
2膜の方がAl
2O
3膜よりも混合比率が高くなるように供給される。よって、一般的には、処理ガスノズル31から供給されるTiCl
4ガスの流量の方が、処理ガスノズル32から供給されるTMAガスの流量よりも多くなるように供給されるが、最終的な生成物であるTiAlO膜において、Tiの方がAlよりも混合比率が多くなるように設定されていれば、TMAガスの流量がTiCl
4ガスの流量よりも多くなっても問題は無い。
【0062】
この時、筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側から例えば回転テーブル2の回転に連れられて筐体90に向かって通流してくるN
2ガスは、この筐体90によってガス流が乱されようとする。しかし、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、N
2ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。
【0063】
一方、筐体90の上流側から筐体90に向かって通流してくるガスのうち一部のガスは、筐体90の下方に侵入しようとする。しかし、筐体90の下方側の領域では、突起部92が当該領域を覆うように形成されると共に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔35が回転テーブル2の回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下を向いている。従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出したプラズマ発生用ガスは、突起部92の下方側に衝突し、上流側から流入しようとするN
2ガスをこの筐体90の外側へと追い出す。そして、このプラズマ発生用ガスは、突起部92により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、突起部92を設けることによって、筐体90の下方におけるプラズマ空間10は、真空容器1内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となっている。このことからも、筐体90の下方側へのN
2ガスの侵入が阻止される。
【0064】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN
2ガスを供給しているので、
図12に示すように、Ti含有ガス及びAl含有ガスとプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気される。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0065】
この時、プラズマ発生部80では、高周波電源85から供給される高周波電力により、
図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、既述のようにファラデーシールド95を設けていることから、このファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される(遮断される)。また、スリット97の長さ方向における一端側及び他端側からウエハW側に回り込もうとする電界は、一端側及び他端側に導電路97a、97aを設けていることから、ファラデーシールド95に例えば熱として吸収されてウエハW側への到達が阻害される。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。また、プラズマ発生部80の側方側におけるファラデーシールド95(垂直面95b)には周方向に亘ってスリット97が形成されていないので、電界及び磁界は、側方側を介して下方側に回り込まない。
【0066】
従って、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。既述のように、回転テーブル2の半径方向に伸びる帯状体領域を囲むようにアンテナ83を配置していることから、このプラズマは、アンテナ83の下方側において、回転テーブル2の半径方向に伸びるように概略ライン状となる。なお、
図13ではプラズマ発生部80について模式的に示しており、プラズマ発生部80、ファラデーシールド95、筐体90及びウエハWの間の各寸法については模式的に大きく描画している。
【0067】
一方、ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてTiCl
4ガス及びTMAガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したTiCl
4ガス及びTMAガスが酸化されるとともに改質処理が行われ、薄膜成分であるTiAlOの分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。具体的には、プラズマ化された酸化ガスがウエハWの表面に供給されることにより、ウエハW表面に吸着したTi元素及びAl元素が酸化され、同時にプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えばTiAlO膜から不純物が放出されたり、TiAlO膜内の元素が再配列されてTiAlO膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。その際、単独のTiO
2膜であれば、プラズマのエネルギーによりTiO
2膜の表面が実質的に結晶化温度に達してしまい、結晶化が発生してしまうが、結晶化温度の高いAl
2O
3膜が混合されているため、全体のTiAlO膜としては結晶化されず、非晶質状態のまま成膜がなされる。
【0068】
こうして回転テーブル2の回転を続けることにより、ウエハW表面へのTi含有ガス及びAl含有ガスの吸着、ウエハW表面に吸着したTi含有ガス及びAl含有ガスの成分の酸化及び反応生成物のプラズマ改質が、表面の結晶化を生じさせることなくこの順番で多数回に亘って行われて、アモルファス状態の反応生成物が積層されて薄膜が形成される。ここで、既述のようにウエハWの内部には電気配線構造が形成されているが、プラズマ発生部80とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて電界を遮断しているので、この電気配線構造に対する電気的ダメージが抑えられる。
【0069】
(実施例)
次に、本発明の実施例に係る成膜方法について説明する。
【0070】
図14は、本発明の実施例に係る成膜方法の実施結果を示した図である。なお、ウエハWの温度は80℃に設定した。
図14において、破線A、B、Cは、縦型熱処理炉を用いて、TiO
2膜の単膜成膜を行った際の、膜の表面の算術平均粗さRa、二乗平均Rq及び最大粗さRmaxを各々示している。縦型熱処理炉は、100枚程度のウエハWを縦型の熱処理炉の中に収容し、処理ガスを供給しながら熱処理を行って成膜を行う成膜装置である。この縦型熱処理炉を用いて、150℃の温度で熱処理を行ってTiO
2単膜を成膜した所、算術平均粗さRa=0.220nm、二乗平均粗さRq=0.281nm、最大粗さRmax=3.01nmであった。
【0071】
また、特性線D、E、Fは、本実施形態に係る成膜装置を用いて、TiO
2単膜を成膜した場合の実施結果を示している。この場合、算術平均粗さRa、二乗平均粗さRq、最大粗さRmaxのいずれにおいても、回転テーブル2の回転速度が60〜240rpmの範囲内においては、破線A、B、Cよりも低く、滑らかな膜が形成できている。しかしながら、回転速度が30rpmの場合、算術平均粗さRa及び二乗平均粗さRqについては縦型熱処理炉よりも表面粗さが低い結果が得られているが、最大粗さRmaxについては、縦型熱処理炉よりもかなり粗さが大きく、2倍程度の数値の粗さとなってしまっている。粗さの項目のうち、1箇所でも粗い箇所があるとマスクとしては使えないので、重要な項目は最大粗さRmaxの項目である。よって、本実施形態に係る成膜装置を用いて、従来の成膜方法を実施すると、回転速度30rpmでは良好な結果が得られないことになる。
【0072】
一方、点G、H、Iは、本実施例に係る成膜方法の実施結果を示している。本実施形態に係る成膜装置を用いて、回転テーブル2の回転速度を30rpmとしてTiAlO膜を成膜した所、算術平均粗さRa、二乗平均粗さRq及び最大平均粗さRmaxの総ての項目について、縦型熱処理炉及び本実施形態に係る成膜装置による従来のプロセス結果よりも粗さが低い良好な結果が得られた。よって、本実施例に係る成膜方法の実施により、広範囲な回転速度の条件下で表面が滑らかな良好なTiAlO膜を成膜することができる。
【0073】
図14においては、本実施形態に係る成膜装置を用いたTiO
2膜の単膜成膜においても、回転速度60〜240rpmの範囲では良好な結果が得られているが、ウエハWの温度をもっと高くした条件下では、粗さが増加する回転速度の範囲が出てくるおそれがある。そのような場合であっても、本実施例に係る成膜方法を実施すれば、広範囲の条件下で表面粗さの低い良好な膜を成膜することができる。
【0074】
図15は、
図14における回転テーブル2の回転速度を30rpmに設定したときの実施結果を示した図である。
図15(a)は従来の成膜方法の実施結果であり、
図15(b)は本実施例に係る成膜方法の実施結果である。
【0075】
図15(a)においては、膜の表面に粗さが目立ち、粗さのデータ的にも、算術平均粗さRa=0.159nm、二乗平均粗さRq=0.271nm、最大粗さRmax=6.31nmであった。
【0076】
一方、
図15(b)においては、膜の表面がきめ細かくなっており、粗さのデータ的にも、算術平均粗さRa=0.143nm、二乗平均粗さRq=0.181nm、最大粗さRmax=2.62nmという結果が得られ、いずれの項目においても粗さが従来の成膜方法よりも低下した。特に、最大粗さRmaxは、粗さを半分以下とすることができ、大幅な改善を実現できた。
【0077】
なお、このTiAlO膜において、TiとAlの混合比は、[Ti]:[Al]=1:0.85であり、Tiの方がAlよりも混合比率は大きかった。これにより、膜の加工性も良好に保つことができる。
【0078】
図16は、TiAlO膜中におけるAl量のTMA流量依存性を示した図である。横軸はTMAガスの流量、縦軸はTiAlO膜中のTi元素とAl元素の合計量に対するAl元素の混合比([Al]/([Ti]+[Al]))を示している。なお、TiCl
4ガスの流量は50sccmとした。
【0079】
図16に示すように、TMAガスの流量は、0〜130sccmの範囲で広範囲に変化されているが、TiAlO膜中のAlの混合比率は、TMAガス流量が20〜80sccmの範囲では41〜45%の間、TMAガス流量が80〜130sccmの範囲でも45〜47%であり、流量変化に関わらず、41〜47%程度のほぼ一定の範囲内に収まっている。
【0080】
よって、TMAガス流量の大小に関わらず、本実施例に係る成膜方法は実施可能であることが分かる。
【0081】
今まで、第1の原料ガスとして金属元素Tiを含むTiCl
4ガス、第2の原料ガスとして金属元素Alを含むTMAガスを用い、TiAlO膜を成膜する例を挙げて説明したが、他の金属同士の組み合わせにおいても、本発明を適用することができる。また、酸化膜だけでなく、窒化膜、臭化膜、炭化膜等の非金属元素と合金との組み合わせであれば、種々の組み合わせに本発明を適用することができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。