(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアセタール樹脂が、炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドとでアセタール化して得られる樹脂であり、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比が90/10〜1/99である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層シート。
前記ポリビニルアセタール樹脂が、炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドとでアセタール化して得られる樹脂であり、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比が90/10〜1/99である、請求項9または10に記載の積層シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の説明において具体的な材料や数値を例示する場合があるが、本発明はそのような材料や数値に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の積層シートは、メタクリル樹脂層とポリビニルアセタール樹脂層とが密着して積層されたものであり、前記ポリビニルアセタール樹脂の主鎖を構成する炭素数100当りのアセタール部分の炭素数が30〜70の範囲にあり、前記ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度が500〜2000の範囲である。
【0017】
ポリビニルアセタール樹脂層の厚さは、10μm〜1000μmの範囲が好ましく、20μm〜800μmの範囲がより好ましく、30μm〜600μmの範囲が特に好ましい。メタクリル樹脂層の厚さは、5μm〜400μmの範囲が好ましく、10μm〜300μmがより好ましく、15μm〜200μmの範囲が特に好ましい。
本発明の積層シートは、それぞれ少なくとも1層のポリビニルアセタール樹脂層とメタクリル樹脂層とが密着して積層されていれば、その層構成には制限が無く、ポリビニルアセタール層の片面のみにメタクリル樹脂層が積層されていても良いし、両面に積層されていても良い。また、さらに層数を重ねて積層されていてもかまわない。本発明の積層シートの厚さは、15μm〜1.5mmの範囲内であるのが好ましい。
【0018】
以下に、積層シートに用いられるポリビニルアセタール樹脂およびメタクリル樹脂について説明する。
【0019】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、ビニルアルコール単位(水酸基を含む構成単位)、ビニルエステル単位(残存酢酸基を含む構成単位)およびビニルアセタール単位(2個のビニルアルコール単位がアルデヒドでアセタール化された単位)を有する樹脂である。各単位は、配列順序によって特に制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。また、繰り返し単位間の結合は、Head−to−Tailであってもよいし、Head−to−Headであってもよい。
【0020】
本発明で用いられるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとを公知の方法で反応させることによって合成できる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、ビニルアルコール単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、ビニルアルコールとこれに共重合可能なモノマーとからなるコポリマー(以下、PVAコポリマーと表記することがある。)であってもよい。さらに、分子鎖の途中、末端、または側鎖にカルボキシル基などの官能基が導入された変性ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。これらポリビニルアルコール樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるものを用いることができる。ビニルエステル単位を形成するためのビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でもPVAを良好な生産性で得ることができる点で酢酸ビニルが好ましい。
【0022】
PVAコポリマーを構成する共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基などのオキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸などに由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。
【0023】
これら共重合可能な単量体の単位(以下、コモノマー単位と表記することがある。)の含有量は、PVAコポリマーを構成する全単量体単位100モル%の中で、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上がコモノマー単位であることが好ましい。
【0024】
ビニルエステル系重合体の製造において使用される重合法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合する方法である、塊状重合法や溶液重合法が好ましい。溶液重合法において使用される溶媒としてのアルコールには、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが通常用いられる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物などが挙げられる。重合温度については特に制限はないが、通常、0℃〜200℃である。
【0025】
ビニルエステル系重合体をけん化する際には、通常、触媒としてアルカリ性物質が使用される。アルカリ性物質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。けん化触媒に使用されるアルカリ性物質のモル比は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル単位に対して、好ましくは0.004〜0.5、より好ましくは0.005〜0.05である。けん化触媒としてのアルカリ性物質は、けん化反応の初期に一括添加してもよいし、けん化反応の途中で追加添加してもよい。
【0026】
けん化反応時に使用可能な溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。使用される溶媒は含水率を調整されたものが好ましい。溶媒の含水率は、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、さらに好ましくは0.005〜0.8質量%である。
【0027】
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいし、部分的にけん化されたもの、すなわち部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。
【0028】
ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は、97モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。けん化度が97モル%未満の場合には、得られるポリビニルアセタール樹脂の熱安定性が十分ではなく、熱分解や架橋ゲル化によって安定な溶融成形を行うことが困難な場合がある。
【0029】
けん化反応の後、生成したPVAを洗浄する際の洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などが挙げられる。これらの中でも、メタノール、酢酸メチル、水、もしくはこれらの混合液が好ましい。
洗浄液の使用量は、後述するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量を満足するように設定するのが好ましく、通常、PVA100質量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜100時間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましい。
【0030】
本発明で使用するPVAにおけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、PVA100質量部に対して、好ましくは0.00001〜1質量部である。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が0.00001質量部未満のものは工業的に製造困難である。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が1質量部より多い場合には、得られるポリビニルアセタール樹脂中に残存するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が多くなり、分解、ゲル化により安定に溶融成形することができない場合がある。なお、アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウムなどが挙げられる。なお、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0031】
PVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は、500〜2000であり、800〜1700が好ましく、1000〜1500がより好ましい。PVAの重合度が500未満であると、ポリビニルアセタール樹脂成形物の力学物性が不足し、安定な成形を行うことができない。一方、PVAの重合度が2000を超えると、ポリビニルアセタール樹脂として熱成形する際の溶融粘度が高くなり、成形物の製造が困難になる。なお、PVAの重合度は、JIS−K6726に準じて測定される。
【0032】
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられるアルデヒドは特に制限されない。
炭素数3以下のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、グリオキザールなどが挙げられる。炭素数3以下のアルデヒドは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら炭素数3以下のアルデヒドのうち、製造の容易さの観点から、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)およびホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)を主体とするものが好ましく、アセトアルデヒドが特に好ましい。
炭素数4以上のアルデヒドとしては、例えば、ブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。炭素数4以上のアルデヒドは1種単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これら炭素数4以上のアルデヒドのうち、製造の容易度の観点から、ブチルアルデヒドが特に好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられる炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドの組み合わせとしては、製造の容易さ、耐熱性及び力学物性の観点から、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドが好ましい。
【0033】
ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとの反応、すなわちアセタール化反応は、公知の方法で行なうことができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解させ、酸触媒の存在下にアルデヒドと反応させて樹脂粒子を析出させる方法(水媒法); ポリビニルアルコール樹脂を有機溶媒に分散させ、酸触媒の存在下、アルデヒドと反応させ、得られた反応液を水などの貧溶媒に添加して樹脂粒子を析出させる(溶媒法)などが挙げられる。これらのうち水媒法が好ましい。
【0034】
アセタール化に用いられるアルデヒドは、すべてを同時に仕込んでも良いし、1種類ずつを別々に仕込んでも良い。アルデヒドの添加順序および酸触媒の添加順序を変えることで、ポリビニルアセタール樹脂中のビニルアセタール単位のランダム性を変化させることができる。
【0035】
アセタール化反応に用いられる酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸類;炭酸ガスなどの水溶液にした際に酸性を示す気体、陽イオン交換体や金属酸化物などの固体酸触媒などが挙げられる。
【0036】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、55〜85モル%が好ましく、60〜80モル%がより好ましい。アセタール化度が55モル%未満のポリビニルアセタール化樹脂は、熱安定性が十分ではなく、また溶融加工性が乏しい。一方、アセタール化度が85モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂は、製造が非常に困難であり、アセタール化反応に長時間を要するので製造コストが高くなる。なお、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って決定することができる。
【0037】
また、本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドとでアセタール化して得られる樹脂であることが好ましい。本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、メタクリル樹脂との接着性および耐熱性の観点から、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比は、90/10〜1/99が好ましく、好ましくは80/20〜1/99がより好ましい。このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることで、ポリビニルアセタール樹脂が本来有している強度・弾性率や表面硬度、表面の平滑性、透明度などの特長を保持しつつ、メタクリル樹脂との接着性および耐熱性に優れたシートを得ることができる。
【0038】
ポリビニルアセタール樹脂において、全構成単位に占める、残存酢酸基を含む構成単位の割合は、3モル%以下が好ましく、2モル%以下がより好ましく、1モル%以下が特に好ましい。残存酢酸基を含む構成単位の割合が3モル%より多い場合、耐熱性の低下、連続生産性の低下などが起きやすい。
【0039】
なお、アセタール化することによっても重合度が変化することはないため、ポリビニルアルコール樹脂と、そのポリビニルアルコールをアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂の重合度は同じである。したがって、ポリビニルアセタール樹脂の重合度(ポリビニルアルコールをベースとした粘度平均重合度)は、500〜2000が必須であって、好ましくは800〜1700、より好ましくは1000〜1500の範囲内である。ポリビニルアセタール樹脂の重合度が500未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の力学物性が不足し、安定な成形を行うことができず、重合度が2000を超えると、熱成形する際の溶融粘度が高くなり、成形物の製造が困難になる傾向がある。
【0040】
酸触媒除去のために用いられる中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物;アンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。酸触媒除去のために用いられるアルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0041】
次に、触媒残渣、中和剤残渣、中和により生成した塩、未反応のアルデヒド、アルカリ金属、アルカリ土類金属、副生物などを除去して、ポリビニルアセタール樹脂を精製する。
精製方法は特に制限されず、脱液と洗浄を繰り返すなどの方法が通常用いられる。精製に用いられる液としては、水や、水にメタノールやエタノールなどのアルコールを加えた混合液などが挙げられる。中でも、ポリビニルアセタール樹脂を中和した後に、水とアルコール(メタノール、エタノールなど)との混合溶液で、pHが好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5になるまで、脱液と洗浄を繰り返す方法が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を効率よく低減でき、ポリビニルアセタール樹脂を安定に製造することができる点で好ましい。水/アルコールの混合比率は、質量比で50/50〜95/5であることが好ましく、60/40〜90/10であることがより好ましい。水の割合が少なすぎると、ポリビニルアセタール樹脂の混合液中への溶出が多くなる傾向がある。水の割合が多すぎると、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の除去効率が低下する傾向がある。
【0042】
ポリビニルアセタール樹脂中に上記のような残渣が多量に残存すると、ポリマー劣化を引き起こし、安定な熱成形を行なうことができない場合がある。中でも中和剤に含まれるアルカリ金属は熱分解を引き起こしやすく、多量に残存すると激しいポリマー分解や架橋ゲル化を引き起こし、安定な溶融成形を行なうことができない場合がある。
具体的に、ポリビニルアセタール樹脂中のアルカリ金属含有量は、0.1〜100ppmであることが好ましく、0.1〜50ppmであることがより好ましく、0.1〜10ppmであることが特に好ましい。なお、アルカリ金属の含有量が0.1ppm未満のものは工業的に製造が難しく、洗浄に長時間を要するので製造コストが高くなる。上記の残渣を除去する方法は特に制限されず、水で脱液と洗浄を繰り返すなどの方法が通常用いられる。
【0043】
残渣等が除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工され、成形材料として供される。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することにより未反応アルデヒドや水分などを低減しておくことが好ましい。
【0044】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などが配合されていてもよい。なお、得られる積層シートの表面硬度および力学物性保持の観点から軟化剤や可塑剤は多量には含まないことが好ましい。
【0045】
本発明のポリビニルアセタール樹脂には可塑剤が含まれないことが最も好ましいが、本発明の目的とする機能を損なわない範囲で可塑剤を含むことは妨げない。可塑剤が含まれる場合は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して20質量部未満であり、10質量部未満であることがより好ましい。可塑剤が20質量部以上となると、得られる積層シートの表面硬度が低下するとともに、可塑剤がブリードアウトして悪影響を及ぼす場合がある。本発明のポリビニルアセタール樹脂に含まれる可塑剤としては、一価カルボン酸エステル系、多価カルボン酸エステル系などのカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、有機亜リン酸エステル系可塑剤などのほか、カルボン酸ポリエステル系、炭酸ポリエステル系、また、ポリアルキレングリコール系などの高分子可塑剤のようなものが挙げられる。
【0046】
さらに、本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂には耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、または、トリアジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0047】
メタクリル樹脂との相溶性を高める観点から、ポリビニルアセタール樹脂は、その主鎖において、主鎖を構成する炭素数100当りのアセタール部分の炭素数が30〜70の範囲にある要件を満たす必要がある。ここで、「アセタール部分の炭素数が30」とは、例えば、炭素数4のブチルアルデヒドでアセタール化度30モル%にアセタール化した場合や、炭素数2のアセトアルデヒドでアセタール化度60モル%にアセタール化した場合や、平均炭素数が3となるように、アセトアルデヒド/ブチルアルデヒド=50/50のモル比でアセタール化度45モル%にアセタール化した場合が該当する。また、「アセタール部分の炭素数が70」とは、例えば、炭素数4のブチルアルデヒドでアセタール化度70モル%にアセタール化した場合が該当する。ポリアセタール樹脂において、主鎖を構成する炭素数100当りのアセタール部分の炭素数が30未満または70より大きいと、メタクリル樹脂との密着性が十分でなく、そのため積層シートの耐衝撃性が劣ることになる。
【0048】
本発明で用いられるメタクリル樹脂は、アルキルメタクリレートを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。
【0049】
アルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどが挙げられる。これらのアルキルメタリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0050】
単量体混合物にはアルキルメタクリレート以外に、アルキルアクリレートが含まれていてもよい。アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアルキルアクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、前記の単量体混合物には、アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートに共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が含まれていてもよい。
【0052】
アルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、アルキルメタクリレート単位の割合が、耐候性の観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0054】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量(Mwと表記、以下同じ)が、好ましくは40,000以上、より好ましくは40,000〜10,000,000であり、特に好ましくは80,000〜1,000,000である。
【0055】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、単量体が線状に結合したものであってもよいし、分岐を有するものであってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0056】
本発明に用いられるメタクリル樹脂は、α,β−不飽和化合物を重合させることができる方法であれば特にその製法によって制限されないが、ラジカル重合によって製造されたものが好ましい。重合法としては、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などが挙げられる。
【0057】
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して通常0.05〜0.5質量部用いられる。重合は、通常50〜140℃の温度で、通常2〜20時間行われる。
【0058】
メタクリル樹脂の分子量を制御するためには、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体に対し通常0.005〜0.5質量%の範囲で使用される。
【0059】
メタクリル樹脂の機械強度を改善するために、共重合成分を導入したり、他の樹脂と混合したり、有機または無機の微粒子を添加することが、本発明の作用効果を損なわない範囲で行うことができる。
【0060】
メタクリル樹脂層の耐久性を高めるために、メタクリル樹脂層に各種の添加剤(たとえば紫外線吸収剤)を添加してもよい。耐候性が高いメタクリル樹脂層の好ましい一例は、紫外線吸収剤が添加されたメタクリル樹脂層である。紫外線吸収剤の例には、公知の紫外線吸収剤が含まれ、たとえば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル系、トリアジン系紫外線吸収剤が含まれる。更に、他の安定剤、光安定剤、酸化防止材などを併用してもよい。
【0061】
また本発明で用いられるメタクリル樹脂は、本発明の目的とする機能を損なわない範囲で、前記紫外線吸収剤以外にも、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などが配合されていてもよい。なお、得られる積層シートの表面硬度および力学物性保持の観点から軟化剤や可塑剤は多量には含まないことが好ましい。一方で、メタクリル層の製膜時の安定性を確保するために、屈折率を調整したブチルアクリレートを主成分とする軟質ゴム等のゴムを添加してもよい。
【0062】
本発明の積層シートは、メタクリル樹脂層とポリビニルアセタール樹脂層とが密着して積層されていれば、共押出し法、熱ラミネート法、プレス法などの公知の積層方法を使用して製造することができる。特に共押出し法によって製造するのが密着性の観点から好ましい。共押出し法による積層シートは、たとえば、複層ダイを有したTダイ成形で製造できる。このときの成形温度は、用いる樹脂の流動特性や製膜性等によって適時調整されるが、メタクリル樹脂層とポリビニルアセタール樹脂層との接着性の観点から、200℃〜270℃、好ましくは220℃〜250℃である。酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからポッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合でペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製してから供給してもかまわない。
【0063】
本発明の積層シートは、各種の成形品の表面保護シートとして使用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品やマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板等の光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク;パソコン、携帯電話、家具、自動販売機、浴室部材などに用いる表面材料等が挙げられる。
【0064】
本発明の表面保護シートを用いると、靭性、耐衝撃性、表面硬度および剛性とのバランスに優れ、取扱いが容易で、外観美に優れた成形体を得ることができる。本発明の表面保護シートを、鋼材、プラスチックシート、布帛、紙、木材、ガラス等からなる基材に接着、ラミネート、インサート成形、あるいはインモールド成形などで成形すると、それら基材の外観美を向上させ、また基材を保護することができる。さらに、基材に複合させた本発明の表面保護シートの上に紫外線(UV)または電子線(EB)の照射によって硬化してなるコーティング層を付与することによって、さらに外観美と保護性を高めることができる。また、優れた外観美を活かして、壁紙;自動車内装部材表面;バンパーなどの自動車外装部材表面;携帯電話表面;家具表面;パソコン表面;自動販売機表面;浴槽などの浴室部材表面等にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
(ポリビニルアセタール樹脂の製造)
表1に示す粘度平均重合度およびけん化度を有するポリビニルアルコール樹脂を水に溶解させ、該水溶液を12℃に冷却した。その後、所定量のブチルアルデヒドおよび/またはアセトアルデヒドならびに60質量%の塩酸を添加し、攪拌してアセタール化した。該反応の進行に伴って樹脂が析出した。反応完了後、過剰の水でpH=6になるまで洗浄した。次いでアルカリ性にした水性媒体中に添加し撹拌して懸濁させた。再びpH=7になるまで水で洗浄した。揮発分が1.0%になるまで乾燥することにより、表1に示す特性を有するポリビニルアセタール樹脂(PA1)〜(PA14)を得た。
【0067】
【表1】
【0068】
(ポリビニルアセタール樹脂の組成)
ポリビニルアセタール樹脂の組成は、
13C−NMRスペクトル測定により算出した。
【0069】
(ポリビニルアルコールの重合度)
ポリビニルアルコールの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定した。すなわち、PVAを完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から式(1)により求めた。
P=([η]×10
3/8.29)
(1/0.62) (1)
【0070】
(表面硬度)
JIS−K5600−5−4に準じて鉛筆硬度試験により評価した。評価は本発明の積層シートのメタクリル樹脂層側で行った。
【0071】
(耐衝撃性)
JIS−K5600−5−3に準じてデュポン衝撃試験により評価した。落下おもり500gを使用し、割れ・剥れを生じない落下高さを測定した。評価は本発明の積層シートのメタクリル樹脂層側を上にして、落下おもりに触れる側として行った。
【0072】
<実施例1>
メタクリル樹脂としてパラペットEH(クラレ製)を用い、メタクリル樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤アデカスタブLA―31(アデカ製)2.0質量部をブレンドしたメタクリル樹脂を準備した。次に、このメタクリル樹脂と上述したポリビニルアセタール樹脂に紫外線吸収剤としてアデカスタブLA−31(アデカ製)2.0質量部をブレンドしたポリビニルアセタール(PA1)とを用いて、共押出し法によって、メタクリル樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂(PA1)層という構成を有する積層シートを形成した。形成した積層シートの構成および評価結果を表2に示す。共押出しは230℃の温度条件で行った。このときの共押出し成形性は良好であった。また、得られた積層シートの表面硬度、耐衝撃性も良好であった。
【0073】
<実施例2〜10>
実施例1で用いたメタクリル樹脂と表1に示したポリビニルアセタール樹脂(PA2〜10)とを用いて、共押出し法によって、メタクリル樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂層という構成を有する積層シートを形成した。形成した積層シートの構成および評価結果を表2に示す。共押出しは230℃の温度条件で行った。各実施例において、積層シートの共押出し成形性は良好であった。また、得られた積層シートの表面硬度、耐衝撃性も良好であった。
【0074】
<実施例11>
メタクリル樹脂としてパラペットEHを50質量部、GR00100を50質量部用い(いずれもクラレ製)、紫外線吸収剤アデカスタブLA−31(アデカ製)2.0質量部をブレンドしたメタクリル樹脂を準備し、ポリビニルアセタール樹脂(PA1)と共押出し法によって、メタクリル樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂層という構成を有する積層シートを形成した。形成した積層シートの構成および評価結果を表2に示す。共押出しは230℃の温度条件で行った。積層シートの共押出し成形性は良好であった。また、得られた積層シートの表面硬度、耐衝撃性も良好であった。
【0075】
<実施例12、13>
ポリビニルアセタール樹脂として、ポリビニルアセタール(PA1)100質量部に対し紫外線吸収剤アデカスタブLA−31を2.0質量部、可塑剤トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエートを表2に示す添加量でブレンドしたものを用い、メタクリル樹脂として実施例1で用いたものを用い、共押出し法によってメタクリル樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂層という構成を有する積層シートを形成した。形成した積層シートの構成および評価結果を表2に示す。共押出しは230℃の温度条件で行った。共押出し成形性は良好であったが、可塑剤の添加により表面硬度がやや低下する傾向がみられた。この傾向は可塑剤の添加量が多い実施例13において顕著であった。
【0076】
【表2】
【0077】
<比較例1>
表1に示したポリビニルアセタール樹脂(PA1)のみで押出を行った。形成した積層シートの構成および評価結果を表3に示す。
メタクリル樹脂積層シートに比べて表面硬度が低い結果であった。
【0078】
<比較例2〜5>
実施例1で用いたメタクリル樹脂と表1に示したポリビニルアセタール樹脂(PA11〜14)とを用いて、共押出法によってメタクリル樹脂層/ポリビニルアセタール樹脂(PA11〜14)層という構成を有する積層シートの形成を行った。形成した積層シートの構成および評価結果を表3に示す。
比較例2、3については、ポリビニルアセタール樹脂とメタクリル樹脂との密着性が低いため、デュポン衝撃試験において、低い落下位置で剥れを生じ、耐衝撃性が低い結果であった。
比較例4については、ポリビニルアセタール樹脂の溶融粘度が高いため、安定な押出成形を行うことができず、均一なシートを得ることができなかった。
比較例5については、ポリビニルアセタール樹脂層が脆く、割れが多発し、安定にシートを得ることができなかった。
【0079】
【表3】