(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記血管指標値のうち、前記観察距離の算出に用いる前記血管指標値の選択を行う血管指標値選択部を備えることを特徴とする請求項2記載の内視鏡用のプロセッサ装置。
前記観察距離算出部は、前記血管指標値ごとの前記観察距離を平均した平均値を前記観察距離とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の内視鏡用のプロセッサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、モニタ18と、コンソール19とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続されるとともに、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、観察対象の体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられた湾曲部12c及び先端部12dとを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cは湾曲動作する。この湾曲動作によって、先端部12dが所望の方向に向けられる。
【0019】
また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、モード切替SW(モード切替スイッチ)12fと、ズーム操作部12gとが設けられている。モード切替SW12fは、観察モードの切り替え操作に用いられる。内視鏡システム10は、観察モードとして通常モードと測定モードとを有している。通常モードは、照明光に白色光を用いて観察対象を撮像して得た自然な色合いの画像(以下、通常画像という)をモニタ18に表示する。測定モードは、観察対象に含まれる血管の血管指標値を求め、この血管指標値から観察距離を取得し、かつ血管指標値に基づいた画像(以下、特殊画像という)をモニタ18に表示する。ズーム操作部12gは、後述する撮像光学系30bに対して撮像倍率の変更を指示する撮像倍率変更指示を入力するために用いられる。
【0020】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びコンソール19と電気的に接続される。モニタ18は、観察対象の画像や、観察対象の画像に付帯する情報などを出力表示する。コンソール19は、機能設定などの入力操作を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像や画像情報などを記録する外付けの記録部(図示省略)を接続してもよい。
【0021】
図2に示すように、光源装置14は、光源20と、光源20を制御する光源制御部21とを備えている。光源20は、例えば、複数の半導体光源を有し、これらをそれぞれ点灯または消灯し、点灯する場合には各半導体光源の発光量を制御することにより、観察対象を照明するための照明光を発する。本実施形態では、光源20は、V−LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B−LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G−LED(Green Light Emitting Diode)20c、及びR−LED(Red Light Emitting Diode)20dの4色のLEDを有する。
【0022】
図3に示すように、V−LED20aは、中心波長405nm、波長帯域380nm〜420nmの紫色光Vを発する紫色半導体光源である。B−LED20bは、中心波長460nm、波長帯域420nm〜500nmの青色光Bを発する青色半導体光源である。G−LED20cは、波長帯域が480nm〜600nmに及ぶ緑色光Gを発する緑色半導体光源である。R−LED20dは、中心波長620nm〜630nmで、波長帯域が600nm〜650nmに及び赤色光Rを発する赤色半導体光源である。なお、V−LED20aとB−LED20bの中心波長は、±5nmから±10nm程度の幅を有する。
【0023】
光源制御部21は、各LED20a〜20dに対して独立に制御信号を入力することによって、各LED20a〜20dの点灯や消灯、点灯時の発光量などを独立に制御する。本実施形態では、通常モード及び測定モードのどちらの観察モードでも、光源制御部21は、V−LED20a、B−LED20b、G−LED20c、及びR−LED20dを全て点灯させる。このため、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rを含む白色光が、通常モード及び測定モードの照明光として用いられる。
【0024】
各LED20a〜20dが発する各色の光は、ミラーやレンズなどで構成される光路結合部23を介して、挿入部12a内に挿通されたライトガイド25に入射される。ライトガイド25は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と、光源装置14及びプロセッサ装置16を接続するコード)に内蔵されている。ライトガイド25は、光源20が発した照明光を、内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。
【0025】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ32を有しており、ライトガイド25によって伝搬された照明光は照明レンズ32を介して観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ42、ズームレンズ44、撮像センサ46を有している。照明光を照射したことによる観察対象からの反射光、散乱光、及び蛍光などの各種の光は、対物レンズ42及びズームレンズ44を介して撮像センサ46に入射する。これにより、撮像センサ46に観察対象の像が結像される。
【0026】
ズームレンズ44は、ズーム操作部12gからの撮像倍率変更指示に応じて、テレ端とワイド端との間を自在に移動することにより、撮像倍率を変更可能とする。ズームレンズ44がワイド端に移動すると、観察対象の像が拡大する。一方、ズームレンズ44がテレ端に移動すると、観察対象の像が縮小する。ズームレンズ44は、非拡大観察が行われる場合には、ワイド端に配置されており、ズーム操作部12gの操作によって拡大観察が行われる場合には、ワイド端からテレ端に移動される。
【0027】
撮像センサ46は、照明光で照明された観察対象を撮像するカラー撮像センサである。撮像センサ46の各画素には、
図4に示すB(青色)カラーフィルタ、G(緑色)カラーフィルタ、R(赤色)カラーフィルタのいずれかが設けられている。このため、撮像センサ46は、Bカラーフィルタが設けられたB画素(青色画素)で紫色から青色の光を受光し、Gカラーフィルタが設けられたG画素(緑色画素)で緑色の光を受光し、Rカラーフィルタが設けられたR画素(赤色画素)で赤色の光を受光する。そして、各色の画素から、RGB各色の画像信号を出力する。
【0028】
撮像センサ46としては、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサを利用可能である。また、原色の撮像センサ46の代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(緑)の補色フィルタを備えた補色撮像センサを用いても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力されるので、補色−原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換することにより、撮像センサ46と同様のRGB各色の画像信号を得ることができる。また、撮像センサ46の代わりに、カラーフィルタを設けていないモノクロの撮像センサを用いても良い。
【0029】
CDS/AGC(Correlated Double Sampling/Automatic Gain Control)回路51は、撮像センサ46から得られるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路51を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)コンバータ52により、デジタルの画像信号に変換される。A/D変換後のデジタル画像信号がプロセッサ装置16に入力される。
【0030】
プロセッサ装置16は、画像信号取得部54と、DSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ除去部58と、画像処理切替部60と、通常用画像処理部62と、測定用画像処理部64と、映像信号生成部66とを備えている。画像信号取得部54は、CDS/AGC回路51及びA/Dコンバータ52を介して、撮像センサ46からデジタル画像信号を取得する。
【0031】
DSP56は、取得した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理などの各種信号処理を施す。欠陥補正処理では、撮像センサ46の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理が施された画像信号から暗電流成分が除かれ、正確な零レベルが設定される。ゲイン補正処理では、オフセット処理後の画像信号に特定のゲインを乗じることにより信号レベルが整えられる。
【0032】
ゲイン補正処理後の画像信号には、色再現性を高めるためのリニアマトリクス処理が施される。その後、ガンマ変換処理によって明るさや彩度が整えられる。ガンマ変換処理後の画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、または同時化処理ともいう)が施され、各画素で不足した色の信号が補間によって生成される。このデモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。ノイズ除去部58は、DSP56でデモザイク処理などが施された画像信号に対してノイズ除去処理(例えば移動平均法やメディアンフィルタ法などによる)を施すことによってノイズを除去する。ノイズが除去された画像信号は、画像処理切替部60に送信される。
【0033】
画像処理切替部60は、モード切替SW12fの操作によって通常モードにセットされている場合には、画像信号を通常用画像処理部62に送信し、測定モードにセットされている場合には、画像信号を測定用画像処理部64に送信する。
【0034】
通常用画像処理部62は、画像処理切替部60から受信した画像信号に対して色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理を行い、通常画像を生成する。色変換処理では、画像信号に対して3×3のマトリクス処理、階調変換処理、及び3次元LUT(ルックアップテーブル)処理などにより色変換処理を行う。色彩強調処理は、色変換処理済みの画像信号に対して行われる。構造強調処理は、例えば血管やピットパターン(腺管)などの観察対象の構造を強調する処理であり、色彩強調処理後の画像信号に対して行われる。上記のように各種画像処理などを施した画像信号を用いたカラー画像が通常画像である。
【0035】
測定用画像処理部64は、画像処理切替部60から受信した画像信号が表す血管を指標化(数値化)した血管指標値を算出するとともに、内視鏡12の先端部12dと観察対象の表面との間の距離である観察距離を算出する。
図5に示すように、測定用画像処理部64には、血管指標値算出部72と、観察距離算出部74と、画像生成部76とが設けられている。画像処理切替部60からの画像信号は、血管指標値算出部72と画像生成部76が受信する。
【0036】
血管指標値算出部72は、画像処理切替部60から受信した画像信号から血管指標値を算出する。血管指標値は、観察対象に含まれる血管の本数、長さ(または、観察対象に含まれる血管の長さの平均値である平均血管長)、太さ(または、観察対象に含まれる血管の太さの最大値である最大血管太さ)、高低差、傾き、面積、密度(単位面積中にある血管の割合)、深さ、血管間隔などである。血管指標値算出部72では、これらの血管指標値のうち少なくとも1以上を画像信号から算出する。血管指標値算出部72で算出する血管指標値の種類は、例えば、コンソール19などのユーザインタフェースで入力することによって選択される。本実施形態では、血管指標値として、血管の密度、平均血管長、最大血管太さを算出する。平均血管長と最大血管太さに関しては、画面上の血管を示す画素の画素数(ピクセル:pix)で示し、血管の密度に関しては(pix
−2)で示す。血管指標値算出部72は、算出した血管指標値を、観察距離算出部74に送信する。
【0037】
具体的には、
図6において、血管の密度を算出する場合、画像信号80に対して設定されたROI(Region of Interest(関心領域))82内において、特定の大きさ(単位面積)の領域を切り出し、その領域内の全画素に占める血管84の割合を算出する。これをROI82内の全画素に対して行うことで、ROI82の各画素の血管84の密度を算出する。平均血管長を算出する場合、ROI82の各画素の血管84の長さを算出し、これら各画素の血管84の長さの平均値を算出する。最大血管太さを算出する場合、ROI82の各画素の血管84の太さを算出し、これら各画素の血管84の太さの最大値を算出する。本実施形態では、血管の密度をDB(pix
−2)とし、平均血管長をAL(pix)とし、最大血管太さをMD(pix)とする。例えば、血管の密度DB=0.23(pix
−2)、平均血管長AL=18(pix)、最大血管太さMD=5(pix)とする。これらの血管指標値の他にも、血管指標値算出部72は、例えば、血管の本数を算出する場合には、画像信号内の各画素の血管の本数をカウントする。
【0038】
観察距離算出部74は、血管指標値算出部72から受信した血管指標値から、観察距離を求める。具体的には、観察距離算出部74は、血管指標値算出部72で求めた血管指標値のうち、距離不変血管指標値以外の血管指標値である平均血管長、最大血管太さのそれぞれから観察距離を求める。距離不変血管指標値は、血管の画像上のサイズ(長さや太さなど)が観察距離に応じて変化した場合でも、その値に変化が無い、即ち、観察距離に対して不変の血管指標値である。
【0039】
図7に示すように、観察距離算出部74は、血管指標値と、この血管指標値から得られる観察距離とが対応付けされた観察距離算出用テーブル90を有する。そして、観察距離算出部74は、観察距離算出用テーブル90内の血管指標値のうち、血管指標値算出部72から受信した血管指標値に対応する観察距離を取得する。例えば、観察距離算出部74は、血管指標値算出部72から受信した平均血管長ALが18(pix)なので、平均血管長とその観察距離とが対応付けされた観察距離算出用テーブル90において、18(pix)の平均血管長に対応する観察距離として20(mm)を取得する。また、血管指標値算出部72から受信した最大血管太さMDは5(pix)なので、最大血管太さとその観察距離とが対応付けされた観察距離算出用テーブル90において5(pix)の最大血管太さに対応する観察距離として20(mm)を取得する。観察距離算出部74では、複数の血管指標値から、複数の観察距離を取得した場合には、各観察距離を平均した平均値を取得する。本実施形態では、平均血管長に対応する観察距離と最大血管太さに対応する観察距離とは両方とも20(mm)なので、これらの平均値は20(mm)である。
【0040】
なお、観察距離算出用テーブル90において、血管指標値算出部72で求めた血管指標値が無い場合には、以下の方法で、観察距離を算出する。まず、観察距離算出用テーブル90内の血管指標値のうち、血管指標値算出部72で求めた血管指標値に最も近い血管指標値を選択し、この選択した血管指標値と血管指標値算出部72で求めた血管指標値との比率を求める。そして、観察距離算出用テーブル90を参照して、選択した血管指標値に対応する観察距離を取得し、この取得した観察距離に前述の比率を掛け合わせたものを、血管指標値算出部72で求めた血管指標値に対応する観察距離とする。
【0041】
例えば、血管指標値算出部72で求めた最大血管太さMDが16(pix)であった場合、最大血管太さとその観察距離とが対応付けされた観察距離算出用テーブル90において、最大血管太さMD=16(pix)に最も近い最大血管太さとして、20(pix)を選択する。選択した最大血管太さと最大血管太さMDとの比率を20(pix)/16(pix)=1.25として求める。そして、選択した最大血管太さ(20(pix))に対応する観察距離として5(mm)を取得し、この取得した観察距離5(mm)に比率1.25を掛け合わせる。これにより、血管指標値算出部72で求めた最大血管太さMDに対応する観察距離は、5(mm)×1.25=6.25(mm)と求められる。
【0042】
なお、血管指標値算出部72で求める血管指標値のうち、血管の密度については、観察距離が長い場合と短い場合とで同じであることから、距離不変血管指標値である。これに対して、血管の長さは、画像上において、観察距離が長い場合の方が短い場合よりも短くなることから、平均血管長は、距離不変血管指標値ではない。また、血管の太さは、画像上において、観察距離が長い場合の方が短い場合よりも細くなることから、最大血管太さは、距離不変血管指標値ではない。また、血管の本数は、観察距離が長くなるほど画像上に写る血管の本数が多くなることから、距離不変血管指標値ではない。
【0043】
画像生成部76は、画像信号と血管指標値と観察距離とに基づいて特殊画像信号を生成する。特殊画像信号を用いた画像が特殊画像である。例えば、画像生成部76は、画像信号に対して、色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理を行い、ベース画像信号を生成する。次に、ベース画像信号に対して、血管指標値に基づく情報をオーバーラップ処理することにより、特殊画像信号を生成する。オーバーラップ処理では、ベース画像信号に対して、血管指標値を示す情報と観察距離を表示させるように、特殊画像を生成する。例えば、
図8において、モニタ18上の右上領域100などに、ROI82内の血管指標値を示す情報と観察距離を表示する。また、ベース画像信号に対して血管指標値に応じて色付け処理を行うことにより、血管指標値が一定値以上の領域を疑似カラーで表示させても良い。例えば、ROI82内において、血管指標値が一定値以上の領域101を疑似カラーで表示させても良い。この疑似カラーの領域101を、血管指標値に応じて異なる色で表示させても良い。
【0044】
映像信号生成部66は、通常用画像処理部62または測定用画像処理部64から受信した画像信号を、モニタ18で表示可能な画像として表示するための映像信号に変換し、モニタ18に順次出力する。これにより、モニタ18には、通常画像信号が入力された場合は通常画像を表示し、特殊画像信号が入力された場合は特殊画像を表示する。
【0045】
次に、本発明の作用について、
図9に示すフローチャートに沿って説明する。まず、測定モードにセットされた場合(S11)に、観察対象を撮像して画像信号を取得する(S12)。この画像信号から、血管指標値を算出する(S13)。血管指標値は、血管の本数、長さ(平均血管長)、太さ(最大血管太さ)、高低差、傾き、面積、密度、深さ、血管間隔などのうち少なくとも1以上を算出する。算出した血管指標値が距離不変血管指標値であるか否かを判定する(S14)。そして、距離不変血管指標値以外の血管指標値から(S14でYes)観察距離を算出する(S15)。なお、距離不変血管指標値の場合は(S14でNo)観察距離を算出しない。
【0046】
以上のように、本発明は、観察対象を撮像して得られた画像信号から血管指標値を求め、この血管指標値に基づいて観察距離を算出するので、観察距離を正確も取得できる。
【0047】
なお、上記実施形態では、距離不変血管指標値以外の血管指標値から観察距離を算出しているが、距離不変血管指標値以外の血管指標値であり、かつ特定の条件を満たす血管指標値から観察距離を算出するようにしても良い。
【0048】
図10において、測定用画像処理部110には、測定用画像処理部64の各構成に加えて、優先度設定部112と、血管指標値選択部114とが新たに設けられる。優先度設定部112は、血管指標値のそれぞれに対して優先度を設定する。優先度は、例えば、予め設定されている病変の種類に応じて、血管指標値ごとに設定する。なお、コンソール19などのユーザインタフェースによる入力によって、各血管指標値に対して優先度を設定するようにしても良い。
【0049】
血管指標値選択部114は、血管の本数、太さ、長さ、高低差、傾き、面積、密度、深さ、血管間隔のうちから、優先度設定部112で設定された優先度が特定の条件を満たす血管指標値を、観察距離の算出に用いる血管指標値として選択する。観察距離算出部74では、血管指標値選択部114で選択された血管指標値から、観察距離を算出する。
【0050】
なお、上記実施形態では、観察距離算出部74は、血管指標値算出部72から受信した血管指標値と、観察距離算出用テーブル90に対応付けされた血管指標値と観察距離とに基づいて、観察距離を取得しているが、予め定められた基準観察距離と、この基準観察距離における基準血管指標値とから観察距離を算出しても良い。ここで、内視鏡観察の分野では、これまでの臨床現場で得られた多数の知見に基づいて、特定の観察距離における血管指標値に応じた診断基準が定められてきている。診断基準は、観察中の部位が正常または異常な状態(病変)であるかをドクターが判断できるように、各状態に応じて定められる。本実施形態においては、観察部位が正常な状態であることを示す診断基準が定められた特定の観察距離を、基準観察距離として用いる。また、基準観察距離で撮像して得られた画像信号から算出された血管指標値を、基準血管指標値として用いる。なお、観察部位が病変であることを示す診断基準が定められた特定の観察距離を、基準観察距離として用いても良い。
【0051】
図11において、観察距離算出部120には、基準観察距離と、この基準観察距離における基準血管指標値とを記憶する基準記憶部122が設けられている。基準記憶部122には、基準観察距離がDS(mm)として記憶され、この基準観察距離DS(mm)における平均血管長としてALs(pix)が記憶されている。また、基準観察距離DS(mm)における最大血管太さとしてMDs(pix)が記憶されている。例えば、基準観察距離DS=10(mm)とし、基準観察距離DS=10(mm)における平均血管長ALs=36(pix)とし、基準観察距離DS=10(mm)における最大血管太さMDs=10(pix)とする。
【0052】
観察距離算出部120では、基準血管指標値を、血管指標値算出部72から受信した平均血管長で除算するとともに、この除算した値に対して基準観察距離を乗算することによって、観察距離を算出する。例えば、受信した平均血管長ALが72(pix)であった場合には、基準観察距離DS=10(mm)、平均血管長ALs=36(pix)なので、観察距離はALs/AL×DS=36(pix)/72(pix)×10(mm)=5(mm)と求められる。また、受信した最大血管太さMDが20(pix)であった場合には、最大血管太さMDs=10(pix)なので、観察距離はMDs/MD×DS=10(pix)/20(pix)×10(mm)=5(mm)と求められる。
【0053】
なお、上記実施形態において、血管指標値算出部72は、例えば、平均血管長を算出する際にROI内の全画素について血管の長さを求めているため、血管の長さの頻度を示すヒストグラムが得られる。血管の長さの頻度を示すヒストグラムは、横軸が血管の長さであり、縦軸が頻度である。観察距離算出部74は、このヒストグラムに基づいて、観察対象が正常な状態であるか病変であるかの判定を行っても良い。
【0054】
具体的には、観察距離算出部74には、観察対象が正常な状態における血管指標値の頻度を示す正常ヒストグラムと、観察対象が病変部である血管指標値の頻度を示す病変ヒストグラムとが予め記憶される。そして、観察距離算出部74は、血管指標値算出部72から受信したヒストグラムが、正常ヒストグラムと異常ヒストグラムとのいずれに類似するかを判定する。この判定の結果、正常ヒストグラムに類似する場合は、観察対象が正常であると判定し、異常ヒストグラムに類似する場合は、病変の可能性がある病変可能性部位であると判定する。
【0055】
観察距離算出部74は、観察対象が正常である場合に観察距離の算出を行い、病変可能性部位である場合には観察距離の算出を行わない。なお、観察距離算出部74は、判定結果を画像生成部76に送信しても良い。画像生成部76は、観察対象が病変であるとの判定結果を受信した場合には、ベース画像信号に対して、病変の可能性があることを示す情報130をオーバーラップ処理して、特殊画像信号を生成する。例えば、
図12において、病変の可能性があることを示す情報130として、モニタ18上の右上領域などに「病変の可能性があります」と表示する。
【0056】
[第2実施形態]
第2実施形態では、上記第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、レーザ光源と蛍光体を用いて観察対象の照明を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0057】
図13に示すように、第2実施形態の内視鏡システム200では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dの代わりに、中心波長445±10nmの青色レーザ光を発する青色レーザ光源(
図13では「445LD」と表記)204と、中心波長405±10nmの青紫色レーザ光を発する青紫色レーザ光源(
図13では「405LD」と表記)206とが設けられている。これら各光源204、206の半導体発光素子からの発光は、光源制御部208により個別に制御されており、青色レーザ光源204の出射光と、青紫色レーザ光源206の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0058】
光源制御部208は、通常モードの場合には、青色レーザ光源204を駆動させる。これに対して、測定モードの場合には、青色レーザ光源204と青紫色レーザ光源206の両方を駆動させるとともに、青色レーザ光の発光比率を青紫色レーザ光の発光比率よりも大きくなるように制御している。以上の各光源204、206から出射されるレーザ光は、集光レンズ、光ファイバ、合波器などの光学部材(いずれも図示せず)を介して、ライトガイド25に入射する。
【0059】
なお、青色レーザ光又は青紫色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、青色レーザ光源204及び青紫色レーザ光源206は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオードなどの発光体を用いた構成としてもよい。
【0060】
照明光学系30aには、照明レンズ32の他に、ライトガイド25からの青色レーザ光又は青紫色レーザ光が入射する蛍光体210が設けられている。蛍光体210は、青色レーザ光によって励起され、蛍光を発する。また、青色レーザ光の一部は、蛍光体210を励起させることなく透過する。青紫色レーザ光は、蛍光体210を励起させることなく透過する。蛍光体210を出射した光は、照明レンズ32を介して、観察対象の体内を照明する。
【0061】
ここで、通常モードにおいては、主として青色レーザ光が蛍光体210に入射するため、
図14に示すような、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体210から励起発光する蛍光を合波した白色光によって観察対象が照明される。一方、測定モードにおいては、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体210に入射するため、
図15に示すような、青紫色レーザ光、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体210から励起発光する蛍光を合波した特殊光によって観察対象が照明される。
【0062】
なお、蛍光体210は、青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl
10O
17)などの蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。本構成例のように、半導体発光素子を蛍光体210の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0063】
[第3実施形態]
第3実施形態では、上記第1実施形態で示した4色のLED20a〜20dの代わりに、キセノンランプなどの広帯域光源と回転フィルタを用いて観察対象の照明を行う。また、カラーの撮像センサ46に代えて、モノクロの撮像センサで観察対象の撮像を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0064】
図16に示すように、第3実施形態の内視鏡システム300では、光源装置14において、4色のLED20a〜20dに代えて、広帯域光源302、回転フィルタ304、フィルタ切替部305が設けられている。また、撮像光学系30bには、カラーの撮像センサ46の代わりに、カラーフィルタが設けられていないモノクロの撮像センサ306が設けられている。
【0065】
広帯域光源302はキセノンランプ、白色LEDなどであり、波長域が青色から赤色に及ぶ白色光を発する。回転フィルタ304は、内側に設けられた通常モード用フィルタ308と、外側に設けられた測定モード用フィルタ309とを備えている(
図17参照)。フィルタ切替部305は、回転フィルタ304を径方向に移動させるものであり、モード切替SW12fにより通常モードにセットされたときに、回転フィルタ304の通常モード用フィルタ308を白色光の光路に挿入し、測定モードにセットされたときに、回転フィルタ304の測定モード用フィルタ309を白色光の光路に挿入する。
【0066】
図17に示すように、通常モード用フィルタ308には、周方向に沿って、白色光のうち青色光を透過させるBフィルタ308a、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ308b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ308cが設けられている。したがって、通常モード時には、回転フィルタ304が回転することで、青色光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0067】
測定モード用フィルタ309には、周方向に沿って、白色光のうち特定波長の青色狭帯域光を透過させるBnフィルタ309aと、白色光のうち緑色光を透過させるGフィルタ309b、白色光のうち赤色光を透過させるRフィルタ309cが設けられている。したがって、測定モード時には、回転フィルタ304が回転することで、青色狭帯域光、緑色光、赤色光が交互に観察対象に照射される。
【0068】
内視鏡システム300では、通常モード時には、青色光、緑色光、赤色光で観察対象が照明される毎にモノクロの撮像センサ306で観察対象を撮像する。これにより、RGBの3色の画像信号が得られる。そして、それらRGB色の画像信号に基づいて、上記第1実施形態と同様の方法で、通常画像が生成される。
【0069】
一方、測定モード時には、青色狭帯域光、緑色光、赤色光で観察対象が照明される毎にモノクロの撮像センサ306で観察対象を撮像する。これにより、Bn画像信号と、G画像信号、R画像信号が得られる。これらBn画像信号と、G画像信号、R画像信号に基づいて、特殊画像の生成が行われる。このように、特殊画像の生成には、B画像信号の代わりに、Bn画像信号が用いられる。それ以外については、第1実施形態と同様の方法で特殊画像の生成が行われる。