特許第6243492号(P6243492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6243492
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】複合冷凍食品
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/00 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   A23G9/00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-161500(P2016-161500)
(22)【出願日】2016年8月19日
【審査請求日】2016年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】溝田年伸
(72)【発明者】
【氏名】松田真理子
(72)【発明者】
【氏名】丸田聡
(72)【発明者】
【氏名】河本政人
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−106587(JP,A)
【文献】 特表2007−506423(JP,A)
【文献】 特表2008−500031(JP,A)
【文献】 特表2003−505056(JP,A)
【文献】 特開2008−237205(JP,A)
【文献】 特開2006−246861(JP,A)
【文献】 特開昭54−054169(JP,A)
【文献】 特表2007−537738(JP,A)
【文献】 特開2007−190035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00 − 9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル及びプロピレングリコールモノベヘン酸エステルから選ばれた1種以上のヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルを0.20〜0.50質量%及び微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース、ココア、おから、きなこ、あずき由来の不溶性多糖類含有素材、カカオマス、種実類由来の不溶性多糖類含有素材、抹茶から選ばれた1種以上のセルロースを含有する素材を、セルロースとして0.10〜1.00質量%含有する水分30質量%以上の冷凍食品と、水分15質量%以下の焼成食品とが接合されていることを特徴とする複合冷凍食品。
【請求項2】
前記冷凍食品は、モノグリセリン脂肪酸エステルを含有しない、請求項に記載の複合冷凍食品。
【請求項3】
前記冷凍食品は、更に増粘安定剤を含有する、請求項1又は2に記載の複合冷凍食品。
【請求項4】
前記増粘安定剤は、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、寒天、又は加工デンプンから選ばれた1種以上である、請求項に記載の複合冷凍食品。
【請求項5】
前記冷凍食品は、増粘安定剤を0.05〜0.50質量%含有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の複合冷凍食品。
【請求項6】
前記焼成食品が、ビスケット、クラッカー、ラスク、コーン、ウエハース、モナカ皮、パイ、シュー、ワッフル、ボーロ、おせんべい、おかき、又はあられから選ばれた請求項1〜のいずれか1つに記載の複合冷凍食品。
【請求項7】
前記冷凍食品は、更にソルビタン脂肪酸エステルを含有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の複合冷凍食品。
【請求項8】
前記ソルビタン脂肪酸エステルのHLBは6以下である、請求項に記載の複合冷凍食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分30質量%以上の冷凍食品と、水分15質量%以下の焼成食品とが接合されている複合冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
水分30%以上含むアイスクリームのような水分含量の高い食品と、いわゆる焼成食品と呼ばれるような水分含量の低い食品とを組み合わせた食品がある。このような水分含量の高い食品と低い食品を組み合わせた食品は、たとえ冷凍下で保存していたとしても、時間が経つにつれ、水分含量の高い食品に含まれる水分が水分含量の低い食品に移行してしまい、水分含量の低い食品が備えていた食感が失われてしまう。
【0003】
アイスクリームの食感に関して、下記特許文献1には、プロピレングリコールモノエステルと、モノ−ジグリセリド類とを含有させたアイスクリームが開示されており、上記乳化剤を含有させることによって、氷晶の成長を抑制できることが記載されている。
【0004】
一方、下記特許文献2には、植物由来の微小繊維状セルロースを含有し、該微小繊維状セルロースの比表面積が150m2/g以上であることを特徴とするソフトクリームが開示され、これによればソフトクリームの溶け落ちを遅延させることができることが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、冷菓用安定剤として、グルコマンナン、ガラクトマンナン及びタマリンドシードガムを含むことを特徴とする解凍時ゲル状となる冷菓が開示され、これによれば、特に解凍時において離水が抑制され粘弾性のある良好な食感を有することが開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献4には、プロピレングリコールベヘン酸エステルとグリセリンコハク酸脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする低脂質冷菓が開示され、これによれば口当たりが良好で、且つ風味豊かな低脂質冷菓を提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4268982号公報
【特許文献2】特許第5538500号公報
【特許文献3】特開2007−006732号公報
【特許文献4】特許第5160511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1には、プロピレングリコールモノエステルとモノ−ジグリセリド類とを含有させたアイスクリームは、氷晶の成長が抑制できることが記載されている。しかし、このようなアイスクリームは、フリーザー吐出後に溶けやすくだれやすいため、成型しにくいことが明らかであった。
【0009】
上記引用文献2には、植物由来の微小繊維状セルロースを含有させることにより、ソフトクリームの溶け落ちを遅延させることが記載されている。また、上記引用文献3には、グルコマンナン、ガラクトマンナン及びタマリンドシードガムを含むことにより、解凍時において離水が抑制されることが記載されている。さらに、上記引用文献4には、プロピレングリコールベヘン酸エステルとグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを含むことにより、脂質が少ないにも関わらず、口当たりが良好で、且つ豊かな風味を持つことが記載されている。しかしながら、これらのいずれの文献も、アイスクリームなどの水分含量の高い食品とビスケットやモナカ皮などの水分含量の低い食品とを接合しても、水分含量の低い食品が本来備えていた食感を維持するという課題に寄与するものではなかった。
【0010】
よって、本発明の目的は、冷凍食品の安定的な成型を可能にすると共に、水分含量の高い食品である冷凍食品の水分が水分含量の低い食品である焼成食品に移行しにくく、焼成食品のサクサク感を維持することができる複合冷凍食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル、プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル及びプロピレングリコールモノベヘン酸エステルから選ばれた1種以上のヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルを0.20〜0.50質量%及び微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース、ココア、おから、きなこ、あずき由来の不溶性多糖類含有素材、カカオマス、種実類由来の不溶性多糖類含有素材、抹茶から選ばれた1種以上のセルロースを含有する素材を、セルロースとして0.10〜1.00質量%含有する水分30質量%以上の冷凍食品と、水分15質量%以下の焼成食品とが接合されていることを特徴とする複合冷凍食品を提供するものである。
【0012】
この発明によれば、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステル及びセルロースを含有する素材を含有するので、冷凍食品の安定的な成型を可能にし、また冷凍されたときの氷結晶の保管中の熱変動(熱ショック)による変化が抑制される。このことにより、冷凍食品の水分が焼成食品に移行しにくくなり、ビスケットやモナカ皮などの焼成食品のサクサク感などを維持することができる。
【0013】
また、この発明によれば、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することにより、冷凍されたときの氷結晶が細かい状態で経時的に維持することができ、滑らかな食感の冷凍食品となる。一方で、冷凍食品が製造時(成型時)溶けやすくだれやすくなり、焼成食品に接合させたときに冷凍食品が安定的に充填されず、はみ出したりするという問題があるが、セルロースを含有する素材を含有することにより、冷凍食品の成型性を向上させるので、焼成食品に接合させやすくすることができる。
この態様によれば、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルにより、氷結晶の微細化と共に、焼成食品への水分移行を良好に抑制でき、成型性を向上させることができる。
【0016】
本発明における冷凍食品においては、モノグリセリン脂肪酸エステルを含有しないことが好ましい。この態様によれば、冷凍食品がモノグリセリン脂肪酸エステルを含有しないことにより、成型性が低下するのを抑制することができる。ちなみに、モノグリセリン脂肪酸エステルは、アイスクリームで通常使用される乳化剤である。
【0017】
本発明における冷凍食品は、更に増粘安定剤を含有することが好ましい。この態様によれば、冷凍食品の成型性を更に高めることができる。
【0018】
本発明における冷凍食品の増粘安定剤は、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、寒天、又は加工デンプンから選ばれた1種以上であることが好ましい。この態様によれば、冷凍食品の食感を良好に保ちつつ、成型性を高めることができる。
【0021】
本発明における冷凍食品は、増粘安定剤を0.05〜0.50質量%含有することが好ましい。この態様によれば、冷凍食品の食感を良好に維持しつつ、成型性を高めることができる。
【0022】
本発明における焼成食品は、ビスケット、クラッカー、ラスク、コーン、ウエハース、モナカ皮、パイ、シュー、ワッフル、ボーロ、おせんべい、おかき、又はあられから選ばれたいずれか1つであることが好ましい。この態様によれば、焼成食品の経時的な食感変化が抑制されサクサク感などを維持した複合冷凍食品を得ることができる。
【0023】
本発明における冷凍食品は、更にソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。この態様によれば、冷凍食品の成型性を高めることができる。
【0024】
本発明における冷凍食品のソルビタン脂肪酸エステルのHLBは6以下であることが好ましい。この態様によれば、冷凍食品の成型性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステル及びセルロースを含有する素材を含有するので、冷凍食品の安定的な成型を可能にし、また冷凍されたときの氷結晶の保管中の熱変動(熱ショック)による変化が抑制される。このことにより、冷凍食品の水分が焼成食品に移行しにくくなり、ビスケットやモナカ皮などの焼成食品のサクサク感などを維持することができる。
【0026】
また、この発明によれば、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することにより、冷凍されたときの氷結晶が細かい状態で経時的に維持することができ、滑らかな食感の冷凍食品となる。一方で、冷凍食品が製造時(成型時)溶けやすくだれやすくなり、焼成食品に接合させたときに冷凍食品が安定的に充填されず、はみ出したりするという問題があるが、セルロースを含有する素材を含有することにより、冷凍食品の成型性を向上させるので、焼成食品に接合させやすくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明における冷凍食品とは、「前処理を施し、急速凍結を行って、−18℃以下の凍結状態で保持した包装食品をいう。(社団法人日本冷凍食品協会)」という定義に限られず、一定以下の冷凍温度で保持され消費者に提供される食品をいう。
【0028】
本発明の冷凍食品は、水分30質量%以上の冷凍製品であり、例えば、冷凍温度域で喫食するホイップクリーム、カスタードクリーム、生チョコレートクリーム、アイスクリーム、氷菓などが挙げられる。
【0029】
本発明で用いる焼成食品としては、例えば、ビスケット、クラッカー、ラスク、コーン、ウエハース、モナカ皮、パイ、シュー、ワッフル、ボーロ、おせんべい、おかき、又はあられ等が挙げられる。また、本発明で用いる焼成食品は、水分15質量%以下であることが好ましく、水分10質量%以下であることがより好ましい。焼成食品の水分含量は、例えば水分計「ケット」(商品名、ケット科学研究所製)により測定することができる。
【0030】
本発明で用いるヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと食用油脂などとを反応して得られた脂肪酸のエステルである。プロピレングリコールと脂肪酸のエステル化、又は食用油脂とプロピレングリコールとのエステル交換により製造されるが、いずれの方法で得られたプロピレングリコール脂肪酸エステルでもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む冷凍食品は、冷凍されたときの氷結晶の保管中の熱変動(熱ショック)による成長が抑制される。また、冷凍されたときの氷結晶が細かくなるため、滑らかな食感となる。
【0031】
ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルが好ましい。また、脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸が好ましい。プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、プロピレングリコールモノステアリン酸エステル(以下「PGMS」と略称する場合がある)、プロピレングリコールモノパルミチン酸エステル(以下「PGMP」と略称する場合がある)、プロピレングリコールモノベヘン酸エステル(以下「PGMB」と略称する場合がある)が好ましく、プロピレングリコールモノステアリン酸エステルが最も好ましい。
【0032】
冷凍食品中のヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステルの含量は、0.20〜0.60質量%であることが好ましく、0.20〜0.55質量%であることがより好ましい。冷凍食品中のプロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量が0.20質量%未満であると、氷結晶の変化が大きく水分移行が抑制されない傾向があり、一方、冷凍食品中のプロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量が0.60質量%を超えると、成型性が悪化する傾向がある。
【0033】
ここで、本明細書において成型性が良いとは、例えば、冷凍食品が焼成食品(モナカ皮等)に包まれるように接合されている場合に、製造時において冷凍食品が変形せず、焼成食品からはみ出ないことをいう。また、冷凍食品が2枚の焼成食品(ビスケット等)に挟まれて接合されている場合に、焼成食品に挟まれていない冷凍食品の側面部分が変形(はみ出る、膨らむ等)せず、側面部分が当初の形態を維持できることをいう。さらに、コーン等に冷凍食品を充填する場合に、上部の当初の冷凍食品の巻かれた形態が、溶けやすくだれるなど変形せず、維持されることをいう。保形性が良いとは、冷凍食品の冷凍下での経時的変化を観察し、製造時の冷凍食品の形態を維持できていることをいう。
【0034】
本発明で用いる不溶性多糖類を含有する素材は、セルロースを含有する素材であってもよいし、また、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース等のセルロース、ココア、おから、きなこ、あずき、カカオマス、種実類(アーモンド、マカデミアナッツ、ヘーゼルナッツ、カシュナッツ、ゴマ)、抹茶から選ばれた1種以上であってもよい。セルロースとしては、例えば、精製されたパルプを原料にして、加水分解もしくは機械粉砕が行われたものが用いられる。不溶性多糖類を含有する素材によって、成型時の安定性が向上するので、上記したように焼成食品からの冷凍食品のはみ出しを抑制することができ、また、焼成食品に接合させやすくすることができる。
【0035】
冷凍食品中の不溶性多糖類を含有する素材を、不溶性多糖類として、0.05〜1.10質量%含有することが好ましく、0.10〜1.00質量%含有することがより好ましい。冷凍食品中の不溶性多糖類を含有する素材が、不溶性多糖類として0.05質量%未満の含有であると、成型性が悪くなる傾向がある。一方、冷凍食品中の不溶性多糖類を含有する素材が不溶性多糖類として1.10質量%の含有を超えると、食感や風味が悪くなる傾向がある。
【0036】
本発明における冷凍食品は、モノグリセリン脂肪酸エステルを含有しないことが好ましい。モノグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、飽和であっても、不飽和であっても良く、また、モノグリセリン脂肪酸エステルには、モノグリセリンモノ脂肪酸エステルの他にも、モノグリセリンジ脂肪酸エステルが含まれていても良い。モノグリセリン脂肪酸エステルを含有しない冷凍食品は、成型性が低下するのを抑制することができる。
【0037】
本発明における冷凍食品には、更に増粘安定剤を含有することが好ましい。増粘安定剤は粘性などを付与することができるため、これを含む冷凍食品は成型性を更に高めることができる。
【0038】
増粘安定剤としては、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム、寒天、加工デンプン、アルギン酸、カシアガム、カードラン、カラヤガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、タラガム、プルラン、ウェランガム、スクシノグリカン等から選ばれた1種類以上を用いることができ、これにより冷凍食品の食感を良好に保ち、成型性を高めることができる。
【0039】
冷凍食品中の増粘安定剤の含有量は、0.05〜0.50質量%であることが好ましく、0.1〜0.30質量%であることより好ましい。冷凍食品中の増粘安定剤の含有量が0.05質量%未満であると、成型性が悪くなる傾向がある。一方、冷凍食品中の増粘安定剤の含有量が0.50質量%を超えると、食感や風味が悪くなる傾向がある。
【0040】
本発明における冷凍食品は、更にソルビタン脂肪酸エステルを含有することが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルを含有することにより、冷凍食品の成型性を更に高めることができる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタントリ脂肪酸エステルが好ましい。また、脂肪酸としては、ベヘン酸が好ましい。
【0041】
また、ソルビタン脂肪酸エステルのHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)は、6以下であることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルのHLBが6を超えると、成型性が向上しない傾向がある。
【0042】
なお、本発明における複合冷凍食品及び冷凍食品には、例えばナッツ類の粉砕物、果汁パウダー、果物凍結乾燥チップ、チョコレート、コーヒーチップ、キャラメル、抹茶、カカオニブ、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップ、ドライフルーツ、マシュマロなどの具材を含有させてもよい。
【実施例】
【0043】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
<試験例1>
砂糖16質量部、脱脂粉乳8質量部、植物油脂7.5質量部、香料0.2質量部をアイスクリーム原料の基本配合とし、これに下記表1〜3に示すようにヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステル(PGMS、PGMP、PGMB)又はヨウ素価20を超えるプロピレングリコール脂肪酸エステル(PGMO)、及び不溶性多糖類を含有する素材を添加した。このアイスクリーム原料を加熱溶解し、ホモゲナイザーにて均質化し、殺菌してフリージングを行った。更に、フリーザーから−5℃・OR(オーバーラン)=100で吐出し、モナカ皮2枚で挟んだ。
【0045】
得られたモナカアイスについて、成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0046】
成型性の評価は、表4に示すように、アイスクリームをモナカ皮2枚に挟んだ場合に、挟んだモナカ皮からクリームがはみ出した個数を計測して行った。
【0047】
吸湿耐性の評価は、表5に示すように、モナカアイス製造時から−18℃で14日間保存した場合において、モナカ皮の水分値上昇幅を計測して行った。
【0048】
総合評価は、専門のパネラー8名により行われ、「◎」が7名以上のことを、「○」が5名以上のことを、「△」が3名以上のことを、「×」が2名未満ことを、それぞれ表した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
その結果、表1〜3に示されるように、ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステル(PGMS、PGMP、PGMB)と不溶性多糖類を含有する素材とを含む実施例1〜12では、成型性と吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価であった。
【0055】
一方、不溶性多糖類を含有する素材を含むがプロピレングリコール脂肪酸エステルを含まない比較例1では、成型性に優れるが、吸湿耐性は十分でなく、総合評価では良い評価を得られなかった。また、ヨウ素価20を超えるプロピレングリコール脂肪酸エステル(PGMO)と不溶性多糖類を含有する素材を含む比較例2〜5では、成型性に優れるが、吸湿耐性が十分でなく、総合評価でも良い評価を得られなかった。
【0056】
<試験例2>
下記表6に示すようにPGMSとセルロースとを添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0057】
【表6】
【0058】
その結果、表6に示されるように、PGMSとセルロースとを含む実施例13では、成型性と吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価であった。
【0059】
一方、PGMSを含みセルロースを含まない比較例6では、成型性が劣るため、吸湿耐性が十分に良い評価でなく、総合評価でも良い評価を得られなかった。
【0060】
<試験例3>
下記表7に示すようにPGMSとセルロース、更に飽和モノグリセリン脂肪酸エステル、又は不飽和モノグリセリン脂肪酸エステルを添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0061】
【表7】
【0062】
その結果、表7に示されるように、飽和モノグリセリン脂肪酸エステル、又は不飽和モノグリセリン脂肪酸エステルをいずれも含まない実施例14では、成型性と吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価であった。
【0063】
一方、飽和モノグリセリン脂肪酸エステル、及び/又は不飽和モノグリセリン脂肪酸エステルのいずれかを含む実施例15〜19では、成型性は十分に良いものではなく、また総合評価でも十分に良い評価ではないが、吸湿耐性に優れていた。
【0064】
<試験例4>
下記表8に示すように増粘安定剤(ローカストビーンガム、グアーガム)を添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0065】
【表8】
【0066】
その結果、表8に示されるように、実施例20,21では、成型性と吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価であった。実施例20,21はいずれも成型性が○であるが、実施例20は、挟んだモナカ皮からクリームがはみ出した個数が3個であった一方、実施例21は2個であったことから、増粘安定剤を含む実施例21は、含まない実施例22に比べて、成型性に優れていた。
【0067】
<試験例5>
下記表9,10に示すように、各種増粘安定剤を1種類以上添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。また、風味・食感の評価も行った。
【0068】
風味・食感の評価は、専門のパネラー8名により行われ、「5」がなめらかな舌触りで口どけもよく、非常においしいことを、「4」がややなめらかな舌触りで口どけもあり、おいしいことを、「3」が口どけもあり、ややおいしいことを、「2」がもったりした舌触りで口どけもやや悪く、あまりおいしくないことを、「1」が非常に持ったりした舌触りで口どけも悪く、おいしくないことを、それぞれ表した。
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
その結果、表9,10に示されるように、増粘安定剤としてローカストビーンガムを1種含む実施例22、及びタマリンドシードガムを1種含む実施例24では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は5であり、総合評価も良い評価であった。また、増粘安定剤としてグアーガムを1種含む実施例23では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4であり、総合評価も良い評価であった。一方、増粘安定剤としてゼラチンを1種含む実施例26、及びペクチンを1種含む実施例27では、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4であったが、成型性は十分に良いものではなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。また、増粘安定剤としてカラギナンを1種含む実施例25、キサンタンガムを1種含む実施例28、及び加工デンプンを1種含む実施例29では、吸湿耐性に優れ、風味・食感は3であったが、成型性は十分に良いものではなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【0072】
増粘安定剤を2種含む実施例30〜34では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4又は5であり、総合評価も良い評価であった。
【0073】
増粘安定剤を3種含む実施例35,36,38〜40では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4又は5であり、総合評価も良い評価であった。一方、同じく増粘安定剤を3種含む実施例37では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は3であるが、総合評価では十分に良い評価を得られなかった。
【0074】
増粘安定剤を5種含む実施例41では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4であり、総合評価も良い評価であった。
【0075】
<試験例6>
下記表11に示す量でPGMSを添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0076】
【表11】
【0077】
その結果、表11に示されるように、PGMSを0.2,0.3,0.4,0.5質量部含む実施例44〜47では、成型性、吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価であった。一方、PGMSを0.05,0.10質量部含む実施例42,43では、成型性に優れるが、吸湿耐性は十分に良いものではなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。また、PGMSを0.60質量部含む実施例48では、吸湿耐性に優れるが、成型性は十分に良いものではなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【0078】
<試験例7>
下記表12に示す量でセルロースを添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0079】
【表12】
【0080】
その結果、表12に示されるように、セルロースを0.10,0.35,0.60,0.85,1.00質量部含む実施例50〜54では、成型性、吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価が得られた。一方、セルロースを0.05,1.10質量部含む実施例49,55では、吸湿耐性に優れるが、成型性は十分に良いものでなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【0081】
<試験例8>
下記表13に示す量で増粘安定剤を添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。また、試験例5と同様にして風味・食感の評価も行った。
【0082】
保形性の評価は、冷凍庫に3日間保管したモナカアイスのモナカ皮を剥ぎ、常温にてアイスクリーム部分50gをメッシュ(目開き0.5mm)に乗せ、20分後のアイスクリームの形態と、メッシュスルー(通過)の質量により評価した。アイスクリームがメッシュに乗せた当初の形を維持し、メッシュスルーが3g以内であった場合を「○」、アイスクリームがメッシュに乗せた当初の形から変形するが、メッシュスルーが8g以内であった場合を「△」、アイスクリームがメッシュに乗せた当初の形から変形し、メッシュスルーが8g超えた場合を「×」とした。
【0083】
【表13】
【0084】
その結果、表13に示されるように、増粘安定剤を合計で0.05質量部含む実施例57では、保形性は十分に良いものではないが、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4であり、総合評価でも良い評価が得られた。増粘安定剤を合計で0.15,0.25質量部含む実施例58,59では、成型性、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は5であり、総合評価でも特に良い評価を得られた。増粘安定剤を合計で0.35質量部含む実施例60では、成型性、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は4であり、総合評価でも良い評価を得られた。増粘安定剤を合計で0.50質量部含む実施例61では、成型性、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は3であり、総合評価でも良い評価を得られた。一方、増粘安定剤を合計で0.03質量部含む実施例56では、吸湿耐性に優れ、風味・食感は4であったが、成型性、保形性は十分に良いものでなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。増粘安定剤を合計で0.55質量部含む実施例62では、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は3であるが、成型性は十分に良いものでなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【0085】
<試験例9>
下記表14に示す量で各種乳化剤を添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性、試験例8と同様にして保形性の程度を評価し、総合評価を行った。また、試験例5と同様にして風味・食感の評価も行った。
【0086】
【表14】
【0087】
その結果、表14に示されるように、乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステル含む実施例64では、吸湿耐性、保形性に優れるが、特に成型性に優れ、風味・食感は5であり、総合評価でも特に良い評価が得られた。PGMS以外の乳化剤を含まない実施例63では、成型性、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は5であり、総合評価でも良い評価を得られた。乳化剤として、それぞれショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステル含む実施例65,66では、成型性、吸湿耐性、保形性に優れ、風味・食感は4であり、総合評価でも良い評価を得られた。一方、乳化剤として、それぞれポリソルベート、レシチンを含む実施例67,68では、成型性、吸湿耐性に優れ、風味・食感はそれぞれ4、3であるが、保形性は十分に良いものでなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【0088】
<試験例10>
下記表15に示す量で各HLB値のソルビタン脂肪酸エステルを添加したモナカアイスを作製し、試験例1と同様にして成型性、吸湿耐性の程度を評価し、総合評価を行った。
【0089】
【表15】
【0090】
その結果、表15に示されるように、ソルビタン脂肪酸エステルを含まない実施例69では、成型性は十分に良いものではないが、吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価を得られた。HLB=1,5.5のソルビタン脂肪酸エステル含む実施例70,73では、成型性、吸湿耐性に優れ、総合評価でも良い評価を得られた。HLB=2.5,4.5のソルビタン脂肪酸エステル含む実施例71,72では、吸湿耐性に優れるが、成型性に特に優れ、総合評価でも特に良い評価を得られた。一方、HLB=7,8のソルビタン脂肪酸エステル含む実施例74,75では、吸湿耐性に優れるが、成型性は十分に良いものではなく、総合評価でも十分に良い評価を得られなかった。
【要約】
【課題】冷凍食品の安定的な成型を可能にすると共に、冷凍食品の水分が焼成食品に移行しにくく、焼成食品の当初の食感を維持することができる複合冷凍食品を提供する。
【解決手段】ヨウ素価20以下のプロピレングリコール脂肪酸エステル及び不溶性多糖類を含有する素材を含有する水分30質量%以上の冷凍食品と、水分15質量%以下の焼成食品とを接合する。
【選択図】なし