(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部情報は、前記パルス照射が行われる場合において、順次発生する2つの放射線パルスの立ち上がり部と立ち下がり部の重なり状態を決定する情報である請求項1に記載の放射線撮影装置。
前記判定テーブルには、前記放射線管の種類、前記管電流または管電圧の少なくとも一方、及びフレームレートの少なくとも3種類の情報の組み合わせ毎に、前記パルス照射対応モードの設定可否の情報が記録されている請求項5に記載の放射線撮影装置。
前記判定部は、前記パルス照射対応モードの設定可否の判定に必要な前記外部情報を取得できない場合には、前記画像検出部の動作モードを前記連続照射対応モードに設定する請求項5〜7のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記制御部は、前記パルス照射対応モードにおいて、前記放射線検出部が出力する前記検出信号に基づいて放射線パルスの立ち上がりを検出して、前記放射線パルスの立ち上がりを検出したタイミングで、前記信号電荷を蓄積する蓄積動作を開始させる請求項1〜13のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記制御部は、前記パルス照射対応モードにおいて、前記放射線検出部が出力する前記検出信号に基づいて放射線パルスの立ち下がりを検出して、前記放射線パルスの立ち下がりを検出したタイミングで、前記信号電荷を蓄積する蓄積動作を終了して、前記信号電荷の読み出し動作を開始する請求項1〜14のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
前記制御部は、静止画撮影において、前記パルス照射対応モードと同様に、前記放射線検出部の検出信号に基づいて、放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出して、検出したタイミングに前記信号電荷を蓄積する蓄積動作と前記信号電荷の読み出し動作のタイミングを同期させる請求項18に記載の放射線撮影装置。
前記撮像領域は、前記画素の他に、前記画素から前記信号電荷を読み出すための信号線を常時短絡させた少なくとも1つの短絡画素を含み、前記短絡画素は、前記放射線検出部として前記放射線の照射量に応じた信号電荷を前記信号線に常時出力する請求項1〜19のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
動画撮影を行うためにパルス状の放射線を順次発生して放射線のパルス照射を行う放射線発生装置と組み合わせて使用される放射線撮影装置であり、前記放射線の照射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素がマトリクスに配列され、被写体の放射線画像を検出する画像検出部と、前記放射線を検出して放射線の照射量に応じた検出信号を出力する放射線検出部であり、前記パルス状の放射線の立ち上がりと立ち下りを検出して前記画像検出部の動作の開始タイミングを決定するための検出信号を出力する放射線検出部とを有する前記放射線撮影装置の制御方法において、
前記放射線発生装置に関する情報及び撮影条件を含む外部情報を取得するステップと、
前記外部情報に基づいて、前記画像検出部の動作モードを、前記パルス照射する場合に対応したパルス照射対応モードに設定可能か否かを判定するステップと、
前記パルス照射対応モードに設定可能である場合には、前記画像検出部の動作モードを前記パルス照射対応モードに設定し、前記パルス照射対応モードに設定できない場合には、前記画像検出部の動作モードを、前記放射線を一定の強度で連続照射する場合に対応した連続照射対応モードに設定するステップと、
設定した動作モードで前記画像検出部を制御するステップと、
を含むことを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、自己検出方式の同期制御には限界があり、X線パルスの周期や、X線パルスの尾引の長さなどによっては自己検出方式の同期制御を行えない場合もある。
図12及び
図13は、パルス照射で動画撮影を行う場合における、X線の強度の経時変化を表す照射プロファイルを示す。
図12に示すように、X線発生装置は、開始指令を受けると電圧印加が開始されて、電圧印加が開始されると、X線の強度が立ち上がる。そして、X線の強度は、管電流に応じたピークまで上昇してほぼ定常な状態を保ち、停止指令を受けると電圧印加が停止されて下降する。これにより1個のX線パルスが生成され、これを一定間隔で繰り返すことにより、複数個のX線パルスが一定のパルス周期で照射される。1個のX線パルスの立ち上がり(照射開始)と立ち下がり(照射終了)は、X線強度を表す電圧信号と閾値電圧Vthを比較して検出される。一般的な2極管からなるX線管を使用するX線発生装置の場合には、停止指令に対するX線管の応答速度が比較的遅いため、停止指令を受けてからX線強度が「0」になるまでの時間、すなわちX線パルスの波尾の長さTsが長くなってしまう。
【0011】
図12に示すように、パルス周期PPが比較的長い場合(PP1)は、X線パルスの波尾が長くても、先に照射されたX線パルスの波尾と、次に照射されたX線パルスの立ち上がり部分が重なることはない。そのため、連続する2個のX線パルスの境界が明瞭であり、2個のパルスの谷間では、X線強度は閾値電圧Vthよりも下降するため、上述のパルス検出手段によって、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを確実に検出することができる。
【0012】
これに対して、
図13に示すように、パルス周期PPが比較的短い場合(PP2)は、X線パルスの波尾が長いと、先に照射されたX線パルスの波尾と、その次に照射されたX線パルスの立ち上がり部分とが重なってしまい、X線パルスのピークとX線パルス間の谷間が不明瞭になる。
図13において、ハッチングで示す部分は、2つのX線パルスが重なっている部分と、その重なりによって生じるX線強度の増加分とを示す。
図13の照射プロファイルでは、X線パルスの重なりによって、X線強度は閾値電圧Vthを上回る状態で推移するので、実質的にX線が連続照射されている状態に近くなる。このような場合には、上述したパルス検出手段によっては、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出することができないため、自己検出方式による同期制御を行うことができない。
【0013】
こうした問題の解決策としては、例えば3極管やテトロード管等、X線パルスの波尾を直ちに減衰させる機能を備えた応答速度が速いX線管を備えたX線発生装置を用いることで、連続する複数個のX線パルスの重なりを無くす方法が考えられる。重なりが無くなれば、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出できるため、自己検出方式による同期制御が可能となる。
【0014】
しかし、応答速度が速いX線管を備えるX線発生装置は、非常に高価であり、X線発生装置の交換コストが嵩むという問題がある。しかも、応答速度が速いX線管を備えるX線発生装置に交換したとしても、動画撮影時のフレームレートが極端に短いと自己検出ができない場合があるなど、すべてのケースにおいて自己検出方式の同期制御が可能になるわけでもない。
【0015】
もう1つの対策としては、順次発生する2つのX線パルスの重なり状態をオペレータが計算で求めて、自己検出方式の同期制御が可能かどうかを判断する方法がある。X線パルスの波尾の長さは、X線管を抵抗として見たときの容量と、撮影毎に設定される管電流及び管電圧によって変化する。したがって、X線管の種類と、撮影毎に設定される管電流及び管電圧が分かれば計算によって求めることができる。算出したX線パルスの波尾の長さと、動画撮影のフレームレートに応じて設定されるパルス周期が分かれば、順次発生する2つのX線パルスの重なり状態を計算で求めることができる。
【0016】
しかし、X線パルスの重なり状態をオペレータが計算で求める方法は、同じX線管を使用する場合でも、撮影毎に変化する管電流及び管電圧に応じて計算を行わなければならないため、オペレータの作業が非常に煩雑となり、現実的ではない。
【0017】
しかも、応答速度が速いX線管を使用する方法でも、X線パルスの重なり状態をオペレータが計算で求める方法でも、自己検出方式の同期制御が不可能な場合には何らかの対処を施す必要がある。
【0018】
こうした問題及びその解決策について、特許文献1及び2のいずれにも明示も示唆もされていない。
【0019】
本発明は、通信ができない放射線発生装置との組み合わせで動画撮影を行う場合であっても、コスト増加及び作業の煩雑化を抑制しつつ、放射線発生装置の照射プロファイルに応じた適切な動作制御が可能な放射線撮影装置及びその制御方法、並びに放射線画像検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の放射線撮影装置は、動画撮影を行うためにパルス状の放射線を順次発生して放射線のパルス照射を行う放射線発生装置と組み合わせて使用される放射線撮影装置において、画像検出部、放射線検出部、制御部、及び判定部を備えている。画像検出部は、放射線の照射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素がマトリクスに配列された撮像領域を有し、被写体の放射線画像を検出する。放射線検出部は、放射線を検出して、放射線の照射量に応じた検出信号を出力する。制御部は、放射線検出部が出力する検出信号に基づいて放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出して、立ち上がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷を蓄積する蓄積動作の開始タイミングを決定し、立ち下がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷の読み出し動作の開始タイミングを決定するパルス照射対応モードと、前記放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出することなく、所定の時間間隔で蓄積動作と読み出し動作とを交互に繰り返す連続照射対応モードのいずれかの動作モードで画像検出部を動作させる。判定部は、放射線発生装置に関する情報及び撮影条件を含む外部情報を取得して、取得した外部情報に基づいて、画像検出部の動作モードをパルス照射対応モードに設定可能か否かを判定する判定部であり、パルス照射対応モードに設定可能である場合には、画像検出部の動作モードをパルス照射対応モードに設定し、パルス照射対応モードに設定できない場合には、画像検出部の動作モードを連続照射対応モードに設定する。
【0021】
外部情報は、パルス照射が行われる場合において、順次発生する2つの放射線パルスの立ち上がり部と立ち下がり部の重なり状態を決定する情報であることが好ましい。
【0022】
外部情報のうち、放射線発生装置に関する情報は、放射線発生装置を構成する放射線管の種類であり、
撮影条件は、動画撮影時のフレームレート、及び放射線管に与えられる管電流または管電圧の少なくとも一方であることが好ましい。
【0023】
判定部が外部情報と照合して、パルス照射対応モードの設定可否を判定するための判定テーブルを備えていることが好ましい。
【0024】
判定テーブルには、放射線管の種類、管電流または管電圧の少なくとも一方、及びフレームレートの少なくとも3種類の情報の組み合わせ毎に、パルス照射対応モードの設定可否の情報が記録されていることが好ましい。
【0025】
判定部は、外部情報に基づいて重なり状態を計算により求めて、パルス照射対応モードの設定可否を判定することが好ましい。
【0026】
判定部は、パルス照射対応モードの設定可否の判定に必要な外部情報を取得できない場合には、画像検出部の動作モードを連続照射対応モードに設定することが好ましい。
【0027】
画像検出部、制御部及びこれらを収容する筐体を有する放射線画像検出装置を備えていることが好ましい。
【0028】
放射線画像検出装置は、さらに、判定部を備えていることが好ましい。
【0029】
放射線画像検出装置は、さらに、判定テーブルを有していることが好ましい。
【0030】
放射線画像検出装置は、さらに、放射線検出部を有していることが好ましい。
【0031】
放射線画像検出装置とは別体とされた周辺装置を備えており、判定部は、周辺装置に設けられていることが好ましい。
【0032】
制御部は、パルス照射対応モードにおいて、放射線パルスの立ち上がりを検出したタイミングで、蓄積動作を開始させることが好ましい。
【0033】
制御部は、パルス照射対応モードにおいて、放射線パルスの立ち下がりを検出たタイミングで、蓄積動作を終了して、読み出し動作を開始することが好ましい。
【0034】
動画撮影に加えて、静止画撮影も可能であることが好ましい。
【0035】
制御部は、静止画撮影において、パルス照射対応モードと同様に、放射線検出部の検出信号に基づいて、放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出して、検出したタイミングに信号電荷を蓄積する蓄積動作と信号電荷の読み出し動作のタイミングを同期させることが好ましい。
【0036】
撮像領域は、上述した画素の他に、画素から信号電荷を読み出すための信号線を常時短絡させた少なくとも1つの短絡画素を含み、この短絡画素は、放射線検出部として放射線の照射量に応じた信号電荷を信号線に常時出力することが好ましい。
【0037】
本発明の放射線画像検出装置は、動画撮影を行うためにパルス状の放射線を順次発生して放射線のパルス照射を行う放射線発生装置と組み合わせて使用される放射線画像検出装置であり、画像検出部、放射線検出部、制御部、判定部、及びモード設定部を備えている。画像検出部は、放射線の照射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素がマトリクスに配列された撮像領域を有し、被写体の放射線画像を検出する。放射線検出部は、放射線を検出して、放射線の照射量に応じた検出信号を出力する。制御部は、放射線検出部が出力する検出信号に基づいて放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出して、立ち上がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷を蓄積する蓄積動作の開始タイミングを決定し、立ち下がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷の読み出し動作の開始タイミングを決定するパルス照射対応モードと、前記放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出することなく、所定の時間間隔で蓄積動作と読み出し動作とを交互に繰り返す連続照射対応モードのいずれかの動作モードで画像検出部を動作させる。判定部は、放射線発生装置に関する情報及び撮影条件を含む外部情報を取得して、取得した外部情報に基づいて、画像検出部の動作モードをパルス照射対応モードに設定可能か否かを判定する。モード設定部は、パルス照射対応モードに設定可能である場合には、画像検出部の動作モードをパルス照射対応モードに設定し、パルス照射対応モードに設定できない場合には、画像検出部の動作モードを連続照射対応モードに設定する。
【0038】
本発明の放射線撮影装置の制御方法は、動画撮影を行うためにパルス状の放射線を順次発生して放射線のパルス照射を行う放射線発生装置と組み合わせて使用される放射線撮影装置であり、放射線の照射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素がマトリクスに配列され、被写体の放射線画像を検出する画像検出部と、放射線を検出して放射線の照射量に応じた検出信号を出力する放射線検出部とを有する放射線撮影装置の制御方法である。本発明の放射線撮影装置の制御方法は、外部情報取得ステップと、設定可否判定ステップと、モード設定ステップと、及び制御ステップとを含んでいる。外部情報取得ステップは、放射線発生装置に関する情報及び撮影条件を含む外部情報を取得する。設定可否判定ステップは、外部情報に基づいて、画像検出部の動作モードを、放射線検出部が出力する検出信号に基づいて放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出して、立ち上がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷を蓄積する蓄積動作の開始タイミングを決定し、立ち下がりを検出したタイミングに基づいて前記信号電荷の読み出し動作の開始タイミングを決定するパルス照射対応モードに設定可能か否かを判定する。モード設定ステップは、パルス照射対応モードに設定可能である場合には、画像検出部の勤作モードをパルス照射対応モードに設定し、パルス照射対応モードに設定できない場合には、画像検出部の動作モードを、放射線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出することなく、所定の時間間隔で蓄積動作と読み出し動作とを交互に繰り返す連続照射対応モードに設定する。制御ステップは、設定した動作モードで画像検出部を制御する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、通信ができない放射線発生装置との組み合わせで動画撮影を行う場合であっても、コスト増加及び作業の煩雑化を抑制しつつ、放射線発生装置の照射プロファイルに応じた適切な動作制御が可能な放射線撮影装置及びその制御方法と、放射線画像検出装置とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12とを備えている。X線発生装置11は、例えば、フイルム用カセッテやIP用カセッテで使用される既存のX線発生装置であり、X線撮影装置12との通信機能を持たないものである。X線発生装置11は、X線源13と、X線源13を制御する線源制御装置14と、照射スイッチ15とで構成される。X線源13は、X線を放射するX線管13aと、X線管13aが放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)13bとを有する。
【0042】
X線管13aは、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器13bは、例えば、X線を遮蔽する4枚の鉛板を有しており、4枚の鉛板によってX線を透過させる矩形状の照射開口を形成したものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。4枚の鉛板は2枚1組にされて各組の鉛板はそれぞれ対向配置される。各組を直交する2方向にそれぞれ配置することで、矩形状の照射開口が形成される。
【0043】
線源制御装置14は、X線源13に対して高電圧を供給する高電圧発生器14aと、X線源13が照射するX線の線質(エネルギースペクトル)を決める管電圧、単位時間当たりの線量を決める管電流、及びX線の照射時間を制御する線源制御部14bとを備えている。高電圧発生器14aは、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブル14cを通じてX線源13に駆動電力を供給する。管電圧、管電流、X線の照射時間及び撮影方法等の撮影条件は、線源制御装置14の操作パネルを通じて放射線技師などのオペレータにより手動で線源制御部14bに設定される。撮影条件の一つである撮影方法とは、例えば、静止画撮影及び動画撮影等の撮影の種類である。なお、撮影条件として動画撮影が設定される場合には、動画撮影のフレームレート(fps)も一緒に設定される。
【0044】
照射スイッチ15は、線源制御装置14に信号ケーブルによって接続されている。照射スイッチ15は、放射線技師によって操作可能な二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源13のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源13に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置14に入力される。
【0045】
線源制御部14bは、照射スイッチ15からの制御信号に基づいて、X線源13の動作を制御する。照射スイッチ15の二段階押しにより発生する照射開始信号を受けると、線源制御部14bは、X線源13に対して開始指令を発して電力供給を開始する。これによりX線源13は照射を開始する。線源制御部14bは、静止画撮影時には、電力供給の開始とともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、線源制御部14bは、X線源13に対して停止指令を発して電力供給を停止する。X線源13は、停止指令を受けるとX線の照射を停止させる。
【0046】
また、線源制御部14bは、動画撮影時には、例えば、照射スイッチ15の二段階押しにより発生する照射開始信号を受けると、設定されたパルス周期で、X線源13に対して開始指令と停止指令とを交互に発して、X線源13に複数個のX線パルスを一定のパルス周期で順次照射させる。
【0047】
撮影台22は、フイルム用カセッテやIP用カセッテが着脱自在に取り付けられるスロットを有し、X線が入射する入射面がX線源13と対向するように配置されている。なお、撮影台22として、被検者Hを立位姿勢で撮影する立位撮影台を例示しているが、被検者Hを臥位姿勢で撮影する臥位撮影台でもよい。
【0048】
X線撮影装置12は、X線画像検出装置21、撮影制御装置23、およびコンソール24から構成される。X線画像検出装置21は、FPD36(
図3参照)と、FPD36を収容する可搬型の筐体とからなり、X線源13から照射されて被検者(被写体)Hを透過したX線を受けて被検者HのX線画像を検出する、可搬型の放射線画像検出装置である。X線画像検出装置21は、平面形状が略矩形の偏平な筐体を有し、平面サイズはフイルム用カセッテやIP用カセッテと略同様の大きさであるため、撮影台22にも取り付け可能である。
【0049】
撮影制御装置23及びコンソール24は、本発明の周辺装置に相当する。撮影制御装置23は、有線方式や無線方式によりX線画像検出装置21及びコンソール24と通信を行なう通信部と、通信部を介してX線画像検出装置21を制御する撮影制御部とを有している。撮影制御装置23は、X線画像検出装置21に撮影条件を送信して、FPD36の信号処理の条件を設定させる。また、撮影制御装置23は、X線画像検出装置21が出力する画像データを受信してコンソール24に送信する。
【0050】
コンソール24は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影方法といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、放射線技師などのオペレータにより手動入力される。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール24の操作画面を通じて入力する。
【0051】
コンソール24は、撮影制御装置23に対して撮影条件を送信するとともに、撮影制御装置23から送信されるX線画像のデータに対して、ガンマ補正、周波数処理等の各種画像処理を施す。画像処理済みのX線画像はコンソール24のディスプレイに表示される他、そのデータがコンソール24内のハードディスクやメモリ、あるいはコンソール24とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージデバイスに格納される。
【0052】
また、撮影制御装置23には、X線画像検出装置21と組み合わせて使用するX線発生装置11に関する情報を登録できるようになっている。X線発生装置11に関する情報は、例えば、2極管、3極管またはテトロード管などのX線管13aの種類に関する情報である。X線管13aの種類は、メーカー名、製品名、型番、仕様情報などによって特定される。X線管13aの種類は、例えば、X線撮影装置12の設置時やメンテナンス時にサービスマンやオペレータによって登録される。
【0053】
コンソール24は、撮影制御装置23に登録されたX線管13aの種類を読み出して、その中から使用する1つのX線管13aの種類をオペレータに選択させる選択画面を表示する機能を備えている。オペレータは、選択画面を通じて、X線画像検出装置21と組み合わせて使用するX線管13aの種類を指定することにより、使用するX線管13aの種類をコンソール24に入力する。コンソール24は、入力されたX線管13aの種類を撮影制御装置23に送信し、撮影制御装置21は、X線画像検出装置21に対して、撮影条件とともに送信される。
【0054】
X線管13aの種類と、撮影条件に含まれる動画撮影時のフレームレート(fps)と、X線管13aに与えられる管電流や管電圧は、X線発生装置11がパルス照射を行う場合のX線の照射プロファイルを決定する要因となる外部情報であり、より具体的には、パルス照射において、順次発生する2つのX線パルスの重なり状態を決定する外部情報である。これらの外部情報は、後述するように、X線画像検出装置21において、動画撮影時の動作モードの設定をするために使用される。
【0055】
図2に示すように、X線画像検出装置21は、矩形状の上面が放射線の照射面とされた筐体25を備えている。筐体25は、照射面が設けられている天板26と、天板26以外を構成する筐体本体27とからなり、例えば、天板26はカーボン等から構成され、筐体本体27は金属や樹脂等から構成されている。これにより、天板26によるX線の吸収を抑制しつつ、筐体本体27の強度が確保される。
【0056】
筐体25の上面には、X線画像検出装置21の動作状態等を報知する報知部であるインジケータ28が設けられている。インジケータ28は、例えば複数の発光部からなり、各発光部の発光状態の組み合わせによって、X線画像検出装置21の動作状態やバッテリの残容量等が表示される。動作状態としては、例えば撮影待機状態を表す「レディ状態」や、撮影後の画像データを送信中であることを表す「データ送信中」等がある。インジケータ28には、LCD等の表示装置を用いてもよい。
【0057】
X線画像検出装置21の筐体25内には、照射面に対面するように、X線画像を検出する画像検出手段であるFPD36が配置されている。FPD36は、X線を可視光に変換するシンチレータ29と、シンチレータ29によって変換された可視光を光電変換する検出パネル30とを備えた間接変換型であり、シンチレータ29のX線照射面側に検出パネル30を配置した「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」となっている。なお、FPD36は、シンチレータ29と検出パネル30との配置を逆にした「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」であってもよい。
【0058】
筐体25の内部には、照射面の短手方向に沿った一端側に、各種電子回路31、バッテリ32、通信部33が配置されている。各種電子回路31は、FPD36を制御するための電子回路であり、各種電子部品がX線の照射によって損傷しないようにX線遮蔽性を有する材料によって保護されている。バッテリ32は、充電可能かつ着脱自在なように筐体25に組み込まれており、FPD36、各種電子回路31及び通信部33に電力を供給する。通信部33は、有線方式または無線方式により、撮影制御装置23と通信を行なう。
【0059】
図3において、FPD36は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素37を配列してなる撮像領域38を有する検出パネル30と、画素37を駆動して信号電荷の読み出しを制御するゲートドライバ39と、画素37から読み出された信号電荷をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路40と、ゲートドライバ39と信号処理回路40を制御して、FPD36の動作を制御する制御部41とを備えている。制御部41には、有線方式または無線方式によって撮影制御装置23と通信を行なう通信部33が接続されている。通信部33は、コンソール24から入力されたX線管13aの種類及び撮影条件を含む外部情報を取得する。複数の画素37は、所定のピッチで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクスに配列されている。
【0060】
FPD36は、X線を可視光に変換するシンチレータ(図示せず)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素37で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、画素37が配列された撮像領域38の全面と対向するように配置されている。シンチレータは、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリニウムオキシサルファイド)などの蛍光体からなる。なお、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0061】
画素37は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード42、フォトダイオード42が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)43を備える。
【0062】
フォトダイオード42は、a−Si(アモルファスシリコン)などの半導体層(例えばPIN型)を有し、その上下に上部電極および下部電極が配されている。フォトダイオード42は、下部電極にTFT43が接続され、上部電極にはバイアス線(図示せず)が接続される。
【0063】
バイアス線を通じて、撮像領域38内の全画素37に対して、フォトダイオード42の上部電極にバイアス電圧が印加される。バイアス電圧の印加によりフォトダイオード42の半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0064】
TFT43は、ゲート電極が走査線47に、ソース電極が信号線48に、ドレイン電極がフォトダイオード42にそれぞれ接続される。走査線47と信号線48は格子状に配線されている。走査線47は撮像領域38内の画素37の行数分(n行分)設けられ、各走査線47は各行の複数の画素37に接続される共通配線である。信号線48は画素37の列数分(m列分)設けられ、各信号線48は各列の複数の画素37に接続される共通配線である。各走査線47はゲートドライバ39に接続され、各信号線48は信号処理回路40に接続される。
【0065】
ゲートドライバ39は、TFT43を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素37に蓄積する蓄積動作と、画素37から信号電荷を読み出す読み出し動作と、画素37に蓄積される電荷をリセットするリセット動作とを行わせる。制御部41は、ゲートドライバ39によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0066】
蓄積動作ではTFT43がオフ状態にされ、その間に画素37に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ39から同じ行のTFT43を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線47を一行ずつ順に活性化し、走査線47に接続されたTFT43を一行分ずつオン状態とする。
【0067】
一行分のTFT43がオン状態になると、一行分の画素37のそれぞれに蓄積された信号電荷が、各信号線48を通じて信号処理回路40に入力される。信号処理回路40において、一行分の信号電荷は電圧に変換されて出力され、各信号電荷に応じた出力電圧が、電圧信号D1〜Dmとして読み出される。アナログの電圧信号D1〜Dmはデジタルデータに変換されて、一行分の各画素の濃度を表すデジタルな画素値である画像データが生成される。画像データは、X線画像検出装置21の筐体に内蔵されるメモリ56に出力される。
【0068】
フォトダイオード42の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電流が発生する。暗電流に応じた電荷である暗電荷はバイアス電圧が印加されているためにキャパシタに蓄積される。暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素37において発生する暗電荷を、画素37から信号線48を通じて掃き出す動作である。
【0069】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素37をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ39から走査線47に対してゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、画素37のTFT43を一行ずつオン状態にする。TFT43がオン状態になっている間、画素37から暗電荷が信号線48を通じて信号処理回路40に入力される。
【0070】
リセット動作では、読み出し動作と異なり、信号処理回路40において、暗電荷に応じた出力電圧の読み出しは行われない。リセット動作では、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御部41から信号処理回路40にリセットパルスRSTが出力される。信号処理回路40においてリセットパルスRSTが入力されると、後述する積分アンプ49のリセットスイッチ49aがオンされて、入力された暗電荷がリセットされる。
【0071】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0072】
信号処理回路40は、積分アンプ49、MUX50およびA/D変換器51等からなる。積分アンプ49は、各信号線48に対して個別に接続される。積分アンプ49は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線48はオペアンプの一方の入力端子に接続される。積分アンプ49のもう一方の入力端子(図示せず)はグランド(GND)に接続される。積分アンプ49は、信号線48から入力される信号電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。
【0073】
各列の積分アンプ49の出力端子は、電圧信号D1〜Dmを増幅する増幅器(図示せず)や、電圧信号D1〜Dmを保持するサンプルホールド部(図示せず)を介して、MUX50に接続されている。MUX50は、パラレルに接続される複数の積分アンプ49から1つを選択し、選択した積分アンプ49から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器51に入力する。A/D変換器51は、アナログの電圧信号D1〜Dmをそれぞれの信号レベルに応じたデジタルな画素値に変換する。
【0074】
蓄積動作後、信号電荷を読み出す読み出し動作においては、ゲートパルスによってTFT43が一行ずつオン状態にされ、一行内の各列の画素37のキャパシタに蓄積された信号電荷が信号線48を介して積分アンプ49に入力される。
【0075】
積分アンプ49から一行分の電圧信号D1〜Dmが出力されると、制御部41は、積分アンプ49に対してリセットパルス(リセット信号)RSTを出力し、積分アンプ49のリセットスイッチ49aをオンする。これにより、積分アンプ49に蓄積された一行分の信号電荷がリセットされる。積分アンプ49がリセットされると、ゲートドライバ39から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素37の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素37の信号電荷を読み出す。
【0076】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ56に記録される。メモリ56に記録された画像データに対しては、FPD36の個体差や環境に起因して生じる固定パターンノイズであるオフセット成分を除去するオフセット補正や、各画素37のフォトダイオード42の感度のばらつきや信号処理回路40の出力特性のばらつきなどを補正するための感度補正といった画像補正処理が施される。画像データは、メモリ56から読み出されて撮影制御装置23に出力され、コンソール24に送信される。こうして被検者HのX線画像が検出される。
【0077】
また、FPD36は、X線発生装置11との間で同期信号の遣り取りをすることなく、X線源13の照射タイミングを自己検出して、検出した照射タイミングにFPD36の動作を同期させる自己検出方式の同期制御機能を有している。
図3においてハッチングで示すように、FPD36の撮像領域38内には、X線の照射開始及び照射終了の各タイミングを検出するための検出素子として短絡画素62が設けられている。画素37は、TFT43のオンオフによって信号線48との電気的な接続のオンオフが切り替えられるのに対して、短絡画素62は、信号線48と常時短絡している。
【0078】
短絡画素62は、構造は画素37とほぼ同様であり、フォトダイオード42とTFT43とを有しており、フォトダイオード42はX線の照射量に応じた信号電荷を発生する。短絡画素62において、画素37との構造上の相違点は、TFT43のソースとドレインが結線により短絡している点であり、短絡画素62のTFT43のスイッチング機能は失われている。これにより、短絡画素62のフォトダイオード42が発生する信号電荷が常時信号線48に流出し、積分アンプ49に入力される。なお、短絡画素62のTFT43のソースとドレインを結線する代わりに、短絡画素62についてはTFT43そのものを設けずに、フォトダイオード42と信号線48を直接接続してもよい。
【0079】
制御部41は、短絡画素62の出力に基づいて、X線源13からFPD36に照射されるX線の強度(単位時間当たりの照射量)を測定して、X線の強度変化を監視する。制御部41は、MUX50によって、短絡画素62からの信号電荷が入力される積分アンプ49を選択して、積分アンプ49の電圧信号を、短絡画素62の出力電圧Voutとして読み出す。制御部41は、出力電圧Voutを1回読み出すと、積分アンプ49をリセットする。制御部41は、照射中のX線の強度変化を監視できるように、蓄積動作中において、出力電圧Voutを読み出す動作をX線の照射時間に対して非常に短い間隔で繰り返す。
【0080】
制御部41は、出力電圧Voutの値をデジタルデータに変換してメモリ56に記録する。制御部41は、メモリ56に記録された出力電圧Voutの経時変化に基づいて、X線源13から照射されるX線の強度変化を監視する。制御部41は、自己検出方式による同期制御を行う場合には、出力電圧Voutの経時変化に基づいて、X線の立ち上がりと立ち下がりをそれぞれ検出することにより、X線の照射開始及び照射終了のタイミングを検出する。静止画撮影の場合には、FPD36は、自己検出方式による同期制御を実行して、照射開始のタイミングに合わせて蓄積動作を開始し、照射終了のタイミングに合わせて蓄積動作を終了して読み出し動作に移行する。
【0081】
FPD36は、動画撮影を行う場合のモードとして、X線源13がX線をパルス照射する場合に対応したパルス照射対応モードと、X線源13がX線をほぼ一定の強度で連続照射する場合に対応した連続照射対応モードの2つの動作モードを有している。FPD36は、パルス照射対応モードでは、静止画撮影の場合と同様に、連続的に発生するX線パルスの立ち上がりと立ち下がりを自己検出してX線の照射開始及び照射終了のタイミングを検出する自己検出方式による同期制御を実行する。X線源13によるパルス照射は、一定のパルス周期で行われるが、順次発生するX線パルスの立ち上がりや立ち下がりのタイミングに微少なズレが生じてパルス周期に変動が生じる場合もある。自己検出方式による同期制御を行うことで、パルス周期に変動が生じた場合でも、FPD36の動作をX線のパルス照射に正確に対応させることができる。
【0082】
連続照射対応モードは、連続的なX線照射中において、所定の時間間隔で蓄積動作と読み出し動作とを交互に繰り返すモードである。連続照射の場合には、X線の強度はほぼ一定であるので、FPD36は、同期を考慮せずに、所定の時間間隔で蓄積動作と読み出し動作とを交互に繰り返せばよい。
【0083】
パルス照射対応モードと連続照射対応モードは、基本的には、X線源13がパルス照射をするか連続照射をするかに応じて設定されるが、上述したように、
図12及び
図13に示したようなパルス照射の場合には、X線の照射プロファイルによって、自己検出方式による同期制御が可能な場合と不可能な場合がある。
図12及び
図13に示す照射プロファイルは、X線パルスの幅及びX線パルスの波尾の長さTsが同じで、パルス周期のみが異なっている。
図12に示す照射プロファイルのように、X線パルスのパルス周期PPが長い場合(PP1)には、順次発生する2つのX線パルスの重なりが無く、2つのX線パルスの谷間が明瞭であるため、自己検出方式による同期制御が可能である。
【0084】
一方、
図13に示す照射プロファイルのように、X線パルスのパルス周期PPが短い場合(PP2)には、順次発生する2つのX線パルスの重なりが生じ、2つのX線パルスの谷間が不明瞭な場合には、自己検出方式による同期制御が不可能である。具体的には、照射プロファイルにおいて、2つのX線パルスの谷間が、X線の強度が閾値電圧Vth以下にならない場合には、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出できないため、自己検出方式による同期制御は不可能である。
【0085】
FPD36は、X線源13がパルス照射を行う場合において、上述した外部情報に基づいて自己検出方式による同期制御が可能か否かを自動判定して、判定結果に応じてモード設定を行うモード設定機能を有している。FPD36は、自己検出方式による同期制御が可能な場合には、パルス照射対応モードに設定し、自己検出方式による同期制御が不可能な場合には、連続照射対応モードに設定する。
図13に示すような照射プロファイルの場合には、順次発生する2つのX線パルスの重なりにより、X線強度がほぼ一定の状態で照射される連続照射の照射プロファイルに近くなるため、X線源13がパルス照射を行う場合であっても、連続照射対応モードで動作させることができる。
【0086】
FPD36において、制御部41に接続された判定部64は、撮影制御装置23から送信された外部情報に基づいて、判定テーブル65を参照し、パルス照射対応モードが設定可能か否かを判定する。判定部64は、判定処理の判定結果に基づいて、モード設定を行うモード設定部としても機能する。判定部64は、パルス照射対応モードが設定可能である場合には、FPD36をパルス照射対応モードに設定し、パルス照射対応モードに設定できない場合には、FPD36を連続照射対応モードに設定する。
【0087】
判定テーブル65には、例えば、管電流とフレームレートとの組み合わせごとにパルス照射対応モードの設定可否の情報が記録されている。判定テーブル65は、X線管13aの種類ごとに複数設けられており、外部情報のうちX線管13aの種類に基づいて、判定部64により、対応する判定テーブルが選択される。
図4は、例えばX線管αという2極管の判定テーブル65の内容を示している。この判定テーブル65では、管電流はI
1からI
nに向かって順に高くなり、フレームレートもF
1〜F
nに向かって順に高くなる。また、「A」、「B」は、パルス照射対応モードの設定可否に関する評価であり、評価「A」は、パルス照射対応モードに設定可能であることを表し、「B」はパルス照射対応モードに設定できないことを表している。
【0088】
判定テーブル65の評価「A」、「B」は、照射終了後のX線の照射量が「0」になるまでにかかる時間、すなわちX線パルスの波尾の長さと、フレームレート(X線パルスのパルス周期)とに基づいて評価されている。波尾の長さは、照射終了後のX線の照射量の下降状態を表す時定数τから求めることができる。照射終了後のX線の照射量は、管電流及び管電圧に応じて求められる時定数τで指数関数的に下降し、照射量が「0」になるには、時定数τの3〜5倍の時間がかかることが知られている。例えば、X線管13aを抵抗Rとして見たとき、管電流Iと管電圧Vとの間で、R=V/Iの関係が成り立つ。また、X線管13aの容量をC
Tube[pF]、X線管13aと高電圧発生器14aとを接続する高電圧ケーブル14cの容量をC
Line[pF/m]、高電圧ケーブル14cのケーブル長をLとしたとき、X線管13aと高電圧ケーブル14cとを合わせた容量Cは、C=C
Tube+C
Line×Lにより求められる。よって、時定数τは、τ=RC=V/I(C
Tube+C
Line×L)により求めることができる。
【0089】
時定数τを求めるためのパラメータの具体的な値は、1例として、X線管13aの容量C
Tubeは500〜1000[pF]であり、高電圧ケーブル14cの容量C
Lineは100〜200[pF/m]であり、高電圧ケーブル14cのケーブル長Lは10〜20[m]であり、管電圧Vは50〜150[kV]であり、管電流Iは0.5〜20[mA]である。こうしたパラメータの値から求められる時定数τの値は、数ms〜数十ms程度である。
【0090】
上記のように、X線の波尾は、X線管13a及び高電圧ケーブル14cの容量Cと、管電流I及び管電圧Vによって変化し、例えば容量Cが大きく、または管電流Iが小さく、あるいは管電圧Vが高くなるほど長くなる。また、X線パルスのパルス周期PPは、フレームレートが高くなるほど短くなる。したがって、X線の波尾の長さ及びフレームレートから2個のX線パルスの重なり状態を推定することができるので、パルス照射対応モードの設定可否を判定することができる。
【0091】
例えば、
図12に示すように、フレームレートが比較的低く、パルス周期PPが比較的長い場合(PP1)は、X線パルスの波尾が長くても、先に照射されたX線パルスの波尾と、次に照射されたX線パルスの立ち上がり部分が重なることはない。そのため、連続する2個のX線パルスの境界が明瞭であり、2個のパルスの谷間では、X線強度は閾値電圧Vthよりも下降するため、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを確実に検出することができる。判定テーブル65では、
図12に示すような状態を、パルス照射対応モードに設定が可能な評価「A」としている。
【0092】
上記とは逆に、
図13に示すように、フレームレートが比較的高く、パルス周期PPが比較的短い場合(PP2)は、X線パルスの波尾が長いと、先に照射されたX線パルスの波尾と、その次に照射されたX線パルスの立ち上がり部分とが重なってしまい、X線パルスのピークとX線パルス間の谷間が不明瞭になり、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりを検出することができない。判定テーブル65では、
図13に示すような状態を、パルス照射対応モードに設定できない評価「B」としている。
【0093】
図4に示す2極管の判定テーブル65では、管電流が低いI
1のときにX線パルスの波尾が比較的長くなるため、フレームレートに関わらず評価は「B」となる。したがって、判定部64は、管電流I
1のときには、FPD36を連続照射対応モードに設定する。また、管電流がI
2でフレームレートがF
1のときには、評価が「A」であるため、パルス照射対応モードに設定可能であるが、フレームレートがF
2以上になると、X線パルス周期PPが比較的短くなるため、評価は「B」となる。したがって、判定部64は、管電流I
2及びフレームレートF
1のときには、FPD36をパルス照射対応モードに設定し、管電流I
2でフレームレートがF
2以上のときには、FPD36を連続照射対応モードに設定する。なお、管電流I
3〜I
nについても、管電流I
1、I
2と同様に、フレームレートとの関係に基づいてパルス照射対応モードの設定可否が評価されている。
【0094】
また、
図5は、例えば3極管のX線管βの判定テーブル68である。3極管のX線管βは、2極管のX線管αよりも応答速度が速いので、X線管αよりもパルス照射対応モードに設定可能な範囲が広くなる。そのため、このX線管βでは、管電流が低いI
1のときでも、フレームレートがF
1のときには評価が「A」となり、パルス照射対応モードに設定可能となる。また、管電流がI
2のときにも、フレームレートF
2まではパルス照射対応モードに設定が可能となる。以下同様に、管電流I
3〜I
nについても、管電流I
1、I
2と同様に、X線管αよりもパルス照射対応モードに設定可能な範囲が広くなっている。
【0095】
以上で説明したように、同じX線管で、同じパルス周期でパルス照射を行った場合でも、撮影毎に設定される管電流及び管電圧に応じてX線パルスの波尾Tsの長さが変化するため、波尾Tsの長さによってX線パルスの重なりが有る場合と無い場合が生じる。また、同じパルス周期、管電流及び管電圧でパルス照射を行った場合でも、X線管の種類によって応答速度が異なるため、X線パルスの重なりが有る場合と無い場合が生じる。ただし、X線管の種類と、管電流及びフレームレートの組み合わせによって、X線パルスの重なり状態には、概ね次のような傾向が生じる。
【0096】
例えば、X線パルスの波尾が比較的短い高管電流で、かつX線パルスのパルス周期が比較的長い低フレームレートのときには、パルス照射対応モードに設定可能となる場合が多くなる。また、X線パルスの波尾が比較的長い低管電流で、かつX線パルスのパルス周期が比較的長い低フレームレートのときには、X線管13aの種類によって判定結果が変化する。すなわち、X線管13aが応答の遅い2極管のときには、パルス照射対応モードに設定できない場合が多くなるが、X線管13aが応答の速い3極管やテトロード管のときには、パルス照射対応モードに設定可能な範囲が2極管よりも広くなる。更に、X線パルスのパルス周期が比較的短くなる高フレームレートのときには、管電流に関わらずパルス照射対応モードに設定できない場合が多くなる。それは、波尾が比較的長くなる低管電流のときには、
図13に示すように2個のX線パルスが重なり合って自己検出ができなくなるからである。また、波尾が比較的短くなる高管電流のときでも、フレームレートが極端に短い場合には自己検出ができない場合がある。
【0097】
なお、外部情報にX線管13aの種類の情報がない場合には、判定部64は、パルス照射対応モードの設定可否を判定せずに、FPD36の動作モードを連続照射対応モードに設定する。
【0098】
制御部41は、FPD36を連続照射対応モードに設定する際に、蓄積動作の時間も一緒に設定する。制御部41は、フレームレートからパルス周期PPを算出し、このパルス周期PPに基づいて蓄積動作の時間を設定する。パルス周期PPの間に、蓄積動作、読み出し動作、リセット動作の一連の動作が行われることが好ましいので、FPD36は、蓄積動作の時間は、例えば、パルス周期PPから、リセット動作及び読み出し動作に必要な時間を控除した残りの時間を蓄積動作の時間として算出する。
【0099】
以下、上記構成による作用について、
図6、
図7、
図10のフローチャート、及び
図8、
図9、
図11のタイミングチャートを参照しながら説明する。X線撮影システム10で撮影を行う場合には、まず、X線画像検出装置21がセットされた撮影台22に対して、被検者Hの撮影部位とX線源13の照射位置の位置合せが行われる。コンソール24には、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影方法等の検査オーダと、これに基づいて、管電流や管電圧等の撮影条件が入力される。撮影方法が動画撮影の場合には、フレームレートも一緒に入力される。さらに、コンソール24には、オペレータによって使用するX線管13aの種類の情報が入力される。
【0100】
コンソール24から入力された撮影条件及びX線管13aの種類に関する情報は、撮影制御装置23に送信される。撮影制御装置23は、X線画像検出装置21に撮影条件を送信して、FPD36の信号処理の条件を設定させる。また、撮影制御装置23は、入力されたX線管13aの種類を送信する。また、コンソール24に入力された撮影条件に基づいて、オペレータによって、X線源13に対しても撮影条件が設定される。
【0101】
X線画像検出装置21の判定部64は、撮影条件に含まれる撮影方法が動画撮影か否かを確認する(S001)。判定部64は、撮影方法が静止画撮影であるときには、FPD36をパルス照射対応モードに設定する(S001でNの場合)。また、判定部64は、撮影方法が動画撮影であるときには(S001でYの場合)、外部情報のうちX線管13aの種類を確認する(S002)。判定部64は、X線管13aの種類の情報がない場合には(S002でNの場合)、FPD36を連続照射対応モードに設定する(S003)。制御部41は、FPD36が連続照射対応モードに設定された場合には、フレームレートに基づいてFPD36の蓄積時間を設定する(S004)。
【0102】
また、判定部64は、外部情報にX線管13aの種類の情報がある場合には(S002でYの場合)、X線管13aの種類に応じて対応する判定テーブル65や68等を選択し、選択した判定テーブルを参照して、パルス照射対応モードの適否を判定する(S005)。判定部64は、X線管13aの種類と、撮影条件から読み出したフレームレート及び管電流との組み合わせから、設定可否に関する評価情報を読み取り、パルス照射対応モードに設定可能であるときには(S006でY)、FPD36をパルス照射対応モードに設定する(S007)。また、判定部64は、X線管13aの種類と、フレームレート及び管電流との組み合わせから、パルス照射対応モードに設定できないときには(S006でN)、FPD36を連続照射対応モードに設定する(S003)。この場合、制御部41は、フレームレートに基づいてFPD36の蓄積時間を設定する(S004)。
【0103】
パルス照射対応モードでは、FPD36は、
図7のフローチャート及び
図8のタイミングチャートに示す手順で動画撮影を実行する。FPD36は、撮影準備指示が入力されることにより、停止状態から待機状態に移行してリセット動作が開始される(S101)。リセット動作とともに、短絡画素62の出力電圧Voutの監視による、X線強度の測定を開始する(S102)。
【0104】
照射スイッチ15の押下によってX線源13に対して照射開始信号が入力されると、
図8に示すように、X線源13は、開始指令と停止指令の入力に応じてX線パルスを発生し、被検者Hに向けて複数のX線パルスを一定間隔で照射するパルス照射を開始する。制御部41は、出力電圧Voutと閾値電圧Vthを比較して、X線強度の変化を監視する(S103)。
図8に示すように、X線強度が上昇して、出力電圧Voutが閾値電圧Vthを超えたときにX線の照射が開始されたことを検出する(S104)。制御部41は、照射開始を検出すると、蓄積動作を開始する(S105)。
【0105】
FPD36は、蓄積動作中も出力電圧Voutと閾値電圧Vthを比較して、X線の強度変化を監視する(S106)。
図8に示すように、X線パルスのX線強度が下降を開始して、FPD36は、出力電圧Voutが閾値電圧Vth以下になったときに、照射終了を検出する(S107)。FPD36は、照射終了の検出に同期して蓄積動作を終了させる(S108)。FPD36は、蓄積動作を終了すると読み出し動作を実行する。そして、読み出し動作が終了すると、次の照射開始が検出されるまでの間、リセット動作を実行する(S109)。読み出されたX線画像は、メモリ56に記録される。FPD36は、X線源13からのパルス照射が継続している間、上記S103〜S109のステップを繰り返し(S110)、被写体の動画撮影を実行する。1個のX線パルス毎に撮影された複数枚の画像は、メモリ56からコンソール24に順次送信されて、コンソール24に表示される。
【0106】
FPD36は、撮影方法が静止画撮影である場合でも、パルス照射対応モードに設定される。しかし、
図9に示すように、静止画撮影時にはX線は1回しか照射されないので(S110でNの場合)、撮影動作が繰り返されることなく終了する。
【0107】
一方、連続照射対応モードでは、FPD36は、
図10のフローチャート及び
図11のタイミングチャートに示す手順で動画撮影を実行する。FPD36は、撮影準備指示が入力されることにより、停止状態から待機状態に移行してリセット動作が開始される(S201)。リセット動作とともに、短絡画素62の出力電圧Voutの監視による、X線強度の測定を開始する(S202)。
【0108】
照射スイッチ15の押下によってX線源13に対して照射開始信号が入力されると、
図11に示すように、X線源13は、開始指令と停止指令の入力に応じてX線パルスを発生し、被検者Hに向けて複数のX線パルスを一定間隔で照射するパルス照射を開始する。制御部41は、出力電圧Voutと閾値電圧Vthを比較して、X線強度の変化を監視する(S203)。
図11に示すように、X線強度が上昇して、出力電圧Voutが閾値電圧Vthを超えたときにX線の照射が開始されたことを検出する(S203でY)。ここまでの動作は、パルス照射対応モードと同様である。
【0109】
連続照射対応モードでは、FPD36は、照射開始を検出すると、
図6で説明したモード設定処理において設定された所定時間の蓄積動作を開始する(S204)。FPD36は所定時間が経過後、蓄積動作を終了して、読み出し動作及びリセット動作を実行する(S205)。リセット動作が終了すると、FPD36は、所定時間間隔で、蓄積動作、読み出し動作、リセット動作を繰り返す。FPD36は、X線源13からのX線のパルス照射が継続している間、上記S204及びS205のステップを繰り返す(S206)。
【0110】
連続照射対応モードにおいて、蓄積動作の時間は、モード設定処理(
図6参照)においてフレームレートから求めたパルス周期PPに基づいて算出された時間であるので、自己検出方式の同期制御が不可能な場合でも、パルス周期PPに同期させたフレームレートで動画撮影を行うことができる。
【0111】
また、本例では、1個目のX線パルスの照射開始の検出タイミングに合わせて蓄積動作を開始させ、それ以後、パルス周期PPに合わせて蓄積動作を繰り返しているので、蓄積動作後の読み出し動作やリセット動作のタイミングを、X線強度が低下する、2つのX線パルスの谷間に合わせることができる。
【0112】
以上説明したように、本発明のX線画像検出装置21によれば、パルス照射による動画撮影を行う場合において、外部情報に基づいて適切な動作モードを判定して、自己検出方式の同期制御が可能である場合には、パルス照射対応モードで動作し、自己検出方式の同期制御が不可能である場合には、連続照射対応モードで動作するので、X線の照射プロファイルに応じた適切な動作制御を行うことができる。
【0113】
従来の特許文献2に記載の装置のように、自己検出方式の同期制御しか行えないX線画像検出装置の場合には、X線源13の照射プロファイルによっては動画撮影ができない場合がある。そのため、特許文献2に記載のX線画像検出装置を使用するためには、X線パルスの立ち下がりの応答速度が早い高価なX線管を使用する必要がある。これに対して、本発明のX線画像検出装置21によれば、外部情報に基づいて、パルス照射対応モードの設定可否の判定を行い、設定が可能な場合には、パルス照射対応モードにより自己検出方式の同期制御を行い、設定が不可能な場合(自己検出方式の同期制御が不可能な場合)には連続照射対応モードで対応するので、高価なX線管を使用することなく、一般的なX線管を使用して動画撮影を行うことができる。そのため、X線管の交換費用といったコストの増加も無い。このような柔軟な対応が可能な本発明のX線画像検出装置21は、既存のX線発生装置と組み合わせて使用する場合に有用性が高い。
【0114】
また、パルス照射対応モードと連続照射対応モードのモード設定は、外部情報に応じて自動的に行われるため、X線画像検出装置21を通信ができないX線発生装置11と組み合わせて使用する場合でも、オペレータによる煩雑な設定作業は不要である。
【0115】
自己検出方式による同期制御が可能か否かは、照射プロファイルにおけるX線パルスの重なり状態に応じて決まるが、X線パルスの重なりの有無は、上述したように、X線管13aの種類や、管電流、管電圧、及びフレームレート等の様々な要因によって決定される。そのため、予め、X線管13aの種類と、管電流及びフレームレートとに基づいて、X線パルスの重なりの有無を判定した判定テーブルを作成し、これを用いて自己検出方式による同期制御が可能か否かを自動判定することによる本発明の効果は、特に有用性が高い。
【0116】
さらに、X線パルスの重なりが有っても、重なる部分が少なければ、自己検出方式による同期制御が可能な場合もある。このように、パルス照射において、X線画像検出装置における自己検出方式の同期制御が可能か否かは、X線管の性能、パルス周期(それに対応する動画撮影のフレームレート)、X線パルスの波尾の長さTsを決める撮影条件(管電流及び管電圧)といった様々な要因で決定される。本発明は、これらの要因が加味された判定テーブルに基づいてX線パルスの重なり状態を調べて、自己検出方式の同期制御が可能か否かを判定するので、オペレータが計算により重なり状態を調べるなどの煩雑な作業を大幅に軽減することが可能となる。
【0117】
また、照射プロファイルにおいて、X線パルスの谷間のX線強度の落ち込みが非常に少ない場合には、X線源13がX線を一定強度で連続照射する場合の照射プロファイルと等価と見なせる場合もある。その場合には、連続照射対応モードにおいて、蓄積動作の開始タイミングを決定せずに、FPD36が任意のタイミングで蓄積動作を開始してもよい。
【0118】
上記実施形態では、パルス照射対応モードの設定可否の判定に、管電流を用いたが、管電圧を用いてもよいし、管電流と管電圧の両方を用いてもよい。パルス照射対応モードの設定可否の判定に管電流と管電圧を用いれば、判定精度が向上する。
【0119】
上記実施形態では、X線管13aの種類として、2極管、3極管、テトロード管などのX線管の電極構造に着目した種類を例に、それぞれの種類毎に判定テーブルを作成した例で説明したが、X線管13aの種類としては、電極構造に着目した種類に加えて又はそれに代えて、X線管13aの構成要素であるターゲット(陽極)の材料に着目した種類を用いてもよい。
【0120】
X線管13aのターゲットの材料としては、タングステン(W)やモリブデン(Mo)などが用いられるが、ターゲットの材料に応じて、
図8や
図11に示した閾値電圧Vthの設定値が変わる場合がある。例えば、タングステンの場合は約15kVに、モリブデンの場合は約5kVというように閾値電圧Vthが変更される。このように、ターゲットの材料によって閾値電圧Vthが変わると、ほぼ同様な照射プロファイルであっても(2つのX線パルスの重なり状態が同じでも)、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりの検出ができる場合と、できない場合が生じて、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果も変わる。例えば、
図11に示す照射プロファイルにおいても、閾値電圧Vthが、2つのX線パルスの谷間におけるX線強度の最小値よりも高い場合には、X線パルスの立ち上がりと立ち下がりの検出が可能となる。
【0121】
このように、閾値電圧Vthは、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果に影響する。閾値電圧VthとX線管13aのターゲットの材料が1対1で対応している場合には、閾値電圧Vthを変更する要因となるX線管13aのターゲットの材料毎に、判定テーブルを複数個作成し、使用するX線管13aのターゲットの材料に応じて各判定テーブルを使い分けてもよい。また、X線管13aのターゲットの材料が変化すると、照射プロファイルが変化する場合もある。ターゲットの材料に応じて閾値電圧Vthが変更されない場合でも、照射プロファイルが変化すれば、2つのX線パルスの重なり状態が変化して、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果に影響することも考えられる。このように、ターゲットの材料に着目したX線管13aの種類は、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果に影響する情報であるので、利用することが好ましい。
【0122】
なお、同じX線管13aを使用する場合でも(X線管13aの種類が同じ場合でも)、閾値電圧Vthが変更される場合には、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果に影響するので、パルス照射対応モードの設定可否を判定するための外部情報として、X線管13aの種類とは別に、閾値電圧Vthを使用してもよい。この場合には、例えば、閾値電圧Vth毎に判定テーブルが複数個作成され、閾値電圧Vth毎に複数個の判定テーブルが使い分けられる。
【0123】
上記実施形態では、X線発生装置11に関する情報として、X線発生装置11の構成要素の1つであるX線管13aの種類を例に説明したが、X線発生装置11のメーカー名、型番などから、X線管13aの種類が特定できる場合には、X線管13aの種類の代わりに、X線発生装置11、X線源13、線源制御装置14のメーカー名、型番、仕様情報などによってX線管13aの種類を特定できる場合には、その情報を使用してもよい。また、例えば、X線管13aと線源制御装置14の組み合わせによってX線管13aの照射プロファイルが決まるような場合には、X線管13aと線源制御装置14の両方の種類に関する情報を使用してもよい。この場合には、判定テーブルは、X線管13aの種類と線源制御装置14の種類の組み合わせ毎に用意される。
【0124】
また、パルス照射対応モードの設定可否を判定するための外部情報としては、X線発生装置に関する情報や撮影条件に加えて、被写体の撮影部位や、体厚、年齢(成人か子供かなど)及び性別のうち少なくとも1つを含む被写体の体格情報を利用してもよい。FPD36には、被写体を透過して被写体によって減衰されたX線が照射される。被写体によるX線の減衰量は、撮影部位や体格によって変わるため、管電圧V、管電流I、動画撮影時のフレームレートなどの撮影条件が同じであっても、撮影部位や体格によってFPD36が検出するX線の照射プロファイルは変化する。上述のとおり、照射プロファイルが変化すると、パルス照射対応モードの設定可否の判定結果に影響する場合もある。そのため、判定テーブルを撮影部位や体格毎に複数作成し、撮影部位に応じて判定テーブルを使い分けてもよい。
【0125】
このように、パルス照射対応モードの設定可否の判定には、様々な要因が影響するので、上述のX線管13aの種類、撮影条件、閾値電圧Vth、被写体の撮影部位や体格といった複数種類の外部情報を総合的に考慮して判定テーブルを複数個作成し、それらを使い分けるのが好ましい。
【0126】
なお、判定テーブルを用いる代わりに、外部情報をパラメータとする関係式を予め作成し、判定部が関係式に基づいて演算により判定結果を出力するようにしてもよい。
【0127】
上記実施形態では、X線画像検出装置21内に判定部64を配置したが、X線画像検出装置21の周辺装置である撮影制御装置23、あるいはコンソール24のいずれかに判定部64を設けてもよい。また、上記実施形態では、X線画像検出装置21と、撮影制御装置23とを別体で構成しているが、撮影制御装置23の機能をX線画像検出装置21の制御部41に組み込む等して、X線画像検出装置21と撮影制御装置23とを一体化している場合には、周辺装置であるコンソール24に判定部64を設けてもよい。
【0128】
また、判定部64と判定テーブル65は、必ずしも同じ装置に設けられていなくてもよい。例えば、X線画像検出装置21、撮影制御装置23またはコンソール24のいずれかに判定部64を設け、判定部64が設けられているのとは別の装置に判定テーブル65を設けてもよい。
【0129】
また、判定テーブル65は、X線画像検出装置21、撮影制御装置23及びコンソール24に設けられていなくてもよく、例えば、撮影制御装置23やコンソール24に通信ネットワークを介して接続されたサーバ等のデータストレージデバイスに設けられていてもよい。この場合には、X線画像検出装置21、撮影制御装置23及びコンソール24のいずれかに設けられた判定部64が、通信ネットワークを経由してデータストレージデバイスにアクセスして判定テーブル65の情報を取得する。
【0130】
上記実施形態では、パルス照射対応モードの設定可否の判定に判定テーブル65を用いたが、判定テーブルを用いずに、例えば判定部64で、外部情報に基づいてX線パルスの重なり状態を計算により求めて、パルス照射対応モードの設定可否を判定してもよい。X線パルスの重なり状態は、上述した時定数τから算出したX線パルスの波尾の長さと、フレームレートから求められるX線パルス周期PPとから求めることができる。これによれば、予め判定テーブルを作成しておく手間を省くことができる。また、判定部64で計算を行うため、オペレータの作業が煩雑化することもない。
【0131】
なお、上記例では、パルス照射対応モードにおいて、X線パルスの立ち上がりを検出したタイミングで蓄積動作を開始させ、X線パルスの立ち下がりを検出したタイミングで読み出し動作を開始させているが、例えば、立ち上がりや立ち下がりを検出して、そのタイミングから所定時間経過した後、蓄積動作や読み出し動作を開始してもよい。つまり、立ち上がりや立ち下がりを検出したタイミングと蓄積動作や読み出し動作の開始タイミングが完全に一致していなくてもよく、立ち上がりや立ち下がりを検出したタイミングに基づいて蓄積動作や読み出し動作の開始タイミングが決定されていればよい。
【0132】
また、X線強度測定用の放射線検出部の形態は、短絡画素に限らず、各種の形態がある。例えば、画素を構成するフォトダイオードにはバイアス電圧が印加されるが、フォトダイオードで発生する信号電荷の量に応じてバイアス線に流れるバイアス電流も変化する。こうしたバイアス電流を検出して、X線の強度を測定してもよい。また、画素のTFTをオフした状態でも、フォトダイオードで発生する信号電荷の量に応じて、僅かであるが信号線にリーク電流が流れる。このリーク電流を検出して、X線の強度を測定してもよい。
【0133】
バイアス電流やリーク電流を検出する方法では、FPD36に配設される、バイアス電流やリーク電流が流れる配線と、配線に流れる電流を検出する電流計が放射線検出部を構成する。バイアス電流やリーク電流を検出する方法であれば、FPD36の撮像領域の構造に大きな改造を加えることなく、FPD36に対して、放射線検出部の機能を追加することができる。リーク電流を検出する方法の場合には、FPD36の画像読み出し用の回路を電流検出部として利用することができる。また、バイアス電流やリーク電流を検出する方法では、照射中に放射線検出を行っても、画像を表す信号電荷の蓄積状態は維持されるので、読み出した画像において画素の欠損(点欠陥や線欠陥)が生じないという利点がある。
【0134】
また、短絡画素を設ける代わりに、FPD36内の複数の画素37の一部を、放射線検出部を構成する検出素子として兼用できるようにしてもよい。例えば、検出素子と兼用する画素に対しては、画像読み出し用のTFTとは別に、放射線検出用のTFTと検出用の専用配線を設ける。そして、画像読み出し時には画像読み出し用のTFTをオンにして信号線から電荷を読み出し、検出素子として利用する場合には放射線検出用のTFTのゲートをオンにして検出用の専用配線から電荷を読み出すというように2つのTFTを選択的に利用する。もちろん、TFTをオフにした状態で、TFTから専用配線にリークするリーク電流を読み出してもよい。あるいは、画素37の一部を検出素子として利用する場合には、画素37の構造を、例えば、画像検出用フォトダイオードと検出素子用フォトダイオードのようにフォトダイオードを2つに分割した構造にした上で、各フォトダイオードにTFTを設けて、それぞれを選択的に利用できるようにしてもよい。
【0135】
また、画素37とは別に、放射線検出部を構成する専用の検出素子を設ける場合には、複数の画素37の間に配置してもよい。また、検出素子は撮像領域外に設けてもよい。また、放射線検出部として、イオンチャンバなどの周知の放射線検出部を用いてもよい。
【0136】
また、ガラス基板を使用してTFTマトリックス基板を形成したTFT型のFPDを例に説明したが、半導体基板を使用したCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサを使用したFPDでもよい。このうちCMOSイメージセンサを使用すると、次のようなメリットがある。CMOSイメージセンサの場合、画素に蓄積される信号電荷を読み出し用の信号線に流出させることなく、各画素に設けられたアンプを通じて電圧信号として読み出す、いわゆる非破壊読み出しが可能である。これによれば、蓄積動作中においても、撮像領域内の任意の画素を選択して、その画素から信号電荷を読み出すことによりX線の強度測定が可能である。したがって、CMOSイメージセンサを使用する場合には、上記短絡画素のように、X線の強度測定用の専用の放射線検出部を用いることなく、通常の画素のいずれかを、強度測定用の放射線検出部として兼用させることが可能となる。
【0137】
さらに、本発明に係るX線撮影装置は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0138】
X線撮影装置は、病院の撮影室に据え置かれるX線撮影システムに用いられる他、病室を巡回して撮影が可能な回診車に搭載してもよいし、事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。
【0139】
上記例では、X線画像検出装置と、撮影制御装置を別体で構成した例で説明したが、撮影制御装置の機能をX線画像検出装置の制御部に内蔵する等、X線画像検出装置と撮影制御装置を一体化してもよい。
【0140】
上記実施形態では、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテを例に説明したが、据え置き型のX線画像検出装置に本発明を適用してもよい。
【0141】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。