(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定容量でない前記第1容量又は第2容量は可変容量であって、当該可変容量の容量値は、前記固定容量の容量値と前記最善曲線又は前記最善直線によって求められる値に調整されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のループアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態におけるループアンテナの構成を示す図である。
【0014】
図1に示すループアンテナは、共鳴型のループアンテナであり、メインループ1と増幅用ループ2を備える。
【0015】
メインループ1は、磁性体又は絶縁体で形成された棒状のロッド3に巻かれたコイルである。メインループ1の巻き数は1以上であり、
図1の例では巻き数は5である。メインループ1には、抵抗R1と容量C1が直列に接続されている。メインループ1は、信号源5又は受信回路(図示せず)を接続するための端子T,Tを有する開ループである。
【0016】
増幅用ループ2は、メインループ1から離れた位置でロッド3に巻かれたコイルである。増幅用ループ2の巻き数は1以上であり、
図1の例では巻き数は5である。増幅用ループ2には、抵抗R2と容量C2が直列に接続されている。増幅用ループ2は、端子を備えない閉ループである。
【0017】
メインループ1と増幅用ループ2の幾何学的形状は同一であり、したがって、双方の自己インダクタンスLは等しい。また、メインループ1と増幅用ループ2は、ロッド3上の同じ位置に巻かれてもよい。
【0018】
信号源5からメインループ1に交流の電流I1が供給されると、メインループ1と増幅用ループ2の間の相互インダクタンスにより、増幅用ループ2に交流の電流I2が流れる。抵抗R2の抵抗値を抵抗R1の抵抗値より小さくすると、電流I2の大きさは電流I1の大きさより大きくなる。よって、ループアンテナにより発生する磁界のエリアを拡大できる。
【0019】
なお、
図1は、メインループ1の端子T,Tに信号源5を接続し、ループアンテナを送信アンテナとして用いる構成を示しているが、信号源5の代わりに受信回路を端子T,Tに接続し、ループアンテナを受信アンテナとして用いてもよい。この場合、外部から受信する磁界により、増幅用ループ2に大きな電流I2が蓄積される。相互インダクタンスがあるために、メインループ1を流れる電流I1も、増幅用ループ2が存在しない場合に比べて大きくなる。よって、送信側からみた場合、磁界のエリアが拡大したことになる。
【0020】
次に、電流I2を最大化するための容量C1,C2の最適値について説明する。
【0021】
電流I2の大きさは、信号源5が発生する信号の周波数f、抵抗R1、抵抗R2、容量C1、容量C2、及びループ形状など複数の要素に依存する。そのため、抵抗R1、抵抗R2、容量C1、容量C2の各値を調整し、電流I2を最大化するのが好ましい。
【0022】
抵抗R2の値が抵抗R1の値より小さい場合、容量C1,C2の値を、次式(1),(2)で求められる最適値C1
opt,C2
optに設定すると電流I2を最大化できる。
【0025】
ただし、ωは信号源5が発生する信号の角周波数である。
【0026】
電流I2の大きさは、
図1のループアンテナの等価回路を解析もしくはシミュレーションすることで容易に求めることができる。
図2に、
図1のループアンテナの等価回路を示す。
【0027】
図3に、
図2の等価回路を解析して得られた容量C1,C2の値と電流I2の大きさとの関係を示す。
図3は、信号源5から発生する信号の周波数fを10MHz、電圧Vinを1V、メインループ1と増幅用ループ2の自己インダクタンスLを1μH、抵抗R1を100Ω、抵抗R2を1Ωとして、等価回路を解析した結果を描画したものである。
図3では、容量C1,C2の値をそれぞれ横軸と縦軸にとり、電流I2の大きさが等しい点を結んだ等高線(電流I2の等高線)で容量C1,C2の値と電流I2の大きさとの関係を示した。
【0028】
上記の条件を式(1),(2)に用いると、次式(3)に示す容量C1,C2の最適値C1
opt,C2
optを得られる。
【0030】
図3を見ると、容量C1,C2の値が式(3)を満たす時に、確かに電流I2が最大(50mA)になっていることがわかる。つまり、電流I2を最大化するためには、容量C1,C2の双方に可変容量を用い、微調整を行って容量C1,C2の容量値を式(3)の値に完全に一致させる必要がある。
【0031】
しかしながら、容量C1,C2の少なくともいずれかに固定容量を使用した場合、容量C1,C2を最適値C1
opt,C2
optに設定できないことがある。本実施形態では、容量C1,C2の少なくともいずれかに固定容量を使用した場合に電流I2を極大化できる最善の値を求め、最善の値に基づいて容量C1,C2の容量値を決定する。
【0032】
まず、容量C1を固定容量、容量C2を可変容量としたケースを考える。つまり、容量C1の値は微調整できないが、容量C2の値は微調整できる。
【0033】
図2の等価回路を解析することにより、電流I2を容量C1,C2の関数として表すことができる。そこで、次式(4)の方程式を考える。
【0035】
式(4)を具体的に計算し、容量C2について解くと次式(5)を得る。
【0037】
ただし、関数f(C;ω,L,R)を次式(6)と定義した。
【0039】
式(5)で表される曲線を最善C2曲線と呼ぶことにする。
図4は、
図3に示す等高線に最善C2曲線をプロットした図である。最善C2曲線は、容量値を調整できない容量C1の値に応じた、最善の容量C2の値を表している。つまり、容量C1が固定容量であって、容量C1の値を式(3)に示した最適値に調整できなくても、容量C2の値を式(5)によって求められる値に微調整することにより、電流I2の大きさを極大化できる。
【0040】
続いて、容量C1を可変容量、容量C2を固定容量としたケースを考える。つまり、前述のケースとは逆に、容量C1の値は微調整できるが、容量C2の値は微調整できない。
【0041】
本ケースでは、次式(7)の方程式を考える。
【0043】
式(7)を具体的に計算し、容量C1について解くと次式(8)を得る。
【0045】
関数f(C;ω,L,R)は式(6)に定義されている。
【0046】
式(8)で表される曲線を最善C1曲線と呼ぶことにする。
図5は、
図3に示す等高線に最善C1曲線をプロットした図である。最善C1曲線は、容量値を調整できない容量C2の値に応じた、最善の容量C1の値を表している。容量C2が固定容量であっても、容量C1の値を式(8)によって求められる値に微調整することにより、電流I2の大きさを極大化できる。
【0047】
図4,5を見ると、最善C2曲線及び最善C1曲線のいずれの曲線も、電流I2の大きさを最大化する容量C1,C2の最適点(C1
opt,C2
opt)を通り、電流I2の等高線の尾根に沿った曲線である。
【0048】
また、
図5を見ると、最善C1曲線は、最適点(C1
opt,C2
opt)を通り、傾き−1の直線で近似できることがわかる。このような直線は次式(9)で表される。
【0050】
式(9)で表される直線を最善C1直線と呼ぶことにする。
図6は、
図3に示す等高線に最善C1直線をプロットした図である。
図6を見ると、最善C1直線は、
図5に示した最善C1曲線をよく近似していることがわかる。したがって、最善C1曲線は、最善C1直線で代用できる。容量C2が固定容量であっても、容量C1の値を式(9)によって求められる値に微調整することにより、電流I2の大きさを極大化できる。最善C1直線を用いると、設定すべき容量C1の値を容易に求めることができる。最善C1直線は、容量C1の値を自動制御する場合に有用である。
【0051】
続いて、容量C1,C2のいずれも固定容量としたケースを考える。
【0052】
低コスト化を図る目的で、可変容量を一切利用しないことが考えられる。固定容量は、E3系列からE192系列まで、メーカ間で統一されたラインナップから選択可能である。しかしながら、離散的な値の固定容量から容量C1,C2を選択しなければならず、容量C1,C2の最適値に完全に一致する固定容量を選択することは不可能に近い。また、先に説明した最善曲線上又は最善直線上に容量C1,C2の値が位置するように、容量C1,C2に利用する固定容量を得ることも非常に難しい。
【0053】
そこで、本実施形態では、容量C1,C2の両方に固定容量を利用する場合、候補となる容量の組み合わせ(C1
0,C2
0)のうち、最善曲線又は最善直線からの距離d(C1
0,C2
0)が最短となる組み合わせを採用する。最善曲線及び最善直線を表す関数は、式(5),(6),(8),(9)で与えられているので、距離d(C1
0,C2
0)を求めることは可能である。特に、式(9)に示した最善C1直線との距離は、次式(10)で容易に求めることができる。
【0055】
次に、本実施の形態における別のループアンテナについて説明する。
【0056】
図7は、本実施の形態における別のループアンテナの構成を示す図である。
【0057】
図7に示すループアンテナは、共鳴型のループアンテナであり、メインループ1と増幅用ループ2を備える。
【0058】
図7に示すループアンテナは、
図1に示すループアンテナとは、平面基板(図示せず)上にメインループ1と増幅用ループを形成した点で相違する。
【0059】
メインループ1は、絶縁体で形成された平面基板上に配置される。メインループ1には、抵抗R1と容量C1が直列に接続されている。メインループ1は、信号源5又は受信回路(図示せず)を接続するための端子T,Tを有する開ループである。
【0060】
増幅用ループ2は、同一平面基板上に、メインループ1に極めて近接して配置される。増幅用ループ2には、抵抗R2と容量C2が直列に接続されている。増幅用ループ2は、端子を備えない閉ループである。
【0061】
メインループ1と増幅用ループ2の幾何学的形状は同一であり、したがって、双方の自己インダクタンスLは等しい。
【0062】
信号源5からメインループ1に交流の電流I1が供給されると、メインループ1と増幅用ループ2の間の相互インダクタンスにより、増幅用ループ2に交流の電流I2が流れる。抵抗R2の抵抗値を抵抗R1の抵抗値より小さくすると、電流I2の大きさは電流I1の大きさより大きくなる。
【0063】
図7のループアンテナの容量C1,C2の少なくともいずれかに固定容量を用いた場合であっても、
図1のループアンテナと同様に最善な容量値に設定することで、電流I2の大きさを極大化できる。
【0064】
なお、
図7では、メインループ1の内側に増幅用ループ2を配置したが、メインループ1の外側に増幅用ループ2を配置してもよいし、平面基板を挟んだ両面にメインループ1と増幅用ループ2を配置してもよい。メインループ1と増幅用ループ2の巻き数を2以上としてもよい。巻き数を2以上とする場合、メインループ1と増幅用ループ2の巻き数を等しくする。
【0065】
図7のループアンテナにおいても、受信回路を端子T,Tに接続して受信アンテナとして用いてもよい。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によれば、メインループ1に接続された容量C1と増幅用ループ2に接続された容量C2の少なくともいずれかを最適値に設定できない場合であっても、容量C1,C2の値と電流I2の大きさとの関係を示す図において、容量C1,C2の最適点を通り、電流I2の大きさが等しい点を結んだ等高線の尾根に沿った最善C2曲線、最善C1曲線、又は最善C1直線に基づき、容量C1,C2を設定することにより、増幅用ループに流れる電流I2の電流値を十分に大きくできる。それゆえに、容量C1,C2の少なくともいずれかに安価な固定容量を用いても大きな磁界増幅効果を得ることができる。
【解決手段】メインループ1に接続された容量C1と増幅用ループ2に接続された容量C2の少なくともいずれかを最適値に設定できない場合であっても、容量C1,C2の値と電流I2の大きさとの関係を示す図において、容量C1,C2の最適点(C1
)を通り、電流I2の大きさが等しい点を結んだ等高線の尾根に沿った最善C2曲線、最善C1曲線、又は最善C1直線に基づき、容量C1,C2を設定することにより、増幅用ループに流れる電流I2の電流値を十分に大きくできる。