特許第6243602号(P6243602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243602
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】磁場方向計測装置及び回転角度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20171127BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01D5/244 F
   G01D5/14 H
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-4991(P2013-4991)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2013-224921(P2013-224921A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-65452(P2012-65452)
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳彦
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−180942(JP,A)
【文献】 特開2001−153683(JP,A)
【文献】 特開2006−98140(JP,A)
【文献】 特開2005−98823(JP,A)
【文献】 特開2010−156686(JP,A)
【文献】 特開2012−52960(JP,A)
【文献】 特開2004−317446(JP,A)
【文献】 特開2007−40850(JP,A)
【文献】 特開平8−102563(JP,A)
【文献】 特開平9−45974(JP,A)
【文献】 特表2009−524053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0206424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01R 33/00−33/18
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形のシリコン基板と、前記シリコン基板面上の所定の点を円中心点とする略円周上に配置され、第1の方向の磁気成分を検出する第1のホール素子、及び、前記第1の方向と異なる方向の第2の方向の磁気成分を検出する第2のホール素子とをそれぞれ少なくとも1つずつ備え、
前記第1のホール素子及び前記第2のホール素子は、前記シリコン基板面に対して垂直な第3の方向の磁気成分に対して感磁面を有し、
前記第1の方向の磁気成分及び前記第2の方向の磁気成分を、前記第3の方向の磁気成分に変換する磁気収束板をさらに備え、
前記第1のホール素子及び前記第2のホール素子は、前記シリコン基板の長手方向又は前記シリコン基板の短手方向に平行な前記シリコン基板面上の直線を対称軸とした線対称の位置に配置されており、
前記円中心点は、前記シリコン基板の長辺の中点を通り該シリコン基板の短辺に平行な線分と該短辺の中点を通り該長辺に平行な線分との交点と一致しないことを特徴とする磁場方向計測装置。
【請求項2】
前記第1のホール素子及び前記第2のホール素子は、前記円中心点を中心に相互に90度回転した位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁場方向計測装置。
【請求項3】
前記円中心点に対して前記第1のホール素子と点対称の位置に配置される第3のホール素子と、前記円中心点に対して前記第2のホール素子と点対称の位置に配置される第4のホール素子と、を備えることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の磁場方向計測装置。
【請求項4】
演算処理によって磁場の方向を前記シリコン基板の長手方向又は前記シリコン基板の短手方向に平行な方向を基準とした出力に変換することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の磁場方向計測装置。
【請求項5】
前記シリコン基板の短手方向の長さに対する前記シリコン基板の長手方向の長さの割合が1.3以上であることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の磁場方向計測装置。
【請求項6】
略矩形のシリコン基板と、前記シリコン基板の面に垂直な回転軸を有し磁極を発生する磁極回転体と、前記シリコン基板の面上で、かつ、前記シリコン基板の面と前記回転軸の交点位置を円中心点とする略円周上に配置され、第1の方向の磁気成分を検出する第1のホール素子、及び、前記第1の方向と異なる方向の第2の方向の磁気成分を検出する第2のホール素子とをそれぞれ少なくとも1つずつ備え、
前記第1のホール素子及び前記第2のホール素子は、前記シリコン基板の面に対して垂直な第3の方向の磁気成分に対して感磁面を有し、
前記第1の方向の磁気成分及び前記第2の方向の磁気成分を、前記第3の方向の磁気成分に変換する磁気収束板をさらに備え、
前記第1のホール素子及び前記第2のホール素子は、前記シリコン基板の長手方向又は前記シリコン基板の短手方向に平行な前記シリコン基板面上の直線を対称軸とした線対称の位置に配置されており、
前記円中心点は、前記シリコン基板の長辺の中点を通り該シリコン基板の短辺に平行な線分と該短辺の中点を通り該長辺に平行な線分との交点と一致しないことを特徴とする回転角度計測装置。
【請求項7】
演算処理によって前記磁極回転体の回転角度を前記シリコン基板の長手方向又は前記シリコン基板の短手方向に平行な方向を基準とした出力に変換することを特徴とする請求項に記載の回転角度計測装置。
【請求項8】
前記シリコン基板の短手方向の長さに対する前記シリコン基板の長手方向の長さの割合が1.3以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の回転角度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気成分を検出する複数の磁電変換素子を備え、磁場の方向を計測する磁場
方向計測装置と回転角度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場の方向を計測する磁場方向計測装置は、日常生活の至るところで使用されている。
例えば、乗用車の走行中に車両の向きを変えるための装置として、ステアリング(操舵装
置)が車両に備えられている。このときのステアリングやタイヤの回転を制御するために
、回転角度を計測する回転角度計測装置が用いられている。回転角度計測装置は、物体が
回転する角度を計測するものであり、少なくとも2つの磁電変換素子を備えている。
【0003】
また、地磁気を検出し、方位角を計測する方位角計測装置が、カーナビゲーションや携
帯電話に搭載されている。方位角計測装置は、地磁気の方向を検出するものであり、少な
くとも2つの磁電変換素子を備えている。
【0004】
この回転角度計測装置及び方位角計測装置は共に一種の磁場方向計測装置であり、回転
角度計測装置は検出した磁場の方向を回転角度に、方位角計測装置は検出した磁場の方向
を方位角に変換をして出力をする。
【0005】
従来の磁場の方向を計測する方法として、磁電変換素子であるホール素子と磁気収束板を用いてセンサチップの表面に対して水平な磁場を検出する方法がある。
【0006】
図1は、従来の回転角度計測用チップ51を説明するための図である。矩形の回転角度
計測用チップ51の面の中央部に、円形の例えば軟磁性体薄膜の磁気収束板7を設けてい
る。回転角度計測用チップ51の面上には、回転角度計測用チップ51と磁気収束板7の
回転軸との交点である円中心点9を設けている。円中心点9を中心とし、半径が磁気収束
板7の半径と同様の長さである円の円周上には、X軸用ホール素子53a、53b及びY
軸用ホール素子55a、55bが、それぞれ円中心点9に対して点対称の位置に設置され
ている。
【0007】
すなわち、X軸用ホール素子53同士及びY軸用ホール素子55同士を結ぶ2つの線分
は、それぞれ回転角度計測用チップ51の短手方向及び長手方向と平行であり、かつ、こ
れら2つの線分は円中心点9で交わる。さらに、円中心点9からX軸用ホール素子53a
までの距離と円中心点9からX軸用ホール素子53bまでの距離は等しく、円中心点9か
らY軸用ホール素子55aまでの距離と円中心点9からY軸用ホール素子55bまでの距
離は等しい。ここで、X軸用ホール素子53bから53aの向き及びY軸用ホール素子5
5bから55aの向きを、それぞれX軸の正方向及びY軸の正方向とする。
【0008】
図1において、回転角度計測用チップ51に磁場57が印加された際、各ホール素子5
3a、53b、55a、55bからの出力差動電圧V(X+)、V(X−)、V(Y+)
、V(Y−)は、次式(1)に従う正弦波電圧及び余弦波電圧である。
V(X+)= A1×cosθ
V(X−)=−A2×cosθ
V(Y+)= A3×sinθ
V(Y−)=−A4×sinθ ・・・(1)
【0009】
ここで、A1、A2、A3、A4は比例定数、θは図1におけるX軸方向と磁場57の
方向との反時計回りのなす角度(磁場印加角度)である。これらの出力電圧を次式(2)
のように差分をとることにより、X軸方向、Y軸方向の出力電圧Vx、Vyを導出する。
Vx=V(X+)−V(X−)=(A1+A2)×cosθ
Vy=V(Y+)−V(Y−)=(A3+A4)×sinθ ・・・(2)
これら出力電圧Vx、Vyを用いて回転角度を算出する。
【0010】
具体的には、各ホール素子53a、53b、55a、55bの出力特性が揃っていると
仮定し、つまり、A1=A2=A3=A4であると仮定し、下記式(3)から回転角度を
算出できる。
Vy/Vx={(A3+A4)×sinθ }/{(A1+A2)×cosθ }
={(A3+A4)/(A1+A2)}×tanθ
ここで、A1=A2=A3=A4とすると、
θ=arctan(Vy/Vx) ・・・(3)
【0011】
ところで、従来の計測方法では、一つのホール素子の出力信号ごとに既定のデジタル処
理を施していき、最後に角度情報を得るための演算処理を行なうこと等が必要になるので
、回路規模の拡大並びに生産コストの上昇は避けられないし、回路構成の簡略化及び装置
全体の小型化がしにくいという問題があった。この問題を解決して、簡易な回路構成にも
拘わらず、正確な角度計測を可能とする技術が、特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第07/116823号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、パッケージ材料とチップの熱膨張率が異なるため、チップの長手方向と短手方
向の応力は異なる。したがって、従来のチップの長手方向と短手方向のうち、一方をX軸
方向、他方をY軸方向として、X軸上及びY軸上に設置するホール素子の配置では、X軸
用ホール素子及びY軸用ホール素子に印加される応力が異なる。この応力の影響により、
A1=A2=A3=A4とはならず、A1、A2、A3、A4の値にばらつきが生じる。
よって、A1=A2=A3=A4であると仮定して算出した回転角度θには、実際には誤
差が生じており、回転角度の検出精度が低くなってしまうという問題があった。
【0014】
本発明は、各磁電変換素子に印可される応力をなるべく均一にすることで、精度高く磁
場の方向を検出できる磁場方向計測装置及び回転角度計測装置を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために、本発明の磁場方向計測装置は、略矩形の基板と、基
板面上の所定の点を円中心点とする略円周上に配置され、第1の方向の磁気成分を検出す
る第1の磁電変換素子、及び、第1の方向と異なる方向の第2の方向の磁気成分を検出す
る第2の磁電変換素子とをそれぞれ少なくとも1つずつ備え、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子の出力信号強度に基づいて磁場の方向を計測する磁場方向計測装置であって、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子は、基板の長手方向又は基板の短手方向に平行な基板面上の直線を対称軸とした線対称の位置に配置されていることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子に印加される応力をほぼ
等しくすることができるので、第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子の出力信号強度
の係数を等しくすることが可能となる。これにより、精度高く磁場方向を計測することが
できる。
【0017】
更に本発明の磁場方向計測装置は、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子が、基
板の長手方向又は基板の短手方向に平行且つ基板面の中心を通る直線を対称軸とした線対
称の位置に配置されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、線対称の位置にある第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子に印
加される応力をより均等にすることができるので、更に精度高く磁場方向を計測すること
ができる。
【0019】
また、別の形態として、本発明の回転角度計測装置は、略矩形の基板と、基板の面に垂
直な回転軸を有し磁極を発生する磁極回転体と、基板の面上で、かつ、基板の面と回転軸
の交点位置を円中心点とする略円周上に配置され、第1の方向の磁気成分を検出する第1
の磁電変換素子、及び、第1の方向と異なる方向の第2の方向の磁気成分を検出する第2
の磁電変換素子とをそれぞれ少なくとも1つずつ備え、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子の出力信号強度に基づいて磁極回転体の回転角度を算出する回転角度計測装置であって、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子は、基板の長手方向又は基板の短手方向に平行な基板面上の直線を対称軸とした線対称の位置に配置されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子に印加される応力をほぼ
等しくすることができるので、第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子の出力信号強度
の係数を等しくすることが可能となり、これにより、精度高く回転角度を計測することが
できる。
【0021】
更に、本発明の回転角度計測装置は、第1の磁電変換素子及び第2の磁電変換素子が、
基板の長手方向又は基板の短手方向に平行且つ基板面の中心を通る直線を対称軸とした線
対称の位置に配置されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、線対称の位置にある第1の磁電変換素子と第2の磁電変換素子に印
加される応力をより均等にすることができるので、更に精度高く回転角度を計測すること
ができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、各磁電変換素子に印加される応力をほぼ等しく
することができるため、精度高く磁場の方向を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図2】本実施形態の回転角度計測用チップを用いた回転角度計測装置を説明するための底面図である。
図3】本実施形態の回転角度計測用チップを用いた回転角度計測装置を説明するための断面図である。
図4】実施形態1の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図5】本実施形態の回転角度計測用チップを用いた回転角度計測装置を説明するための側面図である。
図6】ホール素子の出力信号の正常時と誤差発生時との比較を表す図である。
図7】ホール素子の出力信号の正常時と誤差発生時との比較を表す図である。
図8】回転角度計測用チップの形状と応力計測位置を示す図である。
図9】計測位置と応力との関係を表す図である。
図10】実施形態2の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図11】実施形態3の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図12】実施形態3の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図13】実施形態4の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図14】X‘軸及びY’軸のなす角をθ度とした場合を表す図である。
図15】実施形態5の回転角度計測用チップを説明するための図である。
図16】実施形態5と比較した従来のホール素子の配置を表す図である。
図17】従来の回転角度計測用チップ上の磁気収束板とホール素子の配置を表す図である。
図18】従来の回転角度計測用チップを用いた回転角度計測装置の断面図である。
図19】従来の回転角度計測用チップの長手方向と短手方向との応力の比較を説明するための図である。
図20】従来の回転角度計測用チップの長手方向と短手方向との応力の比較を説明するための図である。
図21】従来の回転角度計測用チップの長手方向と短手方向との応力の比較を説明するための図である。
図22】従来の回転角度計測用チップの中心から等距離にあるX軸上の応力とY軸上の応力との応力比を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
図2及び図3は、本発明の回転角度計測用チップ1を用いた回転角度計測装置を説明す
るための底面図及び断面図である。図2及び図3において、矩形の回転角度計測用チップ
1を設置する矩形のチップ実装基板3は、その長手方向の両側面に複数の端子5が接続さ
れている。基板3の面上の中央部には、長手方向が基板3の長手方向と垂直方向である回転角度計測用チップ1が設置されている。回転角度計測用チップ1の面上の中央部には、円板状の磁気収束板7が設置されている。さらに、チップ実装基板3全体を樹脂モールド8で覆っている。
【0027】
図4は、本発明の実施形態1の回転角度計測用チップ1を説明するための図である。回
転角度計測用チップ1の面上に、回転角度計測用チップ1と磁極回転体の回転軸との交点
である円中心点9を設けている。円中心点9を中心とし、半径が磁気収束板の半径と同様
の長さである円の円周上には、X軸用ホール素子11a及び11b、Y軸用ホール素子1
3a及び13bが、それぞれ円中心点9に対して点対称の位置に設置されている。すなわ
ち、X軸用ホール素子11同士及びY軸用ホール素子13同士を結ぶ2つの線分12a、
12bは、円中心点9で交わる。さらに、円中心点9からX軸用ホール素子11aまでの
距離と円中心点9からX軸用ホール素子11bまでの距離は等しく、円中心点9からY軸
用ホール素子13aまでの距離と円中心点9からY軸用ホール素子13bまでの距離は等
しい。
【0028】
加えて、X軸用ホール素子11a及びY軸用ホール素子13b、X軸用ホール素子11
b及びY軸用ホール素子13aは、それぞれ円中心点9を通る回転角度計測用チップ1の
長手方向に平行な対称軸15に対して線対称の位置に配置されている。すなわち、X軸用
ホール素子11b及びY軸用ホール素子13aを結ぶ線分14aと、X軸用ホール素子1
1a及びY軸用ホール素子13bを結ぶ線分14bは、それぞれ対称軸15と直交する。
さらに、線分14aと対称軸15との交点を交点16aとし、線分14bと対称軸15と
の交点を交点16bとする。このとき、交点16aからX軸用ホール素子11bまでの距
離と交点16aからY軸用ホール素子13aまでの距離は等しい。また、交点16bから
X軸用ホール素子11aまでの距離と交点16bからY軸用ホール素子13bまでの距離
は等しい。ここで、X軸用ホール素子11bから11aの向き及びY軸用ホール素子13
bから13aの向きを、それぞれX軸の正方向及びY軸の正方向とする。
【0029】
図4を用いて回転角度の検出方法を説明する。図4のように磁場17が印加された際、
各ホール素子11a、11b、13a、13bからの出力差動電圧V(X+)、V(X−
)、V(Y+)、V(Y−)は、次式(4)のような正弦波電圧及び余弦波電圧である。
V(X+)= A1×cosθ
V(X−)=−A2×cosθ
V(Y+)= A3×sinθ
V(Y−)=−A4×sinθ ・・・(4)
【0030】
ここで、A1、A2、A3、A4は比例定数、θは図1におけるX軸方向と磁場17の
方向との反時計回りのなす角度(磁場印加角度)である。
【0031】
このとき、ホール素子11b、13aが対称軸15に対し線対称の位置にあり、印可さ
れる応力が略同じとなるため、A2=A3となる。同様に、ホール素子11a、13bが
対称軸15に対し線対称の位置にあり、印可される応力が略同じとなるため、A1=A4
となる。以上より、式(4)は下記式(4)´のように近似できる。
V(X+)= A1×cosθ
V(X−)=−A2×cosθ
V(Y+)= A2×sinθ
V(Y−)=−A1×sinθ ・・・(4)´
【0032】
これらの出力電圧を次式(5)のように差分をとることにより、X軸方向、Y軸方向の
出力電圧Vx、Vyを導出する。
Vx=V1(X+)−V2(X−)=(A1+A2)×cosθ
Vy=V1(Y+)−V2(Y−)=(A1+A2)×sinθ ・・・(5)
【0033】
ここで作り出される出力電圧Vx、Vyを用いて相対角度を算出する。
【0034】
信号処理としては、2つの磁電変換素子が回転軸を中心として直交する2軸で磁場を検
知し、これらの磁電変換素子から出力される2種類の位相の異なる正弦波信号が正弦と余
弦の関係である場合、次式(6)のように除算し、アークタンジェントをとることにより
回転角度を算出できる。
tanθ=Vy/Vx
∴ θ=arctan(Vy/Vx) ・・・(6)
【0035】
以上のことから、本実施形態1のように、ホール素子を配置すれば、各ホール素子に印
可される応力の影響を緩和することができ、結果として、X軸方向とY軸方向の出力電圧
の係数が等しくなるため、角度誤差を低減することができる。これにより、角度検出の誤
差を低減し、精度高く回転角度を検出できる。
【0036】
さらに、本実施形態1において、X軸用ホール素子11a及びY軸用ホール素子13a
、X軸用ホール素子11b及びY軸用ホール素子13bは、それぞれ円中心点9を通る回
転角度計測用チップ1の短手方向に平行な対称軸19に対して線対称の位置に配置するこ
とができる。すなわち、X軸用ホール素子同士を結ぶ線分とY軸用ホール素子同士を結ぶ
線分が、円中心点9で直角に交わるようにすることができる。これにより、X軸方向とY
軸方向の出力電圧を等しくすることができるため、より精度高く回転角度を検出すること
ができる。
【0037】
なお、X軸用ホール素子11b及びY軸用ホール素子13aのみ、又はX軸用ホール素
子11a及びY軸用ホール素子13bのみを用いることもできる。ただし、X軸用ホール
素子及びY軸用ホール素子をそれぞれ複数用いることにより、オフセットの影響を低減す
ることができる。また、線対称の対称軸15、19は、回転角度計測用チップの中心部を
通る場合に限らず、中心部からずれた位置を線対称の対称軸としてもよい。
【0038】
ただし、チップに発生する応力のうち主なものは、チップの長手方向に平行でチップの
中心部を通る直線に線対称に発生し、更に、チップの短手方向に平行でチップの中心部を
通る直線に線対称に発生するため、X軸用ホール素子及びY軸用ホール素子の応力をより
均一にするために線対称の対称軸15、19は、回転角度計測用チップの中心部を通る直
線であることが好ましい。
【0039】
図5は、本実施形態1の回転角度計測用チップ1を用いて回転角度を検出する際の、X
軸方向に水平な磁場17が印加された際の磁力線を表わしている。水平方向の磁場17を
、磁気収束板7がホール素子11a、11bで感じることのできるホール素子感磁面に垂
直な磁場17に変換している。
【0040】
図6及び図7は、ホール素子の出力信号の正常時と誤差発生時との比較を表す図である
図6において、X軸方向の出力信号強度21とY軸方向の出力信号強度29が等しいときは、図7の正常時である円形の波形25となる。しかし、図6において、X軸方向の出力信号強度27とY軸方向の出力信号強度23とに角度誤差が生じたときは、図7の誤差発生時である楕円形の波形31となる。上記説明のように、本実施形態1では、この角度誤差を低減し、精度高く回転角度を検出できる。
【0041】
図8は、回転角度計測用チップ1の形状と応力計測位置を示す図であり、回転角度計測
用チップ1の長手方向をX´軸方向とし、短手方向をY´軸方向としている。磁気収束板
7の樹脂モールド8のようなパッケージ樹脂の厚み、パッケージ樹脂とチップの熱膨張率
の違い、基板の切り出し加工等により、回転角度計測用チップ1の中心と端側とには、面
上に加わる応力が異なることが考えられる。更に、上記理由により、中心からX´軸方向
に長さLだけ離れた位置の応力と、中心からY´軸方向に同じ長さLだけ離れた位置の応
力も大きく異なっており、中心から等距離の位置であってもそのX´軸方向の座標値とY
´軸方向の座標値によって応力は大きく異なる。
【0042】
この応力の差異は回転角度計測用チップ1の形状が正方形であっても生じるが、特に、
回転角度計測用チップ1の形状が一方の辺が他方の辺よりも長い長方形であると、その傾
向が顕著となり得る。そこで、回転角度計測用チップ1の長手方向をX´軸方向とし、短
手方向をY´軸方向として、それぞれの中心からの距離と応力との関係を計測している。
【0043】
図9は、上記計測位置と応力との関係を表す図である。黒丸33がX´軸方向を示し、
白丸35がY´軸方向を示す。図9から、X´軸方向は、中心に近いほど応力が高く、中
心から離れるほど応力が低くなるが、中心からの距離が200μm辺りから応力はほぼ一
定となっている。Y´軸方向も同様に、中心に近いほど応力が高く、中心から離れるほど
応力がおおむね低くなっているが、応力が一定となりつつあるのは、中心からの距離が3
00μm辺りとなっている。
【0044】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2の回転角度計測用チップ41を説明するための図である
。実施形態2の回転角度計測用チップ41が実施形態1の回転角度計測用チップ1と相違
する点は、ホール素子がX軸用ホール素子43a〜d及びY軸用ホール素子45a〜dと
、それぞれ4個ずつ設置されている点である。本実施形態2のホール素子は、X軸用ホー
ル素子43及びY軸用ホール素子45ごとに2個ずつを1組とし、実施形態1のホール素
子11a、11b、13a、13bが設置されている位置にそれぞれ1組のホール素子(
43a、43b)、(43c、43d)、(45a、45b)、(45c、45d)を設
置している。
【0045】
すなわち、X軸用ホール素子43c及びY軸用ホール素子45aの位置は、回転角度計測用チップ41の長手方向に平行で円中心点9を通る対称軸46からの距離が等しく、これら2つのホール素子43c及び45aを結ぶ線分44aは、対称軸46と直行する。上記対称軸46に対し線対称の位置にあるX軸用ホール素子43c及びY軸用ホール素子45dと同様に、X軸用及びY軸用のホール素子の組み合わせであるホール素子43d及び45b、43a及び45c、43b及び45d、のそれぞれの位置は、対称軸46からの距離が等しい。加えて、それぞれ2つのホール素子を結ぶ線分44b、44c、44dは、対称軸46と直交するため、対称軸46に対し線対称の位置にある。
【0046】
さらに、X軸用ホール素子43b及び43cの位置は円中心点9からの距離が等しく、
これら2つのホール素子43b及び43cを結ぶ線分は円中心点9を通る。上記円中心点
9に対し点対称の位置にあるX軸用ホール素子43b及び43cと同様に、X軸用ホール
素子43a及び43d、Y軸用ホール素子45a及び45d、Y軸用ホール素子45b及
び45c、のそれぞれは、円中心点9に対し点対称の位置にある。これにより、出力信号
をより多く検出できるため、実施形態1の回転角度計測用チップ1に比べて、回転角度の
検出精度を高めることができる。
【0047】
図10を用いて回転角度の検出方法を説明する。図10のように磁場47が印加された
際、X軸用ホール素子(43a、43b)、(43c、43d)からの出力差動電圧をそ
れぞれV(X1+)、V(X2+)、V(X1−)、V(X2−)とする。Y軸用ホール
素子(45a、45b)、(45c、45d)からの出力差動電圧をそれぞれV(Y1+)、V(Y2+)、V(Y1−)、V(Y2−)とする。これらの出力差動電圧は、次式(7)のような正弦波電圧及び余弦波電圧である。ここで、X軸用ホール素子43及びY軸用ホール素子45は、それぞれX軸及びY軸から角度α離れているものとする。
V(X1+)+V(X2+)= A1×cos(θ−α)+A1×cos(θ+α)
V(X1−)+V(X2−)=−A2×cos(θ+α)−A2×cos(θ−α)

V(Y1+)+V(Y2+)= A3×sin(θ−α)+A3×sin(θ+α)
V(Y1−)+V(Y2−)=−A4×sin(θ+α)−A4×sin(θ−α)
・・・(7)
【0048】
ここで、A1、A2、A3、A4は比例定数であり、θは図10におけるX軸方向と磁
場47の方向との反時計回りのなす角度(磁場印加角度)である。
【0049】
このとき、ホール素子(43c、43d)及び(45a、45b)が対称軸46に対し
線対称の位置にあり、印可される応力が略同じとなるため、A2=A3となる。同様に、
ホール素子(45c、45d)及び(43a、43b)が対称軸46に対し線対称の位置
にあり、印可される応力が略同じとなるため、A1=A4となる。以上より、式(7)は
下記式(7)´のように近似できる。
V(X1+)+V(X2+)= A1×cos(θ−α)+A1×cos(θ+α)
V(X1−)+V(X2−)=−A2×cos(θ+α)−A2×cos(θ−α)

V(Y1+)+V(Y2+)= A2×sin(θ−α)+A2×sin(θ+α)
V(Y1−)+V(Y2−)=−A1×sin(θ+α)−A1×sin(θ−α)
・・・(7)´
【0050】
これらの出力電圧を次式(8)のように差分をとることにより、X軸方向、Y軸方向の
出力電圧Vx、Vyを導出する。
Vx=(V(X1+)+V(X2+))−(V(X1−)+V(X2−))
=2×A1×cosθcosα+2×A2×cosθcosα=2(A1+A2)cosθcosα
Vy=(V(Y1+)+V(Y2+))−(V(Y1−)+V(Y2−))
=2×A2×sinθcosα+2×A1×sinθcosα=2(A1+A2)sinθcosα
・・・(8)
Vx=2(A1+A2)cosθcosα
Vy=2(A1+A2)sinθcosα ・・・(9)
これより、求める回転角度θは、
tanθ=Vy/Vx
∴ θ=arctan(Vy/Vx) ・・・(10)
【0051】
本実施形態2のように、ホール素子を配置すれば、ホール素子が2組以上の場合であっ
ても、各ホール素子に印可される応力の影響を緩和することができ、X軸方向とY軸方向
の出力電圧の係数が等しくなるため、角度誤差を低減することができる。これにより、X
軸用とY軸用のホール素子がそれぞれ複数配置されている場合であっても、精度高く回転
角度を検出することができる。
【0052】
なお、円中心点9を通る回転角度計測用チップ41の短手方向に平行な対称軸48を
対称軸として、ホール素子を配置することもできる。また、磁電変換素子には、縦型ホー
ル素子、磁気抵抗素子等を用いることもできる。
【0053】
(実施形態3)
図11及び図12は、本発明の実施形態3の回転角度計測用チップ61を説明するため
の図である。実施形態3の回転角度計測用チップ61が実施形態1及び2の回転角度計測
用チップ1及び41と相違する点は、隣接する2個のホール素子の組が(63a、63b
)及び(65a、65b)の2組であり、これら2組間の中心点9の周りの回転角が直角
以外となる点である。また、ホール素子にX軸用又はY軸用の区分けがない点も相違点で
ある。本実施形態3では、出力電圧を導出するX軸方向及びY軸方向をそれぞれ回転角度
計測用チップ61の短手方向及び長手方向とし、円中心点9を通るY軸を対称軸として、
線対称の位置に2組のホール素子(63a、63b)及び(65a、65b)をそれぞれ
設置する。
【0054】
すなわち、ホール素子63a及び65b、63b及び65aの位置は、それぞれ対称軸
であるY軸からの距離が等しく、ホール素子63a及び65b、63b及び65aを結ぶ
線分64a、64bは、それぞれY軸と直行する。また、円中心点9を通り、ホール素子
63a及び63bの接点66aを通る直線を直線Lとし、円中心点9を通り、ホール素子
65a及び65bの接点66bを通る直線を直線Mとする。
【0055】
図11及び図12を用いて回転角度の検出方法を説明する。図11のように磁場67が
印加された際、ホール素子63a、63b、65a、65bからの出力信号を検出するこ
とにより、X軸方向、Y軸方向の出力電圧Vx、Vyを導出する。ここで、計算を簡略化
するため、図12のように、ホール素子(63a、63b)及び(65a、65b)を、
それぞれの組の接点66a、66bをホール素子の中心とする直線L上及び直線M上にあ
るホール素子63c及び65cに置き換える。このとき、ホール素子63c及び65cは
、上記同様にY軸を対称軸とする線対称の位置にある。
【0056】
まず、ホール素子63a、63b、65a、65bにおける出力信号強度の比例定数を
それぞれA1、A2、A3、A4とし、ホール素子63a及び63b、65a及び65b
は、それぞれ直線L、直線Mから角度α離れているものとする。このとき、ホール素子6
3c及び65cにおける出力信号強度の比例定数をそれぞれA12及びA34とすると、
A12≡A1×cosα+A2×cosα=(A1+A2)cosα
A34≡A3×cosα+A4×cosα=(A3+A4)cosα
として、ホール素子(63a、63b)及び(65a、65b)を、ホール素子63c及
び65cに置き換えることができる。
【0057】
次に、ホール素子63c及び65cからの出力差動電圧をそれぞれV(63c)及びV
(65c)とする。また、X軸方向と直線Lの方向との反時計回りのなす角度をθHとし
、X軸方向と磁場67の方向との反時計回りのなす角度(磁場印加角度)をθBとする。
これらの出力差動電圧は、次式(11)のような正弦波電圧及び余弦波電圧である。
V(63c)= A12×cos(θH−θB
V(65c)=−A34×cos(θH+θB) ・・・(11)
【0058】
したがって、以下の計算により、X軸方向、Y軸方向の出力電圧Vx、Vyを導出して
、回転角度θBを求める。
Vx=V(63c)cosθH+V(65c)cosθH
=A12×cos(θH−θB)cosθH+A34×cos(θH+θB)cosθH
=cosθH{A12(cosθHcosθB+sinθHsinθB
+A34(cosθHcosθB−sinθHsinθB)}

Vy=V(63c)sinθH−V(65c)sinθH
=A12×cos(θH−θB)sinθH−A34×cos(θH+θB)sinθH
=sinθH{A12(cosθHcosθB+sinθHsinθB
−A34(cosθHcosθB−sinθHsinθB)}
・・・(12)
【0059】
このとき、ホール素子63c及び65cがY軸に対して線対称の位置にあり、印可され
る応力が略同じとなるため、A12=A34=Aとなる。以上より、式(12)は下記式
(13)のように近似できる。
Vx=2A×cos2θHcosθB
Vy=2A×sin2θHsinθB ・・・(13)
これより、求める回転角度θBは、
Vy/Vx=sin2θHsinθB/cos2θHcosθB
=γ(θH)×tanθB
∴ θB=arctan(Vy/γ(θH)Vx) ・・・(14)
ただし、γ(θH)は、任意の設定値θHより求められる既知である。
【0060】
本実施形態3のように、ホール素子を配置すれば、ホール素子が2組間の中心点9の周
りの回転角が直角以外であっても、各ホール素子に印可される応力の影響を緩和すること
ができ、X軸方向とY軸方向の出力電圧の係数が等しくすることができる。これにより、
角度誤差を低減することができるため、精度高く回転角度を検出することができる。
【0061】
(実施形態4)
図13は、本発明の実施形態4の回転角度計測用チップ1301を説明するための構成図で、シリコン基板で形成された回転角度計測用チップ1301上の磁気収束板1303とホール素子X及びYとの位置関係を説明するための構成図である。図13において、矩形の回転角度計測用チップ1301の長辺の中点を通り短辺に平行な線分を線分1、回転角度計測用チップ1301の短辺の中点を通り長辺に平行な線分を線分2とすると、線分1及び線分2の直交点が回転角度計測用チップ1301の中心点1305となる。また、回転角度計測用チップ1301の面上にある円板状の磁気収束板1303の円中心点1307を通り、かつ線分1に平行な線分を線分3とする。
【0062】
実施形態4の回転角度計測用チップ1301が実施形態1乃至3の回転角度計測用チップ1、41、及び61と相違する点は、磁気収束板1303の円中心点1307が線分2上にあるが、線分1上にない点である。すなわち、実施形態4は、回転角度計測用チップ1301の中心点1305と磁気収束板1303の円中心点1307とが一致しない場合を例示している。
【0063】
磁気収束板1303の円周上には、実施形態1と同様に、4個のホール素子X1、X2、Y1、及びY2が、円中心点1307から等距離に配置されている。ホール素子X1及びY1と、X2及びY2は、それぞれ線分2に対して線対称の位置に配置され、ホール素子X1及びY2と、X2及びY1は、それぞれ線分3に対して線対称の位置に配置されている。
【0064】
また、回転角度計測用チップ1301を形成するシリコン基板とパッケージ材料(モールド樹脂等)の線膨張係数が異なるために、回転角度計測用チップ1301の表面の各点で応力が発生している。各点の応力の方向を図13中の矢印(σ0、σ45、σ90、σ135)で定義する。σ0は回転角度計測用チップ1301の短辺に平行な方向の応力であり、σ90は回転角度計測用チップ1301の長辺に平行な方向の応力である。さらに、σ45及びσ135は、回転角度計測用チップ1301の短辺及び長辺に対して45度の方向の応力である。また、X軸及びY軸は、それぞれ回転角度計測用チップ1301の短辺及び長辺に対して平行な方向で定義する。さらに、X軸を0度方向としたとき、反時計回りに45度方向をX‘軸、反時計回りに135度方向をY’軸と定義し、X‘軸方向とY’軸方向との反時計回りのなす角度をθと定義する。X‘軸はホール素子X1とX2を結ぶ線分1309に平行であり、Y’軸はホール素子Y1とY2を結ぶ線分1311に平行である。なお、線分1309と線分1311は、円中心点1307で直交する。
ここで、回転角度計測用チップ1301に対して水平な方向に磁場Bが存在するとき、X‘軸に平行な磁場成分をBX'、Y‘軸に平行な磁場成分をBY'とし、X‘軸方向と磁場Bの方向との反時計回りのなす角度をθBとする。つまり、X軸及びY軸のなす角は90度であり、X‘軸及びY’軸のなす角も90度である。
【0065】
ホール素子X1、X2、Y1、及びY2のそれぞれの出力電圧V(X1)、V(X2)、V(Y1)、及びV(Y2)は、次式(15)で表される。ここで、磁気収束板1303に流れる電流をIとし、ホール素子X1、X2、Y1、及びY2のホール素子の磁気感度をそれぞれSIX1、SIX2、SIY1、及びSIY2とし、オフセットをそれぞれOffsetx1、Offsetx2、Offsety1、及びOffsety2とする。次式(15)を用いて、回転角度計測用チップ1301表面に水平な磁場Bの方向を精度よく算出するには、次式(16)に示したように、オフセットOffsetx1乃至Offsety2が磁場Bに比例した信号と比較して十分に小さく、かつ、ホール素子X1とX2の磁気感度の和が、ホール素子Y1とY2の磁気感度の和と等しくする必要がある。
【0066】
【数1】
【0067】
【数2】
【0068】
ホール素子の磁気感度SIX1乃至SIY2は、応力の影響を受ける。この効果は、ピエゾホール効果と呼ばれ、ピエゾホール係数P12を用いて、次式(17)で表される。
「ホール素子X1とX2の磁気感度の和が、ホール素子Y1とY2の磁気感度の和が略等しい」となる条件は、(i)応力がないときの磁気感度が全てのホール素子において略等しく、かつ(ii)ホール素子X1とY1の応力が略等しく、かつ(iii)ホール素子X2とY2の応力が略等しいときに精度よく達成することができる。(i)の条件は、全てのホール素子X1、X2、Y1、及びY2を同一形状・同一条件で作製することで達成できる。(ii)の条件は、シリコン基板の中心点を通り、シリコン基板の長辺に平行な線分2に対して、ホール素子X1とY1を線対称の位置に配置することで達成できる。これは、対称性のある形状の場合、応力にも対称性が成り立つことから説明できる。(iii)の条件も同様で、線分2に対して、ホール素子X2とY2を線対称の位置に配置することで達成できる。
【0069】
【数3】
【0070】
線分1もしくは線分2に対して、線対称な位置に配置されたホール素子の受ける応力はほぼ等しい。ピエゾホール効果は、ホール素子の数によらない。そのため、この効果は、線対称な位置にそれぞれ2個1組のホール素子で形成されたホール素子群を考えた場合、線分1もしくは線分2に対して、線対称な位置に配置された少なくとも1組以上のホール素子群に対して有効となる。また、上記の効果は、磁気収束板が不要な磁場計測装置についても有効となる。
【0071】
図14は、図13におけるX‘軸及びY’軸のなす角を90度に限らず、θ度とした場合を表す図である。図13では、X‘軸及びY’軸のなす角を90度としたが、設計による既知の角度であれば90度でなくてもよい。図14のようにX‘軸及びY’軸のなす角をθ度として設計した場合でも、X‘軸に垂直なY2軸方向の磁場強度は、Y’軸方向の磁場強度から容易に算出できるためである。
【0072】
本実施形態では、中心点1307が線分2上にある場合を例示しているが、線分1にあって線分2上にない場合にも本発明を実施することができる。
【0073】
(実施形態5)
図15は、本発明の実施形態5の回転角度計測用チップ1501を説明するための構成図で、シリコン基板で形成された回転角度計測用チップ1501上の磁気収束板1503とホール素子X及びYとの位置関係を説明するための構成図である。図15において、図13と同様に、線分1と線分2を設け、線分1及び線分2の直交点を回転角度計測用チップ1501の中心点1505とする。また、磁気収束板1503の円中心点1507を通りかつ線分1に平行な線分を線分3とし、円中心点1507を通りかつ線分2に平行な線分を線分4とする。
【0074】
実施形態5の回転角度計測用チップ1501が実施形態4の回転角度計測用チップ1301と相違する点は、磁気収束板1503の円中心点1507が線分1上にも線分2上にもない点である。磁気収束板1503の円周上には、実施形態4と同様に、4個のホール素子X3、X4、Y3、及びY4が、円中心点1507から等距離に配置されている。ホール素子X3及びY3と、X4及びY4は、それぞれ線分4に対して線対称の位置に配置され、ホール素子X3及びY4と、X4及びY3は、それぞれ線分3に対して線対称の位置に配置されている。
【0075】
回転角度計測用チップ1501上の中心点1505付近では、回転角度計測用チップ1501に対して垂直な方向の応力は、回転角度計測用チップ1501に対して平行な方向の応力に比べて十分小さい。そのため、回転角度計測用チップ1501に対して垂直な方向の応力はほぼ無視することができる。一方、回転角度計測用チップ1501上の端部付近では、回転角度計測用チップ1501に対して垂直な方向の応力が、回転角度計測用チップ1501に対して平行な方向の応力に比べて無視できない量となり、回転角度計測用チップ1501に対して垂直な方向の応力がホール素子の磁気感度及びオフセットに大きな影響を与える。
【0076】
図16は、図15の実施形態5におけるホール素子の配置と比較して、従来技術におけるホール素子の配置を表す図である。図16において、図15と同様に、回転角度計測用チップ1601上に磁気収束板1603が設置され、磁気収束板1603の円周上に4個のホール素子X5、X6、Y5、及びY6が、円中心点1307から等距離に配置されている。また、図15と同様に、線分1及び線分2の直交点を回転角度計測用チップ1601の中心点1605とし、磁気収束板1603の円中心点1507を通りかつ線分1に平行な線分を線分3、円中心点1507を通りかつ線分2に平行な線分を線分4とする。なお、ホール素子X5、X6、Y5、及びY6は、それぞれホール素子X3、X4、Y3、及びY4に対応している。
【0077】
図16の回転角度計測用チップ1601が実施形態5の回転角度計測用チップ1501と相違する点は、ホール素子X5及びX6が線分3上にあり、ホール素子Y5及びY6が線分4上にある点である。
【0078】
図16の場合、4個のホール素子の内、ホール素子X5のみが回転角度計測用チップ1601の端部に近く、回転角度計測用チップ1601に対して垂直な方向の応力の影響を受ける。そのため、数式(15)において、X1をX5として演算を行うと、ホール素子X5の磁気感度SIX5とオフセット
【0079】
【数4】
【0080】
が、他のホール素子の磁気感度及びオフセットと大きく異なるため、数式(16)により磁場Bの角度θBを求める際に誤差を生じる。
【0081】
一方、図15の本実施形態のホール素子の配置の場合、ホール素子X3とY4が回転角度計測用チップ1601の端部に近い。そのため、ホール素子X3とY4の磁気感度とオフセットは、回転角度計測用チップ1601に対して垂直な方向の応力の影響を受けるが、比(Y/X)もしくは差(Y−X)の演算では、X3とY4の磁気感度とオフセットの影響が相殺して、結果的に数式(15)及び(16)により磁場Bの角度θBを求める際に誤差を生じにくい構成となっている。ここで、本実施形態では、数式(15)及び(16)のX1、X2、Y1、及びY2を、それぞれX3、X4、Y3、及びY4として演算する。
【0082】
図17は、従来の回転角度計測用チップ1701上の磁気収束板1703とホール素子の配置を表す図である。図17において、回転角度計測用チップ1701上に磁気収束板1603が設置され、磁気収束板1703の円周上に4個のホール素子X7、X8、Y7、及びY8が、円中心点1707から等距離に配置されている。図17の回転角度計測用チップ1701が図16の回転角度計測用チップ1601と相違する点は、回転角度計測用チップ1701の中心点1705と磁気収束板1703の円中心点1707とが一致し、ホール素子X7及びX8が線分1上にあり、ホール素子Y7及びY8が線分2上にある点である。
【0083】
図18は、従来の回転角度計測用チップ1701を用いた回転角度計測装置の断面図である。回転角度計測用チップ1701を設置する矩形のチップ実装基板であるリードフレーム1803がパッケージ外形1805で覆われている。回転角度計測用チップ1701は、その各辺がリードフレーム1803の対応する辺と平行な向きで、リードフレーム1803上面の中央部に設置されている。
【0084】
図19乃至図21は、従来の回転角度計測用チップ1701の長手方向と短手方向との応力の比較を説明するための図である。本発明の効果を明確にするために、回転角度計測用チップ1701の短手方向の長さを変えて回転角度計測用チップ1701上の応力のシミュレーション計算を行った。なお、図19乃至図21では、一例としてリードフレーム1803が正方形の場合を表している。
【0085】
図19は、回転角度計測用チップ1701の長手方向(X軸方向)の長さが2.0mmで、短手方向(Y軸方向)の長さが2.0mmの場合を表している。
【0086】
図20は、回転角度計測用チップ1701の長手方向(X軸方向)の長さが2.0mmで、短手方向(Y軸方向)の長さが1.6mmの場合を表している。
【0087】
図21は、回転角度計測用チップ1701の長手方向(X軸方向)の長さが2.0mmで、短手方向(Y軸方向)の長さが1.2mmの場合を表している。
【0088】
図19乃至図21の回転角度計測用チップ1701の中心付近のプロットが、応力を算出したポイントであり、回転角度計測用チップ1701の中心からX軸方向及びY軸方向の100μmごとの応力を算出している。回転角度計測用チップ1701の中心から等距離にあるX軸上のポイントの応力とY軸上のポイントの応力とを比較することで、図17におけるX軸用ホール素子X7及びX8と、Y軸用ホール素子Y7及びY8とが受ける応力の比較をすることが出来る。
【0089】
図22は、図19乃至図21における従来の回転角度計測用チップ1701の中心から等距離にあるX軸上のポイントの応力とY軸上のポイントの応力との応力比を表す図である。図22の折れ線グラフ2201、2203、及び2205は、それぞれ図19図20、及び図21の回転角度計測用チップ1701の中心からX軸方向とY軸方向に等距離だけ離れた場所のX軸上の応力とY軸上の応力との応力比(X軸上の応力/Y軸上の応力)を算出した結果を示す。なお、本実施形態では、X軸上の応力/Y軸上の応力として応力比を算出したが、Y軸上の応力/X軸上の応力として応力比を算出してもよい。
【0090】
図22の結果より、回転角度計測用チップ1701の短辺と長辺の比が大きくなるほど、Y軸用のホール素子とX軸用のホール素子が受ける応力が顕著に異なることがわかる。この応力の差によって発生する求める磁場の角度誤差が、本発明のホール素子の位置に配置した場合は発生しない。つまり、回転角度計測用チップの短辺と長辺の比が大きくなるほど、本発明の効果が顕著になることが分かる。
【0091】
本発明によれば、回転角度計測用チップの短辺と長辺の比(長辺の長さ/短辺の長さ)を1.3以上にしてもよく、1.5以上にしてもよく、1.8以上にしてもよく、2.0以上にしてもよい。すなわち、回転角度計測用チップ1701の短辺と長辺の比の値の大きさにかかわらず本発明の実施が可能となる。
【0092】
上記各実施形態において回転角度計測装置(回転角センサ)が算出した磁場印加角度θ1は、回転角度計測用チップの長手方向又は短手方向を基準とした角度に変換されることが好ましい。即ち、回転角度計測用チップの長手方向をX軸方向、X軸方向とX’軸方向とのなす角度をθ2とした時に、上記各実施形態の回転角度計測装置(回転角センサ)は、磁場印加角度をθ1+θ2であると算出し、回転角度計測用チップの長手方向を基準とした角度に変換して算出する。
【0093】
磁場印加角度の変換方法は、特に限定はないが演算処理(ソフト変換)で行うことが好ましい。演算処理(ソフト変換)前で角度θ1であったものをソフト変換により変換後の角度θ1+θ2となるようにしておけば、つまり、磁場印加角度の基準をソフト変換で回転角度計測用チップの長手方向に変換するようにしておけば、ユーザは使いやすくなる。なお、上記各実施形態では、回転角度計測用チップの長手方向をX軸方向としたが、短手方向をX軸方向としてもよい。
【0094】
上記各実施形態では、ホール素子が4個の例を示したが、ホール素子の数が増えても同様の効果を生じさせることができる。つまり、例えば、線対称な位置のホール素子2個を1組のホール素子群と考えた場合、最もホール素子と回転角度計測用チップ1501の端部との距離が近い回転角度計測用チップ1501の1辺に対して垂直な線分3もしくは線分4に対して、線対称な位置に配置された少なくとも1組以上のホール素子群に対して有効な効果を生じさせることができる。
【0095】
上記各実施形態では磁気収束板の形状が円形状であるとして説明したが、多角形形状、楕円形状、扇形形状のいずれであってもよい。また、磁気収束板とホール素子との距離は任意の距離であり、ホール素子が磁気収束板の直下であってもよく、さらにホール素子と磁気収束板が平面視したときに重なっていなくてもよい。
【0096】
また、上記各実施形態では磁電変換素子としてホール素子を用いて説明したが、縦型ホール素子、磁気抵抗素子等を用いることもできる。
【0097】
本実施形態1乃至5は、回転角度計測装置を例としているが、回転角度計測装置におけ
る磁極回転体の磁場を、地磁気に置き換えると全て方位角検出装置の実施例となる。同様
に、電流が生み出す磁場の方向を計測する際も精度高く磁場の方向を計測し、電流の方向
を計測することが可能である。
【0098】
また、本発明は、チップに対して水平な磁場の向きを検出する際に特に極めて有効であ
る。
【0099】
また、本発明は基板の形状が一方の辺が他方の辺よりも長い長方形であると、従来技術
に対する優位性がより顕著なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の磁場方向計測装置は、回転角度計測装置や方位角計測装置に利用することがで
きる。また、回転角度計測装置は、乗用車のステアリングの回転を制御することや、モー
タに取り付ける回転軸の回転角度の測定に用いることができ、方位角計測装置はナビゲー
ションシステム等に用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
1、41、51、61、1301、1501、1601、1701 回転角度計測用チップ
3 チップ実装基板
5 端子
7、1303、1503、1603、1703 磁気収束板
8 樹脂モールド
9、1307、1507、1607、1707 円中心点
11a〜11b、43a〜43d、53a〜53b、X1〜X8 X軸用ホール素子
12a〜12b、14a〜14b、44a〜44d、1309、1311、1509、1511 線分
13a〜13b、45a〜45d、55a〜55b、Y1〜Y8 Y軸用ホール素子
15、19、46、48 対称軸
16a、16b 交点
17、47、57、67 磁場
21、27 X軸方向の出力信号強度
23、29 Y軸方向の出力信号強度
25 円形の波形
31 楕円形の波形
33 黒丸
35 白丸
63a〜63c、65a〜65c ホール素子
64、66 接点
1803 リードフレーム
1805 パッケージ外形
2201、2203、2205 折れ線グラフ
L、M 直線
図1
図2
図3
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図22