特許第6243724号(P6243724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6243724ホール素子を備えた磁気センサ及びその信号補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243724
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ホール素子を備えた磁気センサ及びその信号補正方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/06 20060101AFI20171127BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01L43/06 S
   G01R33/06 H
【請求項の数】32
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-261453(P2013-261453)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-92528(P2015-92528A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-287772(P2012-287772)
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-207408(P2013-207408)
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】弥生 達彦
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/116823(WO,A1)
【文献】 特開平09−097895(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050711(WO,A1)
【文献】 特開2008−309626(JP,A)
【文献】 特開2011−007658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/06
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型不純物領域と、前記p型不純物領域上に設けられ、感磁部として機能するn型不純物領域とを有するホール素子を備えた磁気センサであって、
前記n型不純物領域のn型不純物濃度N(atoms/cm)と分布深さD(μm)が、
N<1.0×1016
N>3.802×1016×D−1.761
(ただし、前記n型不純物濃度Nは、前記n型不純物領域内における前記n型不純物濃度の最大濃度であり、前記分布深さDは、前記n型不純物濃度が最大となる点から前記n型不純物濃度Nの1/10の濃度になる点までの深さ方向の長さである)
の関係式を満たし、
前記ホール素子の温度特性に関する情報が記憶された温度特性記憶部と、
温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成する補正信号生成部と、
前記補正信号生成部が生成する前記補正信号と、前記ホール素子の出力信号とが入力され、前記補正信号に基づいて前記ホール素子の出力信号を補正する信号補正部と
を備えている磁気センサ
【請求項2】
前記n型不純物濃度Nと前記分布深さDが、N>3.410×1016×D−1.293の関係式を満たす請求項1に記載の磁気センサ
【請求項3】
前記分布深さDが、D≦15の関係式を満たす請求項1又は2に記載の磁気センサ
【請求項4】
前記分布深さDが、4≦Dの関係式を満たす請求項1,2又は3に記載の磁気センサ
【請求項5】
前記n型不純物領域を覆うシリコン酸化物層を更に備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気センサ
【請求項6】
前記n型不純物領域と前記シリコン酸化物層が接している請求項5に記載の磁気センサ
【請求項7】
前記n型不純物濃度Nが、3.0×1014<Nの関係式を満たす請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気センサ
【請求項8】
前記温度特性記憶部は、
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報が記憶される温度比例係数記憶部と、
前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報が記憶される磁気感度記憶部とを備え、
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記温度比例係数記憶部が記憶する前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、前記ホール素子の定電流感度の温度比例係数に関する情報であり、
前記磁気感度記憶部が記憶する前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報は、前記所定の温度における前記ホール素子の定電流感度に関する情報である請求項に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、第1の温度において測定された前記ホール素子の第1の磁気感度と、第2の温度において測定された前記ホール素子の第2の磁気感度と、から算出される情報である請求項8又は9に記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記第1の磁気感度は、前記第1の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であり、前記第2の磁気感度は、前記第2の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度である請求項10に記載の磁気センサ。
【請求項12】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、更に、前記第1の磁気感度と、前記第2の磁気感度と、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の第3の磁気感度と、から算出される情報である請求項10又は11に記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記第3の磁気感度は、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度である請求項12に記載の磁気センサ。
【請求項14】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出される請求項8〜13のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項15】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上3点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出される請求項14に記載の磁気センサ。
【請求項16】
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出される請求項1〜15のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項17】
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上3点下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出される請求項16に記載の磁気センサ。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の磁気センサの信号補正方法であって、
前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップと、
温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、
前記ホール素子の出力を取得するステップと、
前記補正信号を用いて前記ホール素子の出力信号を補正するステップと
を有する磁気センサの信号補正方法。
【請求項19】
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を含み、
前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を取得するステップを有する請求項18に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項20】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、前記ホール素子の定電流感度の温度比例係数に関する情報であり、
前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報は、前記所定の温度における前記ホール素子の定電流感度に関する情報である請求項19に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項21】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、第1の温度において測定された前記ホール素子の第1の磁気感度と、第2の温度において測定された前記ホール素子の第2の磁気感度と、から算出される情報である請求項19又は20に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項22】
前記第1の磁気感度は、前記第1の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であり、前記第2の磁気感度は、前記第2の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度である請求項21に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項23】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、更に、前記第1の磁気感度と、前記第2の磁気感度と、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の第3の磁気感度とから算出される情報である請求項21又は22に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項24】
前記第3の磁気感度は、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度である請求項23に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項25】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出される請求項19〜24のいずれか1項に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項26】
前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上3点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出される請求項25に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項27】
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出される請求項18〜26のいずれか1項に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項28】
前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上3点下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出される請求項27に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項29】
前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、
第1の温度における前記ホール素子の第1の磁気感度を測定するステップと、
第2の温度における前記ホール素子の第2の磁気感度を測定するステップと、
前記第1の磁気感度と前記第2の磁気感度とから前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報を取得するステップとを有し、
前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップは、
前記温度センサの出力と、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、所定の温度における前記ホール素子の磁気感度と、に基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップである請求項18に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項30】
前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、
第1の温度における前記ホール素子の第1の磁気感度を測定するステップと、
第2の温度における前記ホール素子の第2の磁気感度を測定するステップと、
第3の温度における前記ホール素子の第3の磁気感度を測定するステップと、
前記第1の磁気感度と前記第2の磁気感度と前記第3の磁気感度とから前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報を取得するステップとを有し、
前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップは、
前記温度センサの出力と、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、所定の温度における前記ホール素子の磁気感度とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップである請求項18に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項31】
前記磁気感度は定電流感度である請求項29又は30に記載の磁気センサの信号補正方法。
【請求項32】
前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは出荷前に行われる工程であり、
前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、
前記ホール素子の出力を取得するステップと、
前記補正信号を用いて前記ホール素子の出力信号を補正するステップは、
磁場測定時に実行される工程である請求項18〜31のいずれか1項に記載の磁気センサの信号補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子を備えた磁気センサ及びその信号補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホール素子を内蔵した磁気センサ半導体集積回路として、電流が発生させる磁場を検出する電流センサや、磁石の回転を検出する回転角センサ、磁石の移動を検出するポジションセンサなどが知られている。
図1は、ホール素子の駆動回路例を示す図である。電極1から電極3にホール駆動電流Iを流すと、電極2−電極4間にホール素子出力Vが得られることがわかる。
【0003】
ホール素子の駆動方法として、一般的に、定電流駆動方式と定電圧駆動方式の2種類がある。図1のホール駆動電流Iを常に一定にした方式が定電流駆動方式であり、ホール駆動電圧Vを一定にした方式が定電圧駆動方式である。それぞれの駆動方式における磁気感度を定電流感度及び定電圧感度と表記する。
一般にホール素子は、p型シリコンからなるp型半導体基板層の表面にn型不純物領域が設けられた構成となっており、このn型不純物領域が感磁部として機能する。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のものは、ホール素子の形成に用いる基板の選択自由度を高めることのできる縦型ホール素子及びその製造方法に関する。この縦型ホール素子は、P型のシリコンからなる半導体基板に形成され、同基板の表面に垂直な成分を含む電流がN型の半導体領域12内の磁気検出部HPに供給された状態で、同基板の表面に平行な磁界成分が磁気検出部HPに印加されるとき、その磁界成分に対応するホール電圧信号を出力するものである。
【0005】
また、特許文献2には、SN向上を目的として、方位角センサに適したn型不純物領域の濃度として1.0×1016≦N≦3.0×1016(atoms/cm)が適していることが開示されている。
また、特許文献3には、出荷前試験にて5温度検査を行い、その結果をEEPROMに書き込み、5点温度の折れ線補正を行い、検出磁場精度の高精度化を図る方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、ホール素子の電極部のN型領域の深さ方向の濃度分布が記載されており、濃度分布の範囲、つまり、基板表面を基点とした場合に、深さ方向で0.3μm以上、0.5μm以下の範囲内で、N型不純物の濃度が5×1017atoms/cm以上、3×1019atoms/cm以下であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−333103号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/116823号
【特許文献3】米国特許第2012/0086442号明細書
【特許文献4】特開2012−204616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ホール素子の磁気感度は、例えば、特許文献3に記載されているように、温度によって変化することが知られている。磁気感度の温度変化は磁場検出精度の低下につながるため、磁場強度を高精度に算出するためには、ホール素子の磁気感度の温度特性を補正する必要がある。
ホール素子の出力と磁場強度の関係を数式(1)に表す。定電流感度をSI(T)、ホール素子の駆動電流をI、磁場強度をBとしたとき、ホール素子から得られる信号は、数式(1)のSignal(T)となる。定電流感度SI(T)は、温度依存性を持つため、高精度に磁場強度Bを算出するためには、定電流感度の温度依存性に比例した係数で割る必要がある。
【0009】
【数1】
【0010】
従来のホール素子の定電流感度の温度特性は、2次の特性を持っている。そのため、従来のホール素子を一定磁場に置いたときの出力は、数式(2)に示すように、2次の温度特性を持つことになる。
【0011】
【数2】
【0012】
数式(2)に示すように、2次の温度特性を持つ信号から、高精度に磁場を算出するには、温度の2次の関数を補正関数として持つ必要がある。
近年、高精度な磁気センサが求められており、特に、車載用の磁気センサとして、−40度から150度の間で補正残り誤差が1.0%以下となる磁気センサが求められている。ここで補正残り誤差Eとは下記式で表される値である。
【0013】
=(SIMAX−SIMIN)/2
SIMAXは、−40度から150度における補正後の磁気感度のうち、最大の磁気感度であり、SIMINは−40度から150度における補正後の磁気感度のうち、最小の磁気感度である。なお、SIMAXとSIMINは共に25度における補正後の磁気感度で規格化された値である。補正残り誤差Eが大きいほど、−40度から150度における補正後の磁気感度がばらついていることとなり、補正残り誤差Eが小さいほど、−40度から150度における補正後の磁気感度がばらついていないこととなる。
【0014】
従来のホール素子を用いた磁気センサの場合、−40度から150度の間で補正残り誤差を1.0%以下とするためには、磁気感度の温度特性を補正する補正関数において、正確な2次の補正関数を求める必要がある。正確な2次の補正関数を算出するためには数多くの温度でホール素子の磁気感度を測定しなければならず、従来のホール素子の場合、補正関数を算出するためのテスト工程に極めて多くの時間とコストがかかっていた。
【0015】
また、補正関数を算出するための磁気感度の測定回数と磁気検出精度はトレードオフの関係にあり、従来のホール素子の場合、磁気感度の測定回数を少なくすると、磁気検出精度が低下し、−40度から150度の間で補正残り誤差を1.0%以下とすることが出来なくなってしまうという問題があった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、十分な精度を持つ補正関数を少ない磁気感度の測定回数で求めることが可能なホール素子を備えた磁気センサ及びその信号補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、本発明は、p型不純物領域と、前記p型不純物領域上に設けられ、感磁部として機能するn型不純物領域とを有するホール素子を備えた磁気センサであって、前記n型不純物領域のn型不純物濃度N(atoms/cm)と分布深さD(μm)が、
N<1.0×1016
N>3.802×1016×D−1.761
(ただし、前記n型不純物濃度Nは、前記n型不純物領域内における前記n型不純物濃度の最大濃度であり、前記分布深さDは、前記n型不純物濃度が最大となる点から前記n型不純物濃度Nの1/10の濃度になる点までの深さ方向の長さである)
の関係式を満たし、前記ホール素子の温度特性に関する情報が記憶された温度特性記憶部と、温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成する補正信号生成部と、前記補正信号生成部が生成する前記補正信号と、前記ホール素子の出力信号とが入力され、前記補正信号に基づいて前記ホール素子の出力信号を補正する信号補正部とを備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度特性が略直線状となるので、−40度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から磁気感度の温度特性を補正するための補正関数を作成した場合であっても十分に精度の高い補正関数となる。請求項1に記載の発明によれば、十分な精度を持つ補正関数を少ない磁気感度の測定回数で求めることが可能なホール素子を提供することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、前記n型不純物濃度Nと前記分布深さDが、N>3.410×1016×D−1.293の関係式を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度特性が略直線状となるので、25度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から磁気感度の温度特性を補正するための補正関数を作成した場合であっても十分に精度の高い補正関数を作成することが可能となる。請求項2に記載の発明によれば、十分な精度を持つ補正関数を少ない磁気感度の測定回数で求めることが可能なホール素子を提供することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、前記分布深さDが、D≦15の関係式を満たすことを特徴とする。
また、本発明は、前記分布深さDが、4≦Dの関係式を満たすことを特徴とする。
本発明によれば、2Phaseチョッパー駆動後に残る残留オフセットを低減することが可能となる。
また、本発明は、前記n型不純物領域を覆うシリコン酸化物層を更に備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、シリコン酸化物層とn型不純物領域の接続部分に大きな空乏層が発生してしまうことがない。これにより、ホール素子の磁気感度の温度特性の線形性を向上させることが可能となる。
また、本発明は、前記n型不純物領域と前記シリコン酸化物層が接していることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、シリコン酸化物層とn型不純物領域の接続部分に大きな空乏層が発生してしまうことがない。これにより、ホール素子の磁気感度の温度特性の線形性を向上させることが可能となる。
また、本発明は、前記n型不純物濃度Nが、3.0×1014<Nの関係式を満たすことを特徴とする。
【0023】
た、本発明は、前記温度特性記憶部は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報が記憶される温度比例係数記憶部と、前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報が記憶される磁気感度記憶部とを備え、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における磁気感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記温度比例係数記憶部が記憶する前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、前記ホール素子の定電流感度の温度比例係数に関する情報であり、前記磁気感度記憶部が記憶する前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報は、前記所定の温度における前記ホール素子の定電流感度に関する情報であることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、ホール素子の定電流感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における定電流感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、第1の温度において測定された前記ホール素子の第1の磁気感度と、第2の温度において測定された前記ホール素子の第2の磁気感度と、から算出される情報であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、前記第1の磁気感度は、前記第1の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であり、前記第2の磁気感度は、前記第2の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、更に、前記第1の磁気感度と、前記第2の磁気感度と、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の第3の磁気感度と、から算出される情報であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、前記第3の磁気感度は、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出されることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、少ないテスト工程で十分な磁場検出精度を有する磁気センサを提供することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上3点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出されることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、少ないテスト工程で十分な磁場検出精度を有する磁気センサを提供することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出されることを特徴とする。
本発明によれば、少ないテスト工程で十分な磁場検出精度を有する磁気センサを提供することが可能となる。
【0030】
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上3点下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出されることを特徴とする。
本発明によれば、少ないテスト工程で十分な磁場検出精度を有する磁気センサを提供することが可能となる。
また、本発明は、磁気センサの信号補正方法であって、前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップと、温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、前記ホール素子の出力を取得するステップと、前記補正信号を用いて前記ホール素子の出力信号を補正するステップとを有することを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、少ないテスト工程で精度の高い磁場検出を行うことが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を含み、前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を取得するステップを有することを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における磁気感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、前記ホール素子の定電流感度の温度比例係数に関する情報であり、前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報は、前記所定の温度における前記ホール素子の定電流感度に関する情報であることを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、ホール素子の定電流感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における定電流感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、第1の温度において測定された前記ホール素子の第1の磁気感度と、第2の温度において測定された前記ホール素子の第2の磁気感度と、から算出される情報であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明は、前記第1の磁気感度は、前記第1の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であり、前記第2の磁気感度は、前記第2の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、更に、前記第1の磁気感度と、前記第2の磁気感度と、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の第3の磁気感度とから算出される情報であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明は、前記第3の磁気感度は、前記第3の温度において測定された前記ホール素子の定電流感度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出されることを特徴とする。
【0036】
本発明によれば、少ないテスト工程で精度の高い磁場検出をすることが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報は、2点以上3点以下の温度において測定された前記ホール素子の磁気感度から算出されることを特徴とする。
本発明によれば、少ないテスト工程で精度の高い磁場検出をすることが可能となる。
【0037】
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上5点以下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出されることを特徴とする。
本発明によれば、少ないテスト工程で精度の高い磁場検出をすることが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報は、2点以上3点下の温度において測定された前記ホール素子の出力から算出されることを特徴とする。
【0038】
本発明によれば、少ないテスト工程で精度の高い磁場検出をすることが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、第1の温度における前記ホール素子の第1の磁気感度を測定するステップと、第2の温度における前記ホール素子の第2の磁気感度を測定するステップと、前記第1の磁気感度と前記第2の磁気感度とから前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報を取得するステップとを有し、前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップは、前記温度センサの出力と、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、所定の温度における前記ホール素子の磁気感度と、に基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップであることを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における磁気感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは、第1の温度における前記ホール素子の第1の磁気感度を測定するステップと、第2の温度における前記ホール素子の第2の磁気感度を測定するステップと、第3の温度における前記ホール素子の第3の磁気感度を測定するステップと、前記第1の磁気感度と前記第2の磁気感度と前記第3の磁気感度とから前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報を取得するステップとを有し、前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップは、前記温度センサの出力と、前記ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、所定の温度における前記ホール素子の磁気感度とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップであることを特徴とする。
【0040】
本発明によれば、ホール素子の磁気感度の温度比例係数と、ホール素子の所定の温度における磁気感度を用いて、温度変化に起因するホール素子の出力変化を精度よく補正することが可能となる。
また、本発明は、前記磁気感度は定電流感度であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップは出荷前に行われる工程であり、前記温度センサの出力と、前記ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、前記ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、前記ホール素子の出力を取得するステップと、前記補正信号を用いて前記ホール素子の出力信号を補正するステップは、磁場測定時に実行される工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、十分な精度を持つ補正関数を少ない磁気感度の測定回数で求めることが可能なホール素子を備えた磁気センサ及びその信号補正方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】ホール素子の駆動回路例を示す図である。
図2】(a),(b)は、本発明の磁気センサに用いられるホール素子の平面図(レイアウト)と断面図である。
図3】深さとn型不純物濃度の関係を示す図である。
図4】分布深さとn型不純物領域濃度との関係を示す図である。
図5】本発明に係る磁気センサの実施形態を説明するためのブロック構成図である。
図6図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示す図である。
図7図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例1を説明するためのフローチャートを示す図である。
図8】n型不純物濃度に対する直線近似誤差の関係を示す図である。
図9】ホール素子の動作時の概略断面図である。
図10】分布深さとn型不純物領域濃度との関係を示す図である。
図11】ホール素子の動作時の概略断面図である。
図12図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例2を説明するためのフローチャートを示す図である。
図13】n型不純物濃度に対する3点折れ線近似誤差の関係を示す図である。
図14】実施例3における分布深さと残留オフセットのバラツキとの関係を示す図である。
図15】分布深さとn型不純物領域濃度との関係を示す図である。
図16図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例4を説明するためのフローチャートを示す図である。
図17】n型不純物濃度に対する定電流感度の温度特性バラツキの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明は、高精度の磁気センサを実現する技術として、ホール素子の感磁部のn型不純物領域の濃度と深さを適切な範囲の限定及び磁気感度の温度特性補正方法を実現することを目的としている。
図2(a)及び(b)は、本発明に係るホール素子を説明するための構成図で、図2(a)はホール素子の上面図、図2(b)は、図2(a)のC−D線断面図である。図中符号1はp型不純物領域、2はn型不純物領域、3はn型領域(電極部)を示している。n型不純物領域2がホール素子の感磁部として機能し、n型領域3が、ホール素子の電極として機能する。
【0047】
本実施形態のホール素子は、p型不純物領域1と、p型不純物領域上1に設けられ、感磁部として機能するn型不純物領域2と、を備える。
本実施形態では、n型不純物領域内におけるn型不純物濃度の最大濃度をn型不純物濃度Nと定義し、n型不純物濃度が最大となる点から、n型不純物濃度がn型不純物濃度Nの1/10となる点までの深さ方向の長さを分布深さDであると定義する。n型不純物濃度Nの単位はatoms/cmであり、分布深さDの単位はμmであるとする。
【0048】
なお、n型不純物領域内におけるn型不純物濃度の最大濃度Nおよび分布深さDの測定には2次イオン質量分析法(SIMS)を使用する。この方法は、イオンを試料表面に入射させ、試料表面から放出されたイオンを検出し、各質量における検出量を測定することで、試料中に含まれる成分の定性・定量を行う手法である。この測定により、例えば、図4のような、n型不純物濃度の断面方向の濃度を測定することが可能となる。測定装置は、「CAMECA IMS−7f」を用い、測定条件は1次イオン種:Cs+、2次イオン極性:negative、加速電圧:15.0kVとする。
n型不純物領域2のn型不純物濃度N(atoms/cm)と分布深さD(μm)は下記数式(3)を満たしている。
【0049】
【数3】
【0050】
ただし、n型不純物濃度Nは、n型不純物領域内におけるn型不純物濃度の最大濃度であり、分布深さDは、n型不純物濃度が最大となる点からn型不純物濃度Nの1/10の濃度になる点までの深さ方向の長さである。
上記数式(3)を満たす本実施形態のホール素子は、磁気感度の温度特性が略直線状になるので、−40度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から作成された補正関数であっても十分に精度の高い補正関数となる。
【0051】
より詳細には、−40度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から作成された補正関数を用いて−40度から150度の範囲の磁気感度を補正した場合であっても、補正残り誤差を1.0%以下にすることが可能となる。
図3は、分布深さDとn型不純物濃度Nの関係を示す図である。図3に示すように、n型不純物領域のN型不純物の濃度一般にシリコン基板表面付近の濃度が薄く、深くなるほど濃度が薄くなる。図3では、n型不純物濃度Nは、全て1.0×1016(atoms/cm)であり、分布深さDは、それぞれ8μm・6μm・4μmとなる。
さらに、数式(4)を満たすn型不純物領域のn型不純物濃度Nおよびn型不純物濃度の分布深さDはより好ましい。
【0052】
【数4】
【0053】
上記数式(4)を満たす本実施形態のホール素子は、磁気感度の温度特性が略直線状になるので、25度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から作成された補正関数であっても十分に精度の高い補正関数となる。
より詳細には、25度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から作成された補正関数を用いて−40度から150度の範囲の磁気感度を補正した場合であっても、補正残り誤差を1.0%以下にすることが可能となる。
【0054】
図4は、分布深さとn型不純物領域濃度との関係を示す図で、数式(3)及び数式(4)の示す範囲を図示した図である。
次に、その根拠について説明する。
図5は、本発明に係る磁気センサの実施形態を説明するためのブロック構成図である。図中符号21はホール素子、22はホール駆動電流源、23はチョッパースイッチ部、24は差動増幅器、25は積分器、26は温度センサ、27はアナログデジタル変換器(ADC)、28は温度比例係数記憶部(EEPROM)、29は磁気感度記憶部(EEPROM)、30は補正信号生成部、31は信号補正部、32は温度特性記憶部を示している。温度特性記憶部32は、温度比例係数記憶部28と磁気感度記憶部29を含む。また、ホール素子の温度特性に関する情報は、ホール素子の磁気感度の温度比例係数に関する情報と、前記ホール素子の所定の温度における磁気感度に関する情報を含むものとする。以下、ホール素子の磁気感度は定電流感度であるとして説明するが、ホール素子の磁気感度は定電流感度に限るものではなく、例えば定電圧感度であってもよい。
【0055】
本発明の磁気センサは、図2に示したホール素子を備えている磁気センサである。ホール駆動電流源22は、ホール素子21を定電流駆動する電流源である。チョッパースイッチ部23は、ホール素子21を2Phaseチョッパー駆動もしくは4Phaseチョッパー駆動するためのスイッチ群である。チョッパー駆動した信号を積分器25で積分することで、数式(5)に示すように、ホール素子21のオフセットを動的に除去することができる。
【0056】
【数5】
【0057】
4Phaseチョッパー駆動の1例を示すと、Phase1にて電極1から電極3にホール駆動電流を流し、電極2−電極4を差動増幅器に接続、Phase2にて電極2から電極4にホール駆動電流を流し、電極3−電極1を差動増幅器14に接続、Phase3にて電極3から電極1にホール駆動電流を流し、電極4−電極2を差動増幅器24に接続、Phase4にて電極4から電極2にホール駆動電流を流し、電極1−電極3を差動増幅器24に接続するという駆動手順になる。
【0058】
差動増幅器24は、ホール素子21の出力の差分を増幅(α倍)するものである。積分器25は、チョッパー駆動に同期して動く積分器であり、各Phaseの差増増幅器24の出力を加算するものである。
温度センサ26は、シリコン基板上の温度を測定するセンサであり、ADC27は、温度センサ26の出力信号Tをデジタル信号に変化するものである。温度比例係数記憶部28は、ホール素子21の定電流感度の温度比例係数を記憶するものであり、磁気感度記憶部29は、ホール素子21の定電流感度の絶対値(1点温度)を記憶するものである。 補正信号生成部30は、温度比例係数記憶部28から得られる信号β、磁気感度記憶部29から得られる信号SI(25)及び温度センサ26から得られる信号Tを用いてホール素子21の出力の補正信号β(T)を生成するものである。信号補正部31は、補正信号生成部30から得られるβ(T)を用いて、ホール素子21の出力信号を補正するものである。
【0059】
また、線形補正磁気センサ(後述する実施例1の信号補正方法に相当する)は、補正信号生成部30が、第1の温度25℃において測定された第1の定電流感度SI25と第2の温度150℃において測定された第2の定電流感度SI150とから算出された傾きβに基づいて補正係数β(T)を生成する。
また、3点補正磁気センサ(後述する実施例2の信号補正方法に相当する)は、補正信号生成部30が、第1の温度25℃において測定された第1の定電流感度SI25と、第2の温度150℃において測定された第2の定電流感度SI150と、第3の温度−40℃において測定された第3の定電流感度SI−40とから算出された第1の傾きβ1及び第2の傾きβ2に基づいて補正係数β(T)を生成する。
【0060】
また、2フェーズ駆動磁気センサ(後述する実施例3の信号補正方法に相当する)としては、チョッパースイッチ部23が2フェーズ駆動される。
また、傾き補正磁気センサ(後述する実施例4の信号補正方法に相当する)は、補正信号生成部30が、第1の温度25℃において測定された第1の定電流感度SI25と第2の温度150℃において測定された第2の定電流感度SI150とから算出された傾きβを予め決定しておき、第1の温度25℃において測定された第1の定電流感度SI25と予め決定された傾きβとに基づいて補正係数β(T)を生成する。
【0061】
図6は、図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示す図である。本発明の磁気センサの信号補正方法は、図2に示したホール素子を備えている磁気センサの信号補正方法である。
ホール素子21の各電極間のホール駆動電流をチョッパースイッチ部23により切替操作するステップS101と、チョッパースイッチ部23からの出力の差分を差動増幅器24により増幅するステップS102と、チョッパースイッチ部23のチョッパー駆動に同期して動作し、差動増幅器24の出力を積分器25により加算するステップS103を有している。
【0062】
また、ホール素子が搭載されている基板上の温度を温度センサ26により測定するステップS104と、ホール素子21の定電流感度の温度比例係数を温度比例係数記憶部28により記憶するステップS105と、ホール素子21の定電流感度の絶対値を磁気感度記憶部29により記憶するステップS106とを有している。
また、温度比例係数記憶部28から得られる信号βと磁気感度記憶部29から得られる信号SI25と温度センサ26から得られる信号Tとを用いてホール素子21の出力の補正信号β(T)を補正信号生成部30により生成するステップS107と、補正信号生成部30から得られる信号β(T)を用いてホール素子21の出力信号を信号補正部31により補正するステップS108とを有している。
【0063】
以下に説明する各信号補正方法としては、なるべく簡易であるほど回路規模も小さく、EEPROMも少なくてすみ、コストを抑えることができる。なお、以下に説明する信号補正は、ホール起電力に基づく物理量を補正することも含むものとする。つまり、このホール起電力に基づく物理量とは、ホール起電力信号V、定電流感度SI(T)、ホール駆動電流I、磁場B及び各物理量に比例した量を含むことができるものである。
【実施例1】
【0064】
図7は、図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例1を説明するためのフローチャートを示す図で、補正係数の決定と補正の流れを示している。本実施例1では、出荷前検査にて、25℃と150℃で定電流感度を測定し、2点直線近似を行って補正する方法を採用する。また、本実施例1における磁気センサの信号補正方法は、出荷前のテスト(出力検査)を行う工程(A)と磁場測定時に実行する工程(B)とがある。
【0065】
出荷前のテストを行う工程(A)は、まず、第1の温度25℃の第1の定電流感度SI25を測定する(ステップS1)。次に、第2の温度150℃の第2の定電流感度SI150を測定する(ステップS2)。次に、第1の定電流感度SI25と第2の定電流感度SI150とから傾きβを算出する(ステップS3)。次に、傾きβを温度比例係数記憶部28に記憶する(ステップS4)。次に、第1の定電流感度SI25を磁気感度記憶部29に記憶する(ステップS5)。
【0066】
磁場測定時に実行する工程(B)は、まず、温度センサ26で温度Tを測定する(ステップS6)。次に、温度TをAD変換する(ステップS7)。次に、補正信号生成部30で補正係数β(T)を生成する(ステップS8)。次に、補正係数β(T)を用いて信号補正部31でホール素子21の出力信号を補正する(ステップS9)。
つまり、磁場測定時に実行する工程(B)においては、温度センサ26の出力と、ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、補正信号生成部30でホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、次に、補正信号を用いて信号補正部31でホール素子の出力信号を補正するステップとを有している。
また、25℃と150℃の定電流感度からβは、数式(6)のように算出することができる。
【0067】
【数6】
【0068】
また、補正信号生成部30で生成するβ(T)は、数式(7)で求めることができる。さらに、出力信号であるF(B)は、数式(8)で求めることができる。
【数7】
【0069】
【数8】
【0070】
仮に、定電流感度の温度特性が、温度に対して線形だった場合、出力信号F(B)は、数式(9)のように、磁場Bに比例した値かつ定電流感度に依存しない値になる。ゆえに、ホール素子の定電流感度SIのバラツキによらずに、精度良く磁場Bを算出することができる。
【数9】
【0071】
なお、上記数式(7)〜(9)では、温度25℃を基準として、β(T)、S(T)、SI(T)、F(B)を算出しているが、25℃に限らず任意の温度を基準の温度としてよい。
n型不純物濃度の異なるホール素子を用いて、図5に示したブロック構成図及び図7に示した信号補正方法を実施し、補正残り誤差を求めた結果が図8である。なお、図8で用いたホール素子の分布深さDは10μm以上である。
【0072】
図8は、n型不純物濃度に対する補正残り誤差の関係を示す図である。
現在、高精度な磁気センサとして市販されているものは、補正残り誤差が1.8〜2.0%程度である。今後、より高精度な磁気センサに求められる補正残り誤差は1.0%程度となると考えられる。図8に示す結果から、図5に示したブロック構成図及び図7に示した信号補正方法を用いて、磁場Bを算出したときの結果が誤差1%以下となるのは、n型不純物濃度が3.0×1014<N<1.0×1016(atoms/cm)の時であることが分かる。つまり、n型不純物濃度が3.0×1014<N<1.0×1016(atoms/cm)の領域のホール素子の磁気感度は、温度に対して線形性が強い。
【0073】
n型不純物濃度1.0×1016(atoms/cm)以上のホール素子を用いて誤差を1%以下にする必要がある場合、直線近似では補正残り誤差が大きいため、上述した特許文献3に示すような、多温度で出荷前に測定を行い、多数の温度領域の折れ線近似といった補正が必要になる。多温度での出荷前測定はテストコストの増加につながり、多数の温度領域の折れ線近似は回路規模の増加につながる。
【0074】
ここでn型不純物濃度を3.0×1014<N<1.0×1016(atoms/cm)とすることで、ホール素子の磁気感度が、温度に対して線形性が強くなる理由を説明する。ホール素子の磁気感度は、数式(10)で表すことができる。
【数10】
【0075】
Gは形状ファクターと呼ばれ、ホール素子のレイアウトで決まるパラメータである。γH(T)はホール散乱係数、d(T)はホール素子の実効的な厚み、n(T)は伝導帯のキャリア密度、qは電子の電荷である。ホール素子の磁気感度が2次特性を示す理由は、伝導帯のキャリア密度n(T)が2次特性を示すためであるが、n型不純物濃度を薄くすることによって、n(T)の影響を小さくするが出来る。n型不純物濃度を薄くするとn(T)の影響が小さくなり、ホール散乱係数γH(T)の影響が支配的となる。ホール散乱係数γH(T)は線形性が強いため、結果、n型不純物濃度を薄くすることによって、ホール素子の磁気感度の線形性を向上することができる。
【0076】
n型不純物濃度を3.0×1014<N<1.0×1016(atoms/cm)とすることで、補正残り誤差が1.0%になることを示した。しかし、n型不純物濃度を低濃度にすることで、空乏層の影響が大きくなる。ホール素子は、n型不純物領域の周りをp型不純物領域で囲む構造のため、感磁部の周囲各方向にnp接続領域があり、空乏層が発生する。空乏層は濃度の薄い領域に広がるため、感磁部のn型不純物濃度を薄くすることで、空乏層影響が大きくなる。
【0077】
図9は、ホール素子の動作時の概略断面図で、n型不純物領域における分布深さと空乏層との関係を示す図である。図中符号4は空乏層を示している。特に、図9に示したn型不純物領域2の深い部分の影響が大きい。定電流感度は、式(10)で示している通り、図9に示したホール厚dに逆比例する。ホール厚dは、n型不純物濃度の分布深さDから空乏層4の厚みを引いた部分となる。つまり、空乏層4が大きくなれば、ホール厚dは小さくなり、空乏層4が小さくなると、ホール厚dが大きくなる。
【0078】
駆動方法によっても、空乏層4の影響は異なるが、最も一般的に使用される駆動方法である図1を用いた場合を考える。温度が上がると、ホール素子の抵抗値は上がる。図1の定電流駆動の場合、ホール素子の抵抗値が上がるにつれて、図1のB点の電位は下がる。
ホール素子の感磁部の平均電位は、図1のA点とB点の電位の平均と考えればよいため、温度が上がるにつれて、感磁部の平均電位は下がることになる。空乏層4は、np接続領域に発生し、空乏層4の幅はn領域の電位とp領域の電位の差で決まる。
【0079】
図9に示したn型不純物領域2の深い部分の場合、p領域はSi基板の電位であり、温度によらずGND(0V)である。n領域は感磁部の平均電位であり、温度によって変化する。つまり、n領域の電位とp領域の電位の差が温度によって変化するため、空乏層4の幅も温度によって変化する。空乏層4の幅が温度によって変化するため、ホール厚dも温度によって変化する。ゆえに、定電流感度もホール厚dの温度依存性の影響を受ける。
【0080】
仮に、十分にn型不純物領域2の分布深さDが大きい場合、空乏層4の幅が変化してもホール厚dはほとんど影響を受けることはないが、分布深さDが小さい場合、空乏層4の変化によってホール厚dが変化し、定電流感度の温度に対する線形性を低下させる要因となる。
仕様の温度範囲が−40〜150℃である製品の温度補正を、2点の線形近似で行う場合、一般的に2種類あり、−40℃と150℃の2点を測定して線形近似する場合と、室温付近である25℃と150℃の2点を測定して線形近似する場合である。−40℃と150℃の2点を測定して線形近似したほうが、仕様の温度全範囲の高精度な磁場検出を実現できる。一方、25℃と150℃の2点を測定して線形近似したほうが、冷却が不要なため低コストになる。
【0081】
−40℃と150℃の2点を測定して線形近似したときに、補正残り誤差が1%以下となる領域を求めた。その領域は数式(11)で表される。この範囲にn型不純物領域の濃度Nと分布深さDをすることで、線形近似によって、高精度な磁場の検出を実現することができる。
【0082】
【数11】
【0083】
さらに、25℃と150℃の2点を測定して線形近似したときに、補正残り誤差が1%以下となる領域を求めた。その領域は数式(12)で表される。この範囲にn型不純物領域の濃度Nと分布深さDをすることで、線形近似によって、高精度な磁場の検出を実現することができる。数式(12)の領域は、数式(11)の領域に比べて小さい。数式(12)の領域にすることで、より低コストに高精度な磁場の検出を実現することができる。
【0084】
【数12】
【0085】
上述した範囲の中と外の結果の具体例を示す(例6;表1〜表19)。
図10は、分布深さDとn型不純物領域濃度Nとの関係を示す図である。表1〜表19に示したa〜sの不純物濃度N及び分布深さDは、図10中のa〜sに対応する。表1〜表19の1列目が温度、2列目が補正前の定電流感度(25℃規格化)、3列目が−40度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から得られる定電流感度の温度比例係数を用いて補正前の定電流感度を補正した後の定電流感度、4列目が25度と150度の2温度で磁気感度を測定した結果から得られる定電流感度の温度比例係数を用いて補正前の定電流感度を補正した後の定電流感度である。
【0086】
なお、表1〜表19中の濃度Nは不純物濃度Nを示し、深さDは分布深さDを示す。
一番下の行は、補正残り誤差を±0%の形で計算した結果となる。
例えば、表1の場合、4列目(25度〜150度線形近似)の最大の磁気感度SIMAXは1.004であり、最小の磁気感度SIMINは0.962である。
従って、補正残り誤差Eは(1.004−0.962)/2となる。
【0087】
まず、a点は、図10からも分かるように、本発明の範囲外の点となる。実際、補正残り誤差を計算すると、±1%以上となっている。同じ濃度Nで、深さを倍にした点がb点となる。−40〜150℃で線形近似した場合、25〜150℃で線形近似した場合、共に±1%以下となっている。
次に、c点〜e点は、同じ濃度Nで、分布深さDを変えたときの結果であり、c点は範囲外、d点は数式(11)の範囲内、e点は数式(12)の範囲内である。補正残り誤差は、c点では±1%以上、d点では−40〜150℃で線形近似した場合±1%以下、e点では25〜150℃で線形近似した場合も±1%以下となっている。
【0088】
f点では、−40〜150℃で線形近似した場合、補正残り誤差が1%以下となっているが、25〜150℃で線形近似した場合、補正残り誤差が1%以上となっている。
次に、g点は本発明の範囲外の点となる。補正残り誤差を計算すると、±1%以上となっている。h点は補正残り誤差を計算すると、±1%以上となっていることがわかる。i点は、h点の濃度Nを少し濃くしたものである。補正残り誤差を計算すると、−40〜150℃で線形近似した場合に、±1%以下となっている。j点は補正残り誤差を計算すると、−40〜150℃で線形近似した場合、25〜150℃で線形近似した場合、共に±1%以下となっていることがわかる。
【0089】
k点及びL点は、最も分布深さDが大きく、濃度が薄い領域における本発明内(L)外(k)の点となっていることがわかる。
m〜o点は、本発明範囲内の濃度Nが濃い側の点となる。表13〜15に示したとおり、補正残り誤差が±1%以下となっている。
さらに、p〜s点は、本発明外の濃度Nが濃い側の点となる。表16〜表19に示したとおり、補正残り誤差は±1%よりより大きい。
【0090】
以上の結果のように、数式(11)及び数式(12)の範囲内と外で、線形近似した後の補正残り誤差に差が生まれていることがわかる。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
【表10】
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】
【0103】
【表13】
【0104】
【表14】
【0105】
【表15】
【0106】
【表16】
【0107】
【表17】
【0108】
【表18】
【0109】
【表19】
【0110】
上記で説明したように、n型不純物領域とp型不純物領域が接する部分の空乏層影響は小さい方が好ましい。同様に、ホール素子表面における空乏層影響も小さい、もしくは空乏層がないほうが望ましい。
図11は、ホール素子の動作時の概略断面図である。図11に示すように、ホール素子の表面には、さらに上の層との絶縁のためにカバー層が設けられる。ホール厚dの値をなるべく大きくするためには、このカバー層とn型不純物領域の接続部分では空乏層影響が小さいことが求められる。そのため、カバー層としてはシリコン酸化物であることが望ましい。シリコン酸化物以外でも絶縁さえできればカバー層としての目的は達せられるが、空乏層が発生するとホール厚dは小さくなる。カバー層とn型不純物領域の接続部分に大きな空乏層が発生する場合、空乏層がない時と同じホール厚dにするためには、分布深さDを大きな値にする必要がある。そのため、空乏層が発生しないシリコン酸化物が、ホール素子のカバー層として望ましい。
【0111】
また、n型不純物領域は一般的に、エピタキシャル成長、もしくはシリコン基板に打ち込んだインプラントの熱拡散によって形成される。両方法ともに、分布深さDを大きな値とするには、製造時間を長くする必要がある。
インプラントの熱拡散は、インプラントの種類と加熱温度および加熱時間で決まる。インプラントの種類は、n型不純物としてはP(リン)が一般的ではあるが、ドナーとなる材料であればこれに限らない。一般的な製造方法を用いた場合、加熱時間を1500分程度にすると分布深さは15μm程度となる。
【0112】
加熱時間を長くすることによって、分布深さを深くすることが可能となるが、製造時間の観点から、加熱時間は1500分以下とすることが好ましく、分布深さは15μm以下とすることが好ましい。製造時間の観点から、分布深さDは10μm以下であることが好ましく、9μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、7μm以下であることが特に好ましい。また、分布深さDは6μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0113】
また、n型不純物領域とp型不純物領域の間に発生する空乏層が磁気感度に与える影響を小さくするためにも、分布深さDは3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。
また、ホール素子の周囲のp型不純物領域に使用されるp型不純物としては、B(ボロン)が一般的であるが、アクセプターとなる材料であればこれに限らない。p型不純物領域の不純物濃度については特に限定は無く、一般的な不純物濃度である1.0×1014(atoms/cm)以上1.0×1021(atoms/cm)以下としておけばよい。
【0114】
以上の結果から、低コストで高精度な磁気センサを実現するには、数式(3)を満たすn型不純物濃度N及び分布深さDが望ましく、さらに、数式(4)を満たすn型不純物濃度N及び分布深さDはより望ましい。数式(3)と数式(4)で示される範囲を図示したものが、図4となる。図4に示した範囲で作製されたホール素子を、2点温度直線近似などの適切な補正をすることにより、高精度な磁場検出精度を持つ磁気センサを低コストで実現することが可能になる。
【実施例2】
【0115】
本実施例2は、n型不純物濃度Nと分布深さDの限定と多点補正を行うことで、従来のホール素子と多点補正と比較して、補正後の補正残り誤差を小さくすることができる。
上述した実施例1では、出荷前検査にて、2点直線近似を行って補正する方法を採用した。さらに、高精度な補正が必要な場合、出荷前検査にて、−40℃・25℃・150℃の3点温度で定電流感度を測定し、3点折れ線近似による補正を行うことが有効である。なお、本実施例2における磁気センサを説明するためのブロック構成図は、上述した実施例1と同様である。
【0116】
図12は、図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例2を説明するためのフローチャートを示す図で、出荷前検査から補正の流れを示している。本実施例2における磁気センサの信号補正方法は、出荷前のテストを行う工程(A)と磁場測定時に実行する工程(B)とがある。
出荷前のテストを行う工程(A)は、まず、第1の温度25℃の第1の定電流感度SI25を測定する(ステップS11)。次に、第2の温度150℃の第2の定電流感度SI150を測定する(ステップS12)。次に、第3の温度−40℃の第3の定電流感度SI−40を測定する(ステップS13)。次に、第1の定電流感度SI25と第3の定電流感度SI−40とから傾きβ1を算出する(ステップS14)。次に、第1の定電流感度SI25と第2の定電流感度SI150とから傾きβ2を算出する(ステップS15)。次に、傾きβ1及び傾きβ2を温度比例係数記憶部28に記憶する(ステップS16)。次に、第1の定電流感度SI25を磁気感度記憶部29に記憶する(ステップS17)。
【0117】
磁場測定時に実行する工程(B)は、まず、温度センサ26で温度Tを測定する(ステップS18)。次に、温度TをAD変換する(ステップS19)。次に、補正信号生成部30で補正係数β(T)を生成する(ステップS20)。次に、補正係数β(T)を用いて信号補正部31でホール素子21の出力信号を補正する(ステップS21)。
つまり、磁場測定時に実行する工程(B)においては、まず、温度センサ26でホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップと、次に、温度センサ26の出力と、ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、補正信号生成部30でホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、次に、補正信号を用いて信号補正部31でホール素子の出力信号を補正するステップとを有している。
【0118】
つまり、図12の補正係数演算ブロックにて算出するβ及びβは、数式(12)で求めることができる。
【0119】
【数13】
【0120】
図13は、n型不純物濃度に対する補正残り誤差の関係を示す図で、3点折れ線近似で補正した後の補正残り誤差(3点折れ線近似誤差)を求めた結果を示している。n型不純物濃度Nが7.0×1014<N<1.0×1016(atoms/cm)の時、補正残り誤差を0.2%にまで小さくすることができる。
空乏層領域を考慮した場合の分布深さDの領域は、上述した実施例1と同じであるため、3点折れ線近似を用いて、高精度な磁場検出精度を持つ磁気センサを実現するには、数式(3)を満たすn型不純物濃度N及び分布深さDが望ましく、さらに、数式(4)を満たすn型不純物濃度N及び分布深さDはより望ましい。範囲を図示したものが上述した図4となる。
【0121】
また、定電流感度は、n型不純物濃度Nを薄くしていくと、低温における2次の温度特性が減少する変わりに、高温における2次の温度特性が相対的に見えやすくなる傾向がある。高温における2次の温度特性をさらに精度良く補正するためには、3点以上の多点補正とするとよりよい。n型不純物濃度Nが濃いときと比べて、数式(3)又は数式(4)に示したn型不純物濃度の範囲の場合、多点補正後の補正誤差は小さくなり、より高精度な磁気センサを実現することが可能になる。
【実施例3】
【0122】
上述した実施例1及び2においては、4Phaseチョッパー駆動の例を示したが、本実施例3では、2Phaseチョッパー駆動の例を示している。この2Phaseチョッパー駆動にすると、残留オフセットが増加する。残留オフセットを低減できる分布深さDを規定(D≧4μm)したものである。
つまり、上述した実施例1及び実施例2では、4Phaseチョッパー駆動によってオフセットを動的に除去した例を示したが、電流センサなどの高速応答性が求められる場合に2Phaseチョッパー駆動が用いられる。2Phaseチョッパー駆動は、4Phaseチョッパー駆動と比較して1サイクルの測定時間が短いため、応答性に優れている。
【0123】
2Phaseチョッパー駆動の1例を示すと、Phase1にて電極1から電極3にホール駆動電流を流し、電極2−電極4を差動増幅器に接続、Phase2にて電極2から電極4にホール駆動電流を流し、電極3−電極1を差動増幅器に接続するという駆動手順になる。
【0124】
【数14】
【0125】
2Phaseチョッパー駆動でもオフセットを除去することはできるが、オフセットの除去効果は4Phaseチョッパー駆動と比較すると劣る。2Phaseチョッパー駆動後に残る残留オフセットを低減する方法として、インプラの拡散時間を長くしn型不純物領域のインプラの均一性を上げる方法がある。インプラの拡散時間を長くすると、n型不純物領域の分布深さDは大きくなる。
【0126】
図14は、実施例3における分布深さと残留オフセットのバラツキとの関係を示す図である。分布深さD4μm以下において、2Phaseチョッパー時の残留オフセットのバラツキが急激に増加していることがわかる。そのため、2Phaseチョッパー駆動時は、数式(15)を満たすn型不純物濃度及び分布深さにすることが望ましい。
図15は、分布深さとn型不純物領域濃度との関係を示す図で、数式(15)に示す範囲を図示した図である。
【0127】
【数15】
【実施例4】
【0128】
上述した実施例1においては、2点線形補正(傾きβをサンプルごとに算出)するものであったが、本実施例4は、1点補正+定電流感度の温度に対する傾きβの代表値で補正(サンプルごとに算出するのは1点のみ)するものである。本実施例4は、上述した実施例1に比べて磁場検出精度は劣るが、低コストが実現できる。
従来のホール素子のn型不純物濃度と分布深さでは、傾きβの代表値で補正すると、補正残り誤差が大きかったが、本発明のホール素子の範囲の場合、傾きβの代表値で補正しても補正残り誤差が大きくない。
【0129】
また、n型不純物濃度N及び分布深さDを数式(3)又は数式(4)の範囲にすることで、1点温度の絶対値補正のみで高精度な磁気センサを実現することも可能となる。なお、本実施例4における磁気センサを説明するためのブロック構成図は、上述した実施例1及び実施例2と同様である。
図16は、図5に示した本発明に係る磁気センサの信号補正方法の実施例4を説明するためのフローチャートを示す図である。本実施例4における磁気センサの信号補正方法は、予め製品の流し込み測定を行い、定電流感度の温度に対する傾きβを決定する工程(A)と各サンプルにおける出荷前のテストを行う工程(B)と磁場測定時に実行する工程(C)とがある。
【0130】
出荷前のテストを行う工程(A)は、まず、第1の温度25℃の第1の定電流感度SI25を測定する(ステップS31)。次に、第2の温度150℃の第2の定電流感度SI150を測定する(ステップS32)。次に、第1の定電流感度SI25と第2の定電流感度SI150とから定電流感度の温度に対する傾きβを算出する(ステップS33)。
各サンプルにおける出荷前のテストを行う工程(B)は、まず、第1の温度25℃の第1の定電流感度SI25を測定する(ステップS34)。次に、第1の定電流感度SI25を磁気感度記憶部29に記憶する(ステップS35)。次に、流し込み測定で得た傾きβを温度比例係数記憶部28に記憶する(ステップS36)。
【0131】
磁場測定時に実行する工程(C)は、まず、温度センサ26で温度Tを測定する(ステップS37)。次に、温度TをAD変換する(ステップS38)。次に、補正信号生成部30で補正係数β(T)を演算する(ステップS39)。次に、補正係数β(T)を用いて信号補正部31でホール素子11の出力信号を補正する(ステップS40)。
つまり、磁場測定時に実行する工程においては、まず、温度センサ26でホール素子の温度特性に関する情報を取得するステップと、次に、温度センサ26の出力と、ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、補正信号生成部30でホール素子の出力を補正するための補正信号を生成するステップと、次に、補正信号を用いて信号補正部31でホール素子の出力信号を補正するステップとを有している。
【0132】
上述した実施例1では、各サンプルにおいて2点温度の定電流感度を測定し、定電流感度の温度に対する傾きβを算出していたのに対し、本実施例4では、定電流感度の温度に対する傾きβを流し込み結果の代表値を用いて補正する。この場合、βを算出するために、事前の流し込みを行う必要はあるが、各サンプルにおいては1点温度の定電流感度の測定を行うだけでよいため、テストコストを下げることができる。上述した実施例1と比較して、定電流感度の温度に対する傾きβの精度は劣るが、n型不純物濃度N及び分布深さDを数式(3)又は数式(4)の範囲にすることで、傾きβの精度劣化を抑えることができる。
【0133】
図17は、n型不純物濃度に対する定電流感度の温度特性バラツキの関係を示す図である。各サンプルでβを算出したときと比較して、流し込み結果の代表値βを用いて補正すると精度がどの程度劣化するかを求めた結果を示している。図17の結果から分かるように、n型不純物濃度が1.0×1016(atoms/cm)以上の領域では、急激に精度の劣化が起きるのに対し、n型不純物濃度が1.0×1016(atoms/cm)未満の領域では、精度の劣化が抑えられることがわかる。
【0134】
つまり、従来では、上述した特許文献3のように、定電流感度の温度特性を多点折れ線近似して精度を確保していたが、n型不純物濃度N及び分布深さDを数式(3)又は数式(4)の範囲にすることで、事前の流し込みによる定電流感度の温度に対する傾きの算出と1点温度の定電流感度の測定のみで精度を確保することが可能になり、低コストで高精度な磁場検出精度を持つ磁気センサを実現することができる。
【0135】
なお、上述した実施例1〜4においては、積分器15の後段で補正を行っていたが、積分器15の前段で補正を行ってもよい。また、補正をするための信号を磁気センサICの外部に出力し、IC外部で補正演算を行ってもよい。さらに、磁場Bに比例する信号に対して、補正計算を行えばよいため、定電流感度SIに対して補正、ホール素子の駆動電流Iに対して補正、磁場強度Bに対して補正、磁場強度Bに比例した信号XBに対して補正を行ってもよい。つまり、ホール起電力に基づく物理量を補正をも含むもので、このホール起電力に基づく物理量とは、ホール起電力信号VH、定電流感度SI(T)、ホール駆動電流IH、磁場B及び各物理量に比例した量を含むことができるものである。
【0136】
上述したように、本発明のホール素子を用いることにより、p型不純物領域と、p型不純物領域上に設けられ、感磁部として機能するn型不純物領域とを備えるホール素子と、2点以上5点以下の温度において測定されたホール素子の出力から算出されたホール素子の温度特性に関する情報が記憶された温度特性記憶部と、温度センサの出力と、ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成する補正信号生成部と、補正信号生成部が生成する補正信号と、ホール素子の出力信号とが入力され、補正信号に基づいてホール素子の出力信号を補正し、補正したホール素子の出力信号を出力する信号補正部とを備えている磁気センサであって、所定の大きさ、かつ所定の方向の磁場を25度の温度環境下で磁気センサに印加した時に信号補正部から出力される信号が示す値をV25、所定の大きさ且つ所定の方向の磁場を−40度から150度の温度環境下にわたって磁気センサに印加した時に信号補正部から出力される信号が示す値のうち、最も大きい値をVMAX、最も小さい値をVMINとした時の、E=((VMAX/V25)−(VMIN/V25))/2で表される補正残り誤差Eが1.0%以下であることを特徴とする磁気センサを提供することが可能となる。
【0137】
また、p型不純物領域と、p型不純物領域上に設けられ、感磁部として機能するn型不純物領域とを備えるホール素子と、2点以上3点以下の温度において測定されたホール素子の出力から算出されたホール素子の温度特性に関する情報が記憶された温度特性記憶部と、温度センサの出力と、ホール素子の温度特性に関する情報とに基づき、ホール素子の出力を補正するための補正信号を生成する補正信号生成部と、補正信号生成部が生成する補正信号と、ホール素子の出力信号とが入力され、補正信号に基づいてホール素子の出力信号を補正し、補正したホール素子の出力信号を出力する信号補正部とを備えている磁気センサであって、所定の大きさ、かつ所定の方向の磁場を25度の温度環境下で磁気センサに印加した時に信号補正部から出力される信号が示す値をV25、所定の大きさ且つ所定の方向の磁場を25度から150度の温度環境下にわたって磁気センサに印加した時に信号補正部から出力される信号が示す値のうち、最も大きい値をVMAX、最も小さい値をVMINとした時の、E=((VMAX/V25)−(VMIN/V25))/2で表される補正残り誤差Eが1.0%以下であることを特徴とする磁気センサを提供することが可能となる。
【0138】
なお、上述の実施形態ではホール素子の温度特性に関する情報を2点又は3点の温度で測定されたホール素子の出力から算出する例を中心に説明したが、これに限るものではなく、ホール素子の温度特性に関する情報は、4点以上の温度で測定されたホール素子の出力から算出されてもよい。ただし、ホール素子の温度特性に関する情報を算出するためにかかる工数の関係上、ホール素子の温度特性に関する情報は、5点以下の温度で測定されたホール素子の出力から算出されることが好ましく、4点以下の温度で測定されたホール素子の出力から算出されることが更に好ましく、3点以下の温度で測定されたホール素子の出力から算出されることが特に好ましい。
【0139】
また、上述の実施形態では温度比例係数βを2点又は3点の温度で測定されたホール素子の磁気感度から算出する例を中心に説明したが、温度比例係数βは4点以上の温度で測定されたホール素子の磁気感度から算出されてもよい。ただし、温度比例係数βを算出するためにかかる工数の関係上、温度比例係数βは5点以下の温度で測定されたホール素子の磁気感度から算出されることが好ましく、4点以下の温度で測定されたホール素子の磁気感度から算出されることが更に好ましく、3点以下の温度で測定されたホール素子の磁気感度から算出されることが特に好ましい。
【0140】
上述したように、本発明によれば、ホール素子の感磁部であるn型不純物領域の濃度及び深さを適切な範囲に限定することにより、高精度な磁場強度の検出を温度特性の直線性の向上を図ることによってホール素子及びそれを備えた磁気センサ並びにその信号補正方法が実現できる。
【符号の説明】
【0141】
1 p型不純物領域
2 n型不純物領域(感磁部)
3 電極部
4 空乏層
21 ホール素子
22 ホール駆動電流源
23 チョッパースイッチ部
24 差動増幅器
25 積分器
26 温度センサ
27 アナログデジタル変換器(ADC)
28 温度比例係数記憶部(EEPROM)
29 磁気感度記憶部(EEPROM)
30 補正信号生成部
31 信号補正部
32 温度特性記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17