(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板上に形成される、前記ソース電極に接続される配線層、前記ドレイン電極に接続される配線層、および、前記ゲート電極に接続される配線層の少なくとも1つを有する請求項1に記載のトランジスタ。
前記ソース電極と前記ゲート電極との対面する面はそれぞれ、複数の凹凸を形成されてなり、一方の面の凹部と他方の面の凸部とが対面するように配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のトランジスタ。
前記ドレイン電極と前記ゲート電極との対面する面はそれぞれ、複数の凹凸を形成されてなり、一方の面の凹部と他方の面の凸部とが対面するように配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のトランジスタ。
前記基板の面方向であって、前記ソース電極、前記ゲート電極、および、前記ドレイン電極の配列方向に直交する方向から見た際に、前記一方の面の凸部と、前記他方の面の凸部との一部が重複している請求項4または5に記載のトランジスタ。
前記電極形成工程において、前記ソース電極に接続される配線層、前記ドレイン電極に接続される配線層、および、前記ゲート電極に接続される配線層の少なくとも1つを前記基板上に形成する請求項11または12に記載のトランジスタの製造方法。
前記電極形成工程は、グラビア印刷、スクリーン印刷、および、インクジェットのいずれかにより、前記ソース電極、前記ゲート電極、および、前記ドレイン電極の形成を行う請求項11〜13のいずれか1項に記載のトランジスタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT(thin film transistor))は、ディスプレイ、固体撮像素子、トランジスタ回路、RFID(radio frequency identifier)などで利用されている。特に、塗布型の半導体を使ったTFTは、プリンテッド工程と併用することで、大面積なTFTを安価に作製できることが期待されている。
【0003】
TFTの構造は、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極との配置位置によって様々な方式がある。特に、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極との両方が半導体層の下層に配置されるボトムゲート・ボトムコンタクト構造は、電極や絶縁膜の形成を先に基板上に行うことができるので、高温プロセスや溶液プロセスが半導体に及んで特性を劣化させることがなく、生産性の高い構造となっている。
【0004】
従来のボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFTは、以下のようなプロセスで作製される。
まず、平滑な基板上に、ゲート電極を形成する。ゲート電極は、銀・金・アルミニウム等の低抵抗金属を成膜し、さらに、フォトレジストを塗布・露光・現像してパターンを形成し、エッチングによって不要な金属を除去する、フォトリソグラフィによって、所望のパターンの電極として形成することができる。また、フォトレジストを使わずに、直接、レーザを不要部分に照射して、アブレーションにより不要な金属を除去して所望のパターンのゲート電極を形成することもできる。あるいは、特許文献1に記載されるように、銀ナノインクのような液状の導電材料を印刷により所望のパターンに形成し、熱処理などでゲート電極を形成することもできる。
【0005】
次に、ゲート電極が形成された基板上に絶縁膜を形成する。絶縁膜は、SiOxやAlOxなどの無機材料の緻密な膜であり、スパッタリング、CVD(化学気相成長)法、ALD(原子層堆積)法といった気相成膜で形成することができる。あるいは、絶縁膜は、有機材料を塗布や印刷により基板上に付着させて、これを光や熱により硬化させて形成することもできる。
また、複数のTFTによって回路を形成する場合には、ある素子のゲート電極を、他の素子のソース電極あるいはドレイン電極に接続させるために、絶縁膜にスルーホールが必要となる。スルーホールは、全面に形成された絶縁膜をフォトリソグラフィやレーザアブレーションによって形成することができる。あるいは、感光性の絶縁膜を形成し、露光によりパターニングすることも可能であり、露光された部分が溶解するネガ型、その逆のポジ型のどちらも利用することができる。
【0006】
さらに、絶縁膜の上に、ソース電極とドレイン電極を形成する。形成方法はゲート電極と同様の方法で行うことができる。ソース電極あるいはドレイン電極と、ゲート電極とを接続して回路を作製する場合には、ソース電極とドレイン電極を形成する工程でゲート電極との接続配線を形成することで、工程数を低減でき、好ましい。
その後、形成した電極の上に半導体を形成、パターニングし、必要に応じて保護膜などを形成してTFTが作製される。
【0007】
このように、従来のボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFTの作製における電極の形成は、(1)ゲート電極の形成、(2)絶縁膜の形成、(3)ソース・ドレイン電極の形成の3ステップを行うことが一般的である。
【0008】
また、特許文献2には、基板上に相互間に間隔を設けて配置され、各々台状平面を形成する一対の絶縁性の台座と、一方の台状平面上に設けられたソース電極と、他方の台状平面上に設けられたドレイン電極と、一対の台座の間の基板上に設けられたゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極の上面に接触させて配置された有機半導体層とを備え、ゲート電極と有機半導体層の下面とはギャップ領域を介在させて上下方向に対向する構成を有するエアギャップ型の有機トランジスタが開示されている。
このエアギャップ型の有機トランジスタは、ゲート電極と有機半導体層の下面との間に介在するギャップ領域(空間)を絶縁層として利用する構造である。
【0009】
このエアギャップ型の有機トランジスタにおいては、ゲート電極と、ソース・ドレイン電極の形成を一度に行うことができる。
具体的には、まず、ソース・ドレイン電極の土台となる絶縁性の台座を形成する。台座は、フォトレジストのように、露光によるパターニングや、印刷によって形成することができる。
次に、ソース・ドレイン電極と、ゲート電極とを真空蒸着によって、一度に形成する。ソース・ドレイン電極は台座の上に形成されるため、ゲート電極は表面高さが低い構造となる。
その後、形成したソース・ドレイン電極の上に、予め形成した半導体層を載置してTFTが作製される。
【0010】
このように、特許文献2に記載のエアギャップ型のTFTの作製における電極の形成は、(1)台座の形成、(2)電極の形成の2ステップを行うことが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
[トランジスタ]
本発明のトランジスタは、絶縁性を備える基板上に、ソース電極と、ゲート電極と、ドレイン電極とがこの順に配列されて、ゲート電極の高さがソース電極およびドレイン電極よりも低く形成され、ソース電極の上面およびドレイン電極の上面に接するように配置される半導体層を有するトランジスタである。
なお、本発明のトランジスタは、電界効果トランジスタであり、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT(thin film transistor))として好適に適用可能である。
次に、本発明のトランジスタの構成について、
図1を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明のトランジスタの好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
図1に示すように、薄膜トランジスタ(TFT)10は、基板12上と、ゲート電極14と、ソース電極16と、ドレイン電極18と、半導体層20とを有する。また、薄膜トランジスタ10は、ゲート電極14と、ソース電極16およびドレイン電極18とが、半導体層20の下層(基板12側)に形成される、いわゆるボトムゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタである。
【0022】
基板12は、各電極間、あるいは、電極と外部との絶縁を保つための絶縁性を備え、ゲート電極14、ソース電極16、ドレイン電極18等を支持する板状の支持体である。また、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18は、基板12の同一面上に形成される。
なお、本発明において、絶縁性を有する基板12とは、トランジスタ10に電圧を印加した際に、基板12に流れる電流が、半導体層20を流れる電流よりも3桁以上低い基板である。また、基板12は、各電極間、あるいは、電極と外部との絶縁を保つことができればよく、全てが絶縁体でなくてもよい。
【0023】
ソース電極16およびドレイン電極18は、高い導電性を有する部材であり、基板12上に所定の距離離間して形成されている。また、ソース電極16およびドレイン電極18は略同じ高さである。
ゲート電極14は、高い導電性を有する部材であり、基板12上の、ソース電極16とドレイン電極18との間に形成されている。また、基板12表面から、ゲート電極14の上面までの高さは、ソース電極16およびドレイン電極18の上面までの高さよりも低い。言い換えると、ゲート電極14の厚さはソース電極16およびドレイン電極18の厚さよりも薄い。
なお、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18の電極の高さとは、電極が形成される基板12表面の粗さ曲線の平均線から電極上面の粗さ曲線の平均線までの高さとする。
【0024】
ここで、ソース電極16とドレイン電極18との距離、すなわち、チャネル長は、1μm〜1000μmが好ましく、2μm〜500μmがより好ましく、4μm〜200μmが特に好ましい。
ソース電極16とドレイン電極18との距離が近すぎると、接触抵抗の影響が大きくなり、素子としての移動度が低下したり、作製時に高い精度が要求されるため、生産性が低下してしまう。従って、移動度低下の防止、生産性の観点から1μm以上とするのが好ましい。一方、ソース電極16とドレイン電極18との距離が遠すぎると、電極間の電流が減り、素子特性が低下してしまう。従って、素子特性の観点から1000μm以下とするのが好ましい。
【0025】
また、ソース電極16、ドレイン電極18、および、チャネル部となる半導体層20と、ゲート電極14との距離は、10nm〜10000nmが好ましく、100nm〜5000nmがより好ましく、200nm〜2000nmがさらに好ましい。
ソース電極16、ドレイン電極18あるいはチャネル部と、ゲート電極14との距離が近すぎると、短絡や放電による素子不良の可能性が高まったり、作製時に高い精度が要求されるため、生産性が低下してしまう。従って、素子不良の防止、生産性の観点から10nm以上とするのが好ましい。一方、ソース電極16、ドレイン電極18あるいはチャネル部と、ゲート電極14との距離が遠すぎると、高いゲート電圧が必要となり、消費電力が高くなってしまう、従って、消費電力の低減の観点から10000nm以下とするのが好ましい。
なお、以下の説明では、ゲート電極14、ソース電極16、ドレイン電極18を区別する必要が無い場合には、単に『電極』ともいう。
【0026】
半導体層20は、半導体からなる活性層である。
図1に示すように、半導体層20は、板状に形成されて、一方の端部をソース電極16の上面に、他方の端部をドレイン電極18の上面に載置されている。すなわち、半導体層20は、ゲート電極14よりも高さが高いソース電極16およびドレイン電極18の上に載置されているので、半導体層20とゲート電極14との間に空間を形成するように構成されている。この空間は、真空であってもよく、空気等のガスで満たされていてもよい。
このように構成される薄膜トランジスタ10は、ゲート電極14に電圧を印加して、半導体層20に流れる電流を制御し、ソース電極16とドレイン電極18間の電流をスイッチングする機能を有する素子である。
【0027】
前述のとおり、従来のボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFTにおいて、電極の形成は、ゲート電極の形成、絶縁膜の形成、ソース電極・ドレイン電極の形成の3ステップが必要であり、また、エアギャップ型のTFTにおいては、台座の形成、電極の形成の2ステップが必要であり、生産性の観点からより簡易な製造方法が求められていた。
また、これらの製造方法では、ゲート電極とソース電極・ドレイン電極との位置決めが、異なる工程で行われるため、ゲート電極とソース電極・ドレイン電極との位置精度が十分ではなく、各電極に接続される配線、あるいは、絶縁膜に形成されるスルーホールとの位置精度も悪くなり、信頼性の問題が生じたり、歩留まりが悪化するという問題があった。
【0028】
これに対して、本発明においては、ゲート電極14と、ソース電極16およびドレイン電極18とを基板12の同一面上に、高さを異ならせて配置する。そのため、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18を一度の工程で同時に形成することが可能となり、生産性を向上することができる。
また、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18を一度の工程で同時に形成することができるので、各電極の位置精度を容易に高くすることができる。従って、各電極に接続される配線を確実に接続することができ、信頼性を高くすることができると共に、歩留まりを良好にして生産性を向上できる。
【0029】
また、前述のとおり、エアギャップ型のTFTでは、ゲート電極は基板上に形成され、ソース電極およびドレイン電極は台座上に形成される。そのため、基板と電極、ならびに、台座と電極の2種類の密着を両立させる必要がある。しかしながら、台座と基板とでは、表面粗さや表面エネルギが異なるため、一方の密着性を高めると、他方の密着性が悪化するおそれがある。
これに対して、本発明においては、基板と電極との密着性の観点のみで適切な条件を選択することができるので、基板と各電極との密着性を最適化することができる。
以上のような本発明の基板の同一面上に電極を形成する構成の効果は、特許文献2に記載のエアギャップ型のTFTの構成から、当業者が容易に想起できるものではない。
【0030】
ここで、
図1に示す例では、半導体層20とゲート電極14との間に空間を形成する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、半導体層20とゲート電極14との間に絶縁層を形成する構成としてもよい。絶縁層としては、SiO
2、Al
2O
3等の従来公知の薄膜トランジスタで用いられる材料が各種利用可能である。
また、半導体層20とゲート電極14との間には、このような絶縁層と空間を有する構成であってもよい。
半導体層20とゲート電極14との間に、絶縁層と空間を有する構成とする場合には、ゲート電極14側に絶縁層を形成し、半導体層20側に空間を有する構成とするのが好ましい。これにより、ソース電極16とドレイン電極18との間を流れる電流が、半導体層20と空間との界面を流れるので、絶縁層に起因する移動度の低下を好適に防止できる。また、ゲート電極14と半導体層20との間での耐電圧を高くすることができ、絶縁破壊が発生するのを好適に防止できる。
【0031】
また、
図1に示す例では、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18を基板12の同一面上に形成する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、さらに、これらの電極に接続される配線層を基板12の同一面上に形成する構成としてもよい。
図2(A)は、本発明のトランジスタの他の一例を示す上面図であり、
図2(B)は、
図2(A)の薄膜トランジスタをa方向から見た側面図である。なお、
図2(A)および
図2(B)においては、半導体層20の図示は省略する。
なお、
図2(A)および
図2(B)に示す薄膜トランジスタ10は、さらに、配線層22、24および26を有する以外は、
図1の薄膜トランジスタ10と同様の構成を有するので、同じ部位には同じ符号を付し、以下の説明では異なる部位を主に行う。
【0032】
図2(A)および
図2(B)に示すように、薄膜トランジスタ10は、基板12と、ゲート電極14と、ソース電極16と、ドレイン電極18と、半導体層20(図示せず)と、3つの配線層22、24および26とを有する。
配線層22、24および26はそれぞれ、ゲート電極14、ソース電極16またはドレイン電極18の1つの側面から基板12の端辺まで延在する導電性の部材である。図示例においては、配線層22、24および26は、ゲート電極14と略同等の高さ(厚さ)を有する。
【0033】
このように、
図2(A)に示す薄膜トランジスタにおいては、配線層22、24および26がそれぞれ、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18に直接、接続され、また、これらの電極が形成される基板12の同一面上に形成される構成を有する。
このような構成により、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18と、これらの電極に接続される配線層22、24および26とを一度の工程で同時に形成することができるので、さらに、工程を削減でき生産性をより向上することができる。
また、各電極と配線層22、24および26とを一度の工程で同時に形成することができるので、電極と配線層との位置精度をより向上して、電極と配線層との接続をより確実にすることができ、信頼性を高くすることができる。また、これにより、歩留まりを良好にして生産性を向上できる。
特に、フレキシブルディスプレイに用いられる場合などの、フレキシブル性を求められる場合には、電極と配線との断線が生じやすいが、本発明の薄膜トランジスタは、配線層を電極が形成される基板12の同一面上に形成するので、フレキシブル性を付与した場合であっても、断線を好適に防止でき、信頼性をより高くすることができる。
【0034】
なお、
図2(A)に示す例においては、配線層22、24および26の高さは、ゲート電極14と略同等としたが、これに限定はされず、配線層としての機能を十分に発現する高さを有していればよい。導電性、信頼性、生産性等の観点から配線層22、24および26の高さは、ゲート電極14の高さ以下とするのが好ましい。
また、図示例においては、ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18それぞれに接続される3つの配線層22、24および26を有する構成としたが、これに限定はされず、ゲート電極に接続される配線層、ソース電極に接続される配線層およびドレイン電極に接続される配線層の少なくとも1つを電極が形成される基板12の同一面上に有する構成として、残りの電極にはボンディング等により配線を接続する構成としてもよい。
【0035】
また、同一基板上に複数の薄膜トランジスタを形成する場合には、異なる薄膜トランジスタの電極間を接続する配線層を、電極が形成される基板の同一面上に形成する構成としてもよい。
図3(A)は、本発明のトランジスタアレイの一例を概念的に示す上面図であり、
図3(B)は、
図3(A)の正面図である。なお、
図3(A)および
図3(B)においては、半導体層20の図示は省略する。
【0036】
図3(A)および
図3(B)に示すTFTアレイ30は、2つの薄膜トランジスタ10aおよび10bと、一方の薄膜トランジスタ10aのドレイン電極18aと、他方の薄膜トランジスタ10bのゲート電極14bとを接続する配線層32とを有する。また、薄膜トランジスタ10a、10bおよび配線層32は同一の基板12上に形成されている。言い換えると、TFTアレイ30は、薄膜トランジスタ10aの基板と、薄膜トランジスタ10bの基板とを一体化し、薄膜トランジスタ10aのドレイン電極18aに接続される配線層と、薄膜トランジスタ10bのゲート電極14bに接続される配線層とを接続した構成を有する。
【0037】
薄膜トランジスタ10aは、基板12上に形成されるゲート電極14a、ソース電極16aおよびドレイン電極18aと、半導体層20(図示せず)と、ゲート電極14aに接続される配線層22aと、ソース電極16aに接続される配線層24aとを有する。また、薄膜トランジスタ10bは、基板12上に形成されるゲート電極14b、ソース電極16bおよびドレイン電極18bと、半導体層20(図示せず)と、ソース電極16bに接続される配線層24bと、ドレイン電極18bに接続される配線層26bとを有する。
【0038】
配線層32は、薄膜トランジスタ10aのドレイン電極18aと、薄膜トランジスタ10bのゲート電極14bとを接続する、導電性の部材である。図示例においては、配線層32は、ゲート電極14bと略同等の高さ(厚さ)を有する。
配線層32の形状は、他の配線層と短絡しないように形成されれば特に限定はない。図示例においては、配線層32は、基板12面に垂直な方向から見た際に略C形状に形成されており、一方の開口端面が、ドレイン電極18aの、配線層22a、24a等が配置されている側の面とは反対側の面に接続されており、他方の開口端面が、ゲート電極14bの、配線層24b、26b等が配置されている側の面とは反対側の面に接続されている。
【0039】
このように、
図3(A)に示すTFTアレイ30においては、2つの薄膜トランジスタの各電極と、異なる薄膜トランジスタの電極間を接続する配線層32とが基板12の同一面上に形成される構成を有する。
このような構成により、2つの薄膜トランジスタの各ゲート電極14、ソース電極16およびドレイン電極18を一度の工程で同時に形成することができ、また、異なる薄膜トランジスタの電極間を接続する配線層32も一度の工程で同時に形成することができるので、工程を削減でき生産性をより向上することができる。
また、2つの薄膜トランジスタの各電極を一度の工程で同時に形成することができるので、2つの薄膜トランジスタ同士の位置精度を向上でき、また、これらの薄膜トランジスタの電極間を接続する配線層32も一度の工程で同時に形成することができるので、電極と配線層との位置精度をより向上して、電極と配線層との接続をより確実にすることができ、信頼性を高くすることができる。また、これにより、歩留まりを良好にして生産性を向上できる。
【0040】
なお、
図3(A)に示す例においては、2つの薄膜トランジスタを有する構成としたが、これに限定はされず、3以上の薄膜トランジスタを有してもよい。また、異なる薄膜トランジスタの電極間を接続する配線層を2以上有してもよい。
【0041】
また、
図1に示す例では、ゲート電極14とソース電極16の互いに対向する面、および、ゲート電極14とドレイン電極18の互いに対向する面は、平面としたが、これに限定はされない。
図4(A)は、本発明の薄膜トランジスタの他の一例を概念的に示す上面図であり、
図4(B)は、
図4(A)の正面図である。なお、
図4(A)および
図4(B)においては、半導体層の図示は省略する。
【0042】
図4(A)および
図4(B)に示す薄膜トランジスタ40は、基板12と、ゲート電極44と、ソース電極46と、ドレイン電極48と、半導体層20(図示せず)と、を有する。
ソース電極46およびドレイン電極48は、高い導電性を有する部材であり、基板12上に所定の距離離間して形成されている。また、ソース電極46およびドレイン電極48は略同じ高さである。
ゲート電極44は、高い導電性を有する部材であり、基板12上の、ソース電極46とドレイン電極48との間に形成されている。また、基板12表面から、ゲート電極44の上面までの高さは、ソース電極46およびドレイン電極48の上面までの高さよりも低い。
【0043】
ここで、
図4(A)および
図4(B)に示すように、ソース電極46の、ゲート電極44と対面する面、および、ドレイン電極48の、ゲート電極44と対面する面はそれぞれ、電極の配列方向に突出する凸部が複数、形成された凹凸面である。
また、ゲート電極44の、ソース電極46と対面する面およびドレイン電極48と対面する面はそれぞれ、ソース電極46の凹凸面、ドレイン電極48の凹凸面の凸部に対応して凹部が複数、形成された凹凸面である。
【0044】
また、
図4(A)に示す例では、好ましい態様として、ソース電極46の凹凸面の凸部の先端、および、ドレイン電極48の凹凸面の凸部の先端がそれぞれ、ゲート電極44の凹凸面の凹部の内側に位置するように配置されている。言い換えると、各電極は、基板12の面方向であって、ソース電極46、ゲート電極44、および、ドレイン電極48の配列方向に直交する方向から見た際に、ソース電極46またはドレイン電極48の凹凸面の凸部と、ゲート電極の凹凸面の凸部の一部が重複するように配置される。
【0045】
ここで、薄膜トランジスタは、ゲート電極に電圧をかけて電界で、ソース電極とドレイン電極との間の半導体層(活性層)に流れるキャリアを制御するものである。そのため、ゲート電極44とソース電極46との離間距離、および、ゲート電極44とドレイン電極48との離間距離が小さいほど、ソース電極46とドレイン電極48との間の十分な大きさの領域に電界を発生させることができ、スイッチング等の薄膜トランジスタとしての機能を確実に発現することができる点で好ましい。
そこで、
図4(A)のように、ゲート電極44とソース電極46の互いに対向する面、および、ゲート電極44とドレイン電極48の互いに対向する面を、複数の凹凸が形成された面とし、一方の面の凹部と他方の面の凸部とが対面するように配置することで、ゲート電極44とソース電極46との離間距離、および、ゲート電極44とドレイン電極48との離間距離を小さくしたのと同様の効果を得ることができる点で好ましい。
【0046】
次に、本発明のトランジスタの各構成要素について、材料、寸法等を説明する。
【0047】
〔基板〕
本発明の薄膜トランジスタの基板の材料、形状、大きさ、構造等には特に限定はなく、所望の絶縁性を有するものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。
基板の材料としては、ガラス、YSZ(Yttria−Stabilized Zirconia;イットリウム安定化ジルコニウム)等の無機材料、樹脂や樹脂複合材料等からなる基板を用いることができる。
中でも軽量である点、可撓性を有する点、光透過性を有する点等から樹脂あるいは樹脂複合材料からなる基板が好ましい。
具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、シアネート樹脂、架橋フマル酸ジエステル、環状ポリオレフィン、芳香族エーテル、マレイミドーオレフィン、セルロース、エピスルフィド化合物等の合成樹脂からなる基板、既述の合成樹脂等と酸化珪素粒子との複合プラスチック材料からなる基板、既述の合成樹脂等と金属ナノ粒子、無機酸化物ナノ粒子もしくは無機窒化物ナノ粒子等との複合プラスチック材料からなる基板、既述の合成樹脂等とカーボン繊維もしくはカーボンナノチューブとの複合プラスチック材料からなる基板、既述の合成樹脂等とガラスフェレーク、ガラスファイバーもしくはガラスビーズとの複合プラスチック材料からなる基板、既述の合成樹脂等と粘土鉱物もしくは雲母派生結晶構造を有する粒子との複合プラスチック材料からなる基板、薄いガラスと既述のいずれかの合成樹脂との間に少なくとも1回の接合界面を有する積層プラスチック基板、無機層と有機層(既述の合成樹脂)を交互に積層することで、少なくとも1回以上の接合界面を有するバリア性能を有する複合材料からなる基板、ステンレス基板またはステンレスと異種金属とを積層した金属多層基板、アルミニウム基板または表面に酸化処理(例えば陽極酸化処理)を施すことで表面の絶縁性を向上させた酸化皮膜付きのアルミニウム基板等を用いることができる。
【0048】
なお、樹脂基板としては、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、および低吸湿性に優れていることが好ましい。樹脂基板は、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層や、樹脂基板の平坦性や下部電極との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えていてもよい。
また、前述のとおり、基板の備える絶縁性は、各電極間、あるいは、電極と外部との絶縁を保つことができるものであればよい。従って、上述の絶縁性を備える材料と金属基板等を積層した構成であってもよい。
【0049】
基板の厚みは、50μm以上500μm以下であることが好ましい。基板の厚みが50μm以上であると、基板自体の平坦性がより向上する。基板の厚みが500μm以下であると、基板自体の可撓性がより向上し、フレキシブルデバイス用基板としての使用がより容易となる。基板を構成する材料によって、十分な平坦性および可撓性を有する厚みは異なるため、基板材料に応じてその厚みを設定する必要があるが、概ねその範囲は50μm以上500μm以下の範囲となる。
【0050】
〔ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極〕
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成材料は、いずれも高い導電性を有するものであれば特に制限なく、Ag、Au、Al、Cu、Pt、Pd、Zn、Sn、Cr、Mo、Ta、Ti、等の金属、Al−Nd、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物を用いることができる。なかでも、Ag、Au、Al、Cu、Pt、Pd、Zn、Sn、Crを用いるのが好ましい。
【0051】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極はいずれも、印刷、真空成膜、めっき、フォトリソグラフィ、レーザーパターニング等の方法により形成することができる。なかでも、印刷により形成するのが好ましい。
ここで、本発明における印刷とは、オフセット印刷、グラビア印刷、反転印刷、フレキソ印刷、活版印刷、スクリーン印刷など、種々の公知の印刷方法を含む。好ましくは、オフセット印刷、フレキソ印刷、反転印刷である。
印刷による形成の特徴は、基板上に一度の工程で電極のパターンを形成することができる点である。しかしながら、本発明はこれに限定はされず、印刷と他の方法とを組み合わせてもよい。例えば、めっきの核となるものを印刷により形成し、その後、めっきによりパターン化された電極を形成する方法や、全面にべたで印刷しておき、レーザ等で直接パターンを形成する方法であってもよい。
【0052】
印刷による電極の形成は、上記材料の微粒子を溶媒に分散した塗料(液状粘性材料)を、印刷により基板上に所定のパターンで塗布し、硬化させることで、各電極を形成することができる。
溶媒としては、特に限定はなく、上記材料を印刷に用いる場合に利用されている公知の溶媒を各種利用可能である。
電極の印刷方法については、後に詳述する。
【0053】
ソース電極およびドレイン電極の高さは、成膜性、パターニング性および導電性等を考慮すると、その高さは、10nm〜1000nmとすることが好ましく、50nm〜200nmとすることがより好ましい。
【0054】
また、ゲート電極の高さは、成膜性、パターニング性および導電性等を考慮すると、その厚みは、10nm〜1000nmとすることが好ましく、50nm〜200nmとすることがより好ましい。
【0055】
なお、
図1に示すように、本発明においては、ゲート電極の高さは、ソース電極およびドレイン電極の高さよりも低い。具体的には、ゲート電極の高さは、ソース電極およびドレイン電極の高さの0.1%〜50%であるのが好ましく、1%〜20%であるのがより好ましい。
ソース電極およびドレイン電極の高さとゲート電極の高さとの関係を上記範囲とすることにより、ゲート電極が半導体層に接触して素子として機能しなくなるのを好適に防止することができる。
【0056】
また、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極は、それぞれ異なる材料からなるものであってもよいが、同じ材料からなるものであるのが好ましい。各電極の材料として同じ材料を用いることで、容易に、一度の印刷で各電極を形成することができる。
【0057】
〔配線層〕
配線層の形成材料は、高い導電性を有するものであれば特に制限なく、上記の各電極の形成材料と同様の材料が利用可能である。なお、配線層の形成材料は、接続される電極と同じ材料であるのが好ましい。
また、配線層は、上記電極と同様に、印刷、真空成膜、めっき、フォトリソグラフィ、レーザーパターニング等により形成することができ、印刷により形成するのが好ましい。
【0058】
配線層の高さ(厚さ)は、成膜性、パターニング性および導電性等を考慮すると、10nm〜1000nmとすることが好ましく、50nm〜200nmとすることがより好ましい。
【0059】
〔半導体層〕
半導体層の形成材料は、特に限定はなく、従来公知の薄膜トランジスタで活性層として用いられている半導体が各種利用可能である。
具体的には、InGaZnO等の酸化物半導体、窒化物半導体、Si、Geなどの無機半導体、GaAs等の化合物半導体、カーボンナノチューブ、有機半導体等が利用可能である。
本発明においては、作製を容易にする観点から、印刷や塗布により形成可能であることが好ましく、有機半導体が好適に用いられる。
【0060】
有機半導体としては、テトラセンやペンタセンなどのアセン類、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン類、ペリレン誘導体、ルブレン、Alq3、TTF-TCNQなどの低分子系有機半導体、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の高分子系半導体を用いることができる。
【0061】
半導体層の形成方法には特に限定はないが、例えば、樹脂やガラス等からなる支持体上に、塗布、印刷等の公知の方法で、半導体層部材を形成し、この半導体層部材を支持体から剥離して、ソース電極およびドレイン電極の上面に載置することで半導体層を形成することができる。また、支持体上に半導体層部材を形成した後、半導体層部材を剥離することなく、半導体層部材側をソース電極およびドレイン電極側に向けて載置して形成してもよい。
【0062】
半導体層の厚さは、成膜性、半導体特性等を考慮すると、その厚さは、1nm〜1000nmとすることが好ましく、10nm〜200nmとすることがより好ましい。
【0063】
[トランジスタの製造方法]
次に、本発明のトランジスタの製造方法について説明する。
本発明のトランジスタの製造方法は、
絶縁性を備える基板を準備する基板準備工程と、
基板上に、ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極をこの順に配列して形成する電極形成工程と、
電極形成工程の後に、ソース電極の上面およびドレイン電極の上面に接するように半導体層を積層する半導体層積層工程と、を有し、
電極形成工程において、ゲート電極を、ソース電極およびドレイン電極よりも高さを低く形成する、トランジスタの製造方法である。
【0064】
また、本発明のトランジスタの製造方法は、好ましい態様として、電極形成工程において、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極を一度の印刷により形成するものである。
さらに、本発明のトランジスタの製造方法は、好ましい態様として、電極形成工程において、ソース電極に接続される配線層、ドレイン電極に接続される配線層、および、ゲート電極に接続される配線層の少なくとも1つを印刷により形成するものである。
【0065】
本発明においては、電極形成工程において、ソース電極、ゲート電極、および、ドレイン電極を、基板の同一面上に形成することにより、各電極の位置精度を高くすることができる。従って、電極に接続される配線とを確実に接続することができ、信頼性を高くすることができると共に、歩留まりを良好にして生産性を向上できる。
また、好ましい態様として、電極形成工程において、ソース電極、ゲート電極、ドレイン電極を一度の印刷で形成するので、位置精度を向上すると共に、工程数を削減して生産性を向上することができる。
また、好ましい態様として、電極形成工程において、電極に接続される配線層を、電極が形成される基板の同一面上に形成するので、電極と配線層との位置精度をより向上して、電極と配線層との接続をより確実にすることができ、信頼性を高くすることができる。また、これにより、歩留まりを良好にして生産性を向上できる。
また、電極と配線層とを一度の印刷で形成することで、位置精度を向上すると共に、さらに工程数を削減して生産性を向上することができる。
【0066】
次に、トランジスタの製造方法の各工程を
図5(A)〜
図5(C)を用いて説明する。
図5(A)〜
図5(C)は、トランジスタの製造方法の好適な実施態様の一例を示す模式的な断面図である。
【0067】
〔基板準備工程〕
まず、
図5(A)に示すように、基板準備工程において、絶縁性を備える基板12を準備する。
【0068】
〔電極形成工程〕
次に、
図5(B)に示すように、電極形成工程において、基板12の一方の主面上に、電極の形成材料となる塗料を印刷により、所定のパターンで塗布し、硬化させて、ソース電極16、ゲート電極14およびドレイン電極18をこの順に配列して形成する。印刷の際、ゲート電極14の高さが、ソース電極16およびドレイン電極18の高さよりも低くなるように、塗料が印刷される。
塗料の硬化は、光硬化または熱硬化であるのが好ましく、光硬化の場合は、レーザ照射により硬化させるのが好ましい。
前述のとおり、電極形成工程において、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極を一度の印刷により形成するのが好ましい。また、各電極に接続される配線層を形成するのが好ましく、電極と配線層とを一度の印刷により形成するのがより好ましい。
【0069】
電極形成工程において、電極を形成するための印刷方法には特に限定はなく、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、活版印刷、反転印刷等の印刷方法が各種利用可能である。なかでも、ゲート電極と、ソース電極およびドレイン電極の高さを異ならせることが容易である、解像度、生産性、厚み精度等の観点で、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷が好適に用いられる。
【0070】
グラビア印刷の場合は、印刷版のセル(凹部)の深さを調整することで、各電極の高さを容易に調整できる。
【0071】
インクジェット印刷の場合は、
図6(A)に示すように、基板12上に各電極となる塗料qを、微小な液滴として所定量を連続的に吐出する。その際、ゲート電極14となる塗料qの吐出量を、ソース電極16およびドレイン電極18となる塗料qの吐出量よりも少なくする。このようにインクジェット印刷の場合は、塗料qの吐出量を調整することで、各電極ごとに塗料qの量を調整して、
図6(B)に示すように、ゲート電極14の高さを、ソース電極16およびドレイン電極18の高さよりも低く形成する。
なお、図示例においては、液滴の吐出量(数)で塗料qの量を調整する構成としたが、液滴のサイズを変えて、塗料qの量を調整してもよい。
【0072】
スクリーン印刷の場合は、印刷版の孔の大きさ、数を調整することで、各電極ごとに塗料qの量を調整して、ゲート電極14の高さを、ソース電極16およびドレイン電極18の高さよりも低く形成する。
図7(A)に示すように、ゲート電極14となる塗料qを、複数の領域に分割して基板12上に印刷し、
図7(B)に示すように、この塗料qをにじませて平滑化することで、ゲート電極14の高さを、ソース電極16およびドレイン電極18よりも低く形成することができる。
【0073】
このようなスクリーン印刷に用いられる印刷版の一例を、
図8に示す。
図8に示すスクリーン印刷版50aは、ソース電極16となる塗料を通過させる孔部54と、ドレイン電極18となる塗料を通過させる孔部56と、ゲート電極14となる塗料を通過させる複数の孔部52aとを形成されてなる印刷版である。
【0074】
孔部54は、形成するソース電極16の、面方向の大きさ、形状と、略同等の大きさ、形状の貫通孔である。
同様に、孔部56は、形成するドレイン電極18の、面方向の大きさ、形状と、略同等の大きさ、形状の貫通孔である。
【0075】
複数の孔部52aは、形成するゲート電極14に対応する領域に、複数、形成された貫通孔である。図示例においては、形成するゲート電極14に対応する領域に、8つの矩形状の孔部52aが、電極の配列方向と直交する方向に配列して形成されている。
言い換えると、複数の孔部52aは、形成するゲート電極14に対応する領域の貫通孔の一部を塞いで形成されたものである。
すなわち、複数の孔部52aの開口面積の合計は、ゲート電極14の面方向の面積よりも小さい。このように、形成するゲート電極14の面積よりも小さい開口面積となるように、孔部52aを形成することで、ゲート電極14となる塗料の量を調整して、ゲート電極14の高さを、ソース電極16およびドレイン電極18の高さよりも低く形成することができる。
【0076】
このように、スクリーン印刷では、ゲート電極14となる塗料を、複数の領域に分割して基板12上に印刷し、この塗料qをにじませて平滑化することで、ゲート電極14の高さを低く形成する。
従って、孔部52a同士の間隔dWは、孔部52aと、孔部54および孔部56との間隔dLよりも大きくする必要がある。間隔dW>間隔dLとすることで、基板12上に塗料を印刷した後、塗料のにじみにより、ゲート電極14となる塗料同士が一体化される一方、ゲート電極14と、ソース電極16またはドレイン電極18とが接続されるのを防止できる。
【0077】
なお、
図8に示すスクリーン印刷版50aでは、ゲート電極14に対応する領域に、8つの矩形状の孔部52aが、電極の配列方向と直交する方向に配列されてなる構成としたが、これに限定はされず、孔部の形状および個数等は、形成するゲート電極14の大きさ、高さ等に応じて適宜選択すればよい。
例えば、孔部が電極の配列方向に配列される構成としてもよい。
あるいは、
図9(A)に示すスクリーン印刷版50bのように、ゲート電極14に対応する領域に、円形状の貫通孔である孔部52bが、複数、形成されてなる構成としてもよい。
また、
図9(B)に示すスクリーン印刷版50cのように、ゲート電極14に対応する領域に、三角形状の貫通孔である孔部52cを、交互に方向を反転させて、複数、形成されてなる構成としてもよい。
【0078】
また、印刷により電極を形成する際の、電極の材料となる塗料の粘度は、上記の印刷方法に応じて、適宜決定すればよい。印刷時の塗布性、印刷後の形状の保持性、膜厚安定性等の観点から、塗料の粘度は、0.01Pa・s〜100000Pa・sが好ましく、0.1Pa・s〜10000Pa・sがより好ましく、1Pa・s〜1000Pa・sが特に好ましい。
【0079】
なお、グラビア印刷の場合は、印刷版のセル(凹部)の形状を、形成する電極の形状と略同等とするので、セル内に充填されやすく、かつ、印刷後の塗料が形状を保持する粘度を有するのが好ましいため、1Pa・s〜100Pa・sであるのがより好ましい。
また、インクジェット印刷の場合は、微小な液滴として吐出可能で、また、基板に付着した塗料が平滑化するように、ある程度、粘性が低いのが好ましく、2Pa・s〜50Pa・sであるのがより好ましい。
また、スクリーン印刷の場合は、複数に分割して塗布した塗料が平滑化するように、ある程度、粘性が低いのが好ましく、10Pa・s〜1000Pa・sであるのが好ましい。
【0080】
〔半導体層積層工程〕
半導体層積層工程は、電極形成工程の後、
図5(C)に示すように、半導体層20をソース電極16およびドレイン電極18の上面に載置して薄膜トランジスタ10を作製する工程である。
前述のとおり、半導体層積層工程は、予め、支持体上に塗布等により半導体層部材を形成しておき、この半導体層部材を支持体から剥離して、あるいは、支持体と一体のまま、基板12上に形成されたソース電極16およびドレイン電極18の上面に載置することで半導体層を形成する。
【0081】
以上、本発明のトランジスタ、トランジスタアレイ、および、トランジスタの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0082】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
〔実施例1〕
<薄膜トランジスタの作製>
実施例1として、厚さ0.7mm、大きさ50mm×50mmの無アルカリガラス(コーニング社製 eagle)を基板として用い、基板の表面に、電極を形成し、半導体層を積層して、
図2(A)に示す構成の薄膜トランジスタ10を作製した。
【0084】
(電極形成工程)
上記無アルカリガラスの表面にスクリーン印刷により、ソース電極16、ゲート電極14、ドレイン電極18、配線層22、24および26を形成した。
各電極および配線層の材料としては、Agナノインク(ハリマ化成株式会社製)を用いた。また、スクリーン印刷版としては、
図8に示す形状で、ステンレス製で500dpiの印刷版を用いた。
【0085】
ソース電極16およびドレイン電極18の大きさはそれぞれ、奥行き200μm×幅100μmとし、高さは、1μmとした。また、ソース電極16とドレイン電極18との間の距離は、200μmとした。
ゲート電極14の大きさは、奥行き200μm×幅100μmとし、高さは、0.5μmとした。すなわち、ゲート電極14と、ソース電極16およびドレイン電極18との間隙はそれぞれ、50μmとした。また、ゲート電極14と半導体層20との間の距離は0.5μmとした。
なお、電極の大きさは、電極の配列方向が幅、配列方向に直交する方向が奥行きである。
【0086】
配線層24および26の高さは、0.5μmとし、電極側の端面の幅は100μm、基板端辺側での幅は300μmとした。また、配線層24および26の長さ、すなわち、電極の端面から基板端辺までの長さは、20mmとした。
配線層22の高さは、0.5μmとし、電極側の端面の幅は100μm、基板端辺側での幅は300μmとした。また、配線層22の長さは、20mmとした。
【0087】
(半導体層積層工程)
次に、Si基板からなる支持体上に、半導体層20の材料を塗布して、半導体層部材を形成し、この半導体層部材をソース電極16およびドレイン電極18の上面に載置して、薄膜トランジスタを作製した。
半導体層20の材料として、TIPSペンセタンを用いた。
半導体層20の厚さは、50nmとし、大きさは、奥行き200μm×幅500μmとした。
【0088】
(評価)
作製した薄膜トランジスタ10の半導体特性を、半導体特性評価装置(ケースレー社製)で評価した。
測定は、配線層22、24および26の端部をそれぞれ、ワニ口クリップではさみ、半導体特性評価装置に接続してソース・ドレイン電流とゲート電圧の変化を測定して、以下の基準で評価を行った。
A:ゲート電圧に対し、ソース・ドレイン電流が二桁以上変化する。
B:ゲート電圧に対し、ソース・ドレイン電流が一桁以上二桁未満変化する。
C:ゲート電圧に対し、ソース・ドレイン電流が一桁未満しか変化しない。
評価はAであった。
なお、実施例1について、表面を刷毛ではいた後に、同様にして、半導体特性の評価を行ったところ、良好な半導体特性が得られた。
【0089】
〔実施例2〕
ソース電極16およびドレイン電極18の高さを0.7μmとして、ゲート電極14と半導体層20との間の距離を0.2μmとした以外は実施例1と同様にして薄膜トランジスタを作製し、半導体特性を評価した。評価はAであった。
【0090】
〔実施例3〕
ソース電極16およびドレイン電極18の高さを0.6μmとして、ゲート電極14と半導体層20との間の距離を0.1μmとした以外は実施例1と同様にして薄膜トランジスタを作製し、半導体特性を評価した。評価はAであった。
【0091】
〔実施例4〕
ソース電極16およびドレイン電極18の高さを0.6μmとして、ゲート電極14と半導体層20との間の距離を0.1μmとし、ソース電極16とドレイン電極18との間の距離を300μmとして、ゲート電極14とソース電極16との間の距離およびゲート電極14とドレイン電極18との間の距離を100μmとした以外は実施例1と同様にして薄膜トランジスタを作製し、半導体特性を評価した。評価はBであった。
【0092】
〔実施例5〕
ソース電極16とドレイン電極18との間の距離を300μmとして、ゲート電極14とソース電極16との間の距離およびゲート電極14とドレイン電極18との間の距離を100μmとした以外は実施例1と同様にして薄膜トランジスタを作製し、半導体特性を評価した。評価はAであった。
【0093】
〔比較例1〕
比較例1として、
図10に示す薄膜トランジスタ220を作製した。
薄膜トランジスタ220は、基板222と、基板222の表面に形成される、絶縁性の2つの台座226と、基板222表面の、2つの台座226の間に形成されるゲート電極224と、台座226の上にそれぞれ形成されるソース電極228およびドレイン電極230と、ソース電極228およびドレイン電極230の上面に載置される半導体層232とを有するものである。
【0094】
基板222は実施例1と同様とした。
まず、
図11(A)に示すように、基板222上に、2つの台座226をフォトレジストで形成した。台座226の材料は、東京応化工業株式会社製 OFPR800とし、大きさは、200μm×100μmとし、高さは、0.5nmとした。また、2つの台座226間の距離は、200μmとした。
【0095】
次に、2つの台座226が形成された基板222の全面に、Agを蒸着した後、フォトレジストを塗布してパターニングし、Agをエッチングして、
図11(B)に示すような、ゲート電極224、ソース電極228、ドレイン電極230、および、配線層234a〜234cを形成した。
【0096】
ゲート電極224の大きさは、200μm×100μmとし、高さは、0.5μmとした。また、ソース電極228およびドレイン電極230の高さは、0.5μmとした。
配線層234a〜234cの高さは、0.5μmとし、基板端辺側での幅は300μmとし、長さは、20mmとした。
【0097】
次に、実施例1と同様にして半導体層部材をソース電極228およびドレイン電極230上面に載置して、薄膜トランジスタ220を作製し、半導体特性を評価した。
評価の結果、
図11(C)に示すように、ソース電極228およびドレイン電極230と、配線層234b、234cとの間に段差があるため、接触不良が起こり、半導体特性は得られなかった。すなわち、評価はCであった。
【0098】
〔比較例2〕
配線層234a〜234cに代えて、ワイヤボンディングによって配線を形成した以外は、比較例1と同様にして薄膜トランジスタを作製し、半導体特性を評価した。
評価の結果、ワイヤボンディングした箇所で、半導体層が浮いてしまい、良好な半導体特性は得られなかった。すなわち、評価はCであった。
また、表面で刷毛ではくと、ワイヤボンディングが切れてしまい、良好な半導体特性が得られなかった。
評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、ゲート電極14と、ソース電極16およびドレイン電極18を基板上に形成し、ゲート電極14を低く形成する本発明の実施例1〜5は、比較例1,2に比較して良好な半導体特性が得られることがわかる。
以上より本発明の効果は明らかである。