(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案の技術では、柔軟性の高い樹脂が大量に使用されるため、所望する接着強度が得られず、また、組成物の粘度が高くなり、作業性を悪化させ得る。
【0006】
本発明は、良好な作業性を有し、硬化後に十分な接着強度が得られ、かつ硬化収縮による基板等の反りの問題を解決することができる、ダイアタッチ用樹脂組成物、及びこのダイアタッチ用樹脂組成物を使用した半導体装置、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定の熱可塑性樹脂粒子を特定量で、熱硬化性樹脂を含むダイアタッチ用樹脂組成物に配合することにより、作業性を悪化させることなく、硬化収縮による応力を緩和させることができ、硬化後にも十分な接着強度が得られるとの知見に基づきなされたものである。本発明のダイアタッチ用樹脂組成物は、粒子の形態で、熱可塑性樹脂が配合されているため、熱可塑性樹脂の配合による粘度の急上昇が抑制され、かつ加熱硬化時の粒子の弾性によって応力が緩和され、かつ硬化後には粒子はその形態を維持し、硬化物中に分散した状態にあるため、十分な接着強度が得られると考えられる。
【0008】
本発明1は、(A)熱硬化性樹脂、
(B)硬化剤、
(C)熱可塑性樹脂粒子、及び
(D)無機フィラー
を含み、
(C)の熱可塑性樹脂が30℃以下のガラス転移点(Tg)、及び160℃以下の融点(Tm)を有し、
かつ(C)が、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、0.5〜9質量部である、
ダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明2は、(C)のガラス転移点が、−60〜30℃である、本発明1のダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明3は、(C)の融点が、90〜160℃である、本発明1又は2のダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明4は、(C)のガラス転移点が0〜30℃であり、融点が95〜130℃である、本発明1〜3のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明5は、(C)が、ポリエステル樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子及びポリアセタール樹脂粒子からなる群より選択される1種以上である、本発明1〜4のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明6は、(C)が、平均粒子径8〜50μmである、本発明1〜5のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明7は、(A)が、エポキシ樹脂を含む、本発明1〜6のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明8は、(A)が、さらに(メタ)アクリル樹脂を含む、本発明7のダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明9は、(B)が、フェノール系樹脂硬化剤を含む、本発明7又は8のダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明10は、(D)が、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、20〜50質量部である、本発明1〜9のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明11は、(D)が、シリカである、本発明1〜10のいずれか1記載のダイアタッチ用樹脂組成物に関する。
本発明12は、本発明1〜11のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物を使用して、基板と半導体素子、又は半導体素子同士を接続した半導体装置に関する。
本発明13は、本発明1〜11のいずれかのダイアタッチ用樹脂組成物を基板と半導体素子、又は半導体素子同士の間に配置し、次いで(C)の融点と同じ温度から(C)の融点を30℃上回る温度の間の温度に加熱し、ダイアタッチ用樹脂組成物を硬化させ、基板と半導体素子、又は半導体素子同士を接続させる半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な作業性を有し、硬化後に十分な接着強度が得られ、かつ硬化収縮による基板等の反りの問題を解決することができる、ダイアタッチ用樹脂組成物、及びこのダイアタッチ用樹脂組成物を使用した半導体装置、及び半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、(A)熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シアネート樹脂等が挙げられるが、特に限定されない。接着強度の点から、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、これらを併用することが、組成物の使用時及び/又は使用後の半導体装置の製造プロセスにおける広範囲に亘る温度域で、十分な強度を確保する点から好ましい。
【0012】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリブタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ化ポリブタジエン)、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノールAエチレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエステル、p−キシリレングリコールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンの反応生成物等も使用することができる。
【0013】
中でも、硬化物の柔軟性確保の点からポリブタジエン型エポキシ樹脂が好ましく、また、組成物の粘度と硬化物の強度及び柔軟性確保の点から、25℃での粘度が3Pa・s以下である、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル(BPA−POタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
熱硬化性樹脂として、(メタ)アクリル樹脂を使用することができる。(メタ)アクリル樹脂は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることができ、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化することができる。(メタ)アクリル樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタルイミドが挙げられる。N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール等の(メタ)アクリルアミドを使用することもできる。n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体等のビニル化合物を使用することも可能である。
【0015】
さらに、(メタ)アクリル樹脂として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート等を使用することもできる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
加えて、(メタ)アクリル樹脂として、ポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体又は水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体等が好ましい。
【0017】
熱硬化性樹脂として、マレイミド樹脂を使用することができる。マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化することができる。例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。
【0018】
(A)は、接着強度の点から、硬化物のガラス転移点(Tg)が高いことが好ましく、例えば、30℃〜70℃であることができる。
【0019】
(A)は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の組成物は、(B)硬化剤を含む。(B)は、(A)の種類によって、適宜、選択することができるが、例えば、(A)としてエポキシ樹脂を使用する場合は、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジド化合物、ジシアンジアミド等を使用することができる。
【0021】
フェノール樹脂系硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のフェノール樹脂を用いることができ、例えば、レゾール型又はノボラック型フェノール樹脂を用いることができ、アルキルレゾール型、アルキルノボラック型、アラルキルノボラック型のフェノール樹脂、キシレン樹脂、アリルフェノール樹脂等が挙げられる。数平均分子量としては、220〜1000であることが好ましく、220〜500がより好ましい。アルキルレゾール型又はアルキルノボラック型フェノール樹脂の場合、アルキル基としては、炭素数1〜18のものを用いることができ、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシルのような炭素数2〜10のものが好ましい。
【0022】
酸無水物系硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の酸無水物を用いることができ、無水フタル酸、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0023】
アミン系硬化剤には、脂肪族アミン、芳香族アミンの他、イミダゾール類も包含される。
脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型のポリアミンが挙げられる。芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデンセン−7等の3級アミン等も使用することができる。
【0024】
また、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物も使用することができる。
【0025】
変性イミダゾール系硬化剤も使用することができ、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物やアクリレート−イミダゾールアダクト化合物が挙げられる。エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物として市販されているものとしては、アミキュアPN−23、アミキュアPN−40(味の素ファインテクノ社製)、ノバキュアHX−3721(旭化成イーマテリアルズ社製)、フジキュアFX−1000(富士化成工業社製)等が挙げられる。また、アクリレート−イミダゾールアダクト系化合物として市販されているものとしては、例えばEH2021(ADEKA社製)等が挙げられる.
【0026】
例えば、(A)として(メタ)アクリル樹脂を使用する場合は、(B)として、熱ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0027】
熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ケイ皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(B)は、(A)の種類によって、適宜、選択することができるが、例えば、(A)としてエポキシ樹脂を使用する場合は、(B)の硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と、硬化剤中の官能基数とが、1:0.2〜1:0.6となる量とすることができ、好ましくは1:0.3〜1:0.5となる量である。硬化剤中の官能基は、フェノール樹脂系硬化剤の場合は、フェノール性水酸基、酸無水物系硬化剤の場合は、酸無水物基、アミン系硬化剤の場合は、アミノ基、又はこれらの誘導体である。また、(A)として(メタ)アクリル樹脂を使用する場合、熱ラジカル重合開始剤は、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、0.05〜1質量部使用することができ、好ましくは0.1〜0.5質量部である。
【0029】
本発明の組成物は、(C)熱可塑性樹脂粒子を含む。(C)は、熱可塑性樹脂が30℃以下のガラス転移点(Tg)、及び160℃以下の融点(Tm)を有する。このような熱可塑性樹脂を粒子の形態で使用することにより、配合による粘度の上昇を防ぐとともに、加熱硬化時に(C)の弾性率が著しく低下し硬化収縮の応力を緩和して基板等の反りを防ぎ、さらに硬化後には、粒子の形態を維持し、分散した状態にあるため、十分な接着強度がもたらされると考えられる。
【0030】
(C)のガラス転移点(Tg)は30℃以下であり、−60〜30℃のものを使用することができる。ガラス転移点(Tg)は、好ましくは、−30〜30℃であり、より好ましくは0〜30℃である。
【0031】
(C)の融点(Tm)は、160℃以下であり、90〜160℃のものを使用することができる。融点(Tm)は、好ましくは、95〜140℃であり、より好ましくは105〜130℃である。
【0032】
ここで、ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)は、JIS K 7121に基き、示差走査熱量分析(DSC)により測定した値であり、融点(Tm)は、最大吸熱ピークのトップを示した温度とする。
【0033】
このような熱可塑性樹脂粒子としては、CAS番号25214−81−7や30580−17−7で表されるポリエステル樹脂粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂粒子、ポリオキシメチレン等のポリアセタール樹脂粒子が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂粒子の形状は、特に限定されず、球状、不定形状、粉砕粉状が挙げられる。平均粒子径は、8〜50μmであることができ、作業性の確保及び基板等の反りを防止する点からは、10〜35μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。
【0035】
(C)は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明の組成物は、(D)無機フィラーを含む。(D)は、絶縁フィラーであっても、導電フィラーであってもよく、コストの点から、好ましくは絶縁フィラーである。
【0037】
絶縁性フィラーとしては、特に限定されず、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸石灰、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。シリカ、アルミナ、窒化アルミニウムが好ましい。
【0038】
シリコンチップに適用する場合、シリコンチップよりも、硬度を低くすることができる点から、特にシリカが好ましい。シリカは、結晶質シリカ、非晶質シリカのいずれも使用することができるが、非晶質シリカが好ましい。また、溶融シリカ 、ヒュームドシリカ、粉砕シリカ等を使用することができるが、溶融シリカが好ましい。シリカは表面処理をしたものも使用することができる。また接触面積を小さくできる点から、球状であることが好ましい。
【0039】
導電フィラーとしては、特に限定されず、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)及びこれらの合金等の金属粒子、金、銀、パラジウムでコーティングされた無機フィラーが挙げられ、好ましくは銀又は銀を含む合金である。
【0040】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、球状、りん片状、針状、不定形等が挙げられる。作業性の点から、球状が好ましい。平均粒子径は、0.05〜10μmであることができ、0.1〜10μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径をいう。
【0041】
(D)は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の組成物は、(C)を、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、0.5〜9質量部含む。(C)の含有量が0.5質量部未満の場合、硬化収縮による応力緩和が不十分であり、基板等の反りを抑制する効果が不十分となる。(C)の含有量が9質量部超であると、粘度が急激に上昇し、作業性が悪化するとともに、接着強度が低下する。(C)の含有量は、好ましくは1.5〜8.5質量部である。
【0043】
本発明の組成物は、(D)を、(A)〜(D)の合計100質量部に対して、20〜50質量部で含むことができる。(D)をこの範囲で配合することで、硬化物の高温での弾性率が向上し、半導体装置の製造において高温プロセスにさらされても、信頼性が損なわれることはない。(D)の配合量は、好ましくは25〜45質量部である。
【0044】
本発明の組成物は、カップリング剤(例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、スルフィドシランなどのシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等)、着色剤(例えば、カーボンブラック等)、消泡剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤等の添加剤を、本発明の効果が損なわれない範囲で含有することができる。ただし、本発明の組成物は、硬化物へのボイド発生防止のため、溶剤を使用しないことが好ましい。
【0045】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、各成分を予備混合した後、三本ロールを用いて混練し、次いで真空下脱泡することにより製造することができる。
【0046】
本発明の組成物は、作業性の点から、粘度が1〜50Pa・sであることが好ましく、より好ましくは、3〜30Pa・sである。ここで、粘度は、ブルックフィールド社製HB型粘度計を用いて、25℃、5rpmで測定した値である。また、25℃で、ブルックフィールド社製HB型粘度計を用いて、0.5rpmで測定した粘度と5rpmで測定した粘度の比であるTI(0.5rpmでの粘度/5rpmの粘度)が、ディスペンス塗布時の作業性の点から、2〜8であることが好ましく、より好ましくは4〜6である。
【0047】
本発明の組成物は、基板や半導体素子の所定の部位に塗布した後、半導体素子を搭載し、加熱硬化させることにより、基板と半導体素子、半導体同士を接着・接続することができる。加熱硬化の温度は、通常、100〜160℃であるが、適宜、変更することができる。本発明の組成物は、(C)が粒子状であるために、組成物に、配合による粘度の上昇が抑制され、かつ加熱硬化時には、(C)の弾性率が低下し、硬化収縮の応力を緩和して基板等の反りが抑制され、さらに硬化後には、粒子の形態を維持し、分散した状態にあるため、十分な接着強度がもたらされると考えられる。
【0048】
低反りの観点からは硬化温度はより低い方が好ましく、例えば、100℃〜130℃とすることができる。また、加熱硬化の温度が、(C)の融点と同じ温度から、(C)の融点を30℃上回る温度の範囲内であることが好ましい。このような(C)を使用することで、加熱硬化時に、(C)の融点以上の温度に曝すことにより、組成物中の(C)の弾性率を著しく低下させ、本発明の効果を発揮させることができる。加熱硬化は、通常、所定の温度まで昇温し、その温度で保持することにより行なわれ、この場合、この保持温度を加熱硬化の温度ということとする。
【0049】
基板と半導体、半導体同士を接着・接続した後、ワイヤボンディングをし、次いで封止して半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて、本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。特段の断りがない限り、配合量は、質量部で示す。
【0051】
実施例における特性の測定は、以下のとおりである。
(1)熱可塑性樹脂粒子の平均粒子径
レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径である。
(2)無機フィラーの平均粒子径
レーザー回折法によって測定した体積基準のメジアン径である。
(3)ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)
JIS K 7121に基き、示差走査熱量分析(DSC)により求めた値である。融点は最大吸熱ピークを示した温度である。
(4)粘度及びTI値
ブルックフィールド社製HB型 (コーンプレート CP51)を用いて、25℃で、5rpmで測定した値である。0.5rpmでも同様に測定し、TI値として、(0.5rpmの粘度/5rpmの粘度)を算出した。
(5)反り量
P−BGA基板上に、実施例・比較例の組成物を塗布し、10mm x 10mm のシリコンチップをマウントし、室温から130℃まで60分で昇温し、130℃のオーブン中に30分間保持して硬化させた。硬化後、表面粗さ計にてチップの反りを測定した。
(6)ダイシェア強度
P−BGA基板上に、実施例・比較例の組成物を塗布し、その上に2mm×2mm のシリコンチップをマウントし、反り量の試験と同じ温度条件にて硬化させた。硬化後、Dage社製のダイシェアテスターを用いて、ダイシェア強度を測定した。
(7)断面写真
実施例1について、上記(5)の条件で硬化させた硬化物の断面写真を撮影した。結果を
図1に示す。
(8)DMA測定
実施例1・比較例1の組成物を、それぞれ130μmの間隙でガラスに挟んだ状態で硬化させて塗膜を得て、これを40mm x5mmのサイズに加工しDMA測定用の試験片とした。粘弾性測定装置(セイコーインスツル株式会社製 DMS6100)を用いて、測定モード引張り、昇温速度3℃/分、測定周波数10Hzの条件でDMA測定を行った。結果を
図2に示す。
【0052】
実施例・比較例の組成物は、表1で示した量で、各成分を、三本ロールにて分散後、真空攪拌を30〜60分行って調製した。実施例・比較例の組成物について、上記(1)〜(6)を測定した結果もあわせて表1に示す。
【0053】
実施例・比較例で使用した各成分は、以下のとおりである。
(A−1)エポキシ樹脂1
ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のジグリシジルエーテル(BPA−PO 4000S、株式会社ADEKA製)
(A−2)エポキシ樹脂2
エポキシ化ポリブタジエン(PB−3600、株式会社ダイセル製)
(A−3)エポキシ樹脂3
p−キシリレングリコールと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンの反応生成物(TX−0929A、新日鐵住金化学株式会社)
(A−4)(メタ)アクリル樹脂
ネオペンチルグルコールジメタクリレート
(B−1)フェノール系硬化剤
ノボラック型フェノール樹脂(MEH−8000H、明和化成株式会社製)
(B−2)変性イミダゾール系硬化剤
ノバキュアHX−3721(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)
(B−3)熱ラジカル重合開始剤
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(C−1)ポリエステルパウダー
CAS番号25214−81−7のポリエステルパウダー(Fix386、Schaetti Switzerland製)、ガラス転移点8℃、融点124℃、平均粒子径20μm
(C−2)ポリエステルパウダー
CAS番号25214−81−7のポリエステルパウダー(Fix386、Schaetti Switzerland製)、ガラス転移点8℃、融点124℃、平均粒子径42μm
(C−3)ポリエステルパウダー
CAS番号30580−17−7のポリエステルパウダー(Fix3110、Schaetti Switzerland製)、ガラス転移点28℃、融点123℃、平均粒子径21μm
(C−4)ポリエステル溶液
(C−1)を、(A−1)のエポキシ樹脂に8質量%の濃度で熱溶解(150℃)した溶液
(C−5)ポリプロピレンパウダー
PPW−5(株式会社セイシン企業製)ガラス転移点−19℃、融点153℃、平均粒子径5μm
(C−6)シリコーンパウダー
KMP600(信越化学工業株式会社製)、平均粒子径5μm
(D−1)シリカフィラー
SE1050(株式会社アドマテックス製)、平均粒子径0.3μm
(E)カップリング剤
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0054】
【表1】
【0055】
実施例の各組成物は、低粘度で作業性に優れ、硬化後に十分な接着強度が得られ、かつ反り量も小さかった。中でも、熱可塑性樹脂粒子の融点が123〜124℃(硬化温度(130℃)から10℃下回る範囲内)である実施例1〜6の組成物を使用した場合、反り量の抑制効果に優れていた。一方、熱可塑性樹脂粒子を配合していない比較例1の組成物を使用した場合、大きな反りが見られた。
【0056】
図1より、実施例1の硬化物において、熱可塑性樹脂粒子が粒子状の形態を保っていることが確認された。また、
図2より、実施例1についてのDMA測定の結果は、熱可塑性樹脂粒子を配合していない比較例1についてのDMA測定の結果とほぼ同じであることが確認された。これらの結果より、実施例1の組成物を使用した場合、加熱硬化時には、熱可塑性樹脂粒子の弾性によって応力が緩和され、かつ硬化後は、粒子状の形態を保っているため、反り量を減らしつつ、弾性率に変化を生じさせることなく、十分な接着性が確保できると考えられる。
【0057】
なお、熱可塑性樹脂粒子を溶液として配合した場合、比較例2に示されるように粘度が上昇し、作業性に問題が生じた。また、熱硬化性樹脂粒子であるシリコーンパウダーを使用した場合、比較例3に示されるように、大きな反りが見られた。さらに、熱可塑性樹脂粒子を大量に配合しても、比較例4に示されるように、反り量の抑制効果は、配合量が本発明で規定する範囲内の実施例3には及ばず、加えて接着強度は実施例3よりも劣っていた。