特許第6244317号(P6244317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244317
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20171127BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01L21/68 F
   H01L21/30 567
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-14446(P2015-14446)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-139737(P2016-139737A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】磧本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】福島 賢治
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−319833(JP,A)
【文献】 特開2014−165439(JP,A)
【文献】 特開2010−109369(JP,A)
【文献】 特開平04−193951(JP,A)
【文献】 特開2009−152575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する支持台と、
複数の昇降ピンを有し、前記複数の昇降ピンにより前記支持台上において前記基板を昇降させる昇降機構と、
前記複数の昇降ピンの少なくとも一つと前記基板との接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングに関する情報に基づいて前記基板の載置状態を検出する検出機構と、を備え
前記検出機構は、前記昇降ピンにて生じた振動を検出可能な振動センサを有し、前記振動センサにより検出される振動の強度が第1の閾値よりも大きくなった期間の合計値を前記切り替わりに関する情報として用い、当該期間の合計値に基づいて前記載置状態を検出する、基板処理装置。
【請求項2】
前記検出機構は、前記非接触状態から前記接触状態への前記切り替わりのタイミングに基づいて前記基板の載置状態を検出する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板を前記支持台上に載置した後に当該基板を再度上昇させ、当該基板を前記支持台上に再度載置する昇降制御部を更に備え、
前記検出機構は、前記昇降機構が前記基板を再度上昇させるときにおける前記切り替わりのタイミングに基づいて前記基板の載置状態を検出する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記振動センサは、固体を介して前記振動を検出するように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、前記複数の昇降ピンを支持するピン支持部を有し、
前記振動センサは、前記ピン支持部に設けられている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記検出機構は、前記複数の昇降ピンのそれぞれに対応する複数の前記振動センサを有する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記検出機構は、前記合計値が第2の閾値よりも小さいか否かに基づいて前記載置状態が正常であるか否かを検出する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程は、例えば熱処理など、基板を載置した状態にて行う処理を含む。このような処理においては、基板の載置状態が処理に影響を及ぼす場合がある。例えば熱処理において基板が傾いて載置されると、基板の面内温度分布が不均一となる場合がある。これに対し特許文献1には、熱処理プレートの表面温度と設定温度との積分値が所定の閾値以下であるときに異常が発生したものとする異常検知手段を備えた熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される熱処理装置は、載置状態の影響により生じた異常を検知するものであり、載置状態を検出するものではない。異常の要因を特定し、処理の安定性を向上させるためには、載置状態を検出することが望まれる。しかしながら、載置状態を検出する機構を付加すると装置の構成が複雑化するおそれがある。そこで本開示は、単純な構成にて基板の載置状態を検出できる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る基板処理装置は、基板を支持する支持台と、複数の昇降ピンを有し、複数の昇降ピンにより支持台上において基板を昇降させる昇降機構と、複数の昇降ピンの少なくとも一つと基板との接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングに関する情報に基づいて基板の載置状態を検出する検出機構と、を備える。
【0006】
複数の昇降ピンの少なくとも一つと基板との接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングは、当該接触部分と支持台との間隔に相関する。このため、当該切り替わりのタイミングに関する情報に基づくことで基板の載置状態を検出できる。また、この検出機構によれば、基板を昇降させるための昇降ピンが基板の載置状態の検出に活用されるので、装置構成の複雑化が抑制される。従って、本開示に係る基板処理装置によれば、単純な構成にて基板の載置状態を検出できる。
【0007】
検出機構は、一つの昇降ピンにおける切り替わりのタイミングと、他の昇降ピンにおける切り替わりのタイミングとのずれに関する情報に基づいて載置状態を検出してもよい。一つの昇降ピンにおける上記切り替わりのタイミングと、他の昇降ピンにおける上記切り替わりのタイミングとのずれに関する情報は、当該一つの昇降ピン及び他の昇降ピンの間における基板の傾きに相関する。このため、基板の載置状態として、基板の傾きを検出できる。
【0008】
検出機構は、一つの昇降ピンにおける切り替わりのタイミングと、他の昇降ピンにおける切り替わりのタイミングとの差分を切り替わりのタイミングのずれに関する情報として用い、当該差分に基づいて載置状態を検出してもよい。この場合、基板の傾きをより高い精度で検出できる。
【0009】
検出機構は、複数の昇降ピンの少なくとも一つにおける切り替わりのタイミングと、予め設定された基準タイミングとに関する情報に基づいて載置状態を検出してもよい。この場合、上記基準タイミングとの関係に基づいて切り替わりのタイミングを評価し、基板の載置状態をより明確に検出できる。
【0010】
検出機構は、複数の昇降ピンの少なくとも一つにおける切り替わりのタイミングと、基準タイミングとの差分を、当該切り替わりのタイミングと基準タイミングとに関する情報として用い、当該差分に基づいて載置状態を検出してもよい。上記切り替わりのタイミングと基準タイミングとの差分を求めることにより、上記切り替わりのタイミングから基板の載置状態に相関する成分のみを抽出することが可能となる。このため、基板の載置状態をより明確に検出できる。
【0011】
検出機構は、非接触状態から接触状態への切り替わりのタイミングに基づいて基板の載置状態を検出してもよい。非接触状態から接触状態に切り替わる際には昇降ピンが基板に衝突するので、接触状態から非接触状態に切り替わる際に比べて、昇降ピンに大きな変化が生じ易い。このため、上記切り替わりのタイミングをより確実に検出できる。
【0012】
基板を支持台上に載置した後に当該基板を再度上昇させ、当該基板を支持台上に再度載置する昇降制御部を更に備え、検出機構は、昇降機構が基板を再度上昇させるときにおける切り替わりのタイミングに基づいて基板の載置状態を検出してもよい。この場合、非接触状態から接触状態への切り替わりのタイミングに基づく基板の載置状態の検出を自動化できる。
【0013】
検出機構は、昇降ピンにて生じた振動を検出可能な振動センサを有し、振動に基づいて切り替わりのタイミングを検出してもよい。昇降ピンと基板との接触状態及び非接触状態が切り替わる際には、昇降ピンに振動が生じる。このため、振動センサを用いた単純な構成にて上記切り替わりのタイミングを検出できる。
【0014】
振動センサは、固体を介して振動を検出するように設けられていてもよい。この場合、昇降ピンに生じた振動が固体の媒介により高い感度で検出されるので、上記切り替わりのタイミングをより確実に検出できる。
【0015】
昇降機構は、複数の昇降ピンを支持するピン支持部を有し、振動センサは、ピン支持部に設けられていてもよい。この場合、一つの振動センサによって複数の昇降ピンにおける振動を検出することが可能となる。このため、装置構成を更に単純化できる。
【0016】
検出機構は、複数の昇降ピンのそれぞれに対応する複数の振動センサを有してもよい。この場合、検出した切り替わりのタイミングがいずれの昇降ピンにおいて生じたものなのかを特定することが可能となる。このため、基板の載置状態をより詳細に検出することができる。
【0017】
検出機構は、複数の昇降ピンにおける切り替わりのタイミングをそれぞれ検出する複数のセンサを有してもよい。この場合、検出した切り替わりのタイミングがいずれの昇降ピンにおけるものなのかを特定することが可能となる。このため、基板の載置状態をより詳細に検出することができる。
【0018】
検出機構は、昇降ピンにて生じた振動を検出可能な振動センサを有し、振動センサにより検出される振動の強度が第1の閾値よりも大きくなった期間の合計値を切り替わりのタイミングのずれに関する情報として用い、当該期間の合計値に基づいて載置状態を検出してもよい。上記合計値は、切り替わりのタイミングのずれに相関する。具体的に、切り替わりのタイミングのずれが大きくなると上記合計値も大きくなる。このため、上記合計値に基づくことによっても基板の傾きを検出できる。なお、一つの昇降ピンにおける切り替わりのタイミングに伴って生じる振動と、他の昇降ピンにおける切り替わりのタイミングに伴って生じる振動とが重なり合っている場合、これらの切り替わりのタイミングを個別に検出し難くなる可能性がある。このような場合であっても、上記合計値は検出可能である。このため、上記合計値を切り替わりのタイミングのずれの代用特性として用いることで、基板の傾きをより高い感度で検出できる。
【0019】
検出機構は、合計値が第2の閾値よりも小さいか否かに基づいて載置状態が正常であるか否かを検出してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、単純な構成にて基板の載置状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】基板処理システムの概略構成を示す斜視図である。
図2図1中のII−II線に沿う断面図である。
図3図2中のIII−III線に沿う断面図である。
図4】熱処理ユニットの概略構成を示す模式図である。
図5】ウエハの加熱手順のフローチャートである。
図6】ウエハの載置状態と切り替わりのタイミングとの関係を示す模式図である。
図7】ウエハの載置状態と切り替わりのタイミングとの関係を示す模式図である。
図8】熱処理ユニットの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔基板処理システム〕
まず、図1図2及び図3を参照して、本実施形態に係る基板処理システム1の概要を説明する。図1に示されるように、基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、レジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウエハW(基板)の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0023】
塗布・現像装置2は、図2及び図3に更に示されるように、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インターフェースブロック6とを備える。キャリアブロック4、処理ブロック5及びインターフェースブロック6は、水平方向に並んでいる。
【0024】
キャリアブロック4は、キャリアステーション12と搬入・搬出部13とを有する。搬入・搬出部13はキャリアステーション12と処理ブロック5との間に介在する。キャリアステーション12は、複数のキャリア11を支持する。キャリア11は、例えば円形の複数枚のウエハWを密封状態で収容する。キャリア11は、一つの側面11a側に、ウエハWを出し入れするための開閉扉を有している。キャリア11は、側面11aが搬入・搬出部13側に面するように、キャリアステーション12上に着脱自在に設置される。
【0025】
搬入・搬出部13は、キャリアステーション12上の複数のキャリア11にそれぞれ対応する複数の開閉扉13aを有する。側面11aの開閉扉と開閉扉13aとを同時に開放することで、キャリア11内と搬入・搬出部13内とが連通する。搬入・搬出部13は受け渡しアームA1を内蔵している。受け渡しアームA1は、キャリア11からウエハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウエハWを受け取ってキャリア11内に戻す。
【0026】
処理ブロック5は、複数の処理モジュール14,15,16,17を有する。処理モジュール14,15,16,17は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している(図3参照)。処理モジュール17は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を経ずにウエハWを搬送する直接搬送アームA6を更に内蔵している(図2参照)。塗布ユニットU1は、レジスト液をウエハWの表面に塗布する。熱処理ユニットU2は、例えば熱板によりウエハWを加熱し、加熱後のウエハWを例えば冷却板により冷却して熱処理を行う。
【0027】
処理モジュール14は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウエハWの表面上に下層膜を形成するBCTモジュールである。処理モジュール14の塗布ユニットU1は、下層膜形成用の液体をウエハW上に塗布する。処理モジュール14の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0028】
処理モジュール15は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成するCOTモジュールである。処理モジュール15の塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の液体を下層膜の上に塗布する。処理モジュール15の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0029】
処理モジュール16は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、レジスト膜上に上層膜を形成するTCTモジュールである。処理モジュール16の塗布ユニットU1は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール16の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0030】
処理モジュール17は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、露光後のレジスト膜の現像処理を行うDEVモジュールである。現像ユニットは、露光済みのウエハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液によって洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットは、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理は、例えば、現像処理前の加熱処理(PEB:PostExposure Bake)、または、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等である。
【0031】
処理ブロック5内において、キャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられており、インターフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている(図2及び図3参照)。棚ユニットU10は、床面から処理モジュール16に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウエハWを昇降させる。棚ユニットU11は床面から処理モジュール17の上部に亘るように設けられており、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0032】
インターフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置されたウエハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウエハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0033】
基板処理システム1は、次に示す手順で塗布・現像処理を実行する。まず、受け渡しアームA1がキャリア11内のウエハWを棚ユニットU10に搬送する。このウエハWを、昇降アームA7が処理モジュール14用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール14内の各ユニットに搬送する。処理モジュール14の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3によって搬送されたウエハWの表面上に下層膜を形成する。下層膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウエハWを棚ユニットU10に戻す。
【0034】
次に、棚ユニットU10に戻されたウエハWを、昇降アームA7が処理モジュール15用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール15内の各ユニットに搬送する。処理モジュール15の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3によって搬送されたウエハWの下層膜上にレジスト膜を形成する。レジスト膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウエハWを棚ユニットU10に戻す。
【0035】
次に、棚ユニットU10に戻されたウエハWを、昇降アームA7が処理モジュール16用のセルに配置し、搬送アームA3が処理モジュール16内の各ユニットに搬送する。処理モジュール16の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3によって搬送されたウエハWのレジスト膜上に上層膜を形成する。上層膜の形成が完了すると、搬送アームA3がウエハWを棚ユニットU10に戻す。
【0036】
次に、棚ユニットU10に戻されたウエハWを、昇降アームA7が処理モジュール17用のセルに配置し、直接搬送アームA6が棚ユニットU11に搬送する。このウエハWを受け渡しアームA8が露光装置3に送り出す。露光装置3における露光処理が完了すると、受け渡しアームA8がウエハWを露光装置3から受け入れ、棚ユニットU11に戻す。
【0037】
次に、棚ユニットU11に戻されたウエハWを、処理モジュール17の搬送アームA3が処理モジュール17内の各ユニットに搬送する。処理モジュール17の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2は、搬送アームA3によって搬送されたウエハWのレジスト膜の現像処理及びこれに伴う熱処理を行う。レジスト膜の現像が完了すると、搬送アームA3はウエハWを棚ユニットU10に搬送する。
【0038】
次に、棚ユニットU10に搬送されたウエハWを、昇降アームA7が受け渡し用のセルに配置し、受け渡しアームA1がキャリア11内に戻す。以上で、塗布・現像処理が完了する。
【0039】
〔基板処理装置〕
続いて、基板処理装置の一例として、熱処理ユニットU2の構成について詳細に説明する。図4に示されるように、熱処理ユニットU2は、熱板20と、熱板保持部23と、昇降機構30と、制御部50とを有する。
【0040】
熱板20は円板状を呈し、ヒータ21を内蔵している。熱板20上には複数のプロキシミティピン22が設けられている。複数のプロキシミティピン22は熱板20上に載置されるウエハWを支持する。これにより、熱板20とウエハWとの間に空隙が確保される。
【0041】
熱板保持部23は底板24と周壁25とを有する。底板24は熱板20に対向している。周壁25は底板24の周縁に沿って設けられている。周壁25は熱板20の外周部分を保持している。熱板20及び熱板保持部23は、ウエハを支持する支持台28として機能する。
【0042】
昇降機構30は、複数本(例えば3本)の昇降ピン31と、複数の昇降ピン31を支持するピン支持部32と、ピン支持部32を昇降させる昇降駆動部33とを有する。
【0043】
昇降駆動部33は、モータやエアシリンダ等の駆動源を内蔵している。昇降駆動部33がピン支持部32を昇降させることにより、昇降ピン31が昇降する。これにより、昇降ピン31が底板24及び熱板20を貫通して昇降する。昇降ピン31の上部は、昇降ピン31の上昇に伴って熱板20上に突出し、昇降ピン31の下降に伴って支持台28内に収容される。このため、昇降機構30は、複数の昇降ピン31を昇降させることで、支持台28上においてウエハWを昇降させるように機能する。
【0044】
ピン支持部32には、振動センサ40が設けられている。振動センサ40は、例えばピエゾセラミックマイクロフォン等の圧電変換型のセンサであり、昇降ピン31からピン支持部32に伝播した振動を検出するように配置されている。すなわち、振動センサ40は、昇降ピン31にて生じた振動を、固体を介して検出する骨伝導式センサとして機能する。
【0045】
制御部50は、ウエハ搬送制御部51と、昇降制御部52と、タイミング検出部53と、データ格納部55と、差分算出部57と、載置状態検出部59とを有する。
【0046】
ウエハ搬送制御部51は、熱板20上へのウエハWを搬入と、熱板20上からのウエハWの搬出とを行うように、搬送アームA3を制御する。
【0047】
昇降制御部52は、支持台28上においてウエハWを昇降させるように昇降機構30を制御する。
【0048】
タイミング検出部53は、振動センサ40により検出された振動データに基づいて、昇降ピン31とウエハWとの接触状態(互いに接触した状態)及び非接触状態(互いに離間した状態)の切り替わりのタイミングを検出する。一例として、タイミング検出部53は、昇降ピン31とウエハWとの非接触状態が接触状態に切り替わるタイミング(以下、「接触タイミング」という。)を検出する。接触タイミングにおいては、昇降ピン31がウエハWに衝突するので、振動センサ40に伝わる振動の振幅が急上昇する。そこで、例えば上記振幅が所定の閾値(第1の閾値)を超えた時点を接触タイミングとして検出することが可能である。第1の閾値は、例えば振動の実測データに基づいて予め設定可能である。タイミング検出部53は、検出した接触タイミングをデータ格納部55に格納する。
【0049】
差分算出部57は、データ格納部55に格納された接触タイミングと、基準タイミングとに関する情報の一例として、当該接触タイミングと基準タイミングとの差分を算出する。基準タイミングは、例えば反りのない平坦なウエハWがプロキシミティピン22上に浮き上がりなく載置された場合の接触タイミングである。基準タイミングは、例えば実測データに基づいて予め設定され、データ格納部55に格納されている。差分算出部57は、一つの昇降ピン31における接触タイミングと、他の昇降ピン31における接触タイミングとのずれに関する情報の一例として、一つの昇降ピン31における接触タイミングと、他の昇降ピン31における接触タイミングとの差分も検出する。
【0050】
載置状態検出部59は、差分算出部57によって算出される差分に基づいて、ウエハWの載置状態を検出する。具体的には、支持台28上におけるウエハWの浮き上がりまたはウエハWの傾き等をウエハWの載置状態として検出する。載置状態検出部59は、ウエハWの浮き上がりまたはウエハWの傾き等に基づいて、ウエハWの載置状態が正常であるか否かを更に検出してもよい。
【0051】
このように、振動センサ40、タイミング検出部53、差分算出部57及び載置状態検出部59は、昇降ピン31とウエハWとの接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングに基づいてウエハWの載置状態を検出する検出機構60として機能する。
【0052】
このような制御部50は、例えば一つまたは複数の制御用コンピュータにより構成される。この場合、制御部50の各要素は、制御用コンピュータのプロセッサ、メモリ及びモニタ等の協働により構成される。制御用コンピュータを制御部50として機能させるためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。この場合、記録媒体は、後述の基板熱処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記録する。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリーカード等が挙げられる。
【0053】
なお、制御部50の各要素を構成するハードウェアは、必ずしもプロセッサ、メモリ及びモニタに限られない。例えば、制御部50の各要素は、その機能に特化した電気回路により構成されていてもよいし、当該電気回路を集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0054】
〔基板熱処理方法〕
続いて、基板熱処理方法の一例として、熱処理ユニットU2によるウエハWの加熱手順について説明する。
【0055】
図5に示されるように、まず、制御部50はステップS01を実行する。ステップS01では、昇降ピン31を上昇させてその端部を熱板20上に突出させるように昇降制御部52が昇降駆動部33を制御し、昇降ピン31上にウエハWを載置するようにウエハ搬送制御部51が搬送アームA3を制御する。
【0056】
次に、制御部50はステップS02を実行する。ステップS02では、ウエハWを下降させて支持台28上に載置するように、昇降制御部52が昇降駆動部33を制御する。
【0057】
次に、制御部50はステップS03を実行する。ステップS03では、昇降制御部52が、昇降ピン31の再上昇を開始するように昇降駆動部33を制御する。
【0058】
次に、制御部50はステップS04を実行する。ステップS04では、タイミング検出部53が、上記接触タイミングを検出する。
【0059】
次に、制御部50はステップS05を実行する。ステップS05では、昇降制御部52が、ウエハWを下降させて支持台28上に再度載置するように昇降駆動部33を制御する。このように、昇降制御部52は、ウエハWを支持台28上に載置した後にウエハWを再度上昇させ、当該ウエハWを支持台28上に再度載置する。
【0060】
次に、制御部50はステップS06を実行する。ステップS06では、差分算出部57が、接触タイミングと基準タイミングとの差分を算出する。また、差分算出部57は、一つの昇降ピン31における接触タイミングと、他の昇降ピン31における接触タイミングとの差分も検出する。
【0061】
次に、制御部50はステップS07を実行する。ステップS07では、ステップS06において算出された差分に基づいて、載置状態検出部59が支持台28に対するウエハWの載置状態を検出する。
【0062】
例えば図6の(a)に示されるように、反りのない平坦なウエハWがプロキシミティピン22上に浮き上がりなく載置された状態(以下、これを「正常な載置状態」という。)においては、接触タイミングは基準タイミングに一致する。また、各昇降ピン31における接触タイミング同士も互いに一致する。このため、ステップS06においていずれの差分もゼロとなる。この場合、載置状態検出部59は、ウエハWが浮き上がりなく正常に載置されていること検出する。
【0063】
図6の(b)は、裏面が凹状となるように反ったウエハWがプロキシミティピン22上に載置された状態を例示している。このような状態では、プロキシミティピン22に囲まれる領域内において、正常な載置状態に比較してウエハWが浮き上がった状態となる。このため、接触タイミングが基準タイミングに対して遅れ、接触タイミングと基準タイミングとの差分が大きくなる。この場合、載置状態検出部59は、ウエハWの載置状態としてウエハWの浮き上がりを検出する。載置状態検出部59は、接触タイミングと基準タイミングとの差分の大きさに基づいて、ウエハWの浮き上がりの程度を更に検出してもよい。
【0064】
図7の(a)は、異物Tに乗り上げることでウエハWが傾いて載置された状態を例示している。この場合、傾斜の下側に位置する昇降ピン31Aが最初にウエハWに接触し、その後他の昇降ピン31B,31CがウエハWに接触する(図7の(b)参照)。このため、昇降ピン31B,31Cにおける接触タイミングと、昇降ピン31Aにおける接触タイミングとの差分が大きくなる。この場合、載置状態検出部59は、ウエハWの載置状態としてウエハWの傾きを検出する。載置状態検出部59は、昇降ピン31B,31Cにおける接触タイミングと、昇降ピン31Aにおける接触タイミングとの差分の大きさに基づいて、ウエハWの傾きの程度を更に検出してもよい。
【0065】
次に、制御部50は図5に示すようにステップS08を実行する。ステップS08では、制御部50は所定時間の経過を待機する。これにより、ウエハWが熱板20によって所定時間加熱される。
【0066】
次に、制御部50はステップS09を実行する。ステップS09では、ウエハ搬送制御部51が、ウエハWを搬出するように、搬送アームA3を制御する。
【0067】
以上説明したように、熱処理ユニットU2は、ウエハWを支持する支持台28と、複数の昇降ピン31を有し、複数の昇降ピン31により支持台28上においてウエハWを昇降させる昇降機構30と、複数の昇降ピン31の少なくとも一つとウエハWとの接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングに関する情報に基づいてウエハWの載置状態を検出する検出機構60とを備える。
【0068】
複数の昇降ピン31の少なくとも一つとウエハWとの接触状態及び非接触状態の切り替わりのタイミングは、当該接触部分と支持台28との間隔に相関する。このため、当該切り替わりのタイミングに基づくことで、ウエハWの載置状態を検出できる。また、この検出機構60によれば、ウエハWを昇降させるための昇降ピン31がウエハWの載置状態の検出に活用されるので、装置構成の複雑化が抑制される。従って、熱処理ユニットU2によれば、単純な構成にてウエハWの載置状態を検出できる。
【0069】
検出機構60は、一つの昇降ピン31における切り替わりのタイミングと、他の昇降ピン31における切り替わりのタイミングとのずれに関する情報に基づいて、載置状態を検出してもよい。一つの昇降ピン31における上記切り替わりのタイミングと、他の昇降ピン31における上記切り替わりのタイミングとのずれに関する情報は、当該一つの昇降ピン31及び他の昇降ピン31の間におけるウエハWの傾きに相関する。このため、ウエハWの載置状態として、ウエハWの傾きを検出できる。
【0070】
検出機構60は、一つの昇降ピン31における切り替わりのタイミングと、他の昇降ピン31における切り替わりのタイミングとの差分を切り替わりのタイミングのずれに関する情報として用い、当該差分に基づいて載置状態を検出してもよい。この場合、ウエハWの傾きをより高い精度で検出できる。
【0071】
検出機構60は、複数の昇降ピン31の少なくとも一つにおける切り替わりのタイミングと、予め設定された基準タイミングとに関する情報に基づいて載置状態を検出してもよい。この場合、上記基準タイミングとの関係に基づいて切り替わりのタイミングを評価し、ウエハWの載置状態をより明確に検出できる。
【0072】
検出機構60は、複数の昇降ピン31の少なくとも一つにおける切り替わりのタイミングと、予め設定された基準タイミングとの差分を、当該切り替わりのタイミングと基準タイミングとに関する情報として用い、当該差分に基づいて載置状態を検出してもよい。上記切り替わりのタイミングと基準タイミングとの差分を求めることにより、上記切り替わりのタイミングからウエハWの載置状態に相関する成分のみを抽出することが可能となる。このため、ウエハWの載置状態をより明確に検出できる。
【0073】
検出機構60は、非接触状態から接触状態への切り替わりのタイミングに基づいてウエハWの載置状態を検出してもよい。非接触状態から接触状態に切り替わる際には昇降ピン31がウエハWに衝突するので、接触状態から非接触状態に切り替わる際に比べて、昇降ピン31に大きな変化が生じ易い。このため、上記切り替わりのタイミングをより確実に検出できる。但し、非接触状態から接触状態への切り替わりのタイミングに基づいてウエハWの載置状態を検出することは必須ではない。検出機構60は、接触状態から非接触状態への切り替わりのタイミングに基づいてウエハWの載置状態を検出してもよい。
【0074】
ウエハWを支持台28上に載置した後に当該ウエハWを再度上昇させ、当該ウエハWを支持台28上に再度載置する昇降制御部52を更に備え、検出機構60は、昇降機構30がウエハWを再度上昇させるときにおける切り替わりのタイミングに基づいてウエハWの載置状態を検出してもよい。この場合、非接触状態から接触状態への切り替わりのタイミングに基づくウエハWの載置状態の検出を自動化できる。
【0075】
検出機構60は、昇降ピン31にて生じた振動を検出可能な振動センサ40を有し、振動に基づいて切り替わりのタイミングを検出してもよい。昇降ピン31とウエハWとの接触状態及び非接触状態が切り替わる際には、昇降ピン31に振動が生じる。このため、振動センサを用いた単純な構成にて上記切り替わりのタイミングを検出できる。
【0076】
振動センサ40は、固体を介して振動を検出するように設けられていてもよい。この場合、昇降ピン31に生じた振動が固体の媒介により高い感度で検出されるので、上記切り替わりのタイミングをより確実に検出できる。
【0077】
昇降機構30は、複数の昇降ピン31を支持するピン支持部32を有し、振動センサ40は、ピン支持部32に設けられていてもよい。この場合、一つの振動センサ40によって複数の昇降ピン31における振動を検出することが可能となる。このため、装置構成を更に単純化できる。
【0078】
図8に示されるように、検出機構60は、複数の昇降ピン31のそれぞれに対応する複数の振動センサ40を有していてもよい。この場合、検出した切り替わりのタイミングがいずれの昇降ピンにおいて生じたものなのかを特定することが可能となる。このため、ウエハWの載置状態をより詳細に検出することができる。例えば、ウエハWの傾きを検出する場合において、ウエハWがいずれの方向に傾いているのかをも検出することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、一つの昇降ピン31における切り替わりのタイミングと、他の昇降ピン31における切り替わりのタイミングとの差分を切り替わりのタイミングのずれに関する情報として用いる場合を示したが、これに限られない。例えば検出機構60は、振動センサ40により検出される振動の強度が上記第1の閾値よりも大きくなった期間の合計値を切り替わりのタイミングのずれに関する情報として用い、当該期間の合計値に基づいて載置状態を検出してもよい。
【0080】
例えば、全ての昇降ピン31における切り替わりのタイミングに伴って生じる振動が互いに重なり合って一つの振動波形をなしている場合、当該一つの振動波形が上記第1の閾値よりも大きくなった期間が上記合計値となる。上記振動が互いに重なり合うことなく複数の振動波形をなしている場合には、それぞれの振動波形が上記第1の閾値よりも大きくなった期間の総和が上記合計値となる。
【0081】
上記合計値は、切り替わりのタイミングのずれに相関する。具体的に、切り替わりのタイミングのずれが大きくなると上記合計値も大きくなる。このため、上記合計値に基づくことによってもウエハWの傾きを検出できる。なお、一つの昇降ピン31における切り替わりのタイミングに伴って生じる振動と、他の昇降ピン31における切り替わりのタイミングに伴って生じる振動とが重なり合っている場合、これらの切り替わりのタイミングを個別に検出し難くなる可能性がある。このような場合であっても、上記合計値は検出可能である。このため、上記合計値を切り替わりのタイミングのずれの代用特性として用いることで、ウエハWの傾きをより高い感度で検出できる。
【0082】
検出機構60は、合計値が第2の閾値よりも小さいか否かに基づいて載置状態が正常であるか否かを検出してもよい。第2の閾値は、例えば振動の実測データとウエハWの載置状態とを対比することにより予め設定可能である。
【0083】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0084】
例えば、切り替わりのタイミングを検出するためのセンサは振動センサ40に限られない。切り替わりのタイミングを検出するための他のセンサとしては、例えば歪みゲージ式の力センサ、静電容量式の接触センサ等が挙げられる。
【0085】
また、例えば、処理対象の基板は半導体ウエハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
20…熱板、22…プロキシミティピン、28…支持台、30…昇降機構、31…昇降ピン、32…ピン支持部、33…昇降駆動部、40…振動センサ、50…制御部、60…検出機構、U2…熱処理ユニット、W…ウエハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8