(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バインダー樹脂として、エチルセルロース樹脂0.2質量部以上3.0質量部以下と、アクリル樹脂0.5質量部以上8.0質量部以下とを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<メタライズド基板100の製造方法>
図1にメタライズド基板100の製造方法の概略を示したように、まず、窒化物セラミックス焼結体基板10上に、第一ペースト層20が形成され、その上に、第二ぺースト層30が形成され、第二積層体110が形成される。第二積層体110は、焼成され、窒化物セラミックス焼結体基板10上に窒化チタン層60および金属層50を備えたメタライズド基板100が製造される。
【0025】
(窒化物セラミックス焼結体基板10)
窒化物セラミックス焼結体基板10は、所定形状の窒化物セラミックスグリーンシートあるいは窒化物セラミックス顆粒を加圧成形した加圧成形体を焼成する公知の方法により作製することができる。その形状、厚み等は特に制限されない。焼結体原料には、通常用いられる焼結助剤、例えば、希土類酸化物を含む焼結助剤を含んでいてもよい。窒化物セラミックス焼結体基板10の表面は、必要に応じて研磨して表面を平滑にしてもよい。窒化物セラミックスとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ニオブ等が挙げられる。中でも、高熱伝導率等の特性を有する窒化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0026】
(第一ペースト層20および第二ペースト層30)
本発明のメタライズド基板100の製造方法においては、まず、窒化物セラミックス焼結体基板10上に、銅粉および水素化チタン粉を含む第一ペースト層20を積層し第一積層体を形成する。その後、該第一積層体の第一ペースト層20上に、合金粉を含む第二ペースト層30を積層し第二積層体110を形成する。第一および第二ペースト層20、30は、配線パターンを形成したい箇所に、以下において説明するペースト組成物を塗布することにより形成される。ペースト組成物の塗布は、精密配線を形成する観点から、印刷により行うことが好ましい。印刷としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を採用することができる。ペーストは、採用する印刷法に応じて適宜最適な粘度に調整すればよいが、スクリーン印刷法を用いる場合には、操作性及びパターン再現性を考慮すると、25℃において、粘度が50〜400Pa・sとなるように各成分の量を調整したものを使用することが好ましい。第一ペースト層20を形成後にこれを乾燥させてから、第二ペースト層30を形成して、その後、第二ペースト層30を乾燥させてもよいし、第一ペースト層20および第二ペースト層30を形成後に、これらをまとめて乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されず、ペースト層中の溶媒を揮発させることができる方法であればよい。例えば、80〜120℃程度で1分から1時間程度乾燥させる方法が挙げられる。
【0027】
本発明のメタライズド基板100の製造方法においては、水素化チタン粉を含む第一ペースト層20とこれを含まない第二ペースト層30とを積層し焼成して、窒化チタン層60および金属層50を形成する。この窒化チタン層60は、第一ペースト層20のチタン成分と、窒化物セラミックス焼結体基板10中の窒素成分とが反応することにより、窒化物セラミックス焼結体10と金属層50との界面に形成される。
また、本発明においては、水素化チタン粉を含まない第二ペースト層30が存在することにより、チタン成分が金属層50の表面に移動することが抑制され、金属層50表面のメッキ性が良好なものとなり、かつ、金属層50の表面のクレーター(crater)状の凹凸(以下、単に「クレーター」という。)の発生を低減できる。また、チタン成分が金属層50の表面に移動することが抑制されることにより、該窒化チタン層60が、窒化物セラミックス焼結体基板10と金属層50との界面において十分に形成され、金属層50の密着性がより良好なものとなる。
【0028】
第一ペースト層を形成した後に第二ペースト層を形成しないで焼成を行った場合には、銅の焼結が十分に進まず、製造される金属層中にボイドが残存する場合があった。金属層中のボイドは、金属層の密着性不良や熱伝導性不良の原因となるばかりでなく、表面平滑性を低下させる原因ともなる。例えば、見かけ上滑らかな表面を有する金属層が得られたとしても、研摩によりボイドが表面に現れ、高い平滑性を有する表面を得ることができない。また、ボイドが金属層表面にまで及ぶ場合は、金属層表面にクレーターが存在することになり、金属表面にメッキをする場合に、変色やふくれといった不良の原因となる。
【0029】
なお、ボイドは、次の様な機構により形成するものと考えられる。すなわち:焼成工程において、水素化チタン粉は水素を放出してチタンを生成する。生成したチタンは窒化物セラミックスと反応して窒化チタン層を形成するだけでなく、生成したチタンの一部は銅粉末と反応して銅粒子表面にCu−Ti化合物相を形成する。このCu−Ti相の形成により、銅粒子(粉末)の焼結が阻害され、ボイドが形成するものと考えられる。したがって、銅粉末の焼結を促進することによってボイドの形成を抑制することができると考えられる。銅粉末の焼結を促進する方法としては、金属ペースト層中に融点の低い銀粉または「銀と銅との合金粉」を含有させ、これら粉末が溶融して形成される液相により焼結を促進する方法が考えられる。しかし、該方法を採用した場合には、相対的に銅粉の含有率が低くなるため、生成した液相の流動により、金属層の形状を保持することが困難になり得る。よって、パターンの変形や、金属層表面の大きな凹みが発生するおそれがある。
【0030】
これに対し、本発明では、「銀と銅との合金粉」(合金粉)を含む第二ペースト層30を第一ペースト層の上に形成しているので、上記したような問題が発生しない。つまり、第一ペースト層に占める銅粉末の相対的割合が高いため、焼成時においても第一ペースト層の形状が保持される。よって、第二ペースト層30中の合金粉が溶融して液相を形成し、第一ペースト層20内部へ浸透しても、当該液相は銅粒子間に保持されるので、第一ペースト層20から外に流れ出す事態が抑制される。このため、上記液相による銅粒子(粉末)の焼結促進効果が高められる。加えて、仮に第一ペースト層中にボイドが形成されても上記液相がそのボイドを埋めるように作用する。したがって、金属層50におけるボイドの形成及びパターンの変形を有効に防止することができる。
【0031】
なお、第二ペースト層に含まれる合金粉に代えて銀粉および銅粉を用い、焼成時にこれらを反応させて液相を形成しようとした場合には、液相の生成速度が遅く、十分な量の液相を生成させることが困難である。液相の量を増やすためには、第一ペースト層の上に形成するペースト層(上層ペースト層)の膜厚を、本発明において必要な程度を超えて厚くする必要があるため、経済性および効率性が低下する。また、上層ペースト層に、銅粉、銀粉のような一般的な金属粉を用いた場合、
図3(a)に示すように、銅粉および水素化チタン粉を含む下層ペースト層72と、銅粉および銀粉を含む上層ペースト層74とを積層するように、同じスクリーン版を用いてスクリーン印刷により層形成を行うと、ペースト層端部において上層ペースト層74のはみ出し(X)が生じ易い。そして、このようなはみ出しが生じた状態で基板を焼成すると、チタン成分を含まない上層が基板と接触する金属層端部には窒化チタン層が形成されない結果、上層が基板に接合しないため浮き(Y)が生じる。よって、焼成後に金属層にメッキを施した場合にメッキのはみ出し、変色が起こり易い。なお、この問題を解決すべく、
図3(b)のように上層ペースト層74のサイズを小さくして、上層ペースト層74が焼結体76に触れないようにすることが考えられる。しかし、この場合には、形成されるメタライズパターン端部に浮きは生じないが、有効利用できるメタライズパターンの面積が減少してしまうという問題が生じる。
【0032】
これに対して、本発明の方法では、上層(第二ペースト層30)の金属成分として合金粉を主成分とすることにより、焼成時に上層の第二ペースト層30中の金属成分が実質的に全て溶融し、第一ペースト層20に吸収されて一体化してしまうので、上記のような端部の浮きの問題はない。また、上記一体化により、第一ペースト層20中のボイドが埋められる。また、
図3(b)のように、第二ペースト層30のはみ出しを厳密に防止すべく、第二ペースト層30を第一ペースト層20よりも小さく形成した場合においても、結局、第二ペースト層30は溶融して第一ペースト層20に吸収されて一体化するので、形成される金属層50に段差は生じず、有効利用面積が減少することはない。
【0033】
第一ペースト層20の厚さは、好ましくは3μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上70μm以下である。第二ペースト層30の厚さは、好ましくは3μm以上150μm以下、より好ましくは5μm以上70μm以下である。第一ペースト層20と第二ペースト層30の厚さの比は、好ましくは0.1以上10.0以下(第一ぺースト層/第二ペースト層)、より好ましくは0.2以上5.0以下である。
【0034】
なお、本発明において、第一ペースト層の厚みは、下記に詳述する第一ペースト組成物を窒化物セラミックス焼結体基板上に塗布し、乾燥することにより、ペースト層中の溶媒を揮発させた後のペースト層の厚みである。また、第二ペースト層の厚みも、下記に詳述する第二ペースト組成物を第一ペースト層上に塗布し、乾燥することによりペースト層中の溶媒を揮発させた後のペースト層の厚みである。
【0035】
(第一及び第二ペースト組成物)
第一ペースト層20を形成するための第一ペースト組成物は、金属成分として銅粉および水素化チタン粉(水素化チタンそのものは金属ではないが、焼成時に分解してチタンとなることから金属成分として取り扱う。)を含む。第一ペースト組成物は、その他、有機成分としてバインダー、分散剤、および溶媒を含むことが好ましい。また、第二ペースト層30を形成するための第二ペースト組成物は、金属成分として「銀と銅との合金粉」を含む。第二ペースト組成物も同様に、その他、有機成分としてバインダー、分散剤、および溶媒を含むことが好ましい。
【0036】
ここで、有機成分としては、通常の厚膜法で使用する金属ペースト(メタライズペースト)で使用される有機成分を特に制限無く使用でき、その使用量も印刷性や脱脂性等を考慮して適宜決定される。
【0037】
たとえば、バインダーとしては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ボリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のビニル基含有樹脂などを使用できる。また、印刷性等を改善する目的で、二種以上の樹脂を混合して使用することもできる。これらの中でも、不活性雰囲気中の焼成において残渣が少ない(脱脂性がよい)という観点では、アクリル樹脂が好ましく、チクソトロピック性が高く印刷性に優れるという観点ではエチルセルロース樹脂が好ましい。後述するように、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂を特定の割合で混合して使用することにより、印刷性に優れ且つ良好な脱脂性を得られることから、第一ペースト組成物に使用されるバインダーとしては、アクリル樹脂とエチルセルロース樹脂を混合して使用することが最も好ましい。一方、第二ペースト組成物に使用されるバインダーとしては、アクリル樹脂が最も好ましい。
【0038】
また、溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール等を使用できる。
【0039】
また、印刷適性や保存安定性等を向上するための添加剤として、界面活性剤、可塑剤等を添加することができる。好適に使用できる分散剤としては、リン酸エステル系、ポリカルボン酸系などを例示することができる。
【0040】
前記したように、厚膜法により金属配線を形成する工業的な方法としては、高融点金属粉末を含むペーストを用いたコファイア法およびポストファイア法が知られているが、これら方法で使用する高融点金属ペーストには、セラミックス基板との接合性を改良する目的、あるいは、熱膨張係数を調整する目的で、基板に用いられているセラミックスと同種のセラミックス粉末を添加するのが一般的であった。しかし、セラミックスは絶縁成分であるため、金属層の導電性を低下させるという問題があった。これに対し、本発明で使用する各種金属ペースト組成物には、絶縁成分であるセラミック粉末を添加する必要はない。このため、形成される金属層50の導電性がより良好なものとなる。
【0041】
第一ペースト組成物は、上記したように、金属成分として銅粉および水素化チタン粉を含む。第一ペースト組成物における銅粉および水素化チタン粉の配合割合は、銅粉100質量部に対して、水素化チタン粉が1.0質量部以上20.0質量部以下であり、好ましくは、2.0質量部以上15.0質量部以下である。
第一ペースト組成物は、金属成分として、銅粉および水素化チタン粉以外に、銀粉及び/又は「銀と銅との合金粉」(合金粉)を含んでいてもよい。第一ペースト組成物に、これら金属粉を添加することにより、焼成後に得られる金属層50において、ボイドの発生をより確実に防止できるようになり、加えて金属層50の抵抗値をより低くすることが可能となる。一方で、銀粉及び/又は合金粉の配合量が多すぎると、材料価格が高くなること、および、焼成の際に金属層中の液相量が多くなりすぎる為に形状を保持できず、精密な配線パターンの形成が困難になる。よって、第一ペースト組成物における、これら銀粉及び/又は合金粉の配合量は、銅粉100質量部に対して、1質量部以上80質量部以下とすることが好ましい。
【0042】
第一ペースト組成物中に含まれる銅粉の平均粒子径は、特に制限されるものではなく、従来のペーストに使用される銅粉と同様の粒子径を有する銅粉を使用することができる。たとえば、平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下の銅粉を使用することができる。このとき、銅粉としては、粒度分布がピークを1つのみ有する分布、例えば正規分布である銅粉を用いても良いし、粒度分布がピークを複数有する分布である銅粉、例えば平均粒子径の異なる複数種類の銅粉を混合した銅粉を用いても良い。平均粒子径の異なる銅粉を混合した混合粉を使用する場合には、平均粒子径が好ましくは1.0μm以上5.0μm以下、より好ましくは1.5μm以上3.0μm以下の銅粉(銅粉B)と、平均粒子径が好ましくは0.1μm以上1.0μm未満、より好ましくは0.2μm以上0.6μm以下の銅粉(銅粉A)との混合粉を使用することが好ましい。
なお、ここでいう平均粒子径とは、後述する他の粉末の平均粒子径を含めて、日機装株式会社製マイクロトラックを用いてレーザー回折法によって測定した値(体積平均値)を意味する。
【0043】
また、第一ペースト組成物中に含まれる水素化チタン粉の平均粒径は、特に制限されるものではなく、従来のペーストに使用される水素化チタン粉と同様の粒子径を有する水素化チタン粉を使用することができる。具体的には、平均粒子径が0.1μm以上20.0μm以下の水素化チタン粉、特に平均粒子径が0.5μm以上10.0μm以下の水素化チタン粉が好適に使用できる。尚、工業的に入手可能な水素化チタン粉は、一般的に粒度分布が広く、平均粒子径が上記範囲内であっても一部粗大粒子を含む場合がある。水素化チタン粉の粗大粒子がペースト組成物中に存在すると、後述するように金属層表面の平滑性を損ねる虞があることから、第一ペースト組成物中に含まれる水素化チタン粉は、好ましくは30μm超、より好ましくは20μm超の粒子を含まない粒度分布を有することが好ましい。つまり、水素化チタン粉の粒子径の厳密な意味での上限は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
なお、上記粒度分布は、日機装株式会社製マイクロトラックを用いてレーザー回折法によって測定した粒度分布を意味する。
【0044】
また、銀粉の平均粒子径も、特に制限されるものではなく、従来のペーストに使用される銀粉と同様の粒子径を有する銀粉を使用することができる。具体的には、平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下の銀粉、特に平均粒子径が0.5μm以上4.0μm以下の銀粉が好適に使用できる。
【0045】
また、「銀と銅との合金粉」(合金粉)の平均粒子径も、特に制限されるものではなく、従来のペーストに使用される合金粉と同様の粒子径を有する合金粉を使用することができる。具体的には、平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の合金粉、特に平均粒子径が0.5μm以上10μm以下の合金粉が好適に使用できる。
【0046】
上記範囲の平均粒子径を満足する金属成分粒子を使用することにより、スクリーン印刷の印刷性が向上するので、パターン(金属層50)のはみ出しを抑制することができる。さらには、より緻密な金属層50を形成できる。金属層50を緻密にできることにより、金属層50上にメッキ層を形成する場合において、めっき液が金属層50に浸透しメタライズ層内に残留することによって発生する、メタライズ層の変色や加熱時のメッキ膜の膨れ等の不具合を防ぐことができる。
【0047】
高精度且つ高精細な配線パターンを有するメタライズド基板或いは視認性の良好なマーカーとなる金属層を有するメタライズド基板を、容易且つ効率的に製造することを可能にする観点から、第一ペースト組成物のチクソトロピー指数は、0.2以上1.0以下であることが好ましく、0.3以上0.8以下であることが特に好ましい。ここで、チクソトロピー指数(TI)とは、JIS Z3284付属書6の方法により、スパイラル方式粘度測定により、25℃における粘度−ずり速度曲線を作成し、該粘度−ずり速度曲線のずり速度の変化に対する粘度の変化の傾き(常用対数で表す)から求めた値であり、具体的には下記式に基づいて計算される値である。
TI=log(η1/η2)/log(D2/D1) (1)
η1:ずり速度がD1のときの粘度
η2:ずり速度がD2のときの粘度
D1:1.8s
−1(3rpm)
D2:18s
−1(30rpm)
【0048】
第一ペースト組成物のチクソトロピー指数を0.2以上とすることにより、静止時のペーストの流動性を低減することができるので、スクリーン印刷で第一ペースト層を形成した際の滲みの発生を抑制することが容易になる。また、第一ペースト組成物のチクソトロピー指数を1.0以下とすることにより、スクリーン印刷時のレベリング性が向上するので、スクリーン印刷後の第一ペースト層表面に残存するメッシュ痕を軽減できる。よって、第二ペースト層を積層して焼成を行うことによる該メッシュ痕の平滑化が一層容易になるので、金属層(50)の表面平滑性をより高めることが可能となる。
【0049】
一般的にバインダーとしてアクリル樹脂を使用した場合、ペーストのチクソトロピー性を高めることは困難であるが、本発明では、第一ペースト組成物に平均粒子径が0.1μm以上1.0μm未満である銅粉(銅粉A)を一定量以上配合することによりチクソトロピー性を好ましい程度まで高めることができる。また、バインダーとして、アクリル樹脂及びエチルセルロース樹脂を特定の範囲で配合することによっても、更にチクソトロピー性を高めることができる。そして、該銅粉及び該バインダーの配合量を調整することによって、上記好ましい範囲のチクソトロピー指数を有する第一ペースト組成物とすることができる。
すなわち、第一ペースト組成物のチクソトロピー指数を0.2以上1.0以下とするためには、(1)銅粉および水素化チタン粉の配合割合を、銅粉100質量部に対し水素化チタン粉1質量部以上10質量部以下、好ましくは2.5質量部以上8.5質量部以下とし、(2)銅粉として、平均粒子径が0.1μm以上1.0μm未満である銅粉Aのみを使用するか、又は、該銅粉Aと平均粒子径が1.0μm以上5.0μm以下である銅粉Bとの混合粉であって、当該混合粉100質量部中の銅粉Aの含有量が30質量部以上100質量部未満である混合粉を使用し、(3)水素化チタン粉として、平均粒子径が0.1μm以上20μm以下の水素化チタン粉を使用すると共に、(4)バインダー樹脂を銅粉100質量部に対して1質量部以上10質量部以下配合すればよい。このとき、バインダー樹脂は、エチルセルロース樹脂およびアクリル樹脂をそれぞれ、銅粉100質量部に対して0.2質量部以上3.0質量部以下および0.5質量部以上8.0質量部以下含有することが好ましい。より好ましい第一ペースト組成物としては、平均粒子径0.2μm以上0.6μm以下の銅粉A´と平均粒子径1μm以上3μm以下の銅粉B´との混合粉であって当該混合粉100質量部中の銅粉A´の含有量が35質量部以上60質量部以下で残部が銅粉B´である混合粉である銅粉100質量部と、平均粒子径0.5μm以上10μmの水素化チタン粉3.0質量部以上8.0質量部以下と、エチルセルロース樹脂0.3質量部以上2.0質量部以下およびアクリル樹脂1.0質量部以上6.0質量部以下とを含み、チクソトロピー指数が0.3以上0.8以下である組成物を挙げることができる。なお、エチルセルロース樹脂としてはトルエン/エタノール(混合質量比8/2)の混合溶媒にエチルセルロースを5質量%となるように溶解させた溶液の25℃における粘度が4cps以上20cps以下であるエチルセルロース樹脂を使用することが好ましい。またアクリル樹脂とは、メタクリル樹脂を含む概念である。アクリル樹脂としては、ターピネオールに溶解させた場合の10質量%溶液の25℃における粘度が100cps以上1000cps以下のアクリル樹脂、特に上記溶液の25℃における粘度が150cps以上800cps以下のポリアルキルメタクリレート樹脂を使用することが好ましい。さらに、エチルセルロース樹脂とアクリル樹脂とは、配合質量比(エチルセルロース樹脂質量/アクリル樹脂質量)が0.06以上2.0以下となるように配合することが好ましい。また、これら組成物は溶媒を含むことが好ましい。さらに、これら組成物は分散剤を含むことが好ましい。
【0050】
第二ペースト組成物は、金属成分として、「銀と銅との合金粉」を含んでなる。なお、本発明において、「銀と銅との合金」とは、銀と銅とを含む固溶体、共晶または金属間化合物を意味し、「銀と銅との合金粉」とは粉末を構成する粒子が上記合金の粒子である粉末を意味する。「銀と銅との合金」は、銀及び銅以外の金属、たとえば銀ロウ材に含まれるような亜鉛、錫、カドミウムなどの金属を含んでいてもよい。ただし、焼成して得られる金属層50の導電性を高めることができるという観点からは、銀、銅、および不可避的不純物からなる銀−銅合金が好ましく、銀と銅とからなる銀−銅合金が特に好ましい。また、その融点は、ペーストに含まれるバインダーの分解温度よりも高く、かつ、銅の融点(1083℃)、特に銀の融点(962℃)よりも低いことが好ましく、630℃〜850℃であることがより好ましい。このような銀−銅合金としては、例えば、銅成分の含有割合が20質量%〜35質量%であるものが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果、すなわち、金属層におけるボイドの低減、金属層の密着性、熱伝導性、および表面平滑性の向上という効果の発揮を容易にするという観点、並びに、操作性がよく、かつ入手が容易な合金であるという観点からは、Ag−Cuの共晶組成、すなわち銅成分の含有割合が28質量%である銀と銅との合金が好ましい。
第二ペースト組成物は、金属成分として、合金粉のみを含んでいることが特に好ましい。このように第二ペースト組成物を構成することにより、第二ペースト組成物は、焼成の際に溶融して、第一ペースト層20に吸収されるので、上記したペースト層端部のはみ出しや金属層端部の浮き(
図3(a)参照)の問題が生じない。
【0051】
第二ペースト組成物は、金属成分として合金粉以外に銅粉を含んでいてもよい。第二ペースト組成物に銅粉を含ませることにより、金属層50の表面をより平滑にすることが可能になる。ただし、配合する銅粉の量が多すぎると、合金量が相対的に少なくなるために、ボイド発生防止効果が不十分となり、金属層50中にボイドが形成されるおそれがある。よって、銅粉の配合量は、合金粉100質量部に対して、1質量部以上300質量部以下とすることが好ましく、特に10質量部以上200質量部以下とすることが好ましい。
なお、第二ペースト層30に銅粉を含有させた場合であっても、上記したペースト層端部のはみ出しや金属層端部の浮き(
図3(a)参照)の問題は、合金粉を含むことにより緩和される。特に、銅粉の配合量を上記の特に好ましい範囲内とすることにより、当該緩和の効果がより一層発揮される。
第二ペースト組成物中に金属成分として含まれる各種金属粉については、第一ペースト組成物と同様である。
【0052】
第一ペースト組成物および第二ペースト組成物のそれぞれにおける金属粉末の配合割合は前記したとおりであるが、実際に第一ペースト層20および第二ペースト層30を形成するに際しては、金属層50の基板に対する密着性、金属層50の導電性、および焼成時における液相の流れ出し防止の観点から、両組成物の組み合わせや各層の厚さに応じて、ペースト層全体に含まれる金属成分の割合が所定の割合となるように制御することが好ましい。すなわち、第一ペースト層20と第二ペースト層30との積層体からなるペースト層全体について、該積層体に含まれる銅成分および銀成分の合計量を100質量部として、水素化チタン粉の配合量を1質量部以上10質量部以下とするように制御することが好ましい。ここで、銅成分および銀成分の合計とは、各ペースト組成物中の銀粉、銅粉および合金粉の合計を意味する。なお、前記ペースト層全体に含まれる銅成分および銀成分の合計量を基準としたのは、第二ペースト層30を厚く形成することができれば、第一ペースト層20中の水素化チタン粉の配合量を増加することができるからである。
【0053】
また、コスト、金属層50の導電性、および焼成時における液相の流れ出し防止の観点から、前記ペースト層全体における銀成分および銅成分の質量比は、0.15以上0.8以下(銀成分/銅成分)とすることが好ましい。なお、上記範囲内において、銀成分の含有量を多くすれば、金属層50中のボイドをより減少させる効果、および、金属層50の抵抗値をより低減する効果がある。
【0054】
(第三ペースト層40)
図2(a)、(b)に示すように、本発明のメタライズド基板100の製造方法は、第一ペースト層20と第二ペースト層30との間(
図2(a))、あるいは、第二ペースト層30上に(
図2(b))、銅粉を含む第三ペースト層40を積層する工程を含んでいてもよい。このように第三ペースト層40を形成する場合、焼成前の積層体の形態は、
図2(a)の「窒化物セラミックス焼結体基板10/第一ペースト層20/第三ペースト層40/第二ペースト層30」と、
図2(b)の「窒化物セラミックス焼結体基板10/第一ペースト層20/第二ペースト層30/第三ペースト層40」の二つの形態がある。第三ペースト層40の形成方法(ペースト組成物の塗布、ペースト粘度など)については、上記した第一ペースト層20における場合と同様である。また、
図2(c)に示したように、第三ペースト層40を第一ペースト層20および第二ペースト層30の間、ならびに、第二ペースト層30の上の、両方に形成してもよい。
【0055】
上記した焼結体基板10/第一ペースト層20/第二ペースト層30からなる積層体を焼成してメタライズド基板100を形成した場合は、第一ペースト層20に含まれる水素化チタン粉の粒径が大きい場合は、形成した金属層50の表面に凹凸が生じてしまうことがある。例えば、上記した水素化チタン粉の好ましい粒度分布範囲の上限である30μmを超える粗大粒子を含む水素化チタン粉を用いた場合は、表面に凹凸が生じてしまい、素子を搭載する際に不具合が生じる虞がある。このような場合においては、第三ペースト層40を形成することが有効である。第三ペースト層40は、第一ペースト層20と第二ペースト層30との間、あるいは、第二ペースト層30の上、いずれも、水素化チタン粉を含む第一ペースト層20の上に形成するのであるが、この銅粉を含んでなる第三ペースト層40が存在していることにより、第一ペースト層中の水素化チタン粉由来の凹凸を低減できる。
【0056】
金属層の表面をより効果的に平滑化する観点、および、金属層におけるボイド発生抑制効果を阻害せずに維持する観点から、第三ペースト層40の厚みは、好ましくは1μm以上100μm以下、より好ましくは5μm以上50μm以下、さらに好ましくは8μm以上30μm以下である。
また、第三ペースト層40の第一ペースト層20に対する厚さの比は、好ましくは0.1以上10.0以下(第三ペースト層/第一ペースト層)、より好ましくは0.2以上5.0以下である。
なお、本発明において、第三ペースト層40の厚みは、下記に詳述する第三ペースト組成物を下地ペースト層上に塗布し、乾燥することにより、ペースト層中の溶媒を揮発させた後のペースト層の厚みである。
【0057】
第三ペースト層40を形成するための第三ペースト組成物は、銅粉を含む。第三ペースト組成物は、その他、有機成分としてバインダー、分散剤、溶媒を含むことが好ましい。
ここで、有機成分としては、通常の厚膜法で使用する金属ペースト(メタライズペースト)で使用される有機成分及び第一ペースト組成物で例示した有機成分が特に制限無く使用でき、その使用量も印刷性や脱脂性等を考慮して適宜決定される。バインダーとしては、不活性雰囲気中の焼成において残渣が少ないことから、アクリル樹脂が好ましい。
第三ペースト組成物は、銅粉以外に、銀粉及び/又は合金粉を含んでいてもよい。ただし、金属層表面の平滑性を付与する観点からすると、銅粉の配合割合は、第三ペースト組成物中に含まれる金属成分(金属粉)全体を基準(100質量%)として、70質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
第三ペースト組成物中に含まれる銅粉の平均粒子径は、特に制限されるものではなく、従来のペーストに使用される銅粉と同様の粒子径を有する銅粉を使用することができる。たとえば、平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下の銅粉を好適に使用することができる。
【0058】
また、第三ペースト層40を形成する場合、第一ペースト層20、第二ペースト層30、および第三ペースト層40を併せた全ペースト層中の銅成分と銀成分の合計質量を100質量部として、第一ペースト層20に含まれる水素化チタン粉を1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。第三ペースト層40中の金属粒子の粒径については、上記したチクソトロピー指数を特に限定しない態様の第一ペースト層20の場合と同様である。また、第一ペースト層20および第二ペースト層30、および、第三ペースト層40を併せた全体における、銅成分に対する銀成分の質量比(銀成分/銅成分)は、0.15以上0.8以下とすることが好ましい。
【0059】
(焼成工程)
焼成工程においては、上記で作製した積層体110、すなわち、窒化物セラミックス焼結体基板10、第一ペースト層20、および、第二ペースト層30を有する積層体110を焼成する。これにより、窒化物セラミックス焼結体基板10上に窒化チタン層60および金属層50が形成される。なお、第三ペースト層40を形成した積層体についても焼成条件は特に変わるところは無いので、以下、積層体110の焼成について説明する(以下の説明は、該積層体についてもそのまま適用できる)。
本発明においては、非酸化性雰囲気下、耐熱性容器内で積層体110を焼成することが好ましい。
【0060】
非酸化性雰囲気としては、真空下、あるいはアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス、または水素ガス雰囲気が挙げられる。また、不活性ガス、および水素ガスの混合雰囲気であってもよい。これら非酸化性雰囲気の中でも、好ましくは真空下、または不活性ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気を採用することが好ましい。真空下で焼成を行う場合、真空度は、雰囲気中の酸素や窒素等の反応性ガスがチタンと反応するのを防ぐ目的からできるだけ高い方がよく、好ましくは、1.33×10
−1Pa以下、より好ましくは1.33×10
−2Pa以下である。なお、真空度の上限は、特に制限されるものではないが、工業的な生産を考慮すると1.33×10
−4Pa以上である。
【0061】
この耐熱性容器は、積層体110を焼成する際の温度に十分耐え得る材質で形成されるものであればよく、焼成時の高温下においても、ガスを透過せず、容器自体からガス発生が無く、且つ気密性の高いものであることが好ましい。この耐熱性容器に好適に使用できる材質を具体的に例示すれば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物焼結体、アルミナ、マグネシア、ジルコニア等の酸化物焼結体、インコロイ、ハステロイ等の耐熱合金類、および石英ガラス等を例示できる。このうち、焼成時の容器内の均熱性を確保するという点で、熱伝導性に優れる窒化物焼結体が好ましい。
【0062】
この耐熱性容器は、焼成工程における積層体110近傍の雰囲気を他の焼成炉内の雰囲気から遮断し、ペースト中のバインダーが分解・飛散して炉壁等に再付着した分解物やその他の汚染源が、焼成炉内の温度上昇に伴い再飛散して第一ペースト層20中のチタン成分と反応するのを抑制する役割を果しているものと考えられる。そのため、この耐熱性容器は、焼成工程における積層体110近傍の雰囲気を他の焼成炉内の雰囲気から遮断できるように蓋ができる構造のものを使用することが好ましい。また、耐熱性容器は、完全な密閉状態にできるものでもよいが、第一ペースト層20、第二ペースト層30、および、第三ペースト層40中のバインダーが熱分解して発生するガスを容器外へ放出できる程度の隙間を有するものであってもよい。
【0063】
また、耐熱性容器の形状は、焼成炉内において、耐熱性容器内の温度分布がないような大きさのものが好ましい。このことからも、耐熱性容器は、熱伝導性に優れる窒化物焼結体からなる容器であることが好ましい。
本発明においては、水素化チタン粉を含まない第二ペースト層30(場合によっては、第三ペースト層40も)が存在していることにより、第一ペースト層20中におけるチタンが金属層50の表面に移動することが防がれている。ここで、非酸化性雰囲気下、耐熱性容器内で積層体110を焼成することで、第一ペースト層20中におけるチタンが金属層50の表面に移動することがより効果的に防がれる。これにより、非酸化性雰囲気下、耐熱性容器内で焼成した場合には、以下に説明する窒化チタン層60が十分に形成され、金属層50の密着性が良好なものとなると共に、金属層50表面のチタン濃度が抑えられ、金属層50表面のメッキ性が良好となり、金属層50表面のクレーターが低減する、という本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0064】
焼成は、銅の融点(1083℃)以下の温度で実施することができる。ただし、高い精度の精密配線パターンを形成するためには、800℃以上950℃以下の温度で実施することが好ましい。なお、該焼成温度範囲の中で焼成温度を高くすれば、金属層50中のボイドがより減少するという効果が得られる。また、焼成時間は、配線パターン、膜厚等に応じて適宜決定すればよいが、通常は、上記温度範囲で数十秒以上1時間以下保持すれば問題なく焼成することができる。
【0065】
(窒化チタン層60)
窒化チタン層60は、第一ペースト層20中のチタン成分と、窒化物セラミックス焼結体基板10中の窒素成分とが反応することにより、窒化物セラミックス焼結体基板10と金属層50との界面において形成される。チタンと窒化物セラミックス焼結体との反応は極めて高速で進行し、反応生成物の基板に対する濡れ性が良いことが確認されている。よって、該窒化チタン層が形成されることにより、金属層50の密着性が強固なものとなると考えられる。
【0066】
窒化チタン層60は、窒化チタン以外に、銅、銀、セラミックス成分等を含んでいてもよく、窒化チタン層全体の質量を基準(100質量%)として、窒化チタンを50質量%以上、好ましくは70質量%以上含んでいる。窒化チタン層60の厚みは特に限定されないが、メタライズ層の密着性を良好なものとする点から、下限は0.05μm以上、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上であり、上限は特に限定されないが、実際の製造上、通常3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下となる。なお、この窒化チタン層60の厚みは、メタライズド基板100の断面を電子顕微鏡で観察することにより確認できる。
【0067】
(金属層50)
窒化物セラミック焼結体基板10上に第一ペースト層20を積層し、さらに、該第一ペースト層20上に第二ペースト層30を積層し(場合によっては、第三ペースト層40をも積層し)、得られた第二積層体110を焼成することにより、窒化チタン層60上に、金属層50が形成される。
金属層50は、銅100質量部に対して、銀を15質量部以上80質量部以下、好ましくは20質量部以上60質量部以下含み、チタンを5質量部以下、好ましくは3質量部以下含んで構成されることが望ましい。
なお、上記した金属層50の構成成分の質量比は、製造されたメタライズド基板100を分析して算出した値に基づいている。具体的には、焼成後に得られたメタライズド基板100について酸等によるエッチング処理を施し、金属層50(窒化チタン層の部分を除く。)のみを溶解させ、得られた溶液を分析することにより上記質量比を決定することができる。
【0068】
金属層50中の、銀の含有量が少なすぎると、金属層50の抵抗が高くなる傾向があり、逆に銀の含有量が多すぎると、材料価格が高くなり、また、焼成中に金属層の変形が起こりやすくなる傾向がある。なお、後者の傾向は金属層50の融点が低くなることによると考えられる。なお、上記範囲内において、銀の含有量を多くすれば、金属層50中のボイドを減少させる効果、および、金属層50の抵抗値を下げる効果がある。
【0069】
チタンは金属層50の電気抵抗を高くするばかりでなく、本発明者等の検討によれば、表面に偏析したチタン成分(発明者らはこのチタン成分を酸化チタンであると推測している)により、金属層50の表面の変色や、メッキ性の低下が観測される。このため、チタン(水素化チタン)は全て窒化チタン形成反応に消費され、焼成後の金属層50中には残らないことが好ましい。しかし、本発明の方法を採用しても、金属層50中のチタン量を銅100質量部に対して0.5質量部未満とすることは容易でない。また、チタン量を0.2質量部未満とすることはさらに難しい。しかしながら、チタン含量が5質量部以下であれば、変色やメッキ性低下といった上記悪影響は実用上許容し得る範囲まで抑制される。さらには、チタン量が3質量部以下であれば実用上特に問題となることはない。
【0070】
前記したように、金属層の表面変色を防止し、メッキ性を良好にするためには、金属層50の表層部のチタン濃度を低くすることが重要である。チタン成分は、焼成雰囲気中に微量存在する酸素などの影響により、焼成中に金属層表面に拡散移動し易いという性質がある。本発明の方法では、第一ペースト層のみにチタン成分を含有させるため、このチタン成分の拡散移動を抑制することができる。特に、非酸化性雰囲気下、耐熱性容器内で焼成することにより、金属層50表面のチタン濃度をより効果的に低減することができる。
このような効果は、金属層50の表層部におけるチタン濃度を測定することにより評価できる。すなわち、表層部の組成分析に適したエネルギー分散型X線分析法により電子線の加速電圧を10kVで測定したときの銅及び銀の質量濃度の和(A)とチタンの質量濃度(B)との比(B/A)によって評価することができる。
本発明者等の検討によれば、上記比(B/A)が0.2を越える場合には、金属層50の表面が変色し、メッキ層とメタライズ層との密着性が低下する傾向にあることが確認された。これに対し、本発明の方法によれば上記比(B/A)を0.01以上0.2以下、好ましくは0.02以上0.15以下とすることができる。
【0071】
従来の方法によって得られたメタライズ基板であっても、変色した金属層表面をエッチング、研磨等により処理すれば、金属層表面のB/A値を本願の好ましい範囲に調整することは不可能ではない。しかしながら、このような基板では、窒化チタン層が十分に形成されていないため、金属層の密着強度は不十分なままである。
これに対し、本発明の方法によって(焼成後得られた)メタライズド基板100の金属層50の表面をエッチングまたは研磨により処理することにより、金属層の基板に対する密着性が高いという特徴をもったまま、表面メッキ性をさらに向上させることができる。
【0072】
金属層50の厚みは、配線パターンの導電性を良好にし、さらに精密配線パターンを形成しやすいという観点から好ましくは3μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下である。
【0073】
(メタライズド基板100の密着強度および導電性)
本発明のメタライズド基板100は、上記したように、窒化物セラミックス焼結体基板10と金属層50との間に、窒化チタン層60を備えているため、金属層50の密着強度が高くなっていると考えられ、好ましくは□2mm(1辺が2mmの正方形の意であり、面積は4mm
2である。)の金属層パターンで評価したときの密着強度が、50N以上、より好ましくは80N以上、さらに好ましくは90N以上の密着強度を有するメタライズド基板100とすることができる。
【0074】
なお、配線パターンの接合強度は、42アロイ製ネイルヘッドピンで先端部の径がφ1.1mmで、且つ先端部表面にニッケルメッキを施したものを用い、メタライズド基板100の金属層50表面にNi/Auメッキを施し、このメッキ膜にネイルヘッドピンをPb−Sn半田にて垂直に半田付けし、このネイルヘッドピンを10mm/分の速度で垂直方向に引っ張り、ネイルヘッドピンが剥がれた時の強度を接合強度とした。
【0075】
また、本発明のメタライズド基板100は、金属層50をチタンの含有量を所定量以下とし、所定量の銀成分を含み、また、金属層50中のボイドを減少させることにより、導電性を向上させることができ、四端子法にて測定した抵抗率で、7.5×10
−8Ω・m以下、好ましくは7.0×10
−8Ω・m以下とすることができる。
【実施例】
【0076】
<
参考例1>
(ペースト組成物1の作製)
平均粒子径が0.3μmである銅粉末15質量部、平均粒子径が2μmである銅粉末82質量部及び平均粒子径が5μmである水素化チタン粉末3質量部と、ポリアルキルメタクリレートをターピネオールに溶解させたビヒクルとを乳鉢を用いて予備混合した後、3本ロールミルを用いて分散処理することにより、ペースト組成物1を作製した。
【0077】
(ペースト組成物2の作製)
平均粒子径が6μmであるAg−Cu合金粉末(BAg−8、組成:銀72wt%−銅28wt%)と、ポリアルキルメタクリレートをターピネオールに溶解させたビヒクルとを乳鉢を用いて予備混合した後、3本ロールミルを用いて分散処理することにより、ペースト組成物2を作製した。
【0078】
(メタライズド基板の製造)
作製した上記ペースト組成物1をスクリーン印刷法にて厚さ0.64mmの窒化アルミニウム焼結体基板(トクヤマ社製、商品名SH−30)上に印刷し、100℃で10分間乾燥させ第一ペースト層を形成した(第一ペースト層の厚みは15μmであった)。この際、第一ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第一ペースト層の質量を算出した。次いで、上記ペースト組成物2をスクリーン印刷法にて第一ペースト層上に重ねて印刷し、100℃で10分間乾燥させ第二ペースト層を形成した(第二ペースト層の厚みは10μmであった)。この際、第二ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第二ペースト層の質量を算出した。バインダーとして使用したポリアルキルメタクリレートの質量を除いた第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比:第二ペースト層/第一ペースト層)は、0.68であった。この第一ペースト層と第二ペースト層の質量比より、第一ペースト層および第二ペースト層を併せた銅粉と合金粉末の合計量を100質量部としたときの水素化チタン粉の量を算出したところ、1.8質量部であった。また、第一ペースト層および第二ペースト層を併せた銀成分と銅成分の質量比は、0.42(銀成分/銅成分)であった。
【0079】
次いで、真空中(真空度4×10
−3Pa〜8×10
−3Pa)、850℃にて30分間焼成することにより、メタライズド基板を得た。この際、窒化アルミニウム製のセッター内(密閉容器内)に基板を収容した状態にて基板の焼成をおこなった。得られたメタライズド基板のメタライズ表面の色調は、淡橙色であった。メタライズ層(金属層)の厚みは20μmであった。以上のペースト組成物1及びペースト組成物2の組成を表1に示し、前記第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比)、各ペースト層の厚み、水素化チタン粉の量、銀成分と銅成分の質量比、メタライズド基板の焼成温度、および焼成時間を表2に示す。得られたメタライズド基板は、以下の分析、評価を行った。結果を表2、3に示す。
【0080】
<
参考例2〜3>
参考例1において、ペーストの原料組成を表1に示した組成とした以外は、
参考例1と同様にしてメタライズド基板を作製し、以下の分析・評価をおこなった。結果を表2及び3に示す。
【0081】
<
参考例4:
図2(a)の態様>
(ペースト組成物1、2の作製)
参考例1において、ペーストの原料組成を表1に示した組成とした以外は、
参考例1と同様にして、ペースト組成物1、ペースト組成物2を作製した。
(ペースト組成物3の作製)
平均粒子径が0.3μmである銅粉末20質量部、平均粒子径が2μmである銅粉末80質量部と、ポリアルキルメタクリレートをターピネオールに溶解させたビヒクルとを乳鉢を用いて予備混合した後、3本ロールミルを用いて分散処理することにより、ペースト組成物3を作製した。
(メタライズド基板の製造)
作製した上記ペースト組成物1をスクリーン印刷法にて厚さ0.64mmの窒化アルミニウム焼結体基板(トクヤマ社製、商品名SH−30)上に印刷し、100℃で10分間乾燥させ第一ペースト層を形成した(第一ペースト層の厚みは14μmであった)。この際、第一ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第一ペースト層の質量を算出した。次いで、上記ペースト組成物3をスクリーン印刷法にて第一ペースト層上に重ねて印刷し、100℃で10分間乾燥させ第三ペースト層を形成した(第三ペースト層の厚みは11μmであった)。この際、第三ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第三ペースト層の質量を算出した。次いで、上記ペースト組成物2をスクリーン印刷法にて第三ペースト層上に重ねて印刷し、100℃で10分間乾燥させた。更に再度ペースト組成物2を重ねて印刷、乾燥をおこない、第二ペースト層を形成した(第二ペースト層の厚みは21μmであった)。この際、第二ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第二ペースト層の質量を算出した。バインダーとして使用したポリアルキルメタクリレートの質量を除いた第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比:第二ペースト層/第一ペースト層)は、1.7であった。また、バインダーとして使用したポリアルキルメタクリレートの質量を除いた第一ペースト層と第三ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比:第三ペースト層/第一ペースト層)は、0.92であった。この第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比)、および第一ペースト層と第三ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比)より、全ペースト層を併せた銅粉と合金粉末の合計量を100質量部としたときの水素化チタン粉の量を算出したところ、2.3質量部であった。また、全ペースト層を併せた銀成分および銅成分の質量比は、0.53(銀成分/銅成分)であった。以降、
参考例1と同様にして焼成し、メタライズド基板を得た。得られたメタライズド基板は、以下の分析、評価をおこなった。
【0082】
<
参考例5:
図2(b)の態様>
(メタライズド基板の製造)
参考例4で作製した上記ペースト組成物1をスクリーン印刷法にて厚さ0.64mmの窒化アルミニウム焼結体基板(トクヤマ社製、商品名SH−30)上に印刷し、100℃で10分間乾燥させ第一ペースト層を形成した(第一ペースト層の厚みは14μmであった)。この際、第一ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第一ペースト層の質量を算出した。次いで、
参考例4で作製したペースト組成物2をスクリーン印刷法にて第一ペースト層上に重ねて印刷し、100℃で10分間乾燥させた。更に再度ペースト組成物2を重ねて印刷、乾燥をおこない、第二ペースト層を形成した(第二ペースト層の厚みは21μmであった)。この際、第二ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第二ペースト層の質量を算出した。次いで、
参考例4で作製したペースト組成物3をスクリーン印刷法にて第二ペースト層上に重ねて印刷し、100℃で10分間乾燥させ第三ペースト層を形成した(第三ペースト層の厚みは11μmであった)。この際、第三ペースト層形成前後の基板の質量変化より、基板上に形成された第三ペースト層の質量を算出した。バインダーとして使用したポリアルキルメタクリレートの質量を除いた第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比:第二ペースト層/第一ペースト層)は、1.7であった。また、バインダーとして使用したポリアルキルメタクリレートの質量を除いた第一ペースト層と第三ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比:第三ペースト層/第一ペースト層)は、0.90であった。この第一ペースト層と第二ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比)、および第一ペースト層と第三ペースト層の質量比(金属成分のみの質量比)より、全ペースト層を併せた銅粉と合金粉末の合計量を100質量部としたときの水素化チタン粉の量を算出したところ、2.3質量部であった。また、全ペースト層を併せた銀成分および銅成分の質量比は、0.53(銀成分/銅成分)であった。以降、
参考例1と同様にして焼成し、メタライズド基板を得た。得られたメタライズド基板は、以下の分析、評価をおこなった。
【0083】
<比較例1〜4>
参考例1において、ペーストの原料組成を表1に示した組成とした以外は、
参考例1と同様にしてメタライズド基板を作製し、以下の分析・評価をおこなった。但し、比較例1、3及び4では、第二ペースト層を形成しなかった。結果を表2及び3に示す。
【0084】
<メタライズ層(金属層)の分析>
(金属層の組成分析)
メタライズド基板を50%硝酸水溶液中に浸漬し、金属層を溶解し、得られた溶液及び黒色の沈殿物を全て回収した。この際、金属層を除去した基板には、黄金色の窒化チタン層が残存していた。回収した溶液に更にフッ化水素酸及び過酸化水素を加え、黒色の沈殿物を全て溶解した後、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により溶液中の銅、銀、チタン成分の定量をおこなった。得られた分析結果を表2に示す(Cu100質量部当りの含有量)。
【0085】
(金属層表面のチタン量の分析)
金属層表面をエネルギー分散型X線分析装置(Oxford Instruments社製INCA Energy350)を備えた走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−3400N)にて分析をおこなった。分析時の電子の加速電圧は10kVとし、検出された元素の質量濃度より銅及び銀の質量濃度の和(A)に対するチタンの質量濃度(B)の比(B/A)を算出した。結果を表2に示す。
【0086】
(窒化チタン層形成の有無の確認)
メタライズド基板を樹脂に包埋して研磨し、メタライズド基板断面の観察試料を作製した。得られた観察試料を前記走査型電子顕微鏡にて観察し、基板とメタライズ層との界面における窒化チタン層の厚みを確認した。結果を表3に示す。
【0087】
<メタライズド基板の評価>
(金属層内のボイド量の評価)
上記で得られたメタライズド基板断面の観察試料を前記走査型電子顕微鏡(観察倍率2000倍であり、金属層の面積として4×10
−3mm
2の範囲を評価)にて観察し、金属層中のボイドの量を評価した。金属層断面のうち、ボイドの占める面積の割合が1%未満である場合を「○」、1%以上5%未満を「△」、5%以上を「×」とした。結果を表3に示す。
【0088】
(金属層表面のクレーターの評価)
メタライズド基板の金属層表面をレーザー走査顕微鏡にて観察し、金属層表面のクレーター状の欠陥(以下、単にクレーターともいう)の発生頻度を評価した。クレーターを内部に含む最小の円の直径をクレーターの大きさと定義し、その大きさと発生数を計測した。クレーターの大きさが10μm以上であるものの数が、1mm
2辺り5個未満を「○」、5個以上20個未満を「△」、20個以上を「×」とした。結果を表3に示す。
【0089】
(金属層端部のはみ出し量の評価)
印刷・乾燥後のペースト層パターンと基板との境界位置を基準としたときに、焼成後に金属層端部からはみ出したメタライズ成分のはみ出し量を以下基準にて評価した。はみ出し量が15μm未満を「○」、15μm以上50μm未満を「△」、50μm以上を「×」として判定した。結果を表3に示す。
【0090】
(メタライズの体積抵抗率の評価)
メタライズド基板に形成した金属層パターンの体積抵抗率を4端子法により測定した。
結果を表3に示す。
【0091】
(接合強度の評価)
得られたメタライズド基板にニッケル無電解メッキを約2.5μm、次いで金無電解メッキを約0.4μm施した後、金属層の接合試験を行った。2mm角の金属層パターン上に先端部の径がφ1.1mmで、且つ先端部表面にニッケルメッキを施した42アロイ製ネイルヘッドピンを基板と垂直となるようにPb−Sn半田にて半田付けし、ピンを10mm/minの速度で垂直に引張り、基板から破断した際の荷重を記録した。同様の試験を5回実施して荷重の平均値を算出した。結果を表3に示す。また、破断した際の破壊モードを確認した。結果を表3に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
比較例1の製造方法では、ペースト組成物中にAg成分を含んでなく、焼成時に液相が生成しなかったために、焼結が不十分となり窒化チタン層の形成も殆ど認められなかった。このため、メタライズド基板の接合強度が極めて小さく、メタライズド基板にニッケル無電解メッキを施す際、メッキの前処理工程においてメタライズ層が剥離したため、接合強度の試験ができなかった。比較例2の製造方法では、ペースト組成物中に水素化チタン粉を含有していない為、得られたメタライズド基板において窒化チタン層の形成が認められなかった。このため、メタライズド基板の接合強度が極めて小さく、メタライズド基板にニッケル無電解メッキを施す際、メッキの前処理工程においてメタライズ層が剥離したため、接合強度の試験ができなかった。比較例3の製造方法では、Ag−Cu合金粉末を含む第二ペースト層を第一ペースト層上に形成せず、代わりにAg−Cu合金粉末を第一ペースト層に添加したため、焼成時にAg−Cu合金粉末が溶融した際に生成した多数の空隙が埋まることなく金属層中に残存した。このため、金属層表面にクレーターがみられ、金属層内にはボイドがみられた。比較例4の製造方法では、ペースト組成物としてAg−Cu合金粉末を用いたものであり、得られたメタライズド基板における金属層中の銀の含有量が非常に多くなった。このため、メタライズパターンからのはみ出しが多かった。
【0096】
<実施例6>
(ペースト組成物1の作製)
平均粒子径が0.3μmである銅粉末40.7質量部、平均粒子径が2μmである銅粉末59.3質量部、平均粒子径が0.6μmである銀粉末40.7質量部及び平均粒子径が5μmである水素化チタン粉末7.4質量部を、アクリル樹脂(ポリアルキルメタクリレート)1.2質量部、エチルセルロース(グレード7cps)1.9質量部及び分散剤0.3質量部をターピネオールに溶解させたビヒクルに加え、乳鉢を用いて予備混合した後、3本ロールミルを用いて分散処理することにより、ペースト組成物1を作製した。得られたペースト組成物1について、スパイラル方式粘度計(マルコム社製、PCU−2−1)を用いて、JIS Z3284付属書6の方法により、ローターの回転数を変えたときの25℃での粘度(Pa・s)を測定し、チクソトロピー指数(TI)を算出した。結果を表4に示す。
【0097】
(ペースト組成物2の作製)
平均粒子径が6μmであるAg−Cu合金粉末(BAg−8、組成:銀72wt%−銅28wt%)50質量部、平均粒子径が0.3μmである銅粉末35質量部及び平均粒子径が2μmである銅粉末15質量部をポリアルキルメタクリレート4質量部及び分散剤0.2質量部をターピネオールに溶解させたビヒクルに加え、乳鉢を用いて予備混合した後、3本ロールミルを用いて分散処理することにより、ペースト組成物2を作製した。
【0098】
(メタライズド基板の製造)
厚さ0.64mmの窒化アルミニウム焼結体基板(トクヤマ社製、商品名SH−30)に上記で作製したペースト組成物1をライン幅80μm、長さ320μmの十字型のパターンを有するスクリーン版(325メッシュ、乳剤厚7μm)を用いてスクリーン印刷し、100℃で10分間乾燥をおこない第一ペースト層を形成した。次いで、上記で作製したペースト組成物2をライン幅40μm、長さ280μmの十字型のパターンを有するスクリーン版(325メッシュ、乳剤厚7μm)を用いて第一ペースト層上にスクリーン印刷し、100℃で10分間乾燥をおこない第二ペースト層を形成した。この際、ペースト組成物2が第一ペースト上からはみ出して窒化アルミニウム焼結体基板上に印刷されないよう、第一ペースト層の十字パターンの中心と第二ペースト層の十字パターンの中心が重なるように位置合わせをして印刷した。次いで、真空中(真空度4×10
−3Pa〜8×10
−3Pa)、850℃にて30分間焼成することにより、メタライズド基板を得た。これとは別に、10mm角の正方形のパターンを有するスクリーン版(325メッシュ、乳剤厚7μm)を用い、同様の方法でメタライズド基板を作製した。
【0099】
(金属層パターン形状の評価)
図4に示すように、十字型の金属層81が形成されたメタライズド基板表面をレーザー顕微鏡で観察し、十字型81の対向する凹角の頂点を結ぶ線分の距離83を測定した。なお、頂点が明確でない場合は距離が最短となる線分とした。測定して得られた距離83とスクリーンマスクにおける十字型82の対向する凹角の頂点を結ぶ線分の距離84との差(μm)を求め、パターン滲み量とした。結果を表4に示す。
【0100】
(金属層表面の平滑性の評価)
上記で得られた10mm角の正方形の金属層パターンを有するメタライズド基板の金属層表面を、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム554A)を用いて測定し、算術平均粗さ(Ra)(μm)を求めた。結果を表4に示す。
【0101】
<実施例7〜
10、参考例11>
実施例6において、ペースト組成物1の原料組成を表4に示した組成にした以外は、実施例6と同様にしてメタライズド基板を作製し、評価をおこなった。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例9〜
10及び参考例11では、平均粒子径が0.3μmの銅粉の配合量が大きくなるほどチクソトロピック指数が高くなっており、それに伴い、パターン滲み量が減少した。
実施例6〜8では、バインダーとしてエチルセルロース及びアクリルを配合している為、アクリルのみを配合している実施例9に比較して、平均粒子径が0.3μmの銅粉の配合量が同じであるにも拘らずチクソトロピック指数が高くなり、それに伴いパターン滲み量も小さくなった。また、算術平均粗さ(Ra)は、チクソトロピック指数によらずほぼ同程度の値となっているが、これは第二ペースト層を積層して焼成したことによる、表面平滑化の作用であると考えられる。