(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パターニングデバイスにより前記入力放射ビームにパターンが付与された後に前記入力放射ビームが前記光学系に入射し、前記放射マップは前記パターンに関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
偏光依存特性を示す前記マップを取得することは、前記光学系の放射ビームへの影響をモデリング・ソフトウェアを用いてモデリングすることを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【0004】
パターニングデバイスによりパターンが付与された放射は、投影系を用いて基板に焦点合わせされる。投影系は、一つ以上の光学収差を取り込む可能性があり、これにより、基板から形成される像が、パターニングデバイスにより付与される像から逸脱する。
【0005】
例えば、このような一つ以上の収差を補正することが望ましい。
【0006】
例えば、像補正方法を提供することが望ましい。本明細書または他に特定されていようとなかろうと、従来技術の一つ以上の課題を少なくとも部分的に解決することが望ましい。
【0007】
ある態様によれば、光学系により形成される光学像を補正する方法が提供される。この方法は、光学系の像平面における空間位置ごとに光学系の瞳面にわたる光学系の偏光依存特性を示すマップを取得することと、光学系の偏光依存特性を示すマップと、入力放射ビームの強度および偏光の放射マップとを組み合わせて、像マップを形成することと、像マップを用いて、光学系を通過するよう入力放射ビームを方向付けることにより形成される光学像を補正することと、を備える。
【0008】
偏光依存特性の影響の補正は、光学系により形成される光学像の精度を改善するので有益である。本明細書における光学像の補正に関する言及は、光学像が所望の光学像に近づくよう調整されるという意味として解釈してよい。光学像が所望の光学像に完全に一致するように光学像を調整することに限定することを意図していない。
【0009】
パターニングデバイスにより入力放射ビームにパターンが付与された後に入力放射ビームが光学系に入射し、放射マップはパターンに関する情報を含んでもよい。
【0010】
光学像の補正は、像マップと放射マップの差として補正マップを決定することにより達成され、その後、補正マップを用いて、光学系を通過するよう入力放射ビームを方向付けることにより形成される光学像を補正してもよい。
【0011】
光学像の補正は、像マップを用いて、光学系を通過するよう入力放射ビームを方向付けることにより形成される光学像への偏光依存特性の影響を決定し、その後、その光学像を補正する補正を行うことにより達成されてもよい。
【0012】
光学像は、光学系の光学素子(例えばレンズ)を操作することにより達成されてもよい。
【0013】
光学像の補正は、パターニングデバイスのパターンを修正することにより達成されてもよい。
【0014】
偏光依存特性を示すマップを取得することは、偏光依存特性を示すマップを測定することを含んでもよい。
【0015】
偏光依存特性を示すマップを測定することは、異なる偏光状態を有する3つ以上のキャリブレーション放射ビームを光学系を通るよう連続的に方向付けることと、各キャリブレーション放射ビームに対して光学系から出射する放射の特性の出力マップを決定することと、出力マップを組み合わせて、光学系の瞳面にわたる光学系の偏光依存特性の振幅および方向を示すマップを決定することと、を含んでもよい。
【0016】
光学系の偏光依存特性はリタデーションを含み、光学系から出射する放射の特性の出力マップは波面を含んでもよい。
【0017】
光学系から出射する波面は、シアリング干渉計を用いて測定されてもよい。
【0018】
光学系の偏光依存特性はディアテニュエーションを含み、光学系から出射する放射の特性の出力マップは強度マップを含んでもよい。
【0019】
一つ以上のキャリブレーション放射ビームは、双極強度分布を有し、双極の2つの対向するセクターを二等分するラインに対して実質的に垂直な方向に直線偏光しており、異なるキャリブレーション放射ビームに対する双極の方位は異なってもよい。
【0020】
偏光依存特性を示すマップを取得することは、光学系の放射ビームへの影響をモデリング・ソフトウェアを用いてモデリングすること含んでもよい。
【0021】
偏光依存特性を示すマップを取得することは、方位ゼルニケ多項式(OZP)の線形展開の係数を決定することを含んでもよい。
【0022】
偏光依存特性を示すマップを取得することは、メモリからマップを読み出すことを含んでもよい。
【0023】
偏光独立性の影響も補正されてもよい。
【0024】
光学系は、リソグラフィ装置の投影系であってもよい。
【0025】
ある態様によれば、基板を保持するよう構成された基板テーブルと、基板に像を形成するために、基板の目標部分にパターンを有する放射ビームを投影するよう構成された投影系と、プロセッサと、を備えるリソグラフィ装置が提供される。プロセッサは、投影系の像平面における空間位置ごとに投影系の瞳面にわたる投影系の偏光依存特性を示すマップを取得し、偏光依存特性を示すマップと、瞳面における入力放射ビームの強度および偏光の放射マップとを組み合わせて、瞳面における像マップを形成し、投影系が入力放射ビームを受ける際に、像マップを用いて投影系により形成される像を補正する。
【0026】
当該装置は、本明細書に記載の方法の任意の特徴を実行してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について本文書において特に言及をしてきたが、本明細書で述べたリソグラフィ装置は、他の応用形態も有していることを理解すべきである。例えば、集積された光学システム、磁気領域メモリ用の誘導及び検出パターン(guidance and detection pattern)、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造といった応用である。当業者は、このような代替的な応用形態の文脈において、本明細書における「ウェハ」または「ダイ」という用語のいかなる使用も、それぞれより一般的な用語である「基板」または「目標部分」と同義とみなすことができることを認められよう。本明細書で参照された基板は、例えばトラック(通常、レジスト層を基板に付加し、露光されたレジストを現像するツール)や計測または検査ツールで露光の前後に加工されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示は、そのような基板処理工具または他の工具に対しても適用することができる。さらに、例えば多層ICを作製するために二回以上基板が加工されてもよく、その結果、本明細書で使用された基板という用語は、複数回処理された層を既に含む基板のことも指してもよい。
【0037】
本明細書で使用される「照射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(UV)照射(例えば、365、248、193、157、または126nmの波長を有する)、極端紫外線(EUV)照射(例えば、5−20nmの範囲の波長を有する)、並びにイオンビームまたは電子ビームなどの粒子ビームを含む、あらゆるタイプの電磁気照射を包含する。
【0038】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用されうるいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
【0039】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、さらに各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。このようにして、反射ビームにパターンが付与される。
【0040】
支持構造は、パターニングデバイスを保持する。支持構造は、パターニングデバイスの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持構造は、機械的固定、真空固定、または、例えば真空条件下での静電固定などのパターニングデバイスを保持するその他の固定用技術を用いてもよい。支持構造は、例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスを例えば投影系に対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0041】
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光放射あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされる各種の投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、および反射屈折光学系が含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられうる。
【0042】
照明系もまた、放射ビームの方向や形状の調整または制御用に、屈折光学素子、反射光学素子、および反射屈折光学素子を含む各種光学部品を包含してよい。そのような部品は、以下において、まとめて又は単独で「レンズ」と称されてもよい。
【0043】
リソグラフィ装置は二つ以上(二つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブル(及び/または二つ以上の支持構造)を備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルが並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
【0044】
リソグラフィ装置は、投影系の最終要素と基板との間の空間を満たすために、基板が比較的高い屈折率を有する例えば水などの液体に浸されるものであってもよい。液浸技術は、投影系の開口数を増大させるための技術において周知である。
【0045】
図1は、本発明の特定の実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームPB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整する照明系(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持する、アイテムPLに対してパターニングデバイスを正確に位置決めする第1位置決め装置PMに接続されている支持構造MTと、
基板(例えばレジストでコーティングされたウェーハ)Wを保持する、アイテムPLに対して基板を正確に位置決めするために第2位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウェハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームPBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに結像するよう構成された投影系(例えば屈折投影レンズ)PLと、を備える。
【0046】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイ)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0047】
イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを備える。あるいは光源が例えば水銀ランプである場合には、光源は、装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系または放射システムと総称される。
【0048】
イルミネータILは、ビームの強度分布を変更してもよい。イルミネータは、イルミネータILの瞳面における環状領域内で強度分布がノンゼロとなるように、放射ビームの半径範囲を限定するよう配置されてよい。加えてまたは代えて、イルミネータILは、瞳面の複数の等間隔のセクターにおいて強度分布がノンゼロとなるように、瞳面のビームの分布を限定するよう機能してもよい。イルミネータILの瞳面における放射ビームの強度分布は、照明モードと称されてもよい。
【0049】
イルミネータILは、放射ビームの強度分布を調整するよう構成されたアジャスタAMを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。イルミネータILは、ビームの角度分布を変更するよう機能してもよい。例えば、イルミネータは、強度分布がノンゼロである瞳面のセクターの数および角度範囲を変更するよう機能してもよい。イルミネータの瞳面におけるビームの強度分布を調整することにより、異なる照明モードが得られる。例えば、イルミネータILの瞳面における強度分布の半径範囲および角度範囲を限定することにより、強度分布は、例えば、双極(ダイポール)分布、四極(クアドラポール)分布または六極(ヘキサポール)分布(それぞれ
図5A−C参照)などの多極(マルチポール)分布を有してよい。所望の照明モードは、イルミネータIL中に照明モードを提供する光学部品を挿入することにより、または空間光変調器を用いることにより獲得されてよい。
【0050】
イルミネータILは、アジャスタAMを用いて、ビームの偏光を変えるとともに、偏光を調整するよう機能してもよい。イルミネータILの瞳面を横切る放射ビームの偏光状態は、偏光モードと称されてもよい。異なる偏光モードを使用することにより、基板W上に形成される像に大きなコントラストをもたらすことが可能となる。放射ビームは、非偏光であってもよい。あるいは、イルミネータは、放射ビームを直線偏光するよう配置されてもよい。放射ビームの偏光方向は、イルミネータILの瞳面にわたって変化してもよい。放射の偏光方向は、イルミネータILの瞳面の異なる領域で異なっていてもよい。放射の偏光状態は、照明モードに依存して選択されてもよい。多極照明モードにおいては、放射ビームの各極の偏光は、イルミネータILの瞳面におけるその極の位置ベクトルと概して垂直であってよい。例えば、双極照明モードにおいては、放射は、双極の2つの対向するセクターを二等分するラインと実質的に垂直な方向に直線偏光されてもよい(
図5A参照)。放射ビームは、2つの異なる直交方向の一方に偏光されてもよい。これは、X偏光状態およびY偏光状態と称されてもよい。四極照明モードにおいては、各極のセクターの放射は、セクターを二等分するラインと実質的に垂直な方向に直線偏光されてもよい(
図5B参照)。この偏光モードは、XY偏光と称されてもよい。同様に、六極照明モード(
図5C参照)においては、各極のセクターにおける放射は、セクターを二等分するラインと実質的に垂直な方向に直線偏光されてもよい。この偏光モードはTE偏光と称されてもよい。
【0051】
加えて、イルミネータILは、通常、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備える。イルミネータは、ビーム断面における所望の均一性及び強度分布を有する、調整された放射ビームPBを提供する。
【0052】
放射ビームPBは、支持構造MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射する。パターニングデバイスMAを横切った後、ビームPBは、レンズPLを通過する。レンズPLはビームを基板Wの目標部分Cに焦点合わせする。第2位置決め装置PWおよび位置センサIF(例えば、干渉計)を用いることにより、例えばビームPBの経路に異なる目標部分Cを位置決めするように、基板テーブルWTを正確に移動させることができる。同様に、第1位置決め装置PMおよび他の位置センサ(
図1には明示せず)を用いることにより、例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や露光走査中に、ビームPBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。一般に、オブジェクトテーブルMTおよびWTの移動は、位置決め装置PMおよびPWの一部を構成する、ロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)を用いて実現される。しかしながら、ステッパの場合には(スキャナとは対称的に)、支持構造MTは、ショートストロークアクチュエータのみに接続されてもよいし、または固定されてもよい。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1,M2および基板アライメントマークP1,P2を用いて位置合わせされてよい。
【0053】
図示の装置は以下の好適なモードで使用することができる。
1.ステップモードにおいては、ビームPBに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルWTがx方向及び/またはy方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
2.スキャンモードにおいては、ビームPBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PLの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、ビームPBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0054】
上記で記載したモードの組み合わせおよび/または変形例を使用してもよいし、全く別のモードを使用してもよい。
【0055】
投影系PLは、不均一な光学的伝達関数を有し、これが基板Wに結像されるパターンに影響を与える可能性がある。非偏光放射においては、このような影響は2つのスカラーマップにより非常によく説明することができる。スカラーマップは、投影系PLの瞳面における位置の関数として、投影系PLから出射する放射の透過(アポダイゼーション)および相対位相(収差)を表す。透過マップおよび相対位相マップとも称されるこれらのスカラーマップは、一式の基底関数の線形結合として表されてよい。特に便利なセットは、ゼルニケ多項式であり、これは単位円に規定される一連の直交多項式を形成する。各スカラーマップの決定は、そのような展開の係数を決定することを含んでよい。ゼルニケ多項式は単位円上で直交しているので、ゼルニケ係数は、順々に各ゼルニケ多項式で測定されたスカラーマップの内積を計算し、これをそのゼルニケ多項式のノルムの二乗で割ることにより決定されてよい。
【0056】
透過マップおよび相対位相マップは、場(フィールド)システムに依存する。すなわち、一般的に、各投影系PLは、各フィールドポイントに対して(すなわち、その像平面における各空間的位置に対して)異なるゼルニケ展開を有する。投影系PLの瞳面における相対位相は、放射を、例えば投影系PLの対物面(すなわちパターニングデバイスMAの面)の点状光源から、投影系PLを介して投影し、シアリング干渉計を用いて波面(すなわち、同位相の点の軌跡)を測定することにより決定されてよい。シアリング干渉計は共通光路干渉計であり、それ故、有利なことに、波面を測定するのに第2の参照ビームを必要としない。シアリング干渉計は、投影系(すなわち基板テーブルWT)の像平面に配置された例えば二次元グリッドの回折格子と、投影系PLの瞳面と共役な面に干渉パターンを検出するよう配置された検出器とを備えてもよい。干渉パターンは、シアリング方向の瞳面の座標に対して、放射の位相の導関数と関係する。検出器は、例えば電荷結合素子などのセンサ素子のアレイを備えてもよい。
【0057】
一実施形態では、回折格子は、2つの直交方向に連続的に走査される。2つの直交方向は、投影系PLの座標系の軸(x軸およびy軸)と一致してもよいし、あるいはこれらの軸に対して例えば45度の角度をなしてもよい。走査は、整数の格子周期、例えば一つの格子周期を超えて行われてもよい。走査は、一方向の位相変化を平均化し、他方向の位相変化を再構成することを可能とする。これにより、両方向の関数として波面を測定することが可能となる。
【0058】
最先端のリソグラフィ装置LAの投影系PLは、目に見える縞模様を生成せず、従って波面の測定の精度は、例えば回折格子を移動するなどの位相ステッピング技術を用いて向上することができる。ステッピングは、回折格子の面内且つ測定の走査方向に垂直な方向で行われてよい。ステッピング範囲は、一つの格子周期であってよく、少なくとも3つの(均等に分布した)位相ステップが用いられてもよい。つまり、例えば、y方向で3つの走査測定が行われてよい。各走査測定は、x方向の異なる位置に対して行われる。この回折格子のステッピングは、位相変化を強度変化に効果的に変換し、位相情報の測定を可能とする。格子は、検出器を較正するために、回折格子に対し垂直な方向(z方向)にステップされてもよい。
【0059】
投影系PLの瞳面における透過(アポダイゼーション)は、放射を、例えば投影系PLの対物面(すなわちパターニングデバイスMAの面)の点状光源から、投影系PLを介して投影し、検出器を用いて投影系PLの瞳面と共役な面における放射の強度を測定することにより決定されてよい。収差を決定するために、波面を測定するのに用いたのと同じ検出器が用いられてもよい。投影系PLは、複数の光学素子(例えばレンズ)を備えてよく、(フィールド全体の瞳面にわたる位相変化)収差を補正するために、一つまたは複数の光学素子を調整するよう構成された調整機構PAをさらに備えてもよい。これを達成するために、調整機構PAは、投影系PL内で一つまたは複数の異なる方法で一つまたは複数の光学素子(例えばレンズ)を走査するよう機能してもよい。投影系は、その光軸がz方向に延びる座標系を有してもよい。調整機構PAは、一つまたは複数の光学素子の移動、一つまたは複数の光学素子の傾斜、および/または一つまたは複数の光学素子の変形の任意の組合せを行うよう機能してもよい。光学素子の移動は、任意の方向(x、y、zまたはそれらの組合せ)であってよい。光学素子の傾斜は、典型的には、xまたはy方向の軸について回転させることにより光軸に対して垂直な面外であるが、非回転対称の非球面光学素子に対してはz軸についての回転が用いられてもよい。光学素子の変形は、低周波形状(例えば非点収差)と高周波形状(例えば自由形式の非球面)の両方を含んでもよい。光学素子の変形は、例えば一つまたは複数のアクチュエータを用いて光学素子の一つまたは複数の側面に力を働かせることにより、および/または加熱素子を用いて光学素子の一つまたは複数の選択された領域を加熱することにより、実行されてよい。一般的に、アポダイゼーション(瞳面にわたる透過変化)を補正するために投影系PLを調整することはあり得ない。投影系PLの透過マップは、リソグラフィ装置LA用のパターニングデバイス(例えばマスク)MAを設計する際に用いられてよい。コンピュータによるリソグラフィ技術を用いて、少なくとも部分的にアポダイゼーションを補正するようパターニングデバイスMAが設計されてよい。
【0060】
偏光放射および高度な照明モード(例えば双極または四極または自由形式の瞳)に対し、偏光効果は重要である。本発明の実施形態は、偏光効果を考慮したリソグラフィ装置LAの投影系PLにより形成される光学像を補正する方法を提供する。
【0061】
図2を参照すると、ステップ10は、投影系PLの一つまたは複数の光学特性を特徴付けることを含んでいる。これは、2つのステージ12,14で実行される。これらは任意の順序で実行されてよい。ステージ12では、投影系PLを伝搬する放射の位相への投影系PLの影響が決定される。ステージ14では、投影系PLを伝搬する放射の振幅への投影系PLの影響が決定される。ステージ12,14のそれぞれは、投影系の瞳面における偏光依存特性のマップおよび偏光独立特性のマップの決定を含む。ある実施形態では、ステージ12または14のみが実行されてよく、それぞれ位相依存補正および振幅依存補正のみをもたらす。
【0062】
偏光放射が光学素子を伝搬すると、一般的に、その偏光状態が変化する。コヒーレント偏光電磁波の偏光状態は、ジョーンズベクトルとして知られる二成分の複素ベクトル成分により表される。一般的に、電磁放射の偏光状態は、伝播方向に垂直な平面内の楕円により表される。これは、放射が伝播するときに放射の電場ベクトルがたどる点の軌跡である。ジョーンズベクトルの二成分の相対位相がゼロの場合、ジョーンズベクトルは直線偏光した放射を表す。ジョーンズベクトルが等しい振幅および±π/2の相対位相差を有する場合、ジョーンズベクトルは、円偏光放射を表す。ジョーンズベクトルは、偏光放射の偏光状態により広げられたベクトル空間内に「存在」している。従って、偏光解消効果を無視すれば、光学系から出射する電磁波の偏光状態は、その光学系に関するジョーンズマトリクスと光学系に入射する電磁波の偏光状態に関するジョーンズベクトルの積として表される。ジョーンズマトリクスは、2×2の複素行列であり、従って8個のスカラーパラメータを含む。一般的に、ジョーンズマトリクスは、光学系の瞳面にわたって変化する。ジョーンズ瞳は、瞳面およびフィールド面の異なる部分に対する一連のジョーンズマトリクスとして規定されてよい。
【0063】
ジョーンズマトリクスの8つのスカラー成分のさまざまな異なるパラメータ化が提案されている。このようなパラメータ化の一つは、特異値分解を用いて、以下の5つの明確な光学素子:(a)部分偏光子、(b)回転子、(c)リターダ、(d)スカラー位相(位相板)、(e)スカラー透過(グレーフィルタ)に相当する項の積として、光学系用のジョーンズマトリクスを表すことである。スカラー位相およびスカラー透過は非偏光放射に関して上述されているが、第1の3つの光学素子は付加的な偏光依存効果を生む。部分偏光子は、光学素子の透過が素子に入射する放射の偏光状態の方位に依存するディアテニュエーション(diattenuation)をもたらす。回転子は、所与の偏光状態を回転する光学素子である。リターダは、一般的に偏光状態の異なる成分の相対位相が変化する複屈折をもたらす。
【0064】
特に、任意のジョーンズマトリクスは、スカラー透過、スカラー位相、通常の部分偏光子用のジョーンズマトリクスおよび通常のリターダ用のジョーンズマトリクスの積として分解されてよい。リターダおよび部分偏光子用のジョーンズマトリクスはそれぞれ、2つの互いに直交する固有ベクトルを有する。通常、3つの固有ベクトルは、楕円偏光に対応するジョーンズベクトルとなる。この分解では部分偏光子およびリターダの固有状態の楕円率を無視できると仮定すると(これはリソグラフィ投影系に関してはよい近似である)、一般的なジョーンズマトリクスJは、
【数1】
と記載される。
ここで、tはスカラー透過であり、Φはスカラー位相であり、J
pol(d,θ)は部分偏光子用のジョーンズマトリクスであり、J
ret(φ,β)はリターダ用のジョーンズマトリクスである。従って、ジョーンズマトリクスは、偏光依存性部分(J
polおよびJ
ret)ち偏光独立性部分(tおよびΦ)の積として因数分解できる。この近似では、ジョーンズマトリクスは、6つのスカラーパラメータを使ってうまく記載することができる。2つの楕円率パラメータが小さいという仮定が当てはまらない場合には、それらの効果は分離され、上記パラメータから切り離して処理されることに留意すべきである。
【0065】
固有状態がゼロの楕円率を有する(すなわち直線偏光に相当する固有状態)のリターダに関するジョーンズマトリクスJ
ret(φ,β)は、
【数2】
で与えられる。
ここで、2φの相対位相差は2つの直交する固有状態間で導入され、βは2つの固有方向が座標系の軸とともに作る角度である。
【0066】
固有状態がゼロの楕円率(すなわち直線偏光に相当する固有状態)を有する部分偏光子用のジョーンズマトリクスJ
pol(d,θ)は、
【数3】
で与えられる。
ここで、dは2つの固有状態に対する透過率差を表すパラメータであり、θは2つの固有方向が座標系の軸とともに作る角度である。
【0067】
リタデーションまたは部分偏光は、上述したように、ジョーンズマトリクスにより表される。リタデーションは、ジョーンズベクトルの2つの別々の成分の相対位相を変更し、一方、部分偏光は、2つの別々の成分の相対振幅を変更する。上述のリターダ用のジョーンズマトリクスJ
ret(φ,β)および部分偏光子J
pol(d,θ)はそれぞれ、直交する直線偏光状態を表す2つの互いに直交する固有ベクトルを有する。リターダの場合、これらは速軸および遅軸を表し、一方、部分偏光子の場合、それらは明軸および暗軸を表す。いずれの場合も、電磁放射の偏光状態におけるジョーンズマトリクスの効果は、2つのジョーンズマトリクスの固有状態がどのように影響されるかを表すパラメータ(φまたはd)と、2つの固有状態と電磁放射が投影されている座標系の軸との間の実空間における角度を表すパラメータ(βまたはθ)とにより記載される。従って、リタデーションおよび部分偏光の両方は、振幅および角度により表され、それ故形式的に二次元ベクトルにより表される。しかしながら、このようなベクトルを定義する際にはいくつかの注意が必要である。
【0068】
リターダ用のジョーンズマトリクスJ
ret(φ,β)および偏光子用のジョーンズマトリクスJ
pol(d,θ)は両方とも、それぞれ式(2)および式(3)の展開により分かるように、πの回転(すなわち、β→β+πまたはθ→θ+π)の下で不変である。さらに、π/2の回転は、ジョーンズベクトルの2つの直交偏光成分への影響を交換する効果がある。しかしながら、2つの偏光成分のそれぞれに対する影響は互いに逆であり、従って、π/2の回転は、それぞれ、φ→−φまたはd→−dの変換に相当する。すなわち、π/2の回転は、影響の符号を変化させる。これは、オリエンテータO(A,Ψ)の定義をもたらす。オリエンテータO(A,Ψ)は、実空間における振幅Aおよび方向Ψを有し、指向角2Ψを用いて実空間の二次元ベクトルにより、
【数4】
と表される。
このように規定されるオリエンテータは、リターダンスおよび/または部分偏光を表すのに適したものとする以下の特性:(i)πの角度を囲む2つのオリエンテータが等しい、(ii)π/2の角度を囲む2つのオリエンテータが逆である(すなわち、一方が他方の負である)、および(iii)π/4の角度を囲む2つのオリエンテータが直交する(すなわちそれらの内積がゼロになる)、を有する。
【0069】
ジョーンズ瞳は、(楕円率が無視できる場合)スカラー透過マップ、スカラー相対位相(波面)マップ、オリエンテータ・リタデーションマップおよびオリエンテータ・ディアテニュエーションマップにより記載されてよい。2つのスカラーマップは、ゼルニケ多項式の線形結合として表される。2つのオリエンテータマップは、一式の基底オリエンテータ関数の線形結合として表される。特に便利なセットは、オリエンテータゼルニケ多項式(OZP)であり、これは、単位円上に基底される一式の直交オリエンテータ関数を形成する。各マップの決定は、このようなゼルニケ多項式またはOZPのいずれか一方の展開における係数を決定することを含んでよい。ここで留意すべきは、OZPは単位円上で直交するので、オリエンテータゼルニケ係数は、測定されたスカラーマップと各OZPの内積を順々に計算し、これをそのOZPのノルムの二乗で割ることにより決定されてよいことである。
【0070】
図2を再度参照すると、ステージ12は、スカラー相対位相(収差)マップ12aおよびオリエンテータリタデーションマップ12bの決定を含み、一方、ステージ14は、スカラー透過(アポダイゼーション)マップ14aおよびオリエンテータ・ディアテニュエーションマップ14bの決定を含む。従って、各ステージ12,14は、投影系PLの偏光依存特性のマップの決定を含み、これはリタデーションマップまたはディアテニュエーションマップのいずれか一方である。
【0071】
瞳面における投影系PLの偏光依存特性のマップを決定するために、異なる偏光モードを伴う3つ以上のキャリブレーション放射ビームが投影系PLを通るよう方向付けられる。これは、例えば、イルミネータILのアジャスタを用いて達成されてよい。ステージ12の間、各キャリブレーション放射ビームに対して、投影系PLから出射する波面が決定される。これは、投影系PL(すなわち、基板テーブルWT)の像平面の二次元グリッドである回折格子と、強度マップを測定することにより干渉パターンを検出するよう配置されたCCDのアレイとを備えるシアリング干渉計を用いて達成される。上述したように、波面は測定された干渉パターンから決定される。ステージ14の間、各キャリブレーション放射ビーム(および偏光モード)に対し、投影系PLから出射する放射の強度マップが決定される。これは、ステージ12の間に干渉パターンを検出するために用いられる同じCCDのアレイを用いて達成されてよい。
【0072】
各ステージ12,14では、その後、光学系の瞳面にわたって光学系の偏光依存特性の振幅および/または方向のマップを決定するために、3つ以上のキャリブレーション放射ビームに対するマップが組み合わされる。上述したように、リタデーションおよびディアテニュエーションはそれぞれ2つのパラメータ(例えば、式(2)および(3)のそれぞれにおける2つのパラメータ、またはオリエンテータの振幅および角度方向)を用いて記載することができる。従って、投影系PLを出射する放射のジョーンズベクトルの2つの成分を決定できた場合、異なる偏光モードを有する2つのキャリブレーション放射ビームは、リタデーションまたはディアテニュエーションを記載する2つのパラメータを決定するのに十分である。しかしながら、両方のステージでは、CCDアレイが強度分布を測定し、これは偏光ベクトルの二乗に関係する。従って、リタデーションまたはディアテニュエーションを再構成するために、異なる偏光モードを有する少なくとも3つ、望ましくはそれより多くのキャリブレーション放射ビームが用いられるべきである。
【0073】
一例として、ステージ12でリタデーションを決定する、一般的な手順は以下の通りである。例えば、シアリング干渉計により決定される相対位相は、
【数5】
で与えられる。
ここで、Φ
speudo(r,θ)は相対位相であり、これは瞳面の座標rおよびθの関数である。φは放射の偏光が瞳面のx軸とともに作る角度である。Φ
x、y(r,θ)はリタデーションを表すオリエンテータの2つの成分である。ゼルニケ多項式の観点では、Φ
speudo(r,θ)の展開に関する一連の係数が(測定されたスカラーマップと各ゼルニケ多項式との内積を順々に掲載し、これをゼルニケ多項式のノルムの二乗で割ることにより)決定されてよい。リタデーションを表すオリエンテータは、OZPの合計として展開できる。
【数6】
ここで、R
n(r)は径方向の多項式であり、mは方位依存性の度合いであり、OZ
iはOZP係数である。測定されたゼルニケ係数Z
iは、OZP係数に関連している。
【数7】
偏光角φの範囲に対する相対位相Φ
speudo(r,θ)を測定することにより、式(5)から(7)を用いて、測定されたゼルニケ係数をOZP係数に関係づけるマトリクスを構成することができる。少なくとも3つの偏光方向を用いることにより、例えばLSQ手順などの最小二乗法を用いて、このデザインマトリクスを解決することができる。
【0074】
イルミネータILは、一連の異なる偏光モードを有するキャリブレーション放射ビームを連続的に生成するよう構成されてよい。リタデーションおよびディアテニュエーションがπ/2ラジアンの実際の角度を通した回転の下で符号を変えるので、π/2ラジアンの角度範囲内で偏光状態を発生するのに十分である。一実施形態では、イルミネータILは、双極照明モードのキャリブレーション放射ビームを連続的に生成するよう構成される。キャリブレーション放射ビームは、双極の2つの対向するセクターを二等分するラインに実質的に垂直な方向に直線偏光している。異なるキャリブレーション放射ビームに対する双極の方位(オリエンテーション)は異なる。方位方向は、π/2ラジアンの範囲を通して変化してよい。このような実施形態のキャリブレーション放射ビーム用の照明および偏光モードが
図4に図示されている。この実施形態では、7つの異なる偏光状態が用いられ、偏光方向とy軸の間の角度は、θ
n=nπ/12、n=0,1,2,3,4,5または6で与えられる。ある実施形態では、イルミネータILは、異なる偏光モードを有するが同じ照明モードを有するキャリブレーション放射ビームを連続的に生成するよう構成されてよい(すなわち、このような実施形態においては、偏光モードが照明モードとは無関係に変化する)。
【0075】
投影系PLのリタデーションおよびディアテニュエーションマップは、どのように入射放射ビームの偏光を投影系PLにより変えるか決定するための上方を含む。投影系のリタデーションおよびディアテニュエーションマップはメモリに格納されてもよい。メモリは、例えば、投影系PLを含むリソグラフィ装置の一部を形成してもよいし、あるいは関連してもよい。投影系のリタデーションおよびディアテニュエーションマップは、その後メモリから読み出されてもよい。
【0076】
リソグラフィ装置LAの後工程の間に、放射源SOは放射ビームを生成し、これは所望の照明および偏光モードを有する放射ビームPBを生成するためにイルミネータILにより調整される。すなわち、放射ビームPBはイルミネータILの瞳面において特定の強度および偏光分布を有する。例えば、照明モードは、
図5Aに示すような双極分布42、
図5Bに示すような四極分布44、または
図5Cに示すような六極分布45であってよい。双極分布42は、2つの正反対の極領域43を備える。極領域43は、強度がノンゼロであり、環と2つの正反対の円のセクター(扇形)の共通部分により規定される。2つの対向するセクターを二等分するラインは、通常x方向であり、放射はy方向に直線偏光する。四極分布44は、
図5Aに示す双極分布と似た第1の双極分布と、第1の双極分布に対してπ/2回転されるがそれ以外は第1の双極分布と同じ第2の双極分布とを備える。従って、四極分布44は、4つの極領域43を備える。極領域43の強度はノンゼロである。各極領域の放射は、通常、それを二等分するラインに対して垂直な方向に直線偏光している。この偏光モードは、XY偏光とも称され、基板Wに形成される像のコントラストを向上する。六極分布45は、円の周りに分布した6つの極領域43を備える。各極領域の放射は、通常、各極領域を二等分するラインに対して垂直な方向に直線偏光している。この偏光モードは、TE偏光とも称される。TE偏光を有する六極照明は、例えば、ホールのアレイまたはブロックのアレイの像を形成する際に用いられてよい。
【0077】
再度
図2を参照すると、強度成分22aおよび偏光成分22bを備える投影系PLの瞳面の放射ビームPBの放射マップ22がステップ20で決定される。
図2に示す実施形態では、ビームには何のパターンも付与されない。(例えば、リソグラフィ装置にパターニングデバイスが存在しない)。従って、放射ビームPBの強度22aおよび偏光22bは、もっぱらイルミネータILだけで決定される。イルミネータILは、予測可能且つ再現可能な方法で、固定された強度および偏光モードの放射を生成するよう構成されてよい。このような実施形態において、放射ビームPBの強度22aおよび偏光22bは、従って既知であってよい。あるいは、放射ビームPBの強度22aおよび偏光22bは、測定されてよい。放射ビームPBの強度22aは、投影系PLのアポダイゼーションの決定と同じ方法で決定されてよい。放射は、投影系PLの対物面(すなわち、パターニングデバイスMAの面)のアパーチャを通り、そして投影系PLを通って投影されてよい。投影系PLの瞳面と共役な面の放射強度は、検出器を用いて測定されてよい。強度22aを決定するために、対物面の点光源よりむしろ、大型のアパーチャが用いられる。再度、収差を決定するために、波面を測定するのに用いられたのと同じ検出器が用いられてよい。放射ビームPBの偏光22bは、対物面のアパーチャが所定の偏光方法の放射のみを透過させるアナライザなどの偏光選択装置を備える場合、同じ方法で決定されてよい。例えば、アナライザを複数の異なる方向に回転させ、検出器を用いて放射の強度を測定することにより、放射ビームPBの偏光22bの状態が決定されてよい。
【0078】
図3を参照すると、ある実施形態では、パターニングデバイスMAがリソグラフィ装置LA内に存在しており、放射ビームにパターンを付与する。従って、ステップ20で決定される、投影系PLの瞳面の放射ビームPBの強度22aおよび偏光22bの放射マップは、照明モードとパターニングデバイスMAのパターンに依存する。放射ビームPBの強度22aおよび偏光22bは、
図2に示す実施形態に関して上述したように測定されてよい。
【0079】
図2および
図3を参照すると、ステップ30において、投影系PLのリタデーションマップ12bおよび/またはディアテニュエーションマップ14bが放射ビームPBの放射マップ22と組み合わされ、投影系PLの瞳面に像マップ31,32を形成する。すなわち、放射ビームPBの強度および偏光がリタデーションおよび/またはディアテニュエーションマップと組み合わされて、像マップ31,32を形成する。像マップ31,32は、放射の偏光状態の二成分の相対位相および/または振幅がどのように投影系PLにより影響を受けるかを表す。像マップ31,32は、従って、投影系PLにより基板テーブルWT上の基板Wに投影されるべき放射の偏光状態に関する情報を含む。
【0080】
各像マップ31,32は、その後、補正マップ41,51を決定するために用いられる。補正マップ41,51は、像マップ31,32と放射マップ22の間の差を表す。ジョーンズマトリクスが瞳面全体にわたる恒等行列である理想的な投影系においては、像マップが放射マップと一致することが期待される。すなわち、補正マップがゼロになるべきである。しかしながら、実際の投影系PLにおいては、少なくとも補正マップ41,51はノンゼロであり、理想的な投影系からの逸脱を示す。
【0081】
補正マップ41,51は、その後、放射ビームPBが投影系PLを通過するよう方向付けられる際に、基板テーブルWT(例えば基板W)に形成される光学像を補正するために用いることができる。一般的に投影系PLは、位相依存性因子(収差およびリタデーション)を調整することはできるが、透過依存性因子(アポダイゼーションおよびディアテニュエーション)は調整することができない。従って、基板Wに形成される像が補正されるメカニズムは、これから説明するように2つの場合で異なってよい。ある実施形態では、位相依存因子(収差およびリタデーション)は、透過依存性因子(アポダイゼーションおよびディアテニュエーション)を補正せずに、補正されてよい。ある実施形態では、透過依存性因子(アポダイゼーションおよびディアテニュエーション)は、位相依存因子(収差およびリタデーション)を補正せずに、補正されてよい。ある実施形態では、透過依存性因子(アポダイゼーションおよびディアテニュエーション)および位相依存因子(収差およびリタデーション)は、両方とも一緒に補正されてよい。
【0082】
ステップ10は、所与の投影系PLのためにフィールドポイントを特徴付けると見なされてよく、ステップ20は、リソグラフィプロセスの態様を表すと見なされてよい(これはフィールドまたは投影系に依存しない)。ステップ30は、補正マップ(41,51)に依存する投影システム、フィールドおよびリソグラフィプロセスを形成するために、これらの要素を組み合わせる。これらは与えられてもよい。
【0083】
ステップ40の位相依存補正では、スカラー相対位相(収差)マップ12aおよびリタデーション補正マップ41が組み合わされ、この組合せを用いて投影された光学像を補正するために、投影系PLの調整機構PAが用いられる。補正を実行するために投影系PLがどのように調整されるべきかを計算するために、動的光学素子(レンズ)モデルが用いられてもよい。補正を実行するために投影系PLがどのように調整されるべきかを計算するために、プロセッサが用いられてもよい。
【0084】
補正は、異なるルートにより決定されてもよい。第1のルートでは、リタデーションが収差に変換される。リタデーションはフィールド依存性であるので、これはフィールド依存性の収差目標(すなわち照明モードに依存する目標)をもたらす。パターニングデバイスMAがリソグラフィ装置に存在し、パターンを提供してもよい。その場合は、その後、リタデーションは照明モードおよびパターニングデバイスMAのパターンに依存する。より詳細には、一つまたは複数の(投影系、フィールドおよびリソグラフィプロセス依存の)目標リタデーションマップが作られる。これらは(式(5)〜(7)を用いて)収差目標マップに変換される。すなわち、方位(オリエンテーション)ゼルニケがゼルニケに変換される。リタデーションは、フィールド依存である(すなわち、照明モードおよびパターニングデバイスMA(存在する場合)に依存する)。従って、リソグラフィプロセス条件(ステップ20)に基づいて、各目標収差マップが各ゼルニケ係数によりどのように影響されるかが決定される。動的光学素子モデルは、各ゼルニケ係数の変化を光学素子の構成の変化に関係づける。それは、収差目標マップが実現されるために、光学素子がどのように操作されるべきかを計算する。
【0085】
第2のルートでは、リタデーションおよび収差が、変位およびデフォーカスなどの一つまたは複数のリソグラフィパラメータに変換される。すなわち、一つまたは複数のリソグラフィパラメータへのリタデーションおよび収差の影響が決定される。これは、一つまたは複数の線形依存性:一つまたは複数のリソグラフィパラメータと収差との関係(ゼルニケ係数として表される)、および一つまたは複数のリソグラフィパラメータとリタデーションとの関係(方位ゼルニケ係数として表される)をもたらす。再度、リタデーションマップは、リソグラフィ目標マップを作るためにこれらの依存と組み合わされる。動的光学素子モデル内においては、収差は目標マップに適合させるために最適化される。
【0086】
振幅依存性の補正が位相依存性の補正に加えて(または代えて)適用されてもよい。ステップ50の振幅依存性の補正においては、スカラー透過(アポダイゼーション)マップ14aおよびディアテニュエーション補正マップ51が組み合わされ、投影系PLに入射する入力放射ビームを変えることにより像を少なくとも部分的に補正するためにこの組合せが用いられる。これは、例えば光学近接シミュレーションなどの一つまたは複数のコンピュータ・リソグラフィ技術を用いて、パターニングデバイスMAのパターンの適切な設計により達成されてよい。すなわち、投影系PLによるパターニングデバイスMAから基板像へのパターンの転写を計算する際に、ディアテニュエーション(パターンが存在しない場合ステップ14bで測定される)が直接的に考慮される。この計算は、リソグラフィシミュレータ内で行われる(コンピュータ内で作動するソフトウェアの形態であってもよい)。ディアテニュエーションが投影系PLおよびフィールドポイントに依存しているという事実はこのような計算を複雑にする。従って、いくつかの実施形態では、計算は、実質的に投影系PLおよびフィールドから独立している一部のディアテニュエーションを考慮するだけであってもよい。
【0087】
リソグラフィ装置LAを用いて基板Wを露光する間に、パターニングデバイスMAは、パターンを放射ビームに付与し、その後、放射ビームは投影系PLを通って伝播する。典型的なパターンは、一連のラインおよび/または二次元フィーチャを備えてよい。パターニングデバイスMAのパターンは、放射ビームの回折を生じさせる可能性がある。
図3に示す実施形態では、パターニングデバイスMAがステップ20で使用される。パターニングデバイスMAは、基板Wに像を形成するために用いられる入力放射ビームにパターンを付与するために使用される。特に、パターニングデバイスの情報は、組み合わされた放射マップ22を形成するために、イルミネータILからの情報と組み合わされる。組み合わされた放射マップ22は、投影系PLの瞳面における放射ビームPBの強度成分22aおよび偏光成分22bを備える(パターニングデバイスMAのパターンからの情報を含む)。これは、パターニングデバイスMAのパターンが二次元フィーチャを備え、偏光モードが異なる偏光(例えば
図5Cに示すようなTE偏光など)を備える実施形態において特に有利である。これは、このような実施形態ではパターニングデバイスMAに起因する回折が異なる極からの放射の混合を引き起こす可能性があり、これが異なる偏光を有する可能性があるからである。これは、
図6に概略的に示されている。
図6は、六極モードの一つの極領域60のパターニングデバイスのパターンによる回折が、その極から他の極内への放射の混合をどのように引き起こすかを示す。パターニングデバイスのパターンは、例えば、矢印63で示される方向に回折させるブロックのアレイであってよい。従って、
図6の左手側の極領域60の放射は、
図6の右上および右下の極領域61,62内に回折している。パターニングデバイスMAのパターン情報をイルミネータILからの強度および偏光情報と組み合わせることにより、リタデーションおよびディアテニュエーションマップは、パターニングデバイスMAにより引き起こされるこのような回折効果を考慮に入れる。
【0088】
パターニングデバイスのパターンは、
図2に示す実施形態においては付与されていない。従って、投影系PLに入射する放射の偏光へのパターニングデバイスの回折効果は、リタデーションおよびディアテニュエーションマップに考慮されていない。しかしながら、マップは、異なる照明モードに対して起こるリタデーションおよびディアテニュエーションを表しており、従って、有益なリタデーションおよびディアテニュエーション補正を提供する。提供される補正はパターニングデバイスMAの情報を考慮に入れた補正ほど正確ではないが、それは、リタデーションおよびディアテニュエーションに対して何の補正もなされていない状況と比較して著しい改善をもたらす。
【0089】
上述の実施形態では、収差およびリタデーションが投影系PLを調整することにより補正されるが、これに代えてまたは加えて、これらの影響が、少なくとも部分的にコンピュータ・リソグラフィを用いたパターニングデバイスの設計において補正されてもよい。
【0090】
上述の方法では、ステップは一度実行されてもよい。あるいは、ステップ10および/またはステップ20が周期的に実行されてもよい。周期的に実行される場合、ステップ10および20は異なる速度で実行されてもよい。ステップ10および/またはステップ20が実行される度に、ステップ30およびステップ40および/またはステップ50が実行されてもよい。
【0091】
上述の実施形態では、本方法は、投影系PLの偏光依存特性と偏光独立特性の両方に対して補正するが、ある実施形態は、偏光依存効果のみを補正してもよい。
【0092】
上述の実施形態では、本方法は、投影系PLを調整することにより補正できる影響と、適切なパターニングデバイスの設計により補正できる影響の両方を補正しているが、別の実施形態は、一方または他方のみを補正してもよい。例えば、本方法は、投影系PLを調整することによりリタデーションのみ補正してもよい。
【0093】
本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明の実施形態は、また、一つ以上のプロセッサにより読み込まれ、実行されるコンピュータ読み取り可能媒体に記憶されたインストラクションとして実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能媒体は、機械により読み取り可能な形式の情報を記憶または伝送するメカニズムを含んでもよい(例えば、コンピュータデバイス)。例えば、コンピュータ読み取り可能媒体は、読み出し専用メモリ(ROM);ランダムアクセスメモリ(RAM);磁気ディスク記憶媒体;光記憶媒体;フラッシュメモリ装置;電気的、光学的、音響的またはその他の形式の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、およびその他を含んでもよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、インストラクションは、特定の動作を実行できるものとして、ここで説明されてもよい。しかしながら、このような説明は、単に便宜上のためだけであり、このような動作は、実際は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、インストラクションなどを実行するコンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、その他のデバイスによって生じるものであると理解すべきである。
【0094】
本発明の特定の実施形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。本説明は本発明を限定することを意図していない。