【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0038】
(第1実施例)
先ず、本発明の第1実施例として、所定の割合で、白菜エキス、タマネギエキス及びキャベツエキスを配合し、得られた実施例及び比較例の各野菜エキス組成物を、官能試験により評価した。なお、下記表1に示すNo.A1〜A12の組成物は本発明の範囲内で作製した実施例であり、No.A13〜A23の組成物は本発明の範囲から外れる比較例である。
【0039】
[評価方法]
実施例及び比較例の各野菜エキス組成物を水で10倍に希釈したサンプルについて、4名の分析型官能評価専門パネル(訓練期間:9〜24年)により、「i.濃厚感」、「ii.コク」、「iii.野菜由来の過剰な香味」、「iv.ざらつき」の4項目を評価した。官能試験は、(1)サンプルの提示、(2)官能評価項目のすり合わせ、(3)試し評価・キャリブレーション、(4)本評価の順に行った。
【0040】
(1)サンプルの提示
官能評価におけるパネルのバイアス(偏り)を排除し、評価の精度を高めるために、サンプル提供を次の通りに設定した。常温(25℃)にしたサンプル40mlを、発泡スチロール製サーモカップ(容量180ml)に注ぎ、シャーレで蓋をした後、各パネルに提示した。その際、サンプルの試験区番号や野菜成分の比率はパネルに知らせず、各試験区のサンプルをランダムに提示した。
【0041】
(2)官能評価項目のすり合わせ
評価を実施するにあたり、パネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。総合評価についても、官能評価の結果をもとに基準化できるように、パネル全体で事前に協議した上で設定した。
【0042】
<i.濃厚感>
「濃厚感」は、喫食時における味(旨味)の強さ(濃さ)である。本実施例では、下記の5段階評価法により評価した。
5:非常に強い
4:強い
3:やや強い
2:やや弱い
1:効果なし
【0043】
<ii.コク>
「コク」は、喫食時において、口腔内に留まる味(旨味)の持続性である。本実施例では下記の5段階評価法で評価した。
5:非常に強い
4:強い
3:やや強い
2:やや弱い
1:効果なし
【0044】
<iii.野菜由来の過剰な香味>
「野菜由来の過剰な香味」は、野菜の青臭さや各野菜特有の香りや風味である所謂「野菜臭さ」を、下記の5段階評価法で評価した。
5:感じない
4:ほぼ感じない
3:やや感じる
2:感じる
1:非常に強く感じる
【0045】
<iv.ざらつき>
「ざらつき」は、喫食時において、舌の上に残る繊維状の食感である。本実施例では下記3段階評価法で評価した。
5:感じない
3:やや感じる
1:非常に強く感じる
【0046】
<総合評価>
「総合評価」は、前述した4項目の評価結果から、下記の基準により◎、○、△、×の4段階で評価した。
◎:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がすべて5
○:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも3以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が10〜14
△:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価がいずれも2以上で、かつ「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」の評価点の合計が6から9
×:「満足感」、「コク」、「野菜臭さ」、「ざらつき」の評価のうち、1項目以上2未満
【0047】
(3)試し評価・キャリブレーション
いくつかの野菜エキス組成物を用いて、各評価項目について強度評価の訓練を行った。訓練に際しては、パネル自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。
【0048】
(4)本評価
前述した訓練により各パネリストの強度評価の妥当性を担保した後、実施例及び比較例のサンプルを用いて官能評価を行った。香りはカップに直接鼻を近づけて評価し、風味、味及び食感は計量スプーンで小さじ1杯(約5ml)分計量したサンプルを味わうことにより評価した。
【0049】
また、各野菜成分及び野菜エキス組成物の乾燥固形分量は、105℃で35時間乾燥し、乾燥後に残った固形分の質量を測定して求めた。また、各エキスの全窒素量は、ケルダール法により測定した。以上の結果を、下記表1及び表2にまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
上記表2に示すように、No.A13の組成物は、タマネギ成分量が本発明の範囲を超えているため野菜臭さが強く、また、白菜成分が本発明の範囲に満たないため、濃厚感が感じられなかった。No.A14の組成物は、白菜成分量が本発明の範囲を超え、タマネギ成分量が本発明の範囲に満たないため、濃厚感やコクが感じられないものであった。同様に、No.A15の組成物は、白菜成分量が本発明の範囲を超えているため、タマネギやキャベツとの間の相乗効果が発揮されず、濃厚感やコクが感じられないものであった。
【0053】
No.A16の組成物は、キャベツ成分量が本発明の範囲を超えているため、野菜臭さが強く、濃厚感も感じられなかった。No.A17の組成物は、キャベツ成分量が本発明の範囲に満たないため、濃厚感やコクが感じられなかった。また、白菜成分、タマネギ成分又はキャベツ成分のみからなるNo.A18〜A20の組成物は、濃厚感やコクが感じられず、No.A19及びNo.A20の組成物は、更に野菜臭さも際立っていた。白菜成分、タマネギ成分及びキャベツ成分のうち2種を組み合わせたNo.A21〜A23の組成物も同様に濃厚感やコクが感じられず、No.A21及びNo.A23の組成物は更に野菜臭さも顕著であった。
【0054】
これに対して、上記表1に示す本発明の実施例であるNo.A1〜A12の野菜エキス組成物は、濃厚感やコクがあり、かつ野菜臭さも感じられず、惣菜用途に好適なものであった。
【0055】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例として、所定の割合で、白菜エキス、タマネギエキス、キャベツエキス、ニンジンエキス及びジャガイモエキスを混合し、得られた各野菜エキス組成物について、前述した第1実施例と同様の方法及び条件で、官能試験を行った。その結果を下記表3に示す
【0056】
【表3】
【0057】
上記表3に示すように、32質量%を超えてニンジン成分を添加したNo.B4,B5の野菜エキス組成物は、ニンジン成分を含まないNo.A6の野菜エキス組成物に比べて、濃厚感、コク及び野菜臭さのいずれも評価が低かった。一方、ニンジン成分量が2質量%未満であるNo.B1の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物と同等の評価結果であり、濃厚感やコクの底上げ効果は得られなかった。
【0058】
また、41質量%を超えてジャガイモ成分を添加したNo.B10,B11の野菜エキス組成物は、ジャガイモ成分を含まないNo.A6の野菜エキス組成物に比べて、濃厚感、コク及び野菜臭さのいずれも評価が低くなり、更に、ざらつきが目立ち、食感が悪くなった。一方、ジャガイモ成分量が4質量%未満であるNo.B6の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物と同等の評価結果であり、濃厚感やコクの底上げ効果は得られなかった。
【0059】
これに対して、ニンジン成分を2〜32質量%、又は、ジャガイモ成分を4〜41質量%含有するNo.B2,B3,B7,B8,B9の野菜エキス組成物は、No.A6の野菜エキス組成物よりも濃厚感やコクが向上していた。更に、ニンジン成分とジャガイモ成分の両方を含有するNo.B12の野菜エキス組成物は、濃厚感及びコク共に大幅に向上していた。
【0060】
(第3実施例)
次に、第3実施例として、野菜エキス組成物の配合量が異なる複数の調味液を調製し、各調味液を用いて惣菜を調理し、野菜エキス組成物の添加効果について、官能試験により確認した。野菜エキス組成物には、第1実施例のNo.A6の組成物を用いた。また、調味液は、下記表4に示す配合とした。なお、上記表4に示す調味液成分の残部は水である。
【0061】
【表4】
【0062】
[調理方法]
評価に用いる惣菜は、煮豆腐とした。評価用の煮豆腐を調理する際は、豆腐200gを所定の大きさに切り、フライパンで炒めた後、調味液100gを絡めた。
【0063】
[評価方法]
4名の分析型官能評価専門パネルにより、野菜エキス組成物を添加していないものを基準とし、各惣菜の「濃厚感」と「コク」を、下記の4段階で評価した。
◎:非常に高い
○:高い
△:効果あり
×:差がない又は味のバランスが崩れた
【0064】
ここで、「濃厚感」とは、惣菜の喫食時における味(旨味)の強さ(濃さ)のことであり、「コク」とは、惣菜の喫食時における口腔内に留まる味(旨味)の持続性のことである。そして、「濃厚感」及び「コク」を評価する際は、パネル全体で討議して、各評価項目の特性に対してすり合わせを行い、各パネルが共通認識を持つようにした。また、各評価項目について強度評価の訓練では、パネル自身の評価結果を伝えることで、繰り返し評価における再現性を確認させた。各パネリストの強度評価の妥当性を訓練により担保した後に、実施例の各試験区について官能評価を行った。
【0065】
以上の評価結果を下記表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
上記表5に示すように、野菜エキス組成物含有率が0.025質量%の調味液を用いたNo.C2の惣菜(煮豆腐)は、野菜エキス組成物を配合していない調味液を用いたNo.C1の惣菜と、味に差は感じられなかった。また、野菜エキス組成物を、35質量%及び50質量%と多量に含有する調味液を用いたNo.C10及びNo.C11の惣菜は、野菜エキスの味が強くなり、味のバランスが崩れた。
【0068】
これに対して、野菜エキス組成物を0.05〜30質量%の範囲で含有する調味液を用いたNo.C3〜C9の惣菜は、野菜エキス組成物を配合していない調味液で調理したNo.C1の惣菜に比べて、濃厚感とコクが向上していた。これらの結果から、本発明の野菜エキス組成物を適量配合することで、惣菜に濃厚感とコクを付与できることが確認された。特に、野菜エキス組成物の含有量が0.4〜5質量%の調味液では、コクの付与効果が高かった。
【0069】
(第4実施例)
次に、第4実施例として、本発明の野菜エキス組成物を配合した調味液を用いて、煮豆腐以外の惣菜を調理し、野菜エキス組成物の添加効果について、官能試験により確認した。なお、野菜エキス組成物には、第1実施例のNo.A6の組成物を用いた。
【0070】
<惣菜I:コーンスープ>
クリームコーン200gに、醤油を3.5質量%、野菜エキス組成物を2質量%含有し、残部が水の調味液Iを加え、軽く沸騰させてコーンスープを作製した。
【0071】
<惣菜II:なすとピーマンの甘味噌炒め>
所定の大きさに切ったなす200gとピーマン60gを、サラダ油をひき、熱したフライパンに投入し、火が通るまで炒めた。その後、醤油を20質量%、甜麺醤を40質量%、清酒を30質量%、野菜エキス組成物を2質量%含有し、残部が水の調味液IIを入れ、具材(なす・ピーマン)に絡めた。
【0072】
[評価方法]
野菜エキス組成物を添加していないものを基準とし、各惣菜の「濃厚感」及び「コク」を、4名の分析型官能評価専門パネルにより、前述した実施例3と同様の方法及び条件で評価した。その評価結果を下記表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
上記表6に示すように、洋風のコーンスープ(惣菜I)や、中華風のなすとピーマンの甘味噌炒め(惣菜II)においても、本発明の野菜エキス組成物を含有する調味液を用いると、惣菜に、濃厚感とコクを付与すると共に、風味を増強できた。これにより、本発明の野菜エキス組成物は、和風惣菜だけでなく、洋風惣菜や中華惣菜においても、好適に使用できることが確認された。