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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244518
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20171204BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 M
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-80039(P2014-80039)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-201558(P2015-201558A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317006041
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 健太
(72)【発明者】
【氏名】久保田 徹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】石田 勝広
【審査官】 齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−258417(JP,A)
【文献】 特開2004−303939(JP,A)
【文献】 特開平5−267237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板にプラズマを作用させて処理を行うプラズマ処理方法であって、
前記被処理基板を収容する処理チャンバーと、
前記処理チャンバー内に配設され、前記被処理基板が載置される下部電極と、
前記処理チャンバー内に配設され、前記下部電極と対向する上部電極と、
前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、
前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理チャンバーの上部に配設された環状の電磁石であって、前記被処理基板の中心と同心状の環状の形状とされ前記被処理基板の周縁部より外側に位置するように配設されたコイルを有する電磁石と、
を具備したプラズマ処理装置を用い、
前記コイルにのみ通電して磁界を発生させることにより、前記被処理基板の上部及び前記フォーカスリングの上部に形成されるプラズマシースの界面を平坦化する
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記被処理基板及び前記フォーカスリングの上部に形成されるプラズマシースの界面を平坦化することによって、プラズマエッチングによって形成されたパターンにチルティングが発生することを抑制することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理方法であって、
前記コイルに通電することによって発生させた磁界は、その水平磁界成分の径方向の分布が前記被処理基板の外周縁部より外側の部分でピークを有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理方法であって、
前記フォーカスリングの消耗状態に応じて前記コイルに通電する電流を変化させることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
被処理基板にプラズマを作用させて処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記被処理基板を収容する処理チャンバーと、
前記処理チャンバー内に配設され、前記被処理基板が載置される下部電極と、
前記処理チャンバー内に配設され、前記下部電極と対向する上部電極と、
前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、
前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理チャンバーの上部に配設された環状の電磁石であって、前記被処理基板の中心と同心状の環状の形状とされ前記被処理基板の周縁部より外側に位置するように配設されたコイルを有する電磁石と、
前記コイルにのみ通電して磁界を発生させることにより、前記被処理基板の上部及び前記フォーカスリングの上部に形成されるプラズマシースの界面を平坦化する制御部と、
を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5記載のプラズマ処理装置であって、
前記コイルに通電することによって発生させた磁界は、その水平磁界成分の径方向の分布が前記被処理基板の外周縁部より外側の部分でピークを有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載のプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、前記フォーカスリングの消耗状態に応じて前記電磁石に通電する電流を変化させることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程等では、ガスをプラズマ化して被処理基板(例えば、半導体ウエハ)に作用させ、被処理基板にエッチング処理等を施すプラズマ処理装置が用いられている。また、このようなプラズマ処理装置としては、処理チャンバー内に上部電極と下部電極が対向するように配置され、これらの電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる所謂容量結合型のプラズマ処理装置が知られており、さらに、このような構造のプラズマ処理装置において磁界を用いてプラズマ密度を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のプラズマ処理装置では、被処理基板の外周縁部と、被処理基板より外側の部分とでは、その構造や材質が異なるため上部に形成されるプラズマシースの厚さに違いが生じ易い。そして、プラズマシースの厚さに違いが生じると、プラズマシースの界面(プラズマシースとプラズマとの界面)に凹凸が生じ、この凹部と凸部との境界ではプラズマシースの界面に傾斜した部分が生じる。このプラズマシースの界面が傾斜した部分において、イオンの入射角が斜めになり、エッチング状態に傾きが生じる所謂チルティング(Tilting)が生じてしまう。このため、被処理基板より外周部分を囲むように、Si或いはSiC等からなるフォーカスリングを配置することによって、プラズマシースの界面を平坦化することが行われている。また、例えば、フォーカスリングの厚さや材質を変更したり、フォーカスリング自体に高周波バイアスを印加することによってプラズマシースの界面を平坦化し、チルティングの発生を抑制することが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−149722号公報
【特許文献2】特開2010−186841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように従来のプラズマ処理装置では、被処理基板の外側を囲むフォーカスリングを配設することによって、被処理基板の外周部分においてチルティングが生じることを抑制している。しかしながら、この場合、フォーカスリングが消耗してその厚さが変化するとチルティングが発生してしまうため、フォーカスリングを頻繁に交換する必要が生じ、メンテナンス時間の増大による生産効率の低下を招くとともに、生産コストの増大を招くという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に対処してなされたもので、従来に比べて生産効率の向上と生産コストの低減を図ることのできるプラズマ処理法及びプラズマ処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマ処理方法の一態様は、被処理基板にプラズマを作用させて処理を行うプラズマ処理方法であって、前記被処理基板を収容する処理チャンバーと、前記処理チャンバー内に配設され、前記被処理基板が載置される下部電極と、前記処理チャンバー内に配設され、前記下部電極と対向する上部電極と、前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理チャンバーの上部に配設された環状の電磁石であって、前記被処理基板の中心と同心状の環状の形状とされ前記被処理基板の周縁部より外側に位置するように配設されたコイルを有する電磁石と、を具備したプラズマ処理装置を用い、前記コイルにのみ通電して磁界を発生させることにより、前記被処理基板の上部及び前記フォーカスリングの上部に形成されるプラズマシースの界面を平坦化することを特徴とする。
【0008】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、被処理基板にプラズマを作用させて処理を行うプラズマ処理装置であって、前記被処理基板を収容する処理チャンバーと、前記処理チャンバー内に配設され、前記被処理基板が載置される下部電極と、前記処理チャンバー内に配設され、前記下部電極と対向する上部電極と、前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理チャンバーの上部に配設された環状の電磁石であって、前記被処理基板の中心と同心状の環状の形状とされ前記被処理基板の周縁部より外側に位置するように配設されたコイルを有する電磁石と、前記コイルにのみ通電して磁界を発生させることにより、前記被処理基板の上部及び前記フォーカスリングの上部に形成されるプラズマシースの界面を平坦化する制御部と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来に比べて生産効率の向上と生産コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置の概略構成を模式的に示す図。
図2図1のプラズマエッチング装置の要部概略構成を模式的に示す図。
図3】電磁石によって形成される磁界の例を示す図。
図4】チルティングの発生状態を説明するための図。
図5】チルティング角度とプラズマシースの界面の形状とイオンの入射方向との関係を模式的に示す図。
図6】1Gの磁界を発生させた場合のチルティング角度の測定値を示す図。
図7】8Gの磁界を発生させた場合のチルティング角度の測定値を示す図。
図8】15Gの磁界を発生させた場合のチルティング角度の測定値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係るプラズマ処理装置の概略断面構成を模式的に示す図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、気密に構成され、直径が例えば300mmの半導体ウエハWを収容する円筒状の処理チャンバー12を具備している。
【0012】
処理チャンバー12内の下方には半導体ウエハWを載置する円板形状の載置台14が配設されている。載置台14は、基台14a及び静電チャック14bを含んでいる。基台14aは、アルミニウム等の導電性の部材から構成されている。
【0013】
基台14aの上面の周縁の領域には、半導体ウエハWの周囲を囲むように、環状のフォーカスリング26が設けられている。また、基台14aの上面の中央の領域には、静電チャック14bが設けられている。静電チャック14bは、円板形状とされており、絶縁膜の内側に設けられた電極膜を有している。静電チャック14bの電極膜には、直流電源(図示せず。)から直流電圧が供給され、静電力を発生して、被処理基板としての半導体ウエハWを吸着する。
【0014】
静電チャック14b上に半導体ウエハWが載置された状態では、半導体ウエハWの中心を上下方向に通過する中心軸線Zは、基台14a及び静電チャック14bの中心軸線に略一致する。
【0015】
基台14aは、下部電極を構成している。この基台14aには、プラズマ生成用の高周波電力を発生する第1の高周波電源18が、第1の整合器22を介して接続されている。第1の高周波電源18は、例えば、周波数100MHzの高周波電力を発生する。また、第1の整合器22は、当該第1の整合器22の出力インピーダンスと負荷側(下部電極側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0016】
本実施形態では、第1の高周波電源18は、所望の周波数(例えば50kHz)及び所望のデューティー比(例えば、20%)でプラズマ生成用の高周波電力をパルス状に印加することができるようになっている。これによって、プラズマ生成期間と、プラズマ非生成期間とを設け、半導体ウエハW上の特定の部位に電荷の蓄積が生じることを軽減できるようになっている。すなわち、プラズマ生成期間中は、プラズマ中の電子密度の不均一さによって電子密度の高い部分に電荷の蓄積が生じてしまうが、プラズマ非生成期間を設けることによって、この期間中に蓄積した電荷を周囲へ分散させることができ、電荷の蓄積を解消することができる。これによって絶縁膜の破壊等が生じることを防止することができる。
【0017】
また、基台14aには、イオン引き込み用の高周波バイアス電力を発生する第2の高周波電源20が、第2の整合器24を介して接続されている。第2の高周波電源20は、第1の高周波電源18よりも周波数の低い(例えば、周波数3.2MHz)高周波電力を発生する。また、第2の整合器24は、当該第2の整合器24の出力インピーダンスと負荷側(下部電極側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0018】
載置台(下部電極)14の上方には、処理空間Sを介して載置台14と対向するように、上部電極16が配設されている。上部電極16は、円板状とされており、処理空間Sをその上方から画成している。上部電極16は、その中心軸線が、載置台14の中心軸線と略一致するように配置されている。
【0019】
上部電極16は、所定の処理ガスをシャワー状に処理空間Sに導入するシャワーヘッドの機能を兼ねている。本実施形態においては、上部電極16には、バッファ室16a、ガスライン16b、及び、複数のガス孔16cが形成されている。バッファ室16aには、ガスライン16bの一端が接続している。また、バッファ室16aには複数のガス孔16cが接続しており、これらガス孔16cは下方に延びて、処理空間Sに向けて開口している。一方、処理チャンバー12の底部には、図示しないTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)等の排気機構が接続されており、処理チャンバー12内の圧力を所定の減圧雰囲気に維持できるようになっている。
【0020】
上部電極16の上部には、電磁石30が配設されている。電磁石30は、コア部材50、及び、コイル61〜64を備えている。コア部材50は、柱状部51、複数の円筒部52〜55、及びベース部56が一体形成された構造を有しており、磁性材料から構成されている。ベース部56は、略円板形状を有しており、その中心軸線は中心軸線Zに沿うように設けられている。ベース部56の下面からは、柱状部51、複数の円筒部52〜55が下方に突出するように配設されている。柱状部51は、略円柱形状を有しており、その中心軸線が中心軸線Zに沿うように設けられている。この柱状部51の半径L1(図2参照。)は、例えば、30mmである。
【0021】
円筒部52〜55の各々は、軸線Z方向に延びる円筒形状を有している。図2に示すように、円筒部52〜55はそれぞれ、中心軸線Zを中心とする複数の同心円C2〜C5に沿って設けられている。具体的には、円筒部52は、半径L1よりも大きい半径L2の同心円C2に沿って配設されており、円筒部53は、半径L2よりも大きい半径L3の同心円C3に沿って配設されており、円筒部54は、半径L3よりも大きい半径L4の同心円C4に沿って配設されており、円筒部55は、半径L4よりも大きい半径L5の同心円C5に沿って配設されている。
【0022】
一例においては、半径L2,L3,L4,L5はそれぞれ、76mm、127mm、178mm、229mmである。また、コイル61,62,63,64の中心の位置は、夫々中心軸線Zから略50mm,100mm,150mm,200mmとなっている。
【0023】
柱状部51と円筒部52の間には、溝が画成されている。図1に示すように、この溝には、柱状部51の外周面に沿って巻回されたコイル61が収容されている。円筒部52と円筒部53の間にも溝が画成されており、当該溝には、円筒部52の外周面に沿って巻回されたコイル62が収容されている。また、円筒部53と円筒部54の間にも溝が画成されており、当該溝には、円筒部53の外周面に沿って巻回されたコイル63が収容されている。さらに、円筒部54と円筒部55の間にも溝が画成されており、当該溝には、円筒部54の外周面に沿って巻回されたコイル64が収容されている。これらコイル61〜64の各々の両端は、図示しない電源に接続されている。コイル61〜64のそれぞれに対する電流の供給及び供給停止、並びに、電流の値は、制御部Cntからの制御信号によって制御される。
【0024】
ここで、電磁石30において、上記したとおり半径L4,L5は半導体ウエハWの半径150mmよりも大きい。したがって、図1に示すように、コイル64は、半導体ウエハWの外周縁部より外側に位置し、少なくともその一部がフォーカスリング26の上方に位置するよう配設されている。また、コイル61,62は、半導体ウエハWの上方に位置するよう配設されており、コイル63は、半導体ウエハWの上方と外側とに跨るように配設されている。
【0025】
上記構成の電磁石30によれば、コイル61〜64のうち1つ以上のコイルに電流を供給することにより、中心軸線Zに対して径方向に沿った水平磁界成分Bを有する磁界Bを処理空間Sにおいて形成することができる。図3に電磁石30によって形成される磁界の例を示す。
【0026】
図3(a)には、中心軸線Zに対して半平面内における電磁石30の断面及びコイル62に電流が供給されたときの磁界Bが示されおり、図3(b)には、コイル62に電流が供給されたときの水平磁界成分Bの強度分布が示されている。
【0027】
また、図3(c)には、中心軸線Zに対して半平面内における電磁石30の断面及びコイル64に電流が供給されたときの磁界Bが示されおり、図3(d)には、コイル64に電流が供給されたときの水平磁界成分Bの強度分布が示されている。図3(b)及び図3(d)に示すグラフにおいては、横軸は中心軸線Zの位置を0mmとしたときの径方向の位置を示しており、縦軸は水平磁界成分Bの強度(磁束密度)を示している。
【0028】
電磁石30のコイル62に電流を供給すると、図3(a)に示すような磁界Bが形成される。すなわち、柱状部51及び円筒部52の処理空間S側の端部から円筒部53〜55の処理空間S側の端部に向かう磁界Bが形成される。このような磁界Bの水平磁界成分Bの径方向の強度分布は、図3(b)に示すように、コイル62の中心の下方においてピークを有する強度分布となる。一例においては、コイル62の中心の位置は、軸線Zから約100mmの位置であり、直径300mmのウエハWが処理される場合には、径方向においてウエハWの中心とエッジの中間位置である。
【0029】
また、電磁石30のコイル64に電流を供給すると、図3(c)に示すような磁界Bが形成される。すなわち、柱状部51及び円筒部52〜54の処理空間S側の端部から円筒部55の処理空間S側の端部に向かう磁界Bが形成される。このような磁界Bの水平磁界成分Bの径方向の強度分布は、図3(d)に示すように、コイル64の中心の下方においてピークを有する強度分布となる。一例においては、コイル64の中心の位置は、軸線Zから約200mmの位置であり、直径300mm(半径150mm)のウエハWが処理される場合には、径方向においてウエハWのエッジの外側、つまりフォーカスリング26の位置である。
【0030】
プラズマ処理装置10では、ガス供給系からの処理ガスを、シャワーヘッドを構成する上部電極16から処理空間Sに供給し、第1の高周波電源18からの高周波電力を下部電極としての載置台14に与えて上部電極16と載置台14との間に高周波電界を発生させる。これにより、処理空間Sにおいて処理ガスのプラズマが生成される。そして、プラズマ中で解離した処理ガスを構成する分子又は原子の活性種により、半導体ウエハWを処理することができる。また、第2の高周波電源20から下部電極としての載置台14に与える高周波バイアス電力を調整することにより、イオンの引き込みの程度を調整することが可能である。
【0031】
また、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを有する。制御部Cntは、プログラム可能なコンピュータ装置等から構成されている。第1の高周波電源18が発生する高周波電力、第2の高周波電源20が発生する高周波電力、排気装置の排気量、ガス供給系から供給するガス及び当該ガスの流量、並びに、電磁石30のコイル61〜64に供給する電流の値及び電流の方向を制御する。そのために、制御部Cntは、そのメモリに格納されるか、又は、入力装置によって入力されるレシピに従って、第1の高周波電源18、第2の高周波電源20、排気装置、ガス供給系の各構成要素、電磁石30に接続された電流源に対して制御信号を送出する。また、本実施形態において、制御部Cntは、プラズマ処理に際し、コイル64に通電して磁界を発生させることにより、半導体ウエハWの上部及びフォーカスリング26の上部に形成されるプラズマシースの界面(プラズマシースとプラズマとの界面)を、半導体ウエハWの表面と水平な平面となるように平坦化する。
【0032】
上記構成のプラズマ処理装置10では、半導体ウエハWの周囲にフォーカスリング26を配置することにより、半導体ウエハWの外周部におけるプラズマの状態を、半導体ウエハWの上部と同様にし、半導体ウエハWの面内における処理の均一性を向上させている。しかしながら、半導体ウエハWの上部及びフォーカスリング26の上部に形成されるプラズマシースの界面に凹凸が生じると、プラズマシースの界面が傾斜している部分において、イオンの入射角が斜めになり、エッチング状態に傾きが生じる所謂チルティングが生じてしまう。
【0033】
図4に、半導体ウエハWにプラズマエッチングによりホールやライン形状を形成した場合の径方向に沿った断面の拡大図の例を模式的に示す。なお、図4において、左側が半導体ウエハWの中心方向、右側がフォーカスリング(半導体ウエハWの周縁部)の方向となっている。
【0034】
図4に示すように、プラズマエッチングによりホールやライン形状を形成した場合、イオンが半導体ウエハWに対して斜めに入射し、エッチング状態に半導体ウエハWに対して傾きが生じると、形成されたホールやライン形状の上端部における空間の中心の位置(上端部空間中心)と、底部における空間の中心の位置(底部空間中心)とに径方向にずれが生じ、これらを結んだ線A1が、上端部空間中心から下した垂線A2に対して傾いた状態となる。
【0035】
このような状態が、チルティングが発生した状態であり、この線A1と垂線A2とのなす角度(以下、チルティング角度という。)を測定することによって、チルティングの発生状態を定量的に評価することができる。このようなチルティングは、微細化の進展や例えば3次元NANDにおける多層化の進展において大きな課題となっており、チルティング角度は±1.0°未満程度とすることが好ましい。
【0036】
また、図5は、上記したチルティング角度と、プラズマシースの界面の形状と、イオンの入射方向との関係を模式的に示したものである。図5は、コイル64に電流を流して15Gの磁界を形成した場合のチルティング角度を、半導体ウエハWの中心から0mm、30mm、60mm、80mm、100mm、125mm、145mmの位置で測定した結果を示している。夫々の位置におけるチルティング角度は、0.0,0.1,0.1,−0.5,−0.1,−0.6、−1.8度(deg)であった。この場合の予想されるシース界面形状及びイオンの入射角を図5の上部に示す。
【0037】
図5に示すように、コイル64に電流を流して磁界を形成することにより、プラズマシースの界面の形状を制御できることが分かる。この場合、磁界を形成した部位における電子の滞在時間が長くなりプラズマ密度が高くなるため、プラズマシースの厚さが薄くなりプラズマシースの界面の位置が低くなる。また、プラズマシースの界面に凹凸が生じるとプラズマシースの界面が傾斜している部分でイオンの入射角(図5中矢印で示す。)が斜めになり、この部分でチルティングが発生する。
【0038】
図5に示す結果から分かるように、通常の場合、半導体ウエハWの中央部では、磁界の印加がない場合に、プラズマシースの界面が半導体ウエハWの面と平行な平坦な面になるように設定されており、半導体ウエハWの周縁部においてプラズマシースの界面に凹凸が生じる可能性が高い。すなわち、半導体ウエハWとその周囲の構造物との材質や構造の違いにより、その上部に形成されるプラズマの状態が影響を受けプラズマシースの界面に凹凸が生じ易い。このような現象を抑制するために、半導体ウエハWの周囲にフォーカスリング26を配設するが、フォーカスリング26の消耗等による厚さの変化によって、フォーカスリング26の上部のプラズマシースの界面の高さも変化する。
【0039】
一方、図5に示すように、半導体ウエハWの外周縁部より外側に位置し、その一部がフォーカスリング26の上方に位置するように配設されたコイル64のみに電流を流し、磁界を形成することによって、特にフォーカスリング26の上部のプラズマシースの厚さを変化させプラズマシースの界面の高さを変化させることができる。なお、この場合、コイル64のみに電流を流して形成した磁界の水平磁界成分Bの径方向の強度分布は、図3(d)に示したように、コイル64の中心の下方(半導体ウエハWの周縁部より外側)においてピークを有する強度分布となる。本実施形態では、コイル64のみに電流を流し、磁界を形成することによって、半導体ウエハWの周縁部におけるチルティングの発生を抑制する。
【0040】
また、フォーカスリング26が消耗し、フォーカスリング26の厚さが変化することによって、フォーカスリング26上のプラズマの状態が変化し、プラズマシースの界面の高さにも変化が生じるが、本実施形態では、コイル64に流す電流を調整し、磁界の強度を変化させることによって、フォーカスリング26が消耗した場合においても、プラズマシースの界面を、半導体ウエハWの表面と平行な平面となるように平坦化し、チルティングの発生を抑制する。
【0041】
図6〜8は、コイル64のみに電流を流し、磁界を形成した状態で、半導体ウエハWの被エッチング層のプラズマエッチングを行い、形成されたパターンのチルティング角度を、半導体ウエハWの中心から0mm、30mm、60mm、80mm、100mm、125mm、145mmの位置で測定した結果を示している。図6は、1Gの磁界を形成した場合、図7は、8Gの磁界を形成した場合、図8は、15Gの磁界を形成した場合である。
【0042】
プラズマエッチングは、処理ガスに、C+C+Ar+Oを含むガスを用いて、一例として以下の条件により行った。
処理チャンバー内圧力:5.32Pa(40mTorr)
第1の高周波:周波数100MHz、300W
第2の高周波:周波数3.2MHz、10000W
処理時間:1分
なお、プラズマエッチング条件は、上記に限定されるものではなく、処理ガスの流量を、C+C=10〜300sccm、Ar=50〜800sccm、O=5〜150sccmから任意に選択することにより、圧力を1.33〜5.32Pa(10〜40mTorr)に設定することが可能である。
【0043】
図6に示すように、コイル64に電流を流して1Gの磁界を形成した場合、半導体ウエハWの中心から125mmの位置におけるチルティング角度が+1.1度となり、チルティング角度が1.0度以上の部位があった。
【0044】
図7に示すように、コイル64に電流を流して8Gの磁界を形成した場合、全ての位置におけるチルティング角度が±1.0度未満となり、チルティング角度が1.0度以上の部位は発生しなかった。
【0045】
図8に示すように、コイル64に電流を流して15Gの磁界を形成した場合、半導体ウエハWの中心から145mmの位置におけるチルティング角度が−1.8度となり、チルティング角度が1.0度以上の部位があった。
【0046】
上記の図6〜8の結果から分かるように、半導体ウエハWの周縁部より外側に位置するコイル64にのみ電流を流して磁界を形成し、その磁界の強度を電流の大きさで調整することにより、半導体ウエハWの周縁部におけるチルティングの状態を制御することができ、各部のチルティング角度を±1.0度未満の良好な状態とすることができる。
【0047】
また、図6に示す結果では、半導体ウエハWの中心から125mmの位置におけるチルティング角度が+1.1度、145mmの位置におけるチルティング角度が+0.6度である。これに対して、図8に示す結果では、半導体ウエハWの中心から125mmの位置におけるチルティング角度が−0.6度、145mmの位置におけるチルティング角度が−1.8度であるので、磁界の強度を上げることによって、プラズマシースの厚さを薄くしてプラズマシースの界面の高さを低くし、イオンの入射角を反転させ、チルティング角度をプラス方向からマイナス方向に変化させることができる。
【0048】
フォーカスリング26が消耗してその厚さが減少すると、フォーカスリング26の上部に形成されるプラズマシースの界面の高さが変化し、プラズマシースの界面に凹凸が生じるため、チルティングが発生する。このような場合、従来はフォーカスリング26を交換することによって対応する必要があった。
【0049】
これに対して、本実施形態によれば、フォーカスリング26の消耗状態によってコイル64に流す電流を調整し、磁界の強度を制御することによってプラズマシースの界面を平坦な状態に維持することができ、チルティングが発生することを抑制することができる。これによって、フォーカスリング26の交換時期を遅らせることができ、フォーカスリング26の寿命の長期化を図ることができ、メンテナンス周期も長期化することができるので、生産性の向上と生産コストの低減を図ることができる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは、勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10……プラズマエッチング装置、12……処理チャンバー、14……載置台、16……上部電極、18……第1の高周波電源、20……第2の高周波電源、22……第1の整合器、24……第2の整合器、26……フォーカスリング、30……電磁石、61〜64……コイル、Cnt……制御部、S……処理空間、W……半導体ウエハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8