(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合物を得る工程は、金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとを予備混合処理した後、分散処理することを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の磁性粒子の製造方法。
金属元素Mは、W、Cr、Mo、Zr及びNbからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の磁性粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる実施の形態について詳述するが、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明は、以下の実施の形態及び実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
<磁性粒子の製造方法>
本発明の磁性粒子の製造方法は、R
vFe
(100−v−w−x)N
wM
x(式中、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種を示し、Mは金属元素を示し、3≦v≦30、5≦w≦15、0<x≦2.5である)で示される磁性粒子の製造方法であり、Rイオン及びFeイオンを含む溶液から、Rイオン及びFeイオンを含む沈殿物を得る工程(以下、「第一の工程」ともいう)と、沈殿物からR元素及びFe元素を含む酸化物粒子を得る工程(以下、「第二の工程」ともいう)と、酸化物粒子と金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとを混合して混合物を得る工程(以下、「第三の工程」ともいう)と、を含む磁性粒子の製造方法である。
【0016】
R元素及びFe元素を含む酸化物粒子に、金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルを混合することで、金属元素Mを含む紛体を酸化物粒子に混合する場合よりも、より短時間で金属元素Mがより均一に分散された混合物を得ることができ、効率的に磁性粒子を生産することができる。このようにして得られた混合物から、磁性粒子を調製することで、高い保磁力を有し、角形比に優れる磁性粒子を効率的に得ることができる。さらに得られる磁性粒子は耐熱性にも優れる。これは例えば、金属元素Mを含む溶液又はゾルのような液状物は、自己拡散的性質を有することから、外力のみで分散させる必要がある紛体(固体)に比して、より短時間でより均一に金属元素Mを分散することができるためと考えることができる。
また、金属元素Mを含む溶液又はゾルを用いることで、金属元素Mを含む紛体(特にナノパウダー)を用いる場合に比べて、より優れた生産性で優れた特性を有する磁性粒子を製造することができる。すなわち例えば、磁性粒子の製造に要する時間を短縮することができ、さらに製造コスト、特に原料費を低減することができる。
【0017】
(磁性粒子)
磁性粒子は、下記式(I)で示される組成を有している。
R
vFe
(100−v−w−x)N
wM
x (I)
式中、RはYを含む希土類元素の少なくとも1種を示し、Mは金属元素を示す。v、w及びxはそれぞれ、3≦v≦30、5≦w≦15、0<x≦2.5を満たす。
【0018】
式(I)におけるRは、Yを含む希土類元素の少なくとも1種であれば特に制限されない。中でもRは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、Sm、Eu、Tb及びDyからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
式(I)におけるRは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
式(I)におけるMは金属元素を表す。Mで表される金属元素は、製造される磁性粒子における粒子成長を抑制して磁気特性をより向上させる観点から、Fe(鉄、融点1538℃)よりも融点の高い金属元素であることが好ましく、融点が1600℃以上である金属元素であることがより好ましく、融点が2000〜3500℃である金属元素であることが更に好ましい。金属元素Mとして具体的には、W(タングステン、融点3422℃)、Cr(クロム、融点1907℃)、Mo(モリブデン、融点2623℃)、Zr(ジルコニウム、融点1855℃)及びNb(ニオブ、融点2477℃)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、W、Mo及びNbからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
式(I)における金属元素Mは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
また金属元素Mは、その化合物(好ましくは、その酸化物、塩化物、アンモニウム塩等)が水、酸又はアルカリに溶解可能であることもまた好ましい。ここで溶解可能とは、25℃における溶解度が溶媒100gに対して0.1g以上であることを意味する。
【0021】
v、w及びxはそれぞれ、3≦v≦30、5≦w≦15、0<x≦2.5を満たす限り特に制限されない。中でも、磁気特性の観点から、希土類元素R及びFeの総量に対する金属元素Mのモル%[{x/(100−w−x)}×100]が、0.00<{x/(100−w−x)}×100≦1.00を満たすことが好ましく、0.05≦{x/(100−w−x)}×100≦0.50を満たすことがより好ましい。
更に金属元素Mを含むゾルを用いて磁性粒子を製造する場合は、0.05≦{x/(100−w−x)}×100≦0.40を満たすことが好ましい。
【0022】
(第一の工程)
磁性粒子の製造方法は、Rイオン及びFeイオンを含む溶液から、Rイオン及びFeイオンを含む沈殿物を得る第一の工程を含む。第一の工程においては、Rイオン及びFeイオンを含有する溶液から、磁性粒子の主相を構成する金属成分を含む沈殿物を沈殿させる。具体的には例えば、R(好ましくは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)及びFeがイオン化してなる金属イオンを含む反応タンク溶液中に、これらの金属イオンを共沈させることが可能な沈殿剤を添加して金属イオンの溶解度を低下させることにより、Rイオン及びFeイオンを含む沈殿物(R−Fe沈殿物)を析出させる。
【0023】
本発明の製造方法において、磁性粒子の主相を構成する希土類元素RとFeとはそれぞれRイオン及びFeイオンとして、溶媒中で均一に溶解混合している。したがって、これら磁性粒子の主相を構成する金属成分である希土類元素R及びFeを溶解した液を調製することが必要となる。これら金属成分の単体又は化合物を共通にイオン化して溶解しうる溶媒として、例えば、酸水溶液を使用することができる。好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が挙げられ、上述の金属イオンを高濃度に溶解することができる。また、金属イオンの溶解液の調製の別の方法として、これら金属成分の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等を水に溶解することを挙げることもできる。
また、Rイオン及びFeイオンを含む溶液は水溶液だけに限らず、金属アルコキシド等の形の有機金属化合物を有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、シクロヘキサン等の炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテルなどに溶解した溶液であってもよい。
【0024】
Rイオン及びFeイオンを含む溶液におけるRイオン及びFeイオンの含有比は、磁性粒子の主相における含有比に応じて設定することが好ましい。Rイオン及びFeイオンの含有比(Rイオン:Feイオン)はモル比で、1.5:17〜3.0:17であることが好ましく、2.0:17〜2.5:17であることがより好ましい。
【0025】
上記した金属イオンを溶解した溶液から、これら金属イオンと不溶性の塩として沈殿物を生成する物質としては、水酸化物イオン、炭酸イオン、シュウ酸イオン等の陰イオン(非金属イオン)を好ましく使用することができる。すなわち、これらの陰イオンを供給することができる物質の溶液であれば、第一の工程に好適に使用することができる。例えば、水酸化物イオンを供給する物質としてアンモニア、苛性ソーダ等が挙げられる。炭酸イオンを供給する物質として、重炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等が挙げられる。シュウ酸イオンを供給するものとしては、シュウ酸が挙げられる。
金属アルコキシドを有機溶剤に溶解した溶液の場合、例えば、水を添加することで、金属水酸化物の形で沈殿物を析出可能である。水以外にも、金属イオンと反応して不溶性の塩を生成する物質であれば本発明に適用可能である。また、沈殿物としての水酸化物の不溶性の塩を生成する方法として、いわゆるゾルゲル法を好ましく使用することもできる。
【0026】
第一の工程においては、金属イオンと非金属イオンとの沈殿反応を制御することにより、沈殿物を構成する沈殿物粒子内の構成成分の分布が均質で、粒度分布のシャープな、粒子形状の整った合金粒子原料を得ることができる。このような合金粒子原料を使用することが最終的な製造物である磁性粒子の磁気特性をより向上させる。この沈殿反応の制御は、金属イオン及び非金属イオンの供給速度、反応温度、反応液濃度、反応液の攪拌状態、反応時のpH等の反応条件を適当に設定することで行うことができる。これらの条件の設定には例えば、まず、沈殿物の収率を最良にするように種々の反応条件を選択し、沈殿物粒子の独立性(粒子形状)、沈殿物粒子の粒度分布がシャープであること等を顕微鏡観察等により確認しながら各条件を決定すればよい。また、原料として、どのような化学種を選択し、どのような沈殿反応を適用するかによって、沈殿物の形態は大きく変化することはいうまでもない。この沈殿反応(第一の工程)により、最終の磁性材料としての磁性粒子の粒子径、粒子形状、粒度分布等がおよそ決定される。このように合金粒子原料の性状が磁性材料に密接に反映される点で、この沈殿反応の制御は非常に重要となる。
第一の工程で得られる沈殿物粒子の粒子径は0.05μm〜20μm、より好ましくは0.1μm〜10μmの範囲にほぼ全粒子が入るような大きさと分布であることが好ましい。また、平均粒子径は0.1μm〜10μmの範囲内にあることが好ましい。このようにして得られる沈殿物粒子中には希土類元素RとFeとが充分に混合された状態で存在する。
なお、第一の工程で得られる沈殿物粒子の粒度分布は、レーザー回折式湿式粒度分布計を用いて測定され、平均粒子径は、粒度分布における小粒径側からの体積累積50%に相当する粒子径として測定される。
【0027】
第一の工程は、得られる磁性粒子の磁気特性の観点から、Rイオン及びFeイオンを含む酸水溶液と、水酸化物イオンを含む水溶液とを混合して沈殿物を得る工程であることが好ましく、Rイオン及びFeイオンを含み、塩酸、硫酸及び硝酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む酸水溶液と、水酸化物イオンを含む水溶液とを混合して沈殿物を得る工程であることがより好ましい。
【0028】
第一の工程として具体的には、Rイオン及びFeイオンを含む溶液に非金属イオンを含む溶液を添加する方法、Rイオン及びFeイオンを含む溶液を、非金属イオンを含む溶液に添加する方法、Rイオン及びFeイオンを含む溶液と非金属イオンを含む溶液とをそれぞれ溶媒(好ましくは水)に添加する方法等を挙げることができる。中でも第一の工程は、沈殿物粒子の性状を容易に調整できる点から、Rイオン及びFeイオンを含む溶液と非金属イオンを含む溶液とをそれぞれ溶媒(好ましくは水)に滴下する方法であることが好ましい。
【0029】
沈殿反応における反応温度は、使用する材料等に応じて適宜選択することができる。沈殿反応における反応温度は例えば、30〜50℃とすることができ、35〜45℃であることが好ましい。
沈殿反応における反応液濃度は、使用する材料等に応じて適宜選択することができる。沈殿反応における反応液濃度は例えば、金属イオンの総濃度として0.65mol/l〜0.85mol/lとすることが好ましく、0.7mol/l〜0.85mol/lとすることがより好ましい。
沈殿反応におけるpHは、使用する材料等に応じて適宜選択することができる。沈殿反応におけるpHは例えば、5〜9とすることが好ましく、6.5〜8とすることがより好ましい。
【0030】
第一の工程は、得られる沈殿物粒子を分離洗浄する工程等のその他の工程を更に含んでいてもよい。沈殿物粒子を分離洗浄する工程としては、例えば、得られた沈殿物粒子に溶媒(好ましくは水)を加えて混合した後、溶媒の少なくとも一部を除去する方法等を挙げることができる。溶媒を除去する方法は、濾過法、デカンテーション法等の通常用いられる方法から適宜選択することができる。
【0031】
(第二の工程)
磁性粒子の製造方法は、第一の工程で得られる沈殿物からR元素及びFe元素を含む酸化物粒子(以下、単に「酸化物粒子」ともいう)を得る第二の工程を含む。第二の工程は、第一の工程で得られる沈殿物を酸化物粒子に変換可能であれば特に制限されず、沈殿物の性状等に応じて適宜変換条件等を選択することができる。
例えば、沈殿反応から得られる沈殿物を構成する沈殿物粒子を熱処理して酸化物粒子を得ることができる。沈殿物粒子を熱処理して酸化物粒子に変換する場合、沈殿物を熱処理前に脱溶媒しておくことが好ましい。熱処理前に脱溶媒することで、熱処理による酸化物粒子への変換がより容易になる傾向がある。また、沈殿物粒子が高温度において溶媒への溶解度が大きくなるような場合、特に充分に脱溶媒しておくことが好ましい。充分に脱溶媒しておくことで、沈殿物粒子が残存する溶媒に再溶解して、粒子が凝集したり、粒度分布、粒子径等が変化したりすることを効果的に抑制することができる。
【0032】
脱溶媒する方法は特に制限されず使用する溶媒等に応じて適宜選択することができる。脱溶媒する方法として具体的には、例えば溶媒として水を使用する場合、70〜200℃のオーブン中で5時間〜12時間乾燥する方法等を挙げることができる。
【0033】
沈殿物粒子の熱処理による酸化物粒子への変換は、金属イオンと非金属イオンからなる不溶性の塩が加熱された結果、非金属イオンが分解することによると考えられる。したがって、熱処理は酸素の存在下に行うことが好ましく、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。また、同様の理由により、沈殿物粒子を構成する非金属イオンは、構成元素に酸素原子を含むことが好ましい。酸素原子を含む非金属イオンとしては、水酸化物イオン、炭酸イオン、シュウ酸イオン等の無機イオン、クエン酸イオン等の有機酸イオンが挙げられる。非金属イオンを供給可能な化合物としては、アンモニア、苛性ソーダ等の水酸化物イオンを供給する化合物、重炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸イオンを供給する化合物、シュウ酸等のシュウ酸イオンを供給する化合物などを挙げることができる。
ただし、不溶性の有機酸塩がアルコキシドのように加水分解により水酸化物を生成するような場合は、一旦、水酸化物とした後、それを熱処理して酸化物粒子に変換することが好ましい。
【0034】
熱処理の温度及び時間は、沈殿物粒子を酸化物粒子に変換可能であれば特に制限されず、沈殿物粒子を構成する金属イオン及び非金属イオンの種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、800〜1300℃の温度で数時間とすることができ、900〜1100℃の温度で数時間(例えば、1〜3時間)とすることが好ましい。また熱処理装置は特に制限されず、通常用いられる熱処理装置から適宜選択することができる。例えば、熱処理に加熱炉を用いる場合、加熱炉の雰囲気は送風機等を用いて空気を十分に送入するか、酸素を炉内に導入して熱処理を行うことが好ましい。
【0035】
上記のようにして得られる酸化物粒子は、粒子内において希土類元素R及びFeの微視的な混合が充分になされ、上記した沈殿物粒子の形状、粒度分布等が反映された酸化物粒子である。
【0036】
(第三の工程)
磁性粒子の製造方法は、第二の工程で得られる酸化物粒子と、金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとを混合して混合物を得る第三の工程を含む。酸化物粒子に、金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルである液状物を混合することで、酸化物粒子の表面に金属元素Mを短時間で、簡便にかつ均一に分布させることができる。酸化物粒子の表面に金属元素Mが均一に分布することで、最終的に得られる磁性粒子の磁気特性、特にHkが向上し、角形比に優れる磁性粒子が得られる。
一方、酸化物粒子への金属元素Mの混合を、金属元素Mを含む液状物ではなく、金属元素Mを含む紛体を用いて行う場合には、金属成分Mを均一に混合するのに長時間を要したり、混合が不充分であったりして、最終的に得られる磁性粒子の磁気特性を充分に向上させることが困難である。
【0037】
金属元素M及び媒体を含む溶液は、金属元素Mの単体又はその化合物を媒体に溶解することで調製できる。金属元素Mの化合物は媒体に溶解可能であれば特に制限されず、通常用いられる化合物から適宜選択することができる。金属元素Mの化合物としては、酸化物、塩化物、炭化物、アンモニウム塩等が挙げられ、酸化物及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
溶液を構成する媒体としては、水、アルコール、アセトン等を挙げることができ、水を用いることが好ましい。媒体として水を用いる場合、酸又はアルカリを用いて金属元素Mの化合物を溶解させてもよい。
金属元素Mを含む溶液は、金属元素Mを含む化合物を酸又はアルカリを用いて水に溶解したものであることが好ましく、金属元素Mを含む酸化物をアルカリを用いて水に溶解したものであることがより好ましい。
【0038】
金属元素M及び媒体を含むゾルは、金属元素Mの単体又はその化合物を媒体に分散することで調製できる。金属元素Mの化合物は媒体に分散可能であれば特に制限されず、通常用いられる化合物から適宜選択することができる。金属元素Mの化合物としては、酸化物、塩化物、炭化物、アンモニウム塩等が挙げられ、酸化物及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ゾルを構成する媒体としては、水、アルコール、アセトン等を挙げることができ、水を用いることが好ましい。
【0039】
金属元素M及び媒体を含むゾルにおける粒度分布は、ゾルが形成される限り特に制限されない。ゾルの平均粒径は、0.05μm〜1.00μmであることが好ましく、0.1μm〜0.7μmであることがより好ましい。なお、ゾルの平均粒径は、レーザー回折式湿式粒度分布計を用いて粒度分布を測定し、小粒径側からの体積累積50%に相当する粒子径として測定される。
金属元素M及び媒体を含むゾルは、例えば、コロイドミルを用いて金属元素Mの単体又はその化合物を媒体中で粉砕処理することで調製することができる。また市販のゾルから適宜選択して用いてもよい。
【0040】
金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルにおける金属元素Mの濃度は、酸化物粒子との分散性の観点から、1質量%〜40質量%であることが好ましく、5質量%〜35質量%であることがより好ましい。
また溶液を用いる場合、金属元素Mの濃度は、酸化物粒子との分散性の観点から、5質量%〜25質量%であることが好ましく、10質量%〜20質量%であることがより好ましい。
またゾルを用いる場合、金属元素Mの濃度は、酸化物粒子との分散性の観点から、15質量%〜30質量%であることが好ましく、20質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0041】
第三の工程における混合方法は、酸化物粒子と金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとを混合可能であれば特に制限されず、通常用いられる混合方法から適宜選択することができる。第三の工程における混合方法は、磁気特性の観点から、強い剪断力を付与する分散処理を含むことが好ましい。分散処理に用いる分散装置としては、酸化物粒子と金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとの混合物に強い剪断力を付与できるものであれば特に制限されない。分散装置として具体的には、ボールミル、ビーズミル、ロールミル等を挙げることができる。
分散処理の処理時間は、分散装置、製造規模等に応じて適宜選択することができる。例えば、1時間〜12時間とすることができ、2時間〜10時間であることが好ましい。第三の工程において金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルを用いることで、金属元素Mを固体として用いて同程度の分散状態にまで分散処理する場合に比べて、極めて短時間で分散処理を行うことができる。なお、金属元素Mの分散状態は、得られる磁性粒子の磁気特性により判断することができる。
分散処理の処理温度は特に制限されず、例えば、20〜100℃とすることができ、25〜95℃であることがより好ましい。
【0042】
第三の工程においては、分散処理に先立って予備混合処理を行うことが好ましい。これにより、磁気特性をより効率的に向上させることができる。予備混合処理に用いる混合装置として具体的には、Vブレンダー、攪拌翼を有するミキサー、シェーカー等を挙げることができる。予備混合処理に用いる混合装置は、酸化物粒子と金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとの混合物に、強い剪断力を付与できるものであることが好ましい。
予備混合処理の処理時間は、混合装置、製造規模等に応じて適宜選択することができ、生産性の観点から、0.1時間〜5時間とすることが好ましく、0.1時間〜1.5時間とすることがより好ましい。
予備混合処理の処理温度は特に制限されず、例えば、20〜100℃とすることができ、25〜95℃であることがより好ましい。
【0043】
予備混合処理として具体的には、混合装置に酸化物粒子と金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルとを投入した後、混合装置を運転する方法、混合装置に酸化物粒子を投入し、混合装置を運転しながら金属元素M及び媒体を含む溶液又はゾルを徐々に投入する方法等を挙げることができる。予備混合処理の混合方法は、混合装置の剪断力を考慮して選択することが好ましい。
【0044】
第三の工程で得られる混合物は、金属元素Mを含む溶液又はゾルに含まれる媒体を含むものであってもよいが、媒体の少なくとも一部を除去したものであることが好ましく、媒体の90質量%以上を除去したものであることがより好ましい。
媒体の除去方法は、媒体の種類等に応じて適宜選択することができる。媒体の除去方法としては、例えば媒体が水の場合、50〜250℃の温度で0.5時間〜15時間、加熱乾燥処理する方法であることが好ましく、100〜200℃の温度で1時間〜10時間、加熱乾燥処理する方法であることがより好ましい。
【0045】
以上で得られる混合物は、表面に金属元素Mを有する酸化物粒子であり、酸化物粒子は上述した沈殿物粒子の形状、粒度分布等を反映した粒子を含む混合物である。また、金属元素Mは酸化物粒子の表面に均一に分布した状態となっていることが好ましい。かかる混合物を還元処理することで、磁気特性に優れる磁性粒子を製造することができる。
【0046】
一方、特開平06−112019号公報に記載されているように、金属元素Mを主相に導入する方法として、高周波溶解法、アーク溶解法、超急冷法、ガスアトマイズ法等を用いる場合、保磁力の低下を防止するために、焼鈍を行うことが必要であり、金属元素Mの導入方法としては煩雑で、実用上充分に満足できる方法とは言い難かった。
【0047】
(還元工程)
磁性粒子の製造方法は、第三の工程で得られる混合物を還元して合金粒子を得る還元工程を更に含むことが好ましい。酸化物粒子を含む混合物を還元して合金粒子を得る方法は、磁性粒子の製造方法に通常用いられる還元方法から適宜選択して適用することができる。還元方法としては例えば、特許4590920号公報に記載の方法を本発明においても好適に適用することができる。具体的に還元工程は、金属元素Mを表面に有する酸化物粒子の一部を還元する前処理工程と、希土類酸化物を還元拡散する還元拡散工程とを含む還元方法であることが好ましい。
【0048】
(前処理工程)
磁性粒子の製造方法は、還元工程の一部として、第三の工程で得られる混合物に含まれる金属酸化物の一部を還元して部分還元物を得る前処理工程(水素還元工程)を含むことが好ましい。前処理工程では、上記混合物に含まれる金属酸化物の一部を、還元性ガスによる還元雰囲気下で加熱処理することで、Feと化合している酸素を水(H
2O)、一酸化炭素(CO)等の形態で徐々に除去することができる。還元性ガスは通常用いられる還元性ガスから適宜選択することができ、例えば、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)等の炭化水素ガスなどを挙げることができる。この場合の加熱処理の温度は、例えば、300〜900℃の範囲に設定することが好ましく、400〜800℃の範囲に設定することがより好ましい。加熱処理の温度が300℃以上であるとFe酸化物の還元が効率的に進行する。また900℃以下であると酸化物粒子が粒子成長、偏析することが抑制され、所望の粒子径を維持することができる。
また、還元性ガスとして水素を用いる場合、前処理工程に供される混合物層の厚みを20mm以下に調整し、更にさらに反応炉内の露点を−10℃以下に調整することが好ましい。これにより、金属元素Mによる凝集防止効果をより効果的に得ることができる。
前処理工程における還元雰囲気の圧力は特に制限されない。
【0049】
(還元拡散工程)
磁性粒子の製造方法は、還元工程として、第三の工程で得られる混合物である金属元素Mを表面に有する酸化物粒子に含まれる希土類酸化物を還元拡散させて合金粒子を得る還元拡散工程を更に含むことが好ましい。還元拡散工程では、表面に金属元素Mを有する酸化物粒子と、金属カルシウムとを混合し、不活性ガス雰囲気又は真空中で加熱処理することにより、酸化物粒子に含まれる希土類酸化物をカルシウム融体又はその蒸気と接触させて還元拡散させる。
【0050】
金属カルシウムは、粒状又は粉末状の形で使用されるが、その粒子径は10mm以下であることが好ましい。これにより還元拡散反応時における凝集をより効果的に抑制することができる。また、金属カルシウムは、反応当量(希土類酸化物を還元するのに必要な化学量論量であり、Feが酸化物の形である場合には、これを還元するに必要な分を含む)の1.1〜3.0倍量の割合で添加することができ、1.5〜2.0倍量の割合で添加することが好ましい。
【0051】
還元拡散工程では、還元剤である金属カルシウムとともに、必要に応じて崩壊促進剤を使用することができる。この崩壊促進剤は、後述する水洗工程に際して、生成物の崩壊、粒状化を促進させるために適宜使用されるものであり、例えば特開昭63−105909号公報に開示されている塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩、酸化カルシウム等のアルカリ土類酸化物などが挙げられる。これらの崩壊促進剤は、希土類源として使用される希土類酸化物当り1〜30質量%、好ましくは5〜30質量%の割合で使用される。
【0052】
還元拡散工程は、上述した金属元素Mを表面に有する酸化物粒子と、還元剤である金属カルシウムと、必要により使用される崩壊促進剤とを混合し、該混合物を窒素以外の不活性雰囲気、例えばアルゴンガス中で熱処理することで行う。還元拡散処理における熱処理の温度は700〜1200℃の範囲、好ましくは800〜1100℃の範囲とすることが好適である。還元拡散処理の熱処理時間は特に制約されないが、還元反応をより均一に行う観点から、10分〜10時間の範囲の時間で行うことができ、10分〜2時間の範囲で行うことが好ましい。
【0053】
(窒化工程)
磁性粒子の製造方法は、還元工程で得られる合金粒子を窒化処理して磁性粒子を得る窒化工程を更に含むことが好ましい。ここで合金粒子は酸化物粒子を還元処理して得られる希土類R−Feを主相とする合金粒子である。特に還元工程として還元拡散工程を行う場合、合金粒子が多孔質塊状で得られるため、粉砕処理を行うことなく直ちに窒素雰囲気中で熱処理して窒化工程を行うことができ、これにより窒化が均一に行われる。
【0054】
一方、特開平06−112019号公報に具体的に開示された方法で製造した合金を窒化処理して磁性粒子を得る場合、合金粒子の結晶粒径が500μm以上だと窒化時間が長くなるため、窒化処理前に粗粉砕処理をする必要がある。粗粉砕処理を経ると、粒子界面の酸化、合金粒子の歪化等が起こりやすく、保磁力の低下を招く場合がある。
【0055】
合金粒子の窒化処理は、上記還元のための加熱温度領域から降温させて、300〜600℃、特に400〜550℃の温度とし、この温度範囲で雰囲気を窒素雰囲気に置換することにより行われる。窒化処理における熱処理時間は、合金粒子の窒化が充分に均一に行われる程度に設定されればよく、例えば2〜30時間程度である。
【0056】
(水洗工程)
還元工程において還元拡散工程を行った場合、窒化工程後に得られる反応生成物には磁性粒子に加えて、副生するCaO、未反応の金属カルシウム等が含まれ、これらが複合した焼結塊状態となっている場合がある。その場合、次にこの反応生成物を冷却水中に投入して、CaO及び金属カルシウムを水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)懸濁物として磁性粒子から分離することが好ましい。さらに残留する水酸化カルシウムは、磁性粒子を酢酸等で洗浄して充分に除去することが好ましい。反応生成物を水中に投入した際には、金属カルシウムの水による酸化及び副生CaOの水和反応によって、複合した焼結塊状の反応生成物の崩壊、すなわち微粉化が進行する。
水洗工程の後、乾燥工程を経て、平均粒径が0.5μm〜10μmであり、ほぼ球状の磁性粒子を得ることができる。
【0057】
<複合材料>
本発明の複合材料は、既述の磁性粒子の製造方法で得られる磁性粒子と、樹脂とを含む。複合材料は必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。前記磁性粒子を含むことで、高い保磁力を有する複合材料を構成することができる。
【0058】
複合材料における磁性粒子の詳細については既述の通りである。
また複合材料に含まれる樹脂は特に制限されず、目的等に応じて通常用いられる樹脂から適宜選択することができる。樹脂は、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等を挙げることができる。
【0059】
複合材料における磁性粒子と樹脂の混合比は目的等に応じて適宜選択することができる。磁性粒子に対する樹脂の混合比(樹脂/磁性粒子)は、0.10〜0.15であることが好ましく、0.11〜0.14であることがより好ましい。
【0060】
複合材料の製造方法は、磁性粒子と樹脂とを混合可能であれば特に制限されず、通常用いられる混合方法から適宜選択して適用することができる。具体的には例えば、混練機を用いて、280〜330℃で混合する方法を挙げることができる。
【0061】
<ボンド磁石>
本発明のボンド磁石は、既述の磁性粒子の製造方法で得られる磁性粒子と、樹脂とを含む。ボンド磁石は必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。前記磁性粒子を含むことで、高い保磁力を有するボンド磁石を構成することができる。
【0062】
ボンド磁石は、例えば、前記複合材料を用いて製造することができる。具体的には例えば、複合材料を加熱しながら配向磁場で磁化容易磁区を揃える配向工程と、次いで着磁磁場でパルス着磁する着磁工程とを含む製造方法で製造することができる。
【0063】
配向工程における加熱温度は、樹脂に応じて適宜選択することができる。加熱温度は例えば90〜200℃であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。配向工程における配向磁場の大きさは、例えば720kA/mとすることができる。
また、着磁工程における着磁磁場の大きさは、例えば1500〜2500kA/mとすることができる。
【0064】
本発明の複合材料及びボンド磁石は、耐熱性に優れ、高い保磁力を有することから、例えば、高温下での使用が求められる自動車用モーター(特にウォーターポンプ)等の用途に好適に適用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【0066】
<実施例1>
(原料調製)
まず、Fe−Sm硫酸溶液を調製した。純水2.0kgにFeSO
4・7H
2O 5.0kgを混合溶解した。さらにSm
2O
3 0.49kgと70%硫酸0.74kgとを加えてよく攪拌し、完全に溶解させた。次に、得られた溶液に純水を加え、最終的にFeイオン濃度が0.726mol/l、Smイオン濃度が0.112mol/lとなるように調整し、これをFe−Sm硫酸溶液とした。
【0067】
次に、温度が35℃に保たれた純水2kg中に、上記で得られたFe−Sm硫酸溶液を攪拌しながら滴下し、同時に15%アンモニア液を滴下させ、pHを7〜8に調整した。これにより、難溶性の塩であるFe-Sm水酸化物の沈殿物が得られた。得られた沈殿物はスラリー化していた。
【0068】
得られたスラリーを純水で洗浄した後、沈殿物を分離した。分離した沈殿物を80℃のオーブン中で10時間乾燥した。その後、大気中1000℃で1時間、焼成処理した。冷却後、原料粉末として赤色のFe−Sm酸化物粒子を得た。
【0069】
(金属元素Mの添加)
得られた原料粉末100gと、金属元素Mであるタングステンの質量が0.19gとなる量のタングステン溶液とをミキサー(ワンダークラッシュミル WDL―1、回転速度25000rpm)に入れて10分間混合した後、ボールミルを用いて3時間分散処理して酸化物粒子と金属元素Mを含む混合物を得た。得られた混合物を100℃で3時間乾燥した。
なお、タングステン溶液は、酸化タングステン(WO
3)を28%アンモニア水に酸化タングステンの濃度が17%となるように溶解して調製した。
【0070】
(水素還元工程)
得られた乾燥後の混合物100gを、嵩厚10mmとなるように鋼製容器に入れた。容器を炉内に入れ、100Paまで減圧した後、水素ガスを導入しながら、700℃まで昇温し、そのまま15時間保持した。
これにより、Smと結合している酸素は還元されず、Feと結合している酸素のうち、95%が還元されてなる黒色の複合酸化物粒子が得られた。
【0071】
(還元拡散工程)
次に、上記で得られた黒色の複合酸化物粒子に含まれる酸素量に対して、2.5倍当量の金属カルシウム(平均粒径約6mm)を用意して、複合酸化物粒子と混合した。具体的には、複合酸化物粒子60gと金属カルシウム19.2gとを混合して炉内にいれた。
炉内を真空排気した後、アルゴンガス(Arガス)を導入した。温度を1100℃まで上昇させて、そのまま2時間保持することにより、Fe−Sm−W合金粒子を得た。ここで金属カルシウムは1mm〜20mm程度の粒状であった。
【0072】
(窒化工程)
還元拡散工程後、100℃まで冷却した後、真空排気を行い、引き続き窒素ガスを導入しながら、温度を450℃まで上昇させて、そのまま23時間保持して、磁性粒子を含む反応生成物を得た。
【0073】
(水洗工程)
窒化工程で得られた塊状の反応生成物を純水3kgに投入し、30分間攪拌した。静置した後、デカンテーションにより上澄みを排水した。純水への投入、攪拌及びデカンテーションを10回繰り返した。
次いで99.9%酢酸2.5gを投入して15分間攪拌した。得られたスラリーを固液分離した後、80℃で真空乾燥を3時間行って、金属光沢を有する磁性粒子を得た。得られた磁性粒子はSm
9.7Fe
76.7N
13.4W
0.09で表される。
また得られた磁性粒子について、体積平均粒子径を測定したところ2.4μmであった。
【0074】
[評価]
(磁気特性)
得られた磁性粒子を、パラフィンワックスと共に試料容器に詰め、ドライヤーにてパラフィンワックスを溶融させた後、16kA/mの配向磁場にてその磁化容易磁区を揃えた。この磁場配向した試料を32kA/mの着磁磁場でパルス着磁し、最大磁場16kA/mのVSM(振動試料型磁力計)を用いて残留磁化、保磁力及びHkを測定した。また保磁力とHkから角形比を算出した。結果を表1に示した。
【0075】
<実施例2〜19、比較例1〜22>
実施例1において、金属元素Mの種類、添加形態、添加量及び分散時間を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして磁性粒子を作製し、同様にして評価した。結果を表1に示した。
なお、添加形態のうち、ゾルとしては濃度30%、体積平均粒径0.11μmの金属酸化物ゾルを用いた。また固体としては、体積平均粒径がそれぞれ2.10μm(W)、9.0μm(Nb)、6.5μm(Zr)、1.5μm(Cr)である金属酸化物粒子を用いた。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から、本発明の磁性粒子の製造方法で得られる磁性粒子は、優れた残留磁化、保磁力、角形比及びHkを示すことが分かる。更に、金属元素Mを固体状態で添加する場合に比べて、分散処理時間が1/8と極めて短い時間で同程度の磁気特性を達成することができることが分かる。
【0078】
実施例4で得られた磁性粒子について、常法により表面処理を行って磁性粒子の表面に耐酸化被膜を形成した後、所定量を容器に入れ、大気中にて300℃、0.5時間加熱した。室温にて放冷後、上記と同様の方法にて保磁力を測定し、加熱前の保磁力に対する加熱後の保磁力の維持率(%)を算出したところ、78%と優れた耐熱性を示すことが分かった。
また、比較例22で得られた磁性粒子についても同様に表面処理を行い、同様に加熱した。室温にて放冷後、上記と同様の方法にて保持力を測定し、加熱前の保磁力に対する加熱後の保磁力の維持率(%)を算出したところ、56%であった。
以上から、本発明の磁性粒子の製造方法で得られる磁性粒子は耐熱性にも優れることが分かる。