特許第6244684号(P6244684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244684素子封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244684
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】素子封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20171204BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20171204BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08G59/14
   C08K5/3475
   C08L63/00 C
   H01L23/30 R
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-131892(P2013-131892)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-7146(P2015-7146A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢治
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徹
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正
(72)【発明者】
【氏名】古沢 文夫
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−167359(JP,A)
【文献】 再公表特許第03/002661(JP,A1)
【文献】 特開2013−209450(JP,A)
【文献】 特開平11−035796(JP,A)
【文献】 特開2001−316596(JP,A)
【文献】 特開平05−259316(JP,A)
【文献】 特開2003−201387(JP,A)
【文献】 特開平06−246871(JP,A)
【文献】 特開2003−338580(JP,A)
【文献】 特開2006−052385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C08L 63/00− 63/10
C08K 3/00− 13/08
H01L 23/00− 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中にエポキシ基を2個以上有し融点が40℃以上180℃以下であるエポキシ樹脂及び1分子中にエポキシ基を2個以上有し軟化点が40℃以上180℃以下であるエポキシ樹脂と、
硬化剤と、
1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有し、融点が220℃以下であり、かつ、含有率が総質量中0.2質量%以上1.0質量%以下である化合物と、
を含有する素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項2】
前記エポキシ基と反応し得る官能基が、フェノール性水酸基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項3】
前記化合物は、前記エポキシ基と反応し得る官能基の官能基当量が90g/eq〜500g/eqである請求項1又は請求項2記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項4】
前記エポキシ基と反応し得る官能基が、フェノール性水酸基である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項5】
前記化合物は、ベンゾトリアゾール基1つあたりの前記エポキシ基と反応し得る官能基の数が1である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
【請求項6】
素子と、前記素子を封止する請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC(Integrated Circuit)等の電子部品封止の分野ではエポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等のバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とノボラック型フェノール硬化剤の組合せはこれらのバランスに優れており、素子封止用成形材料のベース樹脂の主流になっている。
【0003】
近年の電子機器の小型化、軽量化及び高性能化に伴い、実装の高密度化が進み、電子部品装置は従来のピン挿入型から、表面実装型のパッケージが採用されるようになってきている。半導体装置を配線板に取り付ける場合、従来のピン挿入型パッケージはピンを配線板に挿入した後、配線板裏面からはんだ付けを行うため、パッケージが直接高温にさらされることはなかった。しかし、表面実装型パッケージでは半導体装置全体がはんだバス又はリフロー装置等で処理されるため、直接はんだ付け温度にさらされる。この結果、パッケージが吸湿していた場合、はんだ付けの際に吸湿水分が急激に膨張し、接着界面の剥離、パッケージクラック等が発生し、実装工程でのパッケージの信頼性を低下させるという問題があった。
【0004】
上記の問題を解決する対策として、半導体装置内部の吸湿水分を低減するためにICの防湿梱包又は配線板へ実装する前に予めICを充分乾燥して使用する等の方法もとられているが、これらの方法は手間がかかり、コストも高くなる。別の対策としては素子封止用成型材料中の充てん剤の含有量を増加する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−224328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、充てん剤の含有量を増加する方法では半導体装置内部の吸湿水分は低減するものの、大幅な流動性の低下を引き起こしてしまう問題があった。素子封止用樹脂成形材料の流動性が低いと成形の際に金線流れ、ボイド、ピンホール等の発生といった問題が生じることがある。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、高温における金属との接着性が高く、耐リフロー性に優れる硬化物を形成可能な素子封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備える電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
[1] 1分子中にエポキシ基を2個以上有し融点が40℃以上180℃以下であるエポキシ樹脂及び1分子中にエポキシ基を2個以上有し軟化点が40℃以上180℃以下であるエポキシ樹脂と、硬化剤と、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物と、を含有する素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[2] 前記エポキシ基と反応し得る官能基が、フェノール性水酸基、カルボキシ基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1つである[1]記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[3] 前記化合物の融点が、220℃以下である[1]又は[2]に記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[4] 前記化合物は、前記エポキシ基と反応し得る官能基の官能基当量が90g/eq〜500g/eqである[1]〜[3]のいずれか1に記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[5] 前記エポキシ基と反応し得る官能基が、フェノール性水酸基である[1]〜[4]のいずれか1に記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[6] 前記化合物は、ベンゾトリアゾール基1つあたりの前記エポキシ基と反応し得る官能基の数が1である[1]〜[5]のいずれか1に記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[7] 前記化合物の含有率が、総質量中、0.1質量%〜1.0質量%である[1]〜[6]のいずれか1に記載の素子封止用エポキシ樹脂成形材料。
[8] 素子と、前記素子を封止する[1]〜[7]のいずれか1に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温における金属との接着性が高く、耐リフロー性に優れる硬化物を形成可能な素子封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備える電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料及び電子部品装置について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
<素子封止用エポキシ樹脂成形材料>
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物と、を含有する。前記素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、必要に応じて、その他の成分を更に含んでいてもよい。
【0011】
前記素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂及び硬化剤に加えて、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物を含有するので、硬化処理を行って硬化物とした場合に、高温における金属との接着性が高い。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
即ち、前記1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基とベンゾトリアゾール基とを有する化合物における前記官能基は、前記エポキシ樹脂におけるエポキシ基と反応する。これにより、前記エポキシ樹脂の硬化物に前記化合物が連結されて、当該化合物のベンゾトリアゾール基が前記エポキシ樹脂の硬化物の表面に付加される。一方、前記化合物のベンゾトリアゾール基の窒素原子は、金属と相互作用しうるため、電子部品装置の金属表面と当該窒素原子とが相互作用しうる。前記化合物は、このようなベンゾトリアゾール基と、エポキシ基を反応し得る官能基とを1分子中に有しているので、前記素子封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止し、硬化処理を行うと、エポキシ樹脂硬化物の表面と金属との間に当該化合物が介在する。その結果、エポキシ樹脂硬化物の金属表面に対する付着力が向上し、高温における金属との接着性が高くなるものと推察される。
以下、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料を構成する各成分について説明する。
【0012】
−エポキシ樹脂−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を含有する。エポキシ基の数は1分子中に2個以上であればよく、2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
本発明において用いられる1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂は、素子封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限はなく、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;アルキル置換、芳香環置換又は非置換の、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール等のジグリシジルエーテルであるビスフェニル型エポキシ樹脂;アルキル置換、芳香環置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるナフタレン型エポキシ樹脂;アルキル置換、芳香環置換又は非置換の、フェノール化合物又はナフトール化合物とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;並びにオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂又は脂環族エポキシ樹脂が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
なかでも、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としては、流動性と硬化性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含有していることが好ましい。流動性と難燃性との両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールFのジグリシジルエーテルであるビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。流動性とリフロー性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のチオジフェノールのジグリシジルエーテルであるチオジフェニル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。硬化性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノール化合物とビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。保存安定性と難燃性の両立の観点からはアルキル置換、芳香環置換又は非置換のナフトール化合物とジメトキシパラキシレンから合成されるナフトールアラルキル型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。
【0014】
ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。このようなエポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては市販品としてジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX−4000が入手可能である。上記ビフェニル型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0015】
チオジフェニル型エポキシ樹脂は、チオジフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。このようなエポキシ樹脂としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、2,2’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−t−ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでも、チオジフェニル型エポキシ樹脂としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−t−ブチルジフェニルスルフィドのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては市販品として新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−120TEが入手可能である。上記チオジフフェニル型エポキシ樹脂を含有する場合、上記チオジフェニル型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0016】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。このようなエポキシ樹脂としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4’−メチレンビス(2,3,6−トリメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4’−メチレンビスフェノールのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては市販品として新日鐵化学株式会社製商品名YSLV−80XYが入手可能である。上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有する場合、上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0017】
ノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることによって容易に得られる。なかでも、ノボラック型エポキシ樹脂としては、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては市販品としてDIC株式会社製商品名N−660が入手可能である。ノボラック型エポキシ樹脂を含有する場合、ノボラック型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0018】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製商品名HP−4700等が入手可能である。ナフタレン型エポキシ樹脂を含有する場合、ナフタレン型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上とすることが更に好ましい。
【0019】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、日本化薬製商品名EPPN−502又はジャパンエポキシレジン株式会社製商品名1032H60が入手可能である。トリフェニルメタン型エポキシ樹脂を含有する場合、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上とすることが更に好ましい。
【0020】
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノール化合物とジメトキシパラキシレンから合成されるフェノールアラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。また、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のフェノール化合物とビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。そのようなエポキシ樹脂としては、フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物は市販品として日本化薬株式会社製商品名NC−2000Lが、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物は市販品として日本化薬株式会社製商品名NC−3000Sが入手可能である。上記フェノールアラルキル型エポキシ樹脂を含有する場合、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0021】
ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂は、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のナフトール化合物とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるナフトールアラルキル樹脂にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。このようなエポキシ樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名ESN−375又は新日鐵化学株式会社製商品名ESN−175が挙げられる。上記ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂を含有する場合、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0022】
また、難燃性、耐リフロー性及び流動性の両立の観点からは上記ビフェニル型エポキシ樹脂とビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とを含有していることが好ましく、また特にその含有質量比は、ビフェニル型エポキシ樹脂/ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂=50/50〜5/95であることが好ましく、40/60〜10/90であることがより好ましく、30/70〜15/85であることが更に好ましい。このような含有質量比を満足する化合物としては、日本化薬株式会社製商品名CER−3000L等が市販品として入手可能である。
【0023】
また、上記以外にも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂として、ナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂を使用することもできる。このような化合物としてはDIC株式会社製商品名HP−5000が挙げられる。ナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂を含有する場合、ナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0024】
更に、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂も使用することもできる。このような化合物としてはDIC株式会社製商品名HP−7200が挙げられる。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有する場合、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の含有率は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0025】
上記に挙げたビフェニル型エポキシ樹脂、チオジフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂及びジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらエポキシ樹脂の2種以上を組み合わせて用いる場合の含有率は、エポキシ樹脂全量中合わせて50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0026】
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、100g/eq〜1000g/eqが好ましく、150g/eq〜1000g/eqがより好ましく、150g/eq〜500g/eqが更に好ましい。
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が軟化点を有する場合、該軟化点は、40℃〜180℃が好ましく、45℃〜150℃がより好ましく、50℃〜130℃が更に好ましい。
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が融点を有する場合、該融点は、40℃〜180℃が好ましく、45℃〜150℃がより好ましく、50℃〜130℃が更に好ましい。
【0027】
なお、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が、軟化点を有するか融点を有するかは、次のようにして判断する。
ガラス毛細管に固体試料(1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂)を入れて、それをシリコーンオイル中に浸漬し、シリコーンオイルの温度を上昇させながら目視で融点を測定する方式の融点測定器による測定で、固体試料が融け始める温度から融け終わる温度までの温度差が一点の温度に決定できるか否かを判定し、温度差が一点の温度に決定できる場合に固体試料が融点を有すると判断する。一方、温度差を一点の温度に決定できない場合、固体試料が軟化点を有すると判断する。
【0028】
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料に含まれる1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂の含有率は、3質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上12質量%以下がより好ましく、5質量%以上12質量%以下が更に好ましい。
【0029】
−硬化剤−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、硬化剤を含有する。
本発明において用いられる硬化剤は、素子封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限はなく、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、チオジフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール化合物とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノールノボラック構造とフェノールアラルキル構造がランダム、ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノールアラルキル樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂などのフェノール樹脂が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
【0030】
なかでも、硬化剤としては、流動性、難燃性及び耐リフロー性の観点からはフェノールアラルキル樹脂、共重合型フェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂が好ましく、耐熱性、低膨張率及び低そり性の観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましく、硬化性の観点からはノボラック型フェノール樹脂が好ましく、これらのフェノール樹脂の少なくとも1種を含有していることが好ましい。
【0031】
フェノールアラルキル樹脂としては、市販品として三井化学株式会社製商品名XLC及び明和化成株式会社製商品名MEH−7800が挙げられる。ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂としては、市販品として明和化成株式会社製商品名MEH−7851が挙げられる。上記フェノールアラルキル樹脂を含有する場合、フェノールアラルキル樹脂の含有率は、その性能を発揮するために硬化剤全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
ナフトールアラルキル樹脂としては、市販品として新日鐵化学株式会社製商品名SN−475又は新日鐵化学株式会社製商品名SN−170が挙げられる。上記ナフトールアラルキル樹脂を含有する場合、ナフトールアラルキル樹脂の含有率は、その性能を発揮するために硬化剤全量中20質量%以上とすることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0032】
上記フェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂は、難燃性の観点からその一部又は全部がアセナフチレンと予備混合されていることが好ましい。アセナフチレンはアセナフテンを脱水素して得ることができるが、市販品を用いてもよい。また、アセナフチレンの代わりにアセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を用いることもできる。アセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を得る方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等が挙げられる。また、重合に際しては従来公知の触媒を用いることができるが、加熱により行うこともできる。この際、重合温度は80℃〜160℃が好ましく、90℃〜150℃がより好ましい。得られるアセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物の軟化点は、60℃〜150℃が好ましく、70℃〜130℃がより好ましい。60℃以上であれば成形の際の染み出しによる成形性の低下が生じにくい傾向にあり、150℃以下であれば樹脂との相溶性が向上する傾向にある。アセナフチレンと共重合させる他の芳香族オレフィンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、インデン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、それらのアルキル置換体等が挙げられる。また、上記した芳香族オレフィン以外に本発明の効果に支障の無い範囲で脂肪族オレフィンを併用することもできる。脂肪族オレフィンとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸、フマル酸エステル等が挙げられる。これら脂肪族オレフィンの含有率は重合モノマー全量中20質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましい。
【0033】
上記フェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂の一部又は全部とアセナフチレンとの予備混合の方法としては、硬化剤及びアセナフチレンをそれぞれ微細に粉砕し固体状態のままミキサー等で混合する方法、両成分を溶解する溶媒に共に溶解させた後、溶媒を除去する方法、硬化剤及び/又はアセナフチレンの軟化点以上の温度で両者を溶融混合する方法等で行うことができ、両成分が良好に混じり合った混合物が得られて不純物の混入が少ない溶融混合法が好ましい。前記の方法により予備混合物(アセナフチレン変性硬化剤)が、製造される。溶融混合は、硬化剤及び/又はアセナフチレンの軟化点以上の温度であれば制限はなく、100℃〜250℃が好ましく、120℃〜200℃がより好ましい。また、溶融混合は両者が良好に混合すれば混合時間に制限はなく、1時間〜20時間が好ましく、2時間〜15時間がより好ましい。硬化剤とアセナフチレンを予備混合する場合、混合中にアセナフチレンが重合又は硬化剤と反応しても構わない。
【0034】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、市販品としてエア・ウォーター株式会社製商品名HE−910及び明和化成株式会社製商品名MEH−7500が挙げられる。トリフェニルメタン型フェノール樹脂を用いる場合、その含有率はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0035】
ノボラック型フェノール樹脂としては、市販品として明和化成株式会社製商品名H−100等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、その含有率はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0036】
共重合型フェノールアラルキル樹脂としては、エア・ウォーター株式会社製商品名HE−510等が市販品として入手可能である。共重合型フェノールアラルキル樹脂を用いる場合、その含有率はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0037】
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂としては、群栄化学株式会社製商品名GDP−6085等が市販品として入手可能である。ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂を用いる場合、その含有率はその性能を発揮するために硬化剤全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0038】
上記のフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び共重合型フェノールアラルキル樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。これらの樹脂を2種以上組み合わせて用いる場合の含有率は、硬化剤全量中合わせて50質量%以上とすることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
硬化剤の水酸基当量は、70g/eq〜1000g/eqが好ましく、75g/eq〜700g/eqがより好ましく、80g/eq〜500g/eqが更に好ましい。
硬化剤が軟化点を有する場合、該軟化点は、40℃〜180℃が好ましく、45℃〜150℃がより好ましく、50℃〜130℃が更に好ましい。
硬化剤が融点を有する場合、該融点は、40℃〜180℃が好ましく、45℃〜150℃がより好ましく、50℃〜130℃が更に好ましい。
【0039】
なお、硬化剤が、軟化点を有するか融点を有するかは、次のようにして判断する。
ガラス毛細管に固体試料(硬化剤)を入れて、それをシリコーンオイル中に浸漬し、シリコーンオイルの温度を上昇させながら目視で融点を測定する方式の融点測定器による測定で、固体試料が融け始める温度から融け終わる温度までの温度差が一点の温度に決定できるか否かを判定し、温度差が一点の温度に決定できる場合に固体試料が融点を有すると判断する。一方、温度差を一点の温度に決定できない場合、固体試料が軟化点を有すると判断する。
【0040】
本発明において、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、硬化剤の当量比、すなわちエポキシ基数に対する水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はなく、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性に優れる素子封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることが更に好ましい。
【0041】
−1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物−
本発明に係る素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基と、ベンゾトリアゾール基と、を有する化合物(以下、「特定化合物」と称する場合がある)を含有する。
特定化合物におけるエポキシ基と反応し得る官能基とは、エポキシ基を開環して共有結合を形成可能な官能基を意味する。特定化合物の少なくとも一部は、前記エポキシ樹脂を硬化して得られる硬化物中でエポキシ基を開環して共有結合している。特定化合物において、エポキシ基と反応し得る官能基とベンゾトリアゾール基とは、それぞれ独立に、1つ以上存在することができる。
【0042】
ベンゾトリアゾール基は、置換基を有していてもよいベンゾトリアゾール化合物から、水素原子を1つ取り除いてなる基である。水素原子が取り除かれる位置は特に制限されず、炭素原子上であっても窒素原子上であってもよい。
【0043】
前記ベンゾトリアゾール化合物が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができ、ベンゾトリアゾール基としての前記エポキシ樹脂の骨格に対する配置の点で、炭素数1〜6のアルキル基等が好ましい。ベンゾトリアゾール化合物が置換基を有する場合、置換基数は特に制限されず、1又は2であることが好ましい。ベンゾトリアゾール化合物は、更に縮合環を形成していてもよい。縮合環は芳香族環であっても、脂肪族環であってもよく、また、炭化水素環であっても複素環であってもよい。前記ベンゾトリアゾール化合物としては、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点で、無置換であることが好ましい。
【0044】
前記エポキシ基と反応し得る官能基は、1分子中に1つ以上あればよく、複数存在していてもよい。特定化合物における前記官能基の数は、高温弾性率低減の観点から1つであることが好ましい。また、特定化合物におけるベンゾトリアゾール基は、1分子中に1つであってもよく、複数存在していてもよい。特定化合物のベンゾトリアゾール基1つあたりの前記官能基の数は、加熱成形又は後硬化後の樹脂への固定化の点で1又は2とすることができる。特定化合物のベンゾトリアゾール基1つあたりの前記官能基の数が1以上であれば、未反応のままの特定化合物が無くなる傾向があり、2以下であれば高温弾性率低減の傾向がある。特定化合物のベンゾトリアゾール基1つあたりの前記官能基の数は1であることがより好ましい。
【0045】
エポキシ基と反応し得る官能基としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、アミノ基、メルカプト基等を挙げることができる。なかでも、エポキシ基と反応し得る官能基としては、金属に対する腐食性が低いという観点から、フェノール性水酸基、カルボキシ基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の流動性の観点から、フェノール性水酸基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、高温領域の弾性率の低減という観点からフェノール性水酸基であることが更に好ましい。
【0046】
エポキシ基と反応し得る官能基であるフェノール性水酸基は、置換基を有していてもよいフェノール化合物から、フェノール性水酸基に含まれる水素原子以外の水素原子を1つ取り除いてなる基である。フェノール化合物は、1つ以上の置換基を有することができる。フェノール化合物が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数6〜14のヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。置換基におけるアルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、高温時の金属との接着性又は低吸湿性の観点から、分岐鎖状であることが好ましい。分岐鎖状の、アルキル基、アルケニル基又はアルコキシ基としては、炭素数3〜20のアルキル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のアルコキシ基を挙げることができ、炭素数3〜20のアルキル基及び炭素数3〜20のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、炭素数3〜10のアルキル基及び炭素数3〜10のアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1つであることが更に好ましい。置換基が2つ以上存在する場合、前記置換基のうち隣接する位置に結合する置換基は互いに結合し、フェノール化合物のベンゼン環と一体となって縮合環を形成してもよく、形成した縮合環は、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環であってもよい。
【0047】
フェノール化合物の置換基は、フェノール性水酸基に対してオルト位、メタ位又はパラ位に存在することができ、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点でパラ位であることが好ましい。
【0048】
特定化合物は、エポキシ基と反応し得る官能基(以下、単に「官能基」と称する場合がある)とベンゾトリアゾール基とを分子中に有していればよく、その結合態様は特に制限されない。例えば、前記官能基とベンゾトリアゾール基とが単結合で連結していてもよく、前記官能基とベンゾトリアゾール基とが2価の有機基を介して結合していてもよい。
【0049】
前記官能基とベンゾトリアゾール基とを連結する2価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基等を挙げることができる。2価の有機基がアルキレン基又はアリーレン基の場合、アルキレン基又はアリーレン基は、更に置換基を有していてもよい。アルキレン基における置換基としては、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、またこれらに加えて、ベンゾトリアゾール基、及び、エポキシ基と反応し得る官能基を挙げることができる。アリーレン基における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、またこれらに加えて、ベンゾトリアゾール基、及び、エポキシ基と反応し得る官能基を挙げることができる。
【0050】
前記官能基が、カルボキシ基、アミノ基、又はメルカプト基である場合には、特定化合物としては、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点で、ベンゾトリアゾール基と前記官能基との間は単結合であることが好ましい。特定化合物が、前記官能基としてカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール化合物の場合には、カルボキシ基の連結位置はいずれであってもよく、その中でもベンゾトリアゾール環を構成するベンゼン環上にカルボキシ基が連結されている化合物は入手が比較的容易な点で好ましい。特定化合物が、前記官能基としてメルカプト基を有するベンゾトリアゾール化合物の場合には、メルカプト基の連結位置はいずれであってもよく、その中でもベンゾトリアゾール基の1位又は2位の窒素原子に連結されている化合物は入手が比較的容易な点で好ましい。特定化合物が、前記官能基としてアミノ基を有するベンゾトリアゾール化合物の場合には、アミノ基の連結位置はいずれであってもよく、その中でもベンゾトリアゾール基の1位又は2位の窒素原子に連結されている化合物は入手が比較的容易な点で好ましい。
【0051】
特定化合物が、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基としてフェノール性水酸基と、ベンゾトリアゾール基とを有する化合物(本明細書において以下、「ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体」と称することがある)場合には、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点で、前記フェノール性水酸基が結合するベンゼン環とベンゾトリアゾール基との間は、単結合であることが好ましい。ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体において、フェノール性水酸基が結合するベンゼン環におけるベンゾトリアゾール基の結合位置は、メタ位、パラ位及びオルト位のいずれの位置にあってもよく、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点でオルト位であることが好ましい。前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体は、ベンゾトリアゾール基とヒドロキシフェニル基とをそれぞれ1つ有する化合物である場合には、ベンゾトリアゾール基の1位の窒素原子とヒドロキシフェニル基とが結合した構造を有するものであってもよく、ベンゾトリアゾール基の2位の窒素原子とヒドロキシフェニル基とが結合した構造を有するものであってもよい。前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体は、ベンゾトリアゾール基の2位の窒素原子とヒドロキシフェニル基とが結合した構造を有するものであることが、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点で好ましい。
【0052】
前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体がベンゾトリアゾール基を複数有する場合、ベンゾトリアゾール基は、それぞれ、フェノール性水酸基が結合するベンゼン環に単結合で連結していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては特に制限されず、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基等を挙げることができる。連結基は更に置換基を有していてもよい。連結基における置換基としては、2価の有機基における置換基として説明した置換基と同様のものを挙げることができる。
【0053】
前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体がベンゾトリアゾール基を複数有する化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾリルフェノールの二量体又は三量体以上の多量体、2つのベンゾトリアゾリルフェニル基が炭素数1〜6のアルキレン基を介して結合した化合物等を挙げることができる。
【0054】
前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体としては、前記エポキシ樹脂の骨格に対するベンゾトリアゾール基の配置の点で、無置換のベンゾトリアゾール基を有し、フェノール性水酸基が結合するベンゼン環の置換基として分岐鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を1つ以上有するフェノール誘導体であることが好ましく、フェノール性水酸基に対して無置換のベンゾトリアゾール基をオルト位に有し、フェノール性水酸基が結合するベンゼン環の置換基として分岐鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を1つ以上有するフェノール誘導体であることがより好ましい。
【0055】
前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール]、6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−s−ブチル−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等、及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらのベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体は、更にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基等によって置換されたもの(以下、置換体という)であってもよい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
中でも、高温弾性率低減の観点、又は高温時の金属との接着性の観点からは、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−s−ブチル−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等、並びにこれらの位置異性体、並びにこれらの置換体であることが好ましい。
【0057】
特定化合物が、前記エポキシ基と反応しうる官能基としてカルボキシ基を有する場合、カルボキシ基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、4−ベンゾトリアゾールカルボン酸、5−ベンゾトリアゾールカルボン酸等が挙げられる。
特定化合物が、前記エポキシ基と反応しうる官能基としてメルカプト基を有する場合、メルカプト基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、1−メルカプト−1H−ベンゾトリアゾール、2−メルカプト−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
特定化合物が、前記エポキシ基と反応しうる官能基としてアミノ基を有する場合、アミノ基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、1−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール、2−アミノ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0058】
特定化合物の融点は、金属に対する接着性及び耐リフロー性の観点から220℃以下であることが好ましい。特定化合物の融点が220℃以下であれば、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の成形工程での加熱処理により未反応のものが偏析しない傾向がある。特定化合物の融点は、成形工程での加熱処理時及びその後硬化時に確実に溶融させるためにも、200℃以下であることがより好ましい。特定化合物の融点の下限値は、特に制限はないが、一般に40℃以上とすることができる。
【0059】
特定化合物の、前記官能基の官能基当量は、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の加熱成形又は後硬化後の強度及びベンゾトリアゾール基の樹脂への固定化の点で、90g/eq〜500g/eqであることが好ましく、150g/eq〜450g/eqであることがより好ましく、200g/eq〜400g/eqであることが更に好ましい。特定化合物の前記官能基の官能基当量が90g/eq以上であれば、加熱成形又は後硬化後に一定の強度が保たれる傾向があり、500g/eq以下であれば、ベンゾトリアゾール基を高濃度でエポキシ樹脂に固定化できる傾向がある。
【0060】
特定化合物がベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体の場合には、ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体の水酸基当量は、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の加熱成形又は後硬化後の強度及びベンゾトリアゾール基の樹脂への固定化の点で、100g/eq〜500g/eqであることが好ましく、150g/eq〜450g/eqであることがより好ましく、200g/eq〜400g/eqであることが更に好ましい。ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体の水酸基当量が100g/eq以上であれば、加熱成形及び後硬化後に一定の強度が保たれる傾向があり、500g/eq以下であれば、ベンゾトリアゾール基を高濃度でエポキシ樹脂に固定化できる傾向がある。
【0061】
本発明において、特定化合物がベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体である場合、エポキシ樹脂と、硬化剤及びベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体との当量比、即ち、エポキシ基数に対する硬化剤及び前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体中の水酸基数の比(硬化剤及び前記ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることが更に好ましい。
【0062】
特定化合物の素子封止用エポキシ樹脂成形材料における含有率は、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上0.95質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.75質量%以下であることが更に好ましい。0.1質量%以上であれば、高温における金属との接着性がより向上する傾向があり、1.0質量%以下であれば、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の硬度の低下を抑制できる傾向がある。
【0063】
−シラン化合物−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、シラン化合物を含有してもよい。
シラン化合物とは、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
シラン化合物の含有率は成形性及び流動性の観点から素子封止用エポキシ樹脂成形材料中0.06質量%〜2質量%が好ましく、0.1質量%〜0.75質量%がより好ましく、0.2質量%〜0.7質量%が更に好ましい。0.06質量%以上であれば流動性が確保される傾向にあり、2質量%以下であればボイド等の成形不良が発生しにくい傾向がある。
【0065】
−硬化促進剤−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、硬化促進剤を含有してもよい。
本発明で用いられる硬化促進剤としては、素子封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているもので特に限定はない。例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物;シクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,2−ベンゾキノン、1,4−ベンゾキノン、ジフェノキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物及びこれらの誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2―フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;これらの有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウムテトラ置換ボレート;並びに2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
有機ホスフィン化合物とキノン化合物等との付加物に用いられる第三ホスフィンとしては特に制限はなく、ジブチルフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィン等のアリール基を有する第三ホスフィンが挙げられ、成形性の点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0067】
また、第三ホスフィンとキノン化合物との付加物に用いられるキノン化合物としては特に制限はなく、1,2−ベンゾキノン、1,4−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられ、耐湿性又は保存安定性の観点からは1,4−ベンゾキノンが好ましい。
【0068】
硬化促進剤の含有量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に限定されるものではなく、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物との合計量100質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.3質量部〜5質量部がより好ましく、0.5質量部〜4質量部が更に好ましい。0.1質量部以上であれば短時間で硬化させることが可能となり、10質量部以下であれば硬化速度が早すぎることがなく良好な成形品が得られる傾向にある。
【0069】
−無機充てん剤−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、無機充てん剤を含有してもよい。
本発明で用いられる無機充てん剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上のために成形材料に含有されるものであり、素子封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではない。無機充てん剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、無機充填剤としては、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。充てん剤の形状としては、成形の際の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。特にコストと性能のバランスの観点からは球状溶融シリカが好ましい。
【0070】
無機充てん剤を含有する場合、無機充てん剤の含有率は、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減及び強度向上の観点から、素子封止用エポキシ樹脂成形材料中70質量%〜95質量%が好ましい。70質量%以上であれば難燃性が向上する傾向があり、95質量%以下であれば流動性が向上する傾向がある。
【0071】
−その他の成分−
(陰イオン交換体)
また、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料には、IC等の素子の耐湿性及び高温放置特性を向上させる目的で陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。陰イオン交換体としては、ハイドロタルサイト;マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種の元素の含水酸化物;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
陰イオン交換体を含有する場合、陰イオン交換体の含有量は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる充分量であれば特に限定されるものではないが、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい。
【0073】
(離型剤)
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料には、必要に応じて離型剤を含有してもよい。離型剤としては、酸化型又は非酸化型のポリオレフィンを挙げることができる。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンとしては、クラリアント社製商品名H4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。
離型剤を含有する場合、離型剤は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部〜10質量部用いることが好ましく、0.1質量部〜5質量部用いることがより好ましい。0.01質量部以上であれば離型性が充分となる傾向があり、10質量部以下であれば接着性の低下が抑制される傾向がある。
また、上記以外の他の離型剤としては、カルナバワックス、モンタン酸エステル、モンタン酸、ステアリン酸等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。酸化型又は非酸化型のポリオレフィンに加えてこれら他の離型剤を併用する場合、その含有量は合わせて、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.5質量部〜3質量部がより好ましい。
【0074】
(難燃剤)
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料には従来公知の難燃剤を必要に応じて含有することができる。難燃剤としては、ブロム化エポキシ樹脂;三酸化アンチモン;赤リン;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機物及び/又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル等のリン化合物;メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物;シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、酸化鉄、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属元素を含む化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は特に制限はなく、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂100質量部に対して1質量部〜30質量部が好ましく、2質量部〜15質量部がより好ましく、3質量部〜10質量部が更に好ましい。
【0075】
(着色剤等)
また、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤を含有してもよい。更に、その他の添加剤として、シリコーンオイル及びシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて含有することができる。
【0076】
−素子封止用エポキシ樹脂成形材料の調製−
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法として、所定の配合量の成分をミキサー等によって混合し、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却及び粉砕する方法を挙げることができる。具体的には、上述した成分の所定量を撹拌又は混合し、予め70℃〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練した後、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
【0077】
<電子部品装置>
本発明の電子部品装置は、素子と、前記素子を封止する前記素子封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物とを備え、必要に応じて、他の構成成分を有する。
本発明の電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディング又はバンプで接続した後、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package);配線板又はガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール;裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package);などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0078】
本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料が、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物を含有するため、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、表面が金属、特に、銅又は銀を含む金属である部材、例えば配線等に対して優れた接着性を示す。そのため、本発明の素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、表面が銅又は銀の配線を有する素子を備える電子部品装置の封止に特に有効である。なお、表面が銅又は銀の配線とは、銅の配線、銀の配線又は銅の配線表面に銀メッキの施された配線等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
以下の成分をそれぞれ下記表1〜表12に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、実施例1〜実施例43及び比較例1〜比較例43の素子封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。なお表中の空欄は「配合無し」を表す。
【0081】
1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂としては、以下を使用した。
・エポキシ樹脂1:エポキシ当量196g/eq、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX−4000、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個)
・エポキシ樹脂2:エポキシ当量240g/eq、軟化点96℃のビフェニル型エポキシ樹脂/ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂=20/80の質量比の組成物(日本化薬株式会社製、商品名CER−3000L、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個〜5個)
・エポキシ樹脂3:エポキシ当量238g/eq、軟化点55℃のフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物(日本化薬株式会社製、商品名NC−2000L、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個〜5個)
・エポキシ樹脂4:エポキシ当量202g/eq、軟化点60℃のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名N−660、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個〜5個)
・エポキシ樹脂5:エポキシ当量250g/eq、軟化点58℃のナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名HP−5000、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個〜5個)
・エポキシ樹脂6:エポキシ当量258g/eq、軟化点60℃のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名HP−7200、1分子中に含まれるエポキシ基の数:2個〜5個)
【0082】
硬化剤としては、以下のものを使用した。
・硬化剤1:水酸基当量175g/eq、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製、商品名MEH−7800)
・硬化剤2:水酸基当量106g/eq、軟化点83℃のノボラック型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名H−100)
【0083】
1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基とベンゾトリアゾール基とを有する化合物としては、以下の化合物を使用した。
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物1:2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(SEESORB701、シプロ化成株式会社製、融点:130℃、水酸基当量:225g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物2:2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(SEESORB704、シプロ化成株式会社製、融点:80℃、水酸基当量:352g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物3:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール(SEESORB706、シプロ化成株式会社製、融点:164℃、水酸基当量:388g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物4:2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(SEESORB707、シプロ化成株式会社製、融点:75℃、水酸基当量:339g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物5:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチルフェノール](JF−832、城北化学株式会社製、融点:195℃、水酸基当量:329g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物6:6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−オクチル−6’−t−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール(JAST−500、城北化学株式会社製、融点:107℃、水酸基当量:250g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物7:2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(SEESORB709、シプロ化成株式会社製、融点:104℃、水酸基当量:323g/eq)
・ベンゾトリアゾール−フェノール化合物8:2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(JF−79、城北化学株式会社製、融点:140℃、水酸基当量:281g/eq)
・ベンゾトリアゾール−チオール化合物1:2−メルカプト−2H−ベンゾトリアゾール(東京化成株式会社製、融点:130℃、官能基当量:151g/eq)
・ベンゾトリアゾール−アミン化合物1:2−アミノ−2H−ベンゾトリアゾール(東京化成株式会社製、融点:122℃、官能基当量:134g/eq)
・ベンゾトリアゾール−カルボン酸化合物1:5−ベンゾトリアゾールカルボン酸(東京化成株式会社製、融点:260℃、官能基当量:163g/eq)
【0084】
また、比較例において、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基とベンゾトリアゾール基とを有する化合物の替わりに使用した材料としては以下のものを使用した。
・フェノール化合物1:フェノール
・フェノール化合物2:o−クレゾール
・フェノール化合物3:2−ナフトール
・フェノール化合物4:レソルシノール
・ベンゾトリアゾール化合物1:1,2,3−ベンゾトリアゾール(東京化成株式会社製、融点:97℃)
・ベンゾトリアゾール化合物2:5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成株式会社製、融点:80℃)
・ベンゾトリアゾール化合物3:1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール(東京化成株式会社製、融点:64℃)
【0085】
シラン化合物としては、以下のものを使用した。
・シラン化合物1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
硬化促進剤としては、以下のものを使用した。
・硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとのベタイン型付加物
無機充てん剤としては、以下のものを使用した。
・無機充てん剤1:平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ
その他の添加成分としてはモンタン酸エステル(商品名:HW−E、クラリアント社製)、カーボンブラック(商品名:MA−600、三菱化学株式会社製)を使用した。
【0086】
本実施例において、エポキシ当量は、精秤したエポキシ樹脂をメチルエチルケトンに溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、過塩素酸酢酸標準液によって25℃の条件下で電位差滴定することにより測定される。この滴定時には、指示薬を用いてもよい。本実施例においては、詳細はJIS K7236:2009に準拠して測定される。
本実施例において、水酸基当量は、精秤した硬化剤をピリジン−無水酢酸混合溶液中で加熱還流してフェノール性水酸基をアセチル化し、反応後の溶液を25℃の条件下で、水酸化ナトリウムで逆滴定することにより測定される。本実施例においては、詳細はJIS K0070:1992に準拠して測定される。
【0087】
本実施例において、軟化点は、環球法により測定される。環球法とは、水浴中で支え環に樹脂をセットし、その環の中央に3.5±0.05gの球を置き浴温を毎分5±0.5℃の速さで上昇させたあと、球の重みによって樹脂がたれさがった時の温度を測定するというものである。本実施例においては、詳細はJIS K7234:1986に準拠して測定される。
なお、融点は、ガラス毛細管に固体試料を入れて、それをシリコーンオイル中に浸漬し、シリコーンオイルの温度を上昇させながら目視で融点を測定する方式の融点測定器(MP-21:ヤマト科学株式会社製)により測定される。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
実施例及び比較例の素子封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の(1)〜(6)の各種特性試験により評価した。評価結果を下記表13〜表24に示す。なお、素子封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、明記しない限りトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は180℃で5時間行った。
【0101】
(1)スパイラルフロー
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、素子封止用エポキシ成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)熱時硬度
素子封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(株式会社上島製作所製HD−1120(タイプD))を用いて測定した。
【0102】
(3)吸水率
(2)で成形した円板を上記条件で後硬化し、85℃、60%RHの条件下で168時間放置し、放置前後の質量変化を測定して、吸水率(質量%)={(放置後の円板質量−放置前の円板質量)/放置前の円板質量}×100を評価した。
(4)260℃における弾性率(高温曲げ試験)
JIS K6911:2006に準じた3点曲げ試験を曲げ試験機(A&D社製テンシロン)を用いて行い、恒温槽で260℃に保ちながら、曲げ弾性率(E)を求めた。測定は素子封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で10mm×70mm×3mmに成形した試験片を用い、ヘッドスピード1.5mm/minの条件で行った。
【0103】
【数1】
【0104】
(5)260℃における金属との接着力測定(シェア強度測定)
素子封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で、銅板又は銀メッキした銅板にそれぞれ底面4mmφ,上面3mmφ,高さ4mmのサイズに成形し、後硬化し、ボンドテスター(デイジ社製シリーズ4000)によって、各種銅板の温度を260℃に保ちながら、せん断速度50μm/sでせん断接着力を測定した。
【0105】
(6)耐リフロー性
8mm×10mm×0.4mmのシリコーンチップを搭載した外形寸法20mm×14mm×2mmの80ピンフラットパッケージ(リードフレーム材質:銅合金、ダイパッド部上面及びリード先端部銀メッキ処理品)を、素子封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて上記条件で成形、後硬化して作製し、85℃、60%RHの条件で1週間放置後、実施例1〜実施例16及び比較例1〜比較例16は240℃で、実施例17〜実施例20、実施例25〜実施例32、実施例41〜43及び比較例17〜比較例20、比較例25〜比較例32、比較例41〜43は230℃で、実施例21〜実施例24、実施例33〜実施例40及び比較例21〜比較例24、比較例33〜比較例40は220℃でリフロー処理を行い、樹脂とフレームとの界面におけるはく離の有無を超音波探傷装置(日立建機株式会社製HYE−FOCUS)で観察し、試験パッケージ数(5)に対するはく離発生パッケージ数で評価した。
【0106】
【表13】
【0107】
【表14】
【0108】
【表15】
【0109】
【表16】
【0110】
【表17】
【0111】
【表18】
【0112】
【表19】
【0113】
【表20】
【0114】
【表21】
【0115】
【表22】
【0116】
【表23】
【0117】
【表24】
【0118】
上記(1)〜(6)の特性を、同一のエポキシ樹脂及び硬化剤の組合せで実施例と比較例を比べる。例えば、エポキシ樹脂1及び2並びに硬化剤1の組合せである実施例1〜実施例16と比較例1〜比較例16、エポキシ樹脂1及び3並びに硬化剤1の組合せである実施例17〜実施例20と比較例17〜比較例20、エポキシ樹脂1及び4並びに硬化剤2の組合せである実施例21〜実施例24と比較例21〜比較例24、エポキシ樹脂1及び5並びに硬化剤1の組合せである実施例25〜実施例28及び実施例41〜43と比較例25〜比較例28及び比較例41〜43、エポキシ樹脂1及び6並びに硬化剤1の組合せである実施例29〜実施例32と比較例29〜比較例32、エポキシ樹脂1及び5並びに硬化剤2の組合せである実施例33〜実施例36と比較例33〜比較例36、エポキシ樹脂1及び6並びに硬化剤2の組合せである実施例37〜実施例40と比較例37〜比較例40を比べる。
【0119】
表13〜表24を見ると、ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体を添加した実施例は、比較例よりも260℃せん断接着力(銀及び銅)が高く、85℃、60%RHの条件で1週間放置後のリフロー処理において、樹脂とフレームとの界面におけるはく離が発生せず、耐リフロー性に優れている。
【0120】
中でも、ヒドロキシフェニル基に分岐鎖状の置換基を有するベンゾトリアゾール−フェノール化合物2及び7を用いた実施例は、他のベンゾトリアゾール−フェノール化合物を用いた場合よりも、比較的高い接着力を示した。
【0121】
一方、ベンゾトリアゾール基を有するフェノール誘導体を含有しない素子封止用エポキシ樹脂成形材料を用いた比較例では、実施例と比較して、260℃せん断接着力(銀及び銅)が同等以下で、85℃、60%RHの条件で1週間放置後のリフロー処理において、樹脂とフレームとの界面におけるはく離が全てのパッケージで発生し、耐リフロー性に劣ることが示された。
【0122】
このように、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基及びベンゾトリアゾール基を有する化合物と、を含有する素子封止用エポキシ樹脂成形材料は、高温における金属との接着性が高く、また、耐リフロー性に優れる硬化物を形成可能であることがわかった。