(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発光装置は、基体と、発光素子と、ワイヤと、板状透光部材とを備える。また、これらを備える発光装置は、さらに、発光素子と板状透光部材との間に配置される光透過部材、発光素子の側面を被覆する光反射部材等を任意に備えていてもよい。
【0011】
(基体)
発光装置は、通常、発光素子を搭載するための基体を備えている。
基体は、通常、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス(HTCC、LTCC)などの絶縁性材料、絶縁性材料と金属部材との複合材料等によって構成される。耐熱性及び耐候性の高いセラミックスを利用したものが好ましい。セラミックス材料としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが挙げられ、これらのセラミックス材料に、例えば、BTレジン、ガラスエポキシ、エポキシ系樹脂等の絶縁性材料を組み合わせてもよい。
基体は、通常、その表面及び/又は内部に発光素子と接続される配線パターンを有するものが用いられる。配線パターンは、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等によって形成されているものが挙げられる。また、配線パターンが表面に配置される場合には、その表面に、搭載される発光素子からの光を効率よく取り出すために反射メッキが施されていてもよい。また、配線パターンは、基体表面又は内部において、屈曲、変形していてもよい。配線パターンは、例えば、数μmから数百μmの厚みが挙げられる。
このような基体は、当該分野で公知であり、発光素子等が実装されるために使用される基板のいずれをも用いることができる。
なお、配線パターンは、発光素子と電気的に接続されるもののみならず、発光素子又は保護素子を載置するか、放熱性を向上させる、保護素子と電気的に接続されるなど、他の機能を付与するために利用することができる。
【0012】
(発光素子)
本発明で用いられる発光素子は、いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子を意味する。なかでも、基板上に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体等、種々の半導体による発光層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。
【0013】
発光素子は、対向する面に正及び負の電極がそれぞれ形成されたものであってもよく、同一面側に正及び負の電極がともに形成されていてもよい。後者の場合の一対の電極は、同じ高さで配置されていてもよいし、電極間に高低差があってもよい。正及び負の電極は、必ずしも1つずつ形成されていなくてもよく、それぞれ2つ以上形成されていてもよい。
【0014】
電極は、その材料、膜厚、構造において、特に限定されず、金、銅、鉛、アルミニウム又はこれらの合金を含む単層構造又は積層構造のいずれでもよい。また、各電極の表面には、パッド電極として、Ni、Ti、Au、Pt、Pd、W等の金属又は合金の単層膜又は積層膜を形成してもよい。パッド電極の膜厚は特に限定されないが、なかでも、最終層(最も表面側)にAuを配置され、その膜厚が100nm程度以上であることが好ましい。
【0015】
発光素子は、通常、上述した基体の上面に搭載され、接合部材によって固定される。
対向する面にそれぞれ正及び負の電極を有する発光素子の場合には、発光素子を基体の配線パターン上に載置し、一方の電極(以下、第1電極ということがある)が形成された一方の面(以下、第1面又は裏面ということがある)は、接合部材として、銀、金、パラジウムなどを含有した導電性ペースト等によって固定することが好ましい。これによって、裏面に配置された第1電極を導電性ペーストによって、基体の配線パターンに電気的に接続することができる。
【0016】
他方の電極(以下、第2電極ということがある)が形成された他方の面(以下、第2面又は上面ということがある)は、基体とは反対側に面して配置され、第2電極は、後述するように、ワイヤと電気的に接続される。第2電極と接続されたワイヤは、さらに、基体の配線パターンと電気的に接続されることが好ましいが、1つの発光素子内における、第2電極内での電極間接続されてもよいし、2以上の発光素子間における電極間接続されてもよい。この場合、第2電極は、ワイヤによって、1箇所のみ接続されていてもよいが、2箇所以上で接続されていてもよい。例えば、1箇所のみで又は2箇所以上で、配線パターンに接続されていてもよいし、2以上の分割された第2電極において、それぞれ、ワイヤによって、配線パターンに接続されていてもよい。上面においてワイヤの接続が2箇所以上であれば、後述する板状透光部材をより安定に配置することができる。
【0017】
同一面側に正及び負の電極を有する発光素子を用いる場合は、電極が形成されていない側の面(以下、第1面又は裏面ということがある)を、エポキシ樹脂、シリコーン等の接合部材にて基体に固定することができる。また、発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子の裏面にAl、Ag等の金属メッキをし、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材、導電性ペーストなどを接合材料として用いてもよい。これらの電極は、後述するように、ワイヤによってそれぞれ電気的に接続される。この場合、これらの電極は、ワイヤによって、基体の配線パターンへそれぞれ電気的に接続されることが好ましいが、上述したように、1つの発光素子内における同じ導電型の電極内での電極間接続であってもよいし、2以上の発光素子間における電極間接続であってもよい。
【0018】
このようなことから、本発明の発光装置では、発光素子は、1つの発光装置において1つのみ搭載されていてもよいが、複数搭載されていてもよい。発光素子が複数搭載されている場合には、並列、直列又はこれらの組み合わせなど、接続形態は特に限定されない。
【0019】
(ワイヤ)
ワイヤは、上述したように、発光素子と電気的に接続される導電部材である。ワイヤは、発光素子の表面に形成された電極と電気的に接続されている。また、ワイヤは、基体の配線パターンと、あるいは、別の発光素子の電極と、発光素子内の電極と、電気的に接続されていてもよい。そのため、ワイヤは、発光素子の電極とのオーミック性が良好であるか、機械的接続性が良好であるか、電気伝導性及び熱伝導性が良好なものであることが好ましい。熱伝導率としては、0.01cal/S・cm
2・℃/cm程度以上が好ましく、さらに0.5cal/S・cm
2・℃/cm程度以上がより好ましい。作業性などを考慮すると、ワイヤの直径は、1μm〜45μm程度であることが好ましい。このようなワイヤの材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。なかでも、接合信頼性、接合後の応力緩和等の観点から、金が好ましい。
【0020】
ワイヤは、公知のボンディング法によって、発光素子と、配線パターンと、発光素子間又は電極間で、電気的に接続することができる。
ワイヤは、第1ボンディングボールと、ボンディングワイヤと、第2ボンディングボールとがこの順に積層された積層体を有している。この積層体は、発光素子との電気的な接続部位、つまり、発光素子の上面、特に、発光素子の電極の上面に配置されていることが好ましい。このような積層体を配置することにより、ワイヤボンディングによって発光素子を配線と電気的に接続するタイプの発光装置、例えば、フェイスアップタイプの発光素子を含む発光装置において、アライメントずれの有無にかかわらず、後述する板状の透光部材をボンディングワイヤ等の接触による断線を招くことなく配置することが可能となる。
【0021】
このような積層体は、1つの発光素子において、1つのみ配置されていてもよいが、2つ以上、3つ以上配置されていることが好ましい。また、別の観点から、1つの発光装置において、積層体が2つ以上、3つ以上配置されていることが好ましい。1つの発光装置において複数の発光素子が搭載されている場合には、積層体が形成されていない発光素子が存在してもよい。つまり、積層体は、1つの発光素子上の全てのワイヤボンディングの部位に形成されていなくてもよい。ワイヤによる電気的な接続を意図しない部位に、いずれの部位にも接続されない状態で、積層体が配置されていてもよい。
【0022】
特に、第1ボンディングボールと、ボンディングワイヤと、第2ボンディングボールとの積層体は、ボンディングワイヤが、第1ボンディングボールと第2ボンディングボールとの間に挟持され、第1ボンディングボールと第2ボンディングボールとの間から延長していることが好ましい。
このような形態とすることにより、積層体の高さを容易に調整することができるとともに、ワイヤボンディング自体の接合強度を確保することができる。
【0023】
積層体の総高さは、特に限定されるものではなく、用いるワイヤの直径、発光装置のサイズ等によって適宜調整することができる。例えば、十数μm〜100μm程度が挙げられ、20〜60μm程度が好ましい。このような範囲に設定することにより、後述する板状の透光部材をボンディングワイヤ等に接触させることがなく配置することができる。
【0024】
積層体を構成する第1ボンディングボールは、ボールボンディング法等の公知のボンディング法によって形成することができる。例えば、ワイヤをキャピラリ等の治具に通し、スパーク等による高温加熱を利用して、ワイヤの先端に熱、任意に荷重及び/又は超音波をかけて、ワイヤを溶融させることによりボールを生成させる。この際の温度は、特に限定されることなく、用いるワイヤの材料、太さ等によって調整することができる。例えば、360℃程度以下の温度が挙げられる。ボールの大きさは特に限定されることなく、通常、ワイヤの1.2〜20倍程度、さらに1.5〜10倍程度の直径とすることができる。その後、このボールを発光素子の電極の上に接合する。
これにより、上述した又は後述するような高さ調整のみならず、電極が薄膜であっても、ボンディングボールがパッド電極様の役割を果たして、ワイヤボンドを形成する部位に与えられる押圧等のダメージを軽減又は緩和することができる。その結果、安定した接合を可能とする。
【0025】
第1ボンディングボールは、圧着ボールであることが好ましい。このような形態とすることにより、その高さを容易に調整することができるとともに、ワイヤボンディング自体の接合強度を確保することができる。接合時には、超音波を印加しながらボールを圧着してもよい。
第1ボンディングボールの高さは、ワイヤの直径、ワイヤの供給量(通常、治具から繰り出すワイヤの長さ)、ワイヤの先端に負荷する接合温度、圧着する際のボールの荷重等の条件を適宜設定することにより、調整することができる。例えば、第1ボンディングボールの高さは、ワイヤの直径の1倍から3倍程度が好ましい。具体的には、10〜30μm程度が好ましく、15〜20μm程度がより好ましい。
第1ボンディングボール部の電極との接合面積は適宜調整することができる。例えば、ワイヤの直径の1倍から3倍程度又はボールの直径の1/3〜1倍程度が好ましい。
【0026】
なお、第1ボンディングボールは、例えば、以下のような方法によって形成してもよい。
まず、発光素子の電極上に、ワイヤの溶融により形成されたボールを圧着し、この圧着ボールから、若干上方に移動させた後又は移動させずに、キャピラリを任意の方向に水平移動させる。この場合の任意の方向は、例えば、接続を意図する配線パターンの特定部位を0°の位置とすると、150〜210°程度の範囲が挙げられる。つまり、接続を意図する配線パターンの略反対の方向である。この際のキャピラリの移動距離は、10〜100μm程度とすることが適している。その後、キャピラリを上昇させる。続いて、キャピラリを第1ボンディングボール直上に水平移動させ、その後、下降させることにより、第1ボンディングボール上にキャピラリを圧着させて、第1ボンディングボールから延長するワイヤの別の部位を第1ボンディングボール上に圧着させる。第1ボンディングボール上にワイヤの別の部位を圧着させる際、超音波を印加しながら圧着してもよいが、印加せずに圧着することが好ましい。このように、2度の圧着を行うことにより、第1ボンディングボール表面をほぼ平坦とすることができ、第1ボンディングボールの高さ調整をより確実に行うことができる。
【0027】
積層体を構成するボンディングワイヤは、第1ボンディングボールと第2ボンディングボールとの間に挟持されており、これらの間でボンディングステッチを有することが好ましい。
そのために、第1ボンディングボールが形成された部位とは異なる部位で、いわゆるファーストボンドを形成し、キャピラリをファーストボンドから上昇させ、ワイヤを繰り出しながらキャピラリを第1ボンディングボールとは反対の方向に水平移動させる。次いで、キャピラリを上昇させ、その後、キャピラリを降下させながら、第1ボンディングボールに向かって移動させ、第1ボンディングボール表面に、ワイヤを押し付けることが好ましい。この際、熱、荷重及び/又は超音波を加えて、ワイヤを変形させることにより、第1ボンディングボール上にボンディングステッチ(セカンドボンド)を形成することができる。
上記のような、第1ボンディングボールとボンディングステッチとの形成方法は、いわゆるBSOB(BondStitch on Ball)によって形成することができる。
【0028】
第1ボンディングボールが形成された部位とは異なる部位としては、例えば、発光素子の電極との電気的な又は非電気的な接続を意図する基体の表面、具体的には、基体の配線パターンの表面が挙げられる。ファーストボンドを形成する部位は、第1ボンディングボールよりも低い位置に配置されていることが好ましい。
また、発光素子間又は電極間での接続を意図する場合は、別の発光素子の上面、具体的には、別の発光素子の電極上であるか、同じ又は異なる発光素子の電極上であってもよい。
発光素子間又は電極間での接続の場合、ファーストボンドは、例えば、FJループ(株式会社カイジョーによるボンディング方法)、いわゆる超低ループを適用することができる。低ループを採用することにより、ボンディングワイヤを、発光素子と板状透光部材との間で略同一の高さを保ったまま、ボンディングステッチを第1ボンディングボール上まで延長することができる。
【0029】
積層体を構成するボンディングワイヤが、第1ボンディングボールと第2ボンディングボールとの間でボンディングステッチを有する場合、ボンディングステッチは、上述したように、第1ボンディングボール上に押し付けられ、極薄膜状となるため、ボンディングステッチと第1ボンディングボールを積層した厚みは、第1ボンディングボールの高さと略同一となる。ここでの略同一とは、±数μm程度の変動は許容されることを意味する。
【0030】
ボンディングワイヤのファーストボンドを形成する部位には、第1ボンディングボールと同様の方法によって、第3ボンディングボールを形成することが好ましい。これにより、第3ボンディングボールがパッド電極様の役割を良好に果たして、ファーストボンドを形成する部位に与えられる押圧等のダメージを軽減又は緩和することができる。その結果、安定した接合が可能となる。第3ボンディングボールを形成する部位は、基体表面であることが好ましく、基体の配線パターン表面であることがより好ましい。このようなボンディングワイヤによって、発光素子と基体表面とを電気的に接続することができる。
【0031】
ボンディングワイヤは、第3ボンディングボールと第1ボンディングボールとを連結するループとして配置される。この場合のループは、
図1Cに示したように、ファーストボンドからファーストボンドの上方に向かう部位、第1ボンディングボールに向かって方向を徐々に又は急激に変更する部位、略同一の高さを保って第1ボンディングボール上まで延長する部位を有する。
ここで、ファーストボンドの上方に向かう部位とは、ファーストボンドを形成する部位の表面に対して略直角であることが好ましいが、発光素子側に若干の傾斜を有していてもよい。略直角とは、±5度程度の変動を許容する意図である。また、発光素子側への傾斜としては、ファーストボンドを形成する部位から発光素子までの距離によるが、数度〜数十度程度が好ましい。なお、第1ボンディングボールに向かって方向が徐々に変更するループの場合には、このファーストボンドの上方に向かう部位と、方向が徐々に変更する部位との境界が明確でなくてもよい。
略同一の高さを保って延長する部位は、少なくとも、発光素子と板状透光部材との間に位置する部位である。ここで、略同一の高さとは、第1ボンディングボールの上面と略同一の高さを意味する。このような部位を有することにより、第1ボンディングボールと、後述する第2ボンディングボールとの高さに相当する空間がこの部位の上下に配置することとなる。これによって、ボンディングワイヤが、発光素子及び板状透光部材の双方に接触することなく、ワイヤのダメージ及び断線を招くことを防止することができる。
なお、ループとして配置されるボンディングワイヤの最も高い位置は、後述する第2ボンディングボールの最上面よりも低い位置にあることが好ましい。これにより、上述したボンディングワイヤの非接触状態を確保することができる。
【0032】
積層体を構成する第2ボンディングボールは、第1ボンディングボールと同様に形成することができる。
第2ボンディングボールの直径は、平面視で第1ボンディングボールの直径と同じ又はそれよりも小さいことが好ましい。これによって、発光素子から出射される光を、効率よく板状透光部材へ導光することが可能となる。
【0033】
(板状透光部材)
板状透光部材は、発光素子から出射される光を通過させる部材であり、発光素子から出射される光の60%以上を透過するもの、さらに、70%、80%又は90%以上を透過するものが好ましい。このような部材としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0034】
板状透光部材は、板状又はシート状であればよく、その厚みは特に限定されないが、10〜500μm程度が好ましい。1つの板状透光部材は均一な厚みを有していることが好ましいが、部分的に厚膜又は薄膜状であってもよいし、上面を凸面、凹面等の凹凸面にしてもよい。その平面形状は、発光装置の大きさ、形状、発光素子の配置等によって適宜調整することができ、発光素子の上面よりも大きい、小さい又は発光素子の上面と同じ大きさとすることができる。なかでも、発光素子の上面の全部を被覆する大きさ、つまり、発光素子の上面と同じ又はそれよりも大きいことが好ましい。後述するように、複数の発光素子を被覆する場合は、これら全ての発光素子の上面の全部を被覆する大きさとすることが好ましい。
【0035】
板状透光部材は、1つの発光装置に1つのみ配置されていればよい。この場合、1つの発光素子が搭載された1つの発光装置に対して、1つの板状透光部材が配置されていてもよいし、複数の発光素子が搭載された1つの発光装置に対して、1つの板状透光部材が配置されていてもよい。また、複数の発光素子が搭載された1つの発光装置に対して、2以上の板状透光部材が配置されていてもよい。この場合、個々の発光素子にそれぞれ板状透光部材が配置されていてもよいし、2以上の発光素子をグループ化して、各グループに1つの板状透光部材が配置されていてもよい。
【0036】
板状透光部材は、発光素子の上に配置されていればよく、特に、上述した積層体の上方に配置されていることが好ましい。つまり、板状透光部材は、1つの板状透光部材の下方に2以上の積層体を備える。言い換えると、1つの板状透光部材は、2以上の積層体の上に、積層体によって支持されて、配置されていることが好ましい。これによって、板状透光部材を積層体により安定的に配置/固定させることができる。
【0037】
板状透光部材は、蛍光体及び/又は拡散材等を備えていてもよい。これらは、板状透光部材の材料中に含有されていてもよいし、これらを含有する層がその上、間、下に配置されていてもよい。
蛍光体としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al
2O
3−SiO
2)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4)などが挙げられる。これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置とすることができる。特に、青色発光素子に組み合わせて白色発光させる蛍光体としては、青色で励起されて黄色のブロードな発光を示す蛍光体を用いることが好ましい。例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)系、BOS(Barium ortho-Silicate)系等が好ましい。このような蛍光体が板状透光性部材に含有される場合、蛍光体の濃度を、例えば5〜50%程度とすることが好ましい。
また、黄色蛍光体の他に、Si
6−ZAl
ZO
ZN
8−Z:Eu、Lu
3Al
5O
12:Ce、BaMgAl
10O
17:Eu、BaMgAl
10O
17:Eu,Mn、(Zn,Cd)Zn:Cu、(Sr,Ca)
10(PO
4)
6C
l2:Eu,Mn、(Sr,Ca)
2Si
5N
8:Eu、CaAlSiB
xN
3+x:Eu、K
2SiF
6:Mn及びCaAlSiN
3:Euなどの蛍光体を用いて演色性や、色再現性を調整することもできる。
【0038】
拡散剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、ガラス、カーボンブラック、蛍光体の結晶又は焼結体、蛍光体無機物の結合材との焼結体等が挙げられる。
【0039】
(光透過部材)
板状透光部材は、積層体の上方に配置するために、接着剤として、板状透光部材と発光素子との間に光透過部材を備えることが好ましい。
光透過部材は、板状透光部材と発光素子との接着性を確保できる限り、板状透光部材と同様の材料によって形成することができる。また、光透過部材は、蛍光体及び/又は拡散材等を備えていてもよい。これら蛍光体及び/又は拡散材としては、上で例示したものと同様のものが挙げられる。これら蛍光体及び/又は拡散材は、光透過部材を構成する材料中に含有されることが好ましい。
【0040】
光透過部材は、少なくとも、発光素子の上面、板状透光部材の下面に接触して配置していればよく、積層体を取り囲むように積層体の側面に接触して配置されていることが好ましい。積層体を構成するボンディングワイヤの一部、特に、発光素子の直上(つまり、発光素子の上方かつ外縁の内側、以下同じ)に位置するボンディングワイヤの全周囲を取り囲むように配置されていることが好ましい。これにより、ボンディングワイヤの板状透光部材等への接触に起因するボンディングワイヤのダメージの防止を確実とすることができる。積層体の上面と板状透光部材の下面とに接触してこれらの間に光透過部材が配置されていてもよい。また、光透過部材は、発光素子の直上のみならず、発光素子の外縁から板状透光部材側に向かって広がって配置していてもよい(
図3参照)。
光透過部材の厚みは、積層体の総高さと略同一であることが好ましい。
光透過部材は、ポッティング、スクリーン印刷等によって形成することができる。
【0041】
(光反射部材)
発光素子は、その側面の少なくとも一部が光反射部材で被覆されていることが好ましく、その側面の全部が被覆されていることがより好ましい。これにより、発光素子から横方向に出射される光を上方に効率的に取り出すことができる。また、上述した光透過部材が配置されている場合は、その側面の少なくとも一部、好ましくは全部が光反射部材で被覆されていることが好ましい。従って、積層体を構成するボンディングワイヤの一部、特に、発光素子の直上から発光素子の外縁の外側に延びるボンディングワイヤの一部又は全周囲を取り囲むように配置されていることが好ましい。
【0042】
光反射部材は、発光素子からの光に対する反射率が60%以上である反射性材料、より好ましくは70%、80%又は90%以上の反射性材料で形成されているものが好ましい。
反射性材料は、例えば、セラミック、樹脂、誘電体、パルプ、ガラス又はこれらの複合材料等により形成することができるが、なかでも、任意の形状に容易に成形することができるという観点から、樹脂が好ましい。
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。具体的には、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等が挙げられる。
また、これら材料、例えば、樹脂に、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化ニオブ、硫酸バリウム、カーボンブラック、各種希土類酸化物(例えば、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム)などの光反射材、光散乱材又は着色剤等を含有させることが好ましい。ガラスファイバー、ワラストナイトなどの繊維状フィラー、カーボン等の無機フィラー、放熱性の高い材料(例えば、窒化アルミ等)を含有させてもよい。
光反射部材は、スクリーン印刷、ポッティング、トランスファーモールド、コンプレッションモールド等により形成することができる。
【0043】
本発明の発光装置には、発光素子の他、保護素子等が搭載されていてもよい。保護素子は、1つでもよいし、2つ以上の複数個でもよい。ここで、保護素子は、例えば、過熱、過電圧、過電流、保護回路、静電保護素子等、具体的には、ツェナーダイオード、トランジスタのダイオード等の公知のもののいずれでもよい。
【0044】
以下に、本発明の発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
この実施形態の発光装置10を、
図1A、1B、1C及び1Dに示す。
図1Bは、
図1Aにおける板状透光部材17と光反射部材19とを省略したものである。また、
図1C及び
図1Dにおいては、積層体中のボンディングワイヤ16bは薄いため図示していない。
基体11と、基体11の上面に搭載された発光素子15と、発光素子15と電気的に接続されたワイヤ16と、発光素子15を被覆する板状透光部材17とを備える。また、発光素子15と板状透光部材17との間に配置される光透過部材18と、発光素子15の側面を被覆する光反射部材19を備えている。
【0045】
基体11は、例えば、窒化アルミニウムからなる板材の表面に、チタン、パラジウム、金がパターン蒸着されて配線12が形成されたものであり、この配線12の上にさらに金メッキが施されている。配線12は、基体11の両側に延長する一対のパターンの他に、後述するように、発光素子15を載置し、直列に接続するパターンも含む。
基体11上に搭載された発光素子15は、互いに離間して、例えば、4個直列に載置されている。
発光素子15は、上面に正負電極が形成されたものであり、基体11上に、接合部材14によって、フリップチップ実装されている。
【0046】
発光素子15の各電極は、ワイヤ16に電気的に接続され、さらに配線12と電気的に接続されている。
ワイヤ16は、その一端において、第1ボンディングボール16aと、ボンディングワイヤ16bと、第2ボンディングボール16cとがこの順に積層された積層体16Dを有している。この積層体は、発光素子15の上面に配置されている。ここで、第1ボンディングボール16a及び第2ボンディングボール16cの高さは、15〜40μm程度であり、積層体16Dの総高さは、30〜80μm程度である。積層体16Dは、4個直列に載置された発光素子15のそれぞれに、略対角線上に4つずつ配置されている。
ワイヤ16は、その他端において、第3ボンディングボール16eを有し、配線12の表面に接続されている。
【0047】
ワイヤ16は、第3ボンディングボールからその上方に向かう部位Aと、第1ボンディングボール16aと第2ボンディングボール16cとの間に向かって方向を変更する部位Bと、略同一の高さを保って第1ボンディングボール上まで延長してボンディングワイヤ16bとなる部位Cを有する。
部位Aは、配線12の表面に対して略直角に延長している。
部位Bは、部位Aから、第1ボンディングボール16aに向かって方向が徐々に変更している。
部位Cは、第1ボンディングボール16aの上面と略同一の高さを維持するように、部位Bから延長している。
従って、ワイヤ16の最も高い部位は、第2ボンディングボール16cの上面よりも低い位置に配置されている。
ワイヤ16による積層体16Dは、各発光素子15においてそれぞれ4つ形成されている。
基体11の配線パターン12上には、保護素子13がさらに配置されている。
【0048】
板状透光部材17は、基体11上に搭載された4個の発光素子15の全部を被覆し、4個の発光素子の外形よりも若干大きな大きさ(4個の発光素子の外形の12%程度の大きさ)を有する。板状透光部材17は、例えば、0.2mm程度の均一な厚みを有する。板状透光部材17は、上述した合計16個の積層体の上方に配置されている。
板状透光部材17は、YAGとアルミナとを混合して焼結して形成されている。YAG蛍光体は板状透光部材17の全重量の5〜15重量%で含有されている。
【0049】
発光素子15と板状透光部材17との間には、さらに光透過部材18が配置されている。光透過部材18は、シリコーン樹脂から形成されており、熱硬化されている。光透過部材18は、各発光素子15の上面の全てと、発光素子15の直上に存在するワイヤ16の周囲と、積層体の周囲とを取り囲んで配置されている。
【0050】
各発光素子15の側面は、光反射部材19によって被覆されている。
光反射部材19は、シリコーン樹脂に酸化チタンが30重量%程度で含有されている。
発光素子15間に存在する光反射部材19は、連結して、一体として配置されている。また、光反射部材19は、光透過部材18及び板状透光部材17の側面も被覆しており、板状透光部材17の上面と面一の上面を有する。
【0051】
このように、発光素子がフェイスアップ実装された場合においても、ワイヤによって構成される積層体が、発光素子の上面おいて、第1ボンディングボールと、ボンディングワイヤと、第2ボンディングボールとがこの順に積層されているために、発光素子の上面と、発光素子を被覆する板状透光部材との間の空間を任意の大きさで確保することができる。これによって、発光素子に電気的に接続されるボンディングワイヤが、発光素子の上面及び板状透光部材の下面及び側面等に接触することを効果的に回避することができる。その結果、ワイヤのダメージ及び断線の生じない信頼性の高い発光装置を得ることができる。
【0052】
実施形態2
この実施形態の発光装置20は、
図2A、2B及び2Cに示す。
図2Bは、
図2Aにおける板状透光部材17と光反射部材19とを省略したものである。
この発光装置20は、チップサイズパッケージ(CSP)であり、基体21上に配線パターン22が正負一対形成されており、この基体21上に、1つの発光素子15と1つの保護素子13が配置されている以外は、実質的に実施形態1の発光装置10と同様の構成である。