【実施例】
【0042】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における特性の測定方法は次の通りである。
【0043】
[耐スケール性] 鉄鋼業の熱延加熱炉に設置し1350℃の操業温度で6ヶ月間使用し、スケールによる侵食の状態を観察する。
【0044】
[目地開き] 酸化物前駆体を含有する液状物質を、ブロックによる無機繊維耐火断熱ライニングの加熱面側へ含浸した後、室温で1週間放置して乾燥させ、ブロック間の目地開きの有無を観察する。
【0045】
[含浸厚み] 酸化物前駆体を含有する液状物質を、無機繊維耐火断熱ライニングの加熱面側へスプレーによって含浸した後に切断し、その断面の湿潤部位について加熱面側から炉壁方向を計測し、含浸厚みとする。
【0046】
[添着量]
無機繊維耐火断熱ライニングから、酸化物前駆体を含有する液状物質液が含浸されていない部分を切断してサンプルとし、このサンプルの重量(g)と加熱面側の面積とを測定し、面比重を次式により求める。
【0047】
[面比重(g/m
2)]=[材料重量(g)]/[面積(m
2)]
5個のサンプルについて測定した面比重の平均値を添着前の面比重r
1とする。含浸後の無機繊維耐火断熱ライニングを1250℃で2時間焼成した後、含浸部分を切り出し同様の方法で面比重r
2を測定する。r
2とr
1の差(r
2−r
1)を添着量(g/m
2)とする。
【0048】
[実施例1]
結晶質のムライトファイバーからなるブランケット(商品名:三菱樹脂株式会社 MAFTEC MLS、厚さ25mm、嵩密度96kg/m
3、Al
2O
3:72質量%、SiO
2:28質量%)から300mm×300mmの正方形の板状物を切り出し、これを16枚積層した後、圧縮し、高さ300mm×幅300mm×長さ300mmのブロック(商品名:新日本サーマルセラミックス Z‐BLOK1600)を用いた。これをブロックライニング工法により熱延加熱炉の天井へ施工した。
【0049】
酸化物前駆体を含有する液状物質として、カルシウム塩(酢酸カルシウム一水和物)とアルミナゾル及び水を混合し、焼成後の酸化物質量比
Al2O3/CaOが91.6:8.4であり、酸化物換算成分濃度が7.0wt%である液状物質を調製した。この液状物質を、施工したブロックへリシンガンを用いて0.35m
2/minの施工速さで吹き付けた。含浸厚み及び添
着量の測定結果を表1に示す。
【0050】
このようにして酸化物前駆体を含有する液状物質を含浸した無機繊維耐火断熱ライニングを湿潤状態のまま1週間放置した後、加熱炉を6ヶ月間操業した。耐スケール性及び目地開きを観察した。ブロックには目地開きがなく、スケールによる侵食は認められなかった。なお、この評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を2.5%、施工速さを1.05m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例3]
実施例1において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を15%、施工速さを0.04m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例4]
実施例1において、酸化物前駆体の調製原料としてマグネシウム塩(酢酸マグネシウム四水和物)、前記アルミナゾル及び水を用い、酸化物前駆体を含有する液状物質の焼成後の酸化物質量比(MgO/Al
2O
3)を28:72としたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例5]
結晶質のムライトファイバーからなるブランケット(商品名:三菱樹脂株式会社 MAFTEC MLS、厚さ25mm、嵩密度96kg/m
3、Al
2O
3:72質量%、SiO
2:28質量%)の一方の面側に接着剤(商品名:新日本サーマルセラミックス株式会社 サーモプレグCW)を塗布し、熱延加熱炉のスキッドパイプへ巻きつけて固定した。実施例1と同様の液状物質を、リシンガンを用いて施工速さ0.35m
2/minで吹き付けた。
【0055】
このようにして酸化物前駆体を含有する液状物質を含浸した無機繊維耐火断熱ライニングを湿潤状態のまま1週間放置した後、加熱炉を6ヶ月間操業した。耐スケール性及び目地開きを観察した。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例6]
ムライトファイバー(商品名:三菱樹脂株式会社 MAFTEC MLS)とアルミナ粒子を水中に分散させ、凝集材及び結合材としてコロイダルシリカとカチオン性スターチを添加し、リング状の金型へ真空成形した後、乾燥してリング状モールド(商品名:新日本サーマルセラミックス SCボールド1600スキッドポスト 嵩密度250kg/m
3 高さ50×内径230×外径340mm)を作製し、熱延加熱炉のスキッドポストへ施工した。実施例1と同様の液状物質を、リシンガンを用いて施工速さ0.35m
2/minで吹き付けた。
【0057】
このようにして酸化物前駆体を含有する液状物質を含浸した無機繊維耐火断熱ライニングを湿潤状態のまま1週間放置した後、加熱炉を6ヶ月間操業した。耐スケール性及び目地開きを観察した。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
実施例1において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を1.5%、施工速さを1.65m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例2]
実施例1において施工速さを0.05m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例3]
実施例3において、酸化物前駆体にシリカゾル、前述のアルミナゾル及び水を用い、酸化物前駆体を含有する液状物質の焼成後の酸化物質量比(SiO
2/Al
2O
3)を28:72としたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例4]
実施例3において、酸化物前駆体にアルミナゾル及び水を用い、酸化物換算成分濃度15wt%の液状物質を吹き付けたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例5]
実施例5において、酸化物前駆体を含有する液状物質を用いなかったこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例6]
実施例5において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を10%、施工速さを1.05m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例7]
実施例5において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を1.5%、施工速さを1.65m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0065】
[比較例8]
実施例6において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を10%、施工速さを1.05m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例9]
実施例6において、酸化物前駆体を含有する液状物質の酸化物換算成分濃度を1.5%、施工速さを1.65m
2/minとしたこと以外は同様にして無機繊維耐火断熱ライニングを得た。含浸厚み及び添
着量の測定結果並びに評価結果を表1に示す
【0067】
【表1】
【0068】
[考察]
表1の通り、実施例1〜6はいずれも耐スケール性に優れる。ブロックを用いた実施例1〜4においても、目地開きは生じない。
【0069】
これに対し、比較例1,3〜9では、浸食が生じ、耐スケール性に劣る。比較例2では、浸食は生じなかったが、目地開きが生じた。
【0070】
以上の実施例及び比較例からも明らかな通り、本発明により形成されたライニングは、保護層の剥離がなく、格段に耐スケール性を向上させることができる。また、無機繊維断熱成形体がブロックである場合、含浸後の湿潤状態における収縮が起きない範囲で液状物質を含浸しているため、隣接するブロック間に目地開きがなく断熱性の高いライニングとすることができる。