特許第6244914号(P6244914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244914
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】導電体及び積層体
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20171204BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20171204BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20171204BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171204BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20171204BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171204BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20171204BHJP
   G03F 7/11 20060101ALN20171204BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   H01B5/14 Z
   H01B1/20 Z
   H01B1/22 A
   H01B1/12 G
   C09D5/00 Z
   C09D5/24
   C09D7/12
   C09D201/00
   B32B7/02 104
   !G03F7/004 501
   !G03F7/004 504
   !G03F7/11 501
   !G03F7/20 504
【請求項の数】7
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2013-536736(P2013-536736)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2013070055
(87)【国際公開番号】WO2014017540
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-163295(P2012-163295)
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-208466(P2012-208466)
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-88485(P2013-88485)
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-100736(P2013-100736)
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】福田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】沼田 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕信
(72)【発明者】
【氏名】長坂 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 慎二
(72)【発明者】
【氏名】入山 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 正志
(72)【発明者】
【氏名】金子 朝子
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−226721(JP,A)
【文献】 特開2008−095060(JP,A)
【文献】 特開平06−003813(JP,A)
【文献】 特開2002−174899(JP,A)
【文献】 特開2006−301073(JP,A)
【文献】 特開平07−324132(JP,A)
【文献】 特開平08−109351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/12、1/20、5/14
G03F 7/004、7/11、7/20
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上に積層された導電性塗膜とを有する導電体であって、
前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、
前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、
前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)とを含む導電性組成物により形成され
前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である、導電体。
【請求項2】
前記導電性ポリマー(A)が酸性基を有する、請求項1に記載の導電体。
【請求項3】
前記酸性基が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基である、請求項2に記載の導電体。
【請求項4】
前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、請求項1に記載の導電体。
【化1】
(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
【請求項5】
前記水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)である、請求項に記載の導電体
【請求項6】
前記水溶性ポリマー(C)が、分子内に含窒素官能基を有するビニルモノマー単位を含む、請求項に記載の導電体
【請求項7】
基材と、導電性塗膜と、電子線用レジスト膜とを有する積層体であって、
前記基材の少なくとも一方の面に、前記電子線用レジスト膜が積層され、
前記電子線用レジスト膜の上に、前記導電性塗膜が積層され、
前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、
前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、
前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)とを含む導電性組成物により形成され
前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体及び積層体に関する。
本発明は、2012年7月24日に日本国に出願された特願2012−163295号、2012年9月21日に日本国に出願された特願2012−208466号、2013年4月19日に日本国に出願された特願2013−088485号、及び2013年5月10日に日本国に出願された特願2013−100736号に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたパターン形成技術は、光リソグラフィーの次世代技術として期待されている。
荷電粒子線を用いる場合、生産性向上には、レジストの感度向上が重要である。従って、露光部分もしくは荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理により架橋反応又は分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
また、近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理も要求されるようになってきている。
【0003】
ところで、荷電粒子線を用いるパターン形成方法においては、特に基板が絶縁性の場合、基板の帯電(チャージアップ)によって発生する電界が原因で、荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくいという課題があった。
そこで、この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト表面に塗布して導電性塗膜を形成し、前記導電性塗膜でレジスト表面を被覆する技術が有効であることが既に知られている。
【0004】
電子線リソグラフィーにおける、レジスト層表面に導電性塗膜を形成する方法として、水溶性導電性高分子と界面活性剤とを含む導電性組成物を、レジスト層(基材)の表面に塗布する方法が知られており、例えば、特許文献1(特開2002−226721号公報)には、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基を有する水溶性導電性高分子、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する質量平均分子量1000〜1500の水溶性高分子並びに溶剤を含む導電性組成物が開示されている。
【0005】
一方、上述した導電性組成物に異物が含まれていると電子線による描画後のラインの断線等の問題がある。そのため、前記導電性組成物は、レジスト層に塗布する前に疎水性膜を有するフィルターにより精密ろ過される。特許文献1の導電性組成物では、精密ろ過の際にこのフィルターの詰まりが頻繁に発生するので、その都度フィルターを交換しなければならないという課題があった。
【0006】
また、導電性ポリマーを含む導電性組成物を、半導体の電子線リソグラフィー工程の帯電防止剤として適用する場合、導電性組成物の塗布性と、基材及び基材上に塗布されたレジスト等の積層物への影響は、トレードオフの関係にあることが知られている。
例えば、導電性組成物の塗布性を向上させるために、アニオン系あるいはカチオン系界面活性剤等の添加物を添加した場合、界面活性剤に由来する酸、塩基がレジスト特性に悪影響を及ぼし、所定のパターンを得ることができないという問題がある。
【0007】
また、このような半導体デバイスの次世代プロセスにも適用可能な帯電防止剤として、より複雑、かつ微細なパターン形状にも対応できる表面平滑性、すなわち、表面荒れの少ない導電性塗膜を形成できる導電性組成物が求められている。
これに対し、特許文献1に記載の導電性組成物では、導電性塗膜の表面荒れが大きく、次世代プロセスのレジスト表面には適用できないという問題がある。
また、特許文献1に記載の導電性組成物を含む導電体を、100℃以上の高温条件下で長時間使用した場合、基材に塗布されたレジスト等の積層物が腐食して、例えば、ポジ型レジストに適用すると、膜減りが生じるという問題があった。
【0008】
このように、従来技術では、塗布性、レジスト層への影響、導電性塗膜の表面平滑性を共に満足し、かつ次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な導電性組成物は得られていなかった。
【0009】
また、導電性ポリマーとして、ドープ剤を添加することなく導電性を発現できる酸性置換基を有する自己ドープ型ポリアニリンが知られている。ここで、「自己ドープ型」とは、ドーパントが自らの構造中に存在し、ドープ剤を添加しなくても、ドープが可能となることを意味する。
このような酸性置換基を有する自己ドープ型のポリアニリンの合成方法としては、スルホン酸基を有するアニリン又はカルボキシ基を有するアニリンなどの酸性置換基を有するアニリンを、塩基性反応助剤の存在下で酸化剤により重合する方法が提案されている。
従来、酸性置換基を有するアニリンは、それ単独では重合しにくく、高分子量化が困難とされていた。しかしながら、塩基性反応助剤の存在下で重合させる方法によれば、高分子量の重合体の製造が可能である。
しかも、この方法で得られた酸性置換基を有するポリアニリンは、酸性又はアルカリ性のいずれの水溶液にも優れた溶解性を示す。
【0010】
しかし、塩基性反応助剤の存在下で酸性置換基を有するアニリンを酸化剤により重合する方法の場合、通常、得られる導電性ポリマーは残存モノマーに加え、副反応の併発に伴って生成したオリゴマー、酸性物質(モノマーや酸化剤の分解物である硫酸イオン等)、塩基性物質(塩基性反応助剤や酸化剤の分解物であるアンモニウムイオン等)等の副生成物が混合した反応混合物として得られるため、必ずしも純度は高くなかった。
【0011】
また、前記塩基性物質が、その分子量や塩基強度等の物性上、酸性置換基を有するポリアニリンの酸性基を安定して中和できないことから、前記酸性置換基を有するポリアニリンの酸性基部は、加水分解等を受けやすく、不安定であった。そのため、レジスト層上に酸性置換基を有するポリアニリンを塗布した後、加熱処理して導電性塗膜を形成する際に、酸性基が脱離しやすかった。
なお、以下の明細書において、残存モノマーや硫酸イオンなどと、酸性置換基を有するポリアニリンから脱離した酸性基とを総称して「酸性物質」という。
【0012】
よって、酸性置換基を有するポリアニリンを化学増幅型レジストに適用すると、レジスト層上に導電性塗膜(導電膜)を形成したまま露光、PEB処理及び現像を行う際に、酸性物質や塩基性物質がレジスト層へ移行しやすかった。その結果、パターン形状が変化したり、感度が変動したりしやすく、レジスト層への影響があった。
具体的には、レジスト層がポジ型の場合、酸性物質が導電性塗膜からレジスト層へ移行すると、現像時に未露光部のレジスト層が溶解してしまうため、レジスト層の膜減り、パターンの細り、高感度側への感度変動などが起こる。
一方、塩基性物質が導電性塗膜からレジスト層へ移行すると、露光部の酸が失活してしまい、パターン形状の変化や低感度側への感度変動などが起こる。
また、レジスト層がネガ型の場合、上記副生成物の導電性塗膜からレジスト層への移行は、各々逆の現象を引き起こすことになる。
【0013】
そこで、酸性置換基を有するポリアニリンの酸性基部分を安定化する手段として、例えば、特許文献2(特開2011−219680号公報)には、イオン交換法により副生成物等を取り除いた導電性ポリマー溶液に、新たに塩基性化合物を添加して酸性基部分を中和する方法が提案されている。
特許文献2に記載された方法によれば、副生成物等を取り除いた後に塩基性化合物を添加することで、前記塩基性化合物が酸性置換基を有するポリアニリンの酸性基と塩を形成し、酸性基の脱離を抑制できる。しかも、塩基性化合物は、残存モノマーや硫酸イオンなどとも作用して塩を形成しやすい。よって、これら酸性物質が導電性塗膜からレジスト層へ移行することを抑制できる。
さらに、塩基性化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)等の第4級アンモニウム塩を用いれば、化学増幅型レジストにおける膜減り現象防止能や、導電性組成物の耐熱性を向上できることも開示されている。
【0014】
また、特許文献3(特開平5−171010号公報)には、塩基性化合物として尿素等のジアミン化合物を加えると、導電性ポリマー溶液を安定化できることが開示されている。また、特許文献4(特開2006−117925号公報)には、導電性ポリマーに2価以上の脂肪族塩基性化合物を加えると、化学増幅型レジストにおける膜減り現象防止能を付与できることが開示されている。更に、特許文献5(特開2010−116441号公報)には、水酸化ナトリウム等の無機塩を加えると、導電性組成物の耐熱性を向上できることが開示されている。
さらに、特許文献6(国際公開第2012/144608号)には、導電性ポリマーを構成する単位のうち、酸性基を有する単位1molに対して、0.3〜0.5mol当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを加えると、導電性塗膜の耐熱性を向上できることが開示されている。
【0015】
しかしながら、特許文献2〜6に記載の塩基性化合物を導電性ポリマー溶液に添加する方法では、導電性塗膜からレジスト層への酸性物質の移行はある程度抑制できるが、近年の半導体デバイスの微細化に伴い要求される性能を満たすためには、さらなる抑制が求められる。また、酸性置換基を有するポリアニリンからの酸性基の脱離を抑制するという観点では、特許文献2〜6に記載の方法は必ずしも満足のいく方法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−226721号公報
【特許文献2】特開2011−219680号公報
【特許文献3】特開平5−171010号公報
【特許文献4】特開2006−117925号公報
【特許文献5】特開2010−116441号公報
【特許文献6】国際公開第2012/144608号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理が要求されるようになってきている。具体的には、導電性塗膜のレジストへの影響低減等が要求されるようになってきている。
このような半導体デバイスの次世代プロセスにも適用可能な表面平滑性、すなわち、表面あらさを有する導電性塗膜を備える導電体が求められている。しかしながら、前述の特許文献1〜6に記載された導電性組成物により形成された導電性塗膜を備える導電体では、導電性塗膜表面の「荒れ」の抑制が十分ではなく、前述の半導体デバイスの次世代プロセスに要求される性能を満たすにはまだ問題があった。
そこで、本発明の1つの側面は、レジスト層の膜減り量が小さく、かつ次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性を有する導電体の提供を目的とする。
ここで、「レジスト層の膜減り量」とは、導電性塗膜からの酸性物質、あるいは、界面活性剤の影響を意味し、膜減り試験によって計測することができる。
【0018】
また、本発明の別の側面としては、導電性組成物をろ過する際に用いるフィルターの詰まりを低減できる界面活性剤を含む導電性組成物を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明の別の側面としては、良好な塗布性、導電性を示し、レジスト層の膜減り量が小さく、かつ次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性を有する導電性塗膜を形成できる導電性組成物を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明のその他の側面としては、酸性物質がレジスト層へ移行しにくい導電性塗膜を形成できる導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、鋭意検討した結果、基材と、導電性塗膜とを有する導電体であって、前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の、触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が特定の値以下であり、更に前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が特定の値以下であり、かつ前記導電性塗膜が特定の導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されている導電体であれば、前述の課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の第1の実施形態である導電体は、基材と、前記基材の上に積層された導電性塗膜とを有する導電体であって、前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されていることを特徴とする。
また、本発明の第1の実施形態である導電体において、前記導電性ポリマー(A)は、酸性基を有することが好ましい。また、前記酸性基は、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の第1の実施形態である導電体においては、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【化1】
(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボキシ基を意味する。)
【0023】
更に、本発明者らは、導電性組成物を精密ろ過する際のフィルターの詰まりは、導電性組成物に含まれる界面活性剤中のオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物によるものであることを突き止めた。
そこで、本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物の含有量を、一定値以下にまで低減した界面活性剤を含む導電性組成物であれば、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)とを含む導電性組成物であって、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることを特徴とする。
また、前記水溶性ポリマー(C)が、分子内に含窒素官能基を有するビニルモノマー単位を含むことが好ましい。
【0024】
更に、本発明者らは、含窒素官能基、及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)の質量平均分子量を向上させることで、塗布性を維持しながらも、レジスト層への影響が少なく、かつ、次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性を有する導電性塗膜を形成できる導電性組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、前記第2の実施形態の導電性組成物に含まれる界面活性剤(B)中の水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)であることを特徴とする。
【0025】
更に、本発明者らは、前記導電性ポリマー(A)と、分子内に二つ以上の第3級アミンを含み、かつ、環状構造、すなわち共役構造を有する塩基性化合物とを含む導電性組成物により、レジスト層への酸性物質の移行を抑制した導電性組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A1)と、塩基性化合物(E1)とを含み、前記塩基性化合物(E1)が、分子内に二つ以上の第3級アミンを有し、かつ共役構造を有する化合物であることを特徴とする。
本発明により、導電性塗膜からレジスト層への酸性物質の移行を抑制することで、レジスト層の膜減りを抑制することができる。
【0026】
更に、本発明者らは、酸性基を有する導電性ポリマーと、特定の塩基性化合物とを含む導電性組成物であれば、酸性物質がレジスト層へ移行しにくい導電性塗膜を形成できることを見出した。
すなわち、本発明の第5の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)とを含み、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする。
更に、本発明の第6の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E3)とを含み、前記導電性ポリマー(A)が、酸性基を有するモノマーユニットを含み、前記塩基性化合物(E3)が、分子内に塩基性基と二つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する化合物であり、前記導電性組成物中の前記塩基性化合物(E3)の含有量が、前記導電性ポリマー(A)の酸性基を有するモノマーユニット1molに対して、0.6〜0.8molであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の第7の実施形態は、基材と、導電性塗膜と、電子線用レジスト膜とを有する積層体であって、前記基材の上に前記電子線用レジスト層が積層され、前記電子線用レジスト膜の上に前記導電性塗膜が積層され、前記積層体の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されている、積層体に関する。
【0028】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]基材と、前記基材の上に積層された導電性塗膜とを有する導電体であって、前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されている、導電体;
[2]前記導電性ポリマー(A)が酸性基を有する、[1]に記載の導電体;
[3]前記酸性基が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基である、[2]に記載の導電体;
[4]前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[1]に記載の導電体;
【化2】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
[5]導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)とを含む導電性組成物であって、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である、導電性組成物;
[6]前記水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)である、[5]に記載の導電性組成物;
[7]前記水溶性ポリマー(C)が、分子内に含窒素官能基を有するビニルモノマー単位を含む、[6]に記載の導電性組成物;
[8]前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[5]に記載の導電性組成物;
【化3】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
[9]前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーである、[5]に記載の導電性組成物;
[10]導電性ポリマー(A1)と、塩基性化合物(E1)とを含む導電性組成物であって、前記塩基性化合物(E1)が、分子内に二つ以上の第3級アミンを有し、かつ共役構造を有する化合物である、導電性組成物;
[11]前記導電性ポリマー(A1)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[10]に記載の導電性組成物;
【化4】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
[12]前記導電性ポリマー(A1)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーである、[10]に記載の導電性組成物;
[13]導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)とを含む導電性組成物であって、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩である、導電性組成物;
[14]前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[13]に記載の導電性組成物;
【化5】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
[15]前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーである、[13]に記載の導電性組成物;
[16]導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E3)とを含む導電性組成物であって、前記導電性ポリマー(A)が、酸性基を有するモノマーユニットを含み、前記塩基性化合物(E3)が、分子内に塩基性基と二つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する化合物であり、前記導電性組成物中の前記塩基性化合物(E3)の含有量が、前記導電性ポリマー(A)の酸性基を有するモノマーユニット1molに対して、0.6〜0.8molである、導電性組成物;
[17]前記導電性ポリマー(A)の酸性基を有するモノマーユニットが、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットである、[16]に記載の導電性組成物;
【化6】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
[18]前記酸性基が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基である、[16]に記載の導電性組成物;
[19]更に、界面活性剤(B)を含む、[10]〜[18]のいずれかに記載の導電性組成物;
[20]前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である、[19]に記載の導電性組成物;
[21]基材と、導電性塗膜と、電子線用レジスト膜とを有する積層体であって、前記基材の少なくとも一方の面に、前記電子線用レジスト膜が積層され、前記電子線用レジスト膜の上に、前記導電体が積層され、前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されている、積層体。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1の実施形態である導電体によれば、レジスト層の膜減り量が小さいため、次世代プロセスの半導体デバイスにも適用することができる。
【0030】
本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、ろ過時に良好な疎水性膜通液性を示すため、フィルターの交換頻度を少なくすることができる。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、良好な塗布性、及び導電性を示し、温度等の環境によらず、基材に塗布されたレジスト等の積層物の膜減り量が小さく、かつ次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性、すなわち、表面荒れの少ない導電性塗膜を形成することができるため、工業上非常に有益なものである。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、導電体形成後、加熱処理することで、不溶性、又は剥離可能な可溶性の導電性塗膜(導電性ポリマー膜)を有する導電体を形成することが可能である。
これにより、永久帯電防止膜、及びプロセス上の一時的帯電防止膜の両面での適用が可能となるという利点を有する。
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、前記導電性塗膜からレジスト層への酸性物質の移行を抑制することで、レジスト層の膜減りを抑制することができる。
本発明の第5、及び第6の実施形態である導電性組成物によれば、酸性物質がレジスト層へ移行しにくい導電性塗膜を形成できる。
また、本発明の第5、及び第6の実施形態である導電性組成物により得られた導電性塗膜は、酸性物質のレジスト層への移行を低減又は抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の導電体の一例を示す断面図である。
図2】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「導電性」とは、5.0×1010Ω/□以下の表面抵抗値を有することである。
また、本明細書において「溶解性」とは、単なる水、塩基及び/又は塩基性塩を含む水、酸を含む水、水と水溶性有機溶媒との混合物10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
また、本明細書において「水溶性」とは、上記溶解性に関して、水に対する溶解性のことを意味する。
【0033】
<導電体>
まず、本発明の第1の実施形態である導電体について説明する。
本発明の第1の実施形態である導電体は、基材と、前記基材の上に積層された導電性塗膜とを有する導電体であって、前記導電性塗膜の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されていることを特徴とする。
図1は、本発明の第1の実施形態である導電体の一例を示す断面図である。この例の導電体10は、基材11の上に導電性塗膜12が積層された構成となっている。
なお、図1において、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。
【0034】
また、本発明の第1の実施形態である導電体において、前記導電性ポリマー(A)が酸性基を有することが好ましい。
また、前記酸性基が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基であることが好ましい。
また、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【化7】
(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
【0035】
本発明の第1の実施形態である導電性塗膜の表面抵抗値は、表面抵抗率計を用いて測定することができる。
また、導電性塗膜の表面平滑性(Ra1値)は、触針式段差計(段差・表面あらさ・微細形状測定装置)を用いて、測定した値のことを指す。
また、導電性塗膜の表面平滑性(Ra2値)は、光学顕微鏡を用いて、測定した値のことを指す。
本発明の第1の実施形態において、導電性塗膜の表面平滑性(Ra1値)は、0.7nm以下であることが好ましく、0.6nm以下であることがより好ましい。また、表面平滑性(Ra1値)の下限値は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、測定値の信頼性の観点から、0.3nm以上であることが好ましい。すなわち、本発明の第1の実施形態の導電体において、表面平滑性(Ra1値)は、0.3〜0.7nmであることが好ましく、0.3〜0.6nmであることがより好ましい。導電性塗膜の表面平滑性(Ra1値)が、上記数値範囲内であれば、前述の化合物(D1)の析出が抑制されているため好ましい。
また、本発明の第1の実施形態において、導電性塗膜の表面平滑性(Ra2値)は、0.35nm以下であることが好ましく、0.33nm以下であることがより好ましい。また、表面平滑性(Ra2値)の下限値は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、ウエハ(下地)の表面平滑性の観点から、0.1nm以上であることが好ましい。すなわち、本発明の第1の実施形態の導電体において、表面平滑性(Ra2値)は、0.1〜0.35nmであることが好ましく、0.1〜0.33nmであることがより好ましい。導電性塗膜の表面平滑性(Ra2値)が、上記数値範囲内であれば、導電性ポリマーと塩基物質により形成される塩による荒れが抑制されているため好ましい。
【0036】
(導電性ポリマー(A))
また、本発明の第1の実施形態における導電体は、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されている。また、前記導電性ポリマー(A)は、酸性基を有することが好ましい。前記酸性基としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基、及びカルボキシ基等が挙げられる。このうち、製造のしやすさの観点から、前記酸性基は、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基であることが好ましい。
【0037】
このような、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマー(A)としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、公知の導電性ポリマーを用いることができる。
【0038】
また、その例としては、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平1−301714号公報、特開平5−504153号公報、特開平5−503953号公報、特開平4−32848号公報、特開平4−328181号公報、特開平6−145386号公報、特開平6−56987号公報、特開平5−226238号公報、特開平5−178989号公報、特開平6−293828号公報、特開平7−118524号公報、特開平6−32845号公報、特開平6−87949号公報、特開平6−256516号公報、特開平7−41756号公報、特開平7−48436号公報、特開平4−268331号公報に示された導電性ポリマーなどが、溶解性の観点から好ましい。
【0039】
具体的には、導電性ポリマー(A)として、α位若しくはβ位が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基で置換されたフェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、及びカルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種をモノマーユニットとして含む、π共役系導電性ポリマーが挙げられる。
また、前記π共役系導電性ポリマーがイミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーユニットを含む場合は、前記モノマーユニットの窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する、又はスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を前記窒素原子上に有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選ばれた少なくとも1種をモノマーユニットとして含む導電性ポリマー(A)が好ましく用いられる。
【0040】
また、導電性ポリマー(A)は、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン骨格を含むことが、導電性や溶解性の観点から好ましい。特に、好ましい導電性ポリマー(A)は、下記一般式(2)〜(4)からなる群より選ばれた少なくとも一種以上のモノマーユニットを、導電性ポリマー(A)全体のモノマーユニットの総数に対して、20〜100mol%含有する導電性ポリマーである。
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
【化10】
【0044】
前記一般式(2)〜(4)において、Xは硫黄原子又は窒素原子を表し、R〜R15は各々独立に、水素原子、−SOH、−R16SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R17)、−NHCOR17、−OH,−O−、−SR17、−OR17、−OCOR17、−NO、−COOH、−R16COOH、−COOR17、−COR17、−CHO及び−CNからなる群より選ばれた基を表し、ここで、R16は炭素数1〜24のアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表し、R17はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
但し、一般式(2)のR〜R、一般式(3)のR〜R10、一般式(4)のR11〜R15はそれぞれ少なくとも一つは−SOH、−R16SOH、−COOH、−R16COOH又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれた基である。
前記アルカリ金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
アルカリ金属塩として、具体的には、例えば硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
【0045】
前記脂肪族アンモニウム塩としては、下記一般式(III)で表されるアンモニウムが挙げられる。
【0046】
【化11】

上述の一般式(III)で表される脂肪族アンモニウムとして、具体的には、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、テトラsec−ブチルアンモニウム、テトラt−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、R5A〜R8Aのうちいずれか1つが水素原子であり、残りが炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、R5A〜R8Aのうちいずれか2つが水素原子であり、残りが炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましい。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えばピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えばピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
【0047】
本発明の第1の実施形態の導電体を形成する導電性組成物において、更に、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【0048】
【化12】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。また、酸性基とは、スルホン酸基、又はカルボキシ基を意味する。)
【0049】
ここで、スルホン酸基及びカルボキシ基は、それぞれ酸の状態(−SOH、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO、−COO)で含まれていてもよい。
また、「塩」とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩のうち、少なくとも一種を示す。
アルカリ金属塩、置換アンモニウム塩としては、前述したものと同じであってもよい。
アルカリ土類金属塩としては、例えば、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
【0050】
前記一般式(1)で表されるモノマーユニットとしては、製造が容易な点で、R〜Rのうち、いずれか1つが炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基であり、他のいずれか一つがスルホン酸基であり、残りが水素であるものが好ましい。
【0051】
前記導電性ポリマー(A)は、前記導電性ポリマー(A)を構成する全モノマーユニットの総数を100mol%とした際、前記一般式(1)で表されるモノマーユニットを10〜100mol%含有することが好ましく、50〜100mol%含有することがより好ましく、pHに関係なく水及び有機溶剤への溶解性に優れる点で、100mol%含有することが特に好ましい。
【0052】
また、前記導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、前記一般式(1)で表されるモノマーユニットを1分子中に10以上、すなわち、10mol%以上含有することが好ましい。
【0053】
本発明の第1の実施形態において、導電性ポリマー(A)(以下、「可溶性アニリン系導電性ポリマー」と言うこともある)は、前記一般式(1)のモノマーユニット、すなわち芳香環の総数に対する酸性基の含有率や、可溶性向上の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であるものがより好ましく、特に90%以上であるものが好ましい。
【0054】
また、本発明の第1の実施形態の別の側面においては、導電性ポリマー(A)のポリマー中の芳香環の総数に対するスルホン酸基、及びカルボキシ基の含有量は、50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、100%が最も好ましい。前記含有量が50%以上の導電性ポリマー(A)であれば、溶解性が非常に良好となるため好ましい。
また前記含有量は、導電性ポリマー(A)製造時の、モノマーの仕込み比から算出できる。
【0055】
また、導電性ポリマー(A)において、モノマーユニットの芳香環上のスルホン酸基、又はカルボキシ基以外の酸性基は、モノマーへの反応性付与の観点から電子供与性基が好ましく、具体的には、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルコキシ基、ハロゲン基(−F、−Cl、−Br又はI)等が好ましく、このうち、電子供与性の観点から、炭素数1〜24のアルコキシ基であることが最も好ましい。
【0056】
また、前記導電性ポリマー(A)としては、前記一般式(1)で表される以外のモノマーユニットとして、可溶性、導電性及び性状に影響を及ぼさない限り、置換又は無置換のアニリン、チオフェン、ピロール、フェニレン、ビニレン、その他二価の不飽和基及び二価の飽和基の少なくとも一種のモノマーユニットを含んでいてもよい。前記置換基としては、例えば、酸性基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0057】
また、前記導電性ポリマー(A)としては、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0058】
【化13】
【0059】
式(5)中、R18〜R33は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R18〜R33のうち少なくとも1つは酸性基である。また、nは重合度を示す。本発明の第1の実施形態においては、nは5〜2500の整数であることが好ましい。
【0060】
前記一般式(5)で表される構造を有する化合物の中でも、溶解性に優れる点で、ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0061】
前記導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、3,000〜1,000,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましい。導電性ポリマーの質量平均分子量が3,000以上であれば、導電性、成膜性及び膜強度に優れる。一方、導電性ポリマーの質量平均分子量が1,000,000以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
導電性ポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
【0062】
また、その他の態様において、前記導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、導電性の観点から、3,000〜1,000,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましく、10,000〜70,000が特に好ましい。
【0063】
また、別の態様において、本発明の導電性ポリマー(A)に含有される酸性基は、導電性向上の観点から少なくともその一部が遊離酸型であることが望ましい。
また、本発明のその他の側面においては、導電性ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)のポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、導電性、溶解性及び成膜性の観点から、2,000〜100万であることが好ましく、3,000〜80万であることがより好ましく、5,000〜50万であることがさらに好ましく、1万〜10万であることが特に好ましい。
導電性ポリマー(A)の質量平均分子量が2,000未満の場合、溶解性には優れるものの、導電性、及び成膜性が不足する場合がある。
一方、質量平均分子量が100万より大きい場合、導電性には優れるものの、溶解性が不十分な場合がある。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。具体的には、導電性組成物をガラスの上にスピンコート法により塗布したのち、目視、顕微鏡等で評価することができる。
【0064】
(導電性ポリマー(A)の製造方法)
本発明の第1の実施形態において、前記導電性ポリマー(A)の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。
具体的には、前述のモノマーユニットを有する重合性単量体を化学酸化法、電解酸化法などの各種合成法により重合する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば本発明者らが提案した特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成法などを適用することができる。
【0065】
上述の通り、導電性ポリマー(A)は公知の方法で製造できる。より具体的には、例えば、酸性置換基を有するアニリン、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(モノマー)を、塩基性反応助剤の存在下、酸化剤を用いて重合する工程を含む。
【0066】
酸性置換基を有するアニリンとしては、例えば酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリンが挙げられる。
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
【0067】
アミノベンゼンスルホン酸類以外のスルホン酸基置換アニリンとしては、例えばメチルアミノベンゼンスルホン酸、エチルアミノベンゼンスルホン酸、n−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、iso−プロピルアミノベンゼンスルホン酸、n−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、sec−ブチルアミノベンゼンスルホン酸、t−ブチルアミノベンゼンスルホン酸等のアルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類;メトキシアミノベンゼンスルホン酸、エトキシアミノベンゼンスルホン酸、プロポキシアミノベンゼンスルホン酸等のアルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;ニトロ基置換アミノベンゼンスルホン酸類;フルオロアミノベンゼンスルホン酸、クロロアミノベンゼンスルホン酸、ブロムアミノベンゼンスルホン酸等のハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類などを挙げることができる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性ポリマー(A)が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、または、ハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましく、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および置換アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンはそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0068】
導電性ポリマー(A)の製造に用いられる塩基性反応助剤としては、例えば無機塩基、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類などが用いられる。
塩基性反応助剤としては無機塩基が好ましく、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。
また、無機塩基以外では、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン等の脂式アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン等の環式不飽和アミン類が、塩基性反応助剤として好ましく用いられる。
これらの塩基性反応助剤はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
またこれら塩基性反応助剤の添加量としては、前述のモノマーに対して、重量比で、0.01倍〜100倍であることが好ましく、0.1倍〜10倍であることがより好ましい。
【0069】
導電性ポリマー(A)の製造に用いられる酸化剤としては、標準電極電位が0.6V以上である酸化剤であれば限定はないが、例えばペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸類;過酸化水素等を用いることが好ましい。
これらの酸化剤はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
また、前記酸化剤の添加量としては、前述のモノマー1molに対して、1mol〜5molであることが好ましく、1mol〜3molであることがより好ましい。
【0070】
導電性ポリマー(A)の重合の方法としては、例えば、酸化剤溶液中にモノマーと塩基性反応助剤の混合溶液を滴下する方法、モノマーと塩基性反応助剤の混合溶液に酸化剤溶液を滴下する方法、反応容器等にモノマーと塩基性反応助剤の混合溶液と、酸化剤溶液を同時に滴下する方法などが挙げられる。
【0071】
重合後は、通常、遠心分離器等の濾過器により溶媒を濾別する。さらに、必要に応じて濾過物を洗浄液、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、アセトニトリル等により洗浄した後、乾燥させて、重合体(導電性ポリマー(A))を得る。
【0072】
(導電性組成物)
本発明の第1の実施形態である導電体において、導電性塗膜を形成している導電性組成物としては、後述する本発明の第2〜第6の実施形態である導電性組成物を用いることが好ましい。
【0073】
(本発明の第1の実施形態である導電体の製造方法)
本発明の第1の実施形態である導電体の製造方法としては、基材の少なくとも一方の面に前記導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物を塗布、乾燥して導電性塗膜を形成したのち、常温(25℃)で1分間〜60分間放置する、あるいは加熱処理を行うことによって製造することができる。
加熱処理を行う場合の加熱温度としては、導電性の観点から、40℃〜250℃の温度範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の温度範囲であることがより好ましい。また、処理時間は、安定性の観点から、1時間以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
導電性組成物の基材への塗布方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。
また、前記導電性組成物を塗布して得られた導電性塗膜の膜厚は、1〜100nmであることが好ましく、3〜70nmであることがより好ましく、5〜40nmであることが特に好ましい。前記膜厚は、触針式段差計(段差・表面あらさ・微細形状測定装置)を用いて測定することができる。
【0074】
基材としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコン樹脂、合成紙等の各種高分子化合物の成型品、及びフィルム、紙、鉄、ガラス、石英ガラス、各種ウエハ、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼等、及びこれらの基材表面に各種塗料や感光性樹脂、レジスト等がコーティングされているものなどを例示することができる。
また、前記基材の厚みとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、1μm〜2cmであることが好ましく、10μm〜1cmであることがより好ましい。
前記基材に導電性組成物を塗布する工程は、これら基材の製造工程、例えば一軸延伸法、二軸延伸法、成形加工、又はエンボス加工等の工程前、または工程中に行っても良く、これら処理工程が完了した基材に対して行うこともできる。
また、上記基材上に各種塗料や、感光性材料をコーティングした物に、導電性組成物を重ね塗りして導電性塗膜を形成することも可能である。
【0075】
<第2の実施形態:導電性組成物>
次に、本発明の第2の実施形態である導電性組成物について説明する。
本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)とを含む導電性組成物であって、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることを特徴とする。
また、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【化14】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
また、前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
【0076】
また、本発明の第2の実施形態は以下の側面を有する。
本発明の第2の実施形態における1つの側面としては、界面活性剤として含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性高分子を含有し、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を任意に含有する界面活性剤組成物であって、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記水溶性高分子100質量部に対して1質量部以下である界面活性剤組成物である。
本発明の第2の実施形態におけるその他の側面としては、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性高分子、並びにオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を含む混合物に、吸着剤を接触させてオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を低減させる上記界面活性剤組成物の製造方法である。
更に、本発明の第2の実施形態における別の側面としては、上記界面活性剤組成物と水溶性導電性高分子を含有する導電性組成物である。
本発明の第2の実施形態における別の側面としては、上記導電性組成物をフィルターでろ過した後に基材に塗布する導電性塗膜の形成方法である。
【0077】
本発明の第2の実施形態の別の側面において、前記界面活性剤組成物は、界面活性剤として含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性高分子(以下「界面活性剤」という)を含有し、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を任意に含有する界面活性剤組成物であって、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、界面活性剤100質量部に対して1質量部以下である。
【0078】
(化合物(D1))
本発明の第2の実施形態において、Log Powは、オクタノールと水の混合物(混合比率は任意)に対象化合物を溶解させたときの、オクタノールと水中での前記化合物の濃度比のことを指す。本明細書においては、Log Powは、CambridgeSoft社製、ChemDraw Pro 12.0にて計算した計算値を用いる。また、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量の測定は、ガスクロマトグラフを用いた内部標準法にて行い、n−ドデシルメルカプタン換算値で表す。すなわち、サンプルを、以下の条件のガスクロマトグラフを用いて測定した。カラム温度は、40℃で1分間保持する。その後、40℃から60℃まで昇温する(昇温時間5分間)。その後、60℃で1分間保持したのち、カラム温度を60℃から230℃まで昇温する(昇温時間30分)。その後、230℃で10分間保持する。また、キャリア流量は4.1ml/minの条件で測定した。リテンションタイムが36分のピークについて、その含有量を求めた。
本発明の第2の実施形態において、導電性組成物中のLog Powが4以上である化合物(D1)の含有量は、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である。また、界面活性剤(B)中の、前記化合物(D1)の含有量は、界面活性剤(B)100質量部に対して1質量部以下である。すなわち、界面活性剤(B)中の前記化合物(D1)の含有量は、界面活性剤(B)の総質量に対して、1質量%以下である。つまり、前記導電性組成物の総質量に対して、前記化合物(D1)の含有量を0.001質量%以下とする、あるいは、界面活性剤(B)の総質量に対して、化合物(D1)の含有量を1質量%以下とすることで、前記導電性組成物の精密ろ過におけるろ過性が良好となるからである。また、導電性組成物中の化合物(D1)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0〜0.001質量%であることが好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。また、界面活性剤(B)の総質量に対する化合物(D1)の含有量は0.05質量%以下がより好ましい。また、全く含まれないことが更に好ましい。また、前記化合物(D1)は、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4〜10の化合物のことを意味する。
本発明の第2の実施形態では、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)はLow Powが4以上の化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、後述する水溶性ポリマー(C)の製造において使用する連鎖移動剤、重合開始剤、またはこれらの反応副生物などが含まれる。
例えば、水溶性ポリマー(C)の製造において、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)と連鎖移動剤であるn−ドデシルメルカプタンを用いた場合には、これらが反応した2−(ドデシルチオ)−2−メチルブチロニトリル(Log Pow6.5)が化合物(D1)に含まれる。また、重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリルと連鎖移動剤であるn−オクチルメルカプタンを用いた場合には、これらが反応した2−(オクチルチオ)−2−メチルプロパンニトリル(Log Pow4.4)が化合物(D1)に含まれる。
【0079】
(界面活性剤(B))
本発明の第2の実施形態において、界面活性剤(B)は、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含むものである。前記水溶性ポリマー(C)は、例えば、窒素含有官能基を有する水溶性高分子の末端に疎水性基を導入して製造することができる。
ここで、「水溶性高分子の末端」とは、具体的に、主鎖末端からポリマー末端にかけての部位のことを指す。すなわち、水溶性ポリマー(C)とは、含窒素官能基を有するモノマーユニットを主鎖構造として有し、かつ、前記主鎖末端からポリマー末端にかけての部位に、疎水性基を有する高分子化合物のことを指す。また、「主鎖構造」とは、前述の末端疎水性基に由来するモノマーユニット以外の、窒素官能基を含むモノマーユニットのことを指す。
【0080】
(水溶性ポリマー(C))
このような水溶性ポリマー(C)を含む界面活性剤(B)は、水溶性ポリマー(C)の親水性基(主鎖構造部分)と末端の疎水性基によって、界面活性能を発現する。末端疎水性基としては、炭素数3〜100、好ましくは5〜50、特に好ましくは7〜30のアルキル基、アラルキル基及びアリール基から選ばれた少なくとも1種を含む基が挙げられる。具体的な末端疎水性基としては、炭素数3〜100のアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級または二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基及びアリールアミノ基等が挙げられ、好ましくは炭素数5〜50のアルキルチオ基、アラルキルチオ基及びアリールチオ基等である。具体的には、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
また、本発明の第2の実施形態において、前記界面活性剤(B)中の水溶性ポリマー(C)の含有量は、界面活性剤(B)の総質量に対して、99質量%〜100質量%であることが好ましく、99.9〜100質量%であることがより好ましい。また、本発明の第2の実施形態において、前記界面活性剤(B)が、水溶性ポリマー(C)のみから構成されることが最も好ましい。
【0081】
水溶性ポリマー(C)の末端疎水性基は本発明の効果を有する限り、どの様な方法で水溶性ポリマー(C)に導入してもよいが、通常はビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入する方法が簡便であるため好ましい。
連鎖移動剤としては、前述のアルキル基、アラルキル基、アリール基等を含む基を水溶性ポリマー(C)の末端に導入させることができる化合物を利用できる。更に好ましくは、炭素数3〜100、好ましくは5〜50、特に好ましくは7〜30のアルキル基、アラルキル基及びアリール基から選ばれた少なくとも1種を含む疎水性基を有するものである。好ましい連鎖移動剤としては、炭素数7〜20のアルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等の疎水性基を有するチオール、ジスルフィド及びチオエーテル等が挙げられる。
【0082】
水溶性ポリマー(C)の主鎖構造は、含窒素官能基を有するモノマーユニット、特に含窒素官能基を有するビニルモノマーに由来するユニットを含み、含窒素官能基を有さないビニルモノマー等のその他のモノマーユニットを含んでいてもよい。含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマーが好ましく、その中でもアミド基を持つものがより好ましい。
【0083】
具体的な含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アミド基を有するビニルモノマーであることが好ましく、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニル−N−メチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられ、更にこの中でもアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が特に好ましい。
水溶性ポリマー(C)の主鎖部分が含窒素官能基を有するビニルモノマーユニットを有する場合、その繰り返し炭素数、すなわち、重合度は2〜1000であることが好ましい。
【0084】
すなわち、本発明の第2の実施形態において、前記水溶性ポリマー(C)としては、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、及びアリールチオ基から成る群より選択される少なくとも1つの末端疎水性基を有し、かつピロリドン骨格、カプロラクタム骨格、及びアミド骨格から成る群より選択される少なくとも1つの含窒素官能基を有する高分子化合物であることが好ましい。
本発明の第2の実施形態の1つの側面において、前記水溶性ポリマー(C)は、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンからなる群より選択される少なくとも1つの連鎖移動剤と、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1つのビニルモノマーとを重合して得られる高分子化合物であることが好ましい。
【0085】
(水溶性ポリマー(C)の製造方法)
水溶性ポリマー(C)の製造方法としては、例えば、上記含窒素官能基を有するビニルモノマーを、好ましくは重合開始剤存在下で、80℃、常圧の環境下で重合することにより、主鎖構造を製造し、さらに上述した連鎖移動剤と反応させることにより水溶性ポリマー(C)を製造することができる。また、含窒素官能基を有するビニルモノマーを、重合開始剤及び連鎖移動剤の双方の存在下で重合することにより、水溶性ポリマー(C)を製造してもよい。重合後は、熟成及び放冷を行うことが好ましい。
重合開始剤は本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等のラジカル重合開始剤等が挙げられる。
連鎖移動剤は本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系連鎖移動剤等が挙げられる。
具体的には、前述の含窒素官能基を含むビニルモノマーと、連鎖移動剤と、重合開始剤と溶剤とを含む混合物を、溶剤中に滴下重合して水溶性ポリマー(C)を得る工程を含む製造方法であることが好ましい。
含窒素官能基を含むビニルモノマーと連鎖移動剤との混合比率は、重量比で100:0.01〜100:10であることが好ましく、100:0.1〜100:5であることがより好ましい。
また、滴下重合時の温度は、60〜95℃であることが好ましく、70〜85℃であることがより好ましい。
また、滴下重合の後、70〜95℃で、2〜8時間熟成する工程を更に含むことが好ましい。
【0086】
水溶性ポリマー(C)の質量平均分子量は、500〜5000が好ましい。水溶性ポリマー(C)の質量平均分子量をこの範囲とすることで、良好な界面活性能を発現できる傾向にある。この質量平均分子量は、水溶媒中でのGPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法)によるポリエチレングリコール換算値である。質量平均分子量は、本発明の第2の実施形態における導電性組成物の塗布性の点から、500〜3000がより好ましく、500〜1500が特に好ましい。
また、重合を行った後、水溶性ポリマー(C)を含む界面活性剤(B)は、さらに減圧濃縮等によって溶媒を除くことが好ましい。この水溶性ポリマー(C)を含む界面活性剤(B)には上述したように、重合開始剤と連鎖移動剤との反応により生成したLog Powが4以上である化合物(D1)が含まれることがある。
【0087】
本発明の界面活性剤(B)の製造方法としては、水溶性ポリマー(C)を含む界面活性剤(B)と、吸着剤とを接触させてオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を吸着除去することが好ましい。吸着剤としては本発明の効果を有する限り特に限定されず、オクタデシル基修飾シリカや、活性炭などの疎水性物質等が用いられる。中でも、活性炭が上記の界面活性剤(B)中のオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を選択的に除去できるという点で好ましい。
吸着除去する際には、水溶性ポリマー(C)を含む界面活性剤(B)を溶媒に溶解して、前記界面活性剤(B)と吸着剤とを接触させることが好ましい。
溶媒としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、水や有機溶剤等を用いることが出来る。中でも、水/有機溶剤の混合溶媒を用いると、疎水性化合物、すなわち、化合物(D1)の除去性が向上することから好ましい。
水/有機溶剤の混合比率としては、60/40〜90/10が好ましい。有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。また、界面活性剤(B)と吸着剤との接触時間は、1秒以上であることが好ましい。
本発明の界面活性剤(B)の他の製造方法としては、窒素含有官能基を有するビニルモノマー、末端疎水性基を導入するための連鎖移動剤、及び重合開始剤を用いて水溶性ポリマー(C)及びオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を含む混合物を作成し、前記混合物に、上述した吸着剤を接触させてオクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)を吸着除去する方法が挙げられる。
【0088】
本発明の第2の実施形態の導電性組成物において、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下である。また、界面活性剤(B)中の前記化合物(D1)の含有量が、界面活性剤(B)100質量部に対して1質量部以下、すなわち、前記界面活性剤(B)の総質量に対して、1質量%以下であるので、本発明の第2の実施形態である導電性組成物をろ過する際のフィルターの詰まりを低減できる。そのため、前記界面活性剤(B)は、フィルターにより異物をろ過して取り除く必要がある導電性組成物用の添加剤として好適である。
【0089】
(本発明の第2の実施形態である導電性組成物の製造方法)
本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、前記界面活性剤(B)と前記導電性ポリマー(A)を混合することで製造することが出来る。更に、本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、更に水を溶媒として含む、水溶液であることが好ましい。前記導電性組成物の水溶液には水以外の有機溶剤等の溶媒を含んでいてもよい。
また、本発明の第2の実施形態である導電性組成物における界面活性剤(B)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜15質量%がより好ましい。また、本発明の第2の実施形態である導電性組成物における導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。さらに、本発明の第2の実施形態における導電性組成物をフィルターでろ過して基材に塗布することで、導電性塗膜を形成することが出来る。
【0090】
(本発明の第2の実施形態における導電性ポリマー(A))
本発明の第2の実施形態の導電性組成物における導電性ポリマー(A)としては、前述の第1の実施形態において説明した導電性ポリマー(A)を用いることができ、好ましい例もまた同様である。
【0091】
(高分子化合物(Y))
また、本発明の第2の実施形態の導電性組成物は、下記の高分子化合物(Y)を混合して用いることで、導電性塗膜の強度や平滑性を向上させる、あるいは調整することができる。具体的には、ポリビニールホルマール、ポリビニールブチラール等のポリビニールアルコール誘導体類、ポリアクリルアミド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアミド類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸類、水溶性アルキド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリブタジエン樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルスチレン共重合体樹脂、水溶性酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性スチレンマレイン酸共重合樹脂、水溶性フッ素樹脂及びこれらの共重合体が挙げられる。これら高分子化合物(Y)を含む場合、その含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましい。
【0092】
更に、本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、必要に応じて顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0093】
本発明の第2の実施形態である導電性組成物を用いた導電性塗膜の形成方法は、本発明の第2の実施形態である導電性組成物をフィルターでろ過した後に基材に塗布する方法が好ましい。本発明の第2の実施形態である導電性組成物は、前記フィルターがポリエチレン等の疎水性の材質である場合に好適である。また、前記導電性組成物の基材への塗布は、基材の少なくとも一つの面上に対して行うことが好ましい。塗布する方法としては本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。
【0094】
また、前記基材としては、前述の第1の実施形態において説明したものと同様のものが挙げられる。また、基材への導電性組成物への塗布工程も、前述の第1の実施形態において説明した工程と同様の例が挙げられる。
【0095】
フィルターでろ過した本発明の第2の実施形態である導電性組成物を前記基材に塗布した後、常温で放置、もしくは加熱処理を行うことで導電性塗膜が形成される。加熱温度としては40℃〜250℃の温度範囲で行うことが好ましく、導電性が良好な導電性塗膜が形成される。
【0096】
また、本発明の第2の実施形態である導電性組成物の別の側面としては、
導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)と、水とを含む導電性組成物であって、
前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)であり、
前記水溶性ポリマー(C)が、メルカプタン系連鎖移動剤と、アミド基を有するビニルモノマーとを重合して得られる高分子化合物であり、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が、0.01〜50質量%であり、
前記界面活性剤(B)が、0.01〜20質量%であり、
前記水が、50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0097】
また、本発明の第2の実施形態である導電性組成物の別の側面としては、
導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)と、水とを含む導電性組成物であって、
前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)であり、
前記水溶性ポリマー(C)が、メルカプタン系連鎖移動剤と、アミド基を有するビニルモノマーとを重合して得られる高分子化合物であり、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であり、
前記化合物(D1)が、水溶性ポリマー(C)の製造時に用いる重合開始剤と連鎖移動剤との反応物であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が、0.01〜50質量%であり、
前記界面活性剤(B)が、0.01〜20質量%であり、
前記水が、50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0098】
<第3の実施形態:導電性組成物>
本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、前記第2の実施形態の導電性組成物に含まれる界面活性剤(B)中の水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)であることを特徴とする。
また、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【0099】
【化15】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
また、前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
【0100】
また、本発明の第3の実施形態は、以下の側面を有する。
[1]スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマー(A)と、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)を含む、導電性組成物;
[2]前記含窒素官能基がアミド基である、[1]に記載の導電性組成物;
[3]前記末端疎水性基が、炭素数5〜100のアルキル鎖、炭素数5〜100のアラルキル鎖、及び炭素数5〜100のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つの疎水性基を含む、[1]又は[2]記載の導電性組成物;
[4]前記末端疎水性基が、炭素数5〜100のアルキルチオ基、炭素数5〜100のアラルキルチオ基、及び炭素数5〜100のアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1つの疎水性基である、[1]又は[2]記載の導電性組成物;
[5]前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の導電性組成物;
【化16】

(式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又はI)を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボキシ基を意味する。)
[6]基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、導電体;
[7]基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に形成されたレジスト層と、前記レジスト層上に、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、積層体。
【0101】
(本発明の第3の実施形態における導電性ポリマー(A))
本発明の第3の実施形態の導電性組成物における導電性ポリマー(A)としては、前述の第1の実施形態において説明した導電性ポリマー(A)を用いることができ、好ましい例もまた同様である。
【0102】
(水溶性ポリマー(C1))
本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、水溶性ポリマー(C1)は、含窒素官能基、及び末端疎水性基を有する質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマーのことを指す。
本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、水溶性ポリマー(C1)は、界面活性剤としての役割を有する。
このように、規定以上の質量平均分子量を有する水溶性ポリマー(C1)を界面活性剤(B)として、前述の導電性ポリマー(A)と組み合わせることにより、良好な塗布性を有し、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少なく、かつ、表面荒れの少ない導電性塗膜を形成することができる。
すなわち、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、前記第1、第2の実施形態の導電性ポリマー(A)と、前記水溶性ポリマー(C1)とを含むことを特徴とする。
また、水溶性ポリマー(C1)は、溶解性の観点から、前記含窒素官能基がアミド基であることが好ましい。
【0103】
前記末端疎水性基としては、アルキル鎖、アラルキル鎖、アリール鎖を含めば、本発明の効果を有する限り特に限定されない。
前記末端疎水性基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級または二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
ここで、末端疎水性基とは、前述の第2の実施形態において説明した「水溶性高分子の末端」に導入された疎水性基のことを指す。
【0104】
本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、前記水溶性ポリマー(C1)は、溶解性や界面活性能の観点から、前記末端疎水性基が、炭素数5〜100のアルキル鎖、炭素数7〜100のアラルキル鎖、及び炭素数6〜100のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことが好ましい。
また、前記末端疎水性基が、炭素数6〜70のアルキル鎖、炭素数7〜70のアラルキル鎖、及び炭素数6〜70のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことがより好ましく、炭素数7〜30のアルキル鎖、炭素数7〜30のアラルキル鎖、及び炭素数7〜30のアリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことが、特に好ましい。
【0105】
また、界面活性能の観点から、前記末端疎水性基が、炭素数5〜100のアルキルチオ基、炭素数7〜100のアラルキルチオ基、及び炭素数6〜100のアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1つの基であることが好ましい。
また、前記末端疎水性基は、炭素数7〜50のアルキルチオ基、炭素数6〜50のアラルキルチオ基、及び炭素数6〜50のアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1つの基であることがより好ましく、炭素数7〜30のアルキルチオ基、炭素数7〜30アラルキルチオ基、及び炭素数7〜30アリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1つであることが特に好ましい。
より具体的には、ドデシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0106】
ここで、前記末端疎水性基は、前記アルキル鎖、前記アラルキル鎖、及び前記アリール鎖からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことが好ましいが、溶解性や界面活性能の観点から、アルキル鎖と硫黄原子を有する前記アルキルチオ基、アラルキル鎖と硫黄原子を有する前記アラルキルチオ基、アリール鎖と硫黄原子を有するアリールチオ基であることが、より好ましい。
中でも、溶解性や界面活性能の観点から、アルキルチオ基が特に好ましい。
【0107】
本発明の第3の実施形態における水溶性ポリマー(C1)は、含窒素官能基、及び末端疎水性基を有する質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマーである。水溶性ポリマー(C1)の質量平均分子量は、2000〜100万であることが好ましく、2500〜10万であることがより好ましく、5000〜1万であることが特に好ましい。
【0108】
前記水溶性ポリマー(C1)の主鎖構造としては、含窒素官能基を有するビニルモノマーのホモポリマー、又はその他のビニルモノマーとのコポリマーであり、かつ水溶性であれば、本発明の効果を有する限り特に限定されない。
ここで、水溶性ポリマー(C1)の主鎖構造とは、前述の第2の実施形態において説明したように、水溶性ポリマー(C1)の末端疎水性基に由来するモノマーユニット以外の、窒素官能基を含むモノマーユニットのことを指す。
前記含窒素官能基としては、アミド基であることが好ましく、アミド基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、N−ビニルラクタム等が挙げられる。具体的には、前述の第2の実施形態の含窒素官能基で挙げた例と同じであり、好ましい例もまた同様である。
【0109】
(水溶性ポリマー(C1)の製造方法)
水溶性ポリマー(C1)の製造方法において、含窒素官能基を有する水溶性高分子の末端に疎水性基を導入する方法は、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、ビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入する方法が、簡便で好ましい。
この場合、連鎖移動剤としては、上述の末端疎水性基を導入することのできるものであれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、好ましい末端疎水性基であるアルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等を容易に得ることができる、チオール、ジスルフィド、チオエーテルなどを好ましく用いることができる。具体的には、メルカプタン系連鎖移動剤、スチレン系連鎖移動剤等が挙げられ、このうち、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンが好ましい。
具体的には、前述の含窒素官能基を含むビニルモノマーと、連鎖移動剤と、重合開始剤と溶剤とを含む混合物を、溶剤中に滴下重合して水溶性ポリマー(C)を得る工程を含む製造方法であることが好ましい。
含窒素官能基を含むビニルモノマーと連鎖移動剤との混合比率は、重量比で100:0.01〜100:10であることが好ましく、100:0.1〜100:5であることがより好ましい。
また、滴下重合時の温度は、60〜95℃であることが好ましく、70〜85℃であることがより好ましい。
また、滴下重合の後、70〜95℃で、2〜8時間熟成する工程を更に含むことが好ましい。
【0110】
水溶性ポリマー(C1)の含窒素官能基を有する主鎖構造部分のモノマーユニットの繰り返し数、すなわち、上述の含窒素官能基を有するビニルモノマーの重合度は、前記水溶性ポリマー(C1)の溶解性の観点から、10〜100000が好ましく、15〜1000がより好ましく、20〜200が特に好ましい。
また、界面活性能の観点から、前記水溶性ポリマー(C1)の、含窒素官能基を有する主鎖構造部分の分子量(以下、「水溶性部分の分子量」と言うこともある)と末端疎水性部分の分子量(以下、「疎水性部分の分子量」と言うこともある)の比、すなわち、(水溶性部分の分子量)/(疎水性部分の分子量)は、1〜150であることが好ましく、5〜100であることがより好ましい。ここで、「水溶性部分の分子量」、及び「疎水性部分の分子量」は、得られた水溶性ポリマー(C1)の質量平均分子量と、主鎖構造部分を構成するモノマーと、末端疎水性部分を構成する連鎖移動剤の仕込み比から算出することができる。
【0111】
水溶性ポリマー(C1)は、従来の界面活性剤とは異なり、含窒素官能基を有する主鎖構造部分(水溶性部分)と、末端疎水性基(疎水性部分)によって界面活性能を発現することができる。
そのため、酸、塩基を含まず、加水分解により生じる副生成物もないことから、水溶性ポリマー(C1)を含む本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、基材や、基材上に塗布されたレジスト等の積層物に悪影響を与えることなく、塗布性を向上させることができる。
更に、水溶性ポリマー(C1)の質量平均分子量を2000以上とすることにより、低分子量成分の含有量を少なくすることができる。
これにより、レジスト層上に、本発明の第3の実施形態である導電性組成物を塗布して、導電体を形成した場合、前記低分子量成分が、レジストとの界面に移行して、これらの表面を溶解することを抑制することができる。
そのため、前記水溶性ポリマー(C1)を含む本発明の第3の実施形態である導電性組成物を、レジスト表面に塗布して得られた導電体を、100℃以上の高温条件下で使用した場合であっても、レジストが膜減りしにくいという特徴を有する。また、前記低分子量成分に由来する導電体表面の荒れを抑制することができる。
また、水溶性ポリマー(C1)のガラス転移温度は、流動性の観点から、60℃〜250℃が好ましく、65℃〜200℃がより好ましく、70℃〜150℃が特に好ましい。
ここで、「低分子量成分」とは、質量平均分子量が、500〜1300程度のオリゴマー成分のことを意味する。
【0112】
また、従来の界面活性剤、例えば、特許文献1に記載の水溶性ポリマー(以下、「水溶性ポリマー(Z)」と言うこともある)では、導電性ポリマーの骨格に由来する導電性塗膜表面の荒れを抑制する効果が十分ではないという問題があった。
しかしながら、本発明の水溶性ポリマー(C1)は、質量平均分子量を向上させることで、導電性ポリマー(A)の骨格に由来する導電性塗膜表面の荒れも抑制することができる。
そのため、水溶性ポリマー(C1)を界面活性剤として含む本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性を有する導電性塗膜を形成することができる。
【0113】
(本発明の第3の実施形態である導電性組成物の製造方法)
本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、第1の実施形態において説明した導電性ポリマー(A)に、水溶性ポリマー(C1)を混合することにより製造することができる。
水溶性ポリマー(C1)は、後述する溶剤(X)に分散させて用いることが好ましく、その含有量は、溶剤(X)100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜15質量部であることがより好ましい。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、水溶性ポリマー(C1)の含有量は、導電性組成物の総質量(100質量%)に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.01〜15質量%であることがより好ましい。また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましい。
更に、水溶性ポリマー(C1)と導電性ポリマー(A)の比率は、1:9〜9:1であることが好ましく、2:8〜8:2であることより好ましい。
【0114】
(溶剤(X))
本発明の第3の実施形態に用いられる溶剤(X)としては、導電性ポリマー(A)、及び水溶性ポリマー(C1)を溶解することができる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N−メチルピロリドン、 N−エチルピロリドン等のピロリドン類等との混合系が好ましく用いられる。
溶剤(X)として、水との混合系を用いる場合、水/有機溶剤=1/100〜100/1であることが好ましく、2/100〜100/2であることがより好ましい。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物において、溶剤(X)の好ましい使用量は、導電性ポリマー(A)1質量部に対して2〜10000質量部、好ましくは50〜10000質量部である。
【0115】
本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、導電性塗膜の強度や表面平滑性を向上させる目的で、前述の高分子化合物(Y)を含有させることができ、その好ましい含有量も前述の第2の実施形態と同じである。
【0116】
更に、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、必要に応じて顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0117】
(導電体、及び積層体)
本発明の第3の実施形態である導電性組成物により得られる導電体は、基材と、前記基材の少なくとも1つの面に前記導電性組成物を塗布することにより形成された導電性塗膜とを含むものである。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物により得られる積層体は、基材と、前記基材の少なくとも1つの面上形成されたレジスト層と、前記レジスト層上に、前記導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含むものである。
導電性組成物の基材への塗布方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。
【0118】
基材としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコン樹脂、合成紙等の各種高分子化合物の成型品、及びフィルム、紙、鉄、ガラス、石英ガラス、各種ウエハ、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼等、及びこれらの基材表面に各種塗料や感光性樹脂、レジスト等がコーティングされているものなどを例示することができる。
前記基材に導電性組成物を塗布する工程は、これら基材の製造工程、例えば一軸延伸法、二軸延伸法、成形加工、又はエンボス加工等の工程前、または工程中に行っても良く、これら処理工程が完了した基材に対して行うこともできる。
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、塗布性が良好であるので、上記基材上に各種塗料や、感光性材料をコーティングした物に、導電性組成物を重ね塗りして導電性塗膜を形成することも可能である。
【0119】
本発明の第3の実施形態である導電性組成物を用いた導電体の製造方法としては、前記導電性組成物を、前記基材の少なくとも一つの面上に塗布、乾燥して導電性塗膜を形成した後、常温(25℃)で1分間〜60分間放置する、あるいは加熱処理を行うことによって製造することができる。
加熱処理を行う場合の加熱温度としては、導電性の観点から、40℃〜250℃の温度範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の温度範囲であることがより好ましい。また、処理時間は、安定性の観点から、1時間以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
【0120】
また、本発明の第3の実施形態である導電性組成物のその他の態様としては、
前記導電性ポリマー(A)と、界面活性剤(B)と、水とを含む導電性組成物であって、前記界面活性剤(B)が含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が、0.01〜50質量%であり、
前記界面活性剤(B)が0.01〜20質量%であり、
前記水が、50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0121】
<第4の実施形態:導電性組成物>
本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A1)と、塩基性化合物(E1)とを含み、前記塩基性化合物(E1)が、分子内に二つ以上の第3級アミンを有し、かつ共役構造を有する化合物であることを特徴とする。
また、前記導電性組成物は、前記界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
また、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることが好ましい。
また、前記導電性ポリマー(A1)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【化17】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
また、前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
【0122】
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物は前記導電性ポリマー(A1)が下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【0123】
【化18】
【0124】
(式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩である。また、酸性基とは、スルホン酸基又はカルボキシ基である。)
【0125】
(本発明の第4の実施形態における導電性ポリマー(A1))
本発明の第4の実施形態の導電性組成物における導電性ポリマー(A1)としては、前述の第1の実施形態において説明した導電性ポリマー(A)から、塩基性物質を除去した導電性ポリマーのことを指す。
【0126】
上述したように、従来の導電性ポリマーを含む導電性組成物は、レジスト層上に導電性塗膜を形成した際に、導電性塗膜中に含まれる塩基性物質がレジスト側へ移行することにより、レジストがポジ型の場合には、露光部の酸が失活してしまい、パターン形状の変化や低感度側への感度変動が起こりやすかった。
また、レジストがネガ型の場合には逆にパターンの細り、膜減りや高感度側への感度変動が起こりやすかった。
【0127】
しかし、反応混合物、すなわち、導電性ポリマー中の残存モノマー、副反応の併発に伴って生成したオリゴマー、酸性物質(モノマーや酸化剤の分解物である硫酸イオン等)、塩基性物質(塩基性反応助剤や酸化剤の分解物であるアンモニウムイオン等)等の副生成物の混合物から塩基性物質を除去することで、本発明の第4の実施形態である導電性組成物を用いてレジスト層上に導電性塗膜を形成した際、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、酸性物質や塩基性物質等の副生成物のレジスト側への移行が抑制され、レジストへの影響を抑制できる。
【0128】
(導電性ポリマー(A1)の製造方法)
導電性ポリマー(A1)は、前述の導電性ポリマー(A)から副生成物を除去する工程を含む製造方法により製造することができる。
副生成物の除去方法としては本発明の効果を有する限り特に限定されず、イオン交換樹脂を使ったカラム式、バッチ式の処理や、イオン交換膜を使った処理、電気透析法、更にプロトン酸溶液中での酸洗浄、加熱処理による除去、中和析出などあらゆる方法を用いることができるが、特に、イオン交換法が有効である。イオン交換法を用いることにより、導電性ポリマー(A1)の酸性基と塩を形成した状態で存在する塩基性物質や残存モノマーや硫酸塩等の低分子量の酸性物質効果的に除去でき、純度の高い導電性ポリマー(A1)溶液を得ることができる。
【0129】
イオン交換法としては、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、電気透析法が挙げられる。
なお、イオン交換法で塩基性反応助剤等を除去する場合は、水性媒体に反応混合物を所望の固形分濃度、すなわち、固形分濃度が0.01〜10質量%の範囲になるように溶解させ、反応混合物溶液としてから塩基性反応助剤や副生成物を除去する。
水性媒体としては、水、水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
水溶性有機溶媒は、水に可溶な有機溶媒であり、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類などが挙げられる。このうち、溶解性の観点から、アルコール類、ピロリドン類を用いることが好ましい。
【0130】
イオン交換樹脂を用いたイオン交換法の場合、イオン交換樹脂に対する試料液、すなわち、導電性ポリマー(A)を含む溶液(以下、「導電性ポリマー(A)溶液」という)の量は、例えば固形分濃度5質量%の反応混合物溶液、すなわち、導電性ポリマー(A)溶液の場合、イオン交換樹脂に対して10倍の容積までが好ましく、5倍の容積までがより好ましい。
陽イオン交換樹脂としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIR−120B」などが挙げられる。陰イオン交換樹脂としては、例えばオルガノ株式会社製の「アンバーライトIRA410」などが挙げられる。
すなわち、イオン交換法を用いて導電性ポリマー(A)から副生成物を除去する場合、導電性ポリマー(A)溶液を、イオン交換樹脂を含むカラムと接触させる工程を含むことが好ましい。また、導電性ポリマー(A)溶液をカラムに通過させる場合、その速度は、10〜1000mL/分であることが好ましく、20〜500mL/分であることがより好ましい。また、接触時の温度は、15〜30℃であることが好ましい。
【0131】
電気透析法の場合、電気透析法のイオン交換膜としては本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、不純物の拡散による浸透をより抑制するために、一価イオン選択透過処理が施されたイオン交換膜、例えば、ポリスチレン構造を有するイオン交換膜であって、分画分子量が300以下、100以上のものを使用することが好ましい。このようなイオン交換膜としては、例えば株式会社アストム製の「ネオセプタCMK(カチオン交換膜、分画分子量300)」、「ネオセプタAMX(アニオン交換膜、分画分子量300)」などが好適である。
また、電気透析法に用いるイオン交換膜として、アニオン交換層、カチオン交換層を張り合わせた構造を持ったイオン交換膜であるバイポーラ膜を用いてもよい。このようなバイポーラ膜としては、例えば株式会社アストム製の「PB−1E/CMB」などが好適である。
電気透析における電流密度は限界電流密度以下であることが好ましい。バイポーラ膜での印加電圧は、10〜50Vが好ましく、25〜35Vがより好ましい。
すなわち、電気透析法を用いて導電性ポリマー(A)から副生成物を除去する場合、導電性ポリマー(A)溶液を、一価イオン選択透過処理が施されたイオン交換膜に通液する工程を含むことが好ましい。
【0132】
(塩基性化合物(E1))
前記塩基性化合物(E1)としては、分子内に二つ以上の第3級アミンを有し、かつ共役構造を有する塩基性化合物であれば、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、塩基自体の拡散の観点から、120℃以上の沸点を有するものが好ましい。また、塩基性化合物(E1)の分子内の、第3級アミンの数は、2〜6であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
前述の「分子内に二つ以上の第3級アミンを有する」とは、少なくとも一方の第3級アミンが、共役構造、すなわち環状構造に含まれていることを意味する。ここで、共役構造、すなわち、環状構造としては、例えば、炭素数6〜10の芳香環構造、炭素数5〜15の脂環構造が挙げられる。
前記塩基性化合物(E1)としては、具体的には、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノメチルピリジン、3,4−ビス(ジメチルアミノ)ピリジン等の第3級アミノ基を置換基として有するピリジン誘導体や、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、及び、それらの誘導体が挙げられる。このうち、水溶性の観点から、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノメチルピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)であることが好ましい。
また、これらの塩基性化合物(E1)を、1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0133】
前記塩基性化合物(E1)を用いると、導電性ポリマー(A1)中の酸性基へ効率良く作用することで、導電性ポリマー(A1)の安定性を高めることが可能になると考えられる。ここで、導電性ポリマー(A1)中の酸性基に効率よく作用するとは、高沸点、強塩基性により安定した中和が可能となることを意味する。その結果、導電性塗膜中で導電性ポリマー(A1)に含まれる酸性基が不安定化することによる酸性物質の発生が抑制され、導電性塗膜からレジスト層への酸性物質の移行が抑制される。
【0134】
(本発明の第4の実施形態である導電性組成物の製造方法)
本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A1)と、塩基性化合物(E1)とを含む。
導電性ポリマー(A1)に、前記塩基性化合物(E1)を含有させる方法としては本発明の効果を有する限り特に限定されず、任意の温度及び添加速度で導電性ポリマー(A1)の溶液に、前記塩基性化合物(E1)を添加することができる。通常は導電性ポリマー(A1)溶液を室温に保持し、攪拌しながら塩基性化合物(E1)を加えるのが好ましい。
なお、本発明において「室温」とは25℃のことである。
【0135】
本発明の第4の実施形態である導電性組成物中の、前記塩基性化合物(E1)の含有量は、詳しくは後述するが、導電性ポリマー(A1)溶液中の酸性基の安定化の観点から、通常は導電性ポリマー(A1)溶液中の導電性ポリマー(A1)1mol当り1〜100mol%が好ましく、50〜80mol%がより好ましく、60〜80mol%が特に好ましい。
前記塩基性化合物(E1)の含有量が、導電性ポリマー(A1)1molあたり、50mol%以上、又は60mol%以上であれば、前記導電性組成物を用いてレジスト上に導電性塗膜を形成した際に、加熱によって導電性塗膜から酸性物質がレジスト層に拡散するのを十分に抑制できる。一方、塩基性化合物の含有量が80mol%以下であれば、導電性塗膜としての性能、すなわち、導電性や、塗布性の性能を保持できる。
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物中の前記塩基性化合物(E1)の含有量は、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の含有量は、前記導電性組成物中の総質量に対して、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
【0136】
上述したように、レジスト層の上に導電性塗膜を形成した際に、モノマーや酸化剤の分解物である硫酸塩等の酸性物質が導電性塗膜からレジスト層側へ移行すると、レジストがポジ型の場合にはパターンの細り、膜減りや高感度側への感度変動が起こりやすかった。また、レジストがネガ型の場合には逆にパターン形状の変化や低感度側への感度変動が起こりやすかった。
また、上述の通り、副生成物を除去しても、導電性塗膜形成時の加熱によって前記導電性ポリマー(A)から脱離した酸性基が、レジスト側へ移行するという問題があった。
【0137】
しかし、本発明の第4の実施形態によれば、前記塩基性化合物(E1)を含む導電性組成物により、より効果的に、モノマーや硫酸塩と作用し、安定な塩を形成しやすくなる。
また、導電性ポリマー(A1)の酸性基を安定化でき、加熱による酸性基の脱離を抑制することができる。
よって、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、酸性物質の導電性塗膜からレジスト層側への移行が抑制され、レジスト層の膜減り等の影響を抑制できる。
【0138】
本発明の第4の実施形態である導電性組成物には、さらに界面活性剤を含有することができる。
前記界面活性剤は本発明の効果を有する限り特に限定されないが、レジスト層への塗布性や、成膜性、造膜製を向上させるものであれば特に限定はされないが、ノニオン系界面活性剤、水溶性高分子が用いられ、この中でも特開平2002−226721号公報記載の含窒素官能基及び末端疎水性基を有する界面活性剤(水溶性ポリマー(Z))が好ましく用いられる。
また、前記界面活性剤としては、前述の界面活性剤(B)を含むことがより好ましい。本発明の第4の実施形態である導電性組成物に、前述の界面活性剤(B)を含有させることにより、前記導電性組成物の濾過性が向上するため好ましい。
すなわち、本発明の第4の実施形態である導電性組成物の別の側面としては、前記導電性ポリマー(A1)と、前記塩基性化合物(E1)と、前記界面活性剤(B)とを含み、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることが好ましい。
【0139】
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物に含まれる界面活性剤(B)において、前記水溶性ポリマー(C)は、本発明の第3の実施形態において説明した水溶性ポリマー(C1)であってもよい。
すなわち、本発明の第4の実施形態である導電性組成物のその他の側面としては、前記導電性ポリマー(A)と、前記塩基性化合物(E1)と、前記界面活性剤(B)とを含み、前記界面活性剤(B)中の水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)であることが好ましい。
本発明の第4の実施形態である導電性組成物に、水溶性ポリマー(C1)を含む界面活性剤(B)を含有させることにより、前記導電性組成物の塗布性が向上し、導電体の表面あれを抑制することができるため好ましい。更に、前記界面活性剤の低分子量成分が導電体からレジスト層表面に移行して、レジスト層が膜減りする現象を抑制することができるため好ましい。
また、本発明の第4の実施形態において、前記界面活性剤(B)以外の、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する界面活性剤を、導電性組成物中に含む場合前記界面活性剤の含窒素官能基を有する主鎖部分のモノマーユニットは2〜100000が好ましく、2〜1000がより好ましく、2〜200が特に好ましい。ここで、含窒素官能基を有する水溶性部分のモノマーユニットがあまり大きすぎる場合は界面活性能が低下する傾向がある。含窒素官能基を有する水溶性部分の主鎖分子量と末端疎水性部分(アルキル基、アラルキル基、アリール基部分)の分子量の比(水溶性部分の分子量/疎水性部分の分子量)が0.3〜170程度になる界面活性剤が特に好ましく用いられる。この含窒素官能基及び末端疎水性基を有する界面活性剤は従来の界面活性剤とは異なり、含窒素官能基を有する界面活性剤主鎖の親水性部分と、末端の疎水性基によって界面活性能を有する。また、この界面活性剤は、酸、塩基を含まないうえ、加水分解により生じる副生物もないことから、下地基材や、基材に塗布されたレジストへの悪影響無く、また界面活性剤を含有させることなく塗布性を向上させることができる。
【0140】
本発明の第4の実施形態である導電性組成物に含まれる界面活性剤の使用量は水性媒体100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.01〜15質量部である。ここで、「水性媒体」とは、水、水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒のことを意味する。
すなわち、本発明の第4の実施形態において、前記界面活性剤(B)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。また、前記界面活性剤(B)の水溶性ポリマー(C)が、前述の水溶性ポリマー(C1)である場合、前記水溶性ポリマー(C1)を含む界面活性剤(B)の含有量は、本発明の第4の実施形態である導電性組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。
【0141】
本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、一般の塗料に用いられる方法によって基材、又はレジスト層の表面に塗工される。本発明の第4の実施形態である導電性組成物の塗工方法としては、例えばグラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法、スプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が挙げられるが、通常はスピンコーターを用いてシリコンウハー、石英マスク基板などに塗布されたレジスト上へ塗工する。
なお、塗工性を向上する目的で、前記導電性組成物にアルコール、界面活性剤などを含有させてもよい。
【0142】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態である導電性組成物によれば、前記導電性組成物より形成された導電体を加熱した際、酸性物質のレジスト層への移行が少ない導電体が得られる。
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物は、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法において、導電体からレジスト層への酸性物質の移行が抑制されるので、レジスト層の膜減り等の影響を抑制できる。
【0143】
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物の用途としては、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト表面に用いる導電体、コンデンサ、透明電極、及び半導体材料等が挙げられる。
このうち、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト表面に用いる導電性塗膜として用いる場合は、本発明の導電性組成物を各種塗工方法にてレジスト表面に塗工した後、荷電粒子線によるパターン形成を行うことで、導電性塗膜からのレジスト層への影響を抑制し、レジスト本来のパターン形状を得ることができる。
【0144】
本発明の第4の実施形態である導電性組成物のその他の側面としては、
前記導電性ポリマー(A1)と、分子内に二つ以上の窒素原子を有し、かつ共役構造を有する塩基性化合物(E1)と、水とを含み、
前記塩基性化合物(E1)が、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノメチルピリジン、3,4−ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A1)が0.01〜30質量%であり、
前記塩基性化合物(E1)が0.001〜10質量%であり、
前記水が、50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0145】
また、本発明の第4の実施形態である導電性組成物のその他の側面としては、
前記導電性ポリマー(A)と、分子内に二つ以上の窒素原子を有し、かつ共役構造を有する塩基性化合物(E1)と、界面活性剤(B)と、水とを含み、
前記塩基性化合物(E1)が、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノメチルピリジン、3,4−ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が0.01〜30質量%であり、
前記塩基性化合物(E1)が0.001〜10質量%であり、
前記界面活性剤(B)が0.01〜50質量%であり、
前記水が50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0146】
<第5の実施形態:導電性組成物>
本発明の第5の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)とを含み、前記塩基性化合物(E2)が、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする。
また、前記導電性組成物が、界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
また、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることが好ましい。
また、前記導電性ポリマー(A)が、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有することが好ましい。
【化19】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
また、前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマーであることが好ましい。
また、第5の実施形態である導電性組成物のその他の側面としては、導電性ポリマー(A1)と、塩基性化合物(E2)とを含む導電性組成物であって、前記塩基性化合物(E2)が、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0147】
また、本発明の第5の実施形態は、以下の側面を有する。
[1]スルホン酸基、及びカルボキシ基から成る群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマー(A)と、第4級アンモニウム塩からなる塩基性化合物(E2)とを含み、前記塩基性化合物(E2)の窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、導電性組成物。
[2]水溶性ポリマー(ただし、前記導電性ポリマー(A)を除く。)をさらに含む、[1]に記載の導電性組成物。
[3]前記導電性ポリマー(A)は下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[1]又は[2]に記載の導電性組成物。
【0148】
【化20】
【0149】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうちの少なくとも1つは酸性基である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
【0150】
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性組成物より形成された、導電性塗膜。
【0151】
(本発明の第5の実施形態における導電性ポリマー(A))
本発明の第5の実施形態の導電性組成物における導電性ポリマー(A)としては、前述の第1の実施形態において説明した導電性ポリマー(A)を用いることができ、好ましい例もまた同様である。
【0152】
(塩基性化合物(E2))
塩基性化合物(E2)は、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である第4級アンモニウム塩からなる。本発明の第5の実施形態である導電性組成物の塗布性が向上する観点から、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つは、炭素数4以上のアルキル基であることが好ましい。また、前記置換基の炭素数の上限については、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、水溶性の観点から、6以下であることが好ましい。
塩基性化合物(E2)としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0153】
【化21】
【0154】
式(6)中、R34〜R37は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基からなる群より選ばれ、R34〜R37のうち少なくとも1つは炭素数3以上のアルキル基であり、Aは、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子(−F、−Cl、−Br、またはI)からなる群より選ばれる。
【0155】
塩基性化合物(E2)としては、具体的に水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、水溶性が向上する観点で、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウムが好ましい。
これら塩基性化合物(E2)は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0156】
また、塩基性化合物(E2)の含有量は、本発明の第5の実施形態である導電性組成物の塗布性がより向上する観点から、導電性ポリマー(A)を構成するモノマーユニットのうち、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有するモノマーユニット1molに対して、モル比で、1:0.1〜1が好ましく、1:0.1〜0.8がより好ましい。さらに、導電性塗膜としての性能の保持性に優れ、導電性ポリマー(A1)中の酸性基をより安定にできる観点から、1:0.6〜0.7であることが特に好ましい。
すなわち、本発明の第5の実施形態である導電性組成物中の、前記塩基性化合物(E2)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
【0157】
本発明の第5の実施形態である導電性組成物は、さらに水溶性ポリマー(ただし、前記導電性ポリマー(A)を除く。)を含んでいてもよい。
前記水溶性ポリマーは、導電性組成物にレジスト層への塗布性、成膜性、造膜性を付与する成分であり、界面活性剤の役割を果たす。
【0158】
水溶性ポリマー、すなわち、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤などが挙げられ、具体的には特開平2002−226721号公報に記載の含窒素官能基および末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(Z)が好ましい。
この水溶性ポリマー(Z)は従来の界面活性剤とは異なり、含窒素官能基を有する主鎖部分(親水性部分)と、末端の疎水性基部分とによって界面活性能を有し、塗布性の向上効果が高い。よって、他の界面活性剤を併用しなくても、優れた塗布性を導電性組成物に付与できる。しかも、この水溶性ポリマー(Z)は酸や塩基を含まないうえ、加水分解により副生成物が生じにくいことから、レジスト層等への悪影響が少ない。
【0159】
末端疎水性基としては、例えば前述の界面活性剤(B)において説明したものと同じ例が挙げられ、好ましい例もまた同様である。
【0160】
また、水溶性ポリマーへの末端疎水性基の導入方法としては本発明の効果を有する限り特に制限されないが、通常、ビニル重合時の連鎖移動剤を選択することにより導入するのが簡便で好ましい。この場合、連鎖移動剤としては炭素数5〜100のアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基等の疎水性基を含む基を、水溶性ポリマーの末端に導入させることができる化合物であれば特に限定はされない。例えば、末端疎水性基としてアルキルチオ基、アラルキルチオ基、またはアリールチオ基を有する水溶性ポリマーを得る場合は、これらの末端疎水性基に対応する疎水性基を有する連鎖移動剤、具体的にはチオール、ジスルフィド、チオエーテルなどを用いてビニル重合することが好ましい。具体的には、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等の連鎖移動剤を用いることが好ましい。
【0161】
水溶性ポリマー(Z)の主鎖構造(主鎖部分)としては、含窒素官能基を有するビニルモノマーのホモポリマー、または前記ビニルモノマーとその他のビニルモノマーとのコポリマーであり、かつ水溶性であれば特に限定されない。
含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミドおよびその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマーが挙げられ、その中でもアミド基を持つものが好ましい。具体的には、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニル−N−メチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。これらの中でも、アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタムが特に好ましい。
他のビニルモノマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーを共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、アクリル酸、酢酸ビニル、長鎖α−オレフィンなどが挙げられる。
【0162】
また、前記水溶性ポリマー(Z)の主鎖部分は水溶性であり、含窒素官能基を有する。主鎖部分の単位数(重合度)は、1分子中に2〜1000が好ましく、3〜1000がより好ましく、5〜10が特に好ましい。含窒素官能基を有する主鎖部分の単位数が大きすぎる場合は、界面活性能が低下する傾向がある。
水溶性ポリマー(Z)中の主鎖部分と、末端疎水性基部分(例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基などの部分)との分子量比(主鎖部分の質量平均分子量/末端疎水性基部分の質量平均分子量)は、0.3〜170であることが好ましい。
【0163】
本発明の第5の実施形態において、導電性組成物中の水溶性ポリマー、すなわち界面活性剤の含有量は、導電性ポリマー(A)の溶液または分散液100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.01〜15質量部がより好ましい。
界面活性剤の含有量が0.01質量部以上であれば、界面活性剤としての効果(すなわち、塗布性の向上効果など)が十分に得られる。
また、20質量部を超えても塗布性の向上効果は頭打ちとなるため、コストを高めるだけである。
【0164】
また、本発明の第5の実施形態である導電性組成物は、界面活性剤として、前述の界面活性剤(B)を含むことがより好ましい。本発明の第5の実施形態である導電性組成物に、前述の界面活性剤(B)を含有させることにより、前記導電性組成物の濾過性が向上するため好ましい。
すなわち、本発明の第5の実施形態である導電性組成物のその他の態様としては、前記導電性ポリマー(A)と、前記塩基性化合物(E2)と、前記界面活性剤(B)とを含み、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であり、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水成形を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明の第5の実施形態において、導電性組成物中の前記界面活性剤(B)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。
【0165】
また、本発明の第5の実施形態である導電性組成物に含まれる界面活性剤(B)において、前記水溶性ポリマー(C)は、本発明の第3の実施形態において説明した水溶性ポリマー(C1)であってもよい。
すなわち、本発明の第5の実施形態である導電性組成物のその他の態様としては、前記導電性ポリマー(A)と、前記塩基性化合物(E2)と、前記界面活性剤(B)とを含み、記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であり、前記界面活性剤(B)中の水溶性ポリマー(C)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1)であることが好ましい。
本発明の第5の実施形態である導電性組成物に、水溶性ポリマー(C1)を含む界面活性剤(B)を含有させることにより、前記導電性組成物の塗布性が向上し、導電性塗膜の表面あれを抑制することができるため好ましい。更に、前記界面活性剤の低分子量成分が導電体からレジスト層表面に移行して、レジスト層が膜減りする現象を抑制することができるため好ましい。
本発明の第5の実施形態において、界面活性剤(B)が水溶性ポリマー(C1)を含む場合、導電性組成物中の界面活性剤(B)の含有量は、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。
【0166】
(他の成分)
本発明の第5の実施形態の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、塗布性を向上させる目的でアルコール、前述の界面活性剤以外の界面活性剤を含んでいてもよい。
アルコールとしては、水に可溶なアルコールが好ましく、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノールなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば高級アルコール、アルキルグリコシド、ポリアルキルグリコールなどが挙げられる。具体的には、炭素数8〜20のアルコール等が挙げられる。
【0167】
(本発明の第5の実施形態である導電性組成物の製造方法)
第5の実施形態の導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)と、必要に応じて界面活性剤とを混合する工程を含むことが好ましい。導電性ポリマー(A)としては、前述の第4の実施形態において説明した、精製後の導電性ポリマー(A1)を用いることが好ましい。
上述の第4の実施形態の導電性ポリマー(A1)の製造方法において説明したように、精製後の導電性ポリマー(A1)は、水などの水性媒体に分散または溶解した状態(以下、この状態の導電性ポリマー(A1)を「導電性ポリマー(A1)溶液」ともいう。)で得られる。よって、本発明の第5の実施啓太である導電性組成物の製造方法の1つの側面としては、導電性ポリマー(A1)溶液に塩基性化合物(E2)と、必要に応じて界面活性剤(例えば、前述の界面活性剤(B))とを添加する工程を含む製造方法により、前記導電性組成物を製造することができる。
導電性ポリマー(A)溶液に塩基性化合物(E2)を添加する際の条件としては特に制限されず、任意の添加温度および添加速度で塩基性化合物(E2)を導電性ポリマー溶液に添加すればよいが、導電性ポリマー(A)溶液を室温に保持し、攪拌しながら塩基性化合物(E2)を添加することが好ましい。
ここで、本発明において「室温」とは25℃のことである。
【0168】
なお、導電性ポリマー(A)が固体状である場合には、固体状の導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)と、水性媒体と、必要に応じて界面活性剤(例えば、界面活性剤(B))とを混合して導電性組成物を製造する。このとき、予め固体状の導電性ポリマー(A)と水性媒体とを混合して導電性ポリマー溶液を調製しておき、得られた導電性ポリマー溶液に塩基性化合物(E2)と必要に応じて界面活性剤とを添加することが好ましい。すなわち、固体状の導電性ポリマー(A)と水性媒体とを混合して導電性ポリマー(A)溶液を調整する工程と、前記工程で得られた導電性ポリマー(A)溶液に塩基性化合物(E2)と、必要に応じて界面活性剤とを添加する工程とを含むことが好ましい。
水性媒体としては、導電性ポリマー(A)の精製方法の説明において先に例示した水、水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0169】
(作用効果)
本発明の第5の実施形態の導電性組成物は、導電性ポリマー(A)に加えて前記塩基性化合物(E2)を含む。前記塩基性化合物(E2)は、より効果的に残存モノマーや硫酸イオンと作用し、安定な塩を形成できる。加えて、塩基性化合物(E2)は、導電性ポリマー(A)の酸性基を安定化することもできる(すなわち、酸性基と塩基性化合物とで安定な塩を形成できる)ので、加熱による酸性基の脱離を抑制することができる。
なお、特許文献2〜6に記載に記載されている塩基性化合物であっても、多少は導電性ポリマー(A)の酸性基を安定化することができるが、これらの塩基性化合物では、その分子量や塩基強度等の物性上、酸性基を十分に安定化することはできない。
【0170】
このように、本発明の第5の実施形態の導電性組成物であれば、酸性物質(残存モノマーや硫酸イオン、加熱により導電性ポリマー(A)から脱離した酸性基など)がレジスト層へ移行しにくい導電性塗膜を形成できる。
よって、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、酸性物質のレジスト層側への移行が抑制され、レジスト層の膜減り等の影響を抑制できる。従って、本発明の第5の実施形態の導電性組成物は、近年の半導体デバイスの微細化に伴い要求される性能を十分に満足できる。
【0171】
また、イオン交換法などにより精製した導電性ポリマー(A)を用いれば、酸性物質(残存モノマー、硫酸イオン)を除去できるので、これらがレジスト層へ移行するのをより効果的に抑制できる。しかも、導電性ポリマー(A)を精製することで塩基性物質(塩基性反応助剤、アンモニウムイオン)も除去できるので、塩基性物質がレジスト層へ移行するのも抑制できる。
【0172】
また、本発明の第5の実施形態の導電性組成物は、塩基性化合物(E2)を含んでいる。塩基性化合物(E2)は親水性部分と疎水性部分の両方を持つので、水溶性ポリマー、すなわち前述の界面活性剤(B)と同様に、界面活性能も有している。よって、本発明の第5の導電性組成物は界面活性剤を含んでいなくても塗布性に優れるが、界面活性剤をさらに含めば塗布性がより向上する。
ところで、本発明の第5の実施形態である導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の割合が少なくなるほど、必然的に加熱により脱離する可能性のある酸性基の割合が減るので、レジスト層へ移行する酸性基の量も減り、レジスト層の膜減り等の影響が小さくなる傾向にある。
前記導電性組成物が水溶性ポリマー、すなわち、界面活性剤を含んでいれば、導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の割合が相対的に減ることとなるため、レジスト層の膜減り等の影響をより抑制できる。
【0173】
本発明の第5の実施形態である導電性組成物の1つの側面としては、
前記導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)と、水とを含む導電性組成物であって、前記塩基性化合物(E2)が、窒素原子に結合する4つの基のうちの少なくとも1つが、炭素数3以上のアルキル基である、第4級アンモニウム塩であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が0.01〜30質量%であり、
前記塩基性化合物(E2)が0.001〜10質量%であり、
前記水が、50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0174】
また、本発明の第5の実施形態である導電性組成物のその他の態様としては、
前記導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E2)と、水とを含む導電性組成物であって、前記導電性ポリマー(A)が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有するモノマーユニットを含み、
前記塩基性化合物(E2)が、に水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、及び水酸化テトラヘキシルアンモニウムからなる群より選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記モノマーユニットに対する前記塩基性化合物(E2)の割合が、モル比で、1:0.1〜1:1である、導電性組成物が挙げられる。
【0175】
<本発明の第6の実施形態:導電性組成物>
本発明の第6の実施形態である導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E3)とを含み、前記導電性ポリマー(A)が、酸性基を有するモノマーユニットを含み、前記塩基性化合物(E3)が、分子内に塩基性基と二つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する化合物であり、前記導電性組成物中の前記塩基性化合物(E3)の含有量が、前記導電性ポリマー(A)の酸性基を有するモノマーユニット1molに対して、0.6〜0.8molであることを特徴とする。
また、前記導電性組成物は、界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
また、前記界面活性剤(B)が、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する水溶性ポリマー(C)を含み、前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して、0.001質量%以下であることが好ましい。
また、前記導電性ポリマー(A)の酸性基を有するモノマーユニットが、下記一般式(1)で表されるモノマーユニットであることが好ましい。
【化22】

(式(1)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表す。また、R〜Rのうちの少なくとも1つは、酸性基、又はその塩を表す。)
また、前記酸性基が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基であることが好ましい。
【0176】
すなわち、本発明の第6の実施形態は以下の側面を有する。
[1]スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する導電性ポリマー(A)と、同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基を有し、かつ融点が30℃以上である塩基性化合物(E3)とを含み、前記塩基性化合物(E3)の含有量が、前記導電性ポリマー(A)を構成する単位のうち、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有する単位1molに対して、0.6〜0.8mol当量である、導電性組成物。
[2]水溶性ポリマー(ただし、前記導電性ポリマー(A)を除く。)をさらに含む、[1]に記載の導電性組成物。
[3]前記導電性ポリマー(A)は下記一般式(1)で表されるモノマーユニットを有する、[1]又は[2]に記載の導電性組成物。
【0177】
【化23】
【0178】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数1〜24の直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子からなる群より選ばれ、R〜Rのうちの少なくとも1つは酸性基である。ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。
【0179】
[4][1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性組成物より形成された、導電性塗膜。
【0180】
本発明の第6の実施形態の導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と塩基性化合物(E3)とを含む。また、本実施形態の導電性組成物は界面活性剤(B)を含むことが好ましい。
第6の実施形態の導電性組成物に含まれる導電性ポリマー(A)、および界面活性剤(B)は、上述した第5の実施形態の導電性組成物に含まれる導電性ポリマー(A)、および界面活性剤(B)と同じである。よって、ここでの説明は省略する。
【0181】
(塩基性化合物(E3))
塩基性化合物(E3)は、同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する化合物である。
同一分子内に塩基性基のみを有する化合物の場合は、導電性ポリマー(A)の酸性基と効率よく塩を形成することが困難となり、前記導電性ポリマー(A)を加熱することにより導電性ポリマー(A)から酸性基が脱離しやすく、脱離した酸性基がレジスト層へ移行しやすくなる。一方、同一分子内にヒドロキシ基のみを有する化合物の場合は、導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成できない。また、同一分子内中のヒドロキシ基の数が1つであったり、融点が30℃未満の化合物の場合、例えば、導電性組成物中の流動性が悪くなる等の理由で、酸性基と効率よく塩を形成することができず、酸性基のレジスト層への移行の抑制効果が十分に得られない。
【0182】
塩基性化合物(E3)は、酸性基のレジスト層への移行抑制能、入手性および製造のしやすさを考慮すると、ヒドロキシ基の数は、3つ以上が好ましい。また、塩基性化合物(E3)中のヒドロキシ基の数の上限は、入手性の観点から、8以下であることが好ましい。すなわち、塩基性化合物(E3)中のヒドロキシ基の数は、2〜8であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。
塩基性化合物(E3)の融点は、酸性基のレジスト層への移行抑制能を考慮すると、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。
なお、塩基性化合物(E3)の融点が高すぎると、例えば、溶媒への溶解性が低下する等の理由で、酸性基と効率よく塩を形成することが困難となり、酸性基のレジスト層への移行の抑制効果が十分に得られにくくなる傾向にある。よって、塩基性化合物(E3)の融点は、酸性基のレジスト層への移行抑制能や溶媒への溶解性を考慮すると、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。すなわち、塩基性化合物(E3)の融点は、30〜300℃であることが好ましく、40〜250℃であることがより好ましく、50〜200℃であることが更に好ましい。
【0183】
塩基性基としては、例えば、アレニウス塩基、ブレンステッド塩基、ルイス塩基等で定義される塩基性基が挙げられる。具体的には、アンモニア等が挙げられる。
ヒドロキシ基は、−OHの状態であってもよいし、保護基で保護された状態であってもよい。保護基としては、例えば、アセチル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のシリル基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基等のアセタール型保護基;ベンゾイル基;アルコキシド基などが挙げられる。
【0184】
このような塩基性化合物(E3)としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。これらの中でも、水溶性や塩基性に優れる観点で、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが好ましい。
また、これらの化合物はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0185】
本発明の第6の実施形態である導電性組成物中の塩基性化合物(E3)の含有量は、導電性ポリマー(A)を構成するモノマーユニットのうち、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの酸性基を有するモノマーユニット1molに対して、0.6〜0.8molである。すなわち、前記モノマーユニットに対する塩基性化合物(E3)の割合が、モル比で、1:0.6〜1:0.8の範囲内であれば、導電性ポリマー(A)中の酸性基を安定化できる。特に、導電性ポリマー(A)中の酸性基の安定化に優れる観点から、塩基性化合物(E3)の含有量は、前記モノマーユニット1molに対して、0.65〜0.75mol、すなわち、モル比で、1:0.65〜1:0.75であることが好ましい。
すなわち、本発明の第6の実施形態である導電性組成物中の塩基性化合物(E3)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
また、本発明の第6の実施形態である導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
【0186】
(他の成分)
第6の実施形態の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、塗布性を向上させる目的でアルコール、前述の界面活性剤(B)以外の界面活性剤を含んでいてもよい。これらアルコールや界面活性剤は、上述した第一の実施形態の導電性組成物に含まれる他の成分と同じである。
【0187】
(本発明の第6の実施形態である導電性組成物の製造方法)
第6の実施形態の導電性組成物は、上述した第5の実施形態の導電性組成物の製造方法において、塩基性化合物(E2)の代わりに塩基性化合物(E3)を用いることで得られる。
【0188】
(作用効果)
本発明の第6の実施形態の導電性組成物は、導電性ポリマー(A)に加えて前記塩基性化合物(E3)を含む。前記塩基性化合物(E3)は、より効果的に残存モノマーや硫酸イオンと作用し、安定な塩を形成できる。加えて、塩基性化合物(E3)は、導電性ポリマー(A)の酸性基を安定化することもできる(すなわち、酸性基と塩基性化合物とで安定な塩を形成できる)ので、加熱による酸性基の脱離を抑制することができる。
このように、本発明の第6の実施形態の導電性組成物であれば、酸性物質(残存モノマーや硫酸イオン、加熱により導電性ポリマー(A)から脱離した酸性基など)がレジスト層へ移行しにくい導電性塗膜を形成できる。
よって、特に化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法においては、酸性物質のレジスト層側への移行が抑制され、レジスト層の膜減り等の影響を抑制できる。従って、本発明の第6の実施形態の導電性組成物は、近年の半導体デバイスの微細化に伴い要求される性能を十分に満足できる。
【0189】
また、イオン交換法などにより精製した導電性ポリマー(A)を用いれば、酸性物質(残存モノマー、硫酸イオン)を除去できるので、これらがレジスト層へ移行するのをより効果的に抑制できる。しかも、導電性ポリマー(A)を精製することで塩基性物質(塩基性反応助剤、アンモニウムイオン)も除去できるので、塩基性物質がレジスト層へ移行するのも抑制できる。
また、界面活性剤(B)をさらに含めば塗布性がより向上するとともに、導電性組成物中の導電性ポリマー(A)の割合が相対的に減ることとなるため、レジスト層の膜減り等の影響をより抑制できる。
【0190】
(用途)
本発明の第5、第6の実施形態である導電性組成物の用途としては、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層表面に用いる導電性塗膜、コンデンサ、透明電極、半導体材料などが挙げられる。
これらのうち、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層表面に用いる導電性塗膜として用いる場合は、本発明の第5、または第6の実施形態である導電性組成物を各種塗布方法にてレジスト層表面に塗布した後、荷電粒子線によるパターン形成を行うことで、導電性組成物からの酸性物質のレジスト層への移行を抑制し、レジスト層本来のパターン形状を得ることができる。
【0191】
(導電性塗膜)
本発明の第5、第6の実施形態である導電性組成物は、シリコンウエハー、石英マスク基板などに形成されたレジスト層上に、前記導電性組成物を塗布し、乾燥することにより導電性塗膜を形成できる。
塗布方法としては、例えばグラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の塗布方法;スプレーコーティング等の噴霧方法;ディップ等の浸漬方法などが挙げられる。これらの中でも、スピンコーターが適している。
【0192】
(作用効果)
以上説明した本発明の第5、又は第6の実施形態である導電性組成物より形成された導電性塗膜は、酸性物質のレジスト層への移行を低減又は抑制できる。よって、レジスト層の膜減り等を抑制できる。
【0193】
本発明の第6の実施形態である導電性組成物の1つの側面としては、
前記導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E3)と、水とを含む導電性組成物であって、
前記導電性ポリマー(A)が、酸性基を有するモノマーユニットを含み、
前記塩基性化合物(E3)が、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、及びN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記導電性組成物中の前記塩基性化合物(E3)の含有量が、前記導電性ポリマー(A)の酸性置換基を有するモノマーユニット1molに対して、0.6〜0.8molであり、
前記導電性組成物の総質量に対する、前記導電性ポリマー(A)の割合が、0.01〜30質量%である導電性組成物が挙げられる。
【0194】
また、本発明の第6の実施形態である導電性組成物のその他の側面としては、
前記導電性ポリマー(A)と、塩基性化合物(E3)と、界面活性剤(B)と、水とを含む導電性組成物であって、
前記導電性ポリマー(A)が、酸性基を有するモノマーユニットを含み、
前記塩基性化合物(E3)が、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、及びN−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であり、
前記界面活性剤(B)が含窒素官能基及び末端疎水成形を有する水溶性ポリマー(C)を含み、
前記導電性組成物中の、オクタノール/水分配係数(Log Pow)が4以上である化合物(D1)の含有量が、前記導電性組成物の総質量に対して0.001質量%以下であり、
前記導電性組成物の総質量に対して、
前記導電性ポリマー(A)が0.01〜30質量%であり、
前記塩基性化合物(E3)が0.001〜10質量%であり、
前記界面活性剤(B)が0.01〜50質量%であり、
前記水が50〜99.5質量%であり、
前記各成分の合計量が100質量%を超えない導電性組成物が挙げられる。
【0195】
<本発明の第7の実施形態である積層体>
本発明の第7の実施形態である積層体は、基材と、導電性塗膜と、電子線用レジスト膜とを有する積層体であって、前記基材の上に前記電子線用レジスト層が積層され、前記電子線用レジスト膜の上に前記導電性塗膜が積層され、前記積層体の表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であり、かつ前記導電性塗膜が、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物により形成されていることを特徴とする。
図2は、本発明の第7の実施形態である積層体の一例を示す断面図である。この例の積層体20は、基材11の上に電子線用レジスト層21が積層され、電子線用レジスト層の上に導電性塗膜12が積層された構成となっている。
なお、図2において、説明の便宜上、寸法比は実際のものと異なったものである。
【0196】
基材としては、前述の第1の実施形態において説明したものと同様のものを用いることができる。また、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物としては、前述の第2〜第6の実施形態において説明した導電性組成物を用いることが好ましい。
【0197】
前記積層体の導電性塗膜の、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)、及び光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)も、前述の第1の実施形態において説明した測定方法と同様の方法が挙げられる。また、前記Ra1値とRa2値の好ましい数値範囲もまた、前述の第1の実施形態において説明したものと同様である。
【0198】
(本発明の第7の実施形態である積層体の製造方法)
本発明の第7の実施形態である積層体の製造方法としては、基材の少なくとも一方の面に、電子線用レジストを塗布乾燥して電子線用レジスト膜を形成する工程(1)、前記電子線用レジスト膜の上に、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物を塗布、乾燥して、導電性塗膜を形成する工程(2)とを含むことが好ましい。
【0199】
(工程(1))
基材の少なくとも一方の面に電子線用レジストを塗布する方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。このうち、製造のしやすさの観点から、スピンコート法であることが好ましい。
また、前記塗布方法にて基材表面に電子線用レジストを塗布したのち、レジスト毎の推奨温度で、加熱処理を行うことによって、電子線用レジスト膜を形成することができる。
前記電子線用レジストとしては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、例えば、化学増幅型レジストであるフジフィルムアーチ社FEP171レジスト等が挙げられる。
【0200】
(工程(2))
前記工程(1)によって得られた電子線用レジスト膜の上に、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物を塗布、乾燥して、導電性塗膜を形成することにより、本発明の第7の実施形態である積層体を形成することができる。
電子線用レジスト膜の上に導電性組成物を塗布する方法としては、前述の塗布方法と同じ方法が挙げられ、好ましい例もまた同様である。
また、導電性組成物を塗布して導電性塗膜を形成したのち、25℃で、10〜60分間放置する、あるいは加熱処理を行うことによって、積層体を形成する。
加熱処理を施す場合、60〜90℃で、1〜5分間よりすることが好ましく、70〜80℃で、1〜3分間処理することがより好ましい。
また、工程(2)において形成された導電性塗膜の膜厚は、の観点から、1〜100nmであることが好ましく、3〜60nmであることがより好ましく、5〜30nmであることが特に好ましい。
【0201】
本発明の第7の実施形態である積層体は、表面抵抗値が5×1010Ω/□以下であり、前記導電性塗膜の触針式段差計にて測定した表面平滑性(Ra1値)が0.7nm以下であり、前記導電性塗膜の光学顕微鏡により測定した表面平滑性(Ra2値)が、0.35nm以下であるため、半導体デバイスの次世代プロセスに適用することができる。
【実施例】
【0202】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。また、下記の実施例において%は質量%を意味する。
【0203】
まず、本発明の第1の実施形態の実施例について説明する。
<分子量評価>
水溶性ポリマー(C)、及び水溶性ポリマー(C1)の0.1wt%水溶液を、0.45μmのメンブレンフィルターにて濾過し、サンプル調整を行なった。前記サンプルのGPC測定を以下の条件で行い、水溶性ポリマー(C)、及び水溶性ポリマー(C1)の質量平均分子量について評価を行った。
測定機:TOSOH GPC−8020(東ソー社製)
溶離液:0.2M―NaNO−DIW/アセトニトリル=80/20(v/v)
カラム温度:30℃
検量線:EasiVialTMポリエチレングリコール/オキシド(PolymerLab社製)を用いて作成
【0204】
<導電性評価:導電体>
導電性塗膜の表面抵抗値[Ω]を、ハイレスタMCP−HT260(三菱化学社製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて測定した。
【0205】
<導電性評価:積層体>
化学増幅型電子線レジスト(例えば、市販されている富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製ポジ型レジストFEP−171等が挙げられる。以下、「レジスト」と略す。)を4cm×4cmのガラス板に、スピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて130℃、2分間加熱処理を行い、膜厚約200nmの塗膜を形成し、導電性組成物を、スピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて80℃、2分間加熱処理を行い、膜厚約20nmの導電性塗膜を形成して積層体を得た。積層体の表面抵抗値[Ω]を、ハイレスタMCP−HT260(三菱化学社製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて測定した。
【0206】
<表面平滑性評価>
導電性組成物を、4インチシリコンウエハーに、スピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて80℃、2分間加熱処理を行い、膜厚約20nmの塗膜を形成して導電体を得た。
(Ra1値)
得られた導電体の表面平滑性Ra1値[nm]を、触針式段差計(Stylus profiler P−16+,KLA−Tencor社製)を用いて測定した。
Stylus:2um R60°
針圧:0.03mg
走査範囲:500um
走査速度:2um/s
(Ra2値)
得られた導電体の表面平滑性Ra2値[nm]を、光学顕微鏡(オリンパスOLS3500)を用いて測定した。
測定モード:ダイナミック
走査範囲:1000nm
走査速度:0.3Hz
Iゲイン:1000
感知レバー:オリンパスOMCL−AC240TS−C2
【0207】
<ガラス転移温度測定>
水溶性ポリマー(C)、又は水溶性ポリマー(C1)の粉末5mgを用い、DSC測定を以下の条件で行い、水溶性ポリマー(C)、又は水溶性ポリマー(C1)のガラス転移温度について評価を行なった。
測定機:Thermoplus EV0 DSC 8230(Rigaku社製)
雰囲気:窒素
流量:50mL/min
昇温速度:150℃(10℃/min)、20℃(50℃/min)、150℃(10℃/min)
リファレンス:アルミナ
【0208】
<Log Powが4以上である化合物(D1)の含有量>
水溶性ポリマー(C)、又は水溶性ポリマー(C1)をアセトンで希釈し、以下の条件でガスクロマトグラフの測定を行った。観測されたピークの構造を特定し、CambridgeSoft社製、ChemDraw Pro 12.0にてLog Powの計算値を求めた。Log Powが4以上である化合物(D1)に関しては、ガスクロマトグラフによる内部標準法用いてn−ドデシルメルカプタン換算の含有量を求めた。
測定条件:
装置: アジレントテクノロジーズ社製 6890N型
検出器: 5973 Mass Selective Detector
カラム:FRONTIER LAB社製 UA−5(30m×0.25mm×0.25μm)
GC昇温条件:40℃(1min Hold) 5℃/min to 300℃(5minHold)
GC注入口温度:160 [℃]
キャリアガス:He 流量1 [ml/min]
スプリット比:20/1
MSイオン源温度:230℃
MS四重極温度:150℃
イオン化方法:電子イオン化法(イオン化電圧:70V)
【0209】
<膜減り試験による評価>
(レジストの膜減り量)
レジストの膜減り量を以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:4インチシリコンウエハー(基板)上に化学増幅型レジスト0.4umを2000rpm/60秒間で回転塗布した後、130℃で90秒間プリベークを行って、溶剤を除去した。
(2)レジスト膜厚測定:基板上に形成されたレジストを一部剥離し、基板面を基準位置として、触針式段差計(Stylus profiler P−16+, KLA−Tencor Corporation製)を用いて初期のレジスト膜厚A(nm)を測定した。
(3)導電性塗膜形成:基板上に塗布されたレジスト表面に、本発明の第2〜第6の実施形態である導電性組成物2mlを滴下し、レジスト表面全面を覆うように配置した後、スピンコーターにて2000rpm/60秒間で回転塗布して膜厚30nmの導電性塗膜を作成した。
(4)ベーク処理:導電性塗膜とレジストが積層された基板を、空気雰囲気下、ホットプレ−トにて、120℃、20分間加熱し、その後基板を空気雰囲気下、常温(25℃)で90秒間静置した。
(5)水洗:導電性塗膜を、20mlの水で洗い流した後、スピンコーターにて2000rpm/60秒間で回転させ、レジスト表面の水を除去した。
(6)現像:2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液よりなる現像液20mlをレジスト表面に滴下した。60秒間静置した後、2000rpmで回転させて現像液を除去し、その後60秒間回転を維持して乾燥させた。
(7)前記(2)でレジストを一部剥離した部分から5mm以内の部分のレジストを一部剥離した後、触針式段差計を用い現像後のレジスト膜厚B(nm)を測定した。
(8)上記Aの値からBを差し引いてレジストの膜減り量C(C=A−B)を算出した。
【0210】
(基準膜減り量)
レジストは、レジスト膜形成後の保管期間によって、個々のレジストに特有の膜減り量(以下、基準膜減り量という。)D(nm)が存在する。導電性塗膜に起因しないこの膜減り量Dは、予め以下の方法で測定した。
(1)レジスト膜形成:4インチシリコンウエハー(基板)上に化学増幅型レジスト0.4umを2000rpm/60秒間で回転塗布した後、130℃で90秒間プリベークを行って、溶剤を除去した。
(2)レジスト膜厚測定:基板上に形成されたレジストの一部剥離し、基板面を基準位置として、触針式段差計を用いて初期のレジスト膜厚E(nm)を測定した。
(3)ベーク処理:レジストが積層された基板を、空気雰囲気下、ホットプレ−トにて、120℃、20分間加熱し、その後基板を空気雰囲気下、常温(25℃)で90秒間静置した。
(4)現像:2.38質量%TMAH水溶液からなる現像液20mlをレジスト表面に滴下した。60秒間静置した後、2000rpmで回転させて現像液を除去し、その後60秒間回転を維持して乾燥させた。
(5)前記(2)でレジストを一部剥離した部分から5mm以内の部分のレジストを一部剥離した後、触針式段差計を用い現像後のレジスト膜厚F(nm)を測定した。
(6)上記Fの値からEを差し引いてレジストの基準膜減り量D(D=F−E)を算出した。
【0211】
<結晶性不純物の評価>
積層体の表面を工業用顕微鏡(NikonECLIPSE LV100)により、倍率1000倍で表面を観察した。
【0212】
<製造例1A:導電性ポリマー溶液(A−1)の製造>
3−アミノアニソール−4−スルホン酸1molを、4mol/L濃度のピリジン溶液(溶媒:水/アセトニトリル=3/7)300mLに0℃で溶解し、モノマー溶液を得た。別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを、水/アセトニトリル=3/7の溶液1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。ついで、酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌して、導電性ポリマーを得た。その後、得られた導電性ポリマーを含む反応混合物を遠心濾過器にて濾別した。さらに、メタノールにて洗浄した後乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A−1)を185g得た。
【0213】
<製造例2A:導電性ポリマー溶液(A1−1)の製造>
製造例1Aで得られた導電性ポリマー(A−1)20gを、純水940gと2−プロパノール40gの混合溶媒に溶解させ、固形分濃度2質量%の導電性ポリマー溶液(A−1−1)を1000g得た。
超純水により洗浄した陽イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIR−120B」)500mLをカラムに充填した。
このカラムに、導電性ポリマー溶液(A−1−1)1000gを、50mL/分(SV=6)の速度で通過させて、塩基性物質等が除去された導電性ポリマー溶液(A1−1−1)を900g得た。
次に、超純水により洗浄した陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製、「アンバーライトIRA410」)500mLをカラムに充填した。
このカラムに、導電性ポリマー溶液(A1−1−1)900gを、50mL/分(SV=6)の速度で通過させて、塩基性物質等が除去された導電性ポリマー溶液(A1−1)を800g得た。
この導電性ポリマー溶液(A1−1)についてイオンクロマトグラフィにより組成分析を行なったところ、残存モノマーは80%、硫酸イオンは99%、塩基性物質は99%以上除去されていた。
なお、1スベルドラップ(SV)は 1×106 m/s(1GL/s)と定義される。
【0214】
<製造例3A:水溶性ポリマー(C−1)の製造>
含窒素官能基を含むビニルモノマーとして、N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン1gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100ml中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のアセトンに再溶解させた。この反応物のアセトン溶液を、過剰のn−ヘキサンに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、n−ヘキサンで洗浄した後乾燥させ、45gの水溶性ポリマー(C−1)を得た。[水溶性ポリマー(C−1);質量平均分子量;1300、末端疎水性基;炭素数12のアルキルチオ基、ガラス転移温度;51℃]
【0215】
<製造例4A:水溶性ポリマー(C−2)の製造>
含窒素官能基を含むビニルモノマーとして、N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル3g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン1gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100ml中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成を行ったのち、放冷、減圧濃縮して白色の水溶性ポリマー含有混合物(C−2)を得た。この水溶性ポリマー(C−2)は、含窒素官能基として1−ピロリジン−2−オニル基を、末端疎水性基としてドデシル基を有していた。また、水溶性ポリマー(C−2)には、Log Powが4以上である化合物(D1)として、2−(ドデシルチオ)−2−メチルブチロニトリル(Log Pow6.5)が、前記水溶性ポリマー(C−2)100質量部に対して1.9質量部、すなわち、水溶性ポリマー(C−2)の総質量に対して、1.9質量%含まれていた。
【0216】
<製造例5A:水溶性ポリマー(C1−1)の製造>
含窒素官能基を含むビニルモノマーとして、N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル2g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン0.6gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100ml中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のアセトンに再溶解させた。この反応物のアセトン溶液を、過剰のn−ヘキサンに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、n−ヘキサンで洗浄した後乾燥させ、45gの水溶性ポリマー(C1−1)を得た。[水溶性ポリマー(C1−1);質量平均分子量;2000、末端疎水性基;炭素数12のアルキルチオ基、ガラス転移温度;73℃]
【0217】
<製造例6A:水溶性ポリマー(C1−2)の製造>
含窒素官能基を含むビニルモノマーとして、N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル1g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン0.15gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100ml中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。
滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のアセトンに再溶解させた。この反応物のアセトン溶液を、過剰のn−ヘキサンに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、n−ヘキサンで洗浄した後乾燥させ、45gの水溶性ポリマー(C1−2)を得た。[水溶性ポリマー(C1−2);質量平均分子量;2900、末端疎水性基;炭素数12のアルキルチオ基、ガラス転移温度;110℃]
【0218】
<製造例7A:水溶性ポリマー(C1−3)の製造>
含窒素官能基を含むビニルモノマーとして、N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.5g、末端疎水性基導入のための連鎖移動剤として、n−ドデシルメルカプタン0.1gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに攪拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール100ml中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行われた。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のアセトンに再溶解させた。この反応物のアセトン溶液を、過剰のn−ヘキサンに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、n−ヘキサンで洗浄した後乾燥させ、45gの水溶性ポリマー(C1−3)を得た。[水溶性ポリマー(C1−3);質量平均分子量;6150、末端疎水性基;炭素数12のアルキルチオ基、ガラス転移温度;114℃]
【0219】
製造例1A〜7Aで得られた導電性ポリマー、及び水溶性ポリマーを用いて、表1の通り、導電性組成物を調製した。
【0220】
【表1】
【0221】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
表1中の導電性組成物1A〜5Aのそれぞれについて導電体を形成した。
具体的には、各導電性組成物を、4インチシリコンウエハーにスピンコート塗布(2000rpm×60秒間)したのち、ホットプレートにて、80℃、2分間加熱処理を行い、膜厚20nmの導電性塗膜を形成して導電体を得た。それぞれの導電体について、上記の評価方法に沿って、表面抵抗値、表面平滑性(Ra1値)、化合物(D1)の含有量、結晶の有無、及び結晶によるレジストへの影響についてそれぞれ評価を行った。結果を表2に示す。
【0222】
【表2】
【0223】
表2の結果より、実施例1と2、すなわち、化合物(D1)の含有量が0.001質量%以下では、塗膜上に結晶は観測されず、レジストへの影響が抑制されていることが分かった。
【0224】
次に、本発明の第3の実施形態である導電性組成物の実施例について説明する。
【0225】
<導電性の評価>
ガラス基材に、導電性組成物をスピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、膜厚約30nmの塗膜がガラス基材上に形成された導電体(試験片1)を作製した。
得られた試験片1の表面抵抗値[Ω]を、ハイレスタMCP−HT260(三菱化学社製)を用い、2端子法(電極間距離20mm)にて測定した。
【0226】
<表面平滑性>
前記第1の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、表面平滑性(Ra1値とRa2値)を測定した。
【0227】
<膜減り量>
前記第1の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、レジストの膜減り量を測定した。
【0228】
製造例1A〜7Aで得られた導電性ポリマー、及び水溶性ポリマーを用いて、表3の通り、導電性組成物を調製した。
【0229】
【表3】
【0230】
(実施例3〜5)
表3中の導電性組成物1B〜3Bを用いて上記の評価方法の導電性評価、表面平滑性評価、膜減り試験による評価をそれぞれ行った。結果を表4に示す。
【0231】
(比較例4)
表3中の導電性組成物4Bを用いて上記の評価方法の導電性評価、表面平滑性評価、レジスト影響評価をそれぞれ行った。結果を表4に示す。
【0232】
【表4】
【0233】
導電性ポリマー(A−1)と、質量平均分子量が2000以上の水溶性ポリマー(C1−1)〜水溶性ポリマー(C1−3)とを組み合わせた実施例3〜5は、導電性ポリマー(A−1)と、質量平均分子量が1300である水溶性ポリマー(C−1)とを組み合わせた比較例4よりも、表面平滑性、膜減り量共に良好であった。
これらの結果より、本発明の第3の実施形態である導電性組成物は、含窒素官能基、及び末端疎水性基を有し、かつ質量平均分子量が2000以上である水溶性ポリマー(C1)を含むことにより、良好な塗布性、導電性を示し、基材に塗布されたレジスト等の積層物の膜減り量が小さく、かつ表面平滑性に優れた導電性塗膜を形成できることが分かった。
【0234】
次に、本発明の第4の実施形態である導電性組成物の実施例について説明する。
【0235】
<導電性の評価>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、導電性評価を行った。
【0236】
<表面平滑性>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、表面平滑性(Ra1値とRa2値)を測定した。
【0237】
<膜減り量>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、レジストの膜減り量を測定した。
【0238】
(製造例8A:水溶性ポリマー(C−3)の製造)
N−ビニルピロリドン55g、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル3g、連鎖移動剤であるn−ドデシルメルカプタン1gを、予め内温80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコールに、内温80℃に保ちながら滴下し、滴下重合を行なった。
滴下終了後、内温80℃で更に2時間熟成を行ったのち、放冷、減圧濃縮し、少量のアセトンに再溶解した.この重合体のアセトン溶液を過剰のn−ヘキサンに滴下することで得られる白色沈殿を、濾別、洗浄後、乾燥することで、45gの水溶性ポリマー(C−3)を得た。この水溶性ポリマー(C−3)の質量平均分子量は1300であった。また、この水溶性ポリマー(C−3)1質量部を水100質量部に溶解し、25℃の表面張力を測定した結果38dyn/cmであった。
【0239】
(実施例6)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に対して、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液を17質量部加え、さらに、水溶性ポリマー(C−1)0.06質量部を加え、導電性組成物1Cを得た。得られた導電性組成物1Cについて、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0240】
(実施例7)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン水溶液を15質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物2Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0241】
(実施例8)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、4−ジメチルアミノピリジン5%水溶液11質量部に加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物3Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0242】
(実施例9)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、4−ジメチルアミノピリジン5%水溶液を9質量部に加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物4Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0243】
(実施例10)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、4−ジメチルアミノピリジン5%水溶液15質量部を加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物5Cを調整し、各種測定及び評価を行った。結果を表5に示す。
【0244】
(実施例11)
実施例10の4−ジメチルアミノピリジン5%水溶液15質量部を17質量部に変更した以外は、実施例10と同様にして、導電性組成物6Cを調整し、各種測定及び評価を行った。結果を表5に示す。
【0245】
(実施例12)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、アミノピリジン(AP)5%水溶液を12質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物7Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0246】
(比較例5)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液を含有しないこと以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物8Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0247】
(比較例6)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、ピリジン(Py)5%水溶液を10質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物9Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0248】
(比較例7)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、トリエチルアミン(TEA)5%水溶液を13質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物10Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0249】
(比較例8)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、テトラエチルアンモニウム塩(TEAH)5%水溶液を19質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物11Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0250】
(比較例9)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、アンモニア(NH)5%水溶液を2質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物12Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0251】
(比較例10)
実施例6の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5%水溶液の代わりに、ビス(2−ジメチルアミノエチルエーテル)(BDAEE)5%水溶液を10質量部加えたこと以外は、実施例6と同様にして、導電性組成物13Cを調整し、各種測定及び評価を行った。
結果を表5に示す。
【0252】
【表5】
【0253】
なお、表5中の略号は以下の通りである。
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
AP:アミノピリジン
Py:ピリジン
TEA:トリエチルアミン
TEAH:テトラエチルアンモニウム塩
NH:アンモニア
BDAEE:ビス(2−ジメチルアミノエチルエーテル)
【0254】
表5から明らかなように、塩基性化合物(E1)を用いた、実施例6〜12の場合、導電性に優れ(表面抵抗値が低く)、かつ、レジスト層の膜減り量が抑制されていた。
一方、塩基性化合物(E1)を含有していない導電性組成物を用いた比較例6、塩基性化合物(E1)以外の塩基性化合物を用いた比較例7〜10は、膜減り量が大きいことが示された。
前記塩基性化合物(E1)以外の塩基性化合物を用いた比較例8は、レジストの膜減りは比較的抑制されるが、導電性塗膜の導電性が十分ではなかった。
以上より、本願の第4の実施形態である導電性組成物により、導電性(表面抵抗値)や膜減り抑制の観点から良好な導電性組成物、レジストへの影響を抑制した導電性塗膜を提供することができる。
【0255】
次に、本発明の第5、第6の実施形態である導電性組成物の実施例について説明する。
【0256】
(塗布性の評価)
4インチシリコンウエハー(以下、「シリコン基板」という。)上に、化学増幅型電子線レジストをスピンコート塗布(2000rpm×60秒間)した後、ホットプレートにて130℃で90秒間加熱処理を行ない、4インチシリコンウエハー上にレジスト層を形成した。前記レジスト層上に、本発明の第5、又は第6の実施形態である導電性組成物をスピンコート塗布(2000rpm×60秒間)したときの表面状態を目視にて観察し、下記評価基準にて塗布性を評価した。
A:表面にハジキが観察されない。
B:表面の一部にハジキが観察される。
C:多数のハジキが観察される。
【0257】
<導電性の評価>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、導電性評価を行った。
【0258】
<表面平滑性>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、表面平滑性(Ra1値とRa2値)を測定した。
【0259】
<膜減り量>
前記第3の実施形態の実施例において説明した方法と同様の方法にて、レジストの膜減り量を測定した。
【0260】
製造例1Aで得られた導電性ポリマー(A1−1)、及び製造例8Aで得られた水溶性ポリマー(C−3)を用いて、以下の通り導電性組成物を調製した。
【0261】
(実施例13〜15、比較例11、12)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に、塩基性化合物を加えて導電性組成物を調製した。塩基性化合物の種類と添加量は、表6に示す通りである。
得られた導電性組成物を用いて、表面抵抗値を測定し、塗布性を評価した。また、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0262】
(実施例16)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に、塩基性化合物(E2)として水酸化テトラブチルアンモニウム5%水溶液(TBAH)を27質量部と、水溶性ポリマー(c−3)を0.18質量部加え、導電性組成物4Dを調製した。
得られた導電性組成物を用いて、表面抵抗値、塗布性、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0263】
(実施例17)
実施例16のTBAHを水酸化テトラプロピルアンモニウム5%水溶液(TPAH)に変更し、添加量を21質量部とした以外は、実施例16と同じ操作にて導電性組成物5Dを調製した。
得られた導電性組成物5Dを用いて、表面抵抗値、塗布性、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0264】
(実施例18)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に、塩基性化合物(E3)としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)を13質量部と、水溶性ポリマー(c−3)を0.18質量部加え、導電性組成物6Dを調製した。
得られた導電性組成物6Dを用いて、表面抵抗値、レジスト層の膜減り量fを測定した。結果を表6に示す。
【0265】
(実施例19、20、比較例15〜19)
塩基性化合物(E3)の種類と配合量を表6に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして導電性組成物を調製し、表面抵抗値、塗布性、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0266】
(比較例13)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に、塩基性化合物(E2)として、TPAH(5%水溶液)を9質量部加えて導電性組成物11Dを調製した。得られた導電性組成物11Dを用いて、表面抵抗値、塗布性、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0267】
(比較例14)
導電性ポリマー溶液(A1−1)100質量部(導電性ポリマー:8.8×10−3mol)に、塩基性化合物(E2)として、TEAH(5%水溶液)を15質量部加えて導電性組成物12Dを調製した。得られた導電性組成物12Dを用いて、表面抵抗値、塗布性、レジスト層の膜減り量を測定した。結果を表6に示す。
【0268】
【表6】
【0269】
なお、表6中の略号は以下の通りである。
TBAH:水酸化テトラブチルアンモニウム、
TPAH:水酸化テトラプロピルアンモニウム、
TEAH:水酸化テトラエチルアンモニウム、
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム、
DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、
Tris:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、
Py:ピリジン、
TEA:トリエチルアミン、
NH:アンモニア。
【0270】
また、表6中の「塩基含有量」は、導電性ポリマーを構成するモノマーユニットのうち、酸性基を有する単位1molに対する塩基性化合物の量[mol当量]のことである。
【0271】
表6から明らかなように、塩基性化合物(E2)を用いた実施例13〜15の導電性組成物1D〜3Dは、レジスト層への塗布性を有していた。また、高い導電性を示した。
対して、窒素原子に結合する4つの基が、いずれも炭素数2以下のアルキル基である第4級アンモニウム塩を用いた比較例11、12の導電性組成物9D、10Dは、塗布性に劣っていた。すなわち、比較例11、12の導電性組成物は、レジスト層上に導電性塗膜を形成することが困難であることが分かった。よって、比較例11、12については膜減り試験による評価を行わなかった。
【0272】
表6から明らかなように、塩基性化合物(E2)または塩基性化合物(E3)を用いた実施例の導電性組成物は、酸性物質が原因となるレジスト層の膜減り量fが小さかった。
対して、塩基性化合物(E3)の含有量が少ない比較例15、16の導電性組成物13D、14D、塩基性化合物としてTEAまたはNHを用いた比較例18、19の導電性組成物16D、17Dは、酸性物質が原因となるレジスト層の膜減り量が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の1つの態様は、レジスト層の膜減り量が小さく、かつ次世代プロセスの半導体デバイスにも適用可能な表面平滑性を有する導電体の提供できる。また、本発明の別の態様は、導電性組成物をろ過する際に用いるフィルターの詰まりを低減できる界面活性剤を含む導電性組成物を提供できる。また、本発明の更に別の態様は、基材への影響が少なく、かつ表面平滑性に優れた導電性塗膜が得られる導電性組成物を提供できる。また、本発明の更に別の態様は、導電性(表面抵抗値)や膜減り抑制の観点から良好な導電性組成物を提供できる。また、本発明の更に別の態様は、レジスト層への影響を低減した導電性塗膜を形成できる導電性組成物を提供できる。
図1
図2