特許第6244935号(P6244935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244935
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】アクリルゴム組成物およびゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20171204BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08L33/08
   C08K5/46
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-10078(P2014-10078)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-137323(P2015-137323A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 知則
(72)【発明者】
【氏名】榊田 宏
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−265532(JP,A)
【文献】 特表2013−533356(JP,A)
【文献】 特開昭57−063318(JP,A)
【文献】 特開2005−272726(JP,A)
【文献】 特開2013−028754(JP,A)
【文献】 特開平02−191656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 33/08
C08K 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを、含有してなるアクリルゴム組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)が、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有する請求項1に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有アクリルゴム(A)のメチルエチルケトン不溶解分が20〜98重量%で、前記カルボキシル基含有アクリルゴム(B)のメチルエチルケトン不溶解分が5重量%以下である請求項1または2に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物。
【化6】
(上記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または−SO−を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、nおよびmの少なくとも一方は1である。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物に、架橋剤を配合してなる架橋性ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム組成物およびゴム架橋物に係り、さらに詳しくは、押し出し加工性に優れ、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるアクリルゴム組成物、および該アクリルゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、耐熱性、耐油性などに優れているため、自動車関連の分野等において、シール、ホース、防振材、チューブ、あるいはベルトなどのゴム部品の材料として広く用いられている。アクリルゴムは、これらの部品として使用できるように架橋させてゴム弾性を付与するが、そのために活性な架橋点を有する架橋性モノマーが通常1〜5重量%程度共重合されている。架橋性モノマーとしては、一般的には、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロロアセテートなどの塩素系モノマーや、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ系モノマーが使用されている。
【0003】
また、架橋性モノマーとしては、上記以外のものも検討されており、たとえば、特許文献1では、架橋性モノマーとして、カルボキシル基を含有するモノマーを用いたアクリルゴムが開示されている。この特許文献1では、架橋性モノマーとして、カルボキシル基を含有するモノマーを用いることにより、ロール加工性の向上を図っている。しかしながら、この特許文献1に開示されたアクリルゴムでは、ロール加工性は良好なものの、押出加工機を用いて押し出し加工した場合における、押し出し加工性が十分でなく(具体的には、ダイスウェル値(ダイスからの押出時の膨張率を示す値)が比較的大きく)、そのため、押し出し加工をした際の加工性の向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−70713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、押し出し加工性に優れ、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるアクリルゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなアクリルゴム組成物を用いて得られる架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを併用し、これらを混合することにより得られるアクリルゴム組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを、含有してなるアクリルゴム組成物が提供される。
そして、上記カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)が、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有することが好ましい。
また、上記カルボキシル基含有アクリルゴム(A)のメチルエチルケトン不溶解分が20〜98重量%で、上記カルボキシル基含有アクリルゴム(B)のメチルエチルケトン不溶解分が5重量%以下であることが好ましい。
【0008】
なお、上記アクリルゴム組成物が、下記一般式(1)で表される化合物をさらに含有することが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または−SO−を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、nおよびmの少なくとも一方は1である。)
【0009】
また、本発明によれば、上記のアクリルゴム組成物に、架橋剤を配合してなる架橋性ゴム組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押し出し加工性に優れ、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるアクリルゴム組成物、ならびに、このようなアクリルゴム組成物を用いて得られる架橋性ゴム組成物およびゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<アクリルゴム組成物>
本発明のアクリルゴム組成物は、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを、含有してなるアクリルゴムの組成物である。
【0012】
<カルボキシル基含有アクリルゴム(A)>
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)は、カルボキシル基を有するアクリルゴムであり、分子中に、主成分(本発明において、ゴム全単量体単位中50重量%以上有するものを言う。)として、(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕単位を含有し、かつ、多官能性単量体単位を1〜20重量%の範囲で含有するものである。なお、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有するアクリルゴムであることが好ましい。
【0013】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)の主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が1〜8の直鎖または分岐のアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのシクロアルキル基の炭素数が4〜8のシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜8の直鎖または分岐の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸n−ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどのアルコキシアルキル基の炭素数が2〜8のアルコキシアルキルエステル単量体が挙げられる。これらの中でも、アルコキシアルキル基の炭素数が3〜5の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2−エトキシエチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0016】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは50〜98.9重量%、より好ましくは60〜98.5重量%、さらに好ましくは70〜97.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0017】
なお、本発明において、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70〜0重量%からなるものとすることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位70〜100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位30〜0重量%からなるものとすることがより好ましい。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルが好ましい。
【0019】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn−ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステルおよび脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、一種単独で、または二種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0020】
本発明においては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有することにより、アクリルゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができ、これにより、得られるゴム架橋物の耐熱老化性を向上させることができる。
【0021】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)中における、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、耐圧縮永久ひずみ性が低下したりする可能性があり、一方、少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分となったり、耐熱性が低下するおそれがある。
【0022】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)のカルボキシル基の含有量、すなわち、アクリルゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数(ephr)は、好ましくは4×10−4〜4×10−1(ephr)、より好ましくは1×10−3〜2×10−1(ephr)、さらに好ましくは5×10−3〜1×10−1(ephr)である。カルボキシル基の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分となったり、耐熱性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、耐圧縮永久ひずみ性が低下したりする可能性がある。
【0023】
多官能性単量体単位は、重合性不飽和結合を複数有する単量体である多官能性単量体から形成される単量体単位であり、このような多官能性単量体としては、重合性不飽和結合を複数有するものであればよく、特に限定されない。本発明においては、このような多官能性単量体を用い、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)を、多官能性単量体単位を1〜20重量%の範囲で含有するものとすることにより、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)の製造時に、多官能性単量体が三次元架橋構造を形成し、これにより、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)を、ゲル構造を有するものとすることができる。
【0024】
多官能性単量体としては、重合性不飽和結合を複数有するものであればよく、特に限定されないが、重合性不飽和結合として、炭素−炭素二重結合を複数有するものが好ましく、たとえば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート;ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸の不飽和エステル化合物;ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジン;4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどが挙げられる。これらのなかでも、多官能性(メタ)アクリレート、および多価ビニル化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびジビニルベンゼンが特に好ましい。これらは一種単独で、または二種以上を併せて使用することができる。
【0025】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)中における、多官能性単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。多官能性単量体単位の含有量が少なすぎると、アクリルゴム組成物の押し出し加工性が悪化してしまい、一方、多すぎると、アクリルゴム組成物の流動性が悪化してしまう。
【0026】
なお、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)のメチルエチルケトン(MEK)不溶解分(すなわち、ゲル含量)は、好ましくは20〜98重量%、より好ましくは50〜98重量%、さらに好ましくは80〜98重量%である。メチルエチルケトン不溶解分を上記範囲とすることにより、本発明のアクリルゴム組成物の押し出し加工性をより高めることができる。なお、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)のメチルエチルケトン不溶解分は、たとえば、多官能性単量体単位の含有割合や、用いる多官能性単量体の種類、さらには、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)の重合条件を調整することにより制御することができる。メチルエチルケトン不溶解分は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)約0.2gを精秤して(x(g)とする。)100mlのメチルエチルケトンに浸漬させ、室温で24時間放置後、80メッシュ金網を用いてろ過し、ろ液を蒸発乾燥固化させ、得られた残存乾燥固形分[メチルエチルケトン可溶分:y(g)]を秤量し、下記式により算出することができる。
メチルエチルケトン不溶解分(重量%)=100×(x−y)/x
【0027】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、および多官能性単量体単位に加えて、必要に応じて、これらの各単量体単位と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
【0028】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族ビニル単量体(ただし、上述した多官能性単量体に該当するものを除く)、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、オレフィン系単量体、およびビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0029】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、および1−オクテンなどが挙げられる。
ビニルエーテル化合物の具体例としては、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、およびn−ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびエチレンがより好ましい。
【0031】
共重合可能なその他の単量体は、一種単独で、または二種以上を併せて使用することができる。本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)中における、その他の単量体の単位の含有量は、通常、40重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0032】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)は、上記単量体を共重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0033】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行われる。
【0034】
このようにして製造される、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、好ましくは10〜80、より好ましくは20〜70、さらに好ましくは25〜60である。
【0035】
<カルボキシル基含有アクリルゴム(B)>
次いで、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)について説明する。本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、カルボキシル基を有するアクリルゴムであり、分子中に、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含有し、かつ、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるものである。なお、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を有するアクリルゴムであることが好ましい。
本発明においては、このような多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)と、上述した多官能性単量体単位を1〜20重量%の割合で含有するカルボキシル基含有アクリルゴム(A)とを併用し、これらを混合することにより、本発明のアクリルゴム組成物を、押し出し加工性に優れ、しかも、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるものとすることができるものである。
【0036】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であればよいが、押し出し加工性の向上効果をより顕著なものとすることができるという点より、多官能性単量体単位を実質的に含有していないもの(すなわち、多官能性単量体単位の含有割合が0重量%)であるものがより好ましい。
【0037】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の主成分である(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されず、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と同様のものを用いることができるが、アルキル基の炭素数が1〜8の直鎖または分岐の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸n−ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
【0038】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対し、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは60〜99.5重量%、さらに好ましくは70〜99.5重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性が低下するおそれがある。
【0039】
また、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、特に限定されず、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と同様のものを用いることができ、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステルおよび脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0040】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)中における、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対し、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、耐圧縮永久ひずみ性が低下したりする可能性があり、一方、少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分となったり、耐熱性が低下するおそれがある。
【0041】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)のカルボキシル基の含有量、すなわち、アクリルゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数(ephr)は、好ましくは4×10−4〜4×10−1(ephr)、より好ましくは1×10−3〜2×10−1(ephr)、さらに好ましくは5×10−3〜1×10−1(ephr)である。カルボキシル基の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分となったり、耐熱性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の伸びが低下したり、耐圧縮永久ひずみ性が低下したりする可能性がある。
【0042】
なお、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、多官能性単量体単位の含有割合が、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)を構成する全単量体単位に対し、0.5重量%以下であればよいが、多官能性単量体単位を実質的に含有していないもの(すなわち、多官能性単量体単位の含有割合が0重量%)であることが好ましい。本発明においては、多官能性単量体単位の含有割合を0.5重量%以下、特に0重量%とすることにより、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)を、ゲル構造の含有割合が極めて低く抑えられたものとすることができる。
【0043】
そして、本発明によれば、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるゲル構造の含有割合が極めて低く抑えられたカルボキシル基含有アクリルゴム(B)と、上述した多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるゲル構造を多く有するカルボキシル基含有アクリルゴム(A)とを併用し、これらを混合して用いることにより、本発明のアクリルゴム組成物を、押し出し加工性に優れ、しかも、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるものとすることができる。
【0044】
なお、多官能性単量体単位を含有させる場合における、多官能性単量体単位を形成する多官能性単量体としては、特に限定されないが、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と同様のものを用いることができる。
【0045】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)のメチルエチルケトン(MEK)不溶解分(すなわち、ゲル含量)は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。メチルエチルケトン不溶解分を上記範囲とすることにより、本発明のアクリルゴム組成物の押し出し加工性をより高めることができる。カルボキシル基含有アクリルゴム(B)のメチルエチルケトン不溶解分は、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と同様に測定することができる。
【0046】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、上述した各単量体単位に加えて、必要に応じて、これらの各単量体単位と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよく、このような単量体の単位としては、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と同様のものを用いることができ、また、その含有量も同様とすることができる。
【0047】
本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、上記単量体を共重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、従来公知のアクリルゴムの製造法として一般的に用いられている常圧下での乳化重合法によるのが好ましい。
【0048】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0〜70℃、好ましくは5〜50℃の温度範囲で行われる。
【0049】
このようにして製造される、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、好ましくは10〜80、より好ましくは20〜70、さらに好ましくは25〜60である。
【0050】
本発明のアクリルゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを、混合することにより調製することができる。本発明のアクリルゴム組成物中における、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)との含有割合は、「カルボキシル基含有アクリルゴム(A):カルボキシル基含有アクリルゴム(B)」の重量比率で、好ましくは20:80〜70:30、より好ましくは30:70〜60:40、さらに好ましくは40:60〜60:40である。この比率を上記範囲とすることにより、本発明のアクリルゴム組成物の押し出し加工性を適切に高めることができる。
【0051】
<架橋性ゴム組成物>
本発明の架橋性ゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)を含むアクリルゴム組成物と、架橋剤とを含有してなるものである。
【0052】
本発明で用いる架橋剤としては、上述したカルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)を架橋可能なものであれば、特に限定されないが、多価アミン化合物、および多価アミン化合物の炭酸塩が好ましく、炭素数4〜30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩がより好ましい。なお、これらの架橋剤は、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0053】
多価アミン化合物、および多価アミン化合物の炭酸塩としては、特に限定されないが、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。一方、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著になることから、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩が特に好ましい。
【0054】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0055】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンジアニリン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、および1,3,5−ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0056】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の合計100重量部に対し、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤の含有量が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるゴム架橋物の機械的特性が不十分になる場合があり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物が硬くなりすぎる場合がある。
【0057】
また、本発明の架橋性ゴム組成物は、さらに架橋促進剤を含有していることが好ましい。架橋促進剤としては、特に限定されないが、架橋剤が多価アミン化合物、またはその炭酸塩である場合には、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、およびジアザビシクロアルケン化合物などが好ましく用いられ、これらのなかでも、ジアザビシクロアルケン化合物が好ましい。
【0058】
脂肪族1価2級アミン化合物は、アンモニアの水素原子の2つを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、特に限定されないが、好ましくは炭素数1〜30のものであり、より好ましくは炭素数8〜20のものである。脂肪族1価2級アミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジセチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジ−シス−9−オクタデセニルアミン、およびジノナデシルアミンなどが挙げられる。
【0059】
脂肪族1価3級アミン化合物は、アンモニアの3つの水素原子全てを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、特に限定されないが、好ましくは炭素数1〜30のものであり、より好ましくは炭素数1〜22のものである。脂肪族1価3級アミン化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリセチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリ−シス−9−オクタデセニルアミン、トリノナデシルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルセチルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミン、N−メチルジデシルアミン、N−メチルジドデシルアミン、N−メチルジテトラデシルアミン、N−メチルジセチルアミン、N−メチルジオクタデシルアミン、N−メチルジベヘニルアミン、およびジメチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0060】
グアニジン化合物の具体例としては、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。
イミダゾール化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。
第四級オニウム塩の具体例としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
第三級ホスフィン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
弱酸のアルカリ金属塩の具体例としては、ナトリウム、カリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩、およびナトリウム、カリウムのステアリン酸塩、ラウリン酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
ジアザビシクロアルケン化合物の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノ−5−ネン(DBN)などが挙げられる。
【0061】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、架橋促進剤の含有量は、カルボキシル基含有アクリゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部であり、より好ましくは0.2〜15重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部である。架橋剤促進剤の含有量が上記範囲内であると、架橋が十分に行われ、得られるゴム架橋物の機械的特性が優れる。一方、架橋促進剤が少なすぎると、架橋が十分に進行せずに得られるゴム架橋物の機械的特性が劣る可能性があり、架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、得られるゴム架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、ゴム架橋物が硬くなりすぎたりするおそれがある。
【0062】
また、本発明の架橋性ゴム組成物は、さらに老化防止剤を含有していることが好ましい。老化防止剤としては、特に限定されないが、得られるゴム架橋物の耐熱性をより高めることができるという点より、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【化2】
(上記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または−SO−を表す。nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、nおよびmの少なくとも一方は1である。)
【0063】
上記一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。
およびRを構成する炭素数1〜30の有機基としては、特に限定されないが、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素数1〜30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜30のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などの炭素数6〜30のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜30のアルコキシ基;などが挙げられる。
【0064】
また、上述したRおよびRを構成する有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基の位置としては、任意の位置とすることができる。
このような置換基としては、有機基がアルキル基である場合には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;などが挙げられる。
また、有機基がシクロアルキル基またはアリール基である場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基;などが挙げられる。
さらに、有機基がアルコキシ基の場合には、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;などが挙げられる。
【0065】
なお、本発明において、RおよびRを構成する有機基が、置換基を有する場合、有機基の炭素数には、該置換基の炭素数を含まないものとする。すなわち、RおよびRを構成する有機基は、置換基に含有される炭素原子を除いた炭素原子の数が、1〜30の範囲にあればよい。たとえば、RおよびRを構成する有機基が、メトキシエチル基である場合には、該有機基の炭素数は2となる。すなわち、この場合においては、メトキシ基は置換基であるため、該有機基の炭素数は、置換基であるメトキシ基の炭素数を除いたものとなる。
【0066】
本発明では、RおよびRとしては、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基であることが好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキル基、もしくは置換基を有していてもよいフェニル基、または置換基を有していてもよいナフチル基であることがより好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2〜8のアルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基であることがさらに好ましく、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2〜8のアルキル基が特に好ましい。
【0067】
このようなRおよびRを構成する有機基の好ましい具体例としては、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、t−ブチル基、フェニル基、または4−メチルフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、α,α−ジメチルベンジル基、または4−メチルフェニル基がより好ましく、α,α−ジメチルベンジル基がさらに好ましい。なお、これらは、それぞれ独立したものとすることができる。
【0068】
また、上記一般式(1)中、ZおよびZはそれぞれ独立して、化学的な単結合または−SO−であり、化学的な単結合であることが好ましい。
【0069】
さらに、上記一般式(1)中、nおよびmはそれぞれ独立して、0または1であり、かつ、nおよびmの少なくとも一方は1である。なお、nおよびmは、いずれも1であることが好ましい。
【0070】
本発明においては、上記一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【化3】
(上記一般式(2)〜(4)中、R、R、ZおよびZは、上記一般式(1)と同様である。)
【0071】
上記一般式(2)〜(4)で表される化合物のなかでも、一般式(2)、(4)で表される化合物が好ましく、一般式(4)で表される化合物がより好ましい。
【0072】
また、上記一般式(2)〜(4)中、−Z−R、−Z−Rがそれぞれ独立して、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、t−ブチル基、フェニルスルホニル基、または4−メチルフェニルスルホニル基であることが好ましく、α,α−ジメチルベンジル基、または4−メチルフェニルスルホニル基であることがより好ましく、α,α−ジメチルベンジル基であることがさらに好ましい。
【0073】
すなわち、本発明においては、上記一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭素数2〜8のアルキル基、ならびにZおよびZは化学的な単結合であり、nおよびmが1であることが好ましい。
【0074】
次いで、上記一般式(1)で表される化合物の製造方法について、説明する。上記一般式(1)で表される化合物は、公知のフェノチアジン系化合物の製造方法を適用することにより、前駆体となるフェノチアジン系化合物を得て、次いで、得られた化合物を酸化することにより、製造することができる。
【0075】
具体的には、上記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(5)で表される化合物(フェノチアジン)を出発原料として、WO2011/093443A1公報に記載の反応方法により、一般式(5)におけるフェノチアジン環の、1位、3位、6位および/または8位に、置換基(−Z−R、−Z−R)を導入すること、およびフェノチアジン環のSを、−SO−にするために酸化すること、により得ることができる。
【化4】
【0076】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、老化防止剤の含有量は、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.3〜5重量部であり、さらに好ましくは0.5〜2.5重量部である。老化防止剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性を適切に高めることができる。
【0077】
本発明の架橋性ゴム組成物には、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填剤;炭酸カルシウムやクレーなどの非補強性充填材;光安定剤;可塑剤;加工助剤;滑剤;粘着剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;シランカップリング剤;架橋遅延剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0078】
さらに、本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)以外の重合体をさらに併用してもよい。
カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)以外の重合体としては、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)以外のアクリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなどのゴム;ポリエステルポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂などの樹脂;などが挙げられる。なお、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)以外の重合体の配合量は、本発明で用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)およびカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。
【0079】
<アクリルゴム組成物、架橋性ゴム組成物の調製方法>
本発明のアクリルゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)とカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを混合する方法が挙げられる。
【0080】
混合方法は、特に限定されないが、非水系で混合(ドライブレンド)してもよいし、溶液系(溶液に溶解した状態または分散させた状態)または水系(水に分散させた状態であって、ラテックス状態の場合も含む)で混合してもよい。なお、溶液系および水系で混合した場合には、従来公知の方法により凝固させた後、ろ過・乾燥してアクリルゴム組成物をクラムの状態で得ることができる。
【0081】
また、カルボキシル基含有アクリルゴム(A)とカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを混合する際には、老化防止剤などの各種配合剤や、その他のゴムを同時に混合してもよい。
【0082】
混合方法は特に限定されないが、ロール、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサ、スクリューミキサ等の混練機を用いて混練する方法などが挙げられる。
【0083】
本発明の架橋性ゴム組成物の調製方法は、特に限定されないが、上記のようにして得られる本発明のアクリルゴム組成物に、架橋剤および熱に不安定な架橋助剤などを除いた各成分を、好ましくは、10〜200℃、より好ましくは20〜170℃で、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で混練し、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤などを加えて、好ましくは10〜80℃の条件で、二次混練することにより調製できる。
【0084】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、上記本発明の架橋性ゴム組成物を成形し、加硫することにより製造される。架橋性ゴム組成物の成形および架橋方法としては、特に限定されないが、たとえば、一軸や多軸の押出機を使用して、架橋性ゴム組成物を押し出して成形体とした後、加熱して架橋する方法;射出成形機、押出ブロー成形機、トランスファー成形機、プレス成形機などを使用して金型により成形し、成形と同時に成形時の加熱で架橋する方法;などが挙げられる。これらの方法のうちでも、押出機または射出成形機を用いる方法が好ましく、押出機を用いる方法が特に好ましい。成形と架橋を同時に行うか、あるいは、成形後に架橋するかは特に限定されず、成形方法、加硫方法、成形体の大きさなどに応じて選択すればよい。特に、本発明の架橋性ゴム組成物は、上述した本発明のアクリルゴム組成物を用いて得られるものであるため、押し出し加工性に優れるものであり、そのため、押出機を用いる方法に特に好適に用いることができる。
【0085】
架橋性ゴム組成物を成形、架橋する際における、成形温度は好ましくは15〜220℃、より好ましくは20〜200℃である。また、架橋温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃〜250℃である。架橋時間は、1分〜5時間の範囲で任意に選択すればよい。加熱方法としては、電熱加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、UHF(超高周波)加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に通常用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0086】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、好ましくは100〜220℃、より好ましくは130〜210℃であり、加熱時間は、好ましくは30分〜10時間、より好ましくは1〜5時間である。
【0087】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を用いて得られ、また、本発明の架橋性ゴム組成物は、上述した本発明のアクリルゴム組成物を用いて得られるものであるため、常態物性、および耐圧縮永久歪み性に優れものである。
そのため、本発明のゴム架橋物は、その特性を活かして、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シールなどの各種シール;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;などとして好適に用いられる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0089】
(ムーニー粘度(ポリマームーニー粘度)〔ML1+4(100℃)〕)
カルボキシル基含有アクリルゴムのポリマームーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、JIS K6300によって測定した。
【0090】
(メチルエチルケトン不溶解分)
カルボキシ基含有アクリルゴム約0.2gを精秤して(x(g)とする。)100mlのメチルエチルケトンに浸漬させ、室温で24時間放置後、80メッシュ金網を用いてろ過し、ろ液を蒸発乾燥固化させ、得られた残存乾燥固形分[メチルエチルケトン可溶分:y(g)]を秤量し、下式によりメチルエチルケトン不溶解分を算出したものである。
メチルエチルケトン不溶解分(重量%)=100×(x−y)/x
【0091】
(ムーニースコーチ試験)
架橋性ゴム組成物について、JIS K6300に従い、125℃の測定条件下でムーニースコーチの測定を行い、ムーニー粘度の最低値Vm(最小トルク値MLを示したときの粘度)を測定した。ムーニー粘度の最低値Vmが低いほど、流動性に優れ、架橋時の加工性に優れるものと判断できる。
【0092】
(ガーベダイ押し出し試験)
架橋性ゴム組成物を、先端にガーベダイを付けた押出機(単軸バレル径20mm、回転数20rpm、バレル温度60℃、ヘッド温度70℃)を用いて、押出成形した。そして、ASTM D2230−77 A法(ガーベダイ押出試験、採点法A)に従い、得られた押出成形品の状態を評価した。具体的には、得られた押出成形品について、押し出し長さ(cm/min.)およびダイスウェル(%)を求めた。押出し長さが大きいほど、また、ダイスウェルの値が小さいほど、押し出し加工性に優れると判断することができる。
【0093】
(常態物性)
架橋性ゴム組成物を170℃、10MPaで、20分間のプレスによって成形、架橋して、15cm×15cm×2mmのシートを作製し、これを170℃にて4時間加熱して二次架橋させ、二次架橋後のシートからダンベル状3号形の試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、常温での機械的特性として、JIS K6251の引張試験に従って引張強さ(強度)、および破断伸び(伸び)をそれぞれ測定した。また、JIS K6253の硬さ試験に従って硬度を測定した。
【0094】
(圧縮永久歪み試験)
架橋性ゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成型、架橋して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに、170℃にて4時間加熱して二次架橋させた。JIS K6262に従い、上記にて得られた二次架橋後の試験片を25%圧縮させたまま、175℃の環境下で72時間放置した後、圧縮を解放して圧縮永久歪み率を測定した。圧縮永久歪み率の値が小さいほど、耐圧縮永久ひずみ性に優れる。
【0095】
(製造例1)カルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)の製造
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸エチル43.5部、アクリル酸n−ブチル50部、ジメタクリル酸エチレングリコール(エチレングリコールジメタクリレート)5部、およびフマル酸モノn−ブチル1.5部を仕込んだ。その後、減圧脱気および窒素置換を2度行って酸素を十分除去した後、クメンハイドロパーオキシド0.005部、およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固し、水洗、乾燥することにより、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)得た。得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は40であり、メチルエチルケトン不溶解分は92.0重量%であった。また、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)の組成は、アクリル酸エチル単位43.5重量%、アクリル酸n−ブチル単位50重量%、ジメタクリル酸エチレングリコール単位5重量%、およびフマル酸モノn−ブチル単位1.5重量%であった。
【0096】
(製造例2)カルボキシル基含有アクリルゴム(A−2)の製造
アクリル酸エチルの配合量を43.5部から45部に変更するとともに、ジメタクリル酸エチレングリコール5部の代わりに、ジビニルベンゼン3.5部を配合した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−2)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は35であり、メチルエチルケトン不溶解分は92.7重量%であった。また、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−2)の組成は、アクリル酸エチル単位45重量%、アクリル酸n−ブチル単位50重量%、ジビニルベンゼン単位3.5重量%、およびフマル酸モノn−ブチル単位1.5重量%であった。
【0097】
(製造例3)カルボキシル基含有アクリルゴム(A−3)の製造
アクリル酸エチルの配合量を43.5部から43部に変更するとともに、ジメタクリル酸エチレングリコール5部の代わりに、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.5部を配合した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−3)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−3)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は45であり、メチルエチルケトン不溶解分は91.3重量%であった。また、カルボキシル基含有アクリルゴム(A−3)の組成は、アクリル酸エチル単位43重量%、アクリル酸n−ブチル単位50重量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート単位5.5重量%、およびフマル酸モノn−ブチル単位1.5重量%であった。
【0098】
(製造例4)カルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)の製造
アクリル酸エチルの配合量を43.5部から48.5部に変更するとともに、ジメタクリル酸エチレングリコールを配合せず、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.02部を配合した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)を得た。得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は40であり、メチルエチルケトン不溶解分は0.7重量%であった。また、カルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)の組成は、アクリル酸エチル単位48.5重量%、アクリル酸n−ブチル単位50重量%、およびフマル酸モノn−ブチル単位1.5重量%であった。
【0099】
(製造例5)化合物1の合成
以下の方法に従い、下記式(6)に示す化合物1を合成した。
【化5】
【0100】
すなわち、まず、温度計を備えた3つ口反応器に窒素気流中、フェノチアジン50.0g(250.92mmol)を加えて、トルエン200mlに溶解させた。次いで、この溶液に、α−メチルスチレン59.31g(501.83mmol)と、p−トルエンスルホン酸1水和物1.19g(6.27mmol)とを加えて80℃にて1時間反応させた。その後、反応液を室温に戻して、酢酸48ml、および30%過酸化水素水85.34g(752.7mmol)を加えて、さらに80℃にて2時間反応させた。反応液を室温に戻した後、メタノール630mlに投入した。そして、析出した結晶をろ過し、320mlのメタノールで洗浄することで、白色結晶の化合物1を85.7g、収率73%で得た。得られた化合物1の構造はH−NMRで同定した。H−NMR(500MHz、DMSO−d6、TMS、δppm):1.67(s,12H),7.15−7.32(m,12H),7.43(dd,2H,J=9.0, 2.0Hz),7.68(d,2H,J=1.5Hz),10.84(s,1H)。
【0101】
(実施例1)
製造例1で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)50部、製造例4で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)50部、カーボンブラック(東海カーボン社製、「シースト116」)50部、ステアリン酸2部、および上述した化合物の製造例5で得られた化合物1(老化防止剤)1部を、0.8リットルバンバリーを用いて50℃で5分間混練した後、架橋剤として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(商品名「BAPP」、和歌山精化工業社製)1部、および架橋促進剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(商品名「Rhenogran XLA−60」;DBU60%(DBUのジンクジアルキルジフォスフェイト塩となっている部分を含む)、アクリル酸ポリマーと分散剤40%、ラインケミー社製)2部を加えて、50℃のオープンロールで混練することにより、架橋性ゴム組成物を調製した。そして、得られた架橋性ゴム組成物を用いて、上記方法に従い、ムーニースコーチ試験、ガーベダイ押し出し試験、常態物性の測定、および圧縮永久歪み試験の各試験、測定を行った。結果を表2に示す。
【0102】
(実施例2)
製造例1で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)50部の代わりに、製造例2で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−2)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0103】
(実施例3)
製造例1で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)50部の代わりに、製造例3で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−3)50部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
(比較例1)
製造例1で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)50部を配合せず、かつ、製造例4で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)の配合量を50部から100部に変更した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
(比較例2)
製造例1で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(A−1)の配合量を50部から100部に変更し、かつ、製造例4で得られたカルボキシル基含有アクリルゴム(B−1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表1、表2に示すように、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)と、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)とを含有する架橋性ゴム組成物は、ガーベダイ押し出し試験における、押し出し長さが大きく、また、ダイスウェルの値が低く、押し出し加工性に優れ、さらには、ムーニー粘度の最低値Vmが低く、流動性に優れ、架橋時の加工性に優れるものであり、しかも、得られるゴム架橋物は、常態物性および耐圧縮永久歪み性に優れるものであった(実施例1〜3)。
【0109】
一方、アクリルゴムとして、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)を使用せず、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)のみを用いた場合には、得られる架橋性ゴム組成物は、ガーベダイ押し出し試験における、押し出し長さが小さく、また、ダイスウェルの値が高く、押し出し加工性に劣るものであった(比較例1)。
また、アクリルゴムとして、多官能性単量体単位の含有割合が0.5重量%以下であるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)を使用せず、多官能性単量体単位の含有割合が1〜20重量%であるカルボキシル基含有アクリルゴム(A)のみを用いた場合には、得られる架橋性ゴム組成物は、ムーニー粘度の最低値Vmが高く、流動性に劣るものであり、さらには、ゴム架橋物とした際における圧縮永久歪み性に劣るものであった(比較例2)。