(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245008
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】光学素子及び光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/245 20060101AFI20171204BHJP
C03C 3/247 20060101ALI20171204BHJP
C03C 4/08 20060101ALI20171204BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20171204BHJP
G02B 1/10 20150101ALI20171204BHJP
【FI】
C03C17/245 Z
C03C3/247
C03C4/08
G02B1/00
G02B1/10
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-53463(P2014-53463)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2014-208573(P2014-208573A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-74172(P2013-74172)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村川 真弘
(72)【発明者】
【氏名】笹井 淳
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄介
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−148964(JP,A)
【文献】
特開2011−008076(JP,A)
【文献】
特表2011−505316(JP,A)
【文献】
特開2008−268613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フツリン酸塩ガラス基板と、前記フツリン酸塩ガラス基板の全面に形成された透明膜とを有する光学素子であって、
前記透明膜が、原子層堆積により成膜された酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちのいずれかを主成分として含有する透明材料膜を1以上有し、
前記フツリン酸塩ガラスのクラックが埋め込まれて、側面を含む全面に均一な膜厚を有することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記透明膜は、5〜500nmの厚さである請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記透明材料膜は、Al2O3、TiO2、ZrO2、SiO2、AlN、Si3N4、TiONまたはAlONのうちいずれかを主成分として含有する請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記フツリン酸塩ガラス基板は、CuOを含有するフツリン酸塩ガラスからなる基板である請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子。
【請求項5】
前記フツリン酸塩ガラス基板は、成分が、P2O5 20〜60質量%、CuO 1〜15質量%、Al2O3 0〜15質量%、Na2O 0〜10質量%、Li2O 0〜10質量%、MgO 0〜20質量%、CaO 0〜20質量%、BaO 0〜20質量%、SrO 0〜20質量%、ZnO 0〜20質量%、Sb2O3 0〜3質量%、CeO2 0〜2質量%で含有し、AlF3 0〜30質量%、NaF 0〜20質量%、LiF 0〜20%、MgF2 0〜30質量%、CaF2 0〜30質量%、SrF2 0〜30質量%、BaF20〜40質量%、かつAlF3、NaF、LiF、MgF2、CaF2、SrF2またはBaF2のいずれかを含有するガラスからなる基板である請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子。
【請求項6】
フツリン酸塩ガラスを切断することによりフツリン酸塩ガラス基板を形成する工程と、
前記フツリン酸塩ガラス基板の全面に、前記フツリン酸塩ガラスのクラックが埋め込まれるように、原子層堆積により均一な透明膜を成膜する工程と、
を有し、
前記透明膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちのいずれかを主成分として含有する透明材料膜を1以上有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項7】
前記フツリン酸塩ガラス基板は、CuOを含有するフツリン酸塩ガラスからなる基板である請求項6に記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記透明膜を成膜する工程は、前記フツリン酸塩ガラス基板の温度を250℃以下とし、TMA(トリメチルアルミニウム)とH2Oとを交互に供給することにより前記透明膜を成膜するものである請求項6または7に記載の光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子及び光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の電子機器には、画像を撮像するためのCCD(charge-coupled device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子が使用されている。これらの固体撮像素子は、近紫外域から波長が1200nm近傍の近赤外域において分光感度を有しているため、そのまま撮像した場合には、良好な色再現性のある画像を得ることができない。このため、固体撮像素子を使用する場合には、赤外光を吸収する特定の物質を含有する近赤外線カットフィルタと呼ばれる光学素子が、同時に使用されている。これにより、固体撮像素子に入射する光のうち、近赤外域の波長の光を選択的に吸収し、固体撮像素子への入射光を人の視感度に近似する補正がなされている。
【0003】
このような、近赤外線カットフィルタとしては、例えば、CuO等を含有するフツリン酸塩ガラス基板により形成されているものが知られている。このような近赤外線カットフィルタの製造方法は、一例として、所望のガラス組成となるように原料を混合し、白金ルツボに収容して蓋をし、800℃〜1300℃の温度で溶融し、攪拌・清澄後、徐冷し、切断・研磨することにより平板状に形成する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−16451号公報
【特許文献2】特開平4−139035号公報
【特許文献3】特開2011−8076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フツリン酸塩ガラスは、光学的な特性が優れるものの、強度等が低い。そのため、フツリン酸塩ガラスにより形成される光学素子は、一般的に、脆く欠けやすい傾向にある。具体的には、光学素子を作製する際に行われる切断の工程は、ダイシングソー等により行われるが、この際、断面及び断面近傍に、微小のクラック等が発生する。このような微小のクラックが、光学素子に発生していると、その後の製造工程または使用時において光学素子に外部から力が加わった場合に、このクラックに起因して光学素子に割れや欠けが生じやすくなる。
【0006】
このため、フツリン酸塩ガラスにより形成される光学素子において、強度が高く、割れや欠け等に強い光学素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態の一観点によれば、フツリン酸塩ガラス基板と、前記フツリン酸塩ガラス基板の全面に形成された透明膜とを有する光学素子であって、前記透明膜が、
原子層堆積により成膜された酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちのいずれかを主成分として含有する透明材料膜を1以上有
し、前記フツリン酸塩ガラスのクラックが埋め込まれて、側面を含む全面に均一な膜厚を有することを特徴とする。
【0008】
また、本実施の形態の他の一観点によれば、フツリン酸塩ガラスを切断することによりフツリン酸塩ガラス基板を形成する工程と、前記フツリン酸塩ガラス基板の全面に、
前記フツリン酸塩ガラスのクラックが埋め込まれるように、原子層堆積により
均一な透明膜を成膜する工程と、を有し、前記透明膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちのいずれかを主成分として含有する透明材料膜を1以上有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、フツリン酸塩ガラス基板を有する光学素子において、強度を高めることができ、割れや欠け等に強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】真空蒸着等の成膜方法により膜を成膜した光学素子の構造図
【
図4】本実施の形態における光学素子の製造方法の説明図
【
図5】光学素子における透明材料膜の膜厚と4点強度の相対値との相関図
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
(光学素子)
本実施の形態における光学素子は、フツリン酸塩ガラス基板と、フツリン酸塩ガラス基板全面に透明膜とを有する。また、透明膜が、原子層堆積(Atomic Layer Deposition:以下、ALDと略す)により形成された酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちのいずれかを主成分として含有する膜であることが好ましい。
【0013】
(原子層堆積)
最初に、ALDについて説明する。ALDとは、成膜される材料の原料ガスを供給することにより、原子層ごとに成膜する成膜方法である。これにより、ALDでは、後述するように、フツリン酸塩ガラス基板の周囲全面、すなわち、表面、側面および裏面に成膜できる。また、ステップカバレージが高く、フツリン酸塩ガラス基板の周囲全面にある微小クラック等を埋めることができる。これにより、フツリン酸塩ガラス基板の強度を向上でき、すなわち、光学素子の強度を向上できる。
【0014】
図1は、本実施の形態における光学素子であり、フツリン酸塩ガラス基板にALDにより透明膜を成膜した光学素子の構造を示す断面図である。また、
図2は、フツリン酸塩ガラス基板に真空蒸着等により透明膜を成膜した光学素子の構造を示す断面図である。
【0015】
図1に示されるように、本実施の形態における光学素子においては、フツリン酸塩ガラス基板10の全面、即ち、表面、側面および裏面に、透明膜20が成膜される。ALDでは、供給源30から供給された原料ガスが、フツリン酸塩ガラス基板10の側面や裏面に回り込むため、フツリン酸塩ガラス基板10の全面に、略均一な膜厚で透明膜20を成膜することができる。
【0016】
これに対し、
図2に示されるように、フツリン酸塩ガラス基板910に真空蒸着等により透明膜920を成膜した光学素子では、供給源930から供給された蒸着粒子は、フツリン酸塩ガラス基板910の側面には、僅かに回り込むものの、裏面には殆ど回り込むことができないため、透明膜920は、フツリン酸塩ガラス基板910の裏面及び側面には殆ど成膜されず、主にフツリン酸塩ガラス基板910の表面に成膜される。
【0017】
次に、フツリン酸塩ガラスを切断した際に生じる微小のクラックについて説明する。フツリン酸塩ガラス基板10は、フツリン酸塩ガラス基板をダイシング等により切断し、形成する。この際、フツリン酸塩ガラス基板は脆いため、
図3(a)に示すように、フツリン酸塩ガラス基板10の断面近傍において微小のクラック11が生じる。上述したように、このような微小のクラック11が生じると、フツリン酸塩ガラス基板10に力が加わった場合に、微小のクラック11に起因して、フツリン酸塩ガラス基板10に割れや欠けが生じる。
【0018】
本実施の形態では、
図3(b)に示すように、ALDにより透明膜20、例えば、Al
2O
3からなる透明材料膜を成膜することにより、フツリン酸塩ガラス基板10に生じた微小のクラック11を埋め込むことができる。これにより、フツリン酸塩ガラス基板10に力が加わった場合において、微小のクラック11に起因して生じる割れや欠けを抑制することができ、強度を高めることができる。ALDでは、原料ガスが回り込み、微小のクラック11の奥まで到達するため、微小のクラック11の奥にも緻密な透明膜20を形成することができ、割れの原因になる微小なクラックを埋めることができる。
【0019】
更に、フツリン酸塩ガラスをダイシング等により切断した際には、フツリン酸塩ガラス基板10の切断面近傍における表面、側面および裏面において微小のクラック11が発生する。しかしながら、本実施の形態においては、透明膜20はALDにより成膜している。ALDでは、これらの微小のクラック11を一度の成膜で、透明膜20により埋め込むことができる。また、ダイシング等のプロセス中の表面へのコンタクトにより生成するマイクロクラックをALDによって被覆することで、洗浄プロセスなどで生成する潜傷を防ぐことが可能になる。
【0020】
これに対し、真空蒸着等の成膜方法では、成膜される材料の原料の回り込みは、極めて小さいため、微小のクラックを緻密に埋め込むことができず、また、フツリン酸塩ガラス基板910の側面や裏面における微小のクラックは、殆ど埋め込むことができない。よって、強度を十分に向上させることはできない。また、片面のみの成膜であるために、両面への潜傷抑制も不可能である。
【0021】
(透明膜20)
本願明細書において、透明膜とは、膜のみの可視光領域における透過率が80%以上である膜をいう。前記した透過率は、例えば、成膜していないガラスの透過率と、成膜後のガラスの透過率との差分から算出できる。
【0022】
本実施の形態において、透明膜20は、透明材料膜を1以上有し、前記した光学特性を示す。前記透明材料膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちいずれかを主成分として含有する。本願明細書において、主成分とは、80質量%以上で含有する成分をいう。すなわち、本実施の形態においては、酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちいずれかの合量は、透明膜20の質量100%に対して80%以上である。
【0023】
前記透明材料膜は、酸化物、窒化物、酸窒化物または炭化物のうちいずれかからなることが好ましい。なお、本願明細書において、「からなる」場合とは、不可避不純物の混入を避けるものではない。
【0024】
前記酸化物としては、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、SiO
2またはHfO
2等が挙げられる。前記窒化物としては、AlNまたはSi
3N
4等が挙げられる。前記酸窒化物としては、SiON、AlON、またはTiON等が挙げられる。前記炭化物としては、SiC等があげられる。
【0025】
ALDによる成膜の容易性の観点から、前記透明材料膜は、酸化物、窒化物または酸窒化物のうちいずれかを主成分として含有することが好ましい。また、前記透明材料膜は、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SiO
2、AlN、Si
3N
4、TiONまたはAlONを主成分として含有することがより好ましい。さらに、前記透明材料膜は、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、SiO
2、AlN、Si
3N
4、TiONまたはAlONのうちいずれかからなることが特に好ましい。
【0026】
本実施の形態において、透明膜20は、1の透明材料膜からなることが好ましい。
【0027】
透明膜20の厚さは、5〜500nmが好ましい。透明膜の厚さが、5nm未満では、微小のクラックを透明膜20により十分に埋め込むことができず、所望とする強度を得ることができない。また、透明膜20の厚さが、500nmを超えると、可視光の波長域に近づくため、光学的特性に影響を与えてしまい、光学素子の観点から好ましくない。
【0028】
透明膜20の厚さの下限は、10nmがより好ましく、20nmがさらに好ましい。透明膜20の厚さの上限は、300nmがより好ましく、200nmがさらに好ましい。
【0029】
(フツリン酸塩ガラス)
次に、フツリン酸塩ガラス基板10について説明する。フツリン酸塩ガラス基板は、リン酸を主成分とし、さらにフッ素を含有するフツリン酸塩ガラスからなる基板である。フツリン酸塩ガラス基板は板厚が0.1〜4mmであることが好ましい。また、光学素子は可視光透過率が高いことが求められており、フツリン酸塩ガラス基板は、400〜600nmにおける平均透過率が60%以上であることが好ましい。
【0030】
本実施の形態における光学素子においては、CuOを含有するフツリン酸塩ガラスからなるフツリン酸塩ガラス基板の使用が好ましい。このように、CuOを含有することにより、フツリン酸塩ガラス基板10は近赤外線カットフィルタの機能を発揮できる。フツリン酸塩ガラス中で、CuOの含有量は、酸化物基準で、1〜15重量%がより好ましい。
【0031】
フツリン酸塩ガラス基板は、酸化物基準で、P
2O
5 20〜60質量%、CuO 1〜15質量%、Al
2O
3 0〜15質量%、Na
2O 0〜10質量%、Li
2O 0〜10質量%、MgO 0〜20質量%、CaO 0〜20質量%、BaO 0〜20質量%、SrO 0〜20質量%、ZnO 0〜20質量%、Sb
2O
3 0〜3質量%、CeO
2 0〜2質量%含有し、AlF
3 0〜30質量%、NaF 0〜20質量%、LiF 0〜20%、MgF
2 0〜30質量%、CaF
2 0〜30質量%、SrF
2 0〜30質量%、BaF
20〜40質量%含有し、かつAlF
3、NaF、LiF、MgF
2、CaF
2、SrF
2またはBaF
2のいずれかを含有するガラスからなる基板がより好ましい。
【0032】
(光学素子の製造方法)
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について
図4に基づき説明する。本実施の形態における光学素子は、最初に、ステップ102(S102)に示すように、CuO等を含有するフツリン酸塩ガラスをダイシング等により切断することにより、フツリン酸塩ガラス基板10を形成する。次に、ステップ104(S104)に示すように、形成されたフツリン酸塩ガラス基板10の表面、側面および裏面に、ALDにより透明膜20を成膜する。
【0033】
(透明膜20の成膜方法)
次に、透明膜20の成膜方法について説明する。本実施の形態において、一例として、透明膜20として、原子層堆積によりAl
2O
3からなる透明材料層を成膜する場合について説明する。
【0034】
Al
2O
3からなる透明材料膜の成膜は、フツリン酸塩ガラス基板10をALD装置のチャンバー内に設置して、真空排気し、所定の真空度に到達した後、原料ガスを供給することにより行われる。この際、フツリン酸塩ガラス基板10は所定の温度、例えば、200℃に加熱されている。尚、フツリン酸塩ガラスは、ガラス転位点が低いため、透明材料膜を成膜する際の温度は、できるだけ低温であることが好ましい。例えば、フツリン酸塩ガラス基板10に、透明材料膜を成膜する際の基板温度は、250℃以下であることが好ましい。
【0035】
透明材料膜としてAl
2O
3を成膜する際には、TMA(トリメチルアルミニウム、Al(CH
3)
3)とH
2Oとを交互に供給することにより成膜できる。
【0036】
透明材料膜としてTiO
2を成膜する際には、例えば、フツリン酸塩ガラス基板10を約200℃に加熱し、TEMAT(テトラキスエチルメチルアミドチタニウム(IV)、Ti[N(C
2H
5)(CH
3)]
4)とH
2Oとを交互に供給することにより成膜できる。
【0037】
(評価)
本実施の形態において、光学素子の強度は、4点曲げ試験により評価できる。4点曲げ試験は、例えば、島津精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフ AGC−10kN)を使用して測定できる。
【0038】
次に、本実施の形態における実施例について説明する。例1及び2が本発明の実施例であり、例3が比較例である。
【0039】
下記のとおり作製した光学素子の強度を、島津精密万能試験機(島津製作所社製、商品名:オートグラフ)を使用して、4点曲げ試験により評価した。それぞれ30枚ずつ4点曲げ試験を実施し、その平均値を各例の光学素子の強度とした。例3の強度に対する例1及び例2の強度の相対値を
図5に示す。
【0040】
(例1)
フツリン酸塩ガラス基板として、P
2O
5:20質量%、CuO:4質量%、Al
2O
3:4質量%を含む基板を使用した。フツリン酸塩ガラス基板は、板厚が0.3mmのものを使用した。
【0041】
例1における光学素子は、フツリン酸塩ガラス基板を使用し、下記の手順でALD法によりAl
2O
3を主成分として含有する透明材料膜を有する光学素子を作製した。
【0042】
手順は、フツリン酸塩ガラス基板をALD装置のチャンバー内に設置した。チャンバー内を真空排気し、所定の真空度とした。その後、TMA(トリメチルアルミニウム、Al(CH
3)
3)とH
2Oとを交互に供給して、フツリン酸塩ガラス基板の全面に、Al
2O
3を主成分として含有する透明材料膜を成膜した。この際、フツリン酸塩ガラス基板を200℃に加熱して行った。成膜された透明材料膜の膜厚は25nmであった。
【0043】
(例2)
例2における光学素子は、例1において、成膜時間を長くする以外は同様にして、フツリン酸塩ガラス基板の全面にAl
2O
3を主成分として含有する透明材料膜を成膜して光学素子を作製した。成膜された透明材料膜の膜厚は196nmであった。
【0044】
(例3)
例3における光学素子は、例1におけるALD法によるAl
2O
3の成膜をすることなく、フツリン酸塩ガラス自体を光学素子とした。
【0045】
結果を
図5に示す。
図5は、横軸をAl
2O
3膜厚とし、縦軸を各例の光学素子の4点曲げ強度であって、例3の強度に対する相対値を示す。
図5から、フツリン酸塩ガラスの全面に透明材料膜を形成することにより、光学素子の強度が向上していることがわかる。
図5に示すとおり、例1は例3に対して4点曲げ強度は、106%であり6%向上し、例2は例3に対して4点曲げ強度は、126%であり26%向上した。
【0046】
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 フツリン酸塩ガラス基板
11 微小のクラック
20 透明膜
30 供給源