(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245082
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】多対ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/00 20060101AFI20171204BHJP
H01B 11/02 20060101ALI20171204BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20171204BHJP
H01B 7/36 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H01B11/00 J
H01B11/02
H01B7/18 C
H01B7/36 Z
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-116746(P2014-116746)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-230836(P2015-230836A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 崇
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−254730(JP,A)
【文献】
実開昭52−084680(JP,U)
【文献】
特開平06−203650(JP,A)
【文献】
特開2014−038802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 7/18
H01B 7/36
H01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内層用の差動信号伝送用ケーブルを撚り合わせた内層部と、
複数の外層用の差動信号伝送用ケーブルを前記内層部の外周に巻回して形成される外層部と、を備えた多対ケーブルにおいて、
前記内層部の外周に介在を巻き付け、前記介在の外周に前記外層部を形成するようにし、
前記介在は、前記内層部の外周に絶縁テープを横巻きし、当該横巻きした絶縁テープの外周にさらに絶縁テープを縦添え巻きして形成される
ことを特徴とする多対ケーブル。
【請求項2】
前記絶縁テープは、絶縁樹脂とその一方の面に形成された接着層とを有する
請求項1記載の多対ケーブル。
【請求項3】
前記内層部は、2本の前記内層用の差動信号伝送用ケーブルからなり、
前記外層部は、6本の前記外層用の差動信号伝送用ケーブルからなる
請求項1または2記載の多対ケーブル。
【請求項4】
前記絶縁テープを縦添え巻きする際の巻方向は、前記外層部で前記外層用の差動信号伝送用ケーブルを巻回する方向と同じ方向である
請求項1〜3いずれかに記載の多対ケーブル。
【請求項5】
前記介在の外周に、前記外層用の差動信号伝送用ケーブルと共に識別用の線材を巻回して前記外層部を形成した
請求項1〜4いずれかに記載の多対ケーブル。
【請求項6】
前記差動信号伝送用ケーブルは、平行に配置された2本の信号線を絶縁体で一括被覆して構成される
請求項1〜5いずれかに記載の多対ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多対ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の差動信号伝送用ケーブルを備えた多対ケーブルが知られている。
【0003】
多数の差動信号伝送用ケーブルを備えた多対ケーブルでは、容易に曲げられるように、差動信号伝送用ケーブルを撚り合わせることが望ましい。差動信号伝送用ケーブルの数が多い場合、複数の差動信号伝送用ケーブルを撚り合わせて内層部を形成し、その内層部の外周に、さらに複数の差動信号伝送用ケーブルを巻回して外層部を形成して、多層構造とするのが一般的である。
【0004】
例えば、8本の差動信号伝送用ケーブルを用いる場合、2本の差動信号伝送用ケーブルを撚り合わせて内層部を形成し、その外周に6本の差動信号伝送用ケーブルを螺旋状に巻回して外層部を形成する。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−142070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の多対ケーブルでは、内層部の外周に外層部となる差動信号伝送用ケーブルを巻回する際に、内層部の差動信号伝送用ケーブルが変形してしまい、電気特性が劣化してしまう場合があるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、内層部の差動信号伝送用ケーブルの変形を抑制することが可能な多対ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の内層用の差動信号伝送用ケーブルを撚り合わせた内層部と、複数の外層用の差動信号伝送用ケーブルを前記内層部の外周に巻回して形成される外層部と、を備えた多対ケーブルにおいて、前記内層部の外周に介在を巻き付け、前記介在の外周に前記外層部を形成するようにした多対ケーブルである。
【0010】
前記介在は、前記内層部の外周に絶縁テープを縦添え巻きして形成されてもよい。
【0011】
前記介在は、前記内層部の外周に絶縁テープを横巻きし、当該横巻きした絶縁テープの外周にさらに絶縁テープを縦添え巻きして形成されてもよい。
【0012】
前記絶縁テープを縦添え巻きする際の巻方向は、前記外層部で前記外層用の差動信号伝送用ケーブルを巻回する方向と同じ方向であってもよい。
【0013】
前記介在の外周に、前記外層用の差動信号伝送用ケーブルと共に識別用の線材を巻回して前記外層部を形成してもよい。
【0014】
前記差動信号伝送用ケーブルは、平行に配置された2本の信号線を絶縁体で一括被覆して構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内層部の差動信号伝送用ケーブルの変形を抑制することが可能な多対ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多対ケーブルの横断面図である。
【
図2】本発明の一変形例に係る多対ケーブルの横断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る多対ケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る多対ケーブルの横断面図である。
【0019】
図1に示すように、多対ケーブル1は、複数の内層用の差動信号伝送用ケーブル2を撚り合わせた内層部3と、複数の外層用の差動信号伝送用ケーブル2を内層部3の外周に巻回して形成される外層部4と、を備えている。
【0020】
差動信号伝送用ケーブル2は、平行に配置された2本の信号線5を絶縁体6で一括被覆して構成され、断面視で楕円形状に形成されている。なお、これに限らず、差動信号伝送用ケーブル2は、断面視で長円形状(対向する平行な2本の直線と、その直線の端部同士を接続する円弧とからなる形状)に形成されてもよい。以下、内層用の差動信号伝送用ケーブル2を内層コア2a、外層用の差動信号伝送用ケーブル2を外層コア2bと呼称する。
【0021】
本実施形態では、2本の内層コア2aを互いの長軸方向が一致するように配置して撚り合わせ、その外周に、6本の外層コア2bを螺旋状に巻回(横巻き)して、合計8本の差動信号伝送用ケーブル2を用いて多対ケーブル1を構成している。ただし、差動信号伝送用ケーブル2の本数はこれに限定されるものではなく、内層コア2aの本数、外層コア2bの本数もこれに限定されない。また、本実施形態では、内層部3と外層部4の2層構造としているが、外層部4の外周にさらに差動信号伝送用ケーブル2を巻回して3層以上の構成としてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、内層コア2aと外層コア2bの巻方向は同じとしたが、逆方向でもよい。外層部4の外周には、絶縁テープからなる押え巻き8、アルミテープ9と編組シールド10とからなるシールド層11、およびシース12が順次設けられている。
【0023】
さて、本実施形態に係る多対ケーブル1では、内層部3の外周に介在7を巻き付け、介在7の外周に外層部4を形成するようにしている。
【0024】
内層部3と外層部4との間に介在7を設けることで、内層部3の外周に外層コア2bを巻き付ける際に、介在7が緩衝層の役割を果たし、内層コア2aの変形を抑えることが可能になる。介在7としては、絶縁樹脂の一方の面に接着層を形成した絶縁テープを用いるとよい。
【0025】
本実施形態では、内層部3の外周に絶縁テープを縦添え巻きして介在7を形成している。内層部3の外周に絶縁テープを螺旋状に巻回して(横巻きして)介在7を形成してもよいが、この場合、絶縁テープの重なり部分に形成される段差に外層コア2bが干渉して、外層コア2bの巻きピッチが一定とならない場合があり、長手方向に均一な構造とならないおそれがある。また、絶縁テープを横巻きする場合、縦添え巻きにする場合と比較して多くの絶縁テープが必要となりコストが高くなるため、絶縁テープを縦添え巻きして介在7を形成することが望ましい。
【0026】
絶縁テープを縦添え巻きして介在7を形成する場合、外層コア2bの巻き付け時に絶縁テープが捲れてしまわないように、絶縁テープを縦添え巻きする際の巻方向は、外層部4で外層コア2bを巻回する方向と同じ方向にするとよい。
【0027】
本実施形態では、絶縁テープを縦添え巻きして介在7を形成しているため、周方向の一部に絶縁テープが重なる部分が存在し、介在7が周方向に均一な構造となっていない。そのため、断面視において2本の内層コア2aの中心を通る円の中心(撚りの中心)Aと、6本の外層コア2bの中心を通る円の中心Bとがずれている。
【0028】
なお、本実施形態では、介在7を1層としたが、2層以上で構成してもよい。例えば、
図2に示す多対ケーブル21のように、内層部3の外周に絶縁テープを横巻きして第1介在7aを形成し、その外周にさらに絶縁テープを縦添え巻きして第2介在7bを形成してもよい。介在7を多層構造とすることで、介在7の厚さが増加して緩衝性能が向上し、機械的な強度も向上させることができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る多対ケーブル1では、内層部3の外周に介在7を巻き付け、介在7の外周に外層部4を形成するようにしている。これにより、介在7が緩衝層の役割を果たし、内層コア2aの変形を抑制し電気特性の劣化を抑制することが可能になる。
【0030】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0031】
図3に示す多対ケーブル31は、
図1の多対ケーブル1において、介在7の外周に、外層コア2bと共に識別用の線材32を巻回して外層部4を形成したものである。ここでは、絶縁テープを横巻きして介在7を形成する場合を示しているが、絶縁テープを縦添え巻きして介在7を形成してもよい。
【0032】
識別用の線材32は、弾性を有する樹脂からなり、介在7の外周に当接するように配置され、外層コア2bの内側(ケーブル中心側)に位置するように配置される。多対ケーブル31では、識別用の線材32を備えているため、識別用の線材32と接触する外層コア2bが外側にずれる。そのため、断面視において2本の内層コア2aの中心を通る円の中心(撚りの中心)Aと、6本の外層コア2bの中心を通る円の中心Bとがずれている。
【0033】
多対ケーブル31では、識別用の線材32を備えているため、外層コア2bの識別が容易になる。また、識別用の線材32により、外層コア2bの位置を保持することが可能であり、外層コア2bの位置ずれを抑制することが可能になる。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 多対ケーブル
2 差動信号伝送用ケーブル
3 内層部
4 外層部
7 介在