【実施例1】
【0061】
図3に工場出荷後、もしくは第一の電池交換後における、イグニッションオンからオフ、駐車中における制御の全体処理の概略を示す。
【0062】
初めに、ステップ31にて、駐車中と看做し、スィッチSW205をオン、スィッチSW210をオフにして、ステップ32にてコントローラ200をスリープとして、駐車中の保安装置の電力を第一の電池に担当させ、低消費電力モードに移行する。
【0063】
この処理はイグニッションスィッチがOnになるまで継続する。判定33にてイグニッションがOnになった場合には、ステップ34に処理を移行させ、コントローラをウェイクアップさせる。
【0064】
次に、ステップ35にて回生開始かどうかを判定する。この判定は、ECU16からの信号により判断する。回生開始後にはステップ36の回生充電制御に処理を移す。この詳細は別実施例にて述べる。ステップ36が終了した場合には、非回生制御ステップ37に処理を移す。そしてステップ39の判断にてイグニッションオンが継続しているならばステップ35へ、イグニッションオフになったならば、駐車中の処理であるステップ31に処理を移す。なお、イグニッションスィッチの信号はECU16からの情報を得る。
【0065】
ステップ35からステップ39の処理は、定期的に制御周期(例えば10msや0.1s)のイベントで実効、もしくは判定しても良い。また
図3の処理は、車両廃棄または、第一の電池交換まで処理が続けられる。
【0066】
図4では、
図3における非回生制御37を説明する。非回生制御37は、放電モードと強制充電モードの2通りに分けられる。放電モードは、回生充電後に第二の電池に充電された電荷が大きい場合と、第二の電池が空になり、第一の電池のみを使用する場合、クランキングの3通りの処理に分けられる。強制充電モードとは、両方の電池が空になり、第一の電池を強制充電する場合である。この処理を
図4の例で説明する。なお、
図4の処理は回生中、もしくは回生開始の場合には実行しない。
【0067】
まずステップ41にて、エンジンがクランキング中かどうかを判定する。クランキングならば、クランキング中処理42に処理を移し、クランキング中でないならばステップ43に処理を移す。クランキング中かどうかはECU15から情報を得る。
【0068】
ステップ42はクランキング中のスィッチSW処理を実行する。この処理は後述する。ステップ42の終了後、
図4の処理を終了させる。
【0069】
ステップ43では、クランキング開始かどうかを判定する。クランキング開始ならばステップ44に処理を移す。クランキング開始でないなら、ステップ45にてオルタネータ充電Off指令をECU15に送る(これは、省燃費の観点で余分なオルタネータの出力UPによる燃費悪化を防ぐためである)。ここでクランキング開始とは、車両側の都合によるもの(例えば、アイドリングストップ中はエアコンコンプレッサが停止しているため、アイドリングストップの途中で室温が上昇した場合)、電池システム10にて第一の電池が空になり、第一の電池を強制充電する必要が出た場合である。車両側の都合によるクランキング開始は、ECU15より情報を得る。第一の電池が空になったかどうかの判定は、第一の電池の充電率が予め設定された充電率以下の場合としても良い。この予め設定された充電率とは、第一の電池に鉛電池を使用した場合には例えば80%や90%としても良い。第一の電池が空になったかどうかの別の判定方法として、第一の電池の電圧が予め設定された電圧以下としても良い。この予め設定された電圧として、12.4Vや12.6Vとしても良い。なお、オルタネータの充電Offとは、オルタネータを止めても良いし、オルタネータの発電電圧を電池のOCVとなるように調整しても良い(この場合、オルタネータの発電電圧調整機能が必要となる)。このオルタネータの発電電圧調整としては、電流計で計測した電流(202と206の和)を、ECU15に上げて、フィードバックによる電圧制御をECUで行っても良い。ステップ45の終了の後、ステップ46に処理を移す。
【0070】
ステップ44では、第一の電池のスィッチSW205をOnとして、第二の電池のスィッチSW210をOffとしてクランキングに備える。なお、現在のスィッチSWの状態を継続しても良い。ステップ44の処理の後、
図4の処理を終了する。
【0071】
ステップ46にて、第二の電池が空かどうかを判定する。この判定方法として、第二の電池の電圧が予め設定された電圧以下となる場合としても良い。この予め設定された電圧として、第二の電池の定格電圧×第二の電池の直列数としても良いし、オーディオの音飛びの起きる電圧、例えば8Vとしても良い。第二の電池が空の場合、ステップ47に処理を移す。第二の電池が空で無い場合にはステップ48に処理を移す。
【0072】
ステップ47では、第一の電池を放電するため、スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffにする。ステップ47終了後、
図4のフローを終了させる。
【0073】
ステップ48では、第二の電池のみを放電させるため、スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnにする。これは、次回の回生にて、できるだけ充電電流を吸いたいため、放電時にできるだけ第二の電池を空にするための処理である。ステップ48終了後、
図4のフローを終了させる。
【0074】
以上の
図4のフローは先に第二の電池を放電させる例であったが、先に第一の電池を放電させても良い。
【0075】
図5は
図4におけるクランキング中処理42を説明したものである。
図5では、前回のスィッチのOn/Off状態を、
図5のスィッチのOn/Off状態の初期値とする。
【0076】
まずステップ501にて、スィッチSW205、スィッチSW210の両スィッチSWがOnになっているかどうかを判定し、Yesならステップ503、No(片方のみのスィッチSWがOn)ならばステップ504に処理を移す。
【0077】
ステップ502では、オルタ・補機電圧(
図2の電圧センシング線213で計測)が予め定められた閾値以下かどうかを判定する。閾値以下の場合には、ステップ504に処理を移し、そうで無いならば
図5の処理を終了させる。ここで、閾値として、例えばオーディオの音飛びの出る8Vとしても良い。オルタ・補機電圧は、
図2中の電圧センシング線213で計測した値を使用する。
【0078】
ステップ504にて、両方のスィッチがOnと仮定した場合の各電池の推定電流を求め、どちらかの電流が充電となるかどうか(横流)を判定する。横流が発生する場合にはステップ506に処理を移す(横流を防止するようにするための処理)。横流が発生しない場合にはステップ505に処理を移す。ここで、横流発生の判断材料としての推定電流は、第一の電池に関しては
図2の電流推定部204、第二の電池に関しては
図2の電流推定部209で推定する。以下、この横流判定方法について述べる。
【0079】
まず、第一の電池のOCV(Open Circuit Voltage;開放時の電池電圧)をV1、第二の電池のOCVをV2とする。そして、第一の電池の直流抵抗をR1、第二の電池の直流抵抗をR2、スィッチSW205の抵抗をr1、スィッチSW210の直流抵抗をr2としておく。この値の決め方は後述する。また、クランキングに必要な電流をIaとする。このIaはECU15から送られた値、または、現在電池に流れている電流(電流計202と206の和としても良い)としても良い。また電流の代わりに必要な電力Paが与えられたとするならば、電力=電流×電圧の式より、二次方程式を解くことによりIa=2*Pa/(V+√(V*V−4*Pa*R))としてPaよりIaを換算する(この場合PaはECU15から受信した値、もしくは現在の電流×オルタ・補機電圧としても良い。またクランキング可能条件としてV*V/4r≧Paである)。Vは、電池のOCV、Rは直流抵抗とスィッチSW抵抗の和である。2つの電池を並列に繋ぐ場合には、回路の合成よりV=((r2+R2)*V1+(r1+R1)*V2)/(R1+R2+r1+r2)、R=(R1+r1)*(R2+r2)/(R1+R2+r1+r2)として、Iaを計算する。V1は第一の電池のOCV、V2は第二の電池のOCV、R1は第一の電池の直流抵抗、R2は第二の電池の直流抵抗、r1はスィッチSW205のOn抵抗、r2はスィッチSW210のOn抵抗である。
【0080】
次に第一の電池201と第二の電池206の充電電流の推定方法を説明する。各電池の抵抗を考慮した手段により得られた情報を元に第一の電池201と第二の電池206をスィッチを切り替えを行うので、抵抗等の性質が異なる第一の電池と第二の電池のような場合であっても、総充電量を向上できる電池システムの提供することができる。
【0081】
2つの電池を並列に繋いだ場合の等価回路は
図6として表現する。これは電池のOCVが
図3の制御周期(例えば10ms)では殆ど変化しないと看做せるためである。
図3中の電流と電圧の式は、回路方程式より導かれる。ここで、第一の電池の電流は式1、第二の電池の電流は式2となる。式1、2は、放電方向を+と表現した。
第一の電池の電流={−(V2−V1)+(R2+r2)Ia}/(R1+r1+R2+r2)…(式1)
第二の電池の電流={(V2−V1)+(R1+r1)Ia}/(R1+r1+R2+r2)…(式2)
【0082】
この式1に基づいて電流推定部204、式2を電流推定部205により電流を推定することができる。そして、第一の電流が正でかつ第二の電流が正ならば横流が発生していないと判断する(逆に第一の電池の電流×第二の電池の電流<0ならば横流発生と判断する)。この判断は
図2中の比較器211に相当する。また、もっと簡易な横流判定法として、式3を満たすならば、横流が発生していないと判断しても良い。
−(R1+r1)≦(V2−V1)/Ia≦(R2+r2)…(式3)
【0083】
次に、ステップ505では、スィッチSW205(第一の電池のスィッチSW)をOn、スィッチSW210(第二の電池のスィッチSW)をOnと両方の電池を並列にして
図5の処理を終了する。
【0084】
ステップ506では、電池単独接続を仮定したときの電池推定電圧で、第一の電池電圧が大きいかどうかを判定し、第一の電池の推定電圧が大きい場合にはステップ507、そうでないならばステップ508へ処理を移す。ここで、電池単独接続時の推定電圧として、第一の電池の推定電圧は式4、第二の電池の推定電圧は式5とする。同様にr1,R1,r2,R2,V1,V2の推定方法は後述する。
第一の電池の推定電圧=V1−(R1+r1)Ia…(式4)
第二の電池の推定電圧=V2−(R2+r2)Ia…(式5)
【0085】
ここで、スィッチSWが第一の電池のスィッチSW205のみOnならば電圧センシング線203で読み取った値を第一の電池の推定電圧、スィッチSWが第二の電池のスィッチSW210のみOnならば電圧センシング線流計208で読み取った値を第二の電池の推定電圧としても良い。
【0086】
次に、ステップ507では、第一の電池を使用した方が電圧の低下が小さいため、スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffとして
図5の処理を終了させる。
【0087】
ステップ508では、第二の電池を使用した方が電圧の低下が小さいため、スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnとして
図5の処理を終了させる。
【0088】
ステップ503では、現在両方のスィッチSWをOnにしている状態なので、電流計202、206の値より、横流が発生しているかどうかを判断し、横流が発生しているならばステップ509、横流が発生していないならば、スィッチSWの状態を現状のままとして、
図5の処理を終了させる。
【0089】
ステップ509では、横流が発生しているため単独電池接続に切り替える必要があるため、第二の電池を使用すべきかどうかを判定する。第二の電池が使用可能ならば、ステップ511へ、そうでないならばステップ510に処理を移す。ここで、第二の電池が使用可能かの判定は、式5の電圧が予め定められた閾値(例えば、オーディオの音飛びの無い電圧8Vを使用しても良い)とする。
【0090】
ステップ510は、第一の電池しか使用できないため、スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffとして、
図5の処理を終了させる。
【0091】
ステップ511では、第二の電池が使用できるため、優先的に第二の電池を使用させるため、スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnにして、
図5の処理を終了させる。
【0092】
次に、各電池のOCVと抵抗、スィッチSW抵抗の推定方法について述べる。
【0093】
ここで、装置側で推定する方法と、予め特性データをテーブルとして埋め込む方法が有り、それぞれについて説明する。
【0094】
まず装置側で推定する方法について述べる。各電池のOCVはスィッチSWがOpenになっている場合には、電圧センシング線で読み取った値としても良い。スィッチSWがOnになっている場合には、オルタ・補機電圧を電圧センシング線で読んだ値Vより、電流計で読み取った電流I、抵抗(電池の直流抵抗とスィッチSWのOn抵抗の和をRとする)より、V−IRとしても良い。直流抵抗は、前回スィッチSWをOnからOff、またはOffからOnにした時の電池の測定電圧の差ΔVと、スィッチSWをOnであった時の電流Iより、|ΔV/I|としても良い。スィッチSWのOn抵抗は、前回スィッチSWをOnからOff、またはOffからOnにした時の電池の測定電圧とオルタ・補機電圧の差より、直流抵抗と同様に求めても良い。この方法を用いるならば、電池のプレ設定は必要無くなり、かつ電池を交換しても対応できる。
【0095】
次に、予め特性データをテーブルとして埋め込む方法について述べる。OCVとは、十分に時間が経過した後のOCV(定常OCV)と数秒オーダーで変化する過渡的な電圧変化(分極と呼ぶ)の和で表現される。定常OCVは一般的には、電池の充電率の関数として現わされるため、
図7のテーブルを保持し、SOCの値により、
図7のテーブルを補間して定常OCVを求めても良い(
図7は仮想の電池の例である)。ここで、充電率はSOC(State of Charge)と表現した。SOCの求め方は、文献「足立修一・丸太一朗:カルマンフィルタの基礎, 東京電機大出版局,2013年3月10日第一版二刷発行」で用いられるカルマンフィルターを用いても良いし、イグニッションをOnにした瞬間の電池の電圧より、
図7のテーブルより逆にSOCを求めて初期値とし、100×電流積分の値/電池の容量として時々刻々更新しても良い(電流積分法)。また、計測した電圧‐直流抵抗×電流‐分極電圧を定常OCVと看做して、
図7のテーブルより逆にSOCを求めても良い(電流は放電を+とする。電圧推定方式と呼ぶことにする)。更には、電流積分法と電圧推定方式を重みづけ平均を取っても良い。
【0096】
次に、分極電圧の推定方法について述べる。マイクロHEVにおける充放電は1分程度未満のため、電池の等価回路を
図8として仮定する。ここで、分極に相当するのは、分極容量81と分極抵抗82の電圧である。ここで、分極容量cと抵抗rの値が判るならば、式6により、分極電圧が判る。
分極電圧=I(t)*exp(−t/cr)/cr …(式6)
I(t):計測した電池電流(充電方向を+とする)
*:畳み込み積分
【0097】
また式6を簡略化して式7を用いても良い。ここで式7を使用する場合には、vp(0)=0としても良い。
vp(t)=vp(t−Δt)*(1−Δt/cr)+I(t)×Δt/c
…(式7)
Δt:電流計測の時間刻み幅
vp:分極電圧
【0098】
以上では、cとrの値が必要となるため、
図9のテーブルとして用意しても良い。具体的には、前述したSOCの値により、
図9のテーブルを補間してcとrの値を求める。なお、温度によりc、rは変化する場合がある。その場合には、各電池に温度計を張り付け、かつ
図9のテーブルを温度毎に用意して、計測した温度により補間にて値を求めても良い。
【0099】
次に、直流抵抗とスィッチSW抵抗の値について述べる。まず直流抵抗のテーブル例を
図10に記す。同様に、前述したSOCにより
図10のテーブルにて、補間により値を求めても良い。更には、直流抵抗は温度により値が変化する場合もあり得る。この場合には、各電池に温度計を張り付け、かつ
図10のテーブルを温度毎に用意して、計測した温度により補間にて値を求めても良い。スィッチSW抵抗は値を一つコントローラ200に記憶しても良いし、温度毎のテーブル例
図11を保持し、コントローラの温度計により値を補間しても良い。ここで、直流抵抗とスィッチSW抵抗は前述した、計測値により推定した値を用いても良い。
【0100】
以上の処理にて、スィッチSWを切り替える際に、スィッチSW切り替えタイミングによっては、瞬間的に電池が接続されない場合もあり得る。この対策のために、
図2の電源システムにコンデンサ121を入れた、
図12の構成としても良い。また、スィッチ制御部212に、電池を片方のみOnに切り替える際に、両方の電池をOffを防止する回路を入れても良い。このゲート回路の例を
図13に記す。
【0101】
図13は、スィッチSW205信号1301、スィッチSW210信号1302を入力として、スィッチSW205ゲート信号1311、スィッチSW1312ゲート信号1312を作成する。ここで、スィッチSW205信号、スィッチSW210信号とは
図3、
図4、
図5中のSW信号のことである(TTL;Transistor and Transistor Logic信号でも良い)。そして1の時をON、0の時をOFFと定義する。またスィッチSW205ゲート信号とは、
図2中のスィッチSW205の信号線、スィッチSW210ゲート信号とは
図2中のスィッチSW210の信号線を指す。ここで、
図13は
図2中のSW制御部212に相当する。まず両方Off信号となった場合を防ぐため、ORゲート1302とNOTゲートにより、両方Offとなる条件を判定する。その両方OFFとなる信号は1304となる。両方OFFとなる場合は、安全サイトになるように強制的に第一の電池に繋ぐものとするため、ORゲート1309により、スィッチSW205信号の候補と、両方OFF信号とのORとして、スィッチSW205ゲート信号とする。なお、駐車中は、コントローラ200はスリープ状態とするため、各ゲートの電源がOFFになる。その場合に、第一の電池を保安装置の電源として利用するため、プルアップ抵抗1310を用いて強制的に信号を1にして、スィッチSW205をOnとして保持するようにする。なお、機械式リレーをスィッチSW205に使用した場合には、ゲート電流(リレーの電磁石)が0となる位置でリレーがOnとなるようにスィッチSW端子を接続しておけば良いため、プルアップ抵抗は必要ない。また、機械式リレーにて、ラッチアップ方式(電磁石電流が流れなくなっても前のスィッチSW状態を保持するタイプ)のリレーを使用する場合も、この限りでない(プルアップ抵抗不要でかつ、電流0時の状態を考慮したスィッチSW端子を考慮しなくても良い)。もしスィッチSW205にFETやIGBTを使用する場合には、FET(もしくはIGBT)ドライバーを更に追加する場合がある。この場合にはFETドライバーは、駐車中でも電源を落とさないようにする。もしFETドライバーの消費電流が大きい場合には、スィッチSW205についてのみ、機械式リレーを並列に接続して、電磁石の電流を0にした場合にOnとなるようにしておき、イグニッションがON中のスィッチSW動作をFETに分担させ、機械式リレーの寿命が長くなるようにしても良い。もしくは、プルアップ抵抗を使わない場合にはスィッチSW205にダイオードを並列に繋いでおいても良い(ダイオードの電流方向は第一の電池からオルタ・補機側とする)。また、スィッチSW210にFETを使う場合には、駐車中にOffとしておいた方が良いため、スィッチSW210のゲートにプルダウン抵抗を入れておいても良い。
【0102】
次に遅延について説明する。ここで、各信号スィッチSW205、スィッチSW210がONからOFFに変わった時には、スィッチSWがONになるまでの遅延や、ゲートの遅延により、両方OFFになる恐れもある。このため、スィッチSW信号を遅延させる回路(1306、1307)を設け、遅延した信号と元の信号のORを取ることにより(ORゲート1305、1308)、両方OFFを防ぐ。なお、スィッチSW205信号については、プログラム側の割り込みの関係より、万が一両方OFFとなる場合を防ぐために、この信号をスィッチSW205信号の候補として、前述したように、両方OFF状態信号とのORを取り、スィッチSW205ゲート信号1311とする。スィッチSW210ゲート信号は、ORゲート1308の信号を使用する。遅延回路としては、ゲート信号に積分回路を接続し、その積分回路の出力をシュミットトリガで受けた回路としても良い。ここで、遅延時間は、スィッチSWのON遅れ時間+ゲートの遅れ時間により予め設定した値として積分回路の時定数を決めても良い。
【0103】
なお、
図13は回路であるが、
図13に相当するプログラムのロジックとしても良い(プルアップ抵抗を入れる場合は、スィッチSW205ゲート信号として使うCPUのI/O信号にプルアップ抵抗を付ける)。
【0104】
なお、以上で述べたプルアップ抵抗、プルダウン抵抗はFETがPチャンネルかNチャンネルかでGNDか第一の電池の正極電圧に繋ぐかが変わる場合があるが、駐車中にスィッチSW205がOn、スィッチSW210がOffになるように繋げば良い。
【0105】
次に、長期駐車にて、第一の電池ないし、第二の電池が自己放電により電圧が低下していた場合の対策について述べる。この場合の処理を、イグニッションがONになった時の処理、
図3のコントローラウェイクアップ中の処理34に含めた例として説明する。この場合の処理の例を
図14として説明する。
図14はコントローラ200がウェイクアップした後の処理となる。
【0106】
ウェイクアップの後ステップ141にて、第一の電池電圧(OCVと一致)がある閾値未満かどうかを判定する。閾値未満の場合にはステップ143、閾値以上ならステップ142に処理を移す。ここでの閾値として、SOC80%、または90%の値の電圧に相当する値と予め設定しておいても良い。この場合には、第一の電池の充電率とOCVのテーブル(
図7)は保持しておく必要がある。
【0107】
ステップ143では、第一の電池の充電率が不足しているため、スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffにして、ステップ144に処理を移す。ステップ144ではクランキング指令を出し第一の電池の充電を開始し、ステップ145に処理を移す。ここで、クランキング指令を送らずに、ドライバーがエンジンをクランキングするまで待っていても良い。
【0108】
ステップ145では第一の電池の充電率以上になるまで繰り返し、充電率が閾値以上になったらステップ146に処理を移す。ここでの充電率の求め方の手続きを述べる。まず充電を開始して、電流がCV充電になった後の電流時系列i(t)を、指数関数と看做して関数近似する(式8の係数x,y,zを求める)。なお、R1は、充電開始前後の電流、電圧を用いR1=(充電直後の電圧‐充電前の電圧)/(充電直後の電流‐充電前の電流)として計算しても良いし、前述したように予めテーブルで保持した値を使用しても良い。
【0109】
ここで、計測値より、Q(t),f(t),g(t)の時系列は求めることができるため、CV充電が開始された時刻τ,時刻τ+ΔT,…,時刻τ+(n−1)ΔTのデータの蓄積が有れば、最小二乗より式9としてx,y,zを求めることができる。
【0110】
充電率が規定値かどうかは、式9で求めたzを用い、式10が成立したときに、ステップ146が成立したと判定すれば良い。式9は過去の時系列を記憶する必要があり、コントローラ200のCPUのスペックでは計算できない場合もある。その場合には、時系列を一つづつアップデートする再帰最小二乗(相良,秋月,中溝,片山:システム同定,計測自動制御学会,1981年)を用いても良い。目標の充電率は、ステップ141で使用した充電率(例えば80%、90%)の値を使用すればよい。
目標の充電率のOCV−初期OCV≧Q(t)*z …(式10)
【0111】
次にステップ146において、第二の電池の電圧が閾値以上かを判定し、閾値未満の場合には、ステップ147に処理を移し、スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnにして、第二の電池の電圧が閾値になるまで繰り返す。第二の電池の電圧が閾値以上になったときは、ステップ148に処理を移し、エンジンを止めても良い指令をECU15に送る。アイドリングストップ中ならば、ECU側でオルタネータを止めても良い。そして
図14のフローを終了させる。ここで、閾値は、前述した第二の電池の最低電圧とする。
【0112】
ステップ142では、第二の電池の電圧が閾値未満かどうかを判定し、閾値未満なら第二の電池を充電する必要があるため、ステップ143に処理を移す。閾値以上ならば
図14の処理を終了させる。ここでの閾値はステップ146で説明した閾値と同じ値を用いる。
【0113】
以上で、回生充電時には、電池システムの充電電流を推定できるため、その推定充電電流をECU15に送信する。ECU側では、オルタネータによるトルク変化(電流に比例)があるため、ブレーキ時のトルク不連続を防ぎ、乗り心地を良くするために、機械式ブレーキ強調制御をおこなっても良い。また充電電流の代わりに、充電電力をECU15に送信しても良い。充電電力は推定充電電流×オルタ・補機電圧として計算する。
【0114】
次に、回生開始から終了までの間に一度だけスィッチの切り替えを行う実施例1を説明する(
図3の中の36)。電池並列接続を禁止し、且つ、スィッチスィッチSWの切り替えを一回だけとすることで、横流を極力抑え、スィッチスィッチSWの切り替えによるノイズを抑えることができる。
【0115】
切り替えのタイミングとしては、例えば、片方のみの電池を繋いだ場合の電流時系列を推定し、第一の電池の電流時系列をI(t)、第二の電池の電流時系列をi(t)とした時に時系列I(T−τ)、i(τ)を比較し等しくなるように非線形方程式の解τを求め、回生からτ経過したときに、第二電池から第一電池に切り替える(Tは回生時間)。
【0116】
図15に回生充電制御の処理例を記す。ステップ151において、まず先に第二の電池を選択させる(先に第一電池を充電しても良いが、その例は後述する)。具体的にはスィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnとする。
【0117】
次に、ステップ152において、第一電池のみを選択した場合の推定電流時系列i1(t)を受信する。この推定電流時系列は、
図2中の電流推定部204で計算される。
【0118】
次に、ステップ153において、第二電池のみを選択した場合の推定電流時系列i2(t)を受信する。この推定電流時系列は、
図2中の電流推定部209で計算される。
【0119】
ここで、ステップ152、153の推定電流時系列計算方法と、受信フォーマット例を説明する。ここで、フォーマット例は、予め式を仮定して式の中の定数を送る場合と、電流時系列を送る例の2通り有る。それぞれについて説明する。
【0120】
まず、鉛電池のように容量が大きくOCVが一回の回生で殆ど変化しない電池(大容量電池)、容量が小さくOCVが一回の回生で大きく変化する電池(小容量電池)、キャパシタのように分極を無視できる電池(正確には電池ではないが、本稿では電池と表現)の3通りの電池それぞれの場合について述べる。大容量電池の等価回路を
図16を仮定する。この場合には、
図16の回路方程式を解くことにより、式11の電流時系列i(t)となる。
【0121】
小容量電池の等価回路を
図17と近似する。これは、OCV(SOC)の関数を線形と近似した場合である。この場合には、
図17の回路方程式を解くことにより、式12の電流時系列となる。
【0122】
キャパシタの等価回路を
図18とする。この場合には、
図18の回路方程式を解くことにより、式13の時系列となる。
【0123】
このため、第一の電池、第二の電池、各電池の種類により、式11、式12、式13かの関数を決めておき、係数を計算して係数を送れば良い。ここで、係数の代わりに、CC充電時間、Ia、CV充電期間における電流時系列を送っても良い。この時系列としては、1s毎や0.5s毎の時系列としても良い。なお、小容量電池のCC充電時間κはランベルトのW関数であるが、ランベルトのW関数は高速で精度良い数値計算法(参考文献、Chapeau−Blondeau, F. and Monir, A:Evaluation of the Lambert W Function and Application to Generation of Generalized Gaussian Noise With Exponent 1/2, IEEE Trans. Signal Processing, 50(9), 2002)が提案されているため、コントローラ200のCPUで計算可能である。またW関数のテーブルを予め設定して、補間により値を求めておいても良い。次に、式11、式12、式13中の各係数の求め方について述べる。直流抵抗、スィッチSW抵抗は、前述したように、過去の電流変化と電圧変化の比で求めても良いし、予めテーブルに設定しておいた値を用いても良い。初期OCVは、各電池に繋がるスィッチSWがOffの場合には計測電圧値−分極電圧としても良い。ここで問題になるのは分極電圧である。分極電圧は、分極容量と分極抵抗が判っている場合には、計測電流により、式6ないし式7で計算して求めておいても良い。分極容量と分極抵抗は、前述したように、テーブルを保持し(但し、充電時のテーブルを別に用意)補間により求めても良いし、過去の時系列データにより求めても良い。この方法としては、前回のCV充電時の計測データを用い、式9として求めても良い(但し、VとIは充電時における計測値から求め、Q,f,gを求める)。式9でx=−分極容量×分極抵抗、y=分極抵抗×(1+分極容量/容量C)、z=1/容量Cより、連立方程式を解くことで、分極容量と抵抗が求められる。なお、初回イグニッションOn時でかつ、
図14の処理が入らない場合については、分極容量と抵抗は不明なため、前回走行終了直前の値を使用しても良い。工場出荷時の設定値としては、電池のCV充電を行い、計測データから初期値を設定しておいても良い。なお、Iaは、ECU15から受け取っても良い。
【0124】
次にステップ154にて充電電荷が最大となるように、切り替え時間τを決める。この考え方を述べる。第一の電池の電流時系列をi1(t)、第二の電池の電流時系列をi2(t)として、回生時間がTならば、回生時の充電電荷Qは式14となる。
【0125】
式14の最大を与えるのはdQ(τ)/dτ=0となるτのため、式15の式の解τが電荷最大となる切り替え時間となる。
i2(τ)=i1(T−τ) …式15
【0126】
式15は非線形方程式となる。解のイメージを
図19に記す。ここで、i2が191(i2(τ)に相当)、i1を時間軸を逆にプロットしたもの(i1(T−τ)に相当)が192である。この交点193が式15の解τとなる。そのため、第二の電池の切り替え時間τにおける電流と、第一の電池の回生終了時の電流が一致することになる。
【0127】
すなわち、回生時間をT、第二の電池の充電時間をτ(T>τ)、第一の充電時間をT−τとした時に第一の電池と第二の電池の充電量が最大となるタイミングτでスィッチスィッチSWの切り替えを行う(第一の電池と第二の電池は逆でも構わない)。τは、第二の電池の、充電時間と電流値をプロットした式を充電時間0からτまでを積分した値と第一の電池の充電時間と電流値を逆にプロットした式をTからτまでの範囲で積分した値の総合値が、回生時間Tの間で最大となるタイミングである。
【0128】
すなわち、回生時間をT、第二の電池の充電時間をτ(T>τ)、第一の充電時間をT−τとした時に第一の電池と第二の電池の充電量が最大となるタイミングτでスィッチスィッチSWの切り替えを行う(第一の電池と第二の電池は逆でも構わない)。τは、第二の電池の、充電時間と電流値をプロットした式を充電時間0からτまでを積分した値と第一の電池の充電時間と電流値を逆にプロットした式をTからτまでの範囲で積分した値の総合値が、回生時間Tの間で最大となるタイミングである。
【0129】
式15の非線形方程式は、ニュートン法を用いても良いし、二分法を用いて解いても良い(参考文献、三井田, 須田:数値計算法第2版, 森北出版, 2014)。なお数値計算の途中で電流関数の値を計算するには、前述した式を用いても良いし、もし時系列データで与えられた時には、補間により関数の値を計算しても良い。
【0130】
ここで、実際にはi1は、τにより分極電圧の絶対値が下がることで、推定した電流時系列とずれる可能性もある。この補正としては、式11のκの補正として式16の関数、式12の補正として式17の関数としても良い。
【0131】
なお、式15は回生終了時間Tが判っているものとした場合である。TはECUから情報を得られる場合(この場合、例えばECU15側で速度と減速度よりTを求めてもよい)は良いが、不明なことが多い。Tが不明の場合には、第一の電池は大容量電池を使用するため、i1をI∞として計算しても良いし、回生にかかる典型的な時間(例えば5sや10s)を予め用意しておいてもよい。
【0132】
ステップ154にてτを求めた後、ステップ155に処理を移し、回生開始からの経過時間がτ以上かを判定する。τ以上ならば、ステップ157に処理を移し、そうでないならステップ156に処理を移す。ステップ156では回生終了かどうかを判定し、回生が終了していないならステップ155に処理を戻す。回生終了かどうかの判定はECU15からの信号または、電流計の和の値が0以上になったかで判定する。回生が終了したなら
図15の処理を終了させる。
【0133】
ステップ157では、第二電池への選択指令をスィッチSWに送る。具体的には、スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffとする。スィッチSWを切り替えた後にステップ158に処理を移す。ステップ158は回生終了になった時に
図15の処理を終了させる。
【0134】
以上の処理では第二の電池を先にOnにしたが、第一の電池を先にOnとしても良い。
【実施例2】
【0135】
本発明のマイクロHEVにおける第2の実施形態のフローを
図20に基づいて詳細に説明する。実施例2は、回生開始から終了までの間にスィッチを複数回切り替えるものである。一定間隔で第一の電池と第二の電池の推定電流を求め、その都度、第一の電池と第二の電池の推定電流のうち、推定電流が大きい方にスィッチを切り替え充電を行う。
【0136】
具体的には、第一の電池と第二の電池が共にCC充電状態可能な時は、周期的にスィッチを切り替える。一方のCC充電が終わると、もう一方の電池の充電を行い、その後は、第一の電池と第二の電池の推定電流のうち、推定電流が大きい方にスィッチを切り替え充電を行う。以下詳細に説明する。
【0137】
この例は、回生時の充電時において、横流を極力防止するために(スィッチSW切り替え時の瞬間に一瞬だけ横流が発生可能性は有る)、電池の同時並列を禁止し、1回の回生におけるスィッチSWの切り替えを複数回許した場合の処理を示す(残りの処理は実施例1と同じである)。即ち実施例1における
図15の代わりに
図20を実施する。
【0138】
まず、ステップ2001にて、第一電池のみを接続した直後の推定電流i1を受信する。この計算は
図2の電流推定部204で計算する。この計算方法としては、現在スィッチSW205がOffの場合には、(オルタネータのCV電圧‐第一の電池の計測電圧)/(第一の電池の直流抵抗+スィッチSW205のOn抵抗)とする。直流抵抗とスィッチSWのOn抵抗は、実施例1で述べた方法を使う。現在スィッチSW205がOnの場合には、計測した電流値とする。その後ステップ2002に処理を移す。
【0139】
ステップ2002では、第二電池のみを接続した直後の推定電流i2を受信する。この計算は
図2の電流推定部209で計算する(以下、電流は充電方向を+とする)。この計算方法としては、現在スィッチSW210がOffの場合には、(オルタネータのCV電圧‐第二の電池の計測電圧)/(第二の電池の直流抵抗+スィッチSW210のOn抵抗)とする。直流抵抗とスィッチSWのOn抵抗は、実施例1で述べた方法を使う。現在スィッチSW210がOnの場合には、計測した電流値とする。その後ステップ2003に処理を移す。
【0140】
ステップ2003では、両方の電池がCC充電(定電流充電)になるかどうかを判定し、両電池共にCC充電ならばステップ2008へ、そうでないならステップ2004へ処理を移す。この判定方法として、実施例1で述べた、Ia(オルタネータの発電電流−補機電流)を用い、i1≧Iaかつi2≧Iaとする。
【0141】
ステップ2004ではi1とi2を比較して、i1が大きいならステップ2005に処理を移し、そうでないならステップ2006に処理を移す。ステップ2005では第一の電池を選択するスィッチSW指令を送る。具体的にはスィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffとする。その後ステップ2007に処理を移す。ステップ2006では第二の電池を選択するスィッチSW指令を送る。具体的には、スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnとする。その後ステップ2007に処理を移す。これは、充電電流の大きい方の電池を選択することで、充電電荷を増やすためである。
【0142】
ステップ2008ではどちらの電池を繋いでもCC充電となるため、CC充電時間を延ばすような処理「CC充電時SW選択処理」を実行する。この処理については後述する。ステップ2008終了後、ステップ2007に処理を移す。
【0143】
ステップ2007では、回生が終了したかどうかを判定し、終了していないならステップ2001へ、終了したなら
図20の処理を終了する。なお、これらの処理は計測周期(例えば10ms毎)、もしくは0.1s毎にステップ2001の処理に戻しても良い。
【0144】
ステップ2008のCC充電時スィッチSW選択処理としては、第一の電池を選択する時間と第二の電池を選択する時間のデューティー比をη:1−ηとして切り替えても良い(0≦η≦1)。スィッチSW切り替えは周期的に行っても良い。ここでηは、予め定められた値としても良いし、
図21の方法を使用してもよいし、ηを計測した電圧、電流により変化させても良い。
【0145】
次に、
図21を用い、
図20のCC充電時スィッチSW選択処理を説明する。この処理の目指す所は、交互に電池を切り替えることで片方の電池を休ませ、分極電圧を小さくし、次回の充電電流を増やし、トータルのCC充電時間を延ばして、回生時の充電電荷を増やすことにある。
【0146】
まずステップ2101にて、第一の電池の推定電流がCC充電電流Ia未満かどうかを判定し、Ia未満ならばステップ2102へ、そうでないならステップ2103に処理を移す。
【0147】
ステップ2102では、第一の電池にスィッチSWを選択させる指令を送る。具体的にはスィッチSW205をOn、スィッチSW210をOffとする。その後、ステップ
図21の処理を終了させる(
図20のステップ2007に処理を移す)。
【0148】
ステップ2103では、第二の電池にスィッチSWを選択させる指令を送る。具体的にはスィッチSW205をOff、スィッチSW210をOnとする。その後、ステップ
図21の処理を終了させる(
図20のステップ2007に処理を移す)。
【0149】
この
図20、
図21の処理のループにて、先に第一の電池のCC充電が終わることになる。その後、第二の電池をΔtだけCC充電したとする(第一の電池を休ませることと等価)。その間に、第一の電池の分極電圧はΔt×vp/cLrLだけ下がることになる(vpはCC充電が終了したときの分極電圧、cLは分極容量、rLは分極抵抗)。このため、次に第一の電池に切り替えた場合、Δt×vp/(Ia*rL−vp)だけCC充電できることになる。このため、第一の電池のCC充電時間が更に延長され、充電電荷が増える。またデューティー比で、第一の電池のOn時間と第二の電池のOn時間の比はvp :Ia*rL−vpとなって切り替えられる。なお、先に第一の電池のCC充電を優先させる理由を下記に述べる。
【0150】
電池切り替えによるCC時間κはスィッチSWを頻繁に切り替えるとして、第一電池のOnとなる時間率をη、最初に第一電池のCC充電が終了する時間をλ、第一の電池の等価回路を
図16、第二の電池の分極を無視して
図18と近似するならば、回路方程式を解くことにより式18で近似できる。
【0151】
式18より、κを最大化するには式19を最大化するのと等価である。
【0152】
式19は
図16の回路方程式より、式20を最大化するのと等価となる。
【0153】
式20を最大化するには、vL−vp<0より、最速でvLをvpに近付ければ良い。このため、最初は第一の電池の分極電圧を最速でvpに近付けるため、第一の電池に接続する。
【0154】
ここで、第一の電池が先にvpになった後の、第一の電池のデューティー比をηとするならば、η=vp/ Ia*rLとなるため、このデューティー比ηをコントローラ200で観測した結果より、分極抵抗rLを求めて、値を保持しても良い(vp=Va−VL−Ia*RL、rL=vp/(Ia*η))。
【0155】
次に、デューティー比ηを計測した電流電圧で変化させる場合について述べる(基本的には、第二の電池に小容量電池を使用した場合)。ここでは、大容量電池(第一の電池)の分極電圧を制御する思想の場合と、小容量電池のOCV(第二の電池
図17における電圧171で、小容量電池の電圧‐IaRsに相当)を制御する思想の場合の2通りについて述べる。
【0156】
前者の場合には、第一の電池の電圧時間上昇率をm1とし、式21としてηを決めても良い(但し0≦η≦1の範囲とするリミタを付ける)。式21は、分極に実質η*Iaの電流が流れたと仮定したときの回路方程式より導かれる。
【0157】
後者の場合には、小容量電池の電圧時間上昇率をm2として、式22としてηを決めても良い(但し0≦η≦1の範囲とするリミタを付ける)。これは小容量電池(第二電池)の分極に実質(1−η)Iaの電流が流れたと仮定したときの回路方程式より導かれる。
【0158】
ここで、時刻t1から第一の電池のCC充電と第二の電池のCC充電の終了時刻を一致させたい場合には、式23となるm1とm2の関係としても良い。
【0159】
式23の分母は、「CC充電が完了する時点のOCV−現時点のOCV」である。ここでVs(t1)は、第二電池のスィッチSW210がOff時の電圧としても良いし、スィッチSW210がOnの場合には、第二電池の端子電圧―IaRaとしても良い。
【0160】
ここで、式23より式24として、A(t)を定義するならば、m1,m2は式25となる。
【0161】
m1,m2は非負の値で出来るだけ小さな値の方が良いため、A(t)=∞(即ちvp(t)=vpとなった後)または、Ia=vs(t)/(rs*(1+cs/C))+vp(t)/rLが成立した後に、式21でm1=0としてηを設定しても良い(但しvp(t)は非負の必要有り)。なお、vp(t)=vpとなる条件は、前述した、先に第一電池のみを繋いでCC充電を終わらせる場合と同じである。
【0162】
ここで、Ia=vs(t)/(rs*(1+cs/C))+vp(t)/rLが成立した後は、スィッチ切り替えによるCC充電時間を無限に伸ばすことができ(実際には大容量電池のOCVが変化するため、有限時間となるが、回生時間、例えば10s程度ならば、十分にCC充電時間を延ばせる)、充電電荷は最大となる。このため、先にIa=vs(t)/(rs*(1+cs/C))+vp(t)/rLとさせるようにηを制御すれば良い。この制御方法としては、式26の回路方程式の元で、両方の電圧上昇を小さくするように、制御目標、
を最小とするようにηを決める。このηを決める制御手段としては現代制御理論を利用しても良い。
【0163】
Ia=vs(t)/(rs*(1+cs/C))+vp(t)/rLの条件が成立した後には、式21でm1=0としたη(η=vp(t)/ Ia*rL)と固定させる。なお、可制御条件を満たさなく、どのようにしてもIa=vs(t)/(rs*(1+cs/C))+vp(t)/rLが成立しないこともあり得る。例えば電圧制約条件よりどのようにしてもIa>vsm/(rs*(1+cs/C))+vp/rL(vsmは小容量電池の分極電圧の上限=Ia*rs*(1−exp(−κ/(cs*rs)))+vs(0)* exp(−κ/(cs*rs))、κは式12のκとなったり、cl*rL=cs*rsとなる場合である。この場合には、前述したように先にvp(t)=vpとなるようにした後にη=vp/ Ia*rLとしても良いし、次に述べる方法としても良い。
【0164】
別のCC充電時間を延ばす方法の一つとして、先に第二電池単独でCC充電をして、第二電池単独でCC充電ができなくなったならば、式22にて、m2=0とした場合のηとしてデューティー比を決めてスィッチSW切り替え制御をおこなっても良い。
【実施例3】
【0165】
本発明のマイクロHEVにおける第2の実施形態のフローを
図22に基づいて詳細に説明する。第三の実施形態は、回生開始から終了までの間にスィッチを複数回切り替えるものであり、かつ両方の電池を同時に充電するよう接続しても良いものである。前述した第二の実施形態のCC充電終了後に、2つの電池のスィッチをOnとする。また、この際、常時横流を監視して、横流が発生した場合には、即座に充電電流の大きくなる方の電池1つのみのスィッチSWをOnにする等の制御を組み合わせることで横流を防ぐことができる。
【0166】
この例は、回生時の充電時において、回生時の充電電荷を増やすため、電池の同時接続を許す場合である(残りの処理は実施例1と同じである)。即ち実施例1における
図15の代わりに
図22を実施する。
【0167】
初めにステップ2201において、第一電池のみを接続した場合の充電電流i1を推定する。これは実施例2で説明した方法と同じである。
【0168】
次にステップ2202において、第二の電池のみを接続した場合の充電電流i2を推定する。これは実施例2で説明した方法と同じである。
【0169】
次にステップ2203において、第一の電池と第二の電池を両方接続した場合の各々の電池の充電電流(第一の電池電流をI1,第二の電池電流をI2)を推定する。この方法について述べる。並列に繋いだ場合の等価回路は、
図6となる。
図6では放電方向を+としているため、電流の符号を逆にすることで、I1,I2が計算できる(CC充電時)。但し、CV充電時にはi1=I1, i2=I2となるため、i1,i2の値を使用する。CV充電の判定としては、
図6中の電圧VがVa(オルタネータのCV電圧)以上ならば、CV充電と判定する。ここで、直流抵抗とスィッチSWのOn抵抗、各電池のOCVは実施例1で説明した方法で推定する。ここで、現在両方のスィッチSWがOnになっている場合には、計測した電流を用いても良い。
【0170】
次にステップ2204において、i1とi2両方共にCC充電電流Ia以上かどうか(第一第二の電池片方だけ使用した場合、どちらもCC充電になるかどうか)を判定する。もし、どちらの電池を接続してもCC充電になるならば、ステップ2205に処理を移し、そうでないならばステップ2206に処理を移す。
【0171】
ステップ2205では、CC充電時のスィッチSW選択処理(実施例2で述べたCC充電時の処理
図21と同じ処理)を実行し、ステップ2207に処理を移す。
【0172】
ステップ2206では同時接続時した時に、横流が発生するかどうかを判定し、横流が発生するならば、ステップ2208、そうでないなら2210に処理を移す。この判定方法としてI1<0またはI2<0とする。
【0173】
ステップ2208では、同時接続では横流が発生するため、どちらかの電池を選択する判定である。第一の電池の推定電流>第二の電池の推定電流の場合には、ステップ2209に処理を移し、そうでないならばステップ2211に処理を移す。
【0174】
ステップ2209では、第一電池を選択する指令(スィッチSW205をOn、スィッチSW210をOff)を送り、ステップ2207に処理を移す。
【0175】
ステップ2211では、第二の電池を選択する指令(スィッチSW205をOff、スィッチSW210をOn)を送り、ステップ2207に処理を移す。
【0176】
ステップ2210では、両方の電池を選択する指令(スィッチSW205、スィッチSW210をOn)を送りステップ2207に処理を移す。
【0177】
ステップ2007では回生が終了したかどうかを判定し、終了していないならステップ2201へ、そうでないなら(終了なら)
図22の処理を終了させる。
【0178】
なお上記では、一般的にI1+I2>i1,i2のため、i1,i2とI1+I2の比較処理を省略したが、この比較処理を入れても良い。
【0179】
また、上記では単独電池のみではCC充電を継続できない場合には、両方の電池を接続することでCC充電を継続することができるため、充電電荷が増える。
次に、ステップ2205にて、CC充電期間に同時Onを許す処理を入れても良い。この方法について述べる。第一の電池のみを接続する時間:第二の電池のみを接続する時間:両方の電池を接続する時間=η:ζ:1−η―ζとする(0<η,ζ<1)。そして、η、ζは予め与えられた値に従い制御しても良い。
【0180】
次に、小容量電池のパラメータ(C, cs,rs)をテーブル設定していない場合、パラメータを同定する必要がある(直流抵抗は前述した方法にて同定可能、また大容量電池の場合は式9で説明済み)。この同定方法について述べる。なお、キャパシタの場合にはrs=0,C=Cs,Rc=Rsと設定したと同じのため、第二電池にキャパシタを使用した場合は省略する。同定タイミングとしては、前述した電池がCC充電の場合とCV充電の場合の2通りが有る。しかしながら、CC充電時には、制御も入っているためと、CV充電時には定電圧源に電池を並列に繋いでも、電池間の相互作用が無いため、ここではCV充電時のパラメータ同定について述べる。
【0181】
小容量電池をCV充電した場合には式27の方程式となる。
【0182】
従い、不明パラメータC,rs,csに関して、式28の線形式が成立する。
【0183】
式28を最小二乗もしくは再帰最小二乗を用いて、x,y,zを求め、x,y,zよりC,cs,rsを求めても良い。キャパシタの場合には式28にてx=y=0として、同様に最小二乗または再帰最小二乗を用いてCを求めても良い。
【0184】
次に大容量電池の不明パラメータVL,cL,rLの求め方について述べる。小容量電池との差は、式28のG(t)がVL*t-RL*Q(t)になり、C=無限大、即ちz=0, y=rsになることであり、式29となる。
【0185】
式29を最小二乗、もしくは再帰最小二乗を用いて、x,rs,VLを求め、xよりcsを求めてもよい。なお、以上は充電の場合であるが、電池によっては充電と放電の電池パラメータが違う場合もある。この場合には放電時のデータを用いて、同様に電池パラメータを同定しても良い。
【0186】
最後に、以上で述べた回生充電における、充電電荷の効果の比較を説明する。ここでは、第一の電池に鉛電池、第二の電池にキャパシタ(リチウムイオンキャパシタ)を使用した例とし、緒元を
図23と仮定した。そして、オルタネータはCC充電200A、CV充電時電圧14Vを仮定し、10s間の回生を仮定し、スィッチ抵抗を0と仮定した。そして、鉛電池単独、キャパシタ単独、鉛電池とキャパシタ常時並列(即ち、リチウムイオンキャパシタの初期OCVは鉛電池と同じ12.6V)、実施例1で述べたスィッチSW一回切り替え方式、実施例2で述べた同時接続無しの方法(但し、先に鉛電池を充電して、鉛電池の分極がvpになった時点でη=vp/ Ia*rLとする方式。実施例2と簡単に表記する。)、実施例3で述べた同時接続有りの方式(但し、CC充電では先に鉛電池を充電して鉛電池の分極がvpになった時点でη=vp/ Ia*rLに切り替え、一つの電池のみではCC充電不可能になった後に同時接続。実施例3と簡単に表記する)の方式を比較する。時間刻み幅50msで数値計算した比較結果を
図24に記す。
図24より、提案方式(実施例1、実施例2、実施例3)の方式は、電池単独や常時並列時よりも充電電荷が多くなる。そして、実施例3が最も充電電荷が多い。これは同時接続を許したため、CC充電時間が長くなったためである。なお、常時並列時の充電電荷が低いのは、キャパシタの初期電圧が12.6Vと低く、キャパシタで充電できる電荷が少なくなるためである。