特許第6245173号(P6245173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245173
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】二次電池用負極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20171204BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171204BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20171204BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/36 E
   H01M4/48
   H01M4/58
   H01M4/133
   H01M4/134
   H01M4/136
   H01M4/13
【請求項の数】7
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-525835(P2014-525835)
(86)(22)【出願日】2013年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2013069372
(87)【国際公開番号】WO2014014006
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-158315(P2012-158315)
(32)【優先日】2012年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 徳一
(72)【発明者】
【氏名】園部 健矢
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智一
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−108373(JP,A)
【文献】 特開2000−067871(JP,A)
【文献】 特開2003−151556(JP,A)
【文献】 特開2012−129536(JP,A)
【文献】 特開2010−040228(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/113940(WO,A1)
【文献】 国際公開第1998/039808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02−62
H01M 10/05−0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に積層される負極活物質層とからなり、
前記負極活物質層が、負極活物質(A)、粒子状バインダー(B)、ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー(C)、及び、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.5〜20質量%含む水溶性ポリマー(D)を含み、
前記粒子状バインダー(B)が、
ガラス転移温度が−30〜20℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と、
ガラス転移温度が30〜80℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)とを含み、
前記粒子状バインダー(B)の配合量が、前記負極活物質(A)の総量100質量部に対して0.7〜2質量部であり、
前記水溶性ポリマー(C)と前記水溶性ポリマー(D)の合計量が、前記負極活物質(A)の総量100質量部に対して0.5〜5質量部であり、かつ、
前記水溶性ポリマー(C)と前記水溶性ポリマー(D)との重量比(C)/(D)が99/1〜70/30である、二次電池用負極。
【請求項2】
前記負極活物質(A)が、炭素系活物質(a1)と合金系活物質(a2)とを含む請求項1に記載の二次電池用負極。
【請求項3】
前記炭素系活物質(a1)100質量部に対して、前記合金系活物質(a2)を1〜50質量部含む請求項2に記載の二次電池用負極。
【請求項4】
前記合金系活物質(a2)が、Si、SiO(x=0.01以上2未満)、又はSiOCである請求項2または3に記載の二次電池用負極。
【請求項5】
前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の含有割合が、質量比で、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=80/20〜30/70である請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用負極。
【請求項6】
前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)それぞれの、テトラヒドロフラン不溶分が70〜98%である請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用負極。
【請求項7】
正極、負極、電解液及びセパレーターを備える二次電池であって、
前記負極が、請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池用負極である二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の二次電池に使用される負極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源に用いられている二次電池には、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池などが多用されている。携帯端末は、より快適な携帯性が求められて小型化、薄型化、軽量化、高性能化が急速に進み、その結果、携帯端末は様々な場で利用されるようになっている。また、電池に対しても、携帯端末に対するのと同様に、小型化、薄型化、軽量化、高性能化が要求されている。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池には、負極活物質としてグラファイト等の炭素系活物質が用いられている。例えば、特許文献1には、炭素系活物質と、ガラス転移温度が異なる2種類のカルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体からなるバインダーとを含有するリチウムイオン二次電池用負極が記載されている。
【0004】
また、リチウムイオン二次電池の高容量化を目的とし、Si等を含有する合金系活物質を用いたリチウムイオン二次電池用負極が開発されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−108373号公報
【特許文献2】特許第4025995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載の負極は、負極活物質の分散性やリチウムイオン伝導性が不十分なため、サイクル特性や出力特性に優れる二次電池を得ることが困難であることが分かった。
【0007】
また、負極活物質として合金系活物質を用いる場合には、リチウムイオンをドープ・脱ドープすると、負極活物質の体積の膨張・収縮が大きく、その結果、極板膨らみや電極から負極活物質の脱離(粉落ち)が発生し、サイクル特性や出力特性等の電池特性を悪化させるおそれがあることが分かった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので優れたサイクル特性や出力特性を有する二次電池を得ることができる二次電池用負極を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の粒子状バインダー及び特定の水溶性ポリマーを用いることで、負極における負極活物質の分散性やリチウムイオン伝導性を向上させ、その結果、サイクル特性や出力特性に優れた二次電池を得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
(1)集電体と、前記集電体上に積層される負極活物質層とからなり、
前記負極活物質層が、負極活物質(A)、粒子状バインダー(B)、ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー(C)、及び、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.5〜20質量%含む水溶性ポリマー(D)を含み、
前記粒子状バインダー(B)が、ガラス転移温度が−30〜20℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と、ガラス転移温度が30〜80℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)とを含む、二次電池用負極。
【0012】
(2)前記負極活物質(A)が、炭素系活物質(a1)と合金系活物質(a2)とを含む(1)に記載の二次電池用負極。
【0013】
(3)前記炭素系活物質(a1)100質量部に対して、前記合金系活物質(a2)を1〜50質量部含む(2)に記載の二次電池用負極。
【0014】
(4)前記合金系活物質(a2)が、Si、SiO(x=0.01以上2未満)、又はSiOCである(2)または(3)に記載の二次電池用負極。
【0015】
(5)前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の含有割合が、質量比で、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=80/20〜30/70である(1)〜(4)のいずれかに記載の二次電池用負極。
【0016】
(6)前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)それぞれの、テトラヒドロフラン不溶分が70〜98%である(1)〜(5)のいずれかに記載の二次電池用負極。
【0017】
(7)正極、負極、電解液及びセパレーターを備える二次電池であって、
前記負極が、(1)〜(6)のいずれかに記載の二次電池用負極である二次電池。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二次電池用負極は、特定の粒子状バインダーおよび特定の水溶性ポリマーを含むため、負極活物質の分散性やリチウムイオン伝導性に優れる。その結果、優れたサイクル特性(特に高温サイクル特性)や出力特性(特に低温出力特性)を有する二次電池を得ることができる。
また、本発明によれば、負極活物質として、リチウムイオンのドープ・脱ドープ時における体積の膨張・収縮が大きい合金系活物質を用いた場合であっても、極板膨らみや電極から負極活物質の脱離(粉落ち)の発生を抑制できる。その結果、二次電池のサイクル特性や出力特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔二次電池用負極〕
本発明の二次電池用負極(以下、単に「負極」と記載することがある。)は、集電体と、前記集電体上に積層される負極活物質層とからなる。負極活物質層は、以下の成分(A)〜(D)を含み、必要に応じて添加される他の成分(E)を含有してもよい。本発明の二次電池用負極は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等に用いることができる。この中でも長期サイクル特性や出力特性の向上等が最も求められていることから、用途としてはリチウムイオン二次電池が好ましい。以下においては、リチウムイオン二次電池に使用する場合について各成分を詳述する。
【0020】
(A)負極活物質
負極活物質は、負極内で電子(リチウムイオン)の受け渡しをする物質である。負極活物質としては、後述する炭素系活物質(a1)や合金系活物質(a2)を用いることができるが、負極活物質は、炭素系活物質と合金系活物質とを含むことが好ましい。負極活物質として、炭素系活物質と合金系活物質とを用いることで、従来の炭素系活物質のみを用いて得られる負極よりも容量の大きい電池を得ることができ、かつ負極の密着強度の低下、サイクル特性の低下といった問題も解決することができる。
【0021】
(a1)炭素系活物質
本発明に用いる炭素系活物質とは、リチウムが挿入可能な炭素を主骨格とする活物質をいい、具体的には、炭素質材料と黒鉛質材料が挙げられる。炭素質材料とは一般的に炭素前駆体を2000℃以下(当該処理温度の下限は、特に限定されないが、例えば500℃以上とすることができる)で熱処理(炭素化)された黒鉛化の低い(結晶性の低い)炭素材料を示し、黒鉛質材料とは易黒鉛性炭素を2000℃以上(当該処理温度の上限は、特に限定されないが、例えば5000℃以下とすることができる)で熱処理することによって得られた黒鉛に近い高い結晶性を有する黒鉛質材料を示す。
【0022】
炭素質材料としては、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素が挙げられる。
易黒鉛性炭素としては石油や石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられ、例えば、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。MCMBとはピッチ類を400℃前後で加熱する過程で生成したメソフェーズ小球体を分離抽出した炭素微粒子である。メソフェーズピッチ系炭素繊維とは、前記メソフェーズ小球体が成長、合体して得られるメソフェーズピッチを原料とする炭素繊維である。熱分解気相成長炭素繊維とは、(1)アクリル高分子繊維などを熱分解する方法、(2)ピッチを紡糸して熱分解する方法、(3)鉄などのナノ粒子を触媒を用いて炭化水素を気相熱分解する触媒気相成長(触媒CVD)法により得られた炭素繊維である。
難黒鉛性炭素としては、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)などが挙げられる。
【0023】
黒鉛質材料としては天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
【0024】
炭素系活物質の中でも黒鉛質材料が好ましい。黒鉛質材料を用いることで、負極活物質層の密度を上げやすくなり、負極活物質層の密度が1.6g/cm以上(当該密度の上限は、特に限定されないが、2.2g/cm以下とすることができる。)である負極の作製が容易となる。密度が前記範囲である負極活物質層を有する負極であれば本発明の効果が顕著に現れる。
【0025】
炭素系活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは1〜30μmである。炭素系活物質の体積平均粒子径がこの範囲内であれば、負極を製造するために用いるスラリー組成物の作製が容易となる。なお、本発明における体積平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
【0026】
炭素系活物質の比表面積は、好ましくは3.0〜20.0m/g、より好ましくは3.5〜15.0m/g、特に好ましくは4.0〜10.0m/gである。炭素系活物質の比表面積が上記範囲にあることで、炭素系活物質表面の活性点が増えるため、リチウムイオン二次電池の出力特性に優れる。
【0027】
(a2)合金系活物質
本発明に用いる合金系活物質とは、リチウムの挿入可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の重量あたりの理論電気容量が500mAh/g以上(当該理論電気容量の上限は、特に限定されないが、例えば5000mAh/g以下とすることができる。)である活物質をいい、具体的には、リチウム金属、リチウム合金を形成する単体金属およびその合金、及びそれらの酸化物、硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物等が用いられる。
【0028】
リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属や該金属を含有する化合物が挙げられる。それらの中でもケイ素(Si)、スズ(Sn)または鉛(Pb)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、または、それらの金属の化合物が用いられる。これらの中でも、低電位でリチウムの挿入脱離が可能なSiの単体金属が好ましい。
本発明で用いる合金系活物質は、さらに、一つ以上の非金属元素を含有していてもよい。具体的には、例えばSiC、SiO(以下、「SiOC」と呼ぶ)(0<x≦3、0<y≦5)、Si、SiO、SiO(x=0.01以上2未満)、SnO(0<x≦2)、LiSiO、LiSnO等が挙げられ、中でも低電位でリチウムの挿入脱離が可能なSiOC、SiO、及びSiCが好ましく、SiOC、SiOがより好ましい。例えば、SiOCは、ケイ素を含む高分子材料を焼成して得ることができる。SiOCの中でも、容量とサイクル特性の兼ね合いから、0.8≦x≦3、2≦y≦4の範囲が好ましく用いられる。
【0029】
それらの酸化物、硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物としては、リチウムの挿入可能な元素の酸化物、硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物等が挙げられ、中でも酸化物が特に好ましい。具体的には酸化スズ、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等の酸化物、Si、Sn、PbおよびTi原子よりなる群から選ばれる金属元素を含むリチウム含有金属複合酸化物が用いられる。
リチウム含有金属複合酸化物としては、更にLiTiで示されるリチウムチタン複合酸化物(0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、ZnおよびNb)が挙げられ、中でもLi4/3Ti5/3、LiTi、Li4/5Ti11/5が用いられる。
【0030】
これらの中でもケイ素を含む材料が好ましく、中でもSiOCなどのSiO、SiO、及びSiCがさらに好ましい。この化合物では高電位でSi(ケイ素)、低電位ではC(炭素)へのLiの挿入脱離が起こると推測され、他の合金系活物質よりも膨張・収縮が抑制されるため、本発明の効果がより得られ易い。
【0031】
合金系活物質の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜20μm、特に好ましくは1〜10μmである。合金系活物質の体積平均粒子径がこの範囲内であれば、負極を製造するために用いるスラリー組成物の作製が容易となる。
【0032】
合金系活物質の比表面積は、好ましくは3.0〜20.0m/g、より好ましくは3.5〜15.0m/g、特に好ましくは4.0〜10.0m/gである。合金系活物質の比表面積が上記範囲にあることで、合金系活物質表面の活性点が増えるため、リチウムイオン二次電池の出力特性に優れる。
【0033】
合金系活物質と炭素系活物質の混合方法としては、特に限定されず、従来公知の乾式混合や湿式混合が挙げられる。
【0034】
本発明における負極活物質(A)においては、炭素系活物質(a1)100質量部に対して、合金系活物質(a2)を1〜50質量部含むことが好ましい。合金系活物質と炭素系活物質とを上記範囲で混合することにより、従来の炭素系活物質のみを用いて得られる負極よりも容量の大きい電池を得ることができ、かつ負極の密着強度の低下やサイクル特性の低下を防ぐことができる。
【0035】
(B)粒子状バインダー
粒子状バインダーは、後述する分散媒に分散する性質を有する。粒子状バインダーを用いることで、後述する集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できると共に、得られる負極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑制できる。
粒子状バインダーは、負極活物質層中で粒子形状を保持した状態で存在できればよい。本発明において、「粒子状態を保持した状態」とは、完全に粒子形状を保持した状態である必要はなく、その粒子形状をある程度保持した状態であればよい。
粒子状バインダーとしては、例えば、ラテックスのごときバインダーの粒子が水に分散した状態のものや、このような分散液を乾燥して得られる粉末状のものが挙げられる。
本発明において、粒子状バインダーは、非水溶性である。即ち、水系溶媒中で溶解せずに粒子状で分散していることが好ましい。非水溶性であるとは、具体的には、25℃において、そのバインダー0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が90質量%以上となることをいう。
本発明における粒子状バインダー(B)は、ガラス転移温度が−30〜20℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)(以下、単に「芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)」と記載することがある。)と、ガラス転移温度が30〜80℃であり、不飽和カルボン酸単量体単位を含んでなる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)(以下、単に「芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)」と記載することがある。)とを含む。
【0036】
(b1)芳香族ビニル−共役ジエン共重合体
本発明に用いる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる構造単位(以下、「芳香族ビニル単量体単位」と記すことがある。)、共役ジエンを重合して得られる構造単位(以下、「共役ジエン単量体単位」と記すことがある。)、及び不飽和カルボン酸単量体単位を含む共重合体である。また、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)は、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体単位を含んでもよい。
なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を構成する単量体単位の割合は、重合時の単量体の仕込み比に一致する。以降、特に断りの無い限り、重合体を構成する単量体単位の割合は、重合時の単量体の仕込み比に一致する。
【0037】
<芳香族ビニル単量体単位>
芳香族ビニル単量体単位は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる構造単位である。
芳香族ビニル単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。これら芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)における、芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50〜65質量%である。
【0038】
<共役ジエン単量体単位>
共役ジエン単量体単位は、共役ジエン単量体を重合して得られる構造単位である。
共役ジエン単量体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これら共役ジエン単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは31〜46質量%である。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)における、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位との合計の割合は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80〜96質量%である。
以下において、不飽和カルボン酸単量体単位及び他の単量体単位について詳述する。
【0039】
<不飽和カルボン酸単量体単位>
不飽和カルボン酸単量体単位は、不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる構造単位である。不飽和カルボン酸単量体の例としては、不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸及びその酸無水物並びにそれらの誘導体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸が挙げられる。不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2−エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α−アセトキシアクリル酸、β−trans−アリールオキシアクリル酸、α−クロロ−β−E−メトキシアクリル酸、及びβ−ジアミノアクリル酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、アクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、及びジメチル無水マレイン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸等のマレイン酸メチルアリル;並びにマレイン酸ジフェニル、マレイン酸ノニル、マレイン酸デシル、マレイン酸ドデシル、マレイン酸オクタデシル、マレイン酸フルオロアルキル等のマレイン酸エステルが挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸やマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましく、イタコン酸が特に好ましい。得られる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の水等の分散媒に対する分散性をより高めることができると共に、集電体と負極活物質層との結着性が向上し、優れたサイクル特性を有する二次電池を得ることができるからである。上記の不飽和カルボン酸単量体を用いることで、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)に酸性官能基を導入することができる。
【0040】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)における、不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは0.1〜6質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合を上記範囲とすることで、集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できる。その結果、優れたサイクル特性を有する二次電池用負極を得ることができる。
【0041】
<他の単量体単位>
他の単量体単位とは、上述の単量体と共重合可能な他の単量体を重合して得られる構造単位である。
他の単量体単位を構成する他の単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどの炭化水素類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)における、他の単量体単位の割合は、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは4〜20質量%である。
【0042】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度(Tg)は、−30〜20℃、好ましくは−20〜20℃、さらに好ましくは−10〜15℃である。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度が低すぎると、負極活物質の膨張収縮を抑制することが困難になり、二次電池のサイクル特性が低下する。また、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度が高すぎると、集電体との結着性が不十分となり、二次電池のサイクル特性が低下する。
なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を構成する芳香族ビニル単量体単位を増やすと、ガラス転移温度が高くなる傾向があり、共役ジエン単量体単位を増やすとガラス転移温度が低くなる傾向がある。前記範囲のガラス転移温度となるように、重合体中の不飽和カルボン酸単量体単位、他の単量体単位の割合など踏まえ、各単量体単位の割合を調整する。
【0043】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の数平均粒子径は、格別な限定はないが、通常は80〜250nm、好ましくは100〜200nm、より好ましくは120〜180nmである。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の使用でも優れた結着力を負極活物質層に与えることができる。本発明における数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ重合体粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。これらの芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)は単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
(b2)芳香族ビニル−共役ジエン共重合体
本発明に用いる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と同様に、芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、及び不飽和カルボン酸単量体単位を含む共重合体である。また、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)は、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体単位を含んでもよい。芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、不飽和カルボン酸単量体及びこれらと共重合可能な他の単量体は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)において例示した通りである。
【0045】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)における、芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは68〜80質量%である。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)における、共役ジエン単量体単位の割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは16〜28質量%である。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)における、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位との合計の割合は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは84〜98質量%である。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)における、不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、好ましくは0.1〜6質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。不飽和カルボン酸単量体の含有割合を上記範囲とすることで、集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できる。その結果、優れたサイクル特性を有する二次電池用負極を得ることができる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)における、他の単量体単位の割合は、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは2〜16質量%である。
【0046】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度(Tg)は、30〜80℃、好ましくは30〜70℃、さらに好ましくは35〜60℃である。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度が低すぎると、負極活物質の膨張収縮を抑制することが困難になり、二次電池のサイクル特性が低下する。また、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度が高すぎると、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の柔軟性が低下し、負極活物質の膨張収縮を抑制することが困難になる結果、負極が割れてしまう。
なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度を前記範囲にするには、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の場合と同様に行うことができる。
【0047】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の数平均粒子径は、格別な限定はないが、通常は80〜250nm、好ましくは100〜200nm、より好ましくは120〜180nmである。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の数平均粒子径がこの範囲であるときは、少量の使用でも優れた結着力を負極活物質層に与えることができる。これらの芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)は単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明に係る二次電池用負極における芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の含有割合(質量比)は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=80/20〜30/70であることが好ましく、70/30〜40/60であることがより好ましい。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)と芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の含有割合を上記範囲とすることで、負極活物質の膨張収縮を抑制し、集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できる。
【0049】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度と芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度との差は、好ましくは10〜90℃、より好ましくは20〜70℃である。ガラス転移温度の差が大きすぎると、電極強度が弱くなりサイクル特性が低下することがある。また、ガラス転移温度の差が小さすぎると、極板が膨れやすくなることがある。
【0050】
また、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)、それぞれの、テトラヒドロフラン不溶分は、好ましくは70〜98%、より好ましくは90〜93%である。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のテトラヒドロフラン不溶分を上記範囲とすることで、負極活物質同士の拘束力が高まり、二次電池のサイクル特性が向上する。ここで、テトラヒドロフラン不溶分とは、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)、各々のうち、テトラヒドロフランに溶解しない成分の質量比を表した値である。テトラヒドロフラン不溶分は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0051】
粒子状バインダー(B)の配合量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは0.7〜2質量部である。粒子状バインダー(B)の配合量を上記範囲とすることで、負極活物質の膨張・収縮を抑制し、電極の内部抵抗を低減できるため、優れたサイクル特性および出力特性を有する二次電池を得ることができる。
【0052】
[粒子状バインダー(B)の製造]
粒子状バインダー(B)の製法は特に限定はされないが、上述したように、各共重合体を構成する単量体を含む単量体混合物を、それぞれ乳化重合して、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および(b2)を得、これらを混合して得ることができる。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すればよい。混合方法は特に限定されず、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。
【0053】
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0054】
これらのなかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
【0055】
重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物の全量100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
【0056】
得られる共重合体のテトラヒドロフラン不溶分量を調節するために、乳化重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。用いる連鎖移動剤量を増やすことで、前記テトラヒドロフラン不溶分量が減り、用いる連鎖移動剤量を減らすことで、前記テトラヒドロフラン不溶分量が増える傾向があり、連鎖移動剤量を調整することにより、前記テトラヒドロフラン不溶分量の範囲に制御することができる。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0057】
これらのなかでも、アルキルメルカプタンが好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。これらの連鎖移動剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。
【0059】
乳化重合時に、界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤は、後述する水溶性ポリマー(D)に好ましく含まれる反応性界面活性剤とは異なり、非反応性であり、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ナトリウムラウリルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムオクチルサルフェート、ナトリウムデシルサルフェート、ナトリウムテトラデシルサルフェート、ナトリウムヘキサデシルサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェートなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられる。
【0060】
後述する反応性界面活性剤も同様の乳化作用を有することから、反応性界面活性剤のみを使用してもよく、反応性界面活性剤と非反応性の界面活性剤を併用してもよい。さらに、反応性界面活性剤を使用しない場合には、上記の非反応性の界面活性剤を使用することで乳化重合が安定する。界面活性剤の使用量(反応性界面活性剤を含む)は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0061】
さらに乳化重合の際に、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのpH調整剤;分散剤、キレート剤、酸素捕捉剤、ビルダー、粒子径調節のためのシードラテックスなどの各種添加剤を適宜使用することができる。シードラテックスとは、乳化重合の際に反応の核となる微小粒子の分散液をいう。微小粒子は粒径が100nm以下であることが多い。微小粒子は特に限定はされず、ジエン系重合体などの汎用の重合体が用いられる。シード重合法によれば、比較的粒径の揃った共重合体粒子が得られる。
【0062】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃とする。このような温度範囲で乳化重合し、所定の重合転化率で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する重合転化率は、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0063】
重合反応を停止した後、所望により、未反応単量体を除去し、pHや固形分濃度を調整して、粒子状共重合体が分散媒に分散された形態(ラテックス)で芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および(b2)が得られる。その後、必要に応じ、分散媒を置換してもよく、また分散媒を蒸発し、粒子状共重合体を粉末形状で得てもよい。
【0064】
得られる粒子状共重合体のラテックスには、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0065】
(C)ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー
ヒドロキシル基含有水溶性ポリマーは、ヒドロキシル基を含有し、水溶性を有するポリマーである。ヒドロキシル基含有水溶性ポリマーは、後述する水溶性ポリマー(D)とは異なるポリマー、すなわち、ヒドロキシル基を含有し、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含まない水溶性ポリマーである。
ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー(C)(以下、単に「水溶性ポリマー(C)」と記載することがある。)は、二次電池用負極を製造するためのスラリー組成物に溶解させて用いられ、負極活物質(A)等をスラリー組成物中で均一に分散させる作用を有する。そのため、水溶性ポリマー(C)を用いることで、均一な二次電池用負極を得ることができる。
【0066】
ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー(C)としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールの共重合体などのポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。
【0067】
水溶性ポリマー(C)を用いる場合において、その1%水溶液粘度は、好ましくは100〜3000mPa・s、より好ましくは500〜2500mPa・s、特に好ましくは1000〜2000mPa・sである。水溶性ポリマー(C)の1%水溶液粘度が上記範囲であると、負極を製造するために用いるスラリー組成物の粘度を塗布に適した粘度にすることができ、スラリー組成物の乾燥時間を短縮できるため、二次電池の生産性に優れる。また、結着性の良好な負極を得ることができる。前記水溶液粘度は、水溶性ポリマー(C)の平均重合度で調整することができる。平均重合度が高いと水溶液粘度は高くなる傾向にある。水溶性ポリマー(C)の平均重合度は、好ましくは100〜1500、より好ましくは300〜1200、特に好ましくは500〜1000である。水溶性ポリマー(C)の平均重合度が上記範囲であれば、1%水溶液粘度を上記範囲にすることができ、それにより上記効果が奏される。
前記1%水溶液粘度は、JIS Z8803;1991に準じて単一円筒形回転粘度計(25℃、回転数=60rpm、スピンドル形状:1)により測定される値である。
【0068】
本発明において、水溶性ポリマー(C)として好適なセルロース系ポリマーのエーテル化度は、好ましくは0.6〜1.5、より好ましくは0.7〜1.2、特に好ましくは0.8〜1.0である。セルロース系ポリマーのエーテル化度が上記範囲にあることで、負極活物質との親和性を下げ、水溶性ポリマー(C)が負極活物質表面に偏在化するのを防ぎ、また負極における負極活物質層と集電体との間の結着性を保持することができ、負極の結着性が顕著に向上する。ここでエーテル化度とは、セルロース中の無水グルコース単位1個当たりの水酸基(3個)への、カルボキシメチル基等の置換度をいう。理論的に0〜3までの値を取りうる。エーテル化度が大きくなればなるほどセルロース中の水酸基の割合が減少し置換体の割合が増加し、エーテル化度が小さいほどセルロース中の水酸基が増加し置換体が減少するということを示している。エーテル化度(置換度)は、以下の方法および式により求められる。
【0069】
まず、試料0.5〜0.7gを精密にはかり、磁製ルツボ内で灰化する。冷却後、得られた灰化物を500mlビーカーに移し、水約250ml 、さらにピペットでN/10硫酸35mlを加えて30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸をN/10水酸化カリウムで逆滴定して、次式(I)および(II)から置換度を算出する。
【0070】
【数1】
【0071】
【数2】
【0072】
上記式(I)及び(II)において、Aは、試料1g中の結合アルカリ金属イオンに消費されたN/10硫酸の量(ml)である。aは、N/10硫酸の使用量(ml)である。fは、N/10硫酸の力価係数である。bは、N/10水酸化カリウムの滴定量(ml)である。fは、N/10水酸化カリウムの力価係数である。Mは、試料の重量平均分子量である。
【0073】
水溶性ポリマー(C)の配合量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは1〜3質量部である。水溶性ポリマー(C)の配合量が上記範囲であると、塗工性が良好となるため二次電池の内部抵抗の上昇を防止し、集電体との結着性に優れる。また、負極活物質の膨張・収縮を抑制できるため、二次電池のサイクル特性が向上する。
【0074】
(D)フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.5〜20質量%含む水溶性ポリマー
本発明に用いるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.5〜20質量%含む水溶性ポリマー(D)(以下、単に「水溶性ポリマー(D)」と記載することがある。)は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.5〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは3〜12質量%含む共重合体である。この共重合体には、さらに不飽和カルボン酸単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位や架橋性単量体単位が含まれていてもよく、また反応性界面活性剤単量体などの機能性を有する単量体を重合して得られる構造単位や、その他の共重合可能な単量体を重合して得られる構造単位が含まれていてもよい。
なお、本明細書では、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルの両者を包含する。
このような水溶性ポリマー(D)を用いることで、集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できる。また、水溶性ポリマー(D)が負極活物質の表面を被覆することで、二次電池内において、負極活物質による電解液の分解が抑制され、二次電池の耐久性(サイクル特性)を向上できる。さらにまた、負極活物質が水溶性ポリマー(D)により被覆されることで、負極活物質と電解液との親和性を高め、イオン伝導度を向上し、二次電池の内部抵抗を低減できる。
【0075】
<フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位>
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体が重合して形成される構造単位である。
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、下記の式(I)で表される単量体が挙げられる。
【0076】
【化1】
【0077】
前記の式(I)において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。 前記の式(I)において、Rは、フッ素原子を含有する炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、通常18以下である。また、Rが含有するフッ素原子の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
【0078】
式(I)で表されるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸フッ化アルキル、(メタ)アクリル酸フッ化アリール、及び(メタ)アクリル酸フッ化アラルキルが挙げられる。なかでも(メタ)アクリル酸フッ化アルキルが好ましい。このような単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸−β−(パーフルオロオクチル)エチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−1H,1H,9H−パーフルオロ−1−ノニル、(メタ)アクリル酸−1H,1H,11H−パーフルオロウンデシル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸−3−[4−〔1−トリフルオロメチル−2、2−ビス〔ビス(トリフルオロメチル)フルオロメチル〕エチニルオキシ〕ベンゾオキシ] −2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステルが挙げられる。
【0079】
フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。したがって、水溶性ポリマー(D)は、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を、1種類だけ含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0080】
水溶性ポリマー(D)におけるフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は0.5〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、より好ましくは3〜12質量%の範囲である。フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の比率が低すぎると、水溶性ポリマー(D)に電解液に対する反発力を与えることができず、膨潤性を適切な範囲とすることができない。また、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の比率が高すぎると、水溶性ポリマー(D)に電解液に対する濡れ性を付与できず、低温サイクル特性が低下する。
【0081】
水溶性ポリマー(D)が、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことによって、負極活物質層には耐アルカリ性が付与される。負極形成用のスラリー組成物にはアルカリ性物質が含まれることがあり、また素子の作動による酸化還元によりアルカリ性物質が発生することがある。このようなアルカリ性物質は、集電体を腐食し、素子寿命を損なうが、負極活物質層が耐アルカリ性を有することで、アルカリ性物質による集電体の腐食が抑制される。
【0082】
<不飽和カルボン酸単量体単位>
不飽和カルボン酸単量体単位は、不飽和カルボン酸単量体を重合して形成される構造単位である。不飽和カルボン酸単量体としては、上記粒子状バインダー(B)において詳述した不飽和カルボン酸単量体と同様である。
不飽和カルボン酸単量体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸やマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸がより好ましい。得られる水溶性ポリマー(D)の水に対する分散性をより高めることができるからである。
【0083】
水溶性ポリマー(D)における不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。不飽和カルボン酸単量体の含有割合を上記範囲とすることで、集電体と負極活物質層との結着性を高め、負極強度を向上できる。また、水溶性ポリマー(D)の分散性を向上させることができるため、均一な負極スラリー組成物を得ることができる。その結果、優れたサイクル特性を有する二次電池を得ることができる。
【0084】
<(メタ)アクリル酸エステル単量体単位>
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して得られる構造単位である。ただし、(メタ)アクリル酸エステル単量体の中でもフッ素を含有するものは、上述のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体として(メタ)アクリル酸エステル単量体とは区別する。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。したがって、水溶性ポリマー(D)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を、1種類だけ含んでいてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0087】
水溶性ポリマー(D)において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合を上記範囲の下限値以上とすることにより負極活物質層の集電体への結着性を高くすることができ、上記範囲の上限値以下とすることにより負極活物質層の柔軟性を高めることができる。
【0088】
<架橋性単量体単位>
水溶性ポリマー(D)は、上記各構成単位に加え、さらに架橋性単量体単位を含んでいてもよい。架橋性単量体単位は、加熱又はエネルギー照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる構造単位である。架橋性単量体の例としては、通常は、熱架橋性を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体、及び1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。
【0089】
単官能性単量体に含まれる熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N−メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基が、架橋及び架橋密度の調節が容易な点でより好ましい。
【0090】
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o−アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5−エポキシ−2−ペンテン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4−エポキシ−1−ブテン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセンなどのアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル−4−ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル−4−メチル−3−ペンテノエート、3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4−メチル−3−シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0091】
熱架橋性の架橋性基としてN−メチロールアミド基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0092】
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンが挙げられる。
【0093】
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基を有し、且つオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、及び2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンが挙げられる。
【0094】
2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン−ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、及びジビニルベンゼンが挙げられる。
【0095】
架橋性単量体としては、特に、エチレンジメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びグリシジルメタクリレートを好ましく用いることができる。
【0096】
水溶性ポリマー(D)に架橋性単量体単位が含まれる場合、その含有割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。架橋性単量体単位の含有割合を前記範囲の下限値以上とすることにより、水溶性ポリマー(D)の重量平均分子量を高め、膨潤度が過度に上昇することを防止しうる。一方、架橋性単量体単位の比率を前記範囲の上限値以下とすることにより、水溶性ポリマー(D)の水に対する可溶性を高め、分散性を良好にすることができる。したがって、架橋性単量体単位の含有割合を前記範囲内とすることにより、膨潤度及び分散性の両方を良好なものとすることができる。
【0097】
<反応性界面活性剤単量体単位>
水溶性ポリマー(D)には、上記各単量体単位に加え、反応性界面活性剤単量体などの機能性を有する単量体を重合して得られる構造単位が含まれていてもよい。
【0098】
反応性界面活性剤単量体は、後述する他の単量体と共重合しうる重合性の基を有し、且つ、界面活性基(親水性基及び疎水性基)を有する単量体である。反応性界面活性剤単量体を重合することにより得られる単量体単位は、水溶性ポリマー(D)の分子の一部を構成し、且つ界面活性剤として機能しうる構造単位である。
【0099】
通常、反応性界面活性剤単量体は重合性不飽和基を有し、この基が重合後に疎水性基としても作用する。反応性界面活性剤単量体が有する重合性不飽和基の例としては、ビニル基、アリル基、ビニリデン基、プロペニル基、イソプロペニル基、及びイソブチリデン基が挙げられる。かかる重合性不飽和基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0100】
また、反応性界面活性剤単量体は、親水性を発現する部分として、通常は親水性基を有する。反応性界面活性剤単量体は、親水性基の種類により、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に分類される。
【0101】
アニオン系の親水性基の例としては、−SOM、−COOM、及び−PO(OH)が挙げられる。ここでMは、水素原子又はカチオンを示す。カチオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンのアンモニウムイオン;並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウムイオンが挙げられる。
【0102】
カチオン系の親水基の例としては、−Cl、−Br、−I、及び−SOORXが挙げられる。ここでRXは、アルキル基を示す。RXの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
【0103】
ノニオン系の親水基の例としては、−OHが挙げられる。
【0104】
好適な反応性界面活性剤単量体の例としては、下記の式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【化2】
【0106】
式(II)において、Rは2価の結合基を表す。Rの例としては、−Si−O−基、メチレン基及びフェニレン基が挙げられる。式(II)において、Rは親水性基を表す。Rの例としては、−SONHが挙げられる。式(II)において、nは1以上100以下の整数である。反応性界面活性剤単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0107】
水溶性ポリマー(D)が反応性界面活性剤単量体単位を含む場合、その比率は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%の範囲である。反応性界面活性剤単量体単位の比率を前記範囲の下限値以上とすることにより、負極活物質(A)や粒子状バインダー(B)の分散性を向上させることができる。一方、反応性界面活性剤単量体単位の比率を前記範囲の上限値以下とすることにより、負極活物質層の耐久性を向上させることができる。
【0108】
<他の単量体単位>
水溶性ポリマー(D)が有しうる任意の単位のさらなる例としては、下記の単量体を重合して得られる構造単位が挙げられる。即ち、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル化合物単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類単量体;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類単量体;並びにN−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物単量体の1以上を重合して得られる構造単位が挙げられる。水溶性ポリマー(D)におけるこれらの構造単位の割合は、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0109】
なお、本明細書における水溶性ポリマーとは、pH8において、1%水溶液粘度が0.1〜100000mPa・sである重合体をいう。
【0110】
また、水溶性ポリマー(D)の、pH8における、1%水溶液を調整した際の溶液粘度は、好ましくは0.1〜20000mPa・s、さらに好ましくは1〜10000mPa・s、特に好ましくは10〜5000mPa・sの範囲にある。溶液粘度が高すぎると、負極活物質層の集電体に対する結着性が低下することがあり、また低すぎると負極活物質層の柔軟性が低下することがある。
【0111】
水溶性ポリマー(D)の重量平均分子量は、通常はバインダーとなる重合体(芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および(b2))よりも小さく、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは1000以上であり、好ましくは500000以下、より好ましくは250000以下、特に好ましくは100000以下である。水溶性ポリマー(D)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ジメチルホルムアミドの10体積%水溶液に0.85g/mlの硝酸ナトリウムを溶解させた溶液を展開溶媒としたポリスチレン換算の値として求めればよい。
【0112】
さらに、水溶性ポリマー(D)のガラス転移温度は、通常0℃以上、好ましくは5℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは50℃以下である。水溶性ポリマー(D)のガラス転移温度は、様々な単量体を組み合わせることによって調整可能である。
【0113】
水溶性ポリマー(D)の配合量は、水溶性ポリマー(C)の配合量に応じて決定することが好ましく、負極活物質の総量100質量部に対して、水溶性ポリマー(C)と(D)の合計量が、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.7〜3質量部である。水溶性ポリマー(C)と(D)の合計量を上記範囲とすることで、集電体と負極活物質層との結着性を高め、二次電池のサイクル特性を向上できる。また、二次電池の内部抵抗を低減できるため、出力特性(特に低温出力特性)を向上できる。
【0114】
水溶性ポリマー(D)及び水溶性ポリマー(C)の重量比は、「水溶性ポリマー(C)/水溶性ポリマー(D)」で、好ましくは99/1〜70/30、より好ましくは99/1〜85/15、特に好ましくは99/1〜90/10である。水溶性ポリマー(D)及び水溶性ポリマー(C)の重量比を上記範囲とすることで、負極活物質表面のリチウムイオン伝導性が高まり、それにより二次電池の出力向上できる。
【0115】
[水溶性ポリマー(D)の製造]
水溶性ポリマー(D)を製造する方法としては、水溶性ポリマー(D)を構成する単量体を含む単量体混合物を、分散媒中で重合して水分散型ポリマーを得、pH7〜13にアルカリ化する方法が挙げられる。重合方法については、上述の粒子状バインダーと同様である。
【0116】
pH7〜13にアルカリ化する方法としては、特に限定されないが、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液などのアルカリ土類金属水溶液や、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0117】
粒子状バインダー(B)や水溶性ポリマー(D)の製造に用いられる分散媒は、上記各成分を均一に分散でき、安定的に分散状態を保ちうる限り、水、各種有機溶媒が特に制限されることなく使用できる。製造工程の簡素化の観点から、上記の乳化重合後に溶媒置換などの操作を行うことなく、直接、粒子状バインダー(B)や水溶性ポリマー(D)を製造することが好ましく、分散媒としては乳化重合時の反応溶媒を使用することが望ましい。乳化重合時には、水が反応溶媒として用いられることが多く、また作業環境の観点からも水を分散媒とすることが特に好ましい。
【0118】
(E)他の成分
負極活物質層には、上記成分の他に、導電剤、補強材、レベリング剤、酸化防止剤および電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の他の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0119】
導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、およびカーボンナノチューブ等の導電性カーボンを使用することができる。導電剤を含有することにより、負極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、リチウムイオン二次電池に用いる場合に放電レート特性を改善することができる。導電剤の含有量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0120】
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。補強材を用いることにより強靭で柔軟な負極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を示すことができる。負極活物質層における補強材の含有量は、負極活物質の総量100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量である。補強材の含有量が上記範囲であることにより、高い容量と高い負荷特性を示す二次電池を得ることができる。
【0121】
レベリング剤としては、アルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。レベリング剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止したり、負極の平滑性を向上させることができる。負極活物質層におけるレベリング剤の含有量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲であることにより負極作製時の生産性、平滑性及び電池特性に優れる。
【0122】
酸化防止剤としては、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、有機リン化合物、硫黄化合物、フェニレンジアミン化合物、ポリマー型フェノール化合物等が挙げられる。ポリマー型フェノール化合物は、分子内にフェノール構造を有する重合体であり、重量平均分子量が200〜1000、好ましくは600〜700のポリマー型フェノール化合物が好ましく用いられる。負極活物質層における酸化防止剤の含有割合は、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.05〜5質量%である。酸化防止剤の含有割合が上記範囲であることにより、負極を製造するために用いるスラリー組成物の安定性や、得られる二次電池の電池容量及びサイクル特性に優れる。
【0123】
電解液添加剤としては、電解液中に使用されるビニレンカーボネートなどを用いることができる。負極活物質層における電解液添加剤の含有量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。電解液添加剤の含有量が、上記範囲であることにより高温サイクル特性及び高温特性に優れる。その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子が挙げられる。ナノ微粒子を混合することによりスラリー組成物のチキソ性をコントロールすることができ、さらにそれにより得られる負極のレベリング性を向上させることができる。負極活物質層におけるナノ微粒子の含有量は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。ナノ微粒子の含有量が上記範囲であることによりスラリー安定性、生産性に優れ、高い電池特性を示す。
【0124】
また、上記の他に、添加剤として、イソチアゾリン系化合物やキレート化合物を加えることもできる。
【0125】
集電体
本発明で用いる集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するため金属材料が好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、二次電池用負極に用いる集電体としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、負極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用してもよい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、負極活物質層と集電体との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよく、中でも、導電性接着剤層を形成するのが好ましい。
【0126】
[二次電池用負極の製造方法]
本発明の二次電池用負極を製造する方法としては、前記集電体の少なくとも片面に負極活物質層を層状に結着させる方法であればよい。例えば、後述する二次電池用負極スラリー組成物(以下、「負極スラリー組成物」と記載することがある。)を集電体に塗布、乾燥し、次いで、必要に応じて120℃以上で1時間以上加熱処理して負極を形成する。負極スラリー組成物を集電体へ塗布する方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ジップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥時間は通常5〜50分であり、乾燥温度は通常40〜180℃である。
【0127】
本発明の二次電池用負極を製造するに際して、集電体上に負極スラリー組成物からなる負極活物質層を形成後、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により負極活物質層の空隙率を低くする工程を有することが好ましい。負極活物質層の空隙率は、好ましくは5〜30%、より好ましくは7〜20%である。前記空隙率が高すぎると充電効率や放電効率が悪化することがある。前記空隙率が低すぎる場合は、高い体積容量が得難く、負極活物質層が集電体から剥がれ易く不良を発生し易いといった問題を生じることがある。さらに、粒子状バインダー(B)に硬化性の重合体を用いる場合は、硬化させることが好ましい。
【0128】
本発明において、二次電池用負極における負極活物質層の密度は、好ましくは1.6〜2.2g/cmであり、より好ましくは1.65〜1.85g/cmである。負極活物質層の密度が上記範囲であることにより、高容量の二次電池を得ることができる。
【0129】
本発明のリチウムイオン二次電池負極における負極活物質層の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは30〜250μmである。負極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びサイクル特性共に高い特性を示す二次電池を得ることができる。
【0130】
本発明において、負極活物質層における負極活物質の含有割合は、好ましくは85〜99質量%、より好ましくは88〜97質量%である。負極活物質層における負極活物質の含有割合が上記範囲であることにより、高い容量を示しながらも柔軟性、結着性を示す二次電池を得ることができる。
【0131】
(二次電池用負極スラリー組成物)
二次電池用負極スラリー組成物は、上記各成分(A)〜(D)、必要に応じて添加される他の成分(E)及び分散媒を含有する。
【0132】
分散媒としては、上記成分を均一に分散または溶解し得るものであれば、特に制限されない。本発明においては、粒子状バインダー(B)や水溶性ポリマー(D)の製造に用いられる分散媒として例示した分散媒などを用いることができる。
【0133】
負極スラリー組成物の固形分濃度は、塗布、浸漬が可能な程度でかつ、流動性を有する粘度になる限り特に限定はされないが、一般的には10〜80質量%程度である。
【0134】
[二次電池用負極スラリー組成物の製造]
二次電池用負極スラリー組成物は、上記各成分(A)〜(D)、必要に応じて添加される他の成分(E)及び分散媒を混合して得られる。負極スラリー組成物を調製するときに使用する分散媒の量は、負極スラリー組成物の固形分濃度が、通常40〜80質量%、好ましくは60〜80質量%、より好ましくは72〜80質量%の範囲となる量である。負極スラリー組成物の固形分濃度がこの範囲にあるときに、上記各成分が均一に分散することができる。さらに負極スラリー組成物の乾燥前後における厚み変化を小さくできるため、負極内部に残る残留応力を低減することができる。それにより、負極におけるクラックの抑制や結着性を向上することができる。
【0135】
本発明においては上記成分を用いることにより混合方法や混合順序にかかわらず、前記成分が高度に分散された負極スラリー組成物を得ることができる。混合装置は、上記成分を均一に混合できる装置であれば特に限定されず、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどを使用することができるが、中でも高濃度での分散が可能なことから、ボールミル、ロールミル、顔料分散機、擂潰機、プラネタリーミキサーを使用することが特に好ましい。
【0136】
負極スラリー組成物の粘度は、均一塗工性、スラリー経時安定性の観点から、好ましくは10〜100,000mPa・s、更に好ましくは100〜50,000mPa・sである。前記粘度は、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmで測定した時の値である。
【0137】
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、正極、負極、電解液及びセパレーターを備える二次電池であって、前記負極が、上述の二次電池用負極である。
【0138】
(正極)
正極は、正極活物質及び正極用バインダーを含む正極活物質層が、集電体上に積層されてなる。
【0139】
正極活物質
正極活物質は、リチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な活物質が用いられ、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
【0140】
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
【0141】
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO、V、V13、TiO、Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等が挙げられ、中でもサイクル特性と容量からMnO、V、V13、TiOが好ましい。遷移金属硫化物としては、TiS、TiS、非晶質MoS、FeS等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
【0142】
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物等が挙げられる。スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn3/21/2]O(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiMPO(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2)であらわされるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。
【0143】
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。リチウムイオン二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0144】
正極活物質の平均粒子径は、通常1〜50μm、好ましくは2〜30μmである。正極活物質の平均粒子径が上記範囲にあることにより、正極活物質層における正極用バインダーの量を少なくすることができ、電池の容量の低下を抑制できる。また、正極活物質層を形成するためには、通常、正極活物質及び正極用バインダーを含むスラリー(以下、「正極スラリー組成物」と記載することがある。)を用意するが、この正極スラリー組成物を、塗布するのに適正な粘度に調製することが容易になり、均一な正極を得ることができる。
【0145】
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、好ましくは90〜99.9質量%、より好ましくは95〜99質量%である。正極活物質層における正極活物質の含有量を、上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも柔軟性、結着性を示すことができる。
【0146】
正極用バインダー
正極用バインダーとしては、特に制限されず公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂や、アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体を用いることができる。これらは単独で使用しても、これらを2種以上併用してもよい。
【0147】
正極には、上記成分のほかに、さらに前述の電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の他の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0148】
集電体は、前述の二次電池用負極に使用される集電体を用いることができ、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、二次電池の正極用としてはアルミニウムが特に好ましい。
【0149】
正極活物質層の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜250μmである。正極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びエネルギー密度共に高い特性を示す。
【0150】
正極は、前述の二次電池用負極と同様に製造することができる。
【0151】
(セパレーター)
セパレーターは気孔部を有する多孔性基材であって、使用可能なセパレーターとしては、(a)気孔部を有する多孔性セパレーター、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレーター、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレーターが挙げられる。これらの非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレーター、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの固体高分子電解質用またはゲル状高分子電解質用の高分子フィルム、ゲル化高分子コート層がコートされたセパレーター、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコートされたセパレーターなどがある。
【0152】
(電解液)
本発明に用いられる電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。
【0153】
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されないが、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。また、電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。
【0154】
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、LiNなどの無機固体電解質を挙げることができる。
【0155】
[二次電池の製造方法]
本発明の二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する。さらに必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【実施例】
【0156】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価した。
【0157】
<ガラス転移温度>
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製 DSC6220SII)を用いて、JIS K 7121;1987に基づいて測定した。なお、示差走査熱量分析計を用いた測定において、ピークが2つ以上現れた場合には、高温側のピークをTgとした。
【0158】
<テトラヒドロフラン不溶分>
共重合体を含む水分散液を用意し、この水分散液をアルミ皿に入れ、50%湿度、23〜25℃の環境下で、48時間乾燥させて、厚み3±0.3mmのフィルムに成膜した。成膜したフィルムを1mm角に裁断し、1gを精秤した。この裁断により得られたフィルム片の質量をW0とする。このフィルム片を、100gのテトラヒドロフラン(THF)に25℃において、24時間浸漬した。その後、THFから引き揚げたフィルム片を105℃で3時間真空乾燥して、不溶分の質量W1を計測した。そして、下記式にしたがってテトラヒドロフラン不溶分の割合(%)を算出した。
テトラヒドロフラン不溶分(%)=W1/W0×100
【0159】
<高温サイクル特性>
実施例および比較例で製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.2V、0.1Cの充電、3.0V、0.1Cの放電にて充放電の操作を行い、初期容量Cを測定した。さらに、45℃の環境下で充放電を繰り返し、100サイクル後の容量Cを測定した。
高温サイクル特性は、ΔC=C/C×100(%)で示す容量変化率ΔCを算出し、以下の基準で評価した。この容量変化率ΔCの値が高いほど、高温サイクル特性に優れることを示す。
A:93%以上
B:88%以上93%未満
C:83%以上88%未満
D:83%未満
【0160】
<極板膨らみ特性>
前記の「高温サイクル特性」の評価の後でリチウムイオン二次電池のセルを解体し、負極の極板の厚みdを測定した。リチウムイオン二次電池のセルの作製前における負極の極板の厚みをdとして、負極の極板膨らみ率(d−d)/dを算出し、以下の基準で評価した。この値が低いほど、極板膨らみ特性に優れることを示す。なお、負極活物質として黒鉛のみを用いた場合(実施例12)においては、括弧内の基準にて評価した。
A:30%未満(20%未満)
B:30%以上38%未満(20%以上29%未満)
C:38%以上45%未満(29%以上36%未満)
D:45%以上(36%以上)
【0161】
<低温出力特性>
実施例および比較例で製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.2V、1Cの充電レートにて充電の操作を行った。その後、−10℃の環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始10秒後の電圧V10を測定した。低温出力特性は、ΔV=4.2V−V10で示す電圧変化ΔVを算出し、以下の基準で評価した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、低温出力特性に優れることを示す。
A:1.1V未満
B:1.1V以上1.3V未満
C:1.3V以上1.6V未満
D:1.6V以上
【0162】
<初期容量>
負極を直径15mmの円盤状に切り抜き、この負極の活物質層面側に直径18mm、厚さ25μmの円盤状のポリプロピレン製多孔膜からなるセパレーター、金属リチウム対極、エキスパンドメタルを順に積層し、これをポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。
この容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約2mmのハーフセルを作製した。
なお、電解液としてはエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:EMC=3:7(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
このコイン型電池を用いて、0.05Cにて定電流−定電圧充電を行い、初期容量を確認した。
初期容量が420mAh/g以上の場合を「良好」、420mAh/g未満の場合を「不良」と評価した。
【0163】
(実施例1)
(1)芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン46部、イタコン酸4部、スチレン50部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−10℃であった。
【0164】
(2)芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
同様に、攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン21部、イタコン酸4部、スチレン75部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は45℃であった。
【0165】
(3)粒子状バインダー(B)の製造
工程(1)で得られた芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液と、工程(2)で得られた芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液とを、固形分相当で、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=50/50となるように混合し、粒子状バインダー(B)の水分散液を得た。
【0166】
(4)水溶性ポリマー(D)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、メタクリル酸(不飽和カルボン酸単量体)30部、エチレンジメタクリレート(架橋性単量体)0.8部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体)7.5部、ブチルアクリレート((メタ)アクリル酸エステル単量体)60.5部、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(反応性界面活性剤単量体、花王製、商品名「ラテムルPD−104」)1.2部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、イオン交換水150部、及び過硫酸カリウム(重合開始剤)0.5部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、水分散型ポリマーを含む混合物を得た。上記水分散型ポリマーを含む混合物に、10%アンモニア水を添加して、pH8に調整し、所望の水溶性ポリマー(D)を含む水溶液を得た。
【0167】
(5)負極スラリー組成物の製造
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質(A)として人造黒鉛(比表面積:4m/g、体積平均粒子径:24.5μm)90部、及びSiOx(x=1.1、体積平均粒子径:10μm)10部、ヒドロキシル基含有水溶性ポリマー(C)としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分相当で1部となる量を加え、更に上記工程(4)で合成した水溶性ポリマー(D)を含む水溶液を固形分相当量で0.03部となる量を加えた。
これらの混合物をイオン交換水で固形分濃度55%に調整した後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分混合し混合液を得た。
【0168】
次いで、上記の混合液に、上記工程(3)で得られた粒子状バインダー(B)の水分散液を、固形分相当で1部、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度42%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、負極スラリー組成物を得た。
【0169】
(6)負極の製造
上記工程(5)で得られた負極スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して負極原反を得た。この負極原反をロールプレスで圧延して、負極活物質層の厚みが80μmの負極を得た。
【0170】
(7)正極の製造
正極用バインダーとして、ガラス転移温度Tgが−40℃で、数平均粒子径が0.20μmのアクリレート重合体の40%水分散体を用意した。前記のアクリレート重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシル78質量%、アクリロニトリル20質量%、及びメタクリル酸2質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体である。
正極活物質として体積平均粒子径0.5μmでオリビン結晶構造を有するLiFePOを100部と、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分相当で1部と、バインダーとして上記のアクリレート重合体の40%水分散体を固形分相当で5部とを混合し、これにイオン交換水を全固形分濃度が40%となるように加え、プラネタリーミキサーにより混合し、正極スラリー組成物を調製した。
上記の正極スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウムの上に、乾燥後の膜厚が200μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミニウムを0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極を得た。
【0171】
(8)セパレーターの用意
単層のポリプロピレン製セパレーター(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5cm×5cmの正方形に切り抜いた。
【0172】
(9)リチウムイオン二次電池のラミネートセル製造
電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記工程(7)で得られた正極を、4cm×4cmの正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層の面上に、上記工程(8)で用意したセパレーターを配置した。さらに、セパレーター上に、上記工程(6)で得られた負極を、4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うよう配置した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:EMC=3:7(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
得られたラミネート型リチウムイオン二次電池について、初期容量確認以外の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0173】
(10)リチウムイオン二次電池のコインセル製造
上記工程(6)で得られた負極を直径16mmの円盤状に切り抜き、正極とする。この正極に上記工程(8)で用いたのと同じセパレーターを直径18mm、厚さ25μmの円盤状に切った物、負極として用いる金属リチウム、エキスパンドメタルを順に積層し、これをポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約2mmのリチウムイオンコイン電池(ハーフセル)を作製した。 なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:EMC=3:7(20℃での容積比)で混合してなる混合溶媒にLiPFを1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
得られたコイン型リチウムイオン二次電池について、初期容量確認を行った。結果を表1に示す。
【0174】
(実施例2)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0175】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン47.5部、イタコン酸0.3部、スチレン52.2部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−10℃であった。
【0176】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン22.5部、イタコン酸0.3部、スチレン77.2部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は45℃であった。
【0177】
(実施例3)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0178】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン44.5部、イタコン酸5.5部、スチレン50部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−10℃であった。
【0179】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン21.5部、イタコン酸5.5部、スチレン73部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は45℃であった。
【0180】
(実施例4)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0181】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン50部、イタコン酸4部、スチレン46部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−18℃であった。
【0182】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン17部、イタコン酸4部、スチレン79部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は55℃であった。
【0183】
(実施例5)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0184】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン32部、イタコン酸4部、スチレン64部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は18℃であった。
【0185】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン26部、イタコン酸4部、スチレン70部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は33℃であった。
【0186】
(実施例6)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0187】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン46部、イタコン酸4部、スチレン50部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.48部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−10℃であった。
【0188】
(実施例7)
工程(3)の粒子状バインダー(B)の製造において、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液と、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液とを、固形分相当で、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=80/20となるように混合し、粒子状バインダー(B)の水分散液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0189】
(実施例8)
工程(3)の粒子状バインダー(B)の製造において、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液と、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液とを、固形分相当で、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)/芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)=30/70となるように混合し、粒子状バインダー(B)の水分散液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0190】
(実施例9)
工程(5)の負極スラリー組成物の製造において、粒子状バインダー(B)の水分散液の添加量を、固形分相当で2部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0191】
(実施例10)
工程(5)の負極スラリー組成物の製造において、水溶性ポリマー(D)を含む水溶液の添加量を、固形分相当量で0.14部となる量としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0192】
(実施例11)
負極活物質(A)として、人造黒鉛(比表面積:4m/g、体積平均粒子径:24.5μm)90部、及びSiOC(体積平均粒子径:10μm)10部を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0193】
(実施例12)
負極活物質(A)として、人造黒鉛(比表面積:4m/g、体積平均粒子径:24.5μm)100部を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0194】
(実施例13)
工程(4)の水溶性ポリマー(D)の製造において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート7.5部を1.0部とし、ブチルアクリレート60.5部を67.0部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0195】
(実施例14)
工程(4)の水溶性ポリマー(D)の製造において、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート7.5部を15.0部とし、ブチルアクリレート60.5部を53.0部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0196】
(実施例15)
工程(2)の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造において、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部を0.38部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0197】
(実施例16)
工程(2)の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造において、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部を0.19部とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0198】
(比較例1)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)および芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0199】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン48部、スチレン52部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は−10℃であった。
【0200】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン23部、スチレン77部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.25部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は45℃であった。
【0201】
(比較例2)
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いず、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のみで粒子状バインダー(B)を製造したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0202】
(比較例3)
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を用いず、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のみで粒子状バインダー(B)を製造したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0203】
(比較例4)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0204】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン29部、イタコン酸4部、スチレン67部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b1)のガラス転移温度は23℃であった。
【0205】
(比較例5)
下記の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0206】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)の製造
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン27部、イタコン酸4部、スチレン69部、t−ドデシルメルカプタン(TDM)0.3部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部、及び、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、重合体を含む混合物を得た。この混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)を含む水系分散液を得た。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(b2)のガラス転移温度は27℃であった。
【0207】
(比較例6)
水溶性ポリマー(D)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、リチウムイオン二次電池を製造した。各評価結果を表1に示す。
【0208】
【表1】
【0209】
表1の結果に示すように、実施例1〜16の二次電池電極を用いたリチウムイオン二次電池は、比較例1〜6に比べ、各評価のバランスに優れる。