(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機性排水を生物処理する場合に用いられる活性汚泥法は、処理水質が良好で、メンテナンスが容易であるなどの利点から、下水処理や産業廃水処理等に広く用いられている。しかしながら、活性汚泥法におけるBOD容積負荷は一般に0.5〜0.8kg/m
3/d程度であるため、広い敷地面積が必要となる。また、分解したBODの20〜40%が菌体、即ち汚泥へと変換されるため、大量の余剰汚泥処理も問題となる。
【0003】
有機性排水の高負荷処理に関しては、担体を添加した流動床法が知られている。この方法を用いた場合、3kg/m
3/d以上のBOD容積負荷で運転することが可能となる。しかしながら、この方法では発生汚泥量は分解したBODの30〜50%程度で、通常の活性汚泥法より高くなることが欠点となっている。
【0004】
特許文献1には、有機性排水をまず、第一処理槽で細菌により処理し、排水に含まれる有機物を酸化分解して非凝集性の細菌の菌体に変換した後、第二処理槽で固着性原生動物に捕食除去させることで余剰汚泥の減量化が可能になることが記載されている。さらに、この方法では高負荷運転が可能となり、活性汚泥法の処理効率も向上するとされている。
【0005】
このように細菌の高位に位置する原生動物や後生動物の捕食を利用した廃水処理方法は、多数考案されている。例えば、特許文献2には、特許文献1の処理方法で問題となる原水の水質変動による処理性能悪化の対策が記載されている。具体的な方法としては、「被処理水のBOD変動を平均濃度の中央値から50%以内に調整する」、「第一処理槽内および第一処理水の水質を経時的に測定する」、「第一処理水の水質悪化時には微生物製剤または種汚泥を第一処理槽に添加する」等の方法をあげている。
【0006】
特許文献3では、細菌、酵母、放線菌、藻類、カビ類や廃水処理の初沈汚泥や余剰汚泥を原生動物や後生動物に捕食させる際に超音波処理または機械攪拌により、捕食されるフロックのフロックサイズを動物の口より小さくさせる方法を提案している。
【0007】
流動床と活性汚泥法の多段処理による有機性排水の生物処理方法としては、特許文献4に記載のものがある。この方法では、後段の活性汚泥法をBOD汚泥負荷0.1kg−BOD/kg−MLSS/dの低負荷で運転することで、汚泥を自己酸化させ、汚泥引き抜き量を大幅に低減できるとしている。
【0008】
従来の生物処理槽の槽体としては、コンクリート水槽又はタワー状高架水槽が用いられている。
【0009】
コンクリート水槽には次の課題がある。
(イ)槽本体が現地土木工事となり、更に槽内部装置の設置が槽施工後となり、現地での工期が長くなる。施工・品質管理の面でも不安が残る。
(ロ)実用上で水深が通常4m程度までであるため、現地での設置スペースが大きくなる。
(ハ)原水負荷増加に対応して設備を増強したい場合であっても、現地土木工事でかつ設置面積が大きいことから、増設が容易に出来ない。
(ニ)底部からの液漏れの点検がしづらい。
(ホ)槽内面ライニング補修を行う必要がある。
【0010】
タワー状高架水槽には次の課題がある。
(ヘ)設置スペースを抑制しつつ容量を確保するためには、槽高を大きくする必要があり、少なくとも7m程は必要になる。この場合、現地配管施工や日常保守時には槽上部に登る必要があり、通常は階段や梯子等を設置する。このため作業性が悪くなる。
(ト)現地における槽上部からの渡り配管工事の負担が大きくなりやすい。
(チ)槽材質や液質によっては、槽内面ライニング補修を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、従来のコンクリート水槽又はタワー状高架水槽には、次のような課題があった。
1)コンクリート水槽では設置平面積が大きい。
2)コンクリート水槽では工期が長くなる。
3)コンクリート水槽では、設備増強が容易ではない。
4)槽高が大きいタワー型水槽では、高所作業により作業効率が悪く、作業性の向上や転落事故防止を図る必要がある。
5)槽高が大きいタワー型水槽では、槽上部から外部への配管が生じ現地工事の負担が大きくなるため現地工事の簡素化を図る必要がある。
【0013】
本発明は、これらの課題を解決し、施工が容易であると共に、高所作業の低減及び省スペース化を図ることができる有機性排水の生物処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、様々な原水水質や要求水質の変動、処理水量増大に容易に対応することができる有機性排水の生物処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の有機性排水の生物処理装置は、有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する装置であって、第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、後段の第二生物処理槽において、第二生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理装置であって、第一生物処理槽及び第二生物処理槽は同一形状及び同一大きさの塔体を有しており、塔体の高さが6〜11mであることを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、塔体の高さ(H)と直径(D)の比(H/D)が1.5〜5.0であることが好ましい。また、本発明では、マンホールや、大部分例えば半数以上の配管接続部の設置高さTOP(TOP of pipe)が3m以下であることが好ましい。
【0017】
本発明では、第一生物処理槽及び第二生物処理槽を並列に複数設置してもよい。
【0018】
本発明では、塔体はFRP製であり、塔底から塔頂まで全体として一体に成形されたものであることが好ましい。
【0019】
この場合、塔体の下部の肉厚は、塔体上部の肉厚よりも大きいことが好ましい。また、少なくとも一部の上下方向配管は、半割円筒状であり、塔体の内周面に接着されていることが好ましい。
【0020】
本発明の有機性排水の生物処理方法は、かかる本発明の生物処理装置を用いるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有機性排水の処理装置は、規格寸法(同一形状、同一大きさ)の塔体を有する水処理ユニットを複数個備えたものであり、各水処理ユニットは予め工場にて製作しておくことができる。
【0022】
本発明では、各槽のサイズが統一されているので、装置の設計・施工も共通化され、簡易・迅速に行うことができる。また、槽同士の間のスペースを小さくすることもできる。さらに、生物処理槽の増設も容易である。
【0023】
塔体をFRPで一体に構成することにより、軽量となり、運搬や設置施工も容易となる。この場合、塔体の下部の肉厚を大きくすることにより、塔体の強度、耐圧性、耐久性を大きくすることができる。また、上下方向配管を半割円筒状とし、塔体内周面に接着することにより、塔体内部の構造を簡素化し、塔体内部での水の循環流をスムーズなものとすることができる。また、上下方向配管の設置強度も高くなる。
【0024】
本発明の一態様では、大部分の配管の継手箇所やマンホールが塔体の下部(地上高さ4m以下)に設けられているので、高所作業数が少ない。
【0025】
本発明の一態様では、生物処理槽を多段に設け、前段の生物処理槽を、有機物を分散菌に変換する分散菌槽とし、最後段の生物処理槽に、分散菌を捕食する固着性の濾過捕食型微小動物の足場として担体を設ける。この処理においては、微小動物を安定して維持し、処理水質を安定化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して本発明の有機性排水の生物処理装置及び処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の有機性排水の生物処理装置の実施の形態を示すものであり、第一生物処理槽1と、第二生物処理槽2とが基礎3上に立設され、配管4によって直列に接続されている。
【0028】
第一生物処理槽1は、円筒形の塔体10と、該塔体10の下部側面に設けられたフランジ構造の原水流入口11aと、該原水流入口11aに連なり、塔体10内を上方に延在し、上端部が流出口14aよりも上位にて開放した原水導入管11と、塔体10内の底部に設けられた散気管12と、該塔体10内において散気管12の上側に設置された固定床又は揺動床担体13と、塔体10の上部に設けられた処理水の流出口14a等を備えている。なお、散気管12は、気体供給装置としての図示しないブロワに接続されている。ここでブロワとしては、水位が高い場合には、スクリューブロワ、ターボブロワ等の吐出圧力60kPa以上の能力を備える高圧ブロワが好ましい。
【0029】
該流出口14aに流出配管14が連なっている。該流出配管14は、塔体10の外面に沿って下方に延設され、下端がフランジ構造の配管接続部14bとなっている。
図2の通り、流出配管14の上下方向の途中にはクランク状曲成部14cが設けられている。
【0030】
塔体10の頂部に開口15aが設けられ、大気連通管15の一端が接続されている。大気連通管15は、
図2の通り、塔体10の外面を塔体10に沿って下方に延設され、下端15bが基礎3の直近において下方に向って開放している。流出配管14の上端は、逆U字形の連通管14dを介して大気連通管15の横引部15bに連通している。
【0031】
図2の通り、塔体10の頂部には予備座16が設けられ、下部にはマンホール17及び予備座18が設けられている。
【0032】
第二生物処理槽2は、塔体10と同一形状、同一大きさの円筒形の塔体20と、該塔体20の下部側面に設けられたフランジ構造の流入口21と、塔体20内の底部に設けられた散気管22と、該塔体20内の上下方向の中間又はそれよりも下位に設置されたストレーナ23等を備えている。流入口21が配管4を介して配管接続部14bに接続されている。なお、散気管22は、図示しないブロワに接続されている。このブロワは、散気管12への空気供給用ブロワと共用されている。
【0033】
該ストレーナ23に流出配管24が連なっている。該流出配管24は
図3の通り、塔体20の外面に沿って前記第一生物処理槽10の流出口14aと同レベルまで立ち上がる立上部24aと、該立上部24aに一端側が連なり、水平方向に引き回された横引部24bと、該横引部24bの他端側に連なり、塔体20の外面に沿って基礎3の近傍にまで延在する立下部24cとを有し、該立下部24cの下端が流出口24dとなっている。流出配管24の立上部24aの上端からは大気開放管24eが上方に延設され、該大気開放管24eの上端が大気に開放している。流出配管24の立下部24cの途中にはクランク状曲成部24fが設けられている。
【0034】
塔体20の頂部に開口25aが設けられ、大気連通管25の一端が接続されている。大気連通管25は、
図3の通り、塔体20の外面を塔体20に沿って下方に延設され、下端25bは基礎3の直近において下方に向って開放している。
【0035】
図3の通り、塔体20の頂部には予備座26が設けられ、下部にはマンホール27、予備座28及び散気管への空気供給管22aが設けられている。塔体20内には流動床担体29が充填されている。なお、27aはストレーナ23のメンテナンス用のマンホールである。
【0036】
各塔体10,20は、ライニングを不要とするためFRP等の樹脂製が好ましいが、水質によっては鋼板であってもよい。FRPの場合には紫外線による劣化の防止、耐食性の向上を目的として耐候性塗料(例えば(株)トーチ製タンクステンコート等)を塗布するのが好ましい。また、塔体10,20をFRP製とした場合、水圧が大きくなる塔体下部の肉厚を上部よりも大きくすることが好ましい。塔体の上下の途中を上部よりも厚肉とし、下部をそれよりもさらに厚肉としてもよい。
【0037】
なお、第一及び第二生物処理槽1,2には余剰汚泥の取出管、ドレン管や槽内監視カメラの挿入管、配線挿通口、サンプリング口(図示略)等が設けられている。槽内の監視は、カメラ又は動画撮影機能を備えた撮影機材(望ましくは照明付きもしくは赤外線カメラ)を常時又は適宜に槽内に挿入して行う。撮影データは無線又は有線にて送信する。撮影機材に撮影データを保管してもよい。塔体に予め保温材を巻いておいてもよい。
【0038】
必要に応じ、水槽或いは周辺設備、配管等に、水位計、圧力計、流量計、水温計、水質計等の測定器を設置し、運転状況の監視や運転制御、運用管理等に用いる。また、付帯設備(例えば、送水、加温、薬品注入、曝気、脱水機能等を備えた設備)との組合せにより、水槽における処理を最適化するために利用する。
【0039】
この有機性排水の生物処理装置によって有機性排水を処理するには、導入管11を介して原水(有機性排水)を第一生物処理槽1に導入し、散気管12で曝気し、分散性細菌(非凝集性細菌)により、有機成分(溶解性BOD)の70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは85%以上を酸化分解する。この第一生物処理槽1のpHは好ましくは6〜8.5とする。ただし、食品製造排水など原水中に油分を多く含む場合や、半導体製造排水や液晶製造排水など原水中に有機性の溶媒や洗浄剤を多く含む場合には分解速度を高くするため、pHは8〜9としても良い。
【0040】
第一生物処理槽1への通水は、一過式とする。第一生物処理槽1のBOD容積負荷を1kg/m
3/d以上、例えば1〜20kg/m
3/d、HRT(原水滞留時間)を24h以下、好ましくは8h以下、例えば0.5〜8hとすることにより、分散性細菌が優占化した処理水を得ることができ、また、HRTを短くすることでBOD濃度の低い排水を高負荷で処理することができる。
【0041】
第一生物処理槽1には、後段の生物処理槽からの汚泥の一部を返送したり、この第一生物処理槽1を二槽以上の多段構成としたり、担体13を設置したりすることにより、BOD容積負荷5kg/m
3/d以上の高負荷処理も可能となる。担体として流動床担体を充填してもよい。
【0042】
担体13が揺動床担体である場合、素材は発泡合成樹脂特に軟質ポリウレタンフォームが好ましい。第一生物処理槽1にこのような薄い板状ないし短冊状の軽量ポリウレタンフォームのような多孔質のシート状揺動床担体を設置すると、揺動床担体が、十分な弾力性を有し、槽内の水の流れの中でたわむ(形状維持しない)ことにより、薄くても十分な機械的強度を持ち、破損することがない。また、たわむことで槽内の通水を阻害することなく均一に混合され、担体の多孔質構造内にも均等に汚泥含有液が通水されるようになる。
【0043】
第一生物処理槽1における担体の充填率が高い場合、分散菌は生成せず、細菌は担体に付着するか、糸状性細菌が増殖する。そこで、第一生物処理槽1に添加する担体の充填率を、流動床担体の場合は10%以下、例えば1〜10%とし、固定床担体、揺動性担体の場合は5%以下、例えば0.5〜5%とすることで、濃度変動に影響されず、捕食しやすい分散菌の生成が可能になる。
【0044】
第一生物処理槽1の溶存酸素(DO)濃度を1mg/L以下、好ましくは0.5mg/L以下として、糸状性細菌の増殖を抑制しても良い。
【0045】
第一生物処理槽1の処理水(第一生物処理水)を、流出口14a、配管14,4、流入口21を介して後段の第二生物処理槽2に導入し、曝気し、残存している有機成分の酸化分解、分散性細菌の自己分解及び微小動物の捕食による余剰汚泥の減量化を行う。第二生物処理槽2の処理液は、ストレーナ23、流出配管4を介して取り出される。
【0046】
第二生物処理槽2では、細菌に比べ増殖速度の遅い微小動物の働きと細菌の自己分解を利用するため、微小動物と細菌が系内に留まるような運転条件及び処理装置を用いる必要がある。そこで、この実施の形態では、第二生物処理槽2には、流動床担体29を充填して微小動物の槽内保持量を高めている。
【0047】
流動床担体29の形状は、球状、ペレット状、中空筒状、糸状、板状等の任意であり、大きさ(径)は0.1〜10mm程度である。担体29の材料は、天然素材、無機素材、高分子素材等任意であり、ゲル状物質を用いても良い。担体は、流動床担体に限定されるものではなく、固定床担体、揺動性担体のいずれでもよく、二種以上の担体を併用してもよい。
【0048】
第二生物処理槽2では、微小動物を維持するための多量の足場が必要となるが、過度に担体の充填率が多いと槽内の混合不足、汚泥の腐敗などが起こるため、添加する担体の充填率は、0.5〜30%、特に1〜10%程度とすることが望ましい。
【0049】
微小動物による捕食を促進させるため、第二生物処理槽2のpHを7.0以下としても良い。
【0050】
第二生物処理槽2では、分散状態の菌体を捕食する濾過捕食型微小動物だけでなく、フロック化した汚泥を捕食できる凝集体捕食型微小動物も増殖する。後者は遊泳しながらフロックを捕食するため、優先化した場合、汚泥は食い荒らされ、微細化したフロック片が散在する汚泥(沈降性の悪い汚泥)となる。また、このフロック片により、特に後段で膜分離を行う膜式活性汚泥法では膜の目詰まりが発生する。そこで、凝集体捕食型微小動物を間引くため、SRTを60日以下望ましくは45日以下の範囲内で一定に制御することが望ましい。ただし15日未満では不必要に頻繁すぎて凝集体捕食型微小動物だけでなく濾過捕食型微小動物の数が減少しすぎるので15日以上とするのが好ましい。
【0051】
第一生物処理槽1では有機物の大部分、すなわち排水BODの70%以上、望ましくは80%以上を分解し、菌体へと変換しておく必要があるが、第一生物処理槽1で溶解性有機物を完全に分解した場合、第二生物処理槽2ではフロックが形成されず、また、微小動物増殖のための栄養も不足し、圧密性の低い汚泥(沈降性の悪い汚泥)のみが優占化した生物処理槽となる。そこで、原水の一部をバイパスして第二生物処理槽2に供給し、第二生物処理槽2への溶解性BODによる汚泥負荷が0.025kg−BOD/kg−MLSS/d以上となるように運転してもよい。この時のMLSSには担体付着分のMLSSも含む。
【0052】
第二生物処理槽2からストレーナ23及び配管24を介して取り出される処理水に対して、より高度な処理水水質を得るために固液分離として膜分離、凝集沈殿、加圧浮上のいずれを行ってもよい。なお、凝集沈殿や加圧浮上を行うときは、凝集剤の添加量の低減することができる。第二生物処理槽2からの沈降分離水を凝集槽で凝集処理し、次いで固液分離槽(沈殿槽)で沈殿処理して処理水と沈降汚泥とに分離してもよい。
【0053】
ストレーナ23に付着した異物を除去するために、逆洗用空気供給管を配管24に接続してもよい。このようにすれば、ストレーナ23が塔体内の下部に設置されていても、付着物を容易に除去することができる。なお、ストレーナ23を塔体内の下部に設置することにより、油脂などの浮上性の異物がストレーナに付着することが防止される。
【0054】
図5〜8を参照して本発明の別の実施の形態に係る有機性排水の生物処理装置を説明する。
図5の通り、この有機性排水の生物処理装置においても、第一生物処理槽41と、第二生物処理槽42とが基礎43上に立設され、配管70によって直列に接続されている。
【0055】
第一生物処理槽41は、FRP製の円筒形の塔体50と、該塔体50の下部側面に設けられたフランジ構造の原水(被処理水)流入口51aと、該原水流入口51aに連なり、塔体50の内周面に沿って上方に延在し、上端部が水面位よりも上位にて開放した原水導入管51と、塔体50内の底部に設けられた散気管52と、散気管52を図示しないブロワに接続する空気配管53と、空気配管53の途中に連なるサイホンブレーク用配管53Aと、塔体50の上下方向の中間又はそれよりも下位に設けられた複数個のストレーナ54,54と、ストレーナ54同士を接続する接続配管55と、該接続配管55内に連通する処理水取出口56と、塔体50の内周面に沿って上下方向に延在したドレン配管57と、塔体50内に上下方向に設けられた消泡剤水溶液の注入配管58等を備えている。
【0056】
塔体50の頂部に、開口50aが設けられ、塔体50内が該開口50aを介して大気に連通している。
【0057】
原水導入管51は、
図6(a)の通り、半割円筒状であり、塔体50の内周面に接着されている。この原水導入管51の上端は、上記の通り、水面位よりも上方において塔体50内に開放している。原水導入管51の下端は封じられている。塔体50の下部側壁を貫くように設けられた原水流入口51aが該原水導入管51内の下端部に連通している。
【0058】
空気配管53は、一端側が塔体50の下部を貫通して塔体50外に突出し、その先端にブロワからの空気供給配管が接続されている。空気配管53の他端が散気管52に接続されている。
【0059】
空気配管53は、塔体50内において、水面位よりも上方に立ち上っており、この立ち上がりの最高位部53bにサイホンブレーク用配管53Aの一端が接続されている。サイホンブレーク用配管53Aは、塔体50内を下方に引き回されており、その他端側は塔体50の下部を貫通して塔体50外に突出している。このサイホンブレーク用配管53Aの先端部にバルブ53aが設けられている。
【0060】
ストレーナ54は、塔体50の上下方向の中間付近又はそれよりも下位に設置されている。ストレーナ54は、
図7に示す通り、塔体50の内周面に接着されることにより取り付けられたボックス54aと、該ボックス54aの前面に設けられたウェッジワイヤ等よりなるスクリーン54bとを有する。ボックス54aの後面は開放しており、ボックス54aの後端が塔体50の内周面に接着されている。
【0061】
この実施の形態では、ストレーナ54は上下に離隔して2個設けられており、各ストレーナ54内が接続配管55によって連通されている。
【0062】
この接続配管55も半割円筒状であり、塔体50の内周面に接着されている。処理水取出口56は、塔体50に設けられた開口を介して該接続配管55内に連通している。
【0063】
図示は省略するが、ストレーナ54内をメンテナンスするために、塔体50にハンドホールが設けられている。
【0064】
ドレン配管57は、塔体50の内周面に沿って上下方向に延設されている。ドレン配管57は、最上部を除いて、
図6(b)の通り、半割円筒状であり、塔体50の内周面に接着されている。ドレン配管57の最上部は、円筒状であり、水面位よりも上方において塔体50内に開放している。ドレン配管57の下端部は塔体50の下部のドレン取出口57に連通している。
【0065】
消泡剤の注水配管58は、塔体50内を上下方向に引き回されており、上端部は略U字状に曲成されて下向きとされ、塔体50内の水面位よりも上方において開放している。注水配管58の下端は、塔体50を貫通して塔体50外に突出している。
【0066】
第二生物処理槽42は、上記第一生物処理槽41の構成をすべて具備しており、第一生物処理槽41と同一部分に同一符号が付されている。
【0067】
第二生物処理槽42は、第一生物処理槽41の上記構成に加え、さらに処理水取出口56に接続された処理水取出配管60を備えている。この処理水取出配管60は、塔体50外を上方に引き回された後、塔体50の側壁を貫通して塔体50内に引き込まれ、第二生物処理槽10の水面よりも上方にまで立ち上がる立上部61と、該立上部61に一端側が連なり、水平方向に引き回された横引部62と、該横引部62の他端側に連なり、塔体50内の下部にまで延在し、塔体50外に突出した立下部63とを有し、該立下部63の末端が流出口64となっている。
【0068】
立上部61の上端61aは、下向きに湾曲し、塔体50内に開放している。このため、横引部62のレベルが第二生物処理槽42内の水面レベルとなる。また、第一生物処理槽41の取出口56と第二生物処理槽42の流入口51aとが配管70で連通しているので、第一生物処理槽41内の水面レベルは第二生物処理槽42の水面レベルと同一となる。
【0069】
図6(b)に示すように、立上部61、立下部63は、塔体50の内周面に沿って上下方向に延在している。立上部61、及び立下部63は半割円筒状であり、塔体50の内周面に接続されている。
【0070】
配管60のうち塔体50外を引き回されている部分には、2個のバルブ66、67が設けられている。このバルブ66,67間に、バルブ68aを有した空気供給配管68が接続されている。また、バルブ66,67間に、サンプル水を取り出すためのサンプリング配管69が接続されている。この配管69にバルブ69aが設けられている。
【0071】
第一生物処理槽41の処理水取出口56と第二生物処理槽42の流入口51aとを接続する配管70に2個のバルブ71,72が設けられている。バルブ71,72間に、バルブ74を有した空気供給配管73が接続されている。
【0072】
なお、図示は省略するが、第一及び第二生物処理槽41,42には、余剰汚泥の取出管や槽内監視カメラの挿入管、配線挿通口、マンホール、予備座(図示略)等が設けられている。
【0073】
第一及び第二生物処理槽41,42には、流動床担体を充填する。この流動床担体としては、前記実施の形態と同様のものを用いることができる。
【0074】
この有機性排水の処理装置によって有機性排水を処理するには、第一生物処理槽41の導入管51を介して原水(有機性排水)を第一生物処理槽51に導入し、散気管52で曝気し、分散性細菌(非凝集性細菌)により、有機成分(溶解性BOD)の70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは85%以上を酸化分解する。なお、曝気時には配管53Aのバルブ53aは閉とする。この第一生物処理槽41のpHやBOD容積負荷、担体の充填率、溶存酸素(DO)濃度等の好適条件は、前記
図1〜3の実施の形態と同様である。
【0075】
第一生物処理槽41の処理水(第一生物処理水)を、流出口56から配管70を介して後段の第二生物処理槽42に導入し、曝気し、残存している有機成分の酸化分解、分散性細菌の自己分解及び微小動物の捕食による余剰汚泥の減量化を行う。なお、このとき、配管70のバルブ71,72及び配管60のバルブ66,67は開とされている。
【0076】
第二生物処理槽42の好適な担体の充填率やpH、SRT、溶解性BODによる汚泥負荷は、前記実施の形態と同様である。
【0077】
第一及び第二生物処理槽41,42内で曝気を行っている時の空気は、塔頂の開口50aから塔外に排出される。曝気に際して生じた泡は配管57を介して塔体50外の排水ピットに排出される。この排水ピットに泡センサを設けておき、泡が多いときには消泡剤や水を注入する。
【0078】
この実施の形態では、第一生物処理槽41のストレーナ54のスクリーン54bが目詰りしたときには、バルブ72を閉、バルブ74を開とし、空気供給配管73から空気を第一生物処理槽41のストレーナ54内に供給し、空気逆洗する。第二生物処理槽42のストレーナ54のスクリーン54bが目詰りしたときには、バルブ67を閉、バルブ68aを開とし、空気配管68から空気を第二生物処理槽42のストレーナ54内に供給し、空気逆洗する。このようにストレーナ54を空気によって容易に洗浄することができるので、ストレーナ54が塔内の下部に設置されていてもその洗浄が容易である。ストレーナ54を塔体内の下部に設置することにより、油脂などの浮上性の異物がストレーナ54に付着することが防止される。
【0079】
生物処理装置の運転の停止時には、各バルブ53aを開とし、生物処理槽41,42内の水が配管53内をサイホン現象で逆流することを防止する。
【0080】
図5〜8の実施の形態では、ストレーナ54を上下2段に設置しているが、1段又は3段以上に設置してもよい。また、ストレーナを同レベルに複数個設けてもよい。その一例を
図9,10に示す。
【0081】
図9では、2個のストレーナ54,54を同レベルに設置し、それらの下部同士を配管55で接続し、配管55内に連通するように処理水取出口56を設けている。なお、
図9(a)は、塔体50のうちストレーナ54を設けた部分の側面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のIXb−IXb線断面図である。
【0082】
図10では、2個のストレーナ54,54を同レベルに設置し、各々の下部にそれぞれ処理水取出配管80,80を接続している。配管80,80は、上方に引き回され、塔体50内において合流して立上部となり、横引部を経て立下部81となり、その下端が取出口56に連通している。なお、
図10は塔体50のうちストレーナ54を設けた部分の側面図である。
【0083】
図1〜3,5〜10は、本発明の実施の形態の一例を示すものであり、本発明は何ら図示のものに限定されない。例えば、第一生物処理槽1,41又は第二生物処理槽2,42の後段に第三生物処理槽を設けるなどして、生物処理槽を3段以上に設けてもよい。
【0084】
図4は、第一生物処理槽1、第二生物処理槽2の種々の配置パターンを示す平面図である。
図4(a)は、第一生物処理槽1、第二生物処理槽2を1基ずつ設置して直列に接続したものである。
図4(b)は、第一生物処理槽1を1基設置し、第二生物処理槽2を並列に複数基設置したものである。
図4(c)は、第一生物処理槽1を並列に複数基設置し、第二生物処理槽2を1基設置したものである。
図4(d)は、第一生物処理槽1及び第二生物処理槽2の直列接続体を並列に複数列設置したものである。
【0085】
図4(e)、(f)は、第一生物処理槽1を並列に複数基設置し、第二生物処理槽2を並列に複数基設置したものであり、(e)では第一生物処理槽1の数が第二生物処理槽2よりも多く、(f)では第二生物処理槽2の数が第一生物処理槽1よりも多い。図示は省略するが、第一生物処理槽1と第二生物処理槽2の数が同数でもよい。
【0086】
図4(g)は、第二生物処理槽2,2’を直列に複数基設置したものである。
図4(h)は、
図4(g)のものを並列に複数設置したものである。
【0087】
第一生物処理槽又は第二生物処理槽を並列に設置した場合には、一部の第一生物処理槽又は第二生物処理槽で運転を停止してメンテナンスしながら残りの第一生物処理槽、第二生物処理槽を用いて有機性排水の処理装置の運転を継続させることもできる。
【0088】
図4の通り、本発明によると、第一生物処理槽1と第二生物処理槽2を種々のパターンにて設置することができ、現場での原水の水量や水質に応じて所望の配列とすることができる。また、既存の本発明構造の有機性排水の処理装置に対して第一生物処理槽及び第二生物処理槽の少なくとも一方を並列又は直列に追加設置して原水流量の増大や水質変動に対応することができる。
【0089】
本発明では、第一及び第二生物処理槽1,2同士及び41,42同士の塔体が同一形状、同一大きさであるため、各生物処理槽を多数設置する場合でも各塔体を近接して設置し、塔体間のスペースを小さくし、有機性排水処理装置全体の設置スペースを小さくすることができる。また、塔体の製造コストも安価となる。複数の塔体を並列に設置する場合、各塔体の構成が同一であるから、塔体の据付作業や各塔体の配管接続作業が同じとなり、作業効率が向上し、工期の短縮を図ることができる。
【0090】
各塔体10,20,50は、直径が2.2〜3.6m、特に2.4〜3.3mであり、高さが6〜11m、特に8〜11mであり、高さHと直径Dとの比H/Dが1.5〜5.0特に3.0〜4.5であることが好ましい。また、主要な配管の接続部やマンホール17,27、担体13、ストレーナ23,54、散気管12,22,52などは、基礎3からの高さが4m以下、特に3.0m以下であることが好ましい。このように接続部、マンホール17,27、担体13、ストレーナ23,54、散気管12,22,52などを低位置に設けることにより、配管接続作業や機器設置作業、各種メンテナンス作業が高所作業ではなくなり、作業効率及び安全性が向上する。
【0091】
本発明では、第一生物処理槽1,41の前段に嫌気処理槽を設置し、嫌気処理槽の処理水を第一生物処理槽に導入するようにしてもよい。この嫌気処理槽の塔体の大きさも塔体10,20又は塔体50と同一としてもよい。
【0092】
本発明では、嫌気又は好気処理槽の最前段に調整槽を設置してもよい。この調整槽としては、原水流量を平準化するための原水槽、固形物を沈降させるための沈降槽、加圧浮上装置などが例示されるが、これに限定されない。
【0093】
本発明では、各生物処理槽は、予め塔体に散気管などの付属機器を工場で取り付けておき、現場に移送し、基礎上に据え付けるように施工を行うのが好ましい。これにより、現場作業数を減少させ、工期の短縮や、組み立て精度の向上などを図ることができる。
【0094】
本発明では、生物処理槽内への原水(被処理水)の流入口と処理水の流出口との距離、すなわち
図1〜3では原水導入管11の上端部と流出口14aとの距離、
図5〜8では原水導入管51の上端部とストレーナ54(上側のもの)との距離を1.5m以上特に2m以上とすることが好ましい。このように構成することにより、短絡流の割合が少なくなり、CODの分解時間を十分に確保できるようになる。