特許第6245380号(P6245380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000002
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000003
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000004
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000005
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000006
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000007
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000008
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000009
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000010
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000011
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000012
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000013
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000014
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000015
  • 特許6245380-発光素子及び発光素子の製造方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245380
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】発光素子及び発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20171204BHJP
   H01L 33/30 20100101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01L33/22
   H01L33/30
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-557446(P2016-557446)
(86)(22)【出願日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2015005211
(87)【国際公開番号】WO2016072050
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-227158(P2014-227158)
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
(72)【発明者】
【氏名】古屋 翔吾
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−70017(JP,A)
【文献】 特開2012−142508(JP,A)
【文献】 特開2011−9386(JP,A)
【文献】 特開2013−106020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓層兼支持基板と、前記窓層兼支持基板上に設けられ、第二導電型の第二半導体層と、活性層と、第一導電型の第一半導体層とをこの順に含む発光部とを有する発光素子において、
前記発光素子は、前記発光部が除去された除去部と、前記除去部以外の非除去部と、該非除去部の前記第一半導体層上に設けられた第一オーミック電極と、前記除去部の前記窓層兼支持基板上に設けられた第二オーミック電極とを有し、
前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜で被覆され、前記第一半導体層の外周部を除く表面及び前記窓層兼支持基板の表面が粗面化され、且つ、前記発光部側面のRが2μm未満であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記窓層兼支持基板はGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiCのいずれかからなり、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層がAlGaInPまたはAlGaAsからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
基板上に、該基板と格子整合系の材料で第一半導体層、活性層、第二半導体層を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部を形成する工程と、該発光部の上に前記基板に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板をエピタキシャル成長により形成する工程と、前記基板を除去する工程と、前記第一半導体層の表面に第一オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程と、前記発光部の一部を除去する除去部と、それ以外の非除去部を形成する素子分離工程と、前記発光部が除去された窓層兼支持基板上に第二オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜で被覆する工程、前記窓層兼支持基板の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程からなり、
前記第一粗面処理工程において、第一オーミック電極周辺及び、その後の前記素子分離工程で前記非除去部の前記第一半導体層表面の外周部となる領域については粗面化しないことを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板をGaAsまたはGeとし、前記窓層兼支持基板をGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiCのいずれかとし、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層をAlGaInPまたはAlGaAsとすることを特徴とする請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第一粗面処理工程は、
有機酸と無機酸の混合液が用いられ、前記有機酸は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか一種類以上含有し、前記無機酸は塩酸・硫酸・硝酸・弗酸のいずれか一種類以上を含有する溶液を用いて行い、
前記第二粗面処理工程は、
クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸の有機酸からいずれか1種類以上を含み、かつ、塩酸、硫酸、硝酸、弗酸の無機酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、沃素を含む溶液を用いて行うことを特徴とする請求項4に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記素子分離工程は、
塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法により行い、前記第一粗面処理工程において粗面化させない領域に非Al含有層を残留させ、エッチングマスクとして使用することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記非Al含有層は、GaAs、InGaP、InGaAs、Geのいずれか1層以上含み、前記ウェットエッチング後に前記非Al含有層を除去する工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記素子分離工程は、
塩化水素を含有するガスによるドライエッチング法により行うことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、及び発光素子の製造方法に関し、特に基板上にエピタキシャル成長によって第一半導体層、活性層、第二半導体層、窓層兼支持基板を形成し、基板を除去した後に電極を形成した発光素子基板へ粗面処理を施す際の構造及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)の高効率化が進み、照明器具への適用が進んでいる。従来の照明器具はInGaN系の青色LEDと蛍光剤を組み合わせた器具がほとんどであった。しかし、蛍光剤を使用した際には原理的にストークスロスの発生が避けられず、蛍光剤が受光した全ての光を別の波長に変換はできない問題があった。特に青色より相対的に長波長の黄色や赤色といった領域でこの問題が顕著である。
【0003】
この問題を解決するために、黄色や赤色LEDと青色LEDを組み合わせる技術が近年採用されている。その際、COB(chip on board)型のように一方の面に光を取り出すのではなく、ボードの上にLEDを並べてフィラメント型で発光させる電球タイプの照明器具が普及しつつある。このタイプの器具に適用するLED素子は、フィラメント全面にわたって光を取り出す必要があるため、素子の一方に光を取り出すタイプは適しておらず、チップ全球に光を取り出す配光を有する素子が理想的である。
【0004】
青色LEDであるInGaN系LEDはサファイア基板を用いるのが一般的であり、サファイア基板は発光波長に対して透明であるため、前述の照明器具に対しては理想的な形態になっている。しかし、黄色や赤色のLEDにおいては、発光波長に対して光吸収基板となるGaAsやGeを出発基板にしており、前記の用途には適さない。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1に示すように発光部に透明基板を接合する方法や、特許文献2に示すように支持基板に用いられるような厚さまで窓層を成長し、光吸収基板である出発基板を除去してLEDにする技術が開示されている。
【0006】
特許文献1で開示される方法では、必要な厚さ以上の透明基板を接合する必要があり、接合後に基板を所定の厚さまで削る必要があるため、コストアップの要因となる。また、通常、接合に用いられる基板は200μm以上の厚さがある。LED素子に要求される膜厚は、配光特性及び他の素子とのアセンブリ性を考慮すると、せいぜい100μm前後であるため、この程度の厚さまで薄膜化加工する必要がある。薄膜化加工にあたり、加工を行うことによる工数の増加、及び、ウェーハが割れるリスクも増大し、コストアップ及び歩留まり低下要因となる。
【0007】
一方、特許文献2に開示される支持基板に用いることができる厚さまで結晶成長により成長した窓層を支持基板として利用する方法では、所望の厚さまで窓層を成長すればよく、薄膜化加工や基板接合・接着の工程が不要のため、低コストでの形成が可能であり、優れた方法である。
【0008】
また、前述のような透明支持基板を有する発光素子においては、発光素子内部での多重反射を防止し、光吸収を抑制することで発光効率を上げる手法が取られるのが一般的である。特許文献3では、厚い窓層兼電流拡散層と厚い窓層兼支持基板が発光部を挟む構造において、窓層兼電流拡散層及び窓層兼支持基板に粗面をかけ、発光部には粗面をかけない方法が提案されている。ただ、この方法は窓層兼電流拡散層部を貫通する深いトレンチを形成する必要があり、コストがかかるだけでなく、上部と下部の電極の高低差が大きすぎるため、ワイヤーボンディングを行うことが難しい。フリップチップ型に適用するに際しても、厚い絶縁膜と非常に長い金属ビアを形成する必要があり、コストアップ要因となる。従って、上部電極部である窓層兼電流拡散層部が薄いことが望まれる。
【0009】
窓層兼電流拡散層の厚さが薄く、上部電極部と下部電極部の高低差が少なく、かつ、光取り出し部もしくは光反射部に粗面を有する開示技術として、特許文献4及び5が挙げられる。特許文献4では、光取り出し面側と反対側のn型半導体層表面に粗面を形成しているが、フリップチップ型への技術開示であり、電極側から窓層側への効率的な光反射を目的としている。また、窓層兼支持基板と発光部両者へ粗面をかけることの難しさが開示されている。
【0010】
特許文献5では、発光部表面に粗面が施されており、発光部側面に異なる角度のメサ形状あるいは単純なメサ形状を有する技術が開示されている。この場合、基板には粗面を必要としない反射型の構造が採用されている。また、発光部表面はフォトリソグラフィーにより2μm周期等の凹凸を形成する技術が開示されている。
【0011】
一方、窓層兼支持基板をエピタキシャル成長で形成した場合、格子不整に起因して基板は大きく反っており、たとえ密着露光法を採用したとしてもフォトリソグラフィー法では発光部表面に2μm以下のピッチの均一パターンを形成することが極めて困難である。従って、窓層兼支持基板をエピタキシャル成長で形成した場合、発光部表面の粗面化は、粗面液を利用して行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5427585号公報
【特許文献2】特許第4569858号公報
【特許文献3】特許第4715370号公報
【特許文献4】特開2007−059518号公報
【特許文献5】特開2011−198992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、発光部表面の粗面化を粗面液で行った後、素子分離を実施した場合、素子分離した発光部の側面の形状は、粗面化を行った発光部表面の凹凸を反映した形状になる。これは、素子分離において、凹部は薄いため発光部のエッチングが早く終了して窓層兼支持基板部に達するのに対し、凸部は厚いため窓層兼支持基板部に遅く達する。そのため、凸部をエッチングする間に、凹部で発光部をオーバーエッチングし、発光部の側面にエッチング方向の投影視において凹凸を形成するためである。このように、発光部の表面を粗面液によって粗面化した後に、素子分離を行う場合、素子分離した発光部の側面の形状における凸部に電界が集中しやすく、リーク不良やESD(静電気放電)不良を発生する問題があった。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、窓層兼支持基板と発光部を有し、発光部を粗面液で粗面化した後、素子分離を行う発光素子において、リーク不良やESD不良の発生が抑えられた発光素子及び発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、窓層兼支持基板と、前記窓層兼支持基板上に設けられ、第二導電型の第二半導体層と、活性層と、第一導電型の第一半導体層とをこの順に含む発光部とを有する発光素子において、
前記発光素子は、前記発光部が除去された除去部と、前記除去部以外の非除去部と、該非除去部の前記第一半導体層上に設けられた第一オーミック電極と、前記除去部の前記窓層兼支持基板上に設けられた第二オーミック電極とを有し、
前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜で被覆され、前記第一半導体層の外周部を除く表面及び前記窓層兼支持基板の表面が粗面化され、且つ、前記発光部側面のRが2μm未満であることを特徴とする発光素子を提供する。
【0016】
このような発光素子であれば、粗面化により発光効率を向上させるとともに、発光部側面の凹凸形状に依存するリーク不良及びESD不良の発生が抑えられた発光素子となる。
【0017】
このとき、前記窓層兼支持基板はGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiCのいずれかからなり、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層がAlGaInPまたはAlGaAsからなるものであることが好ましい。
このように、窓層兼支持基板、第一半導体層、活性層、第二半導体層として、上記のような材料を好適に用いることができる。
【0018】
また、本発明によれば、基板上に、該基板と格子整合系の材料で第一半導体層、活性層、第二半導体層を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部を形成する工程と、該発光部の上に前記基板に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板をエピタキシャル成長により形成する工程と、前記基板を除去する工程と、前記第一半導体層の表面に第一オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程と、前記発光部の一部を除去する除去部と、それ以外の非除去部を形成する素子分離工程と、前記発光部が除去された窓層兼支持基板上に第二オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜で被覆する工程、前記窓層兼支持基板の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程からなり、
前記第一粗面処理工程において、第一オーミック電極周辺及び、その後の前記素子分離工程で前記非除去部の前記第一半導体層表面の外周部となる領域については粗面化しないことを特徴とする発光素子の製造方法を提供する。
【0019】
このような製造方法であれば、粗面化により発光効率を向上させるとともに、発光部側面の凹凸形状に依存するリーク不良及びESD不良の発生が抑えられた発光素子を製造することができる。
【0020】
このとき、前記基板をGaAsまたはGeとし、前記窓層兼支持基板をGaPGaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiCのいずれかとし、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層をAlGaInPまたはAlGaAsとすることが好ましい。
このように、基板、窓層兼支持基板、第一半導体層、活性層、第二半導体層として、上記のような材料を好適に用いることができる。
【0021】
このとき、前記第一粗面処理工程は、
有機酸と無機酸の混合液が用いられ、前記有機酸は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか一種類以上含有し、前記無機酸は塩酸・硫酸・硝酸・弗酸のいずれか一種類以上を含有する溶液を用いて行い、
前記第二粗面処理工程は、
クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸の有機酸からいずれか1種類以上を含み、かつ、塩酸、硫酸、硝酸、弗酸の無機酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、沃素を含む溶液を用いて行うことが好ましい。
【0022】
このようにすれば、確実に表面を粗面化することができる。
【0023】
このとき、前記素子分離工程は、
塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法により行い、前記第一粗面処理工程において粗面化させない領域に非Al含有層を残留させ、エッチングマスクとして使用することができる。
このようにすれば、素子分離を行った発光部の側面に明瞭なメサ形状を得ることができる。
【0024】
このとき、前記非Al含有層は、GaAs、InGaP、InGaAs、Geのいずれか1層以上含み、前記ウェットエッチング後に前記非Al含有層を除去する工程を行うことが好ましい。
このようにすれば、素子分離を行った発光部の側面に明瞭なメサ形状をより確実に得ることができる。
【0025】
また、前記素子分離工程は、
塩化水素を含有するガスによるドライエッチング法により行うことができる。
このようにすれば、素子分離を行った発光部の側面にくびれのない形状を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の発光素子、及び発光素子の製造方法は、粗面化により発光効率を向上させるとともに、発光部側面の凹凸形状に依存するリーク不良及びESD不良の発生が抑えられた発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の発光素子の一例を示した概略図である。
図2】本発明の発光素子の製造方法の一例を示した工程図である。
図3】本発明の発光素子の製造方法の製造過程における基板上に発光部と窓層兼支持基板を成長させたエピタキシャル基板を示す概略図である。
図4】本発明の発光素子の製造方法の製造過程におけるエピタキシャル基板から基板を除去した発光素子基板を示す概略図である。
図5】本発明の発光素子の製造方法の製造過程における第一オーミック電極が形成された発光素子基板の概略図である。
図6】本発明の発光素子の製造方法の製造過程における第一粗面処理が行われた発光素子基板の概略図である。
図7】本発明の発光素子の製造方法の製造過程における素子分離工程を行った発光素子基板の概略図である。
図8】本発明の発光素子の製造方法の製造過程における第二オーミック電極を形成し、絶縁保護膜を形成した発光素子基板の概略図である。
図9】実施例1の発光素子の概略図である。
図10】実施例2の発光素子の概略図である。
図11】実施例1における素子分離端部の写真である。
図12】比較例における素子分離端部の写真である。
図13】実施例及び比較例における発光素子の逆方向電圧(VR)の頻度を示した図である。
図14】実施例及び比較例における発光素子のESD電圧とESD不良率の関係を示した図である。
図15】実験における発光部の側面のRとVR不良率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
前述のように、発光部の表面を粗面液によって一様に粗面化した後に、素子分離を行う場合、リーク不良やESD不良が発生する問題があった。
【0029】
そこで、本発明者らはこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、発光部表面を粗面化する際に、その後の素子分離で第一半導体層表面の外周部となる領域については粗面化をしないことで、発光部側面のRを2μm未満とすることができ、これによって、リーク不良及びESD不良を抑えることができることに想到した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0030】
まず、本発明の発光素子について図1を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の発光素子1は、窓層兼支持基板107と、窓層兼支持基板107上に設けられ、第二導電型の第二半導体層105と、活性層104と、第一導電型の第一半導体層103とをこの順に含む発光部108とを有している。
【0031】
窓層兼支持基板107はGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiC等からなり、第一半導体層103、活性層104、第二半導体層105がAlGaInPまたはAlGaAsからなるものとすることができる。
【0032】
発光素子1は、発光部108の少なくとも第一半導体層103と活性層104が除去された除去部170と、除去部170以外の非除去部180と、該非除去部180の第一半導体層103上に設けられた第一オーミック電極121と、除去部170の窓層兼支持基板107上に設けられた第二オーミック電極122とを有している。
【0033】
第一半導体層103表面及び発光部108の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜150で被覆され、第一半導体層103の外周部(第二領域131)を除く表面及び窓層兼支持基板107の表面が粗面化され、且つ、発光部108側面のRが2μm未満である。
なお、本願におけるRは表面の十点平均粗さ(JIS B0601−1994)を示すものとする。
【0034】
このような本発明の発光素子1であれば、粗面化により発光効率を向上させるとともに、発光部108側面のRが2μm未満であるので、凹凸形状に依存するリーク不良及びESD不良の発生が抑えられた発光素子となる。
【0035】
次に、本発明の発光素子の製造方法について図2図8を参照して説明する。
まず、図3に示すように出発基板として、基板101を用意する(図2のSP1)。
【0036】
基板101としては、GaAsまたはGeを好適に用いることができる。
このようにすれば、後述する活性層104の材料を格子整合系でエピタキシャル成長を行うことができるため、活性層104の品質を向上させやすく、輝度上昇や寿命特性の向上が得られる。
【0037】
次に、基板101上に、基板101と格子定数が異なる第一導電型の第一半導体層103、活性層104、第二導電型の第二半導体層105を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部108を形成する(図2のSP2)。
なお、図示しないが、基板101と第一半導体層103の間には、後述する基板101を除去する工程のために、基板除去選択エッチング層が挿入されることが好ましい。
【0038】
次に、発光部108の上に基板101に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板107をエピタキシャル成長により形成して、エピタキシャル基板109を作製する(図2のSP3)。
【0039】
上記SP2、3において、具体的には、図3に示すように、基板101上に例えばMOVPE法(有機金属気相成長法)やMBE(分子線エピタキシー法)、CBE(化学線エピタキシー法)により第一導電型の第一半導体層103、活性層104、第二導電型の第二半導体層105からなる発光部108上に、緩衝層106、窓層兼支持基板107をこの順にエピタキシャル成長したエピタキシャル基板109を作製することができる。
なお、窓層兼支持基板107は、HVPE法(ハイドライド気相成長法)により形成してもよい。
【0040】
活性層104は発光波長に応じて(AlGa1−xIn1−yP(0≦x≦1、0.4≦y≦0.6)またはAlGa1―zAs(0≦z≦0.45)で形成される。可視光照明に適用する場合、AlGaInPを選択するのが好適であり、赤外照明に適用する場合、AlGaAsを選択するのが好適である。ただし、活性層104の設計に関しては、超格子等の利用により波長は材料組成に起因する波長以外に調整可能であるため、上記の材料に限られない。
【0041】
第一半導体層103、第二半導体層105はAlGaInPもしくはAlGaAsが選択され、その選択は活性層104と必ずしも同一の材料でなくともよい。
【0042】
本実施形態においては、最も単純な構造である第一半導体層103、活性層104、第二半導体層105が同一材料であるAlGaInPの場合を例示するが、第一半導体層103あるいは第二半導体層105は特性向上のため、各層内には複数層が含まれるのが一般的であり、第一半導体層103あるいは第二半導体層105が単一層であることに限定されない。
【0043】
窓層兼支持基板107としては、GaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al)、石英(SiO)、SiC等を好適に用いることができる。窓層兼支持基板107をGaAsPまたはGaPで形成した場合、緩衝層106はInGaPで形成するのが最も好適である。
また、窓層兼支持基板107は格子整合系の材料であるAlGaAsで形成することも可能である。また、窓層兼支持基板107として、GaAsPを選択すると、耐候性が良好である。
しかし、GaAsPと、AlGaInP系材料またはAlGaAs系材料との間には大きな格子不整が存在するため、GaAsPには高密度のひずみや貫通転位が入る。その結果、エピタキシャル基板109は大きな反りを有する。
【0044】
ここで、自然超格子の形成による波長シフトを防止するため、発光部108は、成長面に対して結晶学的に12度以上傾斜して成長が行われることが好ましい。この傾斜方向は、どの方向に選択することも可能だが、スクライブ・ブレーキング工程で素子を分離する工程を採用する場合、スクライブ線の一方には結晶軸が傾斜せず直交する方向を選択し、スクライブ線の他方には結晶軸が傾斜する方向を選択すれば、素子側面が素子表面及び裏面に対して傾斜する面を少なくできる。従って、通常はスクライブ線の一方は傾斜しない方向が選択されるが、20度程度の素子側面の傾斜は、アセンブリ上は大きな問題にならない。従って、上記直交方向は、厳密に一致する必要はなく、直交方向より±20度程度の角度範囲は直交方向に概念的に含まれる。
【0045】
次に、エピタキシャル基板109から基板101を除去して、図4に示すように発光素子基板110を作製する(図2のSP4)。
具体的には、エピタキシャル基板109から基板101をウェットエッチング法により除去し、発光素子基板110とすることができる。
【0046】
次に、図5に示すように、発光素子基板110の第一半導体層103の基板除去面120上に、発光素子へ電位を供給するための第一オーミック電極121を形成する(図2のSP5)。
【0047】
次に、図6に示すように第一半導体層103の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程を行う(図2のSP6)。第一粗面処理工程では、第一オーミック電極121周辺の第三領域130及び、第一半導体層103の表面の一部の第二領域131については粗面化を行わないようにする。
【0048】
第一粗面処理工程は、有機酸と無機酸の混合液が用いられ、前記有機酸としてカルボン酸、特には、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか一種類以上含有し、前記無機酸は塩酸・硫酸・硝酸・弗酸のいずれか一種類以上を含有する溶液を用いて行うことができる。
このようにすれば、確実に表面を粗面化することができる。
【0049】
第三領域130は第一粗面処理工程でのオーバーエッチングを抑止し、第一オーミック電極121の電極剥離の抑制の効果がある。一方、第三領域130の幅は粗面化の効果による反射防止効果が少なくならないように、広すぎない適切な幅に設定する必要がある。反射防止効果の減少が少なく、電極剥離の抑制に効果が得られる幅として、第一粗面処理により粗面化される深さの0.5〜15倍程度の幅を有することが好適である。粗面の凹凸高さは発光波長の1/2の整数倍であることが好ましい。
【0050】
第二領域131の幅は、第一粗面処理により粗面化される深さの0.5〜15倍程度の幅を有することが好適である。
ここで、前述の基板除去選択エッチング層を第一半導体層103の上に設けた場合に、該基板除去選択エッチング層と第一半導体層103との間に第一粗面処理選択エッチング層(不図示)を設けることが好ましく、これにより基板除去後に第一粗面処理選択エッチング層を第二領域131に残留させて、第一粗面処理を行うと良い。このようにすれば、第一粗面処理工程におけるフォトレジストパターン下へのオーバーエッチングを低減することができる。
【0051】
第一粗面液は非Al含有材料から成る層に対して選択エッチング性を有するため、第一粗面処理選択エッチング層をGaAs、InGaP、InGaAs、Geで構成することが好ましい。このようにすれば、第一粗面処理選択エッチング層端部を起点としてファセットが形成され、パターン下へのオーバーエッチングを抑止することができる。ただし、第一粗面処理選択エッチング層を用いた場合、非Al含有材料は発光波長に対して光を吸収するため、第一粗面処理後、SPM等の過酸化水素水含有液で第一粗面処理選択エッチング層を選択的に除去する工程を加えることが好ましい。
【0052】
第二領域131の幅は第一粗面処理により粗面化される深さだけでなく、フォトリソグラフィーのアライメント精度によっても制約がある。アライメント精度が高いアライナーもしくはステッパーを使用すればアライメント精度を見越した付加幅は少なくてすみ、一方、アライメント精度が低いアライナーを用いる場合は、精度を見越して付加幅を多くすることが好ましい。
【0053】
以上の工程を行うことにより、第一半導体層103表面に、粗面化していない平坦な第二領域131を得ることができる。これにより、後述する素子分離工程において素子分離した発光部108の側面の凹凸発生を抑えることができる。
【0054】
次に、図7に示すように、発光部108の一部を除去する除去部170と、それ以外の非除去部180を形成する素子分離工程を行う(図2のSP7)。
【0055】
素子分離工程は、例えば、フォトリソグラフィー法により、レジストで第一半導体層103上の所定の領域(図6における第二オーミック電極形成領域140、スクライブ領域141)を開口させたパターンを形成し、このレジストをエッチングマスクとして用いてエッチングすることによって行うことができる。
上記エッチングは、塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法により、第二半導体層105、緩衝層106もしくは窓層兼支持基板107を露出させた除去部170と、除去部170以外の非除去部180を形成することができる。
【0056】
このとき、上記の第一粗面処理工程において粗面化させない第二領域131に非Al含有層(不図示)を残留させ、エッチングマスクとして使用することができる。
非Al含有層は、GaAs、InGaP、InGaAs、Geのいずれか1層以上含むものとすることができる。非Al含有層は、塩酸を含有したエッチング液ではエッチングされないため、非Al含有層端部を起点としてファセットが形成されるので、素子分離を行った発光部108の側面に明瞭なメサ形状を得ることができる。ただし、非Al含有層を用いた場合、素子分離工程後、非Al含有層を硫酸過水等の過酸化水素水含有液で選択的に非Al含有層を除去する工程を行うことが好ましい。
【0057】
また、素子分離工程は、上記のウェットエッチング法の他、ハロゲンガス、好ましくは塩化水素を含有するガスを用いる方法により、ドライエッチング法にて行うこともできる。
このようにすれば、素子分離を行った発光部の側面にくびれ(オーバーエッチング)のない形状を得ることができる。
【0058】
次に、図8に示すように、発光部108が除去された窓層兼支持基板107上の除去部170上に第二オーミック電極122を形成する(図2のSP8)。
【0059】
次に、図8に示すように、第一半導体層103表面及び発光部108の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜150で被覆する(図2のSP9)。
絶縁保護膜150は透明で絶縁性を有する材料であれば、どのような材料でも可能である。絶縁保護膜150としては、例えばSiOもしくはSiNを用いることが好適である。このようなものであれば、フォトリソグラフィー法と弗酸を含有したエッチング液によって、第一オーミック電極121及び第二オーミック電極122の上部を開口する加工を容易に行うことができる。
【0060】
次に、図1に示すように、窓層兼支持基板107の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程を行う(図2のSP10)。
【0061】
第二粗面処理を行う前に、まず、除去部170に沿ってスクライブ線をけがき、ブレーキングを行うことで発光素子を分離して、発光素子ダイスを形成することが好ましい。発光素子ダイス形成後、窓層兼支持基板107が上面になるように発光素子ダイスを保持テープに転写してから、下記の第二粗面処理を行うことが好ましい。
【0062】
第二粗面処理工程は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸の有機酸からいずれか1種類以上を含み、かつ、塩酸、硫酸、硝酸、弗酸の無機酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、沃素を含む溶液を用いて行うことができる。
【0063】
上述した第一粗面処理工程で用いた第一半導体層103に施す第一粗面液と、第二粗面処理工程で窓層兼支持基板107に施す第二粗面液とは液組成が異なる。そのため、エッチング特性が異なるため、必然的に第一半導体層103と窓層兼支持基板107が有する粗面の形状及びR(算術平均粗さ)は異なったものとなる。
【0064】
上記で説明した本発明の発光素子の製造方法であれば、第一半導体層103表面に粗面化しない第二領域131を設けることで、素子分離工程において、発光部108にオーバーエッチングが生じることが抑制されるため、素子分離した発光部108の側面の形状は第二領域131の形状に略一致する。そのため、素子分離した発光部108の側面のRを2μm未満とすることができるので、素子分離した発光部108の側面の形状における凸部に電界集中が発生することを抑止することができる。これにより、粗面化により発光効率を向上させるとともに、発光部側面の凹凸形状に依存するリーク不良及びESD不良の発生が抑えられた発光素子を製造することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
結晶軸が[001]方向より[110]方向に15°傾斜した厚さ280μmのn型GaAs基板101上にn型GaAsバッファ層(不図示)を0.5μm、n型AlInP基板除去選択エッチング層(不図示)を1μm成長させた後、MOVPE法でAlGaInPから成るn型クラッド層(第一半導体層103)、活性層104、p型クラッド層(第二半導体層105)で構成される発光部108を6.5μm形成し、更にp型InGaPからなる緩衝層106を0.3μm形成し、GaP窓層兼支持基板107の一部としてp型GaPからなる層を1μm形成した。次に、HVPE炉に移してp型GaPからなる窓層兼支持基板107を120μm成長させ、エピタキシャル基板109を得た(図3参照)。
【0067】
次に、GaAs基板101、GaAsバッファ層およびn型AlInP基板除去選択エッチング層を除去して発光素子基板110を作製した(図4参照)。
【0068】
次に、発光素子基板110の第一半導体層103の基板除去面120上へ第一オーミック電極121を形成し(図5参照)、フォトリソグラフィー法により第三領域130及び第二領域131をレジストで被覆するパターンを形成した。図9に示すように、第三領域130は第一オーミック電極に沿って、第二領域131は素子分離予定線160に沿って設けた。第三領域130の幅はエッチング深さの4倍の2μmとした。また、第二領域131の幅は6μmとした。
【0069】
次に第一半導体層103表面に第一粗面処理工程を施した(図6参照)。第一粗面液は酢酸と塩酸の混合液を作製し、常温で1分エッチングすることで粗面処理を実現した。
【0070】
次に、フォトリソグラフィー法により、第二オーミック電極形成領域140及びスクライブ領域141(図6参照)以外をレジストで被覆し、塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法で素子分離工程を実施し、発光部108を除去して窓層兼支持基板107が露出した除去部170と、それ以外の非除去部180を形成した(図7参照)。
【0071】
以上の工程を行った結果、素子分離を行った発光部の側面のRはフォトレジストパターン精度に応じた0.5μm程度を示した。
【0072】
次に、除去部170に第二オーミック電極122を形成した(図8参照)。次に、SiOからなる絶縁保護膜150を積層し、第一半導体層103表面及び発光部108の側面を絶縁保護膜150で被覆した。そして、第一オーミック電極121及び第二オーミック電極122部分をフォトリソグラフィー法と弗酸エッチングにより、絶縁保護膜150に開口部を形成した。
【0073】
次に、露出させた除去部170に沿ってスクライブ線をけがき、スクライブ線に沿ってクラック線を伸ばし、その後、ブレーキングを行うことで素子を分離し、発光素子ダイスを形成した。
【0074】
発光素子ダイス形成後、第一オーミック電極が設けられている面がテープ面側になるように保持テープに発光素子ダイスを転写し、その後、第二粗面処理工程を実施した。第二粗面処理工程で窓層兼支持基板の粗面化を行う際に用いる粗面液は、酢酸と弗酸、沃素の混合液を作製した。そして、常温で1分エッチングすることで第二粗面処理を行った。
【0075】
以上のようにして図9に示すような発光素子を製造した。
【0076】
図11には実施例1における素子分離部の端部の写真を示した。図11では、第二領域131の端部を直線で形成した状態を示していることがわかる。
【0077】
上記のようにして作製した発光素子でランプを作製し、測定及び評価を行った。
【0078】
実施例1で製造した発光素子で作製したランプの逆方向印加電流値10μA時における逆方向電圧(VR)の結果を図13に示す。なお、図13には後述する実施例2及び比較例の結果も併せて示した。
その結果、図13に示すように、実施例1及び後述する実施例2で作製したランプは、逆方向印加電流値が10μAの場合、VRは30V以上必要で、VR値30V未満を示すランプは発生しなかった。一方、後述する比較例で作製したランプの約半数のVR値が30V未満を示した。このように、本発明の発光素子は、第二領域の存在によって逆方向電圧の特性が優れたものとなることが分かった。
【0079】
次に、実施例1で製造した発光素子で作製したランプを用いて、ESD試験を行った結果を図14に示す。ESD実施条件はHBM(HumanBody Model)で行った。なお、図14には後述する実施例2及び比較例の結果も併せて示した。
その結果、図14に示すように、実施例1及び後述する実施例2で作製したランプでは、2000VまでのESD試験において、ESD破壊が発生しなかった。一方後述する比較例においては100V程度のESD電圧でESD破壊が発生し、600Vまでには試験投入した全ての素子がESD破壊された。
【0080】
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして、第一粗面処理工程まで行った。
【0081】
次に、ドライエッチング法を行うために、第一半導体層、第一オーミック電極を被覆するようにSiO膜を300nm被覆し、フォトリソグラフィー法により、素子分離予定形状のレジストパターンを形成した。次に、弗酸によりパターン開口部をエッチングした。
そして、開口パターンを有するSiO膜をエッチングマスクとして、ドライエッチング法を実施した。ドライエッチングに際しては塩素含有ガスを導入したRIE法もしくはICP法によって素子分離を実施し、発光部を除去して、窓層兼支持基板を露出させた除去部を形成した。
【0082】
以上の工程を行った結果、素子分離を行った発光部の側面のRはSiOマスクのパターン精度に応じた0.5μm程度を示した。
【0083】
その後、実施例1と同様にして、第二オーミック電極の形成から第二粗面処理工程までを行い、図10に示すような発光素子を製造した。
【0084】
上記のようにして作製した発光素子でランプを作製し、測定及び評価を行った。
【0085】
実施例2で製造した発光素子で作製したランプの逆方向印加電流値10μA時における逆方向電圧(VR)の結果を図13に示した。
その結果、図13に示すように、実施例2で作製したランプは、逆方向印加電流値が10μAの場合、VRは30V以上必要で、VR値30V未満を示すランプは発生しなかった。本発明の発光素子は、第二領域の存在によって逆方向電圧の特性が優れたものとなることが分かった。
【0086】
次に、実施例2で製造した発光素子で作製したランプを用いて、ESD試験を行った結果を図14に示した。ESD実施条件はHBM(HumanBody Model)で行った。
その結果、図14に示すように、実施例2で作製したランプでは、2000VまでのESD試験において、ESD破壊が発生しなかった。
【0087】
(比較例)
第一粗面処理工程において、第二領域を設けなかったこと以外は、実施例1同様にして発光素子の製造を行った。
その結果、比較例では第一粗面処理によって生じた凹凸(第一半導体層表面のR=0.6μm前後)が素子分離工程によって増大し、素子分離を行った発光部の側面のRは3〜4μmに達した。
図12に比較例における素子分離部端部の写真を示した。
【0088】
上記のようにして作製した発光素子でランプを作製し、測定及び評価を行った。
【0089】
比較例で製造した発光素子で作製したランプの逆方向印加電流値10μA時における逆方向電圧(VR)の結果を図13に示した。
その結果、図13に示すように、比較例で作製したランプの約半数のVR値が30V未満を示した。
【0090】
次に、比較例で製造した発光素子で作製したランプを用いて、ESD試験を行った結果を図14に示す。ESD実施条件はHBM(HumanBody Model)で行った。
その結果、図14に示すように、比較例で作製したランプでは、100V程度のESD電圧でESD破壊が発生し、600Vまでには試験投入した全ての素子がESD破壊された。
【0091】
(実験)
素子分離工程形成時のマスクパターンを変化させ、発光部の側面のRを変化させたこと以外は、実施例1の方法で製造した発光素子でランプ複数を製作した(実験1)。
素子分離工程形成時のマスクパターンを変化させ、発光部の側面のRを変化させたこと以外は、実施例2の方法で製造した発光素子でランプ複数を製作した(実験2)。
【0092】
そして、上記の実験1、2のランプの逆方向印加電流値10μA時におけるVR不良率の測定を行った結果を図15に示した。なお、逆方向印加電流10μA時のVR値が30V未満のものをVR不良として測定を行った。
【0093】
その結果、図15に示したように、実験1、2共にRが2μm未満までにおいて、VR不良はほとんど発生しないが、Rが2μm以上の場合には、実験1、2共にVR不良が増加し始めることが分かる。
【0094】
素子分離を行った発光部側面の形状は、素子分離工程における第一半導体層の外周部の形状をほぼ踏襲するため、素子分離工程時の第一半導体層の外周部の凹凸が大きい程、VR不良が発生しやすいことを図15は示している。
従って、発光部側面のRは2μm未満であることが必要である。図15ではVR不良についてのみ示したが、逆バイアスを印加した際のリーク電流値を示すIR特性に関しても同様の傾向であった。
【0095】
また、発光部側面の凹凸が発光部側面上で均一ではなく、発光素子側面の一部の凹凸量を半分にしたパターンを準備し、測定を行ったが、VR不良発生の傾向は、同一の凹凸量で構成されたパターンの場合と同様であった。従って、発光部側面の凹凸とVR不良率発生の関係は、発光部側面のRが2μm以上であればVR不良率が増加することを示していることが分かる。従って、リーク不良あるいはESD不良を抑止するためには、発光部側面のRが2μm未満であることが必要である。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15