(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理モジュールの列と基板搬送機構の列との配置関係は、処理モジュール、基板搬送機構、処理モジュールの並びが千鳥状になるように設定されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置を適用した真空処理装置の実施の形態の一例について
図1〜
図18を参照して説明する。この装置は、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)Wに対して真空雰囲気において処理を行うために、
図1中X方向(前後方向)に伸びるように配置された処理ステーション1を備えている。当該処理ステーション1の一端側には、大気搬送モジュール11を介して、搬入出ポート2が接続されている。この搬入出ポート2は、処理ステーション1に対してウエハWの搬入及び搬出を夫々行うためのものである。当該搬入出ポート2には、ロードポートをなす載置台21が、
図1中Y方向(左右方向)に複数箇所例えば4箇所に並ぶように夫々設けられている。各々の載置台21には、例えば25枚のウエハWが収納された搬送容器であるFOUP20が載置される。図中22はウエハWの搬入出口である。
【0014】
大気搬送モジュール11には、後述する処理モジュールとFOUP20との間においてウエハWの受け渡しを行うために、大気搬送アーム12が搬送機構として設けられている。大気搬送アーム12は、例えば鉛直軸周りに回転自在、昇降自在及び載置台21の並びに沿って移動自在に構成されている。この例では、大気搬送アーム12は、後述のウエハ搬送機構と同様に、多関節アームとして構成されている。
図1中10は装置本体を構成する外装体、13はウエハWの搬送用の開口部である。
【0015】
処理ステーション1には、第1のロードロック室LL1及び第2のロードロック室LL2が設けられている。第1のロードロック室LL1は、常圧雰囲気からウエハWが搬入される搬入用の予備真空室をなすものである。また、第2のロードロック室LL2は、後述する処理モジュールにて処理されたウエハWを常圧雰囲気に搬出するための搬出用の予備真空室をなすものである。これら第1及び第2のロードロック室LL1,LL2は、大気搬送アーム12がアクセスできるように、大気搬送モジュール11に隣接して設けられている。
【0016】
また、処理ステーション1は、ウエハWに対して処理を行う複数個の処理モジュールPM(PM1〜PM13)と、複数個の搬送モジュールTM(TM1〜TM7)と、退避用モジュールSM1と、を備えている。前記搬送モジュールTMには基板搬送機構をなすウエハ搬送機構3が設けられている。
【0017】
前記処理モジュールPMは、第1のロードロック室LL1の並びに沿って、前後方向(X方向)に互いに間隔をおいて一例に配列されると共に、第2のロードロック室LL2の並びに沿って、前後方向に互いに間隔をおいて一例に配列されている。前記第1のロードロック室LL1側の処理モジュールPMの並びを第1の列と呼び、前記第2のロードロック室LL2側の処理モジュールPMの並びを第2の列と呼ぶことにする。
【0018】
搬送モジュールTMは、処理モジュールPMの第1の列と第2の列との間に設けられており、第1の列と第2の列の処理モジュールPMに対してウエハWの受け渡しをするように、前後方向に一列に配列されている。また、1つの搬送モジュールTMのウエハ搬送機構3は、第1の列に沿って並ぶ2つの処理モジュールPMと、第2の列に沿って並ぶ2つの処理モジュールPMに対してウエハWの受け渡しを行うと共に、隣接する搬送モジュールTMのウエハ搬送機構3との間でウエハWの受け渡しを行うように構成されている。
【0019】
この例では、搬送モジュールTMの列を介して、処理モジュールPMの第1の列と第2の列とが夫々対称になるように配列されている。例えば搬入出ポート2から見て左右方向の中央に、7個の搬送モジュールTM1〜TM7が設けられており、搬入出ポート2から見て搬送モジュールTM1〜TM7の列の左側に、第1のロードロック室LL1に並ぶ7個の処理モジュールPM1〜PM7が配列されている。また、搬入出ポート2から見て搬送モジュールTM1〜TM7の右側に、第2のロードロック室LL2に並ぶ7個の処理モジュールPM8〜PM13と、1個の退避用モジュールSM1と、が配列されている。
【0020】
各々の搬送モジュールTMは、第1の列及び第2の列において、互いに隣接するロードロック室LL1(LL2)と処理モジュールPM1(PM13)との間あるいは、互いに隣接する処理モジュールPM同士の間に夫々位置するように設けられている。以降では、処理ステーション1の搬入出ポート2側を一端側とし、この一端側を前後方向(X方向)の手前側、他端側を奥側として説明を進める。
【0021】
前記ロードロック室LL、処理モジュールPM、搬送モジュールTM及び退避用モジュールSMは、夫々真空雰囲気に設定可能な真空容器(処理容器)として構成されている。前記搬送モジュールTMの真空容器30は、
図1及び
図2に示すように、平面視概略六角形状に構成され、第1の列側に六角形の一の頂点が突出すると共に、第2の列側に六角形の他の頂点が突出するように配列されている。つまり、搬送モジュールTMの真空容器30は、搬入出ポート2側から見て第1の列側(左側)に向けてV字状に突出して屈曲する側壁31を備えると共に、搬入出ポート2側から見て第2の列側(右側)に向けてV字状に突出して屈曲する側壁32を備えている。
【0022】
隣接する搬送モジュールTM同士の間は、
図3及び
図4に示すように側壁部30aにより区画されている。この側壁部30aにはウエハWを搬送するための開口部30bが形成されており、当該開口部30bはゲートバルブGにより開閉自在に構成されている。後述するように処理ステーション1には酸化処理用の処理モジュールが設けられるので、前記ゲートバルブGは、酸素の拡散を防ぐように搬送雰囲気を区画するために設けられている。但しこのゲートバルブGは必ずしも必要はなく、搬送モジュール同士の間が開口部として形成されていてもよい。
図1及び
図2では図示の便宜上側壁部30a及びゲートバルブGの図示を省略し、
図2では隣接する搬送モジュール同士の間を点線により区画して示している。
【0023】
また、前記第1の列のロードロック室LL1及び処理モジュールPM1〜PM7の真空容器5は、
図1及び
図2に示すように、搬入出ポート2側から見て例えば右側に向けてV字状に突出して屈曲する側壁41を備えている。そして、第1の列の互いに隣接するロードロック室LL1及び処理モジュールPM1〜PM7の側壁41同士の間に、搬送モジュールTMの側壁31が夫々入り込むように配列されている。
さらに、前記第2の列では、
図1及び
図2に示すように、ロードロック室LL2、処理モジュールPM8〜PM13及び退避用モジュールSM1の真空容器5は、搬入出ポート2側から見て例えば左側に向けてV字状に突出して屈曲する側壁42を備えている。そして、第2の列の互いに隣接するロードロック室LL2、処理モジュールPM8〜PM13及び退避用モジュールSM1の側壁42同士の間に、搬送モジュールTMの側壁32が夫々入り込むように配列されている。
【0024】
前記処理モジュールPM(PM1〜PM13)の詳細については後述するが、これら処理モジュールPM内には、ウエハWを載置する載置部45が設けられている。また、搬送モジュールTM(TM1〜TM7)のウエハ搬送機構3は、
図2〜
図4に示すように、多関節アームとして構成されている。この多関節アームは、例えば基台34に積層された例えば2本のアーム35,35と、これらアーム35,35のうち上方側のアーム35の先端部に取り付けられたピック36と、を備えて構成されている。各々のウエハ搬送機構3は、例えば搬送モジュールTMの下方側に設けられた駆動部37により、前記基台34を介して鉛直軸周りに回転自在及びピック36が進退自在に構成されている。
図3及び
図4中38はベローズである。
【0025】
このウエハ搬送機構3は、当該ウエハ搬送機構3が設けられた搬送モジュールTMを囲む4つの処理モジュールPMの載置部45及び、隣接する搬送モジュールTMとの間に設けられた受け渡しステージ300に対してアクセスできるように、設置位置や伸長ストロークが設定されている。例えば搬送モジュールTM1を例にすると、当該モジュールのウエハ搬送機構3は、ロードロック室LL1,LL2と処理モジュールPM1,PM13と、搬送モジュールTM2との間の受け渡しステージ300に対してアクセスできるように構成されている。
【0026】
前記受け渡しステージ300は、
図2〜
図4に示すように、隣接する搬送モジュールTM同士の間に、側壁部30aと干渉しないように設けられている。
図3及び
図4は、搬送モジュールTM2と搬送モジュールTM3との間におけるウエハWの受け渡しを例にして、搬送モジュールTM2〜TM4を模式的に示すものである。この受け渡しステージ300は、例えば昇降機構302により昇降自在に構成された支持ピン301を備えている。この支持ピン301は、当該支持ピン301の両隣にある2つのウエハ搬送機構3が互いに干渉せずに、この支持ピン301に対してウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されている。図中303はベローズである。
【0027】
前記搬送モジュールTM1〜TM7は各々その底部に形成された排気口39aにより、排気路39bを介して真空ポンプ等の真空排気機構39に接続されている。
図3及び
図4中39cは圧力調整部である。この例では、搬送モジュールTMが個別に真空排気されるように構成したが、搬送モジュールTM同士の間にゲートバルブGが設けられていない場合には、いずれかの搬送モジュールTMに共通の真空排気機構39を接続し、この真空排気機構39により全ての搬送モジュールTMの真空排気を行うようにしてもよい。以上のように構成することにより、搬送モジュールTM1〜TM7を接続した全体の搬送領域を搬送室と呼ぶことにすると、ウエハ搬送機構3は真空雰囲気にされる搬送室内に配置される。また、このウエハ搬送機構3は各々水平回転、進退自在に構成され、互いに隣接するもの同士で当該搬送室内にて、ウエハWの受け渡しが可能となるように構成されていることになる。
【0028】
前記ロードロック室LL、処理モジュールPM、搬送モジュールTM及び退避用モジュールSMの真空容器の各々には、ウエハ搬送機構3の移動領域に対応してウエハWの搬送口47が夫々形成されている。前記搬送口47は、各々ウエハWを保持したピック36が進退できるように設定されている。これらの搬送口47には、開口部を気密に塞ぐようにゲートバルブGVが設けられており、この例では、互いに隣接する真空容器同士の間でゲートバルブGVが共通化されている。
【0029】
こうして、処理ステーション1では、前記処理モジュールPMの列とウエハ搬送機構3の列との配置関係は、処理モジュールPM、ウエハ搬送機構3、処理モジュールPMの並びが千鳥状になるように構成される。また、前記処理モジュールPMは、ウエハ搬送機構3の列側の側壁が互いに隣接するウエハ搬送機構3の間に向かって突出し、斜め前方側及び斜め後方側のいずれのウエハ搬送機構3からもウエハWの受け渡しが可能なように構成されることになる。
【0030】
具体的には、搬送モジュールTM1のウエハ搬送機構3は、ロードロック室LL1,LL2及び処理モジュールPM1,PM13にアクセスし、搬送モジュールTM2のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM1,PM2,PM12,PM13にアクセスする。また、搬送モジュールTM3のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM2,PM3,PM11,PM12にアクセスし、搬送モジュールTM4のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM3,PM4,PM10,PM11にアクセスする。さらに、搬送モジュールTM5のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM4,PM5,PM9,PM10にアクセスし、搬送モジュールTM6のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM5,PM6,PM8,PM9にアクセスする。そして、搬送モジュールTM7のウエハ搬送機構3は、処理モジュールPM6,PM7,PM8及び退避用モジュールSM1にアクセスする。
【0031】
続いて、前記真空処理装置において
図5に示す構造の積層膜200を形成する場合を例にして、各処理モジュールPMの構成について具体的に説明する。この積層膜200は、記憶素子例えばMRAMに用いられるMTJ膜の構成例である。このMTJ膜は金属膜と金属酸化膜とを合わせて9層積層した積層膜よりなる。この例では、下側から順に、タンタル(Ta)膜、PtMn膜、CoFe膜、ルテニウム(Ru)膜、CoFeB膜、MgO(酸化マグネシウム)膜、CoFeB膜、Ru膜、Ta膜を積層してMTJ膜が構成されている。前記PtMn膜はプラチナ(Pt)とマンガン(Mn)とを含む膜、CoFe膜はコバルト(Co)と鉄(Fe)とを含む膜であり、CoFeB膜はCoとFeとB(ホウ素)とを含む膜である。
【0032】
例えば、
図2に示す真空処理装置にてこのMTJ膜200を製造する場合には、複数の処理モジュールを順次用い、ウエハWに対して真空雰囲気で一連の複数の処理が行われる。この一連の複数の処理の詳細については後述するが、この複数の処理には、金属膜の成膜処理、金属膜の酸化処理、金属酸化膜或いは金属膜の加熱処理、金属酸化膜或いは金属膜の冷却処理が含まれる。従って、処理モジュールとしては、前記成膜処理を行う成膜モジュール、前記酸化処理を行う酸化モジュール、前記加熱処理を行う加熱モジュール、前記冷却処理を行う冷却モジュールが夫々処理モジュールとして配置される。
そして、この真空処理装置では、前記一連の処理の各処理が少なくとも2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように、処理モジュールが配置されている。従って、真空処理装置は、同じ処理を少なくとも2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように、同じ金属膜の成膜処理を行う成膜モジュールと、酸化モジュールと、加熱モジュールと、冷却モジュールとを少なくとも2個ずつ備えている。酸化モジュール、加熱モジュール及び冷却モジュールについては、1つのモジュールはウエハWの処理に用いるものであり、残りのモジュールは予備の処理モジュールである。
【0033】
この例の成膜モジュールはスパッタ法により金属膜を成膜するスパッタモジュールにより構成され、同じ成膜処理は、同じ種類の金属のターゲットを用いて行われる。前記成膜モジュール(スパッタモジュール)は後述するように2個のターゲットを備えており、1台の成膜モジュールにて2種類の金属膜の成膜処理を行うことができる。このため、前記一連の処理の中に互いに同じ処理(例えばTa膜の成膜処理)が含まれ、これら同じ処理が互いに異なる成膜モジュールにて行われるときには、当該同じ処理に対しては2つの成膜モジュールが用意されていることになる。また、前記一連の処理の中に互いに同じ処理が含まれないときには、予備の成膜モジュールが設けられる。こうして、積層膜200を構成する金属膜の種別に対応する金属のターゲットが、実際の処理に用いられる処理モジュールと予備の処理モジュールとを合わせて、互いに異なる少なくとも2個の成膜モジュールに組み込まれるように、成膜モジュールが構成されている。
【0034】
具体的には、
図6に示すように、処理モジュールPM1は後述するプリクリーニング処理を行うクリーニングモジュール、処理モジュールPM2〜PM4,PM9,PM12,PM13は金属膜を成膜する成膜モジュールとして夫々構成されている。また、処理モジュールPM5、PM8は酸化モジュールとして、処理モジュールPM7,PM10は加熱モジュールとして、処理モジュールPM6,PM11は冷却モジュールとして夫々構成されている。尚この
図6では、図示の便宜上、搬送口47、開口部30b、側壁部30a及びゲートバルブG,GVについて省略している。
【0035】
この例では、前記処理モジュールPM2はPtMn膜とTa膜、処理モジュールPM3はCoFe膜とRu膜、処理モジュールPM4はCoFeB膜とMg膜の成膜モジュールとして夫々構成されている。また、処理モジュールPM9はCoFe膜とMg膜、処理モジュールPM12はCoFeB膜とRu膜、処理モジュールPM13はTa膜とPtMn膜の成膜モジュールとして夫々構成されている。
【0036】
従って、
図6に示すように、Ta膜及びPtMn膜の成膜用に2つの成膜モジュール(PM2,PM13)、CoFe膜の成膜用に2つの成膜モジュール(PM3,PM9)が設けられている。また、Ru膜の成膜用に2つの成膜モジュール(PM3,PM12)、CoFeB膜の成膜用に2つの成膜モジュール(PM4,PM12)、Mg膜の成膜用に2つの成膜モジュール(PM4,PM9)が夫々設けられている。そして、2つの酸化モジュール(PM5,PM8)と、2つの加熱モジュール(PM7,PM10)と2つの冷却モジュール(PM6,PM11)が夫々設けられている。
図6中「1」、「2」の符号は、同じ処理を行う処理モジュールPMが2個あることを説明するために便宜上付したものであり、例えばTa1、Ta2は、夫々同じTa膜の成膜処理を行うものである。
【0037】
続いて、各処理モジュールPMについて具体的に説明する。前記クリーニングモジュールは、表面クリーニング処理と、高温水素還元処理と、水素ラジカル処理と、のいずれかの処理が行われるように構成されている。表面クリーニング処理とは、ArガスのスパッタエッチングによってウエハWの表面をクリーニングするものであり、前記高温水素還元処理は、ウエハWを加熱すると共に水素(H
2)ガスを供給することによりウエハW表面の酸化物を還元する処理である。また、水素ラジカル処理は、ウエハW表面に水素のラジカルを供給することによってウエハW表面の酸化物を還元する処理である。
【0038】
前記成膜モジュールの構成について処理モジュールPM2を例にして、
図7〜
図16を参照して説明する。
図7中5は処理モジュールを構成する真空容器(処理容器)であり、この真空容器5は導電性部材例えばステンレスにより構成されている。この真空容器5の上部には、2つのターゲット電極51a及び51bが設けられており、これらターゲット電極51a及び51bの下部には夫々ターゲット52a及び52bが接合されている。ターゲット52a及び52bの形状は例えば正方形や長方形等の矩形である。これらターゲット52a及び52bは、ウエハWに対する被成膜部材として、互いに異なる種類の金属により構成されている。ターゲット52aはTa、ターゲット52bはPtMnよりなる。
【0039】
ターゲット電極51a及び51bは、例えばターゲット52a及び52bより大きく形成され、夫々保持体53a及び53bを介して絶縁体54a及び54bに接合されている。これら絶縁体54a及び54bは真空容器5の天井部に圧着されており、こうしてターゲット電極51a及び51bは真空容器5と電気的に絶縁されている。また、ターゲット電極51a及び51bは、夫々スイッチ部50a及び50bを介してDC電源部55a及び55bと接続され、負の直流電圧が印加されるように構成されている。
【0040】
ターゲット52a及び52bの直下には、ターゲットシャッター56が設けられている。
図8に示すように、ターゲットシャッター56は例えば円形に構成され、例えばターゲット52a及び52bと略同じ大きさかつ同じ形の開口部56aを備えている。この
図8は、ターゲット52a及び52bから下方側を見たときの平面図であり、この図では開口部56aをターゲット52a及び52bより若干大きく描いている。ターゲットシャッター56の上部中心部には回転軸57aが設けられており、この回転軸57aは真空容器5の外部に設けられた回転機構57により回転自在に構成されている。この例では、前記回転機構57は磁力により回転軸57aを回転するように構成されている。こうしてターゲットシャッター56を回転させたとき、一の位置でターゲット52aと開口部56aとが対応し、他の位置でターゲット52bと開口部56aとが対応するように、ターゲット52a,52b及びターゲットシャッター56が夫々構成されている。
【0041】
ターゲット52a及び52bの上部には、夫々ターゲット電極51a及び51bと近接するようにマグネット配列体61a及び61bが設けられている。マグネット配列体61a及び61bは、例えば
図9に示すように、透磁性の高い素材例えば鉄(Fe)のベース体62にマグネット64,65を配列することにより構成されている。
図9は、ターゲット52a及び52b側からマグネット配列体61a及び61bを見たときの平面図である。
【0042】
マグネット配列体61a及び61bは、その中心が例えばターゲット52a及び52bの中心からある程度偏心した位置に配置される。また、ターゲット52a及び52bの中心近傍を回転中心として夫々回転機構63a,63bにより回転するように構成されている。こうして、マグネット配列体61a及び61bはターゲット52a及び52bの中心から夫々偏心した状態で回転することになる。これにより、エロージョン(ターゲットの消費による摩耗)の不均一な進行が抑制され、ターゲット52a及び52bの使用効率の低下が抑えられる。
【0043】
また、真空容器5には、前記ターゲット52a及び52bよりなるターゲット群と対向するように、ウエハWを水平に載置する載置部45が設けられている。この載置部45は、駆動機構48により駆動軸48aを介して昇降自在、かつ回転自在に構成されている。
図7中48bは磁性流体を利用したシール機構である。前記載置部45内には図示しない加熱機構が組み込まれており、必要時にウエハWを加熱できるように構成されている。さらに、この載置部45には、搬入出時にウエハ搬送機構3との間でウエハWの受け渡しを行うために、受け渡しピン49が設けられている。
図7中49aは受け渡しピン49の昇降機構、49bはベローズである。なお、
図10〜
図14では受け渡しピン49を省略している。
【0044】
さらにまた、真空容器5は底部に形成された排気口58aにより、排気路58b及び圧力調整部58cを介して真空ポンプ等の真空排気機構58に接続されている。また、真空容器5の側面部には、既述のように、ゲートバルブGVにより開閉自在に構成されたウエハWの搬送口47が形成されている。また、真空容器5の上部にはガス供給部59aが設けられ、バルブやフローメータ等を備えた流量調整部59bを介して、プラズマ発生用のガスである不活性ガス例えばArガスの供給源59に接続されている。
【0045】
この成膜モジュール(処理モジュールPM2)では、先ずTa膜の成膜処理が行われる。このTa膜の成膜では、
図10に示すように、ウエハWを載置部45に載置し、ターゲットシャッター56の開口部56aをターゲット52aの下方側に位置させる。これにより、ターゲット52bはウエハWから見たときに、ターゲットシャッター56で覆われた状態になる。そして、真空容器5内にArガスを導入し、スイッチ部50aを介してDC電源部55aからターゲット電極51aに負の直流電圧を印加すると共に、マグネット配列体61aを回転させる。これにより、電界によってArガスが電離して電子が生成する。また、前記マグネット配列体61aによりターゲット52aの下方側では水平磁場が形成されるが、この水平磁場と電界とによって電子がドリフトして高密度プラズマが形成される。こうして、プラズマ中のArイオンがターゲット52aをスパッタしてターゲット52aからTaの金属粒子を叩き出し、当該放出された金属粒子によってウエハWにTa膜を成膜する。
【0046】
次いで、PtMn膜の成膜処理が行われる。このPtMn膜の成膜では、
図11に示すように、ターゲットシャッター56を、開口部56aがターゲット52bの下方側に位置するように配置する。これにより、ターゲット52aはウエハWから見たときに、ターゲットシャッター56で覆われた状態になる。そして、スイッチ部50aをOFFにし、スイッチ部50bをONにしてDC電源部55bからターゲット電極51bに負の直流電圧を印加する。また、真空容器5内にArガスを導入して、マグネット配列体61bを回転させる。こうして高密度プラズマを形成し、プラズマ中のArイオンによりターゲット52bをスパッタしてPtMnの金属粒子を叩き出し、当該放出された金属粒子によってウエハW上のTa膜の上にPtMn膜を成膜する。
【0047】
処理モジュール(成膜モジュール)PM3,PM4、PM9,PM12,PM13は、ターゲット52a及び52bの種類が異なる以外は、いずれも処理モジュールPM2と同様に構成されている。例えばターゲット52a及び52bは、処理モジュールPM3では夫々CoFe及びRu、処理モジュールPM4では夫々CoFeB及びMg、処理モジュールPM9では夫々CoFe及びMgにより構成されている。また、処理モジュールPM12では夫々CoFeB及びRu、処理モジュールPM13では夫々Ta及びPtMnにより構成されている。こうして、各処理モジュールPMでは、マグネトロンスパッタ法により夫々互いに異なる2層の金属膜の成膜が行われる。
【0048】
前記酸化モジュールは、例えば
図12に示すように構成されている。
図12において、
図7に示す成膜モジュールと同様の構成部分については同符号を付しており、説明を省略する。この酸化モジュールでは、真空容器5の内部に、載置部45と対向するようにガス供給室61が設けられており、このガス供給室61の下面には多数のガス供給孔61aが形成されている。真空容器5にはリモートプラズマ発生部62が設けられており、このリモートプラズマ発生部62には、酸化用ガス例えば酸素(O
2)ガスの供給源63から、流量調整部63bを備えた供給路63aを介してO
2ガスが供給されるようになっている。これによりO
2ガスはリモートプラズマ発生部62にて発生したプラズマによってラジカル化され、ガス供給室61に供給される。またガス供給室61には、流量調整部64bを備えた供給路64aを介して不活性ガス例えばArガスの供給源64が接続されている。このArガスは希釈用のガスとして使用されるものである。こうして、100%O
2ガスのラジカル、またはArガスにより所定濃度に希釈されたO
2のラジカルが載置部45上のウエハWに照射され、このO
2ラジカルによりウエハWに成膜された金属膜(Mg膜)が酸化されて金属酸化膜(MgO膜)が形成される。
【0049】
加熱モジュールは、例えば
図13に示すように構成されている。
図13において、
図7に示す成膜モジュールと同様の構成部分については同符号を付しており、説明を省略する。この加熱モジュールでは、真空容器5の内部に、載置部45と対向するように、多数のガス供給孔66aが形成されたガス供給室66が設けられている。このガス供給室66には、流量調整部67bを備えた供給路67aを介して不活性ガス例えばArガスの供給源67が接続されている。載置部45には加熱手段であるヒータ60が内蔵されており、このヒータ60により、載置部45の表面は所定温度に加熱されるようになっている。なお、この例の載置部45は、例えば昇降機構48cにより昇降自在に構成され、シール機構としてベローズ48dが設けられている。この加熱モジュールでは、真空容器5内にArガスなどを供給すると共に当該真空容器5内を真空排気して、ウエハWを例えば250℃〜350℃に加熱する。これにより、ウエハW表面に形成された金属酸化膜(MgO膜)に対して熱アニール処理が行われる。このように熱アニール処理を行うのは、金属酸化膜の結晶性制御(改善)のためである。
【0050】
冷却モジュールは、例えば
図14に示すように構成されている。
図14において、
図7の成膜モジュール及び
図13の加熱モジュールと同様の構成部分については同符号を付しており、説明を省略する。この冷却モジュールでは、載置部45の内部に冷却ジャケット68が形成されている。この冷却ジャケット68には、冷媒の供給源69から供給路69aを介して、温度調整された冷媒が循環供給されるように構成され、載置部45が所定温度に調整されるようになっている。この冷却モジュールでは、真空容器5内にArガスなどを供給すると共に当該真空容器5内を真空排気して、ウエハWを例えば80℃以下に冷却する。これにより前工程の熱アニール処理にて加熱されたウエハWが次工程の金属膜の成膜に適した温度に冷却される。
【0051】
退避用モジュールSM1は、処理モジュールの列に含まれる一の処理モジュールが使用できなくなったときに処理モジュール内に置かれているウエハWを一時的に退避させるためのモジュールであり、前記搬送室(搬送モジュールTM7)に接続されている。この退避用モジュールSM1は、例えば
図15及び
図16に示すように、ウエハWの周縁部の例えば3箇所を保持する保持部71a〜71cが多段に配列された棚部7を備えている。前記保持部71a〜71cは棚部7を構成する例えば3本の支柱72a〜72cに夫々設けられており、保持部71a〜71cの形状や取り付け位置は、ウエハ搬送機構3のピック36との間でウエハWの受け渡しを行うときに互いに干渉しないように設定されている。 また、ウエハ搬送機構3との間でウエハWの受け渡しを行うために、前記棚部7は昇降機構73により昇降自在に構成されている。さらに、退避用モジュールSM1の真空容器5は、その底部に形成された排気口75aにより、排気路75bを介して真空ポンプ等の真空排気機構75に接続されている。
図16中、75cは圧力調整部、74はベローズである。この例では、退避用モジュールSM1の真空容器5内の圧力は搬送モジュールTMの真空容器30よりも真空度が高くなる(圧力が低くなる)ように設定されており、例えば退避用モジュールSM1の真空容器5内は6.67E−7Pa以下の圧力に調整される。
【0052】
この真空処理装置は、
図2に示すように、例えばコンピュータからなる制御部100を備えており、この制御部100は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えている。プログラムは、真空処理装置の一連の動作を制御するためのものであり、ウエハWの搬送シーケンスを規定する搬送プログラム及び各処理モジュールPM内におけるウエハWの処理に係わるプロセスプログラムを含んでいる。
【0053】
また、制御部100は、処理モジュールPMの列に含まれる一の処理モジュールが使用できなくなったときには、当該一の処理モジュールにて行われる処理と同じ処理を行える他の処理モジュールを使用してウエハWの処理を続行するように制御信号を出力するように構成されている。例えば、
図17に示すように、処理モジュールの列に含まれる一の処理モジュールが使用できなくなったときには、当該使用できなくなった処理モジュールからアラーム信号が出力される(ステップS1)。制御部100では、前記アラーム信号を受けると、ロードロック室LL1から処理モジュールPM1への新たなウエハWの搬入を停止する(ステップS2)。そして、前記一の処理モジュールにて行われる処理と同じ処理を行える他の処理モジュールを選択し、当該他の処理モジュールに運転指令を出力する(ステップS3)。また、前記一の処理モジュールの代わりに、前記他の処理モジュールにウエハWを搬送するように、搬送指令を出力し(ステップS4)、こうして、前記他の処理モジュールを用いてウエハWに対して前記一連の処理を続行する(ステップS5)。
【0054】
また、制御部100は、処理モジュール内にて処理されたウエハWが当該処理モジュール内に置かれたままになると処理の状態が悪化する当該ウエハWについては優先的に当該処理モジュールから搬出するように制御信号を出力する。この優先的とは、前記処理の状態が悪化するウエハWについては、処理モジュール内にて処理されたウエハWが当該処理モジュール内に置かれたままであっても処理の状態が悪化しないウエハW群のためだけの搬送に対して、優先的に当該処理モジュールから搬出するということである。この優先的な搬送の具体例については後述する。
【0055】
次に、真空処理装置の正常時の動作について、
図18及び
図19を参照しながら説明する。ここで述べる一連の動作は前記プログラムにより実行され、ウエハWは
図18に示す搬送パターンに従って搬送される。搬入出ポート2に載置されたFOUP20内のウエハWは、大気搬送アーム12により受け取られて、常圧雰囲気の第1のロードロック室LL1内に搬送される。次いで、第1のロードロック室LL1内を真空雰囲気に設定した後、搬送モジュールTM1のウエハ搬送機構3によりウエハWを受け取り、当該ウエハWを処理モジュールPM1に搬送する。この処理モジュールPM1では既述のプリクリーニング処理が行われる(プロセスA)。
【0056】
次いで、処理モジュールPM1内のウエハWは、搬送モジュールTM2内のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM2に搬送されて、ウエハWの表面へのTa膜の成膜処理(プロセスB)とPtMn膜の成膜処理(プロセスC)とが行われる。続いて、ウエハWは搬送モジュールTM3のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM3に搬送され、ここでCoFe膜の成膜処理(プロセスD)とRu膜の成膜処理(プロセスE)が行われる。この後、ウエハWは搬送モジュールTM4のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM4に搬送され、CoFeB膜の成膜処理(プロセスF)とMg膜の成膜処理(プロセスG)が行われる。
【0057】
次に、ウエハWは搬送モジュールTM5のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM5に搬送され、Mg膜の酸化処理(プロセスH)が行われてMgO膜が形成される。次いで、ウエハWは搬送モジュールTM6のウエハ搬送機構3により受け取られて、受け渡しステージ300を介して搬送モジュールTM5のウエハ搬送機構3に受け渡される。そして、当該ウエハ搬送機構3により処理モジュールPM10に搬送され、MgO膜の加熱処理(プロセスI)が行われる。続いて、ウエハWは搬送モジュールTM4のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM11に搬送されて、MgO膜の冷却処理(プロセスJ)が行われ、この後ウエハWは、搬送モジュールTM3のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM12に搬送されて、CoFeB膜の成膜処理(プロセスK)とRu膜の成膜処理(プロセスL)が行われる。そして、ウエハWは搬送モジュールTM2のウエハ搬送機構3により処理モジュールPM13に搬送されて、Ta膜の成膜処理(プロセスM)が行われて、前記積層膜200が製造される。
【0058】
処理モジュールPM13のウエハWは、搬送モジュールTM1のウエハ搬送機構3により、真空雰囲気に設定された第2のロードロック室LL2内に搬送される。そして、ロードロック室LL2内の雰囲気が常圧雰囲気に設定されたら、下流側のゲートバルブGVを開き、ウエハWは大気搬送アーム12により例えば元のFOUP20に戻される。ここで、ロードロック室を「LL」、処理モジュールを「PM」とすると、処理ステーション1内にて、ウエハWは、LL1→PM1→PM2→PM3→PM4→PM5→PM10→PM11→PM12→PM13→LL2の経路で搬送される。
【0059】
このとき、ロットの先頭のウエハW1から順番に処理ステーション1内に搬入される。例えば大気搬送アーム12は、ロットの先頭のウエハW1をFOUP20から取り出してロードロック室LL1に受け渡すと、FOUP20内のロットの2番目のウエハW2を受け取りに行く。そして、前記ウエハW1がロードロック室LL1から処理モジュールPM1に搬送されると、このウエハW2をロードロック室LL1に搬送する。こうして、ロッドの先頭のウエハW1が、上流側の処理モジュールPM1から一つ下流側の処理モジュールPM2に搬送されると、2番目のウエハWが前記上流側の処理モジュールPM1に搬送される。このように、ロットの先頭のウエハWから順番に、先のウエハWが上流側の処理モジュールPMから下流側の処理モジュールPMに受け渡されて当該上流側の処理モジュールPMが空くと、次のウエハWが当該上流側の処理モジュールPMに搬送される。
【0060】
この例では、1台のウエハ搬送機構3にて第1の列の2つの処理モジュールPMと、第2の列の2つの処理モジュールPMにウエハWの受け渡しを行っているので、ウエハWが第1の列と第2の列の両方にある場合には、例えば第2の列の搬送を行ってから、第1の列の搬送が行われる。このとき、第1の列及び第2の列では、例えば夫々ウエハWが一括して(同時に)上流側から下流側に向かって搬送される。例えば第2の列の処理モジュールPM10〜PM13において各真空処理が終了すると、真空容器5内へのガスの供給及びプラズマ化等を停止する。次いで、受け渡しピン49を上昇させて、ウエハWが受け渡しピン49により載置部45から浮いた状態にする。続いて、各処理モジュールPM10〜PM13の上流側及び下流側のゲートバルブGVを開く。そして、搬送モジュールTM1〜TM4のウエハ搬送機構3により上流側の処理モジュールPM10〜PM13のウエハWを受け取った後、ウエハ搬送機構3を同時に一括して後退(縮退)させて、ウエハWを搬送モジュールTM1〜TM4に搬送する。続いて、当該ウエハ搬送機構3を夫々の下流側に伸長させて、当該下流側の処理モジュールPM11〜PM13及びロードロック室LL2内にウエハWを受け渡す。
【0061】
しかる後、各処理モジュールPM10〜PM13と搬送モジュールTM1〜TM4との間、搬送モジュールTM1とロードロック室LL2との間のゲートバルブGVを気密に閉じる。一方、ロードロック室LL2の下流側のゲートバルブGVを開放する。こうして、第2の列の処理モジュールPM10〜PM13及びロードロック室LL2に対するウエハWの搬入が同時に行われる。次いで、同様に第1の列の処理モジュールPM1〜PM5、ロードロック室LL1から、搬送モジュールTM1〜TM6へのウエハWの搬送及び大気搬送アーム12からロードロック室LL1へのウエハWの搬送が同時に行われる。続いて、搬送モジュールTM1〜TM5から処理モジュールPM1〜PM5へのウエハWの搬送と、搬送モジュールTM6とTM5との間の受け渡しステージ300へのウエハWの搬送とが同時に行われる。こうして、第1の列のロードロック室LL1、処理モジュールPM1〜PM5及び受け渡しステージ300に対するウエハWの搬送が行われる。この後、再び第2の列のウエハWの搬送が行われるが、このときにウエハ搬送機構3が処理モジュールPM11〜PM13、ロードロック室LL2にウエハWを搬送するタイミングで、受け渡しステージ300から処理モジュールPM10へのウエハWの搬送が行われる。こうして、ウエハWは順番に上流側の処理モジュールPMから下流側の処理モジュールPMに受け渡されていき、上述の積層膜200が形成される。
【0062】
続いて、処理モジュールPMの一つが使用できなくなったときのウエハWの搬送について説明する。処理モジュールの列に含まれる一の処理モジュールが使用できなくなったときには、既述のように、当該一の処理モジュールにて行われる処理と同じ処理を行える他の処理モジュールを使用して基板の処理を続行するようにウエハWの搬送が制御される。
【0063】
このとき、前記一連の処理の中に互いに同じ処理が含まれ、これら同じ処理が互いに異なる処理モジュールにて行われる場合には、当該互いに異なる処理モジュールが前記一の処理モジュール及び他の処理モジュールに夫々相当する。この例における一連の処理とは、
図19に示すプロセスの内、プロセスA以外のプロセスB〜プロセスMの処理をいう。 プロセスAのプリクリーニング処理を除いているのは、この処理は処理ステーション1にて行われる最初の処理であるからである。つまり、仮に当該処理を行う処理モジュールPM1が使用できなくなっても、この処理モジュールPM1の下流側の処理モジュールに置かれているウエハWについては継続して処理を行うことができ、ロードロック室LL2を介して回収することができるためである。
【0064】
また、前記一連の処理の中の互いに同じ処理とは、この例では、プロセスBとプロセスM(Ta膜の成膜)、プロセスEとプロセスL(Ru膜の成膜)、プロセスFとプロセスK(CoFeB膜の成膜)をいう。これら同じ処理が互いに異なる処理モジュールにて行われるとは、例えばTa膜の成膜を例にすると、処理モジュールPM2及び処理モジュールPM13で行われることを意味する。このとき、処理モジュールPM2が使用できなくなった場合には、処理モジュールPM13を他の処理モジュールとして使用する。
【0065】
また前記一連の処理を行うために配置されている複数の処理モジュールとは、この例では処理モジュールPM2,PM3,PM4,PM5,PM10,PM11,PM12,PM13であり、処理モジュールPM6、PM7,PM8,PM9が予備の処理モジュールに相当する。
【0066】
そして、処理モジュール内にて処理されたウエハWが当該処理モジュール内に置かれたままになると処理の状態が悪化する当該ウエハWについては、既述のように、優先的に当該処理モジュールから搬出するように制御される。この例では、前記処理の状態が悪化する程度に応じて、当該ウエハWが置かれたままになる処理モジュールで行われるプロセスの次のプロセスの優先順位(次処理優先順位)が設定されている。この次処理優先順位1位は、
図19に示すように、プロセスF(CoFeB膜の成膜処理)、次処理優先順位2位はプロセスH(酸化処理)、次処理優先順位3位はプロセスI(加熱処理)、次処理優先順位4位はプロセスC(PtMn膜の成膜処理)に設定されている。
【0067】
プロセスFが優先順位1位となるのは、プロセスFを行う処理モジュールからのウエハWの取り出しが遅れると、ウエハW表面に形成されたCoFeB膜の界面が酸化してしまい、MR(磁気抵抗)/RA(抵抗)の変化率が大きくなってしまうからである。また、プロセスHが優先順位2位となるのは、プロセスHを行う処理モジュールからのウエハWの取り出しが遅れると、ウエハW表面の残留酸素が多くなり、RAが増加してしまうからである。さらに、プロセスIが優先順位3位となるのは、プロセスIを行う処理モジュールからのウエハWの取り出しが遅れると、当該ウエハWの加熱が進んでしまい、RAが増加してしまうからである。さらにまた、プロセスCが優先順位4位となるのは、このプロセスCを行う処理モジュールからのウエハWの取り出しが遅れると、ウエハW表面に形成されたPtMn膜の界面が酸化してしまい、反強磁性結合が劣化してしまうからである。
【0068】
続いて、
図20〜
図27を参照して、処理モジュールPM4が使用できなくなった場合を例にして具体的に説明する。先ず
図20の状態を説明すると、第2の列ではロットの最初のウエハW1が処理モジュールPM13、ロットの2番目のウエハW2が処理モジュールPM12、3番目のウエハW3が処理モジュールPM11、4番目のウエハW4が処理モジュールPM10内に夫々置かれている。また、第1の列では、ロットの5番目のウエハW5が処理モジュールPM5、6番目のウエハW6が処理モジュールPM4、7番目のウエハW7が処理モジュールPM3、8番目のウエハW8が処理モジュールPM2、9番目のウエハW9が処理モジュールPM1に夫々置かれている。
【0069】
この状態で処理モジュールPM4にてトラブルが発生すると、当該処理モジュールPM4からアラーム信号が出力され、制御部100によりロードロック室LL1から処理モジュールPM1へのウエハWの搬送が停止される。そして、処理モジュールPM4と同じ処理を行うことができる他のモジュールを選択し、当該選択された他のモジュールに運転指令を出力する。この例では、処理モジュールPM4はCoFeB膜とMg膜の成膜処理を行うので、他のモジュールとして、CoFeB膜の成膜処理を行う処理モジュールPM12及びMg膜の成膜処理を行う処理モジュールPM9が選択される。そして、この処理モジュールPM4の代わりに、処理モジュールPM12及び処理モジュールPM9にウエハWを搬送するように搬送指令を出力する。こうして、他の処理モジュールPM12及び処理モジュールPM9を用いて、ウエハWに対して一連の処理を続行するが、ウエハWの搬送の順番を選択できるときには、既述の次処理優先順位の高いものを優先してウエハWの搬送を行う。
【0070】
例えば処理モジュールPM4が設けられた第1の列を異常発生列、第2の列を正常列と呼ぶことにすると、
図21に示すように、先ず正常列において、上流側の処理モジュールから一つ下流側の処理モジュールにウエハWが例えば一括して搬送される。具体的には、処理モジュールPM13にあるウエハW1はロードロック室LL2に、処理モジュールPM12にあるウエハW2は処理モジュールPM13に、処理モジュールPM11にあるウエハW3は処理モジュールPM12に、処理モジュールPM10にあるウエハW4は処理モジュールPM11に夫々搬送される。
【0071】
次いで、
図22に示すように、異常発生列(第1の列)の処理モジュールPM5にて酸化処理が行われたウエハW5が処理モジュールPM10に搬送される。続いて、異常発生列において、処理モジュールPM4内にあるウエハW6よりも後に処理ステーション1に搬送されたウエハW7〜ウエハW9の搬送が行われる。つまり、処理モジュールPM3のウエハW7は、搬送モジュールTM4のウエハ搬送機構3により受け取られて、搬送モジュールTM5,TM6を経路して搬送モジュールTM7のウエハ搬送機構3に受け渡され、当該ウエハ搬送機構3により退避用モジュールSM1に搬送される。また、処理モジュールPM3のウエハW7が退避用モジュールSM1に搬送されると、処理モジュールPM2のウエハW8が処理モジュールPM3に、処理モジュールPM1のウエハW9が処理モジュールPM2に夫々搬送される。
【0072】
ここで、搬送モジュールTM7のウエハ搬送機構3と退避用モジュールSM1との間のウエハWの受け渡しは、次のようにして行う。先ず、退避用モジュールSM1のある保持部71(71a〜71c)に対してウエハ搬送機構3がウエハWを受け渡すときには、ウエハWを保持したピック36が前記保持部71の上方側に進入できる高さ位置に棚部7を設定する。次に、前記ピック36を前記保持部の上方側に位置させてから、棚部7を上昇させることにより、前記ピック36上のウエハWが保持部71により受け取られる。次いで、前記ピック36が退出できる高さ位置に棚部7を設定して、当該ピック36を退出させることにより、前記保持部71へのウエハWの受け渡しが行われる。一方、退避用モジュールSM1からウエハ搬送機構3がウエハWを受け取る時には、ウエハWを退避用モジュールSM1の保持部71に載置する時と逆の順番で、ウエハ搬送機構3と棚部7とが動作する。
【0073】
続いて、
図23に示すように、正常列のウエハW1〜ウエハW5が、上流側の処理モジュールから一つ下流側の処理モジュールに搬送される。この後、
図24に示すように、異常発生列において、処理モジュールPM3のウエハW8が退避用モジュールSM1に搬送される。次いで、
図25に示すように、正常列のウエハW2〜ウエハW5が、上流側の処理モジュールから一つ下流側の処理モジュールに搬送される。
【0074】
続いて、
図26に示すように、異常発生列において、処理モジュールPM3のウエハW9が退避用モジュールSM1に搬送される。次に、
図27に示すように、正常列のウエハW3〜ウエハW5が、上流側の処理モジュールから一つ下流側の処理モジュールに搬送された後、退避用モジュールSM1のウエハW7が他のモジュールである処理モジュールPM12に搬送され、ここでCoFeB膜の成膜が行われる。次いで、
図28に示すように、正常列において、次処理優先順位1に従い、処理モジュールPM12のウエハW7が他の処理モジュールである処理モジュールPM9に搬送され、ここでMg膜の成膜処理が行われる。続いて、ウエハW4及びウエハW5が、上流側の処理モジュールから一つ下流側の処理モジュールに搬送される。
【0075】
しかる後、
図29に示すように、処理モジュールPM9のウエハW7が処理モジュールPM5に搬送され、退避用モジュールSM1のウエハW8が処理モジュールPM12に搬送される。次に、
図30に示すように、処理モジュールPM5のウエハW7が処理モジュールPM10に、処理モジュールPM12のウエハW8が処理モジュールPM9に搬送される。このとき、処理モジュールPM12では次処理優先順位1の処理(プロセスF)が行われているので、ウエハW8の搬送がウエハW7に優先して行われる。次いで、
図31に示すように、処理モジュールPM10のウエハW7が処理モジュールPM11に、処理モジュールPM9のウエハW8が処理モジュールPM5に、退避用モジュールSM1のウエハW9が処理モジュールPM12に夫々搬送される。このとき、処理モジュールPM10では次処理優先順位3の処理(プロセスI)が行われているので、ウエハW7の搬送が優先して行われる。
【0076】
続いて、
図32に示すように、処理モジュールPM5のウエハW8が処理モジュールPM10に、処理モジュールPM12のウエハW9が処理モジュールPM9に搬送される。このとき、処理モジュールPM12では次処理優先順位1の処理(プロセスF)が行われ、処理モジュールPM5では次処理優先順位2の処理(プロセスH)が行われたところである。従って、ウエハW9の搬送がウエハW8に優先して行われる。次に、
図33に示すように、処理モジュールPM11のウエハW7が処理モジュールPM12に搬送され、この後、
図34に示すように、処理モジュールPM9のウエハW9が処理モジュールPM5に、処理モジュールPM10のウエハW8が処理モジュールPM11に搬送される。このとき、処理モジュールPM10では次処理優先順位3の処理(プロセスI)が行われているので、ウエハW8の搬送が優先して行われる。
【0077】
次に、
図35に示すように、処理モジュールPM12のウエハW7が処理モジュールPM13に搬送される。次いで、
図36に示すように、処理モジュールPM11のウエハW8が処理モジュールPM12に、処理モジュールPM5のウエハW9が処理モジュールPM10に夫々搬送される。このとき、処理モジュールPM5では次処理優先順位2の処理(プロセスH)が行われたので、ウエハW9の搬送がウエハW8に優先して行われる。しかる後、
図37に示すように、正常列にあるウエハW7〜ウエハW9が上流側の処理モジュールから下流側の処理モジュールに順番に受け渡される。こうして、前記一連の処理が行われたウエハW1〜W5,W7〜W9は、第2のロードロック室LL2を介して大気搬送アーム12により元のFOUP20内に回収される。
【0078】
上述の実施の形態によれば、複数の処理モジュールを順次用い、ウエハWに対して真空雰囲気で一連の複数の処理を行うにあたり、前記一連の処理の各処理が、少なくとも2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように、処理モジュールが配置されている。また、搬送室内にて互いに隣接するウエハ搬送機構3同士でウエハWの受け渡しができるように構成されている。従って、前記一の処理モジュールが使用できなくなったときにおいても、同じ処理を行える他の処理モジュールを用いることができ、装置の稼働を停止することなく基板の処理が続行できる。これにより、前記一連の処理を途中で停止するといった事態の発生が抑えられるので、前記一連の処理を途中で停止することが原因となるウエハWの廃棄を防ぐことができ、ウエハWの廃棄数が低減される。
【0079】
既述のように、互いに隣接するウエハ搬送機構3同士でウエハWの受け渡しができるので、処理モジュールを経由せずに、搬送モジュールより構成された搬送室内を通過するようにウエハWを搬送することができる。このため、使用できなくなった処理モジュールに代えて他の処理モジュールを用いる場合でも、搬送室内を通ることによって他のモジュールに対してウエハWを速やかに搬送することができる。また、第1の列の処理モジュールから搬送室を介して第2の列の処理モジュールにウエハWの受け渡すこともできるため、搬送経路の複雑化を抑えることができる。さらに、処理モジュールを経由しなくて済むことから、搬送の際に処理モジュールのプロセス終了を待機するといったことがなく、使用モジュールを他の処理モジュールに変えた場合でも、搬送時間が必要以上に多くかからないので、スループット(生産性)の低下を抑えることができる。さらにまた、搬送室内を通過するようにウエハWの搬送を行うことができることから、前記一連の処理の各処理が少なくとも2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように処理モジュールを配置するときに、処理モジュールの配置レイアウトの自由度が高くなる。
【0080】
このように上述の実施の形態では、前記一の処理モジュールが使用できなくなったときにおいても前記他の処理モジュールを用いて基板の処理が続行できるため、具体例にて説明したように、廃棄するウエハWは、使用できなくなった処理モジュールPM4内にあるウエハW6のみである。つまり、当該ウエハW6よりも前に処理ステーション1に搬入されたウエハW1〜W5と、当該ウエハW6よりも後から処理ステーション1に搬入されたウエハW7〜W9に対しては、一連の処理が全て行われ、回収されている。従って、ウエハWの廃棄数を大幅に低減することができる。
【0081】
ここで、従来のように、搬送室内にて互いに隣接するウエハ搬送機構3同士でウエハWの受け渡しができない構成では、一の処理モジュールが使用できなくなったときには、ウエハWの廃棄数が多くなってしまう。この場合、使用できなくなった処理モジュール(「使用不可モジュール」という)よりも搬送順序が上流側の処理モジュールに置かれているウエハWは、当該使用不可モジュールに代わる処理モジュールを経由しないと下流側の処理モジュールに搬送することができない。この代替の処理モジュールを経由する搬送経路は、使用不可モジュールを迂回する搬送経路となるので、搬送経路が複雑となる。また、処理モジュールを介してウエハWが搬送されるので、途中の処理モジュールにてプロセスが行われているときには、このプロセスが終わるまで搬送を待機することになる。このように、ウエハ搬送機構3同士でウエハWの受け渡しができない構成では、使用できないモジュールが発生したときに同じ処理が行える他の処理モジュールにウエハWを搬送しようとしても、当該搬送に時間がかかる。従って、処理モジュールからのウエハWの取り出しが遅れたり、次の処理が開始されるまでの待機時間が長くなり、この間にウエハWの処理状態が悪化して、製品として使用できない廃棄ウエハが増える懸念がある。
【0082】
近年注目されている記憶素子であるMRAMに用いられるMTJ素子(MTJ膜)やTMR素子(TMR膜)等と呼ばれる積層膜には、金属膜と金属酸化膜とが8層以上積層されたものもある。このようなMTJ素子を製造する場合には、1枚のウエハWに非常に高価なデバイスが形成される傾向にあることから、処理モジュールが使用できなくなったときに、他の処理モジュールを用いて処理を続行し、ウエハWの廃棄数を低減できる効果は大きい。
【0083】
また、上述の構成では、搬送室内にて互いに隣接するウエハ搬送機構3同士でウエハWの受け渡しができ、ウエハWの搬送経路の自由度が高いことから、当該処理モジュール内にて置かれたままになると処理の状態が悪化するウエハWについては、優先的な搬送を行うことができる。つまり前記処理の状態が悪化するウエハWは、処理モジュール内にて処理された基板が当該処理モジュールに置かれたままであっても処理の状態が悪化しないウエハW群のためだけの搬送に対して、優先的に当該処理モジュールから搬出される。このため、処理モジュールに異常が発生した場合であっても、処理の状態の悪化を抑えるようにウエハWが搬送されるので、ウエハWに形成されるデバイスの電気的特性の悪化が抑制され、よりウエハWの廃棄数の削減を図ることができる。
【0084】
さらに、複数枚のウエハWを収納可能な退避用モジュールを設けているので、処理モジュール内に置かれているウエハWを一時的に退避することができる。このため、使用できなくなった処理モジュールに代えて他の処理モジュールを用いる場合に、ウエハWの搬送が正常時の搬送パターンと異なり、搬送先の処理モジュールが空かない場合には、処理モジュール内に置かれているウエハWを一時的に退避させることができる。これにより、ウエハWがある処理モジュールに置かれたままになることが抑えられ、このように置かれたままにすることによる処理状態の悪化を防ぐことができる。また、退避用モジュールSM1は、搬送モジュールTM(搬送室)よりも真空度が高くなる(圧力が低くなる)ように設定されているので、退避用モジュールSM1にウエハWを退避させても、ウエハW表面が酸化されるおそれはなく、処理状態の悪化が抑制される。
【0085】
さらにまた、上述の例では、成膜モジュールとして、互いに異なる種類の2つのターゲット52a、52bを備えたスパッタモジュールを用いているので、1台のモジュールにて2種類の金属膜を成膜することができる。これにより1種類のターゲットを備えた処理モジュールを用いる場合に比べて、処理モジュールの個数を削減することができるので、装置の大型化を抑えることができる。また、処理モジュールの個数が削減されることから、搬送に要する時間が少なくなり、スループットの向上を図ることができる。さらに、処理モジュールの個数が削減されることから、処理モジュールにウエハWを搬送する搬送機構や、真空ポンプ等の付帯設備も少なくて済み、製造コストが低減する。さらにまた、真空雰囲気に維持する領域も縮小されるため、運転コストの削減も見込まれる。また、上述の実施の形態によれば、ウエハ搬送機構と処理モジュールとの配置レイアウトが千鳥状に形成されるので、多くの処理モジュールを組み込んでも、装置の前後方向における長さ寸法を小さく抑えることができ、装置のフットプリント(占有面積)の低減を図ることができる。
【0086】
また、上述の構成では、隣接する搬送モジュールTM同士の間でウエハWを搬送することができるため、配置された処理モジュールに対して、搬送順序を自由に設定することができる。例えばウエハWを第1の列の処理モジュールから第2の列の処理モジュールに搬送したり、同じ列の処理モジュールの並びにおいて下流側の処理モジュールから上流側の処理モジュール(ロードロック室LL側)に搬送することができる。このため、積層膜の開発段階において、積層膜の積層数や積層順序の変更や、積層膜を構成する金属膜の種類の変更に容易に対応することができる。
【0087】
続いて真空処理装置の第2の実施の形態について、
図38〜
図40を参照して説明する。この例では、上述の第1の実施の形態の真空処理装置において、10個の搬送モジュールTM11〜TM20が設けられている。また、第1の列には、第1のロードロック室LL1の後段側に9個の処理モジュールPM11〜19と、1個の退避用モジュールSM11と、が配列されている。さらに、第2の列には、ロードロック室LL2の後段側に9個の処理モジュールPM21〜29と、1個の退避用モジュールSM21と、が配列されている。
【0088】
前記第1の列及び第2の列には、前記積層膜200を形成するための一連の複数の処理を行うための処理モジュールPMが全て組み込まれている。つまり、処理モジュールPM11,PM21はクリーニングモジュール、処理モジュールPM12,PM22はPtMn膜とTa膜の成膜処理を行う成膜モジュールとして夫々構成されている。また、処理モジュールPM13,PM23はCoFe膜とRu膜の成膜処理を行う成膜モジュール、処理モジュールPM14,PM24はCoFeB膜とMg膜の成膜処理を行う成膜モジュールとして夫々構成されている。さらに、処理モジュールPM15,PM25は酸化モジュール、処理モジュールPM16,PM26は加熱モジュール、処理モジュールPM17,PM27は冷却モジュールとして夫々構成されている。さらにまた、処理モジュールPM18,PM28はCoFeB膜とRu膜の成膜を行う成膜モジュール、処理モジュールPM19,PM29はTa膜の成膜処理を行う成膜モジュールとして夫々構成されている。
【0089】
このように、第1の列と第2の列には、同じ処理モジュールが配列されているため、前記積層膜200を形成するための一連の処理の各処理が、2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように、処理モジュールが配置されることになる。Ta膜の成膜処理を行う成膜モジュールは、例えば
図7に示す成膜モジュールにおいて、ターゲットを一つとし、シャッターを設けないタイプのスパッタモジュールとして構成されている。その他の構成は、上述の第1の実施の形態の真空処理装置と同様である。なお
図38では、図示の便宜上、搬送口47、側壁部30a及びゲートバルブGVについては省略している。
【0090】
この構成においては、真空処理装置が正常なときには、ウエハWは
図39に示す搬送パターンに従って搬送される。つまり、搬入出ポート2に載置されたFOUP20内のウエハWは、大気搬送アーム12により受け取られて第1のロードロック室LL1及び第2のロードロック室LL2のいずれか一方に搬送される。次いで、処理モジュールPMを「PM」、搬送モジュールTMを「TM」とすると、第1のロードロック室LL1内のウエハWは、TM11→PM11(プロセスA)→TM12→PM12(プロセスB,プロセスC)→TM13→PM13(プロセスD,プロセスE)の経路で搬送される。続いて、ウエハWは、TM14→PM14(プロセスF,プロセスG)→TM15→PM15(プロセスH)→TM16→PM16(プロセスI)→TM17→PM17(プロセスJ)→TM18→PM18(プロセスK,プロセスL)→TM19→PM19(プロセスM)の経路で搬送されて前記一連の処理が行われ、積層膜200が製造される。次いで、ウエハWはTM20→TM19→TM18→TM17→TM16→TM15→TM14→TM13→TM12→TM11→LL1の経路で第1のロードロック室LL1に搬送され、大気搬送アーム12により例えば元のFOUP20に戻される。
【0091】
また、第2のロードロック室LL2内のウエハWは、TM11→PM21(プロセスA)→TM12→PM22(プロセスB,プロセスC)→TM13→PM23(プロセスD,プロセスE)の経路で搬送される。続いて、ウエハWは、TM14→PM24(プロセスF,プロセスG)→TM15→PM25(プロセスH)→TM16→PM26(プロセスI)→TM17→PM27(プロセスJ)→TM18→PM28(プロセスK,プロセスL)→TM19→PM29(プロセスM)の経路で搬送されて前記一連の処理が行われ、積層膜200が製造される。次いで、ウエハWはTM20→TM19→TM18→TM17→TM16→TM15→TM14→TM13→TM12→TM11→LL1の経路で第2のロードロック室LL2に搬送され、大気搬送アーム12により例えば元のFOUP20に戻される。
【0092】
また、処理モジュールの列に含まれる一の処理モジュールが使用できなくなったときには、当該一の処理モジュールにて行われる処理と同じ処理を行える他の処理モジュールを使用してウエハWの処理を続行するように、制御部100から制御信号が出力されるように構成されている。
このとき、例えば処理モジュールPM14が使用できなくなったときには、例えば第1の列ではロードロック室LL1から処理モジュールPM11へのウエハWの搬入を停止し、処理モジュールPM24を他の処理モジュールとして使用してウエハWの処理が続行される。この場合には、例えば
図40に示すように、第1の列のウエハWは、処理モジュールPM24にて処理を行った後、再び第1の列の処理モジュールPM15〜PM19に順次搬送されて処理が行われるように搬送が制御される。
【0093】
また、本発明の真空処理装置は、
図41に示すように構成するようにしてもよい。この例では、搬入ポート2aと処理ステーション1との間に第1の大気搬送モジュール11aが設けられると共に、処理ステーション1の奥側に第2の大気搬送モジュール11bが設けられている。前記第2の大気搬送モジュール11bの奥側には搬出ポート2bが設けられている。前記第1及び第2の大気搬送モジュール11a,11bは同様に構成され、大気搬送アーム12a,12b及び開口部13a,13bを備えている。そして、第1の列及び第2の列の奥側には夫々ウエハ搬出用のロードロック室LL12,LL22が設けられ、当該ロードロック室LL12,LL22には、大気搬送アーム12bがアクセスするように構成されている。この例では、搬入ポート2aから第1の大気搬送モジュール11aを介して、第1の列及び第2の列の夫々の第1のロードロック室LL11,LL21にウエハWが搬送される。そして第1の列及び第2の列の夫々において上流側から下流側に向けてウエハWが順次受け渡され、第2のロードロック室LL12,LL22から、第2の大気搬送モジュール11bを介して搬出ポート2bに搬出される。
【0094】
この構成においては、例えば第1の列及び第2の列は、
図40に示す真空処理装置と同様の処理モジュールが組み込まれており、第1の列及び第2の列における第2の大気搬送モジュール11bと隣接する領域には、既述のロードロック室LL12,LL22が夫々設けられている。この真空処理装置が正常であるときには、ウエハWは
図42に示す搬送パターンに従って搬送される。このときの具体的な搬送は
図39と同様である。そして、例えば処理モジュールPM14が使用できなくなったときには、例えば第1の列ではロードロック室LL1から処理モジュールPM11へのウエハWの搬入を停止し、処理モジュールPM24を他の処理モジュールとして使用してウエハWの処理が続行するように制御部100から制御信号が出力される。この場合には、例えば
図43に示すように、第1の列のウエハWは、処理モジュールPM24にて処理を行った後、再び第1の列の処理モジュールPM15〜PM19に順次搬送されて処理が行われるように搬送が制御される。
【0095】
図38及び
図41に示す構成においても、退避用モジュールSM11、SM21が設けられており、前記制御部100は、処理モジュール内にて処理されたウエハWが当該処理モジュール内に置かれたままになると処理の状態が悪化する当該ウエハWについては、優先的に当該処理モジュールから搬出するように制御信号を出力するように構成されている。この優先搬送について
図41の真空処理装置において処理モジュールPM14が使用できなくなった場合を例にして
図44〜
図47を参照して説明する。
図44は、処理モジュールPM14が使用できなくなったときのウエハWの搬送状態を示している。この場合には、
図45に示すように、異常発生列(第1の列)及び正常列(第2の列)において、ロードロック室LL11,LL21から処理モジュールPM11,PM12のウエハWの搬送が停止される。処理モジュールPM14と同様の処理を行う他の処理モジュールPM24は、次処理優先順位1位のCoFeB膜の成膜(プロセスF)とMg膜の成膜(プロセスG)を行う成膜モジュールである。従って、
図45に示すように、正常列において当該処理モジュールPM24に搬送されるウエハW26よりも後からロードロック室LL1に搬入されたウエハW27,W28の搬送が停止される。
【0096】
次いで、異常発生列において優先的にウエハWの搬送が行われる。つまり、
図46に示すように、処理モジュールPM13のウエハW16が他の処理モジュールである処理モジュールPM24に優先的に搬送される。続いて、
図47に示すように、正常列のウエハWは上流側の処理モジュールから下流側の処理モジュールに順番に搬送される。また、正常列の処理モジュールPM24にて処理が行われたウエハW16は、異常発生列に戻り、処理が続行される。
【0097】
このように、
図38及び
図41に示す真空処理装置においては、第1の列及び第2の列に組み込まれる処理モジュールは同じである。また、搬送モジュール同士の間でウエハWの搬送を行うことができるため、予備の処理モジュールを付設しなくても、ある処理モジュールが使用できなくなった場合に他の処理モジュールを用いて一連の処理を続行することができる。このため、スループットの低下を抑えながら、ウエハWの廃棄数を低減することができる。
【0098】
また、第1の列及び第2の列の一方を構成する処理モジュールが使用できなくなったときにも、他方の列ではウエハWを搬入して処理を続行するようにしてもよく、この場合にはさらにスループットの低下を抑えることができる。
上述の例では、第1の列のウエハWは、処理モジュールPM14が使用できなくなったときに、処理モジュールPM24にて処理を行った後、そのまま第2の列の処理モジュールPM25〜PM29に順次搬送して処理を行うようにしてもよい。さらに、同じロットのウエハWに対して一連の処理を行うために、ロードロック室LL1に搬入予定のウエハWに対してもロードロック室LL2を介して処理モジュールPM21に搬送し、一連の処理を行うようにしてもよい。
【0099】
以上において、搬送モジュールTMに設けられるウエハ搬送機構8は、
図48のように構成してもよい。このウエハ搬送機構8は、2個の多関節アーム81,82を備えたものである。夫々の多関節アーム81,82は、上述の実施の形態のウエハ搬送機構3と同様に構成され、夫々が独立して水平回転自在及び進退自在に構成されている。このように2個の多関節アーム81,82を備えた構成では、搬送効率が向上するため、さらにスループットの向上を図ることができる。また、この2個の多関節アーム81,82は、一方を処理モジュールに対するウエハWの受け渡し用として用い、他方を隣接するウエハ搬送機構8同士の間でのウエハWの受け渡し用として用いるようにしてもよい。
【0100】
また、本発明では、
図49に示すように、搬送室の内部において基板搬送機構同士の間でウエハWの受け渡しを直接行うようにしてもよい。この場合、隣接する基板搬送機構91,92同士は、ウエハWを保持する保持部位93,94の形状が互いに異なるように構成されている。また、一方の基板搬送機構91は、前記保持部位93が駆動機構95により水平回転、進退自在及び昇降自在に構成され、他方の基板搬送機構92は前記保持部位94が駆動機構96により水平回転、進退自在に構成されている。前記保持部位93,94の形状は例えば一方がウエハWの周縁部を保持し、他方がウエハWの中央部を保持するように構成され、両者の間でウエハWの受け渡しを行うときに、互いに干渉しないように夫々の形状が設定されている。そして、保持部位94を受け渡し位置に配置しておき、保持部位93を保持部位94に対して昇降させることにより、両者の間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0101】
以上において、スパッタ法により金属膜を成膜する処理モジュールは、互いに異なる種類の3個のターゲットを備えるものであってもよい。この場合には、例えば
図7に示すスパッタモジュールにおいて、ターゲットを3個用意し、これらのターゲット電極をスイッチ部を介してDC電源部に接続して、スイッチ部を切り替えることにより、負の直流電圧が選択的にターゲット電極に印加されるように構成される。さらに、スパッタ法により金属膜を成膜する処理モジュールは、マグネットを用いず、高周波をターゲットに印加すると共に、基板(ウエハW)にバイアス電力を印加してスパッタリングを行う構成であってもよい。さらにまた、金属膜は、スパッタ法を用いたものに限られず、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を利用して形成するようにしてもよい。
【0102】
さらに金属酸化膜は、共通の処理容器内にて、金属膜の成膜と、金属膜の酸化とを行うことにより形成するようにしてもよい。この場合、例えば
図7に示すスパッタモジュールを用い、ターゲット52a,52bの一方をゲッタリング材とし、他方を金属膜の成膜材料とする。ゲッタリング材とは、酸素や水分を吸収する材料であり、例えばチタン(Ti)、クロム(Cr)、Ta、Zr、ハフニウム(Hf)等、並びにこれらの合金等が用いられる。
【0103】
そして金属酸化膜を成膜する場合は、先ず処理容器(真空容器)内の載置部にウエハWを載置し、このウエハWの直上に当該ウエハWを覆うシャッターを配置してゲッタリング処理を行う。このゲッタリング処理では、例えばマグネトロンスパッタ法によりゲッタリング材を真空容器の内壁に成膜する。これにより、真空容器内の酸素や水分がゲッタリング材に吸収され、除去される。次いでウエハWを覆うシャッターを退行させ、マグネトロンスパッタ法により金属膜の成膜を行う。マグネトロンスパッタ法では、ゲッタリング処理を行うときには、ターゲットシャッターにより、ゲッタリング材よりなるターゲットのみを露出させる。また金属膜の成膜を行うときには、ターゲットシャッターにより、金属膜の成膜材料よりなるターゲットのみを露出させる。こうして処理容器内にて、ゲッタリング処理と金属膜の成膜処理とを交互に繰り返して行うことにより、金属酸化膜が形成される。このように共通の処理容器内にて金属膜の成膜と酸化とを行う場合には、酸化用の処理モジュールが不要となるため、装置の小型化を図ることができる。
【0104】
以上において、本発明では、例えば第1の列の処理モジュール→第2の列の処理モジュール→第1の列の処理モジュールのように、ウエハWを搬送して、一連の処理を行うようにしてもよい。
【0105】
また、本発明では、処理モジュールを経由することなく、搬送室内を通って基板を搬送することができるので、処理モジュールを前記一連の処理の順番に沿って配列する必要はない。さらに、前記第1の列及び第2の列の処理モジュールは、例えば第1の列の処理モジュール→第2の列の処理モジュール→第1の列の処理モジュールの経路で基板を搬送して、前記一連の処理を行うように夫々配列してもよい。さらにまた、使用できなくなった処理モジュールと同じ処理を行える他の処理モジュールを使用して基板の処理を続行する場合には、必ずしも処理モジュール内に置かれたままになると処理の状態が悪化する基板について優先的な搬送を行うように制御する必要なはい。例えば他の処理モジュールを用いて処理を続行する場合であっても、処理ステーションに搬入された基板の順番に沿って、処理モジュールから基板を取り出し、次の処理モジュールに受け渡すように制御してもよい。
【0106】
前記
図38及び
図41に示す真空処理装置は、第1の列及び第2の列において、各々独立して前記一連の処理の各処理が行われるように処理モジュールが配列されている。この場合に、第1の列及び第2の列の各々は、前記一連の処理の各処理が少なくとも2つの処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように構成するようにしてもよい。例えば
図38及び
図41の装置において、第1の列及び第2の列を、第1のロードロック室と第2のロードロック室との間に、13個の処理モジュールと1個の退避用モジュールを備えるように夫々構成する。そして、13個の処理モジュールを例えば
図6に示す13個の処理モジュールと同様の処理を行うように夫々構成する。これにより第1の列及び第2の列の各々は、前記一連の処理の各処理を行う2つの処理モジュールを備えることになる。この構成では、第1の列及び第2の列の一方において、使用できなくなった処理モジュールが発生した場合に、当該一方の列の他の処理モジュールを使用して基板の処理が続行できるので、他方の列における基板の処理への影響が少なくなる。さらにまた、本発明の真空処理装置は、前記一連の処理のある処理においては、3つ以上の処理モジュールのいずれにおいても行うことができるように構成してもよい。
【0107】
続いて、第3の実施形態について第1の実施形態との差異点を中心に
図50を参照しながら説明する。この第3の実施形態の真空処理装置110は、前後方向(図中X方向)に直線状に連接された5個の搬送モジュールTMを備えている。大気搬送モジュール11側(前方側)から後方側に向かって見て、各搬送モジュールを順にTM31、TM32、TM33、TM34、TM35とする。これらの搬送モジュールTM31〜TM35を各々構成する真空容器30は、平面視八角形状に形成されている。そして、搬送モジュールTM31〜35のうち隣接する搬送モジュールTMについては、前記八角形の一辺が互いに共有されるように配置されている。
【0108】
搬送モジュールTM31〜TM35のうち、代表してTM34、TM35について詳細に示した
図51も参照しながら説明を続ける。各搬送モジュールTMを構成する真空容器30は、前後方向に沿って形成された側壁101、101を左右に各々備えている。真空容器30において、側壁101から前方側へ、真空容器30の左右の中央に向かって形成された側壁を102、側壁101から後方側へ、真空容器30の左右の中央に向かって形成された側壁を103として示している。また、最も後方側の搬送モジュールTM(この実施形態ではTM35)において、側壁103、103の後方側に隣接する側壁を104としている。これら側壁101〜104には搬送口47が開口し、第1の実施形態と同様、搬送モジュールTMとそれに隣接するモジュールとの間で、ウエハWの受け渡しができるように構成されている。
【0109】
このように真空容器30の形状が異なることを除き、各搬送モジュールTM31〜TM35は、第1の実施形態の各搬送モジュールTMと同様に構成されている。即ち、搬送モジュールTM31〜TM35間には開口部30bが形成され、ゲートバルブGにより開閉される。また、搬送モジュールTM31〜TM35間にはステージ300が設けられ、各搬送モジュールTM31〜35はウエハ搬送機構3を備えている。
【0110】
この真空処理装置110には、2種類の互いに異なる外形を持つ処理モジュールが設けられる。そのうちの1つは、第1の実施形態と同様にその平面形状が五角形に構成されており、装置110の左右の中央へ向かって突出する側壁41または42を備えた処理モジュールである。このような処理モジュールを五角モジュールと記載する。また、他の一つは、その平面形状が正方形に構成された処理モジュールである。このような処理モジュールを四角モジュールと記載する。また、この真空処理装置110に設けられる退避用モジュールは、前記処理モジュールのうちの四角モジュールと同様の外形を備えている。この退避用モジュールについても四角モジュールと表記する。五角モジュールは主処理モジュールに、四角モジュールは従処理モジュールに相当する。五角モジュールは、四角モジュールよりも大きく、平面で見た四角モジュールの面積を1とすると、平面で見た五角モジュールの面積は1.3以上である。
【0111】
五角モジュールはA1〜A10の10個が設けられる。装置1を前方側から後方側に向かって見ると、左に五角モジュールA1、A2、A3、A4、A5がこの順で列をなして配置され、右に五角モジュールA10、A9、A8、A7、A6がこの順で列をなして配置されている。五角モジュールA1〜A4については、その真空容器5を構成する側壁41が、互いに隣接する搬送モジュールTMの側壁103、102間に進入し、これら側壁103、102に対向するように配置されている。五角モジュールA10〜A7については、その真空容器5を構成する側壁42が隣接する搬送モジュールTMの側壁103、102間に進入し、これら側壁103、102に対向するように配置されている。五角モジュールA5については、その側壁41のうちの一つの面が、搬送モジュールTM5の側壁103対向するように配置されている。五角モジュールA6については、その側壁42のうちの一つの面が、搬送モジュールTM5の側壁103対向するように配置されている。
【0112】
四角モジュールは、B1〜B11の11個が設けられる。五角モジュールA1〜A5と共に列(第1の列)をなすように、四角モジュールB1、B2、B3、B4、B5が、後方に向かってこの順で配置されている。これら四角モジュールB1〜B5の各真空容器5を構成する側壁が、搬送モジュールTM31〜35の側壁101に対向している。また、五角モジュールA6〜A10と共に列(第2の列)をなすように、四角モジュールB11、B10、B9、B8、B7が、後方に向かってこの順で配置されている。これら四角モジュールB11〜B7の各真空容器5を構成する側壁が、搬送モジュールTM31〜35の側壁101に対向している。つまり、第1の列、第2の列ともに、前後方向に四角モジュールと五角モジュールとが交互に配置されて構成されている。そして、装置110を前方から後方に向かって見て、四角モジュールB1〜B5よりも、五角モジュールA1〜A5が左側に突出し、四角モジュールB7〜B11よりも、五角モジュールA6〜A10が右側に突出している。四角モジュールB6は、その真空容器5を構成する側壁が、搬送モジュールTM35の側壁104に対向するように、当該搬送モジュールTM35の後方に配置されている。搬送モジュールTM31の側壁102、102には、ロードロック室LL1、LL2の側壁が各々対向している。
【0113】
このように、各モジュール間で側壁同士が対向することにより、第1の実施形態と同様に各モジュールに形成された搬送口47が重なり合う。それによって、各モジュール間でウエハWの受け渡しを行うことができる。搬送口47は、第1の実施形態と同じく、モジュール間に設けられたゲートバルブGVにより開閉される。
【0114】
五角モジュールA1は、既述の表面クリーニング処理を行う処理モジュールPM1に対応する。五角モジュールA2〜A10は、第1の実施形態の
図7に示した処理モジュールPM2に対応し、スパッタにより各種の膜を成膜する。五角モジュールA2〜A10が備えるターゲット52(52a及び52b)の材質について説明すると、モジュールA2ではTa及びRu、モジュールA3ではCo及びPd、モジュールA4ではTa及びCoFeB、モジュールA5ではCoFe及びMg、モジュールA6、A7ではMg、モジュールA8ではCoFe及びCoFeB、モジュールA9ではTa、モジュールA10ではRuである。
【0115】
四角モジュールB1、B3は加熱モジュールであり、
図13で説明した処理モジュールPM7に対応する。四角モジュールB2、B10は、退避用モジュールSM1、SM2に対応する。四角モジュールB8、B9は、前記
図13の加熱モジュールに対応する。ただし、これらモジュールB8、B9においては、
図14の処理モジュールPM6で説明したように載置部45に冷媒を供給し、加熱後のウエハWを冷却することができる。四角モジュールB4は冷却モジュールであり、前記処理モジュールPM6に対応する。四角モジュールB6、B7は酸化モジュールであり、
図12で説明した処理モジュールPM5に対応する。四角モジュールBは真空容器5の形状を除いて、対応する処理モジュールPMまたは退避用モジュールSMと同様に構成されている。なお、五角モジュールA及び四角モジュールBには、これらのモジュールの真空容器5内を排気する排気口58aが設けられるが、図示は省略している。
【0116】
また、四角モジュールB8、B9及び既述の各実施形態の退避用モジュールSMについて補足すると、これらモジュールの棚部7には予めダミーウエハが保持されている。このダミーウエハは、ウエハ搬送機構3及びステージ300を介して各処理モジュールに搬送されるウエハである。処理モジュールではダミーウエハが搬入された状態で所定の処理を行い、真空容器5内の処理環境が調整される。この調整後にキャリア20から払い出されたウエハWが当該処理モジュールに搬入されて処理を受ける。
【0117】
四角モジュールB5は、ウエハWの向きを調整するアライメントモジュールとして構成されている。モジュールB5の載置部45にはウエハWの中央部が水平に載置され、当該載置部45は鉛直軸回りに回転する。また、モジュールB5は、回転するウエハWの周縁を挟んで上下に夫々設けられる投光部と、投光部により光を受ける受光部とを備える。このモジュールB5では、受光部における投光部からの光の入射範囲の変化によって、ウエハWの側周に形成される切り欠きであるノッチが検出され、当該ノッチが所定の方向に向けられる。
【0118】
このようなアライメントモジュールを設けるのは、ウエハWに磁性膜を成膜する前に、ウエハWにおける当該磁性膜の磁場の向きを所定の方向に向けることが求められるためである。この第3の実施形態では、前記磁性膜はCoFe膜である。ただし、例えば真空処理装置に搬入前にウエハWの向きの調整を行い、搬送中に向きがずれないように真空処理装置内のウエハWの搬送速度を制御することで、磁性膜形成時におけるウエハWの向きを制御することができる。即ち、アライメントモジュールは各真空処理装置に必須ではない。
【0119】
真空処理装置110におけるウエハWの搬送経路について
図52を参照しながら説明する。FOUP20から大気搬送モジュール11へ搬送されたウエハWは、第1のロードロック室LL1→搬送モジュールTM31→四角モジュールB1またはB11の順で受け渡される。
図52では四角モジュールB1、B11のうちB1に搬送されるものとして示している。
【0120】
然る後、ウエハWは、搬送モジュールTM31→五角モジュールA1→搬送モジュールTM32→五角モジュールA2→搬送モジュールTM33→四角モジュールB3→搬送モジュールTM33→五角モジュールA3→搬送モジュールTM34→四角モジュールB4→搬送モジュールTM34→五角モジュールA4→搬送モジュールTM35→四角モジュールB5→搬送モジュールTM35→五角モジュールA5→搬送モジュールTM35→四角モジュールB6→搬送モジュールTM35→五角モジュールA6→搬送モジュールTM35→四角モジュールB7→搬送モジュールTM35→五角モジュールA7→搬送モジュールTM34→四角モジュールB8→搬送モジュールTM34→五角モジュールA8→搬送モジュールTM33→四角モジュールB9→搬送モジュールTM33→五角モジュールA9→搬送モジュールTM32→五角モジュールA10→搬送モジュールTM31→第2のロードロック室LL2→大気搬送モジュール11→FOUP20の順で受け渡される。
【0121】
図53には、上記のように搬送が行われることでウエハWに形成される積層膜201を示している。この積層膜201は、上記のMRAMに用いられるMTJ膜を構成する。この
図53も参照しながら、各モジュールにて行われるウエハWの処理について、上記のウエハWが搬送される順番で説明する。
四角モジュールB1、B10でウエハWは加熱処理されて脱気される。五角モジュールA1にて、ウエハWの表面がスパッタエッチングされ、当該表面がクリーニングされる。五角モジュールA2にて、ウエハW表面にTaからなるシード層が成膜される。このシード層はTaに代わりRuにより形成してもよい。四角モジュールB3で、ウエハWが加熱処理される。五角モジュールA3でCo膜、Pd膜が交互に繰り返しn回成膜される。この繰り返しの回数nは、4以上20以下の整数である。四角モジュールB4で、ウエハWが冷却処理される。五角モジュールA4でTa膜、CoFeB膜がこの順で形成される。四角モジュールB5でウエハWの向きが調整される。
【0122】
五角モジュールA5でCoFe膜、Mg膜がこの順に形成される。四角モジュールB6で酸化処理が行われる。五角モジュールA6でMg膜が形成される。四角モジュールB7で酸化処理が行われる。五角モジュールA7でMg膜が形成される。このように五角モジュールA5、A6、A7でのMg膜の形成と、四角モジュールB6、B7で行われる酸化処理とによって、前記CoFe膜上には、MgO膜が形成される。四角モジュールB8では、加熱処理と、冷却処理と、がこの順に行われる。五角モジュールA8では、CoFe膜、CoFeB膜がこの順に成膜される。四角モジュールB9では、加熱処理と、冷却処理と、がこの順に行われる。五角モジュールA9では、Ta膜が成膜される。五角モジュールA10では、Ru膜が成膜される。
【0123】
この真空処理装置110の利点を説明するために、比較例である真空処理装置120の構成を
図54に示す。この真空処理装置120は、真空処理装置110と同様に積層膜201を形成可能な装置である。装置110との差異点としては、搬送モジュールTMの平面形状が第1の実施形態と同様に六角形となっていること、及び全ての処理モジュールが五角モジュールとして構成されていることが挙げられる。各五角モジュールは、第1の実施形態と同様に搬送モジュールTMに接続される。
【0124】
図54では、真空処理装置110の四角モジュールBと同様の処理をウエハWに行う五角モジュールについて、前記四角モジュールBと同じ符号を用いて示している。真空処理装置120では、真空処理装置110における四角モジュールB2、B7、B9、B10、B11に対応するモジュールが設けられていない。また、各五角モジュール間でウエハWを搬送できるように、搬送モジュールはTM1〜TM9の9個が設けられている。ウエハWは、B1→A1→A2→B3→A3→B4→A4→A5→B6→A6→B7→A7→B8→A8→A9→A10の順で、各五角モジュール間を搬送される。真空処理装置110において、五角モジュールA9に搬入前のウエハWに対する四角モジュールB9で行われる加熱処理及び冷却処理は、この真空処理装置120では例えば五角モジュールA9により行われる。
【0125】
真空処理装置110、120間で五角モジュールの大きさは互いに等しい。
図50にR1で示す真空処理装置110の前後の長さは、
図54にR2で示す真空処理装置120の前後の長さよりも短く、例えばR1が12.6m、R2が13.8mである。また、
図50にR3で示す真空処理装置110の左右の長さは、
図54にR4で示す真空処理装置120の左右の長さと等しく、例えば4.1mである。
【0126】
スパッタ処理を行うモジュールは、各ターゲット52の配置スペース、各マグネット61の移動スペース、駆動機構63の配置スペース、真空容器5の側壁からガスを供給するガス供給部59aの配置スペースを設けるなどの理由により、比較的モジュールは大きなものとなる。それに対して、このようなスパッタ処理を行わずにウエハWを加熱あるいは冷却するモジュールや退避用モジュールは、上記のスパッタを行うために要する各スペースが不要である。そこで真空処理装置110においては、処理種別及び処理モジュールであるか退避用モジュールであるかによって、真空容器5の大きさが異なるように構成されている。さらに、真空処理装置110においては、搬送モジュールTMを八角形とし、四角モジュールBと五角モジュールAとを前後に交互に配列して、これら四角モジュールB及び五角モジュールAが搬送モジュールTMに接続されるように構成されている。
【0127】
このように構成されることで、上記のように真空処理装置120と比べて、真空処理装置110ではその前後の長さが抑えられる。即ち、フットプリント(装置が占有する床面積)を低減することができる。さらに、真空処理装置110では、そのように占有床面積を少なくしつつ、真空処理装置120よりも多くのモジュールを設置することができ、このモジュールに応じた効果を得ることができる。具体的には、上記の真空処理装置120の五角モジュールA9が行う加熱及び冷却処理が、真空処理装置110では、五角モジュールA9とは別の四角モジュールB9に割り当てられているため、五角モジュールA9での成膜処理と、四角モジュールB9での前記加熱及び冷却処理とを互いに並行して行うことができる。それによって、スループットの向上を図ることができる。また、アライメントモジュールである四角モジュールB5により、磁性膜の磁性の方向をより確実に所定の方向に向けることができる。さらに、退避用モジュールである四角モジュールB2、B10を設けたことで、装置110の外部からダミーウエハを搬送する手間を省けるという利点がある。
【0128】
続いて、
図55に示す第4の実施形態の真空処理装置130について、真空処理装置110との差異点を中心に説明する。この真空処理装置130は、凹部が形成された層間絶縁膜をその表面に備えたウエハWを処理し、前記凹部に配線をなすCuを埋め込む。真空処理装置130では四角モジュールが7つ、五角モジュールが6つ設けられ、これらモジュールの数に対応して搬送モジュールはTM31〜TM33の3つが設けられている。
【0129】
五角モジュールはC1〜C6で示し、四角モジュールはD1〜D7で示している。装置130の前方側から後方側に向かって見て、左側にはモジュールD1、C1、D3、C3、D5、C5がこの順に配列されて第1の列を形成し、右側にはモジュールD2、C2、D4、C4、D6、C6がこの順に配列されて第2の列を形成している。搬送モジュールTM33の後方側にはモジュールD7が配置されている。
【0130】
五角モジュールC1、C2、C5、C6は、上記のスパッタによる成膜を行う。モジュールC1、C2は、TaNからなるターゲット52を備え、モジュールC5、C6は、Cuからなるターゲット52を備えている。五角モジュールC3、C4は、載置部45に対向するガスシャワーヘッドを備えている。このガスシャワーヘッドより供給される成膜ガスによってCVDを行い、Ru膜を成膜する。ウエハWの面内に均一性高く成膜を行うため、前記対向するガスシャワーヘッドは比較的大きく形成される。そのために、CVDを行うモジュールは比較的大型のモジュールとなるので、五角モジュールとして構成されている。なお上記の第3の実施形態でMgOは、ALD(Atomic Layer Deposition)を行う五角モジュールを設けて成膜してもよい。ALDを行うモジュールも、例えば五角モジュールとして構成される。
【0131】
四角モジュールD1、D2は、上記の水素ラジカル処理を行うクリーニングモジュールとして構成されている。具体的には、既述の加熱モジュールと同様に構成されるが、差異点として例えば真空容器5に、マイクロ波が供給されるアンテナが設けられる。アンテナから真空容器5内に放射されるマイクロ波により、ウエハW表面に供給された水素から水素ラジカルが生じて、ウエハW表面の酸化物が還元される。また、ラジカル発生源としてリモートプラズマソースを用いて水素ラジカルをウエハW上に供給しても構わない。四角モジュールD3、D4は既述の加熱モジュールである。四角モジュールD5、D6は、前記高温水素還元処理及びアニール処理を行うモジュールであり、ウエハWに水素を供給する他は既述の加熱モジュールと同様に構成されている。四角モジュールD7は、既述の冷却モジュールである。
【0132】
図56を用いて真空処理装置130におけるウエハWの搬送経路を説明する。FOUP20からロードロック室LL1に搬入されたウエハWは、搬送モジュールTM31→四角モジュールD1→搬送モジュールTM31→五角モジュールC1→搬送モジュールTM32→四角モジュールD3→搬送モジュールTM32→五角モジュールC3→搬送モジュールTM33→四角モジュールD5→搬送モジュールTM33→五角モジュールC5→搬送モジュールTM33→四角モジュールD7の順で搬送される。然る後、ウエハWは、搬送モジュールTM31〜TM33を介してロードロック室LL1に戻され、その後キャリア20に戻される。
【0133】
FOUP20からロードロック室LL2に搬入されたウエハWは、搬送モジュールTM31→四角モジュールD2→搬送モジュールTM31→五角モジュールC2→搬送モジュールTM32→四角モジュールD4→搬送モジュールTM32→五角モジュールC4→搬送モジュールTM33→四角モジュールD6→搬送モジュールTM33→五角モジュールC6→搬送モジュールTM33→四角モジュールD7の順で搬送される。然る後、ウエハWは、搬送モジュールTM31〜33を介してロードロック室LL2に戻され、その後キャリア20に戻される。
【0134】
ウエハWの搬送順に、各モジュールでウエハWに行われる処理を説明する。四角モジュールD1、D2にて、加熱によるウエハWの脱気及び水素のラジカルによるウエハWの表面の酸化物の還元が行われる。五角モジュールC1、C2にて、層間絶縁膜の凹部の表面に当該層間絶縁膜へのCuの拡散を防ぐバリア膜であるTaN膜が形成される。四角モジュールD3、D4にてウエハWの加熱が行われる。この加熱は、五角モジュールC3、C4にウエハWが搬送されたときに、成膜可能な温度にウエハWを昇温させるための時間を抑えるために行われる。五角モジュールC3、C4にて、前記バリア膜であるRu膜が、前記TaN膜上に形成される。四角モジュールD5、D6にて加熱処理及び水素ガスによる還元処理が行われる。五角モジュールC5、C6にてCuが成膜され、前記凹部に当該Cuが埋め込まれる。四角モジュールD7にてウエハWの冷却が行われる。この冷却は、ロードロック室LL1、LL2に搬入されたウエハWが、キャリア20に搬送可能な温度になるまでに要する時間を抑えるために行われる。
【0135】
真空処理装置130との比較のために、
図57に真空処理装置140を示している。この真空処理装置140は、真空処理装置130と同様に層間絶縁膜の凹部にCuの埋込みを行う。真空処理装置140においては、真空処理装置120と同様、搬送モジュールTMが平面視六角形に構成され、TM1〜TM6の6つが設けられている。そして各処理モジュールは、五角モジュールとして構成されている。真空処理装置140では、処理モジュールとして上記の五角モジュールC1〜C6の他に、四角モジュールD1、D2、D5、D6と同様の処理を行う五角モジュールを備えている。これら五角モジュールについても、四角モジュールと同じくD1、D2、D5、D6の符号を付している。ただし、この真空処理装置140では、四角モジュールD3、D4、D7に対応するモジュールは設けられていない。
【0136】
真空処理装置140において、FOUP20からロードロック室LL1に搬入されたウエハWは、モジュールD1→C1→C3→D5→C5の順で搬送される。その後、搬送モジュールTM1〜TM6→ロードロック室LL1の順で搬送されてFOUP20に戻される。FOUP20からロードロック室LL2に搬入されたウエハWは、モジュールD2→C2→C4→D6→C6の順で搬送される。その後、搬送モジュールTM1〜TM6→ロードロック室LL2の順で搬送されてFOUP20に戻される。この真空処理装置140では、四角モジュールD3、D4による加熱処理が行われない分、五角モジュールC3、C4における成膜前の加熱処理に要する時間は長くなる。また、四角モジュールD7による冷却処理が行われない分、ロードロック室LL1、LL2におけるウエハWを冷却するための待機時間が長くなる。
【0137】
真空処理装置130、140間で五角モジュールの大きさは互いに等しい。
図55にR5で示す真空処理装置130の前後の長さは、
図57にR6で示す真空処理装置140の前後の長さよりも短い。例えばR5が8.7m、R6が9.9mである。また、
図55にR7で示す真空処理装置130の左右の長さは、
図57にR8で示す真空処理装置140の左右の長さと等しく、例えば4.1mである。つまり、この真空処理装置130についても、同様の処理を行う真空処理装置に比べて、フットプリントを抑えることができ、さらに設けられるモジュール数を増やすことができる。そして、そのように増やしたモジュールに応じた効果を得ることができる。
【0138】
真空処理装置130において、四角モジュールD7は退避用モジュールとして構成されてもよい。また、真空処理装置130で成膜する膜は非磁性膜であるため当該真空処理装置130に前記アライメントモジュールは設けられていない。しかし、例えば五角モジュールC3〜C6のいずれかでウエハWに磁性膜を形成する場合、前記四角モジュールD3、D4を、アライメントモジュールとして構成し、磁性膜を形成する前にウエハWの向きを調整してもよい。この真空処理装置130では、互いに同じ処理を行う処理モジュールが2つ設けられている。従って、これらのモジュールのうち一のモジュールが使用不可になった場合、既述の各実施形態で説明したように、一のモジュールに搬送予定であったウエハWは、他の使用可能なモジュールに搬送して処理を行うことができる。