特許第6245411号(P6245411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6245411シロキサンモノマーおよびその重合体、該重合体を含有する組成物、電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245411
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】シロキサンモノマーおよびその重合体、該重合体を含有する組成物、電子素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20171204BHJP
   C08F 16/14 20060101ALI20171204BHJP
   C08F 12/06 20060101ALI20171204BHJP
   C08F 36/02 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171204BHJP
   C08G 77/20 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08F16/14
   C08F12/06
   C08F36/02
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   !C08G77/20
【請求項の数】2
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-529091(P2017-529091)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081840
(87)【国際公開番号】WO2017073650
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-212956(P2015-212956)
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄作
(72)【発明者】
【氏名】乙木 栄志
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−249933(JP,A)
【文献】 特開2007−238675(JP,A)
【文献】 特開2007−153914(JP,A)
【文献】 特開2007−137944(JP,A)
【文献】 特表2013−504682(JP,A)
【文献】 特表2003−516562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08F 6/00−246/00
C07F 7/08
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/46
H01L 51/50
C08G 77/00−77/62
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体材料、溶媒及び一般式(1)で表されるモノマー
【化1】
(一般式(1)中、nは1〜1000を表し、R及びRはエーテル結合を有してもよい炭化水素基を表し、Rは、ビニル基またはビニル基を有する有機基を表す(但し、該有機基は構造中にカルボニル基を有しない。
疎水性基が水素原子と結合してなる分子の水への溶解度(25℃、25%RH)が100mg/L以下となる、スチレン、アルキル置換スチレン、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の疎水性基を有するモノマー
を共重合してなる二元共重合体、とを含有する電子材料用組成物
【請求項2】
請求項記載の電子材料用組成物の乾燥有機薄膜を含有する有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンモノマーおよびその重合体、さらにその重合体を含有する組成物、電子材料組成物、および電子材料組成物を含有することを特徴とする電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス素子などの電子素子の研究が多岐にわたって、進められている。従来、これらの電子素子は真空成膜により作製されてきたが、近年は基板の大面積化や製品の低コスト化が求められているため、印刷による電子素子製造法が注目されている。
【0003】
この電子素子を材料の面から大別すると、低分子系材料と、高分子系材料に分類できる。
【0004】
低分子系電子材料に関しては、従来用いられてきた真空成膜に加え、近年、インクジェットやノズルジェット、フレキソ印刷、転写法等の種々の塗布方法を用いて電子材料含有層を成膜する技術の研究開発が行われている。一方、高分子系電子材料については、分子量が大きいため真空成膜に不向きなことから、低分子系材料と同様に既述の塗布方法が主に用いられている。
【0005】
塗布成膜で得られる半導体膜は、真空成膜に比べ平滑性が劣り、電子素子の特性を低下させることから、電子素子の平坦性に優れた半導体含有層を形成することができる有機半導体含有層形成用レベリング剤及びその使用方法、有機半導体含有層形成用組成物・インク、並びに、有機デバイスおよびその製造方法について検討されており、例えば、特許文献1では、特定の構造を有するシロキサン化合物と(メタ)アクリルポリマーまたはこれらの両方を含有する有機半導体含有層形成用レベリング剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−205830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発明によれば、レベリング効果として、得られる塗膜が一定の平坦性を有しうるが、高性能の有機発光素子を指向する観点からは、その平坦性が十分に確保できない。さらに、(メタ)アクリルポリマーは、電子素子において、カルボニル基が電荷のトラップサイトになるため電子素子の発光効率や寿命などの駆動安定性の低下が懸念される。その結果、得られる電子素子として所望の性能が得られないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、塗布成膜に使用される電子材料組成物・インクに添加することにより、得られる塗膜の平滑性(レベリング性)を改善するとともに、電子素子の駆動安定性を低下することのない、新規モノマーから得られる重合体、該重合体を含有する組成物、電子材料組成物、ならびに電子素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、本発明の新規モノマーから得られる重合体、該重合体を含有する組成物、電子材料組成物は、平滑な有機薄膜の作製が可能であり、これらの組成物を含有する電子素子は、駆動安定性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、新規モノマー、その重合体、該重合体を含有する組成物、電子材料組成物、および電子材料組成物を含有することを特徴とする電子素子に関する。
【0011】
一般式(1)で表されるモノマー。
【0012】
【化1】
【0013】
(一般式(1)中、nは1〜1000を表し、R及びR2はエーテル結合を有してもよい炭化水素基を表す。また、R3は、ビニル基、またはビニル基を有する有機基を表す。(但し、該有機基は構造中にカルボニル基を有しない。))
【0014】
また、少なくとも前記一般式(1)から選ばれるモノマーを重合してなる重合体。
【0015】
また、少なくとも前記一般式(1)から選ばれるモノマーおよび一般式(1)以外のモノマーを共重合してなる重合体。
【0016】
また、前記重合体を含有することを特徴とする組成物。
【0017】
また、前記重合体を含有することを特徴とする電子材料組成物。
【0018】
さらに、前記組成物および前記電子材料組成物を含有することを特徴とする電子素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、本発明の新規モノマーから得られる重合体を含有する組成物は、平滑な有機薄膜の作製が可能であり、これらの有機薄膜から得られる電子素子は、発光効率や寿命などの駆動安定性が改善されることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0021】
[シロキサンモノマー]
本発明のシロキサンモノマーは、下記一般式(1)で表される
【0022】
【化2】
【0023】
(一般式(1)中、nは1〜1000を表し、R及びR2はエーテル結合を有してもよい炭化水素基を表す。また、R3は、ビニル基、またはビニル基を有する有機基を表す。(但し、該有機基は構造中にカルボニル基を有しない。))
【0024】
としては、特に制限されないが、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルコキシアルキル基、C3〜C30シクロアルキル基、C4〜C30シクロアルコキシアルキル基、C6〜C20のアリール基、C6〜C20のアリールオキシ基が挙げられる。
【0025】
前記C1〜C10アルキル基としては、特に制限されないがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基等が挙げられる。
【0026】
前記C2〜C10アルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、ブトキシペンチル基、ペンチルオキシペンチル基等が挙げられる。
【0027】
前記C3〜C30シクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デシル基、アダマンチル基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数が3〜18の基である。
【0028】
前記C4〜C30シクロアルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピルオキシメチル基、シクロブチルオキシエチル基、シクロペンチルオキシプロピル基、シクロヘキシルオキシプロピル基、シクロヘプチルオキシプロピル基、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デシルオキシプロピル基、アダマンチルオキシプロピル基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数が3〜18の基である。
【0029】
前記C6〜C20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0030】
前記C6〜C20のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
この際、前記C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシアルキル基、C3〜C30シクロアルキル基、C3〜C30シクロアルコキシアルキル基、C6〜C20のアリール基、C6〜C20のアリールオキシ基を構成する水素原子の少なくとも1つは、前記記載ののC1〜C10アルキル基で置換されていてもよい。
【0032】
これらのうち、Rは、レベリング性を向上するためには、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、溶媒との相溶性を高めるためには、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましく、電子素子特性を改善するためには、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることがさらに好ましい。
【0033】
としては、特に制限されないが、C1〜C10アルキレン基、C2〜C10アルキレンオキシアルキレン基、C3〜C30シクロアルキレン基、C4〜C30シクロアルキレンオキシアルキレン基、C6〜C20のアリーレン基、C7〜C20のアリーレンオキシアルキレン基が挙げられる。
【0034】
前記C1〜C10アルキレン基としては、特に制限されないがメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、iso−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デシレン基等が挙げられる。
【0035】
前記C2〜C10アルキレンオキシアルキレン基としては、特に制限されないが、メチレンオキシメチレン基、エチレンオキシメチレン基、プロピレンオキシエチレン基、プロピレンオキシプロピレン基、プロピレンオキシブチレン基、ブチレンオキシブチレン基、ブチレンオキシペンチレン基、ペンチレンオキシペンチレン基等が挙げられる。
【0036】
前記C3〜C30シクロアルキレン基としては、特に制限されないが、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数が3〜10の基である。
【0037】
前記C4〜C30シクロアルキレンオキシアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピレンオキシエチレン基、シクロブチレンオキシプロピレン基、シクロペンチレンオキシプロピレン基、シクロヘキシレンオキシプロピレン基、シクロヘプチレンオキシプロピレン基等が挙げられ、好ましくは、炭素原子数が3〜10の基である。
【0038】
前記C6〜C20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
【0039】
前記C7〜C20のアリーレンオキシアルキレン基としては、フェニレンオキシプロピレン基、ナフチレンオキシプロピレン基、アントラセニレンオキシプロピレン基、ビフェニレンオキシプロピレン基等が挙げられる。
【0040】
この際、前記C1〜C10アルキレン基、C2〜C10アルキレンオキシアルキレン基、C3〜C30シクロアルキレン基、C4〜C30シクロアルキレンオキシアルキレン基、C6〜C20のアリーレン基、C7〜C20のアリーレンオキシアルキレン基を構成する水素原子の少なくとも1つは、前記記載のC1〜C10アルキル基で置換されていてもよい。
【0041】
なかでも、R2は、レベリング性を向上するためには、C2〜C10アルキレンオキシアルキレン基であることが好ましく、溶解性を向上するためには、メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、プロピレンオキシプロピレン基、プロピレンオキシブチレン基、ブチレンオキシブチレン基であることが特に好ましく、電子素子特性を改善するためには、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、プロピレンオキシプロピレン基であることが更に好ましい。
【0042】
は、ビニル基またはビニル基を有する有機基である。
【0043】
ビニル基を有する有機基としては、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、ブタジエニル基、2,4−ペンタジエニル基、3,5−ヘキサジエニル基、4,6−ヘプタジエニル基、5,7−オクタジエニル基等のビニル基を有する脂肪族炭化水素基類;ビニルオキシメチレン基、ビニルオキシエチレン基、ビニルオキシプロピレン基、ビニルオキシブチレン基等のビニルオキシアルキレン基類;スチリル基;スチリルメチレン基、スチリルエチレン基、スチリルプロピレン基、スチリルブチレン基等のビニル基を有するアラルキル基類;スチリルオキシメチレン基、スチリルオキシエチレン基、スチリルオキシプロピレン基、スチリルオキシブチレン基等のスチリルオキシアルキレン基類等が挙げられる。
【0044】
なかでも、重合性が優れることから、ビニル基、ビニル基を有する脂肪族炭化水素基、スチリル基、ビニル基を有するアラルキル基が好ましく、幅広い分子量の重合体の設計が容易であることから、ビニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、スチリル基、ビニル基を有するアラルキル基であることが特に好ましく、得られる重合体が電子素子の駆動安定性を改善することから、ビニル基、ブタジエニル基2,4−ペンタジエニル基、スチリル基、スチリルメチレン基であることが更に好ましい。
【0045】
一般式中、nは、1〜1000であり、電子材料組成物・インクから得られる塗膜の平滑性が優れることから3〜500であることが好ましく、電子素子の駆動安定性が向上することから、5〜200であることがより好ましい。
【0046】
本発明のシロキサンモノマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化3】
(上記化学式中、nは1〜1000の整数である。)
【0048】
[シロキサンモノマーの製造方法]
本発明のシロキサンモノマーの製造方法としては、特に制限されないが、水酸基を有するシロキサン化合物と、ハロゲン基を有するビニル化合物を塩基存在下で反応させる方法が挙げられる。
【0049】
【化4】
(上記化学式中、nは1〜1000の整数である。)
【0050】
ハロゲン基を有するビニル化合物としては、例えば、ビニルブロミド、ビニルクロリド等のハロゲン化ビニル化合物;アリルブロミド、アリルクロリド、ビニルエチレンブロミド、ビニルエチレンクロリド、ビニルプロピレンブロミド、ビニルプロピレンクロリド等のハロゲン化ビニルアルキレン化合物;4−ブロモ−1,3−ブタジエン、4−クロロ−1,3−ブタジエン等のハロゲン化ブタジエン化合物;5−ブロモ−1,3−ペンタジエン、5−クロロ−1,3−ペンタジエン、6−ブロモ−1,3−ヘキサジエン、6−クロロ−1,3−ヘキサジエン、7−ブロモ−1,3−ヘプタジエン、7−クロロ−1,3−ヘプタジエン等のハロゲン化アルキルジエン化合物;4−ブロモスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン化スチリル化合物;4−ブロモメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ブロモエチルスチレン、4−クロロエチルスチレン等のハロゲン化アルキレンスチリル化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
塩基としては、特に制限されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、等が挙げられる。
【0052】
上記反応において、材料の仕込み量には特に制限はないが、水酸基を有するシロキサン化合物に対してハロゲン基を有するビニル化合物を1〜5当量加えることが収率の観点から好ましい。また、塩基の仕込み量は、水酸基を有するシロキサンに対して1〜5当量加えることが収率の観点から好ましい。反応温度は10〜80℃、反応雰囲気は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、ヨウ化カリウム等の触媒を加えることもできる
【0053】
[シロキサンモノマーを重合してなる重合体]
本発明のシロキサンモノマーを重合してなる重合体は、一般式(1)で表されるシロキサンモノマーを単独重合してなる重合体であっても、一般式(1)で表されるシロキサンモノマーと一般式(1)以外のモノマーを共重合してなる重合体であっても構わない。
【0054】
一般式(1)以外のモノマーは、特に制限されることなく例えば、公知慣用の(メタ)アクリレートモノマー、スチリルモノマー、ビニルエーテルモノマー、アリルモノマー等を使用することができる。
【0055】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸―n―ブチル、(メタ)アクリル酸―t―ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル等のシクロアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸ベンゾイルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチルグリコール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ―3―フェノキシプロピル等のアリール(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0056】
スチリルモノマーとしては、特に制限されないが、スチレン;α−メチルスチレン、α―エチルスチレン、α―ブチルスチレンまたは、4−メチルスチレン等のアルキル置換スチレン類クロロスチレンなどのスチレンおよびスチレン誘導体等が挙げられる。
【0057】
ビニルエーテルモノマーとしては、特に制限されないが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘプチルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチルビニルエーテル、8−トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル、2−アダマンチルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、4−メチルフェニルビニルエーテル、4−トリフルオロメチルフェニルビニルエーテル、4−フルオロフェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、4−フルオロベンジルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル類;等が挙げられる
【0058】
アリルモノマーとしては、特に制限されないが、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;フェニルアリルエーテル等のアリールアリルエーテル類;酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミンが挙げられる。
【0059】
特にこれらの(メタ)アクリレートモノマー、スチリルモノマー、ビニルエーテルモノマー、アリルモノマーは、疎水性基を含むことが好ましい。本明細書において、「疎水性基」とは、疎水性基が水素原子と結合してなる分子の水への溶解度(25℃、25%RH)が100mg/L以下のものを意味する。
【0060】
前記疎水性基としては、特に制限されないが、C1〜C18アルキル基、C3〜C20シクロアルキル基、C6〜C30のアリール基が挙げられる。
【0061】
前記C1〜C18アルキル基としては、特に制限されないがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0062】
前記C3〜C20シクロアルキル基としては、特に制限されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0063】
前記C6〜C30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニル等が挙げられる。
【0064】
このような疎水性基を有するモノマーとしては、前記記載アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、シクロアルキル(メタ)アクリル酸エステル類、アリール(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、アルキル置換スチレン類、アルキルビニルエーテル類、シクロアルキルビニルエーテル類、アリールビニルエーテル類、アルキルアリルエーテル類、アリールアリルエーテル類が挙げられる。
【0065】
前記の疎水性基を有するモノマーの中でも、一般式(1)で表されるモノマーとの共重合性が良く、幅広い分子量の重合体を得ることができるため、前記記載アルキル(メタ)アクリル酸エステル類、シクロアルキル(メタ)アクリル酸エステル類、アリール(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、アルキル置換スチレン類、アルキルビニルエーテル類、シクロアルキルビニルエーテル類、アリールビニルエーテル類が好ましい。更に、得られる重合体のレベリング性の向上効果がより好適に得られる観点から、アリール(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、アルキル置換スチレン類、アリールビニルエーテル類などのアリール基を含む芳香族含有モノマーを用いることが好ましく、電子素子の駆動安定性の観点から、スチレン、アルキル置換スチレン類、アリールビニルエーテル類であることが更に好ましく、スチレン、アルキル置換スチレン類、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルの場合に特に本発明の効果が著しい。
【0066】
なお、上述のモノマーは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、平滑性の観点から、3,000〜40,000であることがより好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」の値は、実施例の測定方法により測定された値を採用するものとする。
【0068】
また、本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、500〜100,000であることが好ましく、平滑性の観点から、3,000〜40,000であることがより好ましい。なお、本明細書において、「数平均分子量(Mn)」の値は、実施例の測定方法により測定された値を採用するものとする。
【0069】
[重合体の製造方法]
【0070】
本発明の重合体を得るには、上述のモノマーと重合開始剤とを用いて、公知慣用の方法で重合(共重合)させれば良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。
【0071】
重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。
【0072】
ラジカル重合としては、反応条件が特に限定されるものではないが、例えば、モノマーとラジカル重合開始剤を用いて、溶媒中で重合することができる。
【0073】
ラジカル重合開始剤として一般的に知られるものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエイト、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物及び過酸化水素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
また、ラジカル重合開始剤の使用量は、特に制限されず、一般的にはモノマー100質量部に対して、0.001〜1質量部である。前述の好ましい重量平均分子量の範囲で本発明の重合体を得るためにはラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.005〜0.5質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがさらに好ましい。
【0075】
ラジカル重合に用いることができる溶媒として代表的なものを挙げれば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン等のケトン系溶媒;
【0076】
エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
【0077】
ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸−n−ブチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−nーブチル、酢酸−n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル系溶媒;
【0078】
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−1−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール等のアルコール系溶媒;
【0079】
トルエン、キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール1800、ス
ワゾール310、アイソパーE、アイソパーG、エクソンナフサ5号、エクソンナフサ6
号等の炭化水素系溶媒が挙げられる。
【0080】
これらの溶媒は単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0081】
ラジカル重合反応における溶媒の使用量は、特に制限されないが、モノマーの仕込み量100質量部に対して、攪拌性の観点から、0〜3000質量部であることが好ましく、反応性の観点から、10〜1000質量部であることがより好ましく、分子量制御の観点から、10〜500質量部であることがさらに好ましい。
【0082】
アニオン重合としては、反応条件が特に限定されるものではないが、例えば、モノマーとアニオン重合開始剤を用いて、溶媒中で重合することができる。
【0083】
アニオン重合開始剤としては一般的に知られるものが使用でき、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、イソプロピルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウムフェニルリチウム、ベンジルリチウム、ヘキシルリチウム、ブチルナトリウム、ブチルカリウム等の有機アルカリ金属; メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ジブチルマグネシウム等の有機アルカリ土類金属;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、エチルブチル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、メチルビスフェノキシアルミニウム、イソプロピルビスフェノキシアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)メチルアルミニウム等の有機アルミニウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
また、アニオン重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、モノマー100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましく、0.01〜0.3質量部であることがさらに好ましい。
【0085】
アニオン重合に用いることができる溶媒としては、上述のものが上げられる。
【0086】
アニオン重合反応における溶媒の使用量は、特に制限されないが、モノマーの仕込み量100質量部に対して、攪拌性の観点から、0〜3000質量部であることが好ましく、反応性の観点から、10〜1000質量部であることがより好ましく、分子量制御の観点から、10〜500質量部であることがさらに好ましい。
【0087】
カチオン重合としては、反応条件が特に限定されるものではないが、例えば、モノマーとカチオン重合開始剤を用いて、溶媒中で重合することができる。
【0088】
カチオン重合開始剤としては一般的に知られるものが使用でき、例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸などのプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化第二スズ、塩化第二鉄などのルイス酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0089】
また、カチオン重合開始剤の使用量は、特に制限されず、一般的には、モノマー100質量部に対して、0.001〜1質量部である。前述の好ましい重量平均分子量の範囲で本発明の重合体を得るためには、カチオン重合開始剤の使用量はモノマー100質量部に対して、0.005〜0.5質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがさらに好ましい。
【0090】
カチオン重合に用いることができる溶媒としては、上述のラジカル重合に使用できる溶媒が挙げられる。
【0091】
カチオン重合反応における溶媒の使用量は、特に制限されないが、モノマーの仕込み量100質量部に対して、攪拌性の観点から、0〜3000質量部であることが好ましく、反応性の観点から、10〜51000質量部であることがより好ましく、分子量制御の観点から、10〜500質量部であることがさらに好ましい。
【0092】
なお、上述のラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合は、リビング重合でもよく、例えば、「季刊 化学総説 No.18,1993 精密重合 日本化学会編(学会出版センター)」に記載の方法を用いることができる。
【0093】
[組成物]
本発明の重合体を含有する組成物は、成膜後のレベリング性を向上する機能を有することから、熱や光による硬化組成物、インク組成物、コーティング組成物、電子材料組成物などが挙げられるが、これらに限定されるのもではない。なかでも、本発明の重合体は、電子素子の電気特性を低下させないことから電子材料組成物に有用である。
【0094】
[電子材料組成物]
本発明の重合体を含有する電子材料組成物は、有機半導体材料、本発明の重合体(レベリング剤)、および溶媒を含む。なお、前記電子材料組成物には、その他、必要に応じて、界面活性剤等が含まれていてもよい。
【0095】
有機半導体材料の含有量は、電子材料組成物全量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、電気特性の観点から、0.01〜5質量%であることがより好ましい。
【0096】
本発明の重合体の含有量は、電子材料組成物全量に対して、0.001〜5.0質量%であることが好ましく、レベリング性の観点から、0.001〜1.0質量%であることがより好ましい。
【0097】
溶媒の含有量は、電子材料組成物全量に対して、90〜99質量%であることが好ましく、成膜性の観点から、95〜99質量%がより好ましい。
【0098】
(有機半導体材料)
有機半導体材料としては、有機TFT材料、有機太陽電池材料、有機EL材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
有機TFT材料としては、有機TFT素子を構成する層に使用される材料であれば特に制限されないが、例えば、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン等の、置換基のついてもよいアセン類、例として1,4−ビススチリルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン(4MSB)、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ポリフェニレンビニレン等C6H5−CH=CH−C6H5で表されるスチリル構造を有する化合物、このような化合物のオリゴマーやポリマー、α−4T、α−5T、α−6T、α−7T、α−8Tの誘導体等の置換基を有してもよいチオフェンオリゴマー、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル−コ−ビチオフェン)等のチオフェン系高分子等のチオフェン系高分子、ビスベンゾチオフェン誘導体、α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン)、ジチエノチオフェン−チオフェンのコオリゴマー、ペンタチエノアセン等の縮合オリゴチオフェン特にチエノベンゼン骨格又はジチエノベンゼン骨格を有する化合物、[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン誘導体、また、セレノフェンオリゴマー、無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉛フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、白金ポルフィリン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン等のポルフィリン類、テトラチアフルバレン(TTF)及びその誘導体、ルブレン及びその誘導体等、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン(TCNNQ)らのキノイドオリゴマー、C60、C70、PCBM等のフラーレン類、N,N’−ジフェニル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(C8−PTCDI)、NTCDA、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシルジイミド(NTCDI)等のテトラカルボン酸類等が挙げられる。
【0100】
有機太陽電池材料としては、有機太陽電池素子を構成する層に使用される材料であれば特に制限されないが、例えば、C60及びC70のフラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF3基含有ポリマー、それらの−CF3置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。
【0101】
有機EL材料としては、有機EL素子を構成する層に使用される材料であれば特に制限されない。一実施形態において、電子材料組成物が含有しうる有機EL材料としては、発光層に使用される発光材料、正孔注入層に使用される正孔注入材料、正孔輸送層に使用される正孔輸送材料、電子輸送層に使用される電子輸送材料、が挙げられる。
【0102】
(発光材料)
発光材料は、ホスト材料およびドーパント材料を含む。
【0103】
ホスト材料とドーパント材料の組成比は、これに限定されるものではないが、ホスト100質量部に対して、ドーパントは1〜50質量部が好ましく、発光効率の観点から、5〜20質量部が更に好ましい。
【0104】
前記ホスト材料は、高分子ホスト材料および低分子ホスト材料に分類される。なお、本明細書において、「低分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000以下のものを意味する。一方、本明細書において、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が5,000超のものを意味する。この際、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用するものとする。
【0105】
高分子ホスト材料としては、特に制限されないが、ポリ(9−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン(PF)、ポリフェニレンビニレン(PPV)、およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0106】
高分子ホスト材料の重量平均分子量(Mw)は、5,000超5,000,000以下であることが好ましく、成膜性の観点から、5,000超1,000,000以下であることがより好ましい。
【0107】
低分子ホスト材料としては、特に制限されないが、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP)、N,N’−ジカルバゾリル−1,4−ジメチルベンゼン(DCB)、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)、3,5−ビス(9−カルバゾリル)テトラフェニルシラン(SimCP)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、4,4‘−ジ(ジ(トリフェニルシリル)−ビフェニル(BSB)、9-(4-tert -ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾール(CzSi)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH3)などのシラン誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)などの金属錯体、2,7−ビス(ジフェニルホスフィンオキシド)−9,9−ジメチルフルオレセン(P06)などのホスフィンオキシド誘導体、1,3,5−トリス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(TDAPB)などのアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などの複素環化合物などが挙げられる。
【0108】
低分子ホスト材料の重量平均分子量(Mw)は、100〜5,000であることが好ましく、成膜性の観点から、300〜5,000であることがより好ましい。
【0109】
上述のホスト材料のうち、ホスト材料としては、低分子ホスト材料を用いることが好ましく、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などの複素環化合物を用いることがより好ましく、4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾール、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などの複素環化合物を用いることがさらに好ましい。
【0110】
上述のホスト材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
前記ドーパント材料は、通常、高分子ドーパント材料および低分子ドーパント材料に分類される。
【0112】
高分子ドーパント材料としては、特に制限されないが、ポリフェニレンビニレン(PPV)、シアノポリフェニレンビニレン(CN−PPV)、ポリ(フルオレニレンエチニレン)(PFE)、ポリフルオレン(PFO)、ポリチオフェンポリマー、ポリピリジン、およびこれらのモノマー単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0113】
高分子ドーパント材料の重量平均分子量(Mw)は、5,000超5,000,000以下であることが好ましく、発光効率の観点から、5,000超1,000,000以下であることがより好ましい。
【0114】
低分子ドーパント材料としては、特に制限されないが、蛍光発光材料、燐光発光材料等が挙げられる。
【0115】
前記蛍光発光材料としては、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン、キナクリドン、クマリン、Al(CNO)等のアルミニウム錯体等、ルブレン、ペリミドン、ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン(DCM)、ベンゾピラン、ローダミン、ベンゾチオキサンテン、アザベンゾチオキサンテン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0116】
前記燐光発光材料としては、周期表第7族〜第11族の中心金属と、前記中心金属に配位した芳香族系配位子とを含む錯体が挙げられる。
【0117】
前記周期表第7族〜第11族の中心金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、白金、銀、銅等が挙げられる。これらのうち、発光効率の観点から、中心金属は、イリジウムであることが好ましい。
【0118】
前記配位子としては、フェニルピリジン、p−トリルピリジン、チエニルピリジン、ジフルオロフェニルピリジン、フェニルイソキノリン、フルオレノピリジン、フルオレノキノリン、アセチルアセトン、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、配位子は、フェニルピリジン、p−トリルピリジン、およびこれらの誘導体であることが好ましく、成膜性の観点から、p−トリルピリジンおよびその誘導体であることがより好ましい。
【0119】
具体的な燐光発光材料としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy))、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]ルテニウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]パラジウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]白金、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]オスミウム、トリス[2−(p−トリル)ピリジン]レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0120】
上述のうち、ドーパント材料は、低分子ドーパント材料であることが好ましく、発光効率の観点から、燐光発光材料であることが好ましい。
【0121】
低分子ドーパント材料の重量平均分子量(Mw)は、100〜5,000であることが好ましく、100〜3,000であることがより好ましい。
【0122】
上述のドーパント材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
上述のうち、発光材料としては、より高い発光効率が得られうる観点から、低分子発光材料を用いることが好ましく、低分子ホスト材料および低分子ドーパント材料を用いることがより好ましい。
【0124】
(正孔注入材料)
正孔注入材料としては、特に制限されないが、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;4,4’,4”-トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミン等のトリフェニルアミン誘導体;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン等のシアノ化合物;酸化バナジウム、酸化モリブデン等の酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン(エメラルディン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)、ポリピロール等の高分子が挙げられる。これらのうち、正孔注入材料は、成膜性の観点から、高分子であることが好ましい。
【0125】
上述の正孔注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
(正孔輸送材料)
正孔輸送材料としては、特に制限されないが、TPD(N,N'−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン)、α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)、m−MTDATA(4、4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等の低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;下記化学式HT−2で表されるトリフェニルアミン誘導体に置換基を導入して重合した高分子化合物等が挙げられる。これらのうち、正孔輸送材料は、正孔輸送性の観点から、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体に置換基を導入して重合した化5で表されるHT−2の如き高分子化合物であることが好ましい。
【0127】
上述の正孔輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
【化5】
【0129】
(電子輸送材料)
【0130】
電子輸送材料としては、特に制限されないが、トリス(8−キノリラート)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム(Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(Znq)等のキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体;ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラート]亜鉛(Zn(BOX)2)等のベンズオキサゾリン骨格を有する金属錯体;ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラート]亜鉛(Zn(BTZ)2)ベンゾチアゾリン骨格を有する金属錯体;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]カルバゾール(CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(mDBTBIm−II)等のポリアゾール誘導体;化6で表されるET−1の如きベンゾイミダゾール誘導体;キノリン誘導体;ペリレン誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;トリアジン誘導体;キノキサリン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられる。これらのうち、電子輸送材料は、電子輸送性の観点から、ベンゾイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体であることが好ましい。
【0131】
【化6】
【0132】
上述の電子輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0133】
(溶媒)
溶媒としては、特に制限されず、適宜公知のものが使用できる。具体的には、芳香族系溶媒、アルカン系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、他の溶媒等が挙げられる。
【0134】
前記芳香族系溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、メシチレン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、フェネトール、メトキシトルエン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール等の単環式芳香族溶媒;シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、ナフタレン、メチルナフタレン等の縮合環式芳香族溶媒;メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル等のエーテル系芳香族溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル等のエステル系芳香族溶媒等が挙げられる。
【0135】
前記アルカン系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0136】
前記エーテル系溶媒としては、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0137】
前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0138】
前記エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0139】
前記アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0140】
前記他の溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
【0141】
これらのうち、溶媒としては、有機半導体材料の溶解性の観点から、芳香族系溶媒であることが好ましく、レベリング性の観点から、縮合環式芳香族溶媒、エーテル系芳香族溶媒、およびエステル系芳香族溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、成膜性の観点から、縮合環式芳香族溶媒および/またはエーテル系芳香族溶媒を用いることがさらに好ましい。
【0142】
なお、上述の溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
本形態に係る電子材料組成物を塗布して塗膜を形成すると、レベリング剤となる本発明の重合体はシロキサン構造を有することから塗膜表面に配向して表面張力を低下させる。そして、かような状態で得られた塗膜を乾燥することで、乾燥に基づくうねりの発生を防止することができ、高度に平坦性を実現した層、ひいては高い性能を有する有機機能層を得ることができる。
【0144】
また、一実施形態において、電子材料組成物を有機EL素子の発光層の形成に使用する場合には、有機EL素子の駆動安定性を向上させる機能をも発現させうる。このような機能は、本発明の重合体が有するシロキサン構造中に、キャリアのトラップサイトとなるカルボニル基を持たないためであると考えられる。
【0145】
より詳細に説明すると、一実施形態において、発光材料はホスト材料およびドーパント材料を含む。そして、発光層において、ホスト材料により正孔および/または電子が輸送され、ドーパント材料が輸送された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用することで、発光層は発光する。したがって、発光層中で正孔と電子の輸送が効率よく起これば、効率的な発光が可能となり、駆動安定性が向上する。
【0146】
電子材料組成物に含有される従来のレベリング剤は、インク組成物を塗布して得られた塗膜の表面に配向して表面張力を低下させ、平滑な塗膜の作製が可能であるが、レベリング剤が有するシロキサン構造中に、キャリアのトラップサイトとなる、電荷が分極しうる官能基を持つため、電荷の輸送が阻害され、素子の駆動が不安定になりうる。すなわち、従来のレベリング剤を使用すると、うねりの防止効果は一定程度得られるものの、その代償として駆動安定性が低下しうるのである。
【0147】
これに対し、レベリング剤のシロキサン構造中に電荷が分極しうる官能基を含まないと、電荷輸送の阻害を抑制することができる。その結果、発光層中で電荷が効率よく輸送され、素子の駆動安定性が向上しうる。
【0148】
[電子素子]
次に、本発明の電子素子について説明する。本発明の重合体を含有する組成物または電子材料組成物をいかなる形態でも含有している電子素子である。電子素子の具体例として、太陽電池や受光素子などの光電変換素子、電界効果型トランジスタや静電誘導型トランジスタやバイポーラトランジスタ等のトランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略する)、温度センサー、ガスセンサー、湿度センサー、放射線センサーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
一例として、以下、有機EL素子について説明する。
【0150】
<有機EL素子>
本発明の一形態によれば、陽極、発光層、および陰極を含む有機EL素子が提供される。この際、前記発光層が、電子材料組成物から形成されることを特徴とする。
【0151】
なお、前記有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層等の他の層を1以上含んでいてもよい。また、封止部材等の公知のものを含んでいてもよい。
【0152】
また、別の一実施形態によれば、陽極、発光層、および陰極と、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層と、を含む有機EL素子が提供される。この際、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、および電子輸送層からなる群から選択される少なくとも1つの層が、本発明の重合体(レベリング剤)を含むことを特徴とする。
【0153】
すなわち、有機EL素子は、陽極、発光層、および陰極を最小構成単位とし、さらに、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの層を任意の構成単位として含む場合がある。この場合、レベリング剤は、発光層のみに含まれていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、および電子輸送性からなる群から選択される少なくとも1つの層にのみ(例えば、正孔輸送層のみ、正孔輸送層および電子輸送層)に含まれていてもよいし、発光層、並びに正孔注入層、正孔輸送層、および電子輸送層の少なくとも1つの層に含まれていてもよい。このうち、発光層および/または正孔輸送層がレベリング剤を含むことが好ましく、発光層がレベリング剤を含むことがより好ましい。
【0154】
以下、有機EL素子の各構成について詳細に説明する。
【0155】
[陽極]
陽極としては、特に制限されないが、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等が用いられうる。これらの材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
陽極の膜厚としては、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。
【0157】
陽極は、蒸着やスパッタリング等の方法により形成されうる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法によりパターン形成を行ってもよい。
【0158】
[正孔注入層]
正孔注入層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、陽極から正孔を取り入れる機能を有する。通常、陽極から取り入れた正孔は、正孔輸送層または発光層に輸送される。
【0159】
正孔注入層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0160】
正孔注入層の膜厚としては、特に制限されないが、0.1nm〜5μmであることが好ましい。
【0161】
正孔注入層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0162】
正孔注入層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0163】
正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0164】
また、正孔注入層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0165】
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、正孔を効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層は、正孔の輸送を防止する機能を有しうる。正孔輸送層は、通常、陽極または正孔注入層から正孔を取り入れ、発光層に正孔を輸送する。
【0166】
正孔輸送層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0167】
正孔輸送層の膜厚としては、特に制限されないが、1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることがより好ましく、10〜500nmであることがさらに好ましい。
【0168】
正孔輸送層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0169】
正孔輸送層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0170】
正孔輸送層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0171】
また、正孔輸送層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0172】
[発光層]
発光層は、発光層に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。
【0173】
発光層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0174】
発光層の膜厚としては、特に制限されないが、2〜100nmであることが好ましく、2〜20nmであることがより好ましい。
【0175】
発光層は湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0176】
発光層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0177】
また、発光層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0178】
[電子輸送層]
電子輸送層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、電子を効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層は、電子の輸送を防止する機能を有しうる。電子輸送層は、通常、陰極または電子注入層から電子を取り入れ、発光層に電子を輸送する。
【0179】
電子輸送層に用いられうる材料は、上述したものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0180】
電子輸送層の膜厚としては、特に制限されないが、5nm〜5μmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましい。
【0181】
電子輸送層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0182】
電子輸送層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0183】
電子輸送層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0184】
また、電子輸送層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0185】
[電子注入層]
電子注入層は、有機発光素子において任意の構成要素であり、陰極から電子を取り入れる機能を有する。通常、陰極から取り入れた電子は、電子輸送層または発光層に輸送される。
【0186】
電子注入材料としては、特に制限されないが、リチウム、カルシウム等のアルカリ金属;ストロンチウム、アルミニウム等の金属;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム等のアルカリ金属塩;8−ヒドロキシキノリラートリチウム等のアルカリ金属化合物;フッ化マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;酸化アルミニウム等の酸化物等が挙げられる。これらのうち、電子注入材料は、アルカリ金属、アルカリ金属塩、アルカリ金属化合物であることが好ましく、アルカリ金属塩、アルカリ金属化合物であることがより好ましい。
【0187】
上述の電子注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0188】
電子注入層の膜厚としては、特に制限されないが、0.1nm〜5μmであることが好ましい。
【0189】
電子注入層は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
【0190】
電子注入層は、湿式成膜法および乾式成膜法により形成することができる。
【0191】
電子注入層を湿式成膜法で形成する場合には、通常、上述の有機発光素子用インク組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥する工程を含む。この際、塗布の方式としては、特に制限されないが、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ノズルプリント印刷法等が挙げられる。
【0192】
また、電子注入層を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スピンコート法等が適用されうる。
【0193】
[陰極]
陰極としては、特に制限されないが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0194】
陰極は、通常、蒸着やスパッタリング等の方法により形成されうる。
【0195】
陰極の膜厚としては、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。
【0196】
一実施形態において、上述の電子材料組成物を用いて形成された層を含む有機EL素子は、形成される層のうねりを好適に防止することができる。これにより、得られる有機EL素子は、輝度ムラを防止できる等の高い性能を有する。
【0197】
また、別の一実施形態において、上述の電子材料組成物を用いて発光層を形成する場合には、得られる有機EL素子は、高い駆動安定性を実現することができる。
【実施例】
【0198】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0199】
<シロキサンモノマーの合成>
[実施例1]
100gのサイラプレーンFM−0411(JNC株式会社製)と16.8gのカリウム−tert−ブトキシドを100gのテトラヒドロフラン(THF)が挿入されたアルゴンガスで置換した500mLの三口フラスコに投入し、室温で1時間攪拌した。そこに、11.8gの5−ブロモ−1,3−ペンタジエンを滴下し、室温で18時間攪拌した。その後、THFを減圧留去し、トルエンで抽出、水で3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、本発明のシロキサンモノマーaを得た。収量は18gであった。
【0200】
シロキサンモノマーaの構造を以下に示す。
【0201】
【化7】
【0202】
[実施例2]
5−ブロモ−1,3−ペンタジエンの代わりに12.2gの4−(クロロメチル)スチレンを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で、本発明のシロキサンモノマーbを合成した。収量は12gであった。
【0203】
シロキサンモノマーbの構造を以下に示す。
【0204】
【化8】
【0205】
<重合体の合成>
[実施例3]
700mgのスチレンと672mgの実施例1で得たシロキサンモノマーa、27.6mgのパーブチルZ(日本油脂株式会社製)、3.3gのシクロヘキサノンを10mLの三口フラスコに入れ、窒素ガス封入下、110℃で30時間攪拌した。得られた反応液をメタノールに滴下し、重合体を沈殿させた後、ろ取、乾燥させることにより、本発明の重合体Aを1.3g得た。
【0206】
得られた重合体Aの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ7,900および20,000であった。なお、数平均分子量および重量平均分子量は、高速GPC装置(東ソー株式会社製)を用いてポリスチレンを標準物質として測定した。
【0207】
[実施例4]
シロキサンモノマーaの代わりに実施例2で得たシロキサンモノマーbを用いたことを除いては、実施例3と同様の方法で、本発明の重合体Bを合成した。
【0208】
得られた重合体Bの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ8,100および21,000であった。
【0209】
[実施例5]
スチレンの代わりにベンジルビニルエーテルを用いたことを除いては、実施例4と同様の方法で、本発明の重合体Cを合成した。
【0210】
得られた重合体Cの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ8,500および22,000であった。
【0211】
[合成例1]
シロキサンモノマーAの代わりにFM−0711を用いたことを除いては、実施例3と同様の方法で、重合体Dを合成した。
【0212】
得られた重合体Dの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定したところ、それぞれ9,500および24,000であった。
【0213】
FM−0711の構造を以下に示す。
【0214】
【化9】
【0215】

<ホスト材料の合成>
【0216】
[合成例2]中間体1の合成
【0217】
【化10】
【0218】
250mL四つ口フラスコに1,2,3,4−テトラヒドロカルバゾール(12g,72mmol)、活性炭(12g)、1,2−ジクロロベンゼン120mLを順次加え、空気を500mL/分で加えながら150℃で15時間反応液を攪拌した。室温まで反応液を冷却した後、反応液をろ過、有機溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィーにて精製した。有機溶媒を減圧除去した後、黄色固体(中間体1)3.2g(収率:10%)を得た。
【0219】
[合成例3]9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールの合成
【0220】
【化11】
【0221】
アルゴン雰囲気下、200mL三つ口フラスコに中間体1(0.836g, 2.52mmol)、1−ブロモ4−t−ブチルベンゼン(1.287g, 6.04mmol)、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム(0.130g, 0.13mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン(0.076g, 0.38mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド(0.725g, 7.55mmol)、トルエン50mLを順次加え、8時間加熱還流した。室温まで反応液を冷却した後、水を加えて分液ロートにて有機層を回収した。有機溶媒を減圧除去後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、白色固体(化合物6)0.9g(収率60%)を得た。
【0222】
<電子材料組成物の製造>
実施例3〜5で得られた本発明の重合体A〜C、並びに合成例1で得られた重合体Dを使用し、有機EL材料として発光材料を用いた電子材料組成物を製造した。
【0223】
[実施例6]
実施例3で合成した重合体A 0.001gを溶媒であるテトラリン9.9gに溶解させた。得られた溶液に、0.04gのトリス[2−(p−トリル)ピリジン]イリジウム(Ir(mppy))(Lumtec社製)と、合成例3で合成した0.26gの9,9’−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ビスカルバゾールを添加し、60℃で加熱することで、電子材料組成物を製造した。
【0224】
[実施例7]
重合体Aを実施例4で合成した重合体Bに変更したことを除いては、実施例6と同様の方法で電子材料組成物を製造した。
【0225】
[実施例8]
重合体Aを実施例5で合成した重合体Cに変更したことを除いては、実施例6と同様の方法で電子材料組成物を製造した。
【0226】
[比較例]
重合体Aを合成例1で得られた重合体Dに変更したことを除いては、実施例6と同様の方法で電子材料組成物を製造した。
【0227】
<評価>
実施例6〜8および比較例で製造した電子材料組成物について以下の各種評価を行った。
【0228】
[平滑性評価]
インジウムスズ酸化物(ITO)基板上に、0.1μLの電子材料組成物を滴下し、25℃、1Torrで減圧乾燥した。得られた有機薄膜の凸部および凹部の差(凹凸差)を、光干渉表面形状計測装置(株式会社菱化システム製)を用いて測定し、以下の基準に従って評価した。なお、前記凸部とは有機薄膜表面のうち水平面を基準として最も高いものを意味し、前記凹部とは有機薄膜表面のうち水平面を基準として最も低いものを意味する。
【0229】
[発光効率評価]
有機EL素子を作製し、得らえた有機発光素子についての発光効率を評価した。
【0230】
有機EL素子は、以下のように作製した。
【0231】
すなわち、洗浄したITO基板にUV/Oを照射し、スピンコートによりポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)を45nm成膜し、大気中で180℃、15分間加熱し、正孔注入層を形成した。次いで、下記式で表されるHT−2の0.3重量%キシレン溶液を、正孔注入層上にスピンコートにより10nm成膜し、窒素雰囲気下にて200℃で30分間乾燥させることで、正孔輸送層を形成した。次に、実施例6〜8および比較例で得られた電子材料組成物を、正孔輸送層上にスピンコートにより30nm成膜し、25℃、1Torrで3分間減圧乾燥後、窒素雰囲気下にて110℃で15分間乾燥させることで、発光層を形成した。そして、5×10−3Paの真空条件下で、電子輸送層として下記式で表されるET−1を45nm、電子注入層としてフッ化リチウムを0.5nm、陰極としてアルミニウムを100nm順次成膜した。最後に、グローブボックスに基板を搬送し、ガラス基板にて封止することで有機発光素子を作製した。
【0232】
【化12】
【0233】
[発光効率]
作製した有機EL素子を用いて、発光効率を評価した。
【0234】
より詳細には、作製した有機EL素子に対し、外部電源に接続して、有機EL素子からの発光をBM−9(株式会社トプコン製)にて測光した。この際、電流値から10mA/cmのときの発光効率を算出した。
【0235】
[寿命]
作製した有機EL素子を用いて、寿命を評価した。
【0236】
より詳細には、作製した有機EL素子に対し、10mA/cmの電流を印加し、フォトダイオード式寿命測定装置(システム技研株式会社製)にて輝度半減寿命を測定した。
【0237】
得られた結果を下記表1に示す。
【0238】
【表1】
【0239】
上記表1の結果からも明らかなように、比較例と対比して、実施例6〜8の電子材料組成物を用いて塗膜を形成した場合には凹凸差が少ない膜が得られ、素子寿命が向上した。すなわち、本発明の電子材料組成物を用いることで、得られる塗膜の平滑性が改善され、優れた素子の駆動安定性を示すことが分かる。