(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体側から像側へ向かって、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置してなり、
短焦点端から長焦点端への変倍に伴って、前記第1レンズ群は固定とし、前記第2レンズ群は像側に移動し、前記第3レンズ群は物体側に移動し、前記第4レンズ群は移動するズームレンズにおいて、
前記第4レンズ群でフォーカシングを行い、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間に開口絞りを配設し、
前記第3レンズ群は、正レンズと負レンズの接合レンズを含み、前記接合レンズの接合面に回折光学素子の回折面を有し、前記第1レンズ群は正レンズを有し、
当該正レンズを構成する材料の屈折率をnd、当該正レンズを構成する材料のアッベ数をνd、そして当該正レンズを構成する材料の部分分散比をPg,Fとし、且つ
前記部分分散比Pg,Fが、
前記正レンズを構成する材料のF線、C線およびg線に対する屈折率を、それぞれnF、nCおよびngとして、
Pg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
であらわされるとき、
条件式:
〔1〕 1.45<nd<1.65
〔2〕 60.0<νd<95.0
〔3〕 0.005<Pg,F−(−0.001802×νd+0.6483)<0.050
を満足することを特徴とするズームレンズ。
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2、前記第3レンズ群の焦点距離をf3、前記第4レンズ群の焦点距離をf4とし、長焦点端での全系の焦点距離をftとして、
以下の条件式:
〔5〕 0.70<f1/ft<0.90
〔6〕 −0.25<f2/ft<−0.05
〔7〕 0.35<f3/ft<0.55
〔8〕 0.20<f4/ft<0.40
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
短焦点端における全系の焦点距離をfw、長焦点端における全系の焦点距離をft、短焦点端における前記第3レンズ群と前記第4レンズ群の間隔をD3_4w、長焦点端における前記第3レンズ群と前記第4レンズ群の間隔をD3_4tとして、
以下の条件式:
〔9〕 0.5<D3_4w/fw<0.7
〔10〕 0.05<D3_4t/ft<0.25
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
前記第2レンズ群の短焦点端での横倍率をb2w、前記第2レンズ群の長焦点端での横倍率をb2t、短焦点端における全系の焦点距離をfw、長焦点端における全系の焦点距離ftとして、
以下の条件式:
〔11〕 0.4<(b2t/b2w)/(ft/fw)<0.6
を満足することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に基づき、図面を参照して本発明に係るズームレンズ、カメラおよび携帯情報端末装置を詳細に説明する。
具体的な実施例について説明する前に、先ず、本発明の原理的な実施の形態について説明する。
本発明は、物体側より順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群を配置してなる。いわば、正−負−正−正の4レンズ群で構成されるズームレンズは、第2レンズ群が主要な変倍作用を負担する、いわゆるバリエータとして構成される。
短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群は固定し、第2レンズ群は像側に移動し、第3レンズ群は物体側に移動し、第4レンズ群が移動することにより、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔は大きくなり、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔は小さくなるズームレンズであって、さらに、それぞれ以下のような特徴を有するものである。
第4レンズ群でフォーカシングを行い、第2レンズ群と第3レンズ群の間に開口絞りを配設する。
また、近赤外の波長域の色収差を補正するために、回折面を用いることが望ましい。第1レンズ群に回折面を用いると、長焦点端軸上色収差の補正に非常に有効であるが、第1レンズ群は様々な入射角の光線が回折面に入射するため、フレアが発生しやすい。そのため、第1レンズ群に回折面を用いるより、第3レンズ群に回折面を用いる方が望ましい。
即ち、正レンズと負レンズの接合レンズを含む第3レンズ群の当該接合レンズの接合面に回折光学素子の回折面を用いるのが望ましい。
【0009】
第3レンズ群は、ズーム全域において、同程度の量の軸上色収差を補正することができる。長焦点端の軸上色収差が課題となりやすいが、短焦点端のFナンバが小さいズームレンズにおいては、短焦点端の軸上色収差を十分に補正することが必要であり、回折面による効果を望むことができる。
また、長焦点端の軸上色収差を補正するためには、第1レンズ群に以下の条件式〔1〕、〔2〕、〔3〕を満足する正レンズを有することが望ましい(請求項1に対応する)。
〔1〕 1.45<n
d<1.65
〔2〕 60.0<ν
d<95.0
〔3〕 0.005<P
g,F−(−0.001802×ν
d+0.6483)<0.050
ただし、n
dは前記第1レンズ群に含まれる正レンズの屈折率、ν
dは前記第1レンズ群に含まれる正レンズのアッベ数、P
g,Fは前記第1レンズ群に含まれる正レンズの部分分散比を表す。
ここで、P
g,F=(n
g−n
F)/(n
F−n
C)であり、n
g、n
F、n
Cはそれぞれ、前記正レンズのg線、F線、C線に対する屈折率である。
【0010】
上記条件式〔1〕、〔2〕、〔3〕を満足することにより、長焦点端の軸上色収差を十分に補正することができる。
上記条件式〔1〕の下限値を下回ると、単色収差の補正が不十分となり、条件式〔2〕の下限値を下回ると色収差の補正が不十分となり、条件式〔3〕の下限値を下回ると色収差の二次スペクトルの補正が不十分となる。一方、全ての上記条件式〔1〕、〔2〕、〔3〕について上限を上回るような光学材料は、存在しないか、存在したとしても非常に特殊かつ高価であり、現実的でない。
また、第4レンズ群でフォーカスすることにより、比較的小さいレンズ群でフォーカスすることができ、小型化、軽量化、省エネにつながる。また、フォーカシング移動量も小さくすることができ、延いては合焦時間の短縮にもつながり、好都合である。
さらに高性能にするためには、以下の条件式〔4〕を満足することが望ましい(請求項2に対応する)。
〔4〕 10<f3DOE/ft<50
ただし、f3DOEは第3レンズ群が有する回折面の焦点距離であり、ftは長焦点端の全系の焦点距離である。
【0011】
回折面の焦点距離fは、f=−1/(2×C2)で表される。ここで、C2は、位相関数の2次項の係数である。
条件式〔4〕の上限値を上回ると、回折面の焦点距離が長くなりすぎ、回折面の効果が得られず、近赤外の色収差を十分に補正することが困難になる。また、条件式〔4〕の下限値を下回ると、回折面の焦点距離が短くなりすぎ,回折面の効果が過剰になりすぎて、色収差を十分に補正することが困難になったり、回折面の輪帯が多くなりすぎ、フレアの増大につながる。
望ましくは、以下の条件式〔4´〕を満足することが望ましい。
〔4´〕 400<f3DOE/fw<800
ただし、fwは短焦点端の焦点距離であり、f3DOEは、第3レンズ群が有する回折面の焦点距離である。
より望ましくは、以下の条件式〔4´´〕を満足することが望ましい。
〔4´´〕 40<f3DOE/f3<100
ただし、f3は、第3レンズ群の焦点距離であり、f3DOEは、第3レンズ群が有する回折面の焦点距離である。
また、第1レンズ群の少なくとも2つの正レンズが上記条件式〔1〕、〔2〕、〔3〕を満足することが望ましい(請求項3に対応する)。
【0012】
このように構成することにより、長焦点端の軸上色収差を分担して補正することができ、十分に軸上色収差を補正することができる。
短焦点端から長焦点端への変倍に際して、開口絞りは、像面に対して固定であることが望ましい(請求項4に対応する)。そのことにより、メカ構成の簡易化につながり、レンズを含めた鏡胴が小型化するという利点がある。
さらに高性能にするためには、以下の条件式〔5〕〜〔8〕を満足することが望ましい(請求項5に対応する)。
〔5〕 0.70<f1/ft<0.90
〔6〕 −0.25<f2/ft<−0.05
〔7〕 0.35<f3/ft<0.55
〔8〕 0.20<f4/ft<0.40
ただし、f1は第1レンズ群の焦点距離であり、f2は第2レンズ群の焦点距離であり、f3は第3レンズ群の焦点距離であり、f4は第4レンズ群の焦点距離であり、ftは長焦点端における全系の焦点距離である。
上記条件式〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕を満足することにより、小型でありながらズーム域全体において各種収差を補正することができる。上記条件式〔5〕〜〔8〕の下限値を下回ると、各レンズ群のパワーが強くなりすぎ、群内の収差補正が困難になる。また、上記条件式〔5〕〜〔8〕の上限値を上回ると、ズームするための移動量を確保するために大型化すること等の問題が発生する。
【0013】
また、近距離の物体までのフォーカシングを可能とし、小型にするためには、以下の条件式〔9〕、〔10〕を満足することが望ましい
(請求項6に対応する)。
〔9〕 0.5<D3_4w/fw<0.7
〔10〕 0.05<D3_4t/ft<0.25
ただし、D3_4wは短焦点端における第3レンズ群と第4レンズ群の間隔であり、D3_4tは長焦点端における第3レンズ群と第4レンズ群の間隔であり、fwは短焦点端における全系の焦点距離、ftは長焦点端における全系の焦点距離である。
上記条件式〔9〕、〔10〕の上限値を上回ると、第3レンズ群と第4レンズ群の間隔が大きくなりすぎ、他のレンズ群の群厚や変倍するための間隔が減ることにつながり、ズーム域全域において各種収差を補正することが困難になる。また、上記条件式〔9〕、〔10〕の下限値を下回ると、近距離の物体までフォーカシングをすることができなかったり、フォーカシングにより発生する収差が大きくなる。
さらには、高性能でありながら小型化するためには、以下の条件式〔11〕を満足することが望ましい
(請求項7に対応する)。
【0014】
〔11〕 0.4<(b2t/b2w)/(ft/fw)<0.6
ただし、b2wは第2レンズ群の短焦点端での横倍率であり、b2tは第2レンズ群の長焦点端での横倍率であり、ftは長焦点端におけ
る全系の焦点距離であり、fwは、短焦点端における全系の焦点距離である。
上記条件式〔11〕の上限値を上回ると、第2レンズ群での変倍が大きくなりすぎて、第2レンズ群の焦点距離が小さくなりすぎることや第2レンズ群の移動量増大につながり、ズーム域全体の収差補正が困難になる。また、条件式〔11〕の下限値を下回ると、第2レンズ群での変倍が小さくなりすぎ、ズーム域全体の収差補正が困難になる。
さらに高性能でありながら小型化するためには、以下の条件式〔12〕を満足することが望ましい
(請求項8に対応する)。
〔12〕 0.3<m2/TL<0.4
ただし、m2は短焦点端から長焦点端への変倍に際する第2レンズ群の移動量であり、TLはレンズ全長である。
上記条件式〔12〕の上限値を上回ると、第2レンズ群の移動量が大きくなりすぎ、レンズ群の群厚・空気間隔を小さくすることにつながり、全体として収差補正が困難になる。また、条件式〔12〕の下限値を下回ると、第2レンズ群の移動量が小さくなりすぎ、第2レンズ群の焦点距離を短くすることにつながり、第2レンズ群内の収差補正が困難になる。
【0015】
像面に到達する光量を減少させる必要があるときには、開口絞りを小さくしても良いが、絞り径を大きく変えることなく、NDフィルタ等の挿入により光量を減少させた方が、回折現象による解像力の低下を防止できるという点で好ましい。
回折面には、積層型の回折光学素子を用いることが望ましい。
各々波長において、適切な屈折率差になるような光学素子を積層することにより、広範囲に波長域において回折効率を高くすることが可能である
また、積層した光学素子をレンズ面に密着しても良い。さらにレンズの接合面を回折構造にすることにより、回折面に対する環境による影響(外乱)に対して十分耐え得るロバスト(robust)にすることができる。
一方、上述した本発明に係るズームレンズを、撮影用光学系として、または動画撮影用光学系として用いて、いわゆるデジタルカメラ等のカメラまたは動画撮影用カメラ(いわゆるムービーカメラ)を構成することができる(請求項9に対応する)。
このようなカメラは、撮影用光学系として、上述したようなズームレンズを具備することにより、小型且つ高画質で、通常の撮影領域を十分にカバーする変倍域を有したカメラを実現することができる。
【0016】
また、カメラ機能等の撮影機能部を有する、いわゆる携帯情報端末装置における撮影用光学系として、上述したようなズームレンズを用いて構成することもできる(請求項10に対応する)。
このような携帯情報端末装置は、撮影機能を有し、撮影用光学系として、上述したようなズームレンズを具備することにより、小型で高画質であり、通常の撮影領域を十分カバーする変倍域を有した携帯情報端末装置を提供することができる。このためユーザは、携帯性に優れた携帯情報端末装置で高画質な画像を撮影し、その画像を外部へ送信したりすることができる。
また、上述したズームレンズは、可視域から近赤外域までのシームレスな撮像装置に対応するので、小型で高画質の監視用カメラや監視用ビデオカメラに適用すれば、実用的効果は多大である。
上述したように、請求項1に記載の発明によれば、20倍程度の変倍比で、短焦点端の半画角が30度程度でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが2.5程度であり、構成枚数が13枚程度で比較的安価であり、近赤外の波長域においても収差が十分に補正され、小型で且つ200万〜500万画素の撮像素子に対応した解像力を有するズームレンズを提供することができる。
【0017】
上述したように、請求項2、請求項3記載の発明によれば、色収差をより良好に補正した、高性能なズームレンズを提供することができるため、長焦点端における画面全体にわたる色にじみ等をさらに抑えた、良好な描写の得られるカメラを実現することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、小型で高性能なズームレンズを提供することができるため、高画質で小型なカメラ(携帯情報端末装置)を実現することができる。
また、請求項5ないし請求項8に記載の発明によれば、各収差をさらに良好に補正した、高性能なズームレンズを提供することができるため、さらに高い解像力を有する高画質のカメラを実現することができる。
請求項9に記載の発明によれば、20倍程度の変倍比で短焦点端の半画角が30度程度でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが2.5程度であり、構成枚数が13程度、小型でかつ200万〜500万画素の撮像素子に対応した解像力を有するズームレンズを撮影光学系として使用した、小型で高画質のカメラを提供ことができるため、ユーザは携帯性に優れたカメラで高画質な画像を撮影することができる。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、20倍程度の変倍比で短焦点端の半画角が30度程度でありながら短焦点端のFナンバが2.0以下、長焦点端のFナンバが2.5程度であり、構成枚数が13程度、小型でかつ200万〜500万画素の撮像素子に対応した解像力を有するズームレンズをカメラ機能部の撮影光学系として使用した、小型で高画質の携帯情報端末装置を提供ことができるため、ユーザは携帯性に優れた携帯情報端末装置で高画質な画像を撮影し、その画像を外部へ送信したりすることができる。
次に、上述した本発明の原理的な実施の形態に基づく、具体的な実施例を詳細に説明する。以下に述べる実施例1〜実施例4は、本発明の第1の実施の形態〜第4の実施の形態に係るズームレンズの数値例(数値実施例)による具体的な構成の実施例である。
図1〜
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例1におけるズームレンズを説明するためのものである。
図5〜
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る実施例2におけるズームレンズを説明するためのものである。
図9〜
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る実施例3におけるズームレンズを説明するためのものである。そして
図13〜
図16は、本発明の第4の実施の形態に係る実施例4におけるズームレンズを説明するためのものである。
【0019】
実施例1〜実施例4のズームレンズは、いずれも、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを配置した、いわゆる正−負−正−正の4群構成のズームレンズである。
実施例1〜実施例4の各実施例のズームレンズにおいて、第4レンズ群の像面側に配設される平行平板からなる光学要素は、光学ローパスフィルタおよび紫外カットフィルタ等の各種光学フィルタや、CMOS(相補型金属酸化物半導体)イメージセンサまたはCCD(電荷結合素子)イメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラス(シールガラス)を想定したものである。ここでは、等価的な透明平行平板として、フィルタ等FGと総称することにする。
また、開口絞りADの物体側または像側に、NDフィルタ等の各種フィルタFを挿入してもよい。
また、実施例1〜実施例4の各実施例において用いている光学ガラスの硝材は、株式会社オハラ(OHARA)およびHOYA株式会社(HOYA)の製品の光学硝種名で示している。
【0020】
レンズの材質は、全ての実施例において、全て光学ガラスとなっているが、樹脂レンズを用いても良い。
実施例1〜実施例4の各実施例のズームレンズにおける収差は、十分に補正されており、200万〜500万画素またはそれ以上の画素数の受光素子に対応することが可能となっている。本発明の第1の実施の形態〜第4の実施の形態に従ってズームレンズを構成することによって、十分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることは、実施例1〜実施例4の各実施例より明らかである。
実施例1〜実施例4に共通な記号の意味は、次の通りである。
f:光学系全系の焦点距離
F:F値(Fナンバ)
ω:半画角(度)
R:曲率半径
D:面間隔
n
d:屈折率
ν
d:アッベ数
C2:位相関係の2次項の係数
C4:位相関係の4次項の係数
回折格子の形状を、基準波長(d線)をλd、光軸からの距離をh、位相をφ(h)とし、
φ(h)=(2π/λd)(C2・h
2+C4・h
4)と表す。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る実施例1のズームレンズの光学系のレンズ構成および短焦点端、つまり広角端から所定の中間焦点距離を経て長焦点端、つまり望遠端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端、即ち広角端における断面図、(b)は所定の中間焦点距離における断面図、そして(c)は長焦点端、即ち望遠端における断面図である。なお、実施例1のレンズ群配置を示す
図1において、図示左側が物体(被写体)側である。
図1に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置している。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の各群毎に一体的に動作する。開口絞りADは、像面に対し、固定であるように設けられている。
図1には、各光学面の面番号も示している。なお、
図1における各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、各実施例毎に独立に用いている。そのため他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していてもそれらは、他の実施例とはかならずしも共通の構成ではない。
【0022】
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1は、固定であり、第2レンズ群G2は、像側に移動し、第3レンズ群G3は、物体側に移動し、第4レンズ群G4は、移動する。これにより、短焦点端から長焦点端への移動に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が小さくなるように移動する。
図1に示す本発明に係る第1の実施の形態であって、実施例(数値実施例。以下同じ)1のズームレンズの第1レンズ群G1は、物体側から順に、凹面を像側に向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL1と、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL3とを、配置している。
そして、第1レンズ群G1の負レンズL1と正レンズL2の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL4と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL5と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL6とを配置している。そして、第2レンズ群G2の正レンズL5と負レンズL6の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わされて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
【0023】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL7と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL8と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL9と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL10とを配置している。
この第3レンズ群G3のレンズ面、この例の場合、正レンズL8負レンズL9の接合面に積層型の回折光学素子を密接して設ける。
そして、第3レンズ群G3の正レンズL8と負レンズL9の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合された2枚の接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には、開口絞りADが像面に対して不動となるように保持されている。尚、この開口絞りADに隣接して平行平板よりなるNDフィルタ等の各種フィルタ(図示せず)を設けてもよい。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL11と、像面側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL12と、物体側に凸面を
向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL13とを配置している。
【0024】
第4レンズ群G4の像面側には、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタ等の各種光学フィルタやCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラス(シールガラス)を想定した透明平行平板として表わした、フィルタ等FGが配置されている。
この場合、
図1に示すように、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4はするため、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
フォーカシングは、第4レンズ群G4で行うことが望ましい。
その理由は、第4レンズ群でフォーカシングすることにより、比較的小さいレンズ群でフォーカスすることができ、小型化、省エネにつながる。またフォーカシング移動量も小さくすることができ、延いては、フォーカシング動作を迅速化させることもできて、好都合である。
この実施例1においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、短焦点端から長焦点端へのズーミングによって、それぞれf=5.15〜22.35〜96.98、F=1.85〜2.14〜2.40およびω=31.79〜7.81〜1.81の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表1の通りである。
【0025】
【表1】
【0026】
この実施例1においては、全光学系の焦点距離f、F値(Fナンバ)、半画角ω、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4とフィルタ等FGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表2のように変化する。
【0027】
【表2】
【0028】
回折面の焦点距離f3DOEは、位相関数の2次項の係数をC2とし、位相関数の4次項の係数をC4として、
f3DOE=−1(2×C2)
で表されるが、この実施例1においては、第15面、即ち、正レンズL8と負レンズL9との接合面に形成される回折面の位相関数の2次項の係数C2は、以下の表3に記載の通りである。尚、位相関数の4次項の係数C4も併記する。
【0029】
【表3】
【0030】
尚、回折格子の形状は、上述したように、基準波長(d線)をλd、光軸からの距離をh、位相をφ(h)として、
φ(h)=2π/λd(C2・h
2+C4・h
4)と表される。
この実施例1の場合、上記条件式(1)〜条件式(12)に対応する値は、次表4の通りとなり、それぞれ条件式(1)〜(12)を満足している。
【0031】
【表4】
【0032】
また、
図2、
図3および
図4に、それぞれ、実施例1の短焦点端(広角端)、中間焦点距離および長焦点端(望遠端)における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びにコマ収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図において、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。これらは、他の実施例の収差図についても同様である。
図2〜
図4より明らかなように、実施例1のズームレンズにおいて、収差は、十分に補正されている。200万〜500万画素の受光素子に対応することが可能となっており、実施例1のようにズームレンズを構成することで、十分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることが明らかである。
【実施例2】
【0033】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る実施例2のズームレンズの光学系のレンズ構成および短焦点端、つまり広角端から所定の中間焦点距離を経て長焦点端、つまり望遠端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端、即ち広角端における断面図、(b)は所定の中間焦点距離における断面図、そして(c)は長焦点端、即ち望遠端における断面図である。なお、実施例2のレンズ群配置を示す
図5において、図示左側が物体(被写体)側である。
図5に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置している。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の各群毎に一体的に動作する。開口絞りADは、像面に対し、固定であるように設けられている。
図5には、各光学面の面番号も示している。なお、
図5における各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、各実施例毎に独立に用いている。そのため他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していてもそれらは、他の実施例とはかならずしも共通の構成ではない。
【0034】
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1は、固定であり、第2レンズ群G2は、像側に移動し、第3レンズ群G3は、物体側に移動し、第4レンズ群G4は、移動する。これにより、短焦点端から長焦点端への移動に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が小さくなるように移動する。
図5に示す本発明に係る第2の実施の形態であって、実施例(数値実施例。以下同じ)2のズームレンズの第1レンズ群G1は、物体側から順に、凹面を像側に向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL1と、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL3とを、配置している。
そして、第1レンズ群G1の負レンズL1と正レンズL2の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
【0035】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL4と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL5と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL6とを配置している。そして、第2レンズ群G2の正レンズL5と負レンズL6の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わされて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL7と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL8と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL9と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL10とを配置している。
この第3レンズ群G3のレンズ面、この例の場合、正レンズL8と負レンズL9の接合面に積層型の回折光学素子を密接して設ける。
そして、第3レンズ群G3の正レンズL8と負レンズL9の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合された2枚の接合レンズを形成している。
【0036】
第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には、開口絞りADが像面に対して不動となるように保持されている。尚、この開口絞りADに隣接して平行平板よりなるNDフィルタ等の各種フィルタ(図示せず)を設けてもよい。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL11と、像面側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL12と、物体側に凸面を
向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL13とを配置している。
第4レンズ群G4の像面側には、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタ等の各種光学フィルタやCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラスを想定した透明平行平板として表わした、フィルタ等FGが配置されている。
この場合、
図5に示すように、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4はするため、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
【0037】
フォーカシングは、第4レンズ群G4で行うことが望ましい。
その理由は、第4レンズ群でフォーカシングすることにより、比較的小さいレンズ群でフォーカスすることができ、小型化、省エネにつながる。またフォーカシング移動量も小さくすることができ、延いては、フォーカシング動作を迅速化させることもできて、好都合である。
この実施例2においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、短焦点端から長焦点端へのズーミングによって、それぞれf=5.15〜22.36〜97.02、F=1.83〜2.15〜2.48およびω=31.80〜7.79〜1.80の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表5の通りである。
【0038】
【表5】
【0039】
この実施例2においては、全光学系の焦点距離f、F値(Fナンバ)、半画角ω、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4とフィルタ等FGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表6のように変化する。
【0040】
【表6】
【0041】
回折面の焦点距離f3DOEは、位相関数の2次項の係数をC2とし、位相関数の4次項の係数をC4として、
f3DOE=−1(2×C2)
で表されるが、この実施例2においては、第15面、即ち、正レンズL8と負レンズL9との接合面に形成される回折面の位相関数の2次項の係数C2は、以下の表7に記載の通りである。尚、位相関数の4次項の係数C4も併記する。
【0042】
【表7】
【0043】
尚、回折格子の形状は、上述したように、基準波長(d線)をλd、光軸からの距離をh、位相をφ(h)として、
φ(h)=2π/λd(C2・h
2+C4・h
4)と表される。
この実施例2の場合、上記条件式(1)〜条件式(12)に対応する値は、次表8の通りとなり、それぞれ条件式(1)〜(12)を満足している。
【0044】
【表8】
【0045】
また、
図6、
図7および
図8に、それぞれ、実施例2の短焦点端(広角端)、中間焦点距離および長焦点端(望遠端)における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びにコマ収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図において、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。これらは、他の実施例の収差図についても同様である。
図6〜
図8より明らかなように、実施例2のズームレンズにおいて、収差は、十分に補正されている。200万〜500万画素の受光素子に対応することが可能となっており、実施例2のようにズームレンズを構成することで、十分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることが明らかである。
【実施例3】
【0046】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る実施例3のズームレンズの光学系のレンズ構成および短焦点端から所定の中間焦点距離を経て長焦点端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端における断面図、(b)は所定の中間焦点距離における断面図、そして(c)は長焦点端における断面図である。なお、実施例3のレンズ群配置を示す
図9において、図示左側が物体(被写体)側である。
図9に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置している。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の各群毎に一体的に動作する。
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1は、固定であり、第2レンズ群G2は、像側に移動し、第3レンズ群G3は、物体側に移動し、第4レンズ群G4は、移動する。これにより、短焦点端から長焦点端への移動に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が小さくなるように移動する。
【0047】
図9に示す本発明に係る第3の実施の形態であって、実施例(数値実施例。以下同じ)3のズームレンズの第1レンズ群G1は、物体側から順に、凹面を像側に向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL1と、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL3とを、配置している。
そして、第1レンズ群G1の負レンズL1と正レンズL2の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL4と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL5と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL6とを配置している。そして、第2レンズ群G2の正レンズL5と負レンズL6の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わされて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL7と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL8と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL9と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL10とを配置している。
【0048】
この第3レンズ群G3のレンズ面、この例の場合、正レンズL8と負レンズL9の接合面に積層型の回折光学素子を密接して設ける。
そして、第3レンズ群G3の正レンズL8と負レンズL9の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合された2枚の接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には、開口絞りADが像面に対して不動となるように保持されている。尚、この開口絞りADに隣接して平行平板よりなるNDフィルタ等の各種フィルタ(図示せず)を設けてもよい。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL11と、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL12と、物体側に凸面を
向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL13とを配置している。
そして、第4レンズ群G4の像面側には、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタ等の各種光学フィルタやCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラスを想定した透明平行平板として表わした、フィルタ等FGが配置されている。
【0049】
この場合、
図9に示すように、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4はするため、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
フォーカシングは、第4レンズ群G4で行うことが望ましい。
その理由は、第4レンズ群でフォーカシングすることにより、比較的小さいレンズ群でフォーカスすることができ、小型化、省エネにつながる。またフォーカシング移動量も小さくすることができ、延いては、フォーカシング動作を迅速化させることもできて、好都合である。
この実施例3においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、短焦点端から長焦点端へのズーミングによって、それぞれf=5.30〜23.11〜99.40、F=1.83〜2.14〜2.52およびω=30.59〜7.54〜1.77の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表9の通りである。
【0050】
【表9】
【0051】
この実施例3においては、全光学系の焦点距離f、F値(Fナンバ)、半画角ω、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4とフィルタ等FGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表10のように変化する。
【0052】
【表10】
【0053】
回折面の焦点距離f3DOEは、位相関数の2次項の係数をC2とし、位相関数の4次項の係数をC4として、
f3DOE=−1(2×C2)
で表される。この実施例3においては、第15面、即ち、正レンズL8と負レンズL9との接合面に形成される回折面の位相関数の2次項の係数C2は、以下の表11に記載の通りである。尚、位相関数の4次項の係数C4も併記する。
【0054】
【表11】
【0055】
尚、回折格子の形状は、上述したように、基準波長(d線)をλd、光軸からの距離をh、位相をφ(h)として、
φ(h)=2π/λd(C2・h
2+C4・h
4)と表される。
この実施例3の場合、上記条件式(1)〜条件式(12)に対応する値は、次表12の通りとなり、それぞれ条件式(1)〜(12)を満足している。
【0056】
【表12】
【0057】
また、
図10、
図11および
図12に、それぞれ、実施例3の短焦点端(広角端)、中間焦点距離および長焦点端(望遠端)における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びにコマ収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図において、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。これらは、他の実施例の収差図についても同様である。
図10〜
図12より明らかなように、実施例3のズームレンズにおいて、収差は、十分に補正されている。200万〜500万画素の受光素子に対応することが可能となっており、実施例1のようにズームレンズを構成することで、十分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることが明らかである。
【実施例4】
【0058】
図13は、本発明の第4の実施の形態に係る実施例4のズームレンズの光学系のレンズ構成および短焦点端から所定の中間焦点距離を経て長焦点端へのズーミングに伴うズーム軌跡を示しており、(a)は短焦点端、即ち広角端における断面図、(b)は所定の中間焦点距離における断面図、そして(c)は長焦点端、即ち望遠端における断面図である。なお、実施例2のレンズ群配置を示す
図13において、図示左側が物体(被写体)側である。
図13に示すズームレンズは、物体側から、順次、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを配置している。
第1レンズ群G1〜第4レンズ群G4は、それぞれ各群毎に適宜なる共通の支持枠等によって支持され、ズーミング等に際しては第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の各群毎に一体的に動作する。開口絞りADは、像面に対し、固定であるように設けられている。
図13には、各光学面の面番号も示している。
【0059】
短焦点端(広角端)から長焦点端(望遠端)への変倍に際しては、第1レンズ群G1は、固定であり、第2レンズ群G2は、像側に移動し、第3レンズ群G3は、物体側に移動し、第4レンズ群G4は、移動する。これにより、短焦点端から長焦点端への移動に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が小さくなるように移動する。
図13に示す本発明に係る第4の実施の形態であって、実施例(数値実施例)4のズームレンズの第1レンズ群G1は、物体側から順に、凹面を像側に向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL1と、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL3とを、配置している。
そして、第1レンズ群G1の負レンズL1と正レンズL2の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。第2レンズ群G2は、物体側から順に、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL4と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL5と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL6とを配置している。そして、第2レンズ群G2の正レンズL5と負レンズL6の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わされて一体に接合され、2枚の接合レンズを形成している。
【0060】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、物体側に像側より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL7と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL8と、像側に物体側の面より曲率の大きな凹面を向けた両凹レンズからなる負レンズL9と、物体側に像側の面より曲率の大きな凸面を向けた両凸レンズからなる正レンズL10とを配置している。
この第3レンズ群G3のレンズ面、この例の場合、正レンズL8と負レンズL9の接合面に積層型の回折光学素子を密接して設ける。
そして、第3レンズ群G3の正レンズL8と負レンズL9の2枚のレンズは、互いに密接して貼り合わせられて一体に接合された2枚の接合レンズを形成している。
第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間には、開口絞りADが像面に対して不動となるように保持されている。尚、この開口絞りADに隣接して平行平板よりなるNDフィルタ等の各種フィルタ(図示せず)を設けてもよい。
第4レンズ群G4は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL11と、像面側に凹面を向けた負メニスカスレンズからなる負レンズL12と、物体側に凸面を
向けた正メニスカスレンズからなる正レンズL13とを配置している。
【0061】
そして、第4レンズ群G4の像面側には、各種光学フィルタやCMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ等の受光撮像素子のカバーガラス(シールガラス)を想定した透明平行平板として表わした、フィルタ等FGが配置されている。
この場合、
図13に示すように、短焦点端から長焦点端への変倍に際して、第1レンズ群G1は固定であり、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4はするため、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は大きくなり、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔は小さくなる。
フォーカシングは、第4レンズ群G4で行うことが望ましい。
この実施例4においては、全光学系の焦点距離f、FナンバFおよび半画角ωが、短焦点端から長焦点端へのズーミングによって、それぞれf=5.14〜22.29〜96.60、F=1.85〜2.12〜2.43およびω=31.89〜7.84〜1.82の範囲で変化する。各光学要素の光学特性は、次表13の通りである。
【0062】
【表13】
【0063】
この実施例4においては、全光学系の焦点距離f、F値(Fナンバ)、半画角ω、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の可変間隔DA、第2レンズ群G2と開口絞りADとの間の可変間隔DB、開口絞りADと第3レンズ群G3との間の可変間隔DC、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間の可変間隔DD、そして第4レンズ群G4とフィルタ等FGとの間の可変間隔DE等の可変量は、ズーミングに伴って次表14のように変化する。
【0064】
【表14】
【0065】
回折面の焦点距離f3DOEは、位相関数の2次項の係数をC2とし、位相関数の4次項の係数をC4として、
f3DOE=−1(2×C2)
で表される。この実施例4においては、第15面、即ち、正レンズL8と負レンズL9との接合面に形成される回折面の位相関数の2次項の係数C2は、以下の表15に記載の通りである。尚、位相関数の4次項の係数C4も併記する。
【0066】
【表15】
【0067】
尚、回折格子の形状は、上述したように、基準波長(d線)をλd、光軸からの距離をh、位相をφ(h)として、
φ(h)=2π/λd(C2・h
2+C4・h
4)と表される。
この実施例4の場合、上記条件式(1)〜条件式(12)に対応する値は、次表16の通りとなり、それぞれ条件式(1)〜(12)を満足している。
【0068】
【表16】
【0069】
また、
図14、
図15および
図16に、それぞれ、実施例4の短焦点端(広角端)、中間焦点距離および長焦点端(望遠端)における球面収差、非点収差、歪曲収差、並びにコマ収差の各収差図を示している。なお、これらの収差図において、球面収差図における破線は正弦条件をあらわし、非点収差図における実線はサジタル、そして破線はメリディオナルをそれぞれあらわしている。これらは、他の実施例の収差図についても同様である。
図14〜
図16より明らかなように、実施例4のズームレンズにおいて、収差は、十分に補正されている。200万〜500万画素の受光素子に対応することが可能となっており、実施例4のようにズームレンズを構成することで、十分な小型化を達成しながら、非常に良好な像性能を確保し得ることが明らかである。
【0070】
〔第5の実施の形態〕
次に、上述した本発明の第1の実施の形態〜第4の実施の形態に係る実施例1〜実施例4等のようなズームレンズを撮影用光学系または動画撮影用光学系として採用して構成した本発明の第5の実施の形態に係るカメラについて
図17〜
図19を参照して説明する。
図17は、本発明の第5の実施の形態に係るカメラとしてのデジタルカメラを物体側から見た外観構成を模式的に示す斜視図、そして
図18は、当該デジタルカメラを撮影者側から見た外観構成を模式的に示す斜視図である。また、
図19は、当該デジタルカメラの機能構成を示すブロック図である。なお、
図17〜
図19には、カメラとしてのデジタルカメラについて説明しているが、動画撮影を主としたビデオカメラおよび在来の、いわゆる銀塩フィルムを用いるフィルムカメラ等を含む主として撮像専用の撮像装置だけでなく、携帯電話機や、PDA(personal data assistant)などと称される携帯情報端末装置、さらにはこれらの機能を含む、いわゆるスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末装置を含む種々の情報装置にデジタルカメラ等に相当する撮像機能が組み込まれることが多い(請求項9〜請求項10に対応する)。
【0071】
このような情報装置も、外観は若干異にするもののデジタルカメラ等と実質的に全く同様の機能・構成を含んでおり、このような情報装置に上述した本発明の第1の実施の形態〜第4の実施の形態に係るズームレンズを撮像用光学系として用いることができる。
図17および
図18に示すように、デジタルカメラは、カメラボディ100に、撮像レンズ(撮影レンズ)101、光学ファインダ102、ストロボ(電子フラッシュライト)103、シャッタボタン104、電源スイッチ105、液晶モニタ106、操作ボタン107、メモリカードスロット108およびズームスイッチ109等を装備している。さらに、
図19に示すように、デジタルカメラは、カメラボディ100内に、中央演算装置(CPU)111、画像処理装置112、受光素子113、信号処理装置114、半導体メモリ115および通信カード等116を具備している。
デジタルカメラは、撮像用光学系としての撮像レンズ101と、CMOS(相補型金属酸化物半導体)撮像素子またはCCD(電荷結合素子)撮像素子等を用いてイメージセンサとして構成された受光素子113とを有しており、撮像レンズ101によって結像される被写体光学像を受光素子113によって読み取る。この撮像レンズ101として、上述した実施例1〜実施例4等において説明したような本発明の第1の実施の形態〜第4の実施の形態に係るズームレンズを用いる。
【0072】
受光素子113の出力は、中央演算装置111によって制御される信号処理装置114によって処理され、デジタル画像情報に変換される。信号処理装置114によってデジタル化された画像情報は、やはり中央演算装置111によって制御される画像処理装置112において所定の画像処理が施された後、不揮発性メモリ等の半導体メモリ115に記録される。この場合、半導体メモリ115は、メモリカードスロット108に装填されたメモリカードでもよく、デジタルカメラ本体にオンボードで内蔵された半導体メモリでもよい。液晶モニタ106には、撮影中の画像を表示することもできるし、半導体メモリ115に記録されている画像を表示することもできる。また、半導体メモリ115に記録した画像は、通信カードスロット(明確には図示していないが、メモリカードスロット108と兼用しても良い)に装填した通信カード等116を介して外部へ送信することも可能である。
撮像レンズ101は、カメラの携帯時には、その対物面がレンズバリア(明確には図示していない)により覆われており、ユーザが電源スイッチ105を操作して電源を投入すると、レンズバリアが開き、対物面が露出する構成とする。このとき、撮像レンズ101の鏡胴の内部では、ズームレンズを構成する各群の光学系が、例えば短焦点端(広角端)の配置となっており、ズームスイッチ109を操作することによって、各群光学系の配置が変更されて、中間焦点距離を経て長焦点端(望遠端)への変倍動作を行うことができる。
【0073】
なお、光学ファインダ102の光学系も撮像レンズ101の画角の変化に連動して変倍するようにすることが望ましい。
多くの場合、シャッタボタン104の半押し操作により、フォーカシングがなされる。
本発明の第1〜第4の実施の形態に係るズームレンズ(請求項1〜請求項8で定義され、あるいは前述した実施例1〜実施例4に示されるズームレンズ)におけるフォーカシングは、ズームレンズを構成する複数群の光学系の一部の群の移動によって行うことができる。シャッタボタン104を更に押し込み全押し状態とすると撮影が行なわれ、その後に上述した通りの処理がなされる。
半導体メモリ115に記録した画像を液晶モニタ106に表示させたり、通信カード等116を介して外部へ送信させたりする際には、操作ボタン107を所定のごとく操作する。半導体メモリ115および通信カード等116は、メモリカードスロット108および通信カードスロット等のような、それぞれ専用または汎用のスロットに装填して使用される。
【0074】
なお、撮像レンズ101が沈胴状態にあるときには、結像レンズの各群は必ずしも光軸上に並んでいなくても良い。例えば、沈胴時に第2レンズ群G2および第3レンズ群G3の少なくとも一方が光軸上から退避して、その他のレンズ群と並列的に収納されるような機構とすれば、デジタルカメラのさらなる薄型化を実現することができる。
上述したデジタルカメラ(カメラ)のような撮像装置または同様の撮像機能を有する携帯情報端末装置には、既に述べた通り、第1〜第4の実施の形態(実施例1〜実施例4)のようなズームレンズを用いて構成した撮像レンズ101を撮影用光学系として使用することができる。したがって、200万〜500万画素またはそれ以上の画素数の受光素子を使用した高画質で小型のデジタルカメラのような撮像装置または同様の撮像機能を有する携帯情報端末装置等の情報装置を実現することができる。
また、本発明の第1〜第4の実施の形態に係るズームレンズの構成は、在来の銀塩フィルムカメラの撮影レンズや投影機の投射レンズとしても応用が可能である。