(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明
で使用する固体電解質組成物
(以後、本発明の固体電解質組成物と称す)は、無機固体電解質(A)
、および、重合性官能基を2つ以上有しており、その少なくとも1つは特定重合性官能基である化合物(B
)を含む。以下、その好ましい実施形態について説明するが、まずその好ましい応用形態である全固体二次電池の例について説明する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順で有する。各層はそれぞれ接触しており、積層した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e
−)が供給され、そこにリチウムイオン(Li
+)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li
+)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。本発明の固体電解質組成物は、上記負極活物質層、正極活物質層、固体電解質層の構成材料として用いることが好ましく、中でも、固体電解質層、正極活物質層、および負極活物質層のすべての構成材料として、用いることが好ましい。
【0019】
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されないが、正極活物質層および負極活物質層は目的とする電池容量に応じて、任意に定めることができる。一方、固体電解質層は正負極の短絡を防止しつつ、出来る限り薄いことが望ましい。具体的には、1〜1000μmが好ましく、3〜400μmがより好ましい。
【0020】
<固体電解質組成物>
本発明における固体電解質組成物とは、無機固体電解質を含む組成物のことを言い、全固体二次電池の無機固体電解質層、正極活物質層、負極活物質層を形成する材料として用いられる。固体電解質組成物は固体に限らず、液状やペースト状であってもよい。
【0021】
(無機固体電解質(A))
無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことである。本明細書において、固体電解質というときには、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことを意味する。この観点から、後記電解質塩(支持電解質)との区別を考慮し、無機固体電解質を、イオン伝導性無機固体電解質と呼ぶことがある。無機固体電解質のイオン伝導度は特に限定されないが、リチウムイオンにおいて、1×10
−6S/cm以上が好ましく、1×10
−5S/cm以上がより好ましく、1×10
−4S/cm以上がさらに好ましく、1×10
−3S/cm以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、1S/cm以下が実際的である。イオン伝導度の測定方法は、特に断らない限り、後記実施例で測定した非加圧条件による。
【0022】
無機固体電解質は、高分子化合物や錯塩などの有機物を電解質としては含まないことから、有機固体電解質〔ポリエチレンオキサイド(PEO)などに代表される高分子電解質、LiN(SO
2CF
3)
2(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩〕とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態で非解離性の固体であるため、液中でも、カチオンおよびアニオンに解離または遊離しない。この点で、電解液やポリマー中でカチオンおよびアニオンが解離または遊離する無機電解質塩(LiPF
6、LiBF
4,LiFSI,LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン(好ましくはリチウムイオン)の伝導性を有する一方で、一般的には、電子伝導性を有さない。
【0023】
本発明においては、電解質層ないし活物質層に周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン(好ましくはリチウムイオン)伝導性の無機固体電解質を含有させる。無機固体電解質は、製品に合わせて固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。
【0024】
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物固体電解質は、硫黄(S)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
【0026】
式(1)中、Mは、B、Zn、Si、Cu、Ga及びGeから選択される元素を表す。a〜dは各元素の組成比を表し、a:b:c:dはそれぞれ1〜12:0〜0.2:1:2〜9を満たす。
【0027】
式(1)において、Li、M、P及びSの組成比は、好ましくはbが0であり、より好ましくはb=0で且つa、c及びdの比(a:c:d)がa:c:d=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb=0で且つa:c:d=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、下記のように、硫化物系固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
【0028】
硫化物系固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。
【0029】
Li−P−S系ガラスおよびLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、Li
2SとP
2S
5との比率は、Li
2S:P
2S
5のモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜75:25である。Li
2SとP
2S
5との比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高くすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10
−4S/cm以上、より好ましくは1×10
−3S/cm以上にすることができる。
【0030】
具体的な化合物例としては、例えばLi
2Sと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を挙げることができる。具体的には、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−GeS
2、Li
2S−GeS
2−ZnS、Li
2S−Ga
2S
3、Li
2S−GeS
2−Ga
2S
3、Li
2S−GeS
2−P
2S
5、Li
2S−GeS
2−Sb
2S
5、Li
2S−GeS
2−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2、Li
2S−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−LiI、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
10GeP
2S
12などが挙げられる。その中でも、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−GeS
2−Ga
2S
3、Li
2SGeS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−P
2S
5、Li
2S−SiS
2−Li
4SiO
4、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4からなる結晶質および/または非晶質の原料組成物が高いリチウムイオン伝導性を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物固体電解質材料を製造する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。この方法により、常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0031】
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系固体電解質は、酸素(O)を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
【0032】
具体的な化合物例としては、例えばLi
xLa
yTiO
3〔x=0.3〜0.7、y=0.3〜0.7〕(LLT)、Li
7La
3Zr
2O
12(LLZ)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi
3.5Zn
0.25GeO
4、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi
2P
3O
12、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)、ガーネット型結晶構造を有する上記Li
7La
3Zr
2O
12等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も好ましい。例えばリン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
その中でも、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)は、高いリチウムイオン伝導性を有し、化学的に安定しているため、取り扱いが容易であり好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
リチウムイオン伝導性の酸化物系無機固体電解質としてのイオン伝導度は、1×10
−6S/cm以上が好ましく、1×10
−5S/cm以上がより好ましく、5×10
−5S/cm以上が特に好ましい。
【0034】
本発明においては、なかでも酸化物系の無機固体電解質を用いることが好ましい。酸化物系の無機固体電解質は総じてより硬度が高いため、全固体二次電池において界面抵抗の上昇を生じやすく、本発明を適用することにより、効果がより顕著になる。
上記無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
無機固体電解質の平均粒子サイズは特に限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。上限としては、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0036】
無機固体電解質(A)の固体電解質組成物中での濃度は、電池性能と界面抵抗の低減・維持効果の両立を考慮したとき、固形成分100質量%において、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下が好ましく、99.5質量%以下がより好ましく、99.0質量%以下が特に好ましい。
【0037】
(重合性化合物(B))
本発明に用いられる重合性化合物は、重合性官能基(環状であってもなくてもよい)を2つ以上有しており、その少なくとも1つは特定重合性官能基である。重合性官能基の分子中の数は特に限定されず、2つ以上であればよい。上限は特にないが、6つ以下が実際的である。
【0038】
特定重合性官能基は、硫黄原子を有する官能基または酸素原子を有する環状官能基である。好ましくは、酸素または硫黄原子を含む炭素数が2〜4の環状官能基またはメルカプト基である。酸素または硫黄原子を含む炭素数が2〜4の環状官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、エピスルフィド基(エチレンスルフィド基)、トリメチレンスルフィド基等が挙げられる。特定重合性官能基の分子中の数は特に限定されないが、2つ以上が好ましい。上限は特に限定されないが、6つ以下が実際的である。特定重合性官能基として、メルカプト基を選択する場合、共重合成分として炭素−炭素不飽和結合基を有する化合物を含むことが好ましい。
ただし、本発明では、特定重合性官能基は、後述の式(q−1)〜(q−5)のいずれかで表される基である。
【0039】
重合性化合物(B)は、特定重合性官能基以外の重合性基を有していてもよい。その重合性基としては、重合性不飽和結合が挙げられる。重合性不飽和結合を有する官能基としては、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基〔CH
2=CH−C(=O)−〕およびメタクリロイル基〔CH
2=C(CH
3)−C(=O)−〕の総称である。特定重合性官能基以外の重合性基の分子中の数は特に限定されないが、1つ以下が好ましく、0がより好ましい。
【0040】
重合性化合物(B)は、下記構造群(b)のうち少なくとも1つの構造を有していることが好ましい。
【0042】
式中、R
11およびR
12はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
X
11、X
21、X
31、X
32およびX
41〜X
43はそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表す。
lは1〜4の整数を表す。
【0043】
重合性化合物(B)は、さらに、下記式(B−1)〜(B−5)で表される化合物が好ましい。
【0045】
L
1は2価の連結基を表し、−O−、−S−、−NR
N−(R
Nは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基)、−CO−、−O(C=O)−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、またはこれらを組み合わせた連結基が好ましい。なかでも、−O−、−CO−または−O(C=O)−が好ましい。
【0046】
L
2は2価の連結基を表し、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数7〜15のアラルキレン基、または−Si(R
Si)
2−が好ましい。ここで、R
Siは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基を表す。
【0047】
L
3はq+1価の連結基を表し、炭素数1〜12(好ましくは1〜6)でq+1価アルキル基(2価の場合アルキレン基)、炭素数2〜12(好ましくは2〜6)でq+1価のアルケニル基(2価の場合アルケニレン基)、炭素数6〜14でq+1価アリール基(2価の場合アリーレン基)、炭素数7〜15でq+1価アラルキル基(2価の場合アラルキレン基)、またはイソシアヌル酸残基(3価)が好ましい。L
3の具体例としては、3価のイソシアヌル酸連結基、シクロヘキサン−ジ、トリもしくはテトライル、ノルボルネン−ジ、トリもしくはテトライル、またはベンゼン−ジ、トリもしくはテトライル等が挙げられる。
【0048】
nは、1〜300の整数を表し、1〜200の整数が好ましい。
【0049】
mは、0〜300の整数を表し、0〜50の整数が好ましい。
【0050】
qは、1〜5の整数を表し、1または2が好ましい。
【0051】
Q
1は、分子中、その少なくとも1つが特定重合性官能基を含む基を表す。Q
1をなす特定重合性官能基を含む基は、好ましくは、下記式(q−1)〜(q−5)のいずれかである。
【0053】
L
4は、単結合、−O−、−CO−、−O(C=O)−、炭素数1〜6のアルキレン基、−O−R
L−、−CO−R
L−、−O(C=O)−R
L−、−(C=O)O−R
L−、またはこれらを組合せた連結基を表す。なかでも、単結合、−O−、−CO−、−O(C=O)−、炭素数1〜6のアルキレン基、−O−R
L−、−CO−R
L−、−O(C=O)−R
L−、または−(C=O)O−R
L−が好ましい。ここで、R
Lは炭素数1〜6のアルキレン基である。L
4がR
Lを含むとき、R
Lは特定重合性官能基側となる連結態様が好ましい。
Rは炭素数1〜6のアルキル基である。P1は0〜3の整数を表す。P2は0〜9の整数表す。P3は0〜5の整数を表す。
【0054】
Q
2は、水素原子、任意の置換基T、またはQ
1−(L
1)
m−である。あるいは、Q
2が連結基L
1となって、二量体化していてもよい。
【0055】
Q
1が特定重合性官能基でないとき、特定重合性官能基以外の重合性官能基であり、次のQ
3を有する基が好ましい。Q
3は不飽和結合を有する基である。好ましくは、連結基L
4を介してもよい、エテニル基、1−メチルエテニル基、2−メチルエテニル基、アリル基、または(メタ)アクリロイル基を表す。
【0056】
上記Q
1、Q
3、L
1、mは分子中で複数規定されるとき、互いに同じであっても異なっていてもよい。nが2以上のときそこに含まれる連結基は互いに同じであっても異なっていてもよい。また、連結基や置換基が置換可能な基(例えば、アルキル基、アリール基、アルキレン基、アリーレン基等)であるとき、任意の置換基Tを伴っていてもよい。任意の置換基Tとしては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0057】
特定重合性官能基を有する重合性化合物以外の重合性化合物(共重合成分)としては、重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、式(B−1)〜(B−5)のQ
1をQ
3に置き換えた化合物が好ましい。
なお、本発明で使用する、重合性官能基を2つ以上有しており、その少なくとも1つは特定重合性官能基である化合物(B)は、式(B−1)〜(B−5)のいずれかで表される重合性化合物である。ただし、式(B−2)において、Q1が式(q−2)〜(q−5)のいずれかであって、かつL1が−O−と炭素数1〜6のアルキレン基を組み合わせた連結基の場合、mは0または1であり、nが1である。
【0058】
以下に、本発明に係る特定重合性官能基を有する化合物(B)およびそれと共用することができる重合性化合物(共重合成分)の例を
、参考例を含めて挙げる
。なお、下記例示化合物において、aaは1〜300の整数を表し、laは1〜300の整数を表す。maは1〜300の整数を表し、naは1〜300の整数を表す。
【0059】
<特定重合性官能基を有する化合物の具体例>
【0066】
重合性化合物の総量〔重合性化合物(B)およびそれ以外の重合性化合物(共重合成分)の合計〕は、固体電解質(A)(活物質を含む場合にはこれを含む総量)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上が特に好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0067】
重合性化合物(B)とそれ以外の重合性化合物(共重合成分)の量の比率は、特に限定されないが、特定重合性官能基の種類によって、その範囲を調整することが好ましい。特定重合性官能基がメルカプト基を含むとき、チオール−エン反応を介して重合を進行させることが好ましい。この観点から、重合性化合物の総量中、チオール基のモル数に対して、等量の炭素−炭素不飽和結合基を有する化合物を用いることが好ましい。なお、重合性化合物(B)がメルカプト基と炭素−炭素不飽和結合基とを分子内に有するときには、上記のような共用は必要がない。
メルカプト基以外の特定重合性官能基を有する重合性化合物(B)を用いるとき、それ以外の重合性化合物(共重合成分)の量は任意である。それ以外の重合性化合物の量は、重合性化合物(B)100質量部に対して、下限は特に限定されないが、上限としては、80質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。
【0068】
(重合開始剤(C))
本発明に用いられる重合開始剤としては、通常のものを用いることができる。例えば、熱もしくは光重合開始剤が挙げられる。より詳細には、熱によって開裂して開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって開始ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、熱によって開裂して開始カチオンを発生する熱カチオン重合開始剤、光によって開裂して開始カチオンを発生する光カチオン重合開始剤、熱によって開裂して開始アニオンを発生する熱アニオン重合開始剤などが挙げられる。
熱によって開裂して開始ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジイソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノール)パーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びm−トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキセンなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチル)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン及び2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α−クミルペルオキシネオジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオジカーボネート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−アミルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びジブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルパーエステル類;ビス(3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート)、ビス(2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート)、ビス(1,1−ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t−アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート及び1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサンなどのパーオキシカーボネート類;1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン及び(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートなどが挙げられる。
アゾ系(AIBN等)の重合開始剤として使用するアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる(特開2010−189471号公報など参照)。
【0069】
光ラジカル重合開始剤は、ベンゾインエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔IRGACURE(登録商標) 651、BASFジャパン(株)製〕、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン〔IRGACURE(登録商標) 184、BASFジャパン(株)製〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン〔DAROCUR(登録商標) 1173、BASFジャパン(株)製〕、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔IRGACURE(登録商標) 2959、BASFジャパン(株)製〕、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン〔IRGACURE(登録商標) 127、BASFジャパン(株)製〕、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔IRGACURE 907、BASFジャパン(株)製〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン〔IRGACURE(登録商標) 369、BASFジャパン(株)製〕、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モノホリニル)フェニル]−1−ブタノン〔IRGACURE(登録商標) 379、BASFジャパン(株)製〕、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド〔DAROCUR(登録商標) TPO、BASFジャパン(株)製〕、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド〔IRGACURE(登録商標) 819、BASFジャパン(株)製〕、ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム〔IRGACURE(登録商標) 784、BASFジャパン(株)製〕、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]〔IRGACURE(登録商標) OXE 01、BASFジャパン(株)製〕、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)〔IRGACURE(登録商標) OXE 02、BASFジャパン(株)製〕などを挙げることができる。
【0070】
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも好ましくは、パーオキサイド化合物が挙げられ、パーブチルO(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、日油(株)社製)などを用いることができる。
重合開始剤の含有量は後述する量で適用することが好ましい。
【0071】
熱および光によって開裂して開始カチオンを発生するカチオン重合開始剤としては、芳香族スルホニウム塩類、芳香族ヨードニウム塩類などを挙げることができる。
中でも、好ましくは芳香族スルホニウム塩類が挙げられ、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業(株)社製)やCPIシリーズ(サンアプロ(株)社製)などを用いることができる。
【0072】
重合開始剤の量は特に限定されないが、重合性化合物の総量100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上2質量部以下がより好ましい。
【0073】
(リチウム塩(D))
本発明に用いることができるリチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はないが、例えば、以下に述べるものが好ましい。
【0074】
(L−1)無機リチウム塩:LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6等の無機フッ化物塩;LiClO
4、LiBrO
4、LiIO
4等の過ハロゲン酸塩;LiAlCl
4等の無機塩化物塩等。
【0075】
(L−2)含フッ素有機リチウム塩:LiCF
3SO
3等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩;LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩;LiC(CF
3SO
2)
3等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩;Li[PF
5(CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
3)
3]、Li[PF
5(CF
2CF
2CF
2CF
3)]、Li[PF
4(CF
2CF
2CF
2CF
3)
2]、Li[PF
3(CF
2CF
2CF
2CF
3)
3]等のフルオロアルキルフッ化リン酸塩等。
【0076】
(L−3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等。
これらのなかで、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6、LiClO
4、Li(Rf
1SO
3)、LiN(Rf
1SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、及びLiN(Rf
1SO
2)(Rf
2SO
2)が好ましく、LiPF
6、LiBF
4、LiN(Rf
1SO
2)
2、LiN(FSO
2)
2、及びLiN(Rf
1SO
2)(Rf
2SO
2)などのリチウムイミド塩がさらに好ましい。ここで、Rf
1およびRf
2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示す。
なお、電解液に用いる電解質は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
【0077】
リチウム塩の含有量は、固体電解質(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。上限としては、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0078】
(分散媒体(E))
本発明の固体電解質組成物には、上記の各成分を分散させる分散媒体を用いてもよい。分散媒体としては、例えば、水溶性有機溶媒が挙げられる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール化合物溶媒、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)を含むグリコール化合物もしくはそのエーテル化合物溶媒が挙げられる。
【0079】
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0080】
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0081】
エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0082】
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
【0083】
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。
【0084】
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0085】
本発明においては、なかでも、グリコール化合物もしくはそのエーテル化合物溶媒、アミド系化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましい。さらに、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましい。分散媒体は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。上限は220℃以下が好ましく、180℃以下がさらに好ましい。分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、固体電解質組成物における分散媒体の量は、固体電解質組成物の粘度と乾燥負荷とのバランスで任意の量とすることが出来る。一般的に、固体電解質組成物中、20〜99質量%が好ましい。
【0086】
(正極活物質(F−1))
本発明の固体電解質組成物には、正極活物質を含有させてもよい。それにより、正極材料用の組成物とすることができる。正極活物質には遷移金属酸化物を用いることが好ましく、中でも、遷移元素M
a(Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素)を有することが好ましい。また、混合元素M
b(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなど)を混合してもよい。遷移金属酸化物として例えば、下記式(MA)〜(MC)のいずれかで表されるものを含む特定遷移金属酸化物、あるいはその他の遷移金属酸化物としてV
2O
5、MnO
2等が挙げられる。正極活物質には、粒子状の正極活性物質を用いてもよい。具体的に、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できる遷移金属酸化物を用いることができるが、特定遷移金属酸化物を用いるのが好ましい。
【0087】
遷移金属酸化物としては、遷移元素M
aを含む酸化物等が好適に挙げられる。このとき混合元素M
b(好ましくはAl)などを混合してもよい。混合量としては、遷移金属の量に対して0〜30mol%が好ましい。Li/M
aのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
【0088】
〔式(MA)で表される遷移金属酸化物(層状岩塩型構造)〕
リチウム含有遷移金属酸化物としては中でも下式で表されるものが好ましい。
【0090】
式(MA)中、M
1はM
aと同義であり、好ましい範囲も同じである。aは0〜1.2(0.2〜1.2が好ましい)を表し、0.6〜1.1が好ましい。bは1〜3を表し、2が好ましい。M
1の一部は混合元素M
bで置換されていてもよい。式(MA)で表される遷移金属酸化物は典型的には層状岩塩型構造を有する。
【0091】
本遷移金属酸化物は下記の各式で表されるものがより好ましい。
【0092】
(MA−1) Li
gCoO
k
(MA−2) Li
gNiO
k
(MA−3) Li
gMnO
k
(MA−4) Li
gCo
jNi
1−jO
k
(MA−5) Li
gNi
jMn
1−jO
k
(MA−6) Li
gCo
jNi
iAl
1−j−iO
k
(MA−7) Li
gCo
jNi
iMn
1−j−iO
k
【0093】
ここでgはaと同義であり、好ましい範囲も同じである。jは0.1〜0.9を表す。iは0〜1を表す。ただし、1−j−iは0以上になる。kはbと同義であり、好ましい範囲も同じである。遷移金属化合物の具体例としては、LiCoO
2(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi
2O
2(ニッケル酸リチウム)LiNi
0.85Co
0.01Al
0.05O
2(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi
0.5Mn
0.5O
2(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
【0094】
式(MA)で表される遷移金属酸化物は、一部重複するが、表記を変えて示すと、下記で表されるものも好ましい例として挙げられる。
【0095】
(i)Li
gNi
xMn
yCo
zO
2(x>0.2,y>0.2,z≧0,x+y+z=1)
代表的なもの:
Li
gNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2
Li
gNi
1/2Mn
1/2O
2
【0096】
(ii)Li
gNi
xCo
yAl
zO
2(x>0.7,y>0.1,0.1>z≧0.05,x+y+z=1)
代表的なもの:
Li
gNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2
【0097】
〔式(MB)で表される遷移金属酸化物(スピネル型構造)〕
リチウム含有遷移金属酸化物としては中でも下記式(MB)で表されるものも好ましい。
【0098】
Li
cM
22O
d ・・・ 式(MB)
【0099】
式(MB)中、M
2はM
aと同義であり、好ましい範囲も同じである。cは0〜2(0.2〜2が好ましい)を表し、0.6〜1.5が好ましい。dは3〜5を表し、4が好ましい。
【0100】
式(MB)で表される遷移金属酸化物は下記の各式で表されるものがより好ましい。
【0101】
(MB−1) Li
mMn
2O
n
(MB−2) Li
mMn
pAl
2−pO
n
(MB−3) Li
mMn
pNi
2−pO
n
【0102】
mはcと同義であり、好ましい範囲も同じである。nはdと同義であり、好ましい範囲も同じである。pは0〜2を表す。遷移金属化合物の具体例としては、LiMn
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4が挙げられる。
【0103】
式(MB)で表される遷移金属酸化物は、さらに下記で表されるものも好ましい。
【0104】
(a) LiCoMnO
4
(b) Li
2FeMn
3O
8
(c) Li
2CuMn
3O
8
(d) Li
2CrMn
3O
8
(e) Li
2NiMn
3O
8
【0105】
高容量、高出力の観点で上記のうちNiを含む電極がさらに好ましい。
【0106】
〔式(MC)で表される遷移金属酸化物〕
リチウム含有遷移金属酸化物としてはリチウム含有遷移金属リン酸化物も好ましく、中でも下記式(MC)で表されるものも好ましい。
【0107】
Li
eM
3(PO
4)
f ・・・ 式(MC)
【0108】
式(MC)中、eは0〜2(0.2〜2が好ましい)を表し、0.5〜1.5が好ましい。fは1〜5を表し、1または2が好ましい。
【0109】
M
3はV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuから選択される1種以上の元素を表す。M
3は、上記の混合元素M
bの他、Ti、Cr、Zn、Zr、Nb等の他の金属で置換されていてもよい。具体例としては、例えば、LiFePO
4、Li
3Fe
2(PO
4)
3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP
2O
7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO
4等のリン酸コバルト類、Li
3V
2(PO
4)
3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
なお、Liの組成を表すa、c、g、m、e値は、充放電により変化する値であり、典型的には、Liを含有したときの安定な状態の値で評価される。式(a)〜(e)では特定値としてLiの組成を示しているが、これも同様に電池の動作により変化するものである。
【0110】
本発明の全固体二次電池で用いられる正極活物質の平均粒子サイズは特に限定されないが、0.1μm〜50μmが好ましい。正極活性物質を所定の粒子サイズにするには、通常の粉砕機や分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
【0111】
正極活物質の濃度は特に限定されないが、固体電解質組成物中、固形成分100質量%において、20〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
【0112】
(負極活物質(F−2))
本発明の固体電解質組成物には、負極活物質を含有させてもよい。負極活物質を含有させることにより、負極材料用の組成物とすることができる。負極活物質としては、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものが好ましい。そのような材料は、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、及び、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムの吸蔵、放出が可能なものが好ましい。このような材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
【0113】
負極活物質として用いられる炭素質材料は、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛、及びPAN系の樹脂やフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー、平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
【0114】
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素材料と黒鉛系炭素材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載されている面間隔や密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報に記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報に記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
【0115】
負極活物質として使用される金属酸化物および金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
【0116】
非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群のなかでも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13族〜15族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの1種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga
2O
3、SiO、GeO、SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
2O
3、Pb
2O
4、Pb
3O
4、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、Bi
2O
3、Bi
2O
4、SnSiO
3、GeS、SnS、SnS
2、PbS、PbS
2、Sb
2S
3、Sb
2S
5、SnSiS
3などが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li
2SnO
2であってもよい。
【0117】
負極活物質の平均粒子サイズは、0.1μm〜60μmが好ましい。所定の粒子サイズにするには、よく知られた粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。
【0118】
焼成法により得られた化合物の組成式は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
【0119】
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併用することができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵・放出できる炭素材料や、リチウム、リチウム合金、リチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
【0120】
負極活物質はチタン原子を含有することが好ましい。より具体的にはLi
4Ti
5O
12がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。特定の負極と更に特定の電解液を組合せることにより、様々な使用条件においても二次電池の安定性が向上する。
【0121】
負極活物質の濃度は特に限定されないが、固体電解質組成物中、固形成分100質量%において、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0122】
なお、上記の実施形態では、本発明に係る固体電解質組成物に正極活物質ないし負極活物質を含有させる例を示したが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。例えば、特定の重合性化合物(B)を含まないバインダー組成物として正極活物質ないし負極活物質を含むペーストを調製してもよい。このとき、本発明の固体電解質を含有させることが好ましい。このような、常用される正極材料ないし負極材料と組み合わせて、本発明の固体電解質組成物を用い固体電解質層を形成してもよい。また、正極および負極の活物質層には、適宜必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。一般的な電子伝導性材料として、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維や金属粉、金属繊維、ポリフェニレン誘導体などが挙げられる。
【0123】
<集電体(金属箔)>
正・負極の集電体としては、化学変化を起こさない電子伝導体が好ましい。正極の集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンなどの他にアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。負極の集電体としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金がより好ましい。
【0124】
集電体の形状としては、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。集電体の厚みは、特に限定されないが、1μm〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
【0125】
<全固体二次電池の作製>
全固体二次電池は常法により作製することができる。具体的には、本発明の固体電解質組成物を集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成することで電池用電極シートを製造する方法が挙げられる。例えば、正極集電体である金属箔上に正極材料となる組成物を塗布後、乾燥し、正極層を形成する。次いでその電池用正極シート上に、固体電解質組成物を塗布後、乾燥し、固体電解質層を形成する。さらに、その上に、負極材料となる組成物を塗布後、乾燥し、負極層を形成する。その上に、負極側の集電体(金属箔)を重ねることで、正極層と負極層の間に、固体電解質層が挟まれた全固体二次電池の構造を得ることができる。なお、上記の各組成物の塗布方法は常法によればよい。このとき、正極活物質層をなす組成物、無機固体電解質層をなす組成物(固体電解質組成物)、及び負極活物質層をなす組成物のそれぞれの塗布の後に、乾燥処理を施しても良いし、重層塗布した後に乾燥処理をしても良い。また、別々の基材に各組成物を塗布した後に、転写により積層してもよい。乾燥温度は特に限定されないが、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。これにより、全固体二次電池において、良好な結着性と非加圧でのイオン伝導性を得ることができる。
【0126】
<全固体二次電池の用途>
本発明に係る全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定されないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
【0127】
なかでも、高容量且つ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用されることが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となり、さらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の安全性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
【0128】
本発明の好ましい実施形態は、以下のような各応用形態が挙げられる。
(1)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を含んでいる固体電解質組成物(正極または負極の電極用組成物)。
(2)重合性化合物(B)が、その重合性官能基を介して重合されてなる固体電解質組成物。
(3)固体電解質組成物を金属箔上に製膜されてなる電池用電極シート。
(4)製膜時に、重合性化合物(B)を重合させてなる電池用電極シート。
(5)200℃1時間保持前後での質量減少が1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下)である電池用電極シート。
上記質量減少は特に断らない限り、実施例で測定した条件による。
(6)正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、正極活物質層、負極活物質層、および固体電解質層の少なくともいずれかの層を本発明の固体電解質組成物を含有する全固体二次電池。
(7)固体電解質組成物を金属箔上に配置し、これを製膜する電池用電極シートの製造方法。
(8)製膜時に、重合性化合物(B)を重合させてなる電池用電極シートの製造方法。
(9)上記電池用電極シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【0129】
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池を言う。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLLTやLLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質粒子のバインダーとして高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLLTやLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときには、これを「電解質塩」または「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」は、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。
【実施例】
【0130】
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。なお、「部」および「%」というときには、特に断らない限り質量基準である。
【0131】
(重合性組成物の調製)
トリエチレングリコールジビニルエーテル(Aldrich社製、例示化合物A−1)69.0g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)(和光純薬工業株式会社製、例示化合物K−10)30.0gを混合した。その後、V−65(和光純薬工業株式会社製)1.0gを加え、完全に溶解するまで、撹拌を続け、重合性組成物P−1を得た。
他の例示重合性組成物も、下記表1に記載の組み合わせで、重合性組成物P−1と同様の方法で調製した。
【0132】
〔実施例1〕
(固体電解質組成物の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質LLT(株式会社豊島製作所製)9.0g、重合性組成物P−1 0.8g、LiTFSI[LiN(CF
3SO
2)
2](Aldrich社製)0.2gを加え、分散媒として、メチルエチルケトン15.0gを投入した後に、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、回転数300rpmで2時間混合を続け、固体電解質組成物S−1を得た。他の固体電解質組成物も下記表2の組み合わせで、固体電解質組成物S−1と同様の方法で調製した。
【0133】
【表1】
【0134】
<表の注>
表中数字は質量比(%)
化合物の番号は例示化合物の化合物番号である。
V−65:和光純薬工業株式会社製の重合開始剤
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
パーブチルO:日油株式会社製のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
サンエイドSI−100L:三新化学工業株式会社製の芳香族スルホニウム塩
MMA:和光純薬工業株式会社製のメタクリル酸メチル
【0135】
【表2】
【0136】
<表の注>
表中数字は質量比(%)
LLZ :Li
7La
3Zr
2O
12
LLT :Li
0.33La
0.55TiO
3
PEO :ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量 3,000)
TEOS:テトラエトキシシラン
THF :テトラヒドロフラン
NMP :N−メチルピロリドン
MFG :プロピレングリコールモノメチルエーテル
MEK :メチルエチルケトン
組成物T−1〜T−4は比較例である。
【0137】
(固体電解質シートの作製)
上記で得られた固体電解質組成物を厚み20μmのアルミ箔上に、クリアランスが調製できるアプリケーターにより塗布し、80℃1時間加熱し、その後さらに110℃1時間加熱して、塗布溶媒を乾燥させた。その後、厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、所定の密度になるように加熱および加圧し、固体電解質シートを得た。電解質層の膜厚は30μmであった。他の固体電解質シートも同様の方法で調製した。
【0138】
二次電池正極用組成物の調製
プラネタリーミキサー(TKハイビスミックス、PRIMIX社製)に、アセチレンブラック5質量部、N−メチルピロリドン270質量部、表3に正極の欄に記載の正極活物質100質量部および固体電解質組成物S−1 75質量部を加え、40rpmで1時間撹拌をおこなった。
【0139】
二次電池負極用組成物の調製
プラネタリーミキサー(TKハイビスミックス、PRIMIX社製)に、アセチレンブラック5質量部、N−メチルピロリドン270質量部、表3の正極の欄に記載の負極活物質100質量部、および固体電解質組成物S−1 75質量部を加え、40rpmで一時間撹拌を行った。LTO(チタン酸リチウム)は、石原産業株式会社製の商品名「エナマイトLT−106」を用いた。
【0140】
二次電池用正極シートの作製
上記で得られた二次電池正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔上に、クリアランスが調製できるアプリケーターにより塗布し、80℃1時間加熱し、その後さらに110℃1時間加熱して、塗布溶媒を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、所定の密度になるように加熱および加圧し、二次電池用正極シートを得た。
【0141】
二次電池用電極シートの作製
上記で得られた二次電池用正極シート上に、表3に記載の固体電解質組成物を、クリアランスが調製できるアプリケーターにより塗布し、80℃1時間とさらに110℃1時間加熱し、乾燥と同時に重合性組成物を硬化させた。その後、上記で得られた二次電池負極用組成物をさらに塗布し、80℃1時間加熱し、その後さらに110℃1時間加熱し、乾燥と同時に重合性組成物を重合硬化させた。負極層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、所定の密度になるように加熱および加圧し、二次電池用電極シートを得た。
【0142】
<電極柔軟性の評価>
2cm×10cmの大きさに切り出した電極シートの集電体側の面を直径2mmのSUS棒に巻きつけ、長手方向にSUS棒を移動させた際の剥離の有無を観察し、剥離が生じた面積の割合から、以下の基準で評価した。
A:0%
B:0%超5%以下
C:5%超20%未満
D:20%以上
【0143】
<イオン伝導度の測定>
上記で得られた固体電解質シートまたは二次電池電極シートを直径14.5mmの円板状に切り出し、スペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケースに入れてコイン電池を作製した。コイン電池の外部より、電極間に圧力をかけることができるジグに挟み、各種電気化学的測定に用いた。電極間の圧力は500kgf/cm
2であった。
上記で得られたコイン電池を用いて、30℃の恒温槽中、交流インピーダンス法により求めた。このとき、電池の加圧には
図2に示した試験体を用いた。11が上部支持板、12が下部支持板、13がコイン電池、14がコインケース、15が電極シート(固体電解質シートまたは二次電池電極シート)、Sがネジである。下記表3において、加圧状態とは、コイン電池を上記ジグで挟んだ状態で測定した場合であり、非加圧状態は、コイン電池をそのまま測定したことを表す。
【0144】
<200℃1時間における質量変化の測定>
上記により得られた各種電極シートを直径14.5cmの円板状に切り出し、質量を測定後、200℃のホットプレート上に静置し、1時間後に再度質量を測定した。質量減少度を初期質量の百分率で評価した。得られた評価結果を表3に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
<表の注>
試験No.:cで始まるものが比較例
LMO;LiMn
2O
4 マンガン酸リチウム
LTO;Li
4Ti
5O
12 チタン酸リチウム
LCO;LiCoO
2 コバルト酸リチウム
NMC;Li(Ni
1/3Mn
1/3Co
1/3)O
2
ニッケル、マンガン、コバルト酸リチウム
質量減少(質量%):200℃1時間保存後の質量の減少(質量%)
【0147】
表3から明らかなように、本発明の固体電解質組成物を用いた二次電池用電極シートおよび積層した電池は、いずれも電極柔軟性に優れ、かつ非加圧状態でのイオン伝導性に優れる。このことから、製造上電極シートの取扱い時に、固体電解質および電極活物質の剥離が生じず、固体界面の電気化学的接触を維持できるため、電極間を加圧する機構が不要であり、サイクル性が良好であることが予想される。一方、本発明の固体電解質組成物を含まない固体電解質層T−1を用いた比較例c11は、電極柔軟性が劣り、非加圧状態でのイオン伝導性も大きく劣る。結着剤として、ゾル−ゲル法の縮合物として得た固体電解質組成物T−2を用いた比較例c12では、電極柔軟性が劣り、ゾル−ゲルの未反応点に由来すると考えられる200℃での質量減少が大きく、電池特性に悪影響を与えることが予想される。ポリエチレンオキサイドとLiTFSIの混合物からなる固体電解質組成物T−3、特定重合性官能基を持たない重合性化合物を用いた固体電解質組成物T−4をそれぞれ使用した比較例c13、c14では、電極柔軟性がやや劣り、非加圧状態でのイオン伝導性が大きく劣った。