【文献】
ZHENG,F. et al,Org.Lett.,2006年,Vol8.,No.26,pp.6083-6086
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ランタノイド、マグネシウム、スカンジウム、ハフニウム、鉄、銅、アルミニウム、インジウムまたはスズの金属塩が、前記一般式(I)で表される化合物に対して0.01〜1.0当量である請求項1に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チオ糖のようなチオラン環やチアン環を形成する従来の方法は、工程数が多く、煩雑であり、取り扱い、環境面、反応収率などの点で大量製造するのに適していない。
例えば、チオ糖を合成する従来の方法は、主にジチオケタール法やプメラー法である。ジチオケタール法では、ジベンジルメルカプタンのような比較的低級のメルカプタンを使用することから、これらは悪臭が強く、環境上も健康上も好ましくない。一方、プメラー法はプメラー転位工程で、必然的に立体異性体が生成するため、糖などのように一方の立体異性体のみを選択的に合成できない。
従って、本発明は、穏和な条件で、簡便、かつ高収率で、チオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物が合成できる製造方法を提供することを課題とする。
さらには、糖などのように立体異性体を保持しなければならない場合であっても適用でき、環境負荷が少なく、大量製造が可能なチオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、チオラン環やチアン環を形成する反応を種々検討した結果、脱離基を有するアルデヒドと硫黄化合物とを反応させると、置換−環化反応により1工程で硫黄飽和複素環化合物が合成できることを見出した。さらなる高収率化を達成するため、副生成物の構造解析から、この副生生物の生成を抑える方法を検討した結果、反応をプロトン酸または金属塩の存在下で行うと、反応が著しく加速され、しかも副生成物の生成が低く抑えられることがわかり、本発明に至った。
【0006】
上記の課題は以下の手段により達成された。
<1>下記一般式(I)で表される化合物を、ランタノイド、マグネシウム、スカンジウム、ハフニウム、鉄、銅、アルミニウム、インジウムまたはスズの金属塩存在下、
Mがアルカリ金属であるMSHまたはM2Sで表される硫黄化合物と反応させる一般式(II)で表される化合物の製造方法。
【0007】
【化1-1】
【0008】
一般式(I)および(II)において、R
1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは脱離基を表す。Q
1およびQ
3は各々独立にメチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Q
2は単結合、メチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
ここで、アルキル基、アリール基およびメチレン基は置換基を有してもよい。
<2>下記一般式(I)で表される化合物を、プロトン酸存在下、
Mがアルカリ金属であるMSHまたはM2Sで表される硫黄化合物と反応させる一般式(II)で表される化合物の製造方法であって、
プロトン酸が、一般式(I)で表される化合物に対して0.1〜0.5当量である製造方法。
【化1-2】
一般式(I)および(II)において、R
1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは脱離基を表す。Q
1およびQ
3は各々独立にメチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Q
2は単結合、メチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
ここで、アルキル基、アリール基およびメチレン基は置換基を有してもよい。
<3>ランタノイド、マグネシウム、スカンジウム、ハフニウム、鉄、銅、アルミニウム、インジウムまたはスズの金属塩が、一般式(I)で表される化合物に対して0.01〜1.0当量である<1>に記載の製造方法。
<4>ランタノイドの金属塩が、セリウム、イッテルビウムまたはランタンの金属塩である<1>または<3>に記載の製造方法。
<5>プロトン酸が塩酸である<2>に記載の製造方法。
<6>一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(IA)で表される化合物であり、一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(IIA)で表される化合物である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0009】
【化2】
【0010】
一般式(IA)および(IIA)において、R
1およびXは、一般式(I)におけるR
1およびXと同義である。R
2〜R
5は各々独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。R
2とR
3、または、R
4とR
5が互いに共同して、=O、または=C(R
A1)(R
A2)で表されるメチリデン基を形成しても
よい。ここで、R
A1およびR
A2は各々独立に、水素原子
、アルキル基またはアリール基を表す。また、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は置換基を有してもよい。
<
7>一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(IB)で表される化合物であり、一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(IIB)で表される化合物である<1>〜<
5>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
一般式(IB)および(IIB)において、R
1およびXは、一般式(I)におけるR
1およびXと同義である。R
2〜R
7は各々独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。R
2とR
3、R
4とR
5、または、R
6とR
7が互いに共同して、=O、または=C(R
A1)(R
A2)で表されるメチリデン基を形成してもよい。ここで、R
A1およびR
A2は各々独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は置換基を有してもよ
い。
【0013】
本明細書において、各置換基は、特段の断りがない限り、さらに置換基で置換されていてもよい。また、複数の同じ符号の基が存在する場合、これらの複数の基は、特段の断りがない限り、互いに同一であっても異なっていても構わないことを意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、穏和な条件で、簡便、かつ高収率で、チオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物が合成できる製造方法が提供できる。
しかも、プメラー転位のように、糖などのように立体異性体を保持しなければならない場合であっても適用でき、環境負荷が少なく、大量製造が可能なチオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<チオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物の製造方法>>
本発明のチオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物の製造方法は、下記一般式(I)で表される化合物を、アルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属塩またはプロトン酸存在下、硫黄化合物と反応させる。
【0018】
一般式(I)および(II)において、R
1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは脱離基を表す。Q
1およびQ
3は各々独立にメチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q
2は単結合、メチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子または置換基を表す。
ここで、アルキル基、アリール基およびメチレン基は置換基を有してもよい。
【0019】
上記反応は、硫黄化合物を、本発明で好ましいMSHとした場合、以下のように進行すると想定される。ここで、Mはアルカリ金属を表す。
【0021】
一般式(I)〜(III)において、R
1、Q
1〜Q
3、Xは一般式(I)、(II)におけるR
1、Q
1〜Q
3、Xと同義であり、好ましい範囲も同じである。
Mはアルカリ金属を表す。
【0022】
上記反応スキームで示すように、最初に、硫黄化合物(上記ではMSH)がアルデヒドのカルボニル基と反応して、反応中間体の上記一般式(III)で表される反応中間体となり、SHが、脱離基Xが置換した炭素原子を求核攻撃して、Xが脱離し、この結果、環化して一般式(II)で表される化合物が合成される。
【0023】
ここで、下記の反応では、副生成物が下記の収率で副生することから、これらを構造解析した結果、副生成物αと多量体であることがわかった。
【0025】
これらの副生成物は、下記のスキームで生じたものと推定している。すなわち、副生成物αは、アルデヒド化合物のα位の炭素原子アニオンが分子内のγ位の炭素原子を攻撃して、CH
3SO
3アニオンが脱離することで生じる。一方、多量体は、分子間でアルデヒド基のカルボニルの炭素原子を攻撃する工程を含んだ反応により生じているものと考えられる。
【0027】
本発明では、これらの副生成物の生成を金属塩またはプロトン酸で抑制し、反応速度を高め、高収率を達成したものである。
【0028】
以下に、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0029】
<チオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物>
本発明の製造方法で合成するチオラン環もしくはチアン環骨格を有する化合物は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0031】
一般式(II)において、R
1は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Q
1およびQ
3は各々独立にメチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q
2は単結合、メチレン基、−C(=O)−または−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−を表し、R
A1およびR
A2は各々独立に水素原子または置換基を表す。
ここで、アルキル基、アリール基およびメチレン基は置換基を有してもよい。
【0032】
R
1におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜16がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルが挙げられる。
【0033】
アルキル基は、置換基を有していてもよく、このような置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボンアミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、アジド基などが挙げられる。
【0034】
これらの基はさらに置換基で置換されていてもよく、このような置換基は、上記の置換基が挙げられる。
例えば、アルキル基に、アリール基が置換した、アラルキルオキシ基、アシル基が置換したアシルオキシアルキル基が挙げられる。
【0035】
上記の各基の炭素数は、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。
【0036】
R
1におけるアルキル基は、置換基を有してもよいメチルが好ましく、メチル、ヒドロキシメチル、アリールオキシメチル基、アシルオキシメチル基が好ましい。
【0037】
R
1におけるアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜12がさらに好ましく、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
アリール基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、R
1のアルキル基が有してもよい置換基が挙げられる。
【0038】
R
1は、水素原子、置換基を有してもよいメチル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましくメチル、置換を有してもよいメチル基、置換基を有してもよいアリールがより好ましく、メチル、ヒドロキシメチル、アリールオキシメチル基、アシルオキシメチル基、置換基を有してもよいアリール基がさらに好ましく、アリールオキシメチル基が特に好ましい。
【0039】
Q
1〜Q
3における置換基を有してもよいメチレン基の置換基としては、R
1のアルキル基が有してもよい置換基が挙げられる。このような置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アシル基、アラルキルオキシ基が挙げられ、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アシル基、アラルキルオキシ基が好ましい。
【0040】
Q
1〜Q
3におけるメチレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、R
1のアルキル基が有してもよい置換基が挙げられ、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基が好ましい。
Q
1〜Q
3における−C〔=C(R
A1)(R
A2)〕−中のR
A1およびR
A2の置換基は、R
1のアルキル基が有してもよい置換基が挙げられ、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基が好ましい。
R
A1およびR
A2は、水素原子、アルキル基およびアリール基から選択される基が好ましい。
このため、本発明では、RA1およびRA2は、水素原子、アルキル基またはアリール基である。
【0041】
Q
1およびQ
3は、メチレン基、−C(=O)−、−C(=CH
2)−が好ましく、メチレン基がより好ましい。
Q
2は、単結合、メチレン基、−C(=O)−、−C(=CH
2)−が好ましい。
【0042】
一般式(II)において、Q
2が単結合の場合、5員環のチオラン環となり、Q
2が置換基を有してもよいメチレン基の場合、6員環のチアン環となる。
【0043】
一般式(II)で表される化合物は、下記一般式(IIA)または(IIB)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0045】
一般式(IIA)および(IIB)において、R
1は一般式(II)におけるR
1と同義である。R
2〜R
7は各々独立に、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アジド基、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。R
2とR
3、R
4とR
5、または、R
6とR
7が互いに共同して、=O、または=C(R
A1)(R
A2)で表されるメチリデン基を形成しても
よい。ここで、R
A1およびR
A2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。また、アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は置換基を有してもよい。
【0046】
R
2〜R
7におけるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0047】
R
2〜R
7におけるアミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、炭素数0〜20が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜16がさらに好ましく、1〜12が特に好ましく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、デシルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、ジフェニルアミノが挙げられる。
【0048】
R
2〜R
7におけるアシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基が挙げられる。
【0049】
アルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜16がより好ましく、2〜12がさらに好ましく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、イソブチリルオキシ、ピバロイルオキシ、2−エチルヘキシルカルボニルオキシ、ラウロイルオキシ、ステアロイルオキシが挙げられる。
【0050】
アルケニルカルボニルオキシ基の炭素数は、3〜20が好ましく、3〜16がより好ましく、3〜12がさらに好ましく、例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、オレイルオキシが挙げられる。
【0051】
シクロアルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、4〜20が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜16がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。シクロアルキルカルボニルオキシ基のシクロアルキル基は3〜6員環が好ましく、3、5または6員環がより好ましく、5または6員環がさらに好ましい。
シクロアルキルカルボニルオキシ基は、例えば、シクロプロピルカルボニルオキシ、シクロペンチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシが挙げられる。
アリールカルボニルオキシ基の炭素数は7から20が好ましく、7〜16がより好ましく、7〜12がさらに好ましく、例えば、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシが挙げられる。
【0052】
ヘテロ環カルボニルオキシ基の炭素数は1〜20が好ましく、2〜16がより好ましく、3〜12がさらに好ましい。
ヘテロ環カルボニルオキシ基におけるヘテロ環は、ヘテロ環を構成するヘテロ原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、環は5または6員環が好ましく、ベンゼン環やヘテロ環が縮環していてもよい。ヘテロ環としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環が挙げられ、これらのベンゼン縮合環がさらに挙げられる。
【0053】
R
2〜R
7におけるアシルオキシ基は、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基が好ましい。
【0054】
R
2〜R
7におけるアルコキシ基の炭素数は1〜20が好ましく、1〜16がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、nヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、2−エチルヘキシル、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシが挙げられる。
【0055】
R
2〜R
7におけるアリールオキシ基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜12がさらに好ましく、例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシが挙げられる。
【0056】
R
2〜R
7は水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。
【0057】
アミノ基、アシルオキシ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、R
1のアルキル基が置換してもよい置換基が挙げられる。
【0058】
R
2とR
3、R
4とR
5、または、R
6とR
7が互いに共同して、=O、または=C(R
A1)(R
A2)で表されるメチリデン基を形成してもよい。ここで、=C(R
A1)(R
A2)で表されるメチリデン基は、一般式(II)における=C(R
A1)(R
A2)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0059】
R
1〜R
7が互いに結合して形成する環は、5または6員環が好ましく、このような環はシクロペンタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素環、ベンゼン環のような芳香環、エチレンジオキシもしくはメチレンジオキシで形成されるようなヘテロ環であっても構わない。
【0060】
一般式(IIA)、(IIB)で表される化合物のうち、一般式(IIA)で表される化合物が好ましい。
【0061】
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を
、参考例を含めて示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0064】
本発明では、上記一般式(II)で表される化合物は、下記一般式(I)で表される化合物を原料にして合成する。
【0067】
一般式(I)において、R
1およびQ
1〜Q
3は一般式(II)におけるR
1およびQ
1〜Q
3と同義であり、好ましい範囲も同じである。Xは脱離基を表す。
【0068】
Xはハロゲン原子、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基が好ましい。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキルスルホニルオキシ基における炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。
アルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、n−ブチルスルホニルオキシ、t−ブチルスルホニルオキシ、オクチルスルホニルオキシ、ドデシルスルホニルオキシが挙げられる。
アリールスルホニルオキシ基における炭素数は、6〜16が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
アリールスルホニルオキシ基としては、例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシ、4−クロロベンゼンスルホニルオキシ、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホニルオキシが挙げられる。
【0069】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(IA)または(IB)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0071】
一般式(IA)および(IB)において、R
1およびXは、一般式(I)におけるXと同義であり、好ましい範囲も同じである。R
2〜R
7は、一般式(IIA)、(IIB)におけるR
2〜R
7と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0072】
一般式(IA)または(IB)のいずれかで表される化合物のうち、一般式(IA)で表される化合物が好ましい。
【0073】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を
、参考例を含めて示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0077】
一般式(I)で表される化合物は、国際公開第2014/027658号パンフレットに記載の方法もしくはこれに準じた方法で合成することができる。
【0078】
<硫黄化合物>
一般式(I)で表される化合物と反応させる硫黄化合物としては、硫化水素またはその塩が挙げられる。
硫化水素の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。
硫黄化合物としては、Mがアルカリ金属であるMSHまたはM
2Sが好ましい。
このため、本発明では、硫黄化合物として、Mがアルカリ金属であるMSHまたはM2Sを使用する。
硫黄化合物は、例えば、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化カリウム、硫化水素カルシウム、硫化カルシウムおよび硫化マグネシウムなどが挙げられ、硫化水素ナトリウムが好ましい。
硫黄化合物は、水和物でもよく、水溶液に溶解させて使用することもできる。
【0079】
硫黄化合物の使用量は、一般式(I)で表される化合物に対して、0.2〜10倍モル好ましく、0.5〜2.0倍モルがより好ましく、0.7〜1.5倍モルがさらに好ましい。
【0080】
<添加剤>
本発明では、アルカリ金属およびアルカリ土類金属以外の金属塩またはプロトン酸の存在下で反応を行う。このような金属塩やプロトン酸を使用することで、先に説明した副生成物の生成が抑制でき、反応速度も高まり、一般式(II)で表される化合物の収率が向上する。
詳細なメカニズムは明らかでないが、上記金属塩やプロトン酸により、アルデヒドのエノール化やアルデヒドのα位の炭素原子のアニオンの生成が抑制されることが原因であると思われる。
例えば、下記のチオラン環を形成する反応で示すと、以下の通りである。
【0082】
金属塩としては、ランタノイドの金属塩、周期律表の第2〜14属の金属塩が挙げられ、このなかでもランタノイドの金属塩、周期律表の第2〜4、8、11、13、14属の金属塩が好ましく、ランタノイドの金属塩がより好ましく、セリウム、イッテルビウム、ランタン、マグネシウム、スカンジウム、ハフニウム、鉄、銅、アルミニウム、インジウム、スズの塩がさらに好ましく、セリウム、ランタンの塩が特に好ましく、セリウム(III)、ランタン(III)のハロゲン化物(塩化物、臭化物など)やスルホネート(トリフルオロスルホネートなど)が、なかでも好ましく、三塩化セリウム(CeCl
3)、三塩化ランタンの塩化リチウム混合物(LaCl
3・2LiCl)が最も好ましい。
このため、本発明で使用する金属塩は、ランタノイド、マグネシウム、スカンジウム、ハフニウム、鉄、銅、アルミニウム、インジウムまたはスズの金属塩である。
【0083】
プロトン酸は、プロトンを有し、かつこのプロトンを放出もしくは解離できる酸であり、ルイス酸のようなプロトンを有さないものとは異なる。プロトン酸は、無機もしくは有機のプロトン酸のいずれでも構わない。
無機のプロトン酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸が挙げられ、有機のプロトン酸としては、脂肪族、芳香族のプロトン酸のいずれでもよく、例えば、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸が挙げられる。
これらのプロトン酸のうち、塩酸、硫酸、酢酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0084】
金属塩またはプロトン酸は、一般式(I)で表される化合物に対して、0.01〜1.0当量が好ましく、0.01〜0.9当量がより好ましく、0.05〜0.8当量がさらに好ましく、0.1〜0.5当量が特に好ましい。
ただし、本発明では、プロトン酸は、一般式(I)で表される化合物に対して、0.1〜0.5当量である。
【0085】
<反応溶媒>
一般式(I)で表される化合物を硫黄化合物と反応させる工程の反応に使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されるものではない。例えば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、スルホキシド類、芳香族炭化水素類、尿素類および水が挙げられ、これらの溶媒は混合して使用してもよい。
好ましい溶媒としては、部分構造にアミド部分またはスルホニル基を有する溶媒、すなわち、アミド類、環状アミド類、尿素類、環状尿素類、スルホキシド類である。
具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0086】
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、一般式(I)で表される化合物に対して、1〜50倍量(v/w)であればよく、1〜15倍量(v/w)が好ましい。
【0087】
反応温度は、−20〜100℃好ましく、−10〜80℃がより好ましく、−5〜60℃がさらに好ましい。
反応時間は、5分間〜50時間が好ましく、5分間〜24時間がより好ましく、5分間〜6時間がさらに好ましい。
【0088】
<<一般式(II)で表される化合物の用途>>
一般式(II)で表される化合物は、抗ウイルス活性または抗腫瘍活性を示すチオヌクレオシド〔例えば、チオ抗腫瘍剤として有用な1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンや1−(4-チオ-β−D−アラビノフラノシル)シトシンの周辺化合物〕、糖尿病治療薬の有効成分として期待される〔5−チオ−β−グルコピラノシド化合物やその周辺化合物〕の製造などに有用な化合物である。
【実施例】
【0089】
以下に実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれによって限定して解釈されるものではない。
【0090】
特に断りのない限り、以下の測定機器を使用して測定した。
【0091】
(使用測定機器)
カラムクロマトグラフィー
測定機器:山善株式会社製の分取クロマト装置 W-Prep 2XY
クロマト担体:シリカゲル
【0092】
1H−NMRスペクトル
測定機器:Bruker社のAVANCE 300
全δ値をppmで示した。
【0093】
実施例1
〔金属塩として、三塩化セリウム(CeCl
3)を使用した反応〕
【0094】
反応1(三塩化セリウム1当量)
【0095】
【化18】
【0096】
(2S)−1−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン−2−イル メタンスルホナート〔以後、化合物(IA−1)と称す〕0.57gのN,N−ジメチルホルムアミド20mL溶液に三塩化セリウム7水和物0.75gを加え、0〜10℃で15%硫化水素ナトリウム水溶液1.5mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチルおよび飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、有機層を分取した。飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物の(5R)−5−{(ベンジルオキシ)メチル}チオラン−2−オール〔以後、化合物(IIA−1)と称す〕0.35g(収率78.3%)を得た。
【0097】
1H−NMR(CDCl
3)δ値:
7.39−7.26(5H,m),5.55−5.50(0.48H,m),5.49−5.45(0.52H,m),4.59(1.04H,s),4.56(0.48H,d,J=12.2Hz),4.50(0.48H,d,J=12.2Hz),3.85−3.56(2H,m),3.43−3.31(1H,m),2.31−1.86(5H,m)
【0098】
反応2(三塩化セリウムなし)
【0099】
【化19】
【0100】
(2S)−1−(ベンジルオキシ)−5−オキソペンタン−2−イル メタンスルホナート(IA−1)0.70gのN,N−ジメチルホルムアミド24mL溶液に、0〜10℃で15%硫化水素ナトリウム水溶液1.8mLを添加し、室温(25℃)で2時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチルおよび飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、有機層を分取した。飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色油状物の(5R)−5−{(ベンジルオキシ)メチル}チオラン−2−オール(IIA−1)0.31g(収率56.5%)を得た。また、この反応において副生成物として2−{(ベンジルオキシ)メチル}シクロプロパン−1−カルボアルデヒド〔以後、副生成物(IIA−1α)と称す〕0.07g(生成率15.1%)および多量体0.08gが得られた。
【0101】
2−{(ベンジルオキシ)メチル}シクロプロパン−1−カルボアルデヒド〔副生成物(IIA−1α)〕
1H−NMR(CDCl
3)δ値:
9.47(0.60H,d,J=4.5Hz),9.11(0.40H,d,J=4.8Hz),7.39−7.27(5H,m),4.52(0.80H,s),4.49(0.60H,d,J=12.0Hz), 4.45(0.60H,d,J=12.0Hz)
,3.82(0.60H,dd,J=5.7,10.5Hz),3.53−3.38(1.40H,m),2.10−1.99(0.60H,m),1.92−1.77(1.40H,m),1.38−1.20(1.60H,m),1.13−1.04(0.40H,m)
【0102】
反応2〜14
反応1と同様にして、出発原料、硫化水素ナトリウム(NaSH)と三塩化セリウム(CeCl
3)の量を下記表1に示すように変更した以外は、反応1と同様にして反応した。
【0103】
得られた結果をまとめて下記表1に示す。
ここで、NaSH、CeCl
3の当量数は、出発原料に対する当量数である。
なお、Tolはp−メチルベンゾイル基、Bnはベンジル基、Msはメチルスルホニル基、Tsはp−トルエンスルホニル基、Bzはベンゾイル基、p−PhBzはp−フェニルベンゾイル基を表す。
【0104】
【表1】
表中r.t.は室温を意味する。
【0105】
表1から明らかなように、特定の金属塩の存在下で反応を行うことにより、高収率で目的の生成物を得ることができる。
金属塩による作用は、例えば、反応1、3、5、7、9、13のような5員環のチオラン環形成だけでなく、反応11のような、6員環のチアン環を形成する反応に対しても効果がある。
【0106】
実施例2
〔CeCl
3の使用量と反応追跡〕
上記化合物(IA―1)に対して、硫化水素ナトリウム(NaSH)を2当量使用し、三塩化セリウム(CeCl
3)の量を、0当量(無し)、0.1当量、0.2当量、0.5当量、1.0当量と変化させ、液体クロマトグラフィーで反応追跡した。
【0107】
液体クロマトグラフィーの機種、測定条件は、以下の通り。
(HPLC分析)
測定機器:SHIMADZU社 LC−10AT vp または LC−10AS
カラム:TOSOH社 TSKgel ODS−100Z
カラム径と長さ:5μm,4.6×150mm
溶媒:A液:0.1%酢酸エチル/0.1%トリエチルアミン/水
B液:0.1%酢酸エチル/0.1%トリエチルアミン/アセトニトリル
混合比:A液/B液=55/45で24分間流し続けた。
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:254nm
【0108】
なお、反応溶媒に、内部標準としてハイドロキノンジエチルエーテルを加え、これを基準に各化合物の量を定量した。
【0109】
ジメチルホルムアミドに出発原料の化合物(IA−1)を0.2mol/L加え、15%硫化水素ナトリウム水溶液を使用し、2当量のNaSHを使用し、金属塩のCeCl
3量を下記表2に示す量で使用し、室温で反応を行った。
【0110】
【化20】
【0111】
得られた結果を、下記表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
反応21〜25の結果をプロットした図を、
図1に示した。
ここで、◆は原料の化合物(IA―1)、■は目的物の化合物(IIA―1)、▲はシクロプロピルアルデヒド体の副生成(IIA−1α)をそれぞれプロットしたものである。
【0114】
上記表2および添付の
図1から明らかなように、金属塩を使用しない場合(反応21)、シクロプロピルアルデヒド体の副生成物(IIA−1)が反応の極めて初期段階(5分以内)に生成し、目的とする化合物(IIA―1)の合成収率を低下させていることがわかる。
また、副生成物(IIA−1)の生成は、金属塩の添加量が、0.1当量で、おさえられていることがわかる。
しかも、目的物の化合物(IIA―1)の生成は、金属塩が少ないほど速いことがわかる。
【0115】
実施例3
〔添加剤の種類〕
ジメチルホルムアミドに化合物(IA−1)を0.2mol/L溶解させ、15%硫化水素ナトリウム水溶液でNaSHを1.5当量使用して、下記表3に示す添加剤0.2当量の存在下、室温で反応した。
1時間反応後に、実施例2と同様に、液体クロマトグラフィーで、目的物の化合物(IIA−1)および副生成物(IIA−1α)を定量し、それぞれの反応収率を算出し、添加剤の効果を評価した。
添加剤による効果は、以下の評価基準で評価した。
【0116】
添加剤による反応に対する評価基準
A:目的物の収率が80%以上で副生成物の生成が認められない
B:目的物の収率が70%以上で副生成物の生成率が10%未満
C:副生成物の生成率が10%以上
【0117】
得られた結果を、下記表3に示す。
なお、表3では、目的物の化合物(IIA−1)の収率を、単に、目的物(%)、副生成物(IIA−1α)の生成率を、副生成物(%)として記載した。
ここで、対アニオンのOTfは、OSO
2CF
3である。
【0118】
【表3】
【0119】
表3から明らかなように、実施例1、2で使用したランタノイドの金属塩の三塩化セリウム以外にも、イッテリウム(Yb)金属塩でも、セリウム金属塩と同様に、副生成物の生成を抑制し、目的の化合物(IIA−1)を高収率で得ることができる。
しかも、このような副生成物の生成を抑制し、反応速度を高める効果は、ランタノイドだけでなく、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属以外に、周期律表の第2〜14族の金属塩および塩酸でも認められた。
【0120】
実施例4
〔金属塩として、三塩化ランタンの塩化リチウム(LaCl
3・2LiCl)を使用した反応〕
ジメチルホルムアミドに(3S,4S)−3,5−ビス(ベンジルオキシ)−4−ブロモペンタナール〔以後、化合物(IA−2)と称す〕を0.1mol/L溶解させ、15%硫化水素ナトリウム水溶液でNaSHを1.5当量使用して、下記表4に示す添加剤の存在下、0℃で反応した。
6時間反応後に、反応混合物の
1H−NMR強度比から(4S,5R)−4−(ベンジルオキシ)−5−((ベンジルオキシ)メチル)チオラン−2−オール〔以後、化合物(IIA−2)と称す〕の反応率を算出した。得られた結果を表4に示す。
【0121】
【化21】
【0122】
なお、反応溶媒に、内部標準としてハイドロキノンジエチルエーテルを加え、これを基準に各化合物の量を定量した。
【0123】
【表4】
【0124】
表4から明らかなように、化合物(IA−2)を用いた結果でも、ランタノイドの金属塩LaCl
3・2LiCl、プロトン酸のHClでも目的の化合物(IIA−2)を好収率で得ることができる。また、ランタノイドの金属塩は0.2から
0.4当量へと添加量を増やしても反応率が低下しないことがわかる。
【0125】
上記実施例1〜4から、本発明の一般式(I)で表されるチオラン環、チアン環骨格を高収率で合成することが可能となり、チオヌクレオシドの合成中間体や5−チオ−β−グルコピラノシド化合物などの生理活性を示す化合物を、穏和な条件で、かつ高収率に製造できる。