(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在ナノ材料は、燃料電池等の先端材料、化粧品、製薬などの広範囲な分野への応用が盛んに研究されている。一方でナノ材料の有害性の懸念が高く、輸出入規制が欧州を中心にすでに実行されている。このような規制に対応するためには、特定粒径の含有量を評価することが必要であり、そのためにはナノ・マイクロ材料の広い粒径範囲に対応した分級方法が必要とされる。
【0003】
近年、注目されている分級方法として、層流下で流れ流動場分離法を用いたナノ・マイクロ材料の分級方法がある。流動場分離法は外部場の負荷と粒径に依存した拡散係数の大きさの差によって粒径分級する方法である。とくに交叉流を外部場として与えて粒径分級する流れ流動場分離法、ならびに、遠心力を外部場として与えて粒径分級する遠心流動場分離法が一般的に利用されている。
【0004】
流れ流動場分離法では拡散係数の大きい材料が先に流出し、拡散係数の小さい材料が後に流出する、すなわち粒径の小さい順に流出し分離できる。一方、遠心流動場分離法では質量の小さい材料が先に流出し、質量の大きな材料が後に流出し分離することが可能である。
【0005】
従来の、遠心力を利用した微粒子分級装置として、特許文献1には、遠心ローター内にてキャリア液相の供給と回収、及び微粒子試料の供給と回収が時間連続的に行われる分離流路で、分離対象とする微粒子試料をキャリア液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級装置であって、前記分離流路の上流部に連結されてキャリア液相の動径方向の密度勾配について平坦な部分が存在しない様態である連続密度勾配を形成する連続密度勾配形成器を備え、該連続密度勾配形成器は、上流側から下流側に向かってキャリア液相が流れる流路部と、該流路部内を前記キャリア液相が流れる際に、該キャリア液相の流れを利用して前記キャリア液相の能動的攪拌を行う攪拌手段を有し、該攪拌手段により、前記流路部内を流れる前記キャリア液相の流れエネルギーの一部を攪拌エネルギーに変換して、密度勾配材の動径方向への拡散を能動的に促進させる動的拡散促進方式により前記連続密度勾配を形成することを特徴とする微粒子分級装置について記載されている。
これにより、微粒子を沈降速度法により、連続的にかつ高分解能で分級することができる微粒子分級装置および方法を提供することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の、流れ流動場分離法は密度が低く粒子径がサブミクロン以下の粒子を効率よく分級することができるが、サブミクロン以上の粒径をもつ粒子に関しての分級能は原理的に大きく低下するという欠点がある。とくにサブミクロン以上の粒径をもつと、交叉流による流れ場よりも層流の流れの影響を多大に受けるSteric効果またはHyperlayer効果により、粒径の大きい粒子が粒径の小さい粒子よりも早く出てきてしまい、粒径分離できなくなってしまう問題点があった。
【0008】
また、遠心流動場分離法は密度が高く粒子径がサブミクロン以上の粒子を効率よく分級することができるが、粒径の小さいまたは密度の低い粒子は遠心場の影響を受けにくいため、ナノ領域(-100nm)の粒子の分級能は原理的に致命的に低いという欠点があった。さらに遠心流動場分離装置は分級前に試料を効果的にフォーカスする(集める)機構がないため、粒径分級の際に分級対象材料の分布の広幅化が起こってしまうという欠点があった。
【0009】
また、一般的な工業用ナノ・マイクロ材料は広い粒径分布を取っており、現在一般的に利用されている流動場分離法では本来ナノ・マイクロ材料の有する広い粒径範囲における分級は実行することはできないという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる実情を鑑み、ナノ・マイクロ材料における約5nm〜10
μmの広い粒径範囲でも分級可能な微小材料分級方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、各分離原理法装置を直列に接続することで、効率的に広い粒径範囲におけるナノ・マイクロ材料を分級できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
また、流れ流動場分離装置と遠心流動場分離装置とを単に直列に接続しただけでは、うまく分級できず、場合によっては遠心流動場分離装置が破損することが判明した。鋭意研究の結果、その原因は、流れ流動場分離装置と遠心流動場分離装置の動作圧力の違いと耐圧性の違いによるものであることを発見した。
【0013】
即ち、遠心流動場分離装置は耐圧性が低く(<10bar)、高精度分離のために系圧が高い状態(>10bar)にある流れ流動場分離装置後方に直列に接続すると、その排圧
の影響で破損することが分かった。そこで、接続する遠心流動場分離装置における排圧
の影響を抑制するために、スプリットまたはシリンジポンプまたはダイヤフラムポンプ等により後部流量をコントロールすることで当問題を解決できることを見いだした。
【0014】
即ち、本発明の微小材料分級方法は、微小サイズの材料である微小材料を、流体を用いて分級する微小材料分級方法であって、前記微小材料と流体とが流入する第1流入口と、該第1流入口から流入した流体及び前記微小材料が流れる第1流路と、該第1流路を流れる前記流体及び前記微小材料が流出する第1流出口と、前記第1流路を構成する壁の一部に形成された流体のみ通過可能とするフィルタ部と、を備えた流れ流動場分離装置を用いて前記微小材料を分級する流れ流動場分離工程と、回転するリング状のリング流路と、前記リング流路に前記微小材料及び前記流体を流入させるためのリング流入口と、前記リング流路から前記微小材料及び前記流体を流出させるためのリング流出口と、を備えた遠心流動場分離装置を用いて前記微小材料を分級する遠心流動場分離工程と、前記流れ流動場分離工程と前記遠心流動場分離工程との間に、前記第1流出口から流出した流体の一部を分離し、残りの流体と前記微小材料とを前記リング流入口に導く分離工程と、を備え、前記流れ流動場分離工程は、前記第1流
入口から流入した前記流体と前記微小材料が前記
第1流路を移動しているとき、前記フィルタ部から前記流体の一部を吸い出すことにより、前記第1流路に前記流体の流れに垂直な方向の流れである交叉流を与える工程を有し、前記遠心流動場分離工程は、前記リング流路を回転させることにより、前記リング流路内の前記微小材料に遠心力を加える工程を有する微ことを主要な特徴としている。
【0015】
また、本発明の微小材料分級方法は、前記流れ流動場分離工程は、
前記第1流入口方向から前記第1流出口方向への流れと、前記第1流出口方向から前記第1流入口方向への流れと、前記フィルタ部から流体を吸い取る流れとを形成することにより、前記微小材料を一カ所に集めるフォーカス工程と、前記微小材料のサイズに依存した
前記交叉流に対する拡散速度の違いを利用して、前記フィルタ部からサイズの大きい順番に前記微小材料を前記フィルタ部から離れる方向に縦に並べる
、つまり前記交叉流に沿って前記フィルタ部からこれと離れた位置に向けてサイズの大きい粒子から小さい粒子へ順番に前記微小材料を並べる拡散工程と、前記拡散工程の後、前記第1流出口方向から前記第1流入口方向への流れを止めることにより、サイズの小さい順番に前記微小材料を前記第1流出口から流出させる工程と、を有することを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微小材料分級方法は、ナノ・マイクロ材料における約5nm〜10
μmの広い粒径範囲でも分級することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の微小材料分級方法に使用される装置の断面概略説明図である。
【
図2】本発明に用いられる遠心流動場分離装置の構成図である。
【
図4】流れ流動場分離装置を用いて70nm〜2000nmのサイズの材料を分級したときの結果を示す図である。
【
図5】流れ流動場分離工程において、微小材料をフォーカスして分離する工程を示す説明図である。
【
図6】ナノサイズの粒子を遠心流動場分離装置で分級したときの粒子の分離結果を示す図である。
【
図7】流れ流動場分離装置を用いて、70nm、300nmのポリスチレンラテックス混合液を粒径分級した結果を示す図である。
【
図8】流れ流動場分離装置を用いて、70nm、300nm、1000nmのポリスチレンラテックス混合液を粒径分級した結果を示す図である。
【
図9】本発明の微小材料分級方法を用いて、70nm、300nm、1000nmのポリスチレンラテックス混合液を粒径分級した結果を示す図である。
【
図10】流れ流動場分離装置を用いて、70nm、309nmのポリスチレンラテックスと280nmのシリカをそれぞれ単品で流した結果を重ね合わせた図である。
【
図11】流れ流動場分離装置を用いて、70nm、309nmのポリスチレンラテックスと280nmのシリカの混合液を粒径分級した結果を示す図である。
【
図12】本発明の微小材料分級方法を用いて70nm、309nmのポリスチレンラテックスと280nmのシリカの混合液を粒径分級ならびに材質分離した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の
代表的な実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の微小材料分級方法に使用される装置の断面概略説明図である。
図2は、本発明に用いられる遠心流動場分離装置の構成図である。
図1に示すように、本発明の微小材料分級方法は、流れ流動場分離装置10と、遠心流動場分離装置11とを用いる。
【0021】
図1(A)は、流れ流動場分離装置10と遠心流動場分離装置11との間に流体の一部を取り除くためのシリンジポンプ17が設置されている構成を示し、
図1(B)は、流れ流動場分離装置10と遠心流動場分離装置11との間に流体の一部を取り除くためのスプリッタ18が設置された構成を示している。
【0022】
流れ流動場分離装置10は、第1流入口12と、第1流路13と、第1流出口14と、フィルタ部15とを主に備えて構成される。第1流入口12は、分級対象である微小サイズの材料(微小材料と称する)と液体である流体とが流れ流動場分離装置10に流入する入り口である。
【0023】
第1流路13とは、第1流入口から流入した流体及び微小材料が流れる流路であり、第1流出口14とは、第1流路13を流れる流体及び微小材料が流れ流動場分離装置10から流出する出口である。フィルタ部15は、第1流路13を構成する壁の一部に形成された流体のみ通過可能な材料で形成された部分であり、ここからは、流動場分離装置10の外部に流体のみが、例えば第1流路13内の流体の圧力(排圧)で、あるいはポンプにより流出させられる。
【0024】
ここで、フィルタ部は、例えばセルロース薄膜等で構成することができる。また、装置の寸法としては、例えば、第1流路13は、厚み1mm以下が好ましいが、これに限定されるものではなく、微小材料の種類に応じて寸法を設計することができる。厚み1mmが好ましい理由は、第1流路13内の流れを層流にするためである。
【0025】
図2を参照して、遠心流動場分離装置11は、リング流路16と、リング流入口20と、リング流出口22とを主に備えて構成される。リング流路16は、回転するリング状の流路である。リング流路16は、例えばモータなどにより回転させることができる。
【0026】
リング流入口20は、分級対象の微小材料と、流体とをリング流路16に流入させるための部品であり、リング流出口22は、リング流路16内から装置の外に微小材料と流体とを流出させるための部品である。
【0027】
本実施形態は、前記流れ流動場分離装置を用いて微小材料を分級する流れ流動場分離工程と、前記遠心流動場分離装置を用いて前記微小材料を分級する遠心流動場分離工程と、前記流れ流動場分離工程と前記遠心流動場分離工程との間に、前記第1流出口から流出した流体の一部を分離し、残りの流体と前記微小材料とを前記リング流入口に導く分離工程と、を主に備えて構成される。
【0028】
前記流れ流動場分離工程は、前記第1流
入口から流入した前記流体と前記微小材料とが前記流路を移動しているとき、前記フィルタ部から前記流体の一部を吸い出すことにより、前記第1流路に前記流体の流れに垂直な方向の流れである交叉流を与える工程を有している。更に、前記遠心流動場分離工程は、前記リング流路を回転させることにより、前記リング流路内の前記微小材料に遠心力を加える工程を有している。
【0029】
本発明は、流れ流動場分離装置と遠心流動場分離装置を直列接続し一体化することで、前者装置で材料のフォーカスならびに小さい粒径の分級、後者装置にて大きい粒径の分級を実施する約5nm〜10
μm(10,000nm)の広い粒径範囲においてナノまたはミクロ材料を効率的に分級する方法であり、特に、広い粒径範囲の材料を含んだナノ・マイクロ材料の広い粒径範囲における特定粒径の存在量を正確に評価するのに好適な方法である。
【0030】
図3を参照して、流れ流動場分離工程について更に説明する。
図3は、流れ流動場分離工程の説明図である。
図3(A)に示すように、第1流路13内における流体の流れは、第1流入口12から第1流出口14に向かう流れと、その流れに垂直な流れであるフィルタ部15を通過して外部に流出する流れ(交叉流30)とがある。
【0031】
第1流路13内では、交叉流に対する材料の拡散の違いにより微小材料32を分級することができる。ここでは、拡散係数の大きい粒子径の小さな材料から、拡散係数の小さい粒子径の大きな材料の順に分級される。即ち、粒子
径の大きい材料ほどフィルタ部15に近い場所に位置する。よって、第1流出口14からは、フィルタ部15から離れた位置の流速の早い流体の流れに乗っている粒子
径の小さな材料から順番に出てくることになる。
【0032】
ここで
図3(B)及び、
図4を参照して説明する。
図4は、流れ流動場分離装置を用いて70nm〜2000nmのサイズの材料を分級したときの結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は、UV強度を表し、横軸は流出時間を表す。
図4に示されているvoidとは、気泡、ゴミ等を表す。
【0033】
この流れ流動場分離工程では、サブミクロン以上の粒径をもつ材料の場合、交叉流による流れ場よりも層流の流れの影響を多大に受けるSteric効果またはHyperlayer効果により、粒径の大きい粒子が粒径の小さい粒子よりも早く出てきてしまい、粒径分離できなくなってしまう。このため、流れ流動場分離工程では、サブミクロン粒子やミクロン粒子は早く流出するため、広い粒径範囲においてナノまたはミクロンサイズの材料を効率的に分級することはできない。そこで、本発明においては、流れ流動場分離工程の後に遠心流動場分離工程を行うことにより、ナノサイズ粒子のみならず、サブミクロン粒子やミクロン粒子も効果的に分級することができる。
【0034】
流れ流動場分離工程において、ナノサイズ微小材料を効果的に分級する方法として、事前に分級対象物である微小材料をフォーカスし、フォーカスした微小材料を分級する方法がある。フォーカスするとは、微小材料を1つの場所にまとめておくということである。
【0035】
微小材料をフォーカスする方法としては、次のような方法がある。即ち、流れ流動場分離工程において、第1流入口12方向から第1流出口14方向への流れと、第1流出口14方向から第1流入口12方向への流れと、フィルタ部15から流体を吸い取る流れとを形成することにより、微小材料を一カ所に集めることができる。本発明は、このようなフォーカス工程を備えることもできる。
【0036】
図5を参照して更に詳細に説明する。
図5は、流れ流動場分離工程において微小材料をフォーカスして分離する工程を示す説明図である。
図5(a)を参照して、様々なサイズの微小材料32が流路13内に注入される。次に、注入された微小材料32は、第1流入口12方向から第1流出口14方向への流れと、第1流出口14方向から第1流入口12方向への流れと、フィルタ部15から流体を吸い取る流れとにより、1カ所に集められる。即ち、微小材料32は、1カ所にフォーカスされる。
【0037】
その後、微小材料32は、それぞれのサイズに依存した拡散速度の違いにより図面視縦方向(サイズの
大きいものがフィルタ部15に近く)に並べられる。この後、第1流出口14方向から第1流入口12方向への流れを止めることにより、サイズの小さいものから順番に第1流出口14から分級されて出て行く。
【0038】
次に、遠心流動場分離工程について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、リング流路16は回転しているので、その中の微小材料は遠心力によりリング流路16の外壁19方向に力
を受け、重い粒子ほどリング流路16の外壁19よりに位置することになる。その結果、外壁に近いところに位置する流体の流速は遅く、外壁から離れた、リング流路16の中央部分の流体の流速は早いので、軽い粒子から順番にリング流出口22から出てくることになる。
【0039】
ここで、
図6を参照して、遠心流動場分離装置の問題点について説明する。
図6は、ナノサイズの粒子を遠心流動場分離装置で分級したときの粒子の分離結果を示すグラフである。このグラフの縦軸は、UV強度を表し、横軸は流出時間を表す。遠心流動場分離法においては、粒径の小さいまたは密度の低い粒子は遠心場の影響を受けにくいため、所謂ナノ領域(100nm以下)の粒子はうまく分離することができない。
図6に示すように、70nmサイズの粒子は、voidと重なってうまく分級できていない。
【0040】
そこで
、流れ流動場分離工程と、遠心流動場分離法とを組み合わせることで、流れ流動場分離工程でのナノ・マイクロ材料の粒径分級
で分級不十分となった材料を遠心流動場分離工程
で処理し、流れ流動場分離
工程の原理
だけではサイズ分離できないサブミクロンからミクロン粒径範囲の粒子
までをより良く分級実施することが可能となった。
【0041】
ここで、流れ流動場分離装置と、遠心流動場分離装置とをそのまま接続した場合、微小材料の分級がうまくいかず、場合によっては遠心流動場分離装置が壊れることが判明した。発明者らの鋭意研究により、流れ流動場分離装置と、遠心流動場分離装置との内部流体の圧力の違いにより、それらの問題が発生することが分かった。
【0042】
そのため
、流れ流動場分離工程と、遠心流動場分離工程との間に、流れ流動場分離装置からの流体を一部取り除いて流体圧力を減少させてから流体と微小材料とを遠心流動場分離装置に流入させる工程を備えている。別の言い方をすれば
、流れ流動場分離装置の後方に接続する遠心流動場分離装置における排圧
の影響を抑制するために、スプリットまたはシリンジポンプ等により後部
の流量コントロール
をする工程を備えている。
【0043】
流れ流動場分離装置からの流体を一部取り除く方法としては、
図1(A)に示すように、シリンジポンプ17により流体を取り除く方法と、
図1(B)に示すように、スプリッタ18により流体を取り除く方法等が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
<評価>
次に、本発明の微小材料分級方法について行った評価
例について以下に説明する。
(1)評価1
以下の装置を用いて、以下に示す市販のポリスチレンラテックス水分散液の分級評価を行った。
(a) 装置
・流れ流動場分離装置
:AF2000(
商品名、独Postnova社
製)システム
フィルタ部:セルロース薄膜
Z-MEM-AQU-427N
(商品名、独Postnova社製、分子量のカットオフ値は1,000)
流路の厚み: 350μm
・遠心流動場分離装置
:CF2000(
商品名、独Postnova社
製)システム
(b) 分級対象物(微小材料)
ポリスチレンラテックス
粒:STADEX (登録商標、JSR株式会社製)
・SC-0070-D:
粒子径70nm
・SC-024-S: 粒子径202nm
・SC-032-S: 粒子径309nm
・SC-05-S: 粒子径506nm
・SC-8-S: 粒子径814nm
・SC-103-S: 粒子径1005nm
・SC-200-S: 粒子径2005nm
(c) 流体
水溶液:0.1%NovaChem Surfactant 100:C-SUR-100分散剤(
ともに商品名、独Postnova社
製)
希釈水:超純水(イオン交換フィルタならびに0.1μmフィルタで精製した電気抵抗率18.2MΩ・cm以上で有機炭素濃度が5ppb以下の微粒子を含まない
水であるMILLI-Q
(登録商標、メルク社製))
(d) 流体の流速
1.0mL/min
(e) 検出器
・紫外吸収検出器
:SPD-20A (商品名、島津製作所
社製
、測定波長は254nm)
【0045】
(f) 評価内容及び結果
・流れ流動場分離装置のみを用いて、
約70nmと
約300nmのポリスチレンラテックスの混合液を粒径分級した。その結果、
図7に示すように、非常によく分離することができた。
・流れ流動場分離装置のみを用いて、
約70nm、
約300nm、
約1000nmのポリスチレンラテックス混合液を粒径分級した。その結果、
図8に示すように、
約1000nmのポリスチレンラテックスはStericまたはHyperlayer効果により、分離が悪く、
約300nmのポリスチレンラテックスのピークと重なってしまった。
・本発明の微小材料分級方法を用いて、
約70nm、
約300nm、
約1000nmのポリスチレンラテックス混合液を粒径分級した。その結果、
図9に示すように、
約300nm、
約1000nmのポリスチレンラテックスを非常によく分離することができた。
【0046】
(2)評価2
以下の装置を用いて、以下に示す市販のポリスチレンラテックス水分散液の分級評価を行った。
(a) 装置
・遠心流動場分離装置
:AF2000(
商品名、独Postnova社
製)システム
フィルタ部:セルロース薄膜
Z-MEM-AQU-427N
(商品名、独Postnova社製、分子量のカットオフ値は1,000)
流路の厚み: 350μm
・遠心流動場分離装置
:CF2000(
商品名、独Postnova社
製)システム
(b) 分級対象物(微小材料)
ポリスチレンラテックス
粒:STADEX (登録商標、JSR株式会社製)
・SC-0070-D:
粒子径70nm
・SC-032-S: 粒子径309nm
シリカ
粒:SILICA MICROSPHERES (商品名、Polysciences, Inc製)
・0.3MICRONS: 粒子径280nm
(c) 流体
水溶液:0.1%NovaChem Surfactant 100:C-SUR-100分散剤(
ともに商品名、独Postnova社
製)
希釈水:超純水(イオン交換フィルタならびに0.1μmフィルタで精製した電気抵抗率18.2MΩ・cm以上で有機炭素濃度が5ppb以下の微粒子を含まない
水であるMILLI-Q
(登録商標、メルク社製))
(d) 流体の流速
1.0mL/min
(e) 検出器
・紫外吸収検出器
:SPD-20A (
商品名、島津製作所
社製、測定波長は254nm)
【0047】
(f) 評価内容及び結果
・流れ流動場分離装置を用いて、約70n
mの粒径を持つポリスチレンラテックスならびに
約300nmの粒径を持つシリカ
の混合液を粒径分級した。その結果を
図10、
図11に示す。
図10は、ポリスチレンラテックスとシリカとをそれぞれ単品で流れ流動場分離装置に流して検出器で測定した結果を重ね合わせたグラフであり、
図11は、ポリスチレンラテックスとシリカとの混合物を流れ流動場分離装置で分離させて検出器で測定したものである。
図10、
図11に示すように、約300nmの粒径を持つポリスチレンラテックスならびにシリカ双方のピークはほぼ同じ流出時間で重なってしまった。
・本発明の微小材料分級方法を用いて、約300nmの粒径を持つポリスチレンラテックスならびにシリカ混合液を粒径分級した。その結果、
図12に示すように、約70n
mの粒径を持つポリスチレンラテックスと約300nmの粒径を持つシリカを非常によく分離することができ
た。