【文献】
山田昇 他 YAMADA,N. et.al.,"集光系簡易評価のための高平行/低照度ソーラーシミュレータの試作試験""Test of prototype highly-collim,太陽エネルギー JOURNAL OF JSES,2012年 7月31日,Volume 38, Number 4,Pages 39-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る光源評価装置(光源評価システム)10について図面を参照して説明する。
本実施形態では光源評価装置10がソーラシミュレータ100の光源101を評価する場合について説明する。なお、本実施形態では、測定対象の光源から例えばミラーやレンズなど介して光が放射される場合には、最終的に放射される光を評価するものとして説明する。
【0010】
図1は、光源評価装置10の外観構成の一例を示す図である。
図2は、光源評価装置10の内部構成の一例を示す図である。
光源評価装置10は、受光装置20、変換装置25、情報処理装置30、光学フィルタ装置40などを有している。
受光装置20は、ソーラシミュレータ100の光源101から放射される光を受光し、受光した放射照度に応じた出力値を変換装置25を介して情報処理装置30に出力する。
本実施形態の受光装置20は、受光器としての太陽電池セル21、位置検出部22、I/F部23を有している。太陽電池セル21は、マトリクス状に複数、配列して構成される。位置検出部22は、後述する回転部42の位置、具体的には回転角度を検出する。I/F部23は、変換装置25に繋がるケーブルが接続される。
【0011】
図1に示す受光装置20は、縦(列)が8つ、横(行)が8つの計64個の太陽電池セル21を有し、太陽電池セル21が配置される領域は正方形に形成される。なお、
図1に示すように、1列×1行の太陽電池セルを太陽電池セル21
11、・・・2列×1行の太陽電池セルを太陽電池セル21
21、・・・8列×1行の太陽電池セルを太陽電池セル21
81とする。各太陽電池セル21は受光した放射照度に応じた出力値として、短絡電流の電流値(以下、電流値という)をそれぞれ出力する。
【0012】
変換装置25は、受光装置20から出力される電流値をA/D変換して、情報処理装置30に送信する。変換装置25は、変換部26、I/F部27を有している。変換部26は、電流値をA/D変換する。I/F部27は、受光装置20に繋がるケーブルおよび情報処理装置30に繋がるケーブルが接続される。
【0013】
情報処理装置30は、太陽電池セル21の放射照度、具体的には受光装置20から受信した電流値に基づいてソーラシミュレータ100の光源101を評価する。情報処理装置30は、表示部31、制御部32、I/F部33、操作部34、記憶部35を有している。情報処理装置30は、例えばコンピュータにより構成することができる。
【0014】
表示部31は、光源101を評価した結果などを表示する。制御部32は、情報処理装置30全体を制御する。I/F部33は、変換装置25に繋がるケーブルが接続される。操作部34は、使用者が情報処理装置30に対して入力する場合に用いられる。記憶部35は後述する、波長帯域間補正係数Mn、セル間補正係数Kn、基準太陽光のエネルギー分布D
AM(n)、対応テーブルなどを記憶する。
制御部32は、演算部36、記憶制御部37、入出力制御部38、表示制御部39を有している。演算部36は後述する、スペクトル合致度の算出、放射照度の場所むらの算出、放射照度の時間変動率の算出などを行う。記憶制御部37は、記憶部35を制御することで、情報の記憶および読み出しを行う。入出力制御部38は、操作部34を介した入力およびI/F部33を介した外部との入出力を制御する。
【0015】
本実施形態の情報処理装置30は、光源101を測定する項目として、(a)スペクトル合致度の測定、(b)放射照度の場所むらの測定および(c)放射照度の時間変動率の測定が可能である。
(a)スペクトル合致度の測定とは、基準太陽光などに対して測定対象の光源から放射されて受光面に照射される光の波長範囲ごとの合致度を測定するものである。具体的には、JIS規格、IEC規格に規定されるように400nm〜1100nmの波長帯域を6つの波長帯域、具体的には400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nm、700nm〜800nm、800nm〜900nm、900nm〜1100nmに区分けして、区分けした波長帯域ごとに基準太陽光などに対するスペクトル合致度を測定する。
(b)放射照度の場所むらの測定とは、光源が放射する領域(場所)の放射照度の高低を測定するものである。
(c)放射照度の時間変動率の測定とは、光源から放射される放射照度が時間当たりに変動する値を測定するものである。
【0016】
本実施形態の光源評価装置10は、特許文献1に記載されるような分光器を用いた分光放射計により分光することなく、太陽電池セル21などの受光器を用いたまま、波長帯域ごとのスペクトル合致度の測定を可能にするために、光学フィルタ装置40を有している。
図1に示すように、光学フィルタ装置40は、光源101と受光装置20との間に配置され、光源101から放射される光のうち所望する波長帯域ごとに光を透過させる。したがって、受光装置20は、光学フィルタ装置40により透過された所望する波長帯域ごとの光を受光することができる。
【0017】
光学フィルタ装置40は、基台41、回転部42、光学フィルタ部43を有している。基台41は、受光装置20に対して着脱可能であり、回転部42の回転軸(
図1に示すR)を中心に回転自在に支持する。なお、使用者は、上述した(a)スペクトル合致度の測定をする場合、光学フィルタ装置40を受光装置20に装着する。一方、使用者は、所望する波長帯域ごとに分光させる必要がない(b)放射照度の場所むらの測定、(c)放射照度の時間変動率の測定、後述する(d)セル間補正係数の測定をする場合は光学フィルタ装置40を受光装置20から離脱させる。
回転部42は、円板状に形成され、中央で光学フィルタ部43を支持する。
【0018】
光学フィルタ部43は、光学フィルタとしてのバンドパスフィルタ44がマトリクス状に複数、配列して構成される。
図1に示す光学フィルタ部43は、縦(列)が8つ、横(行)が8つの計64個のバンドパスフィルタ44を有し、バンドパスフィルタ44が配置される領域は正方形に形成される。なお、
図1に示すように、1列×1行のパンドパスフィルタをバンドパスフィルタ44
11・・・2列×1行のバンドパスフィルタをバンドパスフィルタ44
21、・・・8列×1行のバンドパスフィルタをバンドパスフィルタ44
81とする。
【0019】
各バンドパスフィルタ44は、各太陽電池セル21の上側(真上)に配置される。したがって、光源101から放射され各バンドパスフィルタ44を透過した光はそれぞれ下側(真下)の各太陽電池セル21に受光される。例えば、バンドパスフィルタ44
11を透過した光は太陽電池セル21
11で受光される。
【0020】
ここで、本実施形態のバンドパスフィルタ44は少なくとも6つの異なる透過波長帯域を有している。具体的には、400nm〜1100nmの波長帯域を、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nm、700nm〜800nm、800nm〜900nm、900nm〜1100nmの6つの波長帯域に区分けした透過波長帯域を有している。このように、異なる透過波長帯域のバンドパスフィルタ44は、400nm〜1100nm内で透過波長帯域が連続している。
【0021】
以下では、理解を容易にするために、
図3に示すように受光装置20と光学フィルタ装置40との構成を単純化させた形態について説明する。
図3では、受光装置20が6つの太陽電池セル21
1〜21
6で構成され、光学フィルタ装置40が各太陽電池セル21の上側に配置される6つのバンドパスフィルタ44
1〜44
6で構成される。
【0022】
図3に示す光学フィルタ装置40は、バンドパスフィルタ44
1が400nm〜500nmの透過波長帯域を有し、バンドパスフィルタ44
2が500nm〜600nmの透過波長帯域を有し、バンドパスフィルタ44
3が600nm〜700nmの透過波長帯域を有し、バンドパスフィルタ44
4が700nm〜800nmの透過波長帯域を有し、バンドパスフィルタ44
5が800nm〜900nmの透過波長帯域を有し、バンドパスフィルタ44
6が900nm〜1100nmの透過波長帯域を有している。
このように、バンドパスフィルタ44に所望する波長帯域の光を透過させ、その他の波長帯域の光をカットするよう構成するには、バンドパスフィルタ44の製造工程で、その波長帯域に合わせて設計した多層蒸着膜構造としたり、膜が蒸着されるガラスに色素を混入させたりすることで実現できる。
【0023】
したがって、各太陽電池セル21は、光源101から放射された光のうち各バンドパスフィルタ44で透過した波長帯域の光を受光する。具体的には、太陽電池セル21
1が400nm〜500nmの波長帯域の光を受光し、太陽電池セル21
2が500nm〜600nmの波長帯域の光を受光し、太陽電池セル21
3が600nm〜700nmの波長帯域の光を受光し、太陽電池セル21
4が700nm〜800nmの波長帯域の光を受光し、太陽電池セル21
5が800nm〜900nmの波長帯域の光を受光し、太陽電池セル21
6が900nm〜1100nmの波長帯域の光を受光する。
【0024】
ここで、本実施形態のように受光器に太陽電池セル21を用いた場合、太陽電池セル21には波長に依存する分光感度が存在する。
図4は、結晶系の太陽電池セルの波長に応じた分光感度を示す図である。
図4の実線に示すように、太陽電池セル21の分光感度は、400nmでは0.3であり、400nmから900nm近辺まで徐々に増加し、900nm近辺では1.0である。一方、900nmから1100nmまで急に減少し、1100nm近辺では0.3である。
【0025】
ここで、仮に400nmに放射照度のピークがある光源と、900nmに放射照度のピークがある光源とが同一のエネルギーであったとする。この場合、
図4のような分光感度によって、各光源からの光を受光したときに太陽電池セル21が出力する電流値は同一にならない。具体的には、分光感度が高い900nmに放射照度のピークがある光源を受光したときの電流値の方が大きく出力される。
【0026】
そこで、本実施形態では、以下の2つの処理により、太陽電池セル21の波長に応じた分光感度の影響を取り除く。まず、第1に、バンドパスフィルタ44の分光透過率と太陽電池セル21の分光感度との積が透過波長帯域内で一定になるように、各バンドパスフィルタ44
1〜44
6の分光透過率を設定する。
すなわち、太陽電池セル21の分光感度B(λ)とし、バンドパスフィルタ44
1〜44
6の各分光透過率Fn(λ)とし、λを波長とすると、
B(λ)×Fn(λ)=Ln
になるようにする。なお、Lnは定数であり、nは1〜6までの整数である。
したがって、Fn(λ)=Ln/B(λ)となる。
【0027】
図4には各バンドパスフィルタ44
1〜44
6に設定した分光透過率を示している。
図4に示すように、例えばバンドパスフィルタ44
1は、400nmから500nmに移行するにしたがって分光透過率が曲線状に急に低くなるように設定される。また、バンドパスフィルタ44
2〜44
5は、同様に低い波長から高い波長に移行するにしたがって分光透過率が曲線状に低くなるように設定される。ただし、バンドパスフィルタ44
5は、バンドパスフィルタ44
1に比べ、分光透過率の変化が緩やかになっている。一方、バンドパスフィルタ44
6は、低い波長から高い波長に移行するにしたがって分光透過率が曲線状に高くなるように設定される。
このように、バンドパスフィルタ44に低い波長から高い波長に移行するにしたがって分光透過率を、緩急を設定した上で低くしたり、高くしたり構成するには、バンドパスフィルタ44の製造工程の蒸着工程において多層蒸着膜の層数を増減させたり、層の膜厚を増減させたり、膜が蒸着されるガラスに色素を混入させたりすることで実現できる。
【0028】
図5は、太陽電池セル21の分光感度と各バンドパスフィルタ44
1〜44
6の分光透過率との積を示す図である。
図5に示すように、分光感度と分光透過率との積が各バンドパスフィルタ44
1〜44
6の透過波長帯域内で一定になっている。例えば、分光感度とバンドパスフィルタ44
1の分光透過率との積は常に0.25であり、分光感度とバンドパスフィルタ44
2の分光透過率との積は常に0.5である。
ただし、分光感度と分光透過率との積は波長帯域ごとに異なっているため、異なる波長に分光放射照度のピークがある同一のエネルギーの光源を受光した場合、未だ各光源を受光したときに太陽電池セル21が出力する電流値は同一にならない。
【0029】
そこで、第2に、異なる透過波長帯域の間で、分光感度と分光透過率との積が一定になうように波長帯域ごとの波長帯域間補正係数を算出する。
すなわち、太陽電池セル21の分光感度B(λ)とし、バンドパスフィルタ44
1〜44
6の分光透過率Fn(λ)とし、波長帯域間補正係数Mnとすると、
B(λ)×Fn(λ)×Mn=P
になるようにする。なお、Pは定数であり、nは1〜6までの整数である。
したがって、Mn=P/(B(λ)×Fn(λ))=P/Ln
すなわち、Ln=P/Mnとなる。
【0030】
ここで、例えば定数Pを1.0とした場合、分光感度とバンドパスフィルタ44
1の分光透過率との積を1.0にする波長帯域間補正係数M
1として、1.0/0.25=4が算出される。また、分光感度とバンドパスフィルタ44
2の分光透過率との積を1.0にする波長帯域間補正係数M
2として、1.0/0.5=2が算出される。同様に、分光感度と他のバンドパスフィルタ44
3〜44
6の分光透過率との積を1.0にする波長帯域間補正係数M
3〜M
6が算出される。
算出された波長帯域間補正係数M
1〜M
6は、後述するように各バンドパスフィルタ44
1〜44
6を透過して受光した各太陽電池セル21の電流値にそれぞれ乗算される。したがって、自然太陽光を受光した場合、異なる透過波長帯域間であっても各太陽電池セル21により出力する電流値が同一になるように補正することができる。
【0031】
算出した波長帯域間補正係数Mnは、波長帯域ごとに関連付けて記憶部35の対応テーブルに記憶される。
図6は、対応テーブルの一例を示す図である。
図6に示す対応テーブルには波長帯域ごとに、バンドパスフィルタ44n、波長帯域間補正係数Mn、太陽電池セル21nおよび後述するセル間補正係数Knが関連付けて記憶される。
【0032】
次に、上述したように構成される光源評価装置10を用いた光源101の評価方法について具体的に説明する。以下で説明する各フローチャートの処理は、情報処理装置30のCPUがROMなどに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
図7は、光源評価装置10の情報処理装置30の処理を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、使用者が操作部34を介したプログラムを実行する指示に応じて開始される。
【0033】
ステップS70では、表示制御部39は表示部31に測定項目を選択可能に表示する。具体的には、(a)スペクトル合致度の測定、(b)放射照度の場所むらの測定、(c)放射照度の時間変動率の測定、(d)セル間補正係数の測定、の4つの測定項目を表示する。ここで、(d)セル間補正係数の測定とは、自然太陽光を受光したときに各太陽電池セル21が出力する電流値のばらつきを補正するためのセル間補正係数を算出する場合に選択される。
【0034】
ステップS71では、入出力制御部38は使用者により(d)セル間補正係数の測定が選択されたか否かを判定する。(d)セル間補正係数の測定が選択された場合にはステップS72に移行し、選択されていない場合にはステップS73に移行する。ステップS72によるセル間補正係数の測定は、
図8のフローチャートを参照して後述する。
ステップS73では、入出力制御部38は使用者により(a)スペクトル合致度の測定が選択されたか否かを判定する。(a)スペクトル合致度の測定が選択された場合にはステップS74に移行し、選択されていない場合にはステップS75に移行する。ステップS74によるスペクトル合致度の測定は、
図9のフローチャートを参照して後述する。
【0035】
ステップS75では、入出力制御部38は、使用者により(b)放射照度の場所むらの測定が選択されたか否かを判定する。(b)放射照度の場所むらの測定が選択された場合にはステップS76に移行し、選択されていない場合にはステップS77に移行する。ステップS76による放射照度の場所むらの測定は、
図10のフローチャートを参照して後述する。
ステップS77では、入出力制御部38は使用者により(c)放射照度の時間変動率の測定が選択されたか否かを判定する。(c)放射照度の時間変動率の測定が選択された場合にはステップS78に移行し、選択されていない場合にはステップS79に移行する。ステップS78による放射照度の時間変動率の測定は、
図11のフローチャートを参照して後述する。
【0036】
ステップS79では、入出力制御部38は使用者により終了が指示されたか否かを判定する。終了が指示された場合には処理を終了し、終了が指示されていない場合にはステップS71に戻る。
【0037】
次に、セル間補正係数の測定について
図8のフローチャートを参照して説明する。ここでは、使用者は光学フィルタ装置40を受光装置20から離脱させておく。また、使用者は測定対象の光源101を取り除き、受光装置20に自然太陽光が放射されるように光源評価装置10を設置する。
ステップS80では、入出力制御部38は自然太陽光を受光した太陽電池セル21ごとに短絡電流の電流値を受信する。太陽電池セル21は自然太陽光のような、むらのない光を受光した場合であっても各太陽電池セル21間でばらついた電流値が出力されてしまう。
【0038】
ステップS81では、演算部36は受信した電流値に基づいて、各太陽電池セル21に応じたセル間補正係数Knを算出する。例えば、太陽電池セル21
1の電流値が100mAであり、太陽電池セル21
2の電流値が90mAであり、太陽電池セル21
3の電流値110mA・・・であったとする。この場合、演算部36は例えば平均値である電流値100mAになるようにセル間補正係数Knを算出する。したがって、演算部36は、太陽電池セル21
1のセル間補正係数K
1を1.0、太陽電池セル21
2のセル間補正係数K
2を100/90、太陽電池セル21
3のセル間補正係数K
3を100/110のように算出する。
【0039】
ステップS82では、表示制御部39は算出したセル間補正係数Knを太陽電池セル21ごとに表示部31に表示する。また、記憶制御部37は算出したセル間補正係数Knを太陽電池セル21に関連付けて記憶する。具体的には、記憶制御部37は
図6に示す対応テーブルに、太陽電池セル21と関連付けて各セル間補正係数Knを記憶する。その後、
図7に示すステップS71の処理に戻る。
なお、表示制御部39は記憶部35にセル間補正係数Knが記憶されていない場合、上述した
図7のステップS70において(d)セル間補正係数の測定のみしか選択できないようにしてもよい。
また、セル間補正係数Knは光源評価装置10を製造した時点で製造者が算出し、予め記憶部35に記憶することが好ましい。この場合、
図7のステップS70において選択できる測定項目の中に(d)セル間補正係数の測定を省略することができる。
【0040】
次に、スペクトル合致度の測定について
図9のフローチャートを参照して説明する。ここでは、使用者は光学フィルタ装置40を受光装置20に装着させる。また、使用者は測定対象の光源101が光学フィルタ装置40を透過して受光装置20に放射されるように光源評価装置10を設置する。
ステップS90では、記憶制御部37は記憶部35から基準太陽光の波長帯域ごとのエネルギー分布のデータを読み出す。
図12は、基準太陽光(AM1.5)における波長帯域ごとのエネルギー分布D
AM(n)の一例を示す。なお、記憶部35には、基準太陽光(AM1.5)のほか、大気圏外の太陽光(AM0)、地表に垂直に入射する太陽光(AM1.0)、日出および日没の太陽光における波長帯域ごとのエネルギー分布が予め記憶されている。記憶制御部37は使用者の選択に応じて何れか一つのエネルギー分布のデータを読み出す。
【0041】
ステップS91では、記憶制御部37は波長帯域ごとに関連付けられた波長帯域間補正係数Mnと、各太陽電池セル21に関連付けられたセル間補正係数Knとを読み出す。
ステップS92では、入出力制御部38は光源101から各バンドパスフィルタ44を透過して受光した太陽電池セル21ごとに電流値を受信する。
ステップS93では、演算部36は受信した電流値に基づいて、波長帯域ごとの光源101から放射される光の受光面(ここでは受光面はバンドパスフィルタ44表面)におけるエネルギー分布[%]を算出する。
まず、太陽電池セル21ごとの電流値Inおよび波長帯域ごとの光源のバンドパスフィルタ44表面におけるエネルギーEnは、以下の式で示される。
【0043】
例えば、400nm〜500nmの波長帯域の光源のエネルギーE
1では、Knが太陽電池セル21
1に関連付けられたセル間補正係数K
1、Mnが400nm〜500nmの波長帯域に関連付けられた波長帯域間補正係数M
1、S(λ)は光源101から放射される光のバンドパスフィルタ44表面における分光放射照度(バンドパスフィルタ44
1に放射される分光放射照度)、B(λ)が太陽電池セル21の分光感度、Fn(λ)がバンドパスフィルタ44
1の分光透過率である。
次に、波長帯域ごとの光源のエネルギー分布Dnは、以下の式で示される。
【0045】
Esは全ての太陽電池セル21が受光した光のエネルギーである。また、iは所定の波長帯域内を区分けした数であり、本実施形態ではi=6である。
数2は、数1に基づいて以下の式で表すことができる。
【0047】
例えば、波長帯域400nm〜500nmのエネルギー分布D
1では、Inは太陽電池セル21
1が出力する電流値I
1である。
演算部36は数3を用いて各波長帯域のエネルギー分布Dnを算出する。
ステップS94では、演算部36はステップS93で算出した各エネルギー分布Dnと、ステップS90で読み出された基準太陽光のエネルギー分布D
AM(n)とに基づいて、波長帯域ごとにスペクトル合致度を算出する。具体的には、スペクトル合致度はDn/D
AM(n)により算出することができる。
【0048】
また、演算部36はスペクトル合致度に基づいて波長帯域ごとに測定対象の光源の等級を算出する。演算部36は例えばスペクトル合致度が1.0に近似している場合にクラスA、1.0から離れるにしたがってクラスB、クラスCのように算出する。更に、演算部36は算出した等級に基づいて光源全体を評価する。演算部36は例えば全ての波長帯域がクラスAの場合に測定対象の光源を等級Aとして評価し、一つでもクラスBがある場合には等級Bなどとして評価する。
【0049】
ステップS95では、表示制御部39は算出されたエネルギー分布、スペクトル合致度、波長帯域ごとのクラス、光源の評価を表示部31に表示する。
図13は、エネルギー分布、スペクトル合致度、波長帯域ごとのクラス、光源の評価を表示部31に表により表示した一例を示す図である。したがって、使用者は測定対象の光源がどの程度、基準太陽光のスペクトルと合致しているかを確認することができる。
【0050】
また、表示制御部39は算出されたエネルギー分布を表示部31にグラフで表示してもよい。
図14は、エネルギー分布を表示部31にグラフにより表示した一例を示す図である。
図14では、縦軸をエネルギー分布とし、横軸を波長として、波長帯域ごとの測定対象の光源および基準太陽光のエネルギー分布を示している。
その後、
図7に示すステップS71の処理に戻る。
【0051】
次に、放射照度の場所むらの測定について
図10のフローチャートを参照して説明する。ここでは、使用者は光学フィルタ装置40を受光装置20から離脱させておく。また、使用者は測定対象の光源101が受光装置20に放射されるように光源評価装置10を設置する。
ステップS100では、記憶制御部37は各太陽電池セル21に関連付けられたセル間補正係数Knを読み出す。
ステップS101では、入出力制御部38は光源101から光を受光した太陽電池セル21ごとに電流値を受信する。
【0052】
ステップS102では、演算部36は受信した電流値に基づいて、放射照度の場所むらを算出する。具体的には、演算部36は各太陽電池セル21に関連付けられたセル間補正数Knと受信した各電流値とを乗算することで、太陽電池セル21が出力する電流値のばらつきを補正する。次に、演算部36は補正した各電流値を加算し、太陽電池セルの個数で除算することで電流値の平均値を求める。次に、演算部36は各太陽電池セル21nの補正後の電流値と平均値との比を求めることで場所むらを算出する。
【0053】
ステップS103では、表示制御部39は太陽電池セル21ごとに各太陽電池セル21の補正後の電流値と平均値との比を表示部31に表示する。したがって、使用者はある特定の太陽電池セル21が配置されている場所の放射照度が平均値に対して高いか低いかなどの場所むらを確認することができる。なお、演算部36は場所むらに基づいて光源の評価を算出し、表示制御部39が算出された光源の評価を表示することができる。
その後、
図7のフローチャートに示すステップS71に戻る。
【0054】
次に、放射照度の時間変動率の測定について
図11のフローチャートを参照して説明する。ここでは、使用者は光学フィルタ装置40を受光装置20から離脱させておく。また、使用者は測定対象の光源101が受光装置20に放射されるように光源評価装置10を設置する。
ステップS110では、入出力制御部38は予め定められた太陽電池セル21の電流値を受信する。続いて、入出力制御部38は所定時間経過後に同じ太陽電池セル21の電流値を受信する。
ステップS111では、演算部36は放射照度の時間変動率を算出する。具体的には、演算部36はステップS110で受信された最初の電流値と所定時間経過後に受信された電流値との比を求めることで放射照度の時間変動率を算出する。
【0055】
ステップS112では、表示制御部39は算出した放射照度の時間変動率を表示部31に表示する。したがって、使用者は放射照度が所定時間でどの程度変動するかの時間変動率を確認することができる。なお、演算部36は放射照度の時間変動率に基づいて光源の評価を算出し、表示制御部39が算出された光源の評価を表示することができる。
その後、
図7のフローチャートのステップS71に戻る。
【0056】
このように本実施形態の光源評価装置10は、複数の受光器と光源101との間にそれぞれ配置され、異なる透過波長帯域を有する複数のバンドパスフィルタ44を有している。したがって、各受光器は光源101からの光を異なる波長帯域ごとに分光した状態で受光することができる。すなわち、本実施形態の光源評価装置10は分光器を用いた分光放射計により分光する必要がないので構造を簡略化でき、製造コストを削減することができる。
【0057】
また、本実施形態の光源評価装置10では、受光器として太陽電池セル21を用いたことから例えば1[msec]、すなわち1,000分の1秒などの短時間で受光した場合でも太陽電池セル21から電流値が出力される。したがって、高い放射照度の光が放射されるために長時間受光させることが難しい集光型太陽電池用のソーラシミュレータの光源などのスペクトル合致度も測定することができる。
このとき、複数のバンドパスフィルタ44は、分光透過率と、太陽電池セル21の分光感度との積とが各バンドパスフィルタ44の透過波長帯域内で一定になるように、分光透過率を設定したことで、透過波長帯域内での太陽電池セル21の分光感度の差異がないように扱うことができる。
【0058】
また、記憶部35では、異なる透過波長帯域間で、自然太陽光を受光したときの太陽電池セル21の分光感度とバンドパスフィルタ44の分光透過率との積を一定にする、波長帯域間補正係数を記憶する。演算部36は、太陽電池セルの電流値に波長帯域間補正係数を乗算することで、波長帯域間のばらつきを補正することができる。
【0059】
また、記憶部35では、異なる太陽電池セル間でそれぞれ、自然太陽光を受光したときの電流値を一定にするセル間補正係数を記憶する。演算部36は、太陽電池セルの電流値にセル間補正係数を乗算することで、太陽電池セル21間の電流値のばらつきを補正することができる。
【0060】
また、本実施形態では、(a)スペクトル合致度の測定に受光器を用いたことにより、(b)放射照度の場所むらの測定および(c)放射照度の時間変動率を測定の少なくとも何れかの測定を同じ光源評価装置10で行うことができる。すなわち、光源評価装置10の一台で複数の測定が可能であり、使用者が複数の測定を行う場合に複数の装置が用いる必要がないために測定にかかるコストを低減することができる。
【0061】
次に、回転部42を用いたスペクトル合致度の測定について説明する。回転部42を用いたスペクトル合致度の測定では、演算部36は回転部42によるバンドパスフィルタ44の変更前後でそれぞれスペクトル合致度を測定し、測定したスペクトル合致度の平均値を最終的なスペクトル合致度として算出する。
具体的には、まず回転部42を回転させる前に、上述した
図9のフローチャートの処理により1回目のスペクトル合致度の測定を行う。このとき、記憶制御部37は1回目のスペクトル合致度を記憶部35に一時的に記憶する。
【0062】
次に、使用者は回転部42を基台41に対して回転させることで、バンドパスフィルタ44を異なる太陽電池セル21の上側になるように変更させる。ここで、
図3に示す状態から回転部42の回転軸Rを中心に180度、回転させることで、バンドパスフィルタ44
1を透過した光は太陽電池セル21
6が受光することになる。他のバンドパスフィルタ44も同様に、回転前とは異なる太陽電池セル21が受光することになる。
【0063】
回転部42が回転された場合、受光装置20の位置検出部22は、回転部42の位置を検出し、検出した位置情報を情報処理装置30に送信する。情報処理装置30の記憶制御部37は受信した回転情報に基づいて、
図6に示す対応テーブルにおける波長帯域ごとの関連付けを、回転後の太陽電池セル21nおよびセル間補正係数Knに変更する。回転後の波長帯域に対する太陽電池セル21の関連付けは、予め対応テーブルに記憶される。一方、セル間補正係数Knは、
図8のフローチャートのステップS82において回転後の太陽電池セル21と関連付けて記憶される。なお、セル間補正係数Knは光源評価装置10を製造した時点で製造者が算出し、予め回転後の対応テーブルに記憶することが好ましい。
【0064】
次に、上述した
図9のフローチャートの処理により2回目のスペクトル合致度の測定を行う。このとき、演算部36は波長帯域ごとの関連付けを回転後の対応テーブルに示す太陽電池セル21およびセル間補正係数Knに基づいてスペクトル合致度を算出する。
【0065】
例えば、数3を用いて波長帯域400nm〜500nmのエネルギー分布D
1を算出する場合を想定する。この場合、Mnが400nm〜500nmの波長帯域に関連付けられた波長帯域間補正係数M
1である。一方、
図6に示す回転後の対応テーブルから、透過波長帯域400nm〜500nmのバンドパスフィルタ44
1を透過して受光するのは太陽電池セル21
6である。したがって、Knは太陽電池セル21
6に関連付けられたK
6であり、Inは太陽電池セル21
6の電流値I
6である。
したがって、演算部36は、波長帯域400nm〜500nmのエネルギーE
1を、E
1=K
6×M
1×I
6によって算出することができる。その他の波長帯域のエネルギーE
2〜E
6についても、回転後の対応テーブルに基づいて同様に算出することができる。
演算部36は算出した波長帯域ごとのエネルギーEnを用いて2回目のスペクトル合致度を算出し、記憶制御部37は2回目のスペクトル合致度を記憶部35に一時的に記憶する。
【0066】
次に、演算部36は、同一の波長帯域ごとに1回目と2回目とのスペクトル合致度の平均値を、最終的なスペクトル合致度として算出する。表示制御部39は、最終的に算出されたスペクトル合致度を表示部31に表示する。
このように、バンドパスフィルタ44の変更前後で異なる太陽電池セル21が、同一のバンドパスフィルタ44を透過して受光した場合、演算部36は異なる太陽電池セル21のそれぞれの電流値を用いて算出したスペクトル合致度の平均値を最終的なスペクトル合致度として算出する。したがって、放射照度の場所むらの影響を抑制したスペクトル合致度を算出することができる。
【0067】
なお、
図1に示すように、バンドパスフィルタ44が波長帯域を区分けした数以上ある場合、各バンドパスフィルタ44は6つの透過波長帯域の何れかの透過波長帯域を有している。すなわち、光学フィルタ部43は、同一の透過波長帯域を有するバンドパスフィルタ44が複数、配置して構成されている。したがって、異なる太陽電池セル21が同一の透過波長帯域を有するバンドパスフィルタ44を透過して受光する。
この場合、演算部36は、異なる太陽電池セル21のそれぞれの電流値を用いて算出したスペクトル合致度の平均値を最終的なスペクトル合致度として算出することで、放射照度の場所むらの影響を抑制したスペクトル合致度を算出することができる。
【0068】
また、
図1に示すように、太陽電池セル21の配置される領域が正方形であり、バンドパスフィルタ44の配置される領域が正方形である場合、使用者は回転部42を基台4に対して90度、180度、270度、回転させることができる。このとき、各回転角度で太陽電池セル21の上側に配置されるバンドパスフィルタ44は、異なる透過波長帯域のバンドパスフィルタ44になるように配置される。
演算部36は、1回目(0度)〜4回目(270度)のスペクトル合致度の平均値を最終的なスペクトル合致度として算出することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、異なる回転部の形態について説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成は、同一符号を付してその説明を省略する。
図15は、第2の実施形態の回転部50の構成を示す図である。
本実施形態の回転部50の各バンドパスフィルタ44は、
図1に示す第1の実施形態のバンドパスフィルタ44のサイズを1/4に縮小したものである。このように、バンドパスフィルタ44を縮小させることで光学フィルタ装置40の製造コストを削減することができる。
【0070】
図16A〜
図16Cは、
図15に示す状態から回転部50を右回りに90度、180度、170度、回転させた状態を示す図である。このとき、各回転角度で太陽電池セル21の上側に配置されるバンドパスフィルタ44は、異なる透過波長帯域のバンドパスフィルタ44になるように配置される。例えば、回転角度ごとに太陽電池セル21
11の上側に配置されるバンドパスフィルタ44
11、44
18、44
88、44
81は、それぞれ異なる透過波長帯域である。
図15に示す回転部50の構成でも、第1の実施形態で説明したように、演算部36は、1回目(0度)〜4回目(270度)のスペクトル合致度の平均値を最終的なスペクトル合致度として算出することができる。
【0071】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更したり、各実施形態を組み合わせたりすることが可能である。
また、上述した実施形態では受光器として太陽電池セル21を用いる場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、受光器としてサーモパイルや焦電センサなどを用いることができる。
また、上述した実施形態では、6つの波長帯域について説明したが、6つの波長帯域よりも少ない波長帯域または6つの波長帯域よりも多い波長帯域でも同様に用いることができる。また、受光器の配置として正方格子配置について説明したが、六角形型の配置や円形、場所によって受光器の密度が異なる配置でも同様に用いることができる。
【0072】
また、上述した実施形態では所定の波長帯域として、400nm〜1100nmの波長帯域を複数に区分けする場合について説明したが、この場合に限られない。例えば400nm〜1100nmよりも広い波長帯域または狭い波長帯域を複数に区分けし、区分けした波長帯域ごとのスペクトル合致度を算出してもよい。
また、上述した実施形態では所定の波長帯域を6つの波長帯域に区分けする場合について説明したが、この場合に限られず、所定の波長帯域を連続する少なくとも6つ以上の波長帯域で区分けすることができる。この場合、区分けした6つ以上の波長帯域ごとのスペクトル合致度を算出することができる。
【0073】
本実施形態では上述した処理を実現するプログラムを、ネットワークまたは各種記憶媒体を介して光源評価装置10に供給し、光源評価装置10のCPUが供給されたプログラムを読み出して実行することでも実現される。また、上述したプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体および上述したプログラムなどのコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。