(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも前記第1内筒の下端部外周面または前記外筒の下部内面に設けられ、当該第1内筒によって前記排水流入口を閉じた際に、当該排水流入口から前記外筒内に浸入する水を止める第3止水部材を備える、請求項1または2記載の排水装置。
前記外筒の上端部と前記第1内筒の上端部とを連結し、前記外筒からの前記第1内筒の抜けを防止する抜止部材をさらに備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の排水装置。
前記ゴミ除去フィルタは、側壁に複数の孔を有する筒状に形成され、一方端部は前記排水流入口に接続され、他端部はその内壁同士が接触するように閉口される、請求項9記載の排水装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、水田農業の改善を図るため、数年ごとに圃場を田状態および畑状態で交互に利用する田畑輪換を行う圃場が増加している。ここで、畑作期間においては、湿害を防止するために、深溝または地中からの排水を適切に行うことが必要となる。また、冬期に裏作を行ったり、単に圃場から水を抜いて乾田化したりするような場合にも、深溝または地中からの排水を適切に行うことが必要となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、田面水を排水してその水位を調整することはできるものの、深溝または地中からの排水を排出することはできない。そこで、深溝または地中からの排水を行う排水設備を圃場に別途設けることが考えられるが、これでは設備コストが嵩んでしまい、特に、兼業農家などが個々に営む小規模の圃場では実施し難い。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、排水装置を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、簡単な構成で、設定水位以上の田面水を排水して水位調整すると共に、深溝および地中からの排水を排出することが可能な、排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、湛水時には設定水位以上の田面水を排水して水位調整すると共に、乾田時には深溝または地中からの排水を排出する排水装置であって、上端開放の有底縦管状に形成され、側壁下端部に形成される排水流入口と排出口とを有する外筒、外筒内に嵌入されて上下動または周方向に回転することによって排水流入口を開閉可能な第1内筒、および上端部に形成される田面水流入口を有し第1内筒内に嵌入されて上下動することによって田面水流入口の高さ位置を変更可能な第2内筒を備える、排水装置である。
【0010】
第1の発明では、排水装置は、外筒、第1内筒および第2内筒を含む3重筒構造を有し、田畑輪換を行う圃場に用いられて、湛水時には設定水位以上の田面水を排水して水位調整すると共に、乾田時には深溝または地中からの排水を排出する。外筒は、上端開放の有底縦管状に形成され、その側壁下端部には、排水流入口および排出口が形成される。第1内筒は、外筒内に嵌入され、上下動または周方向に回転することによって外筒の排水流入口を開閉する。また、第2内筒は、第1内筒内に嵌入され、上下動することによってその上端部に形成される田面水流入口の高さ位置を変更する。
【0011】
第1の発明によれば、第1内筒を用いて排水流入口を開閉することによって、深溝または地中からの排水の可否を制御でき、第2内筒を用いて田面水流入口の高さを調整することによって、田面水の水位を調整できる。すなわち、排水装置を三重筒構造にするという簡単な構成で、設定水位以上の田面水を排水してその水位を調整できると共に、深溝または地中からの排水を排出できる。
【0012】
また、排水装置は、構成が簡単であるので、製作コストおよび設置コストを安価に抑えることができる。さらに、排水流入口の開閉は、第1内筒を上下動または周方向に回転させるだけでよく、田面水流入口の高さ調整は、第2内筒を上下動させるだけでよいので、設置後の作業も容易である。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に従属し、外筒の内周面および第1内筒の外周面のそれぞれと密着する第1止水部材、および第1内筒の内周面および第2内筒の外周面のそれぞれと密着する第2止水部材を備える。
【0014】
第2の発明では、第1止水部材は、たとえば合成ゴム等によって形成されるゴム輪であって、外筒の内周面および第1内筒の外周面のそれぞれと密着して、この間の止水性を確保する。同様に、第2止水部材は、たとえば合成ゴム等によって形成されるゴム輪であって、第1内筒の内周面および第2内筒の外周面のそれぞれと密着して、この間の止水性を確保する。
【0015】
第2の発明によれば、外筒と第1内筒との間の隙間、および第1内筒と第2内筒との間の隙間から排水装置内への水の浸入を防ぐことができる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、少なくとも第1内筒の下端部外周面または外筒の下部内面に設けられ、当該第1内筒によって排水流入口を閉じた際に、当該排水流入口から外筒内に浸入する水を止める第3止水部材を備える。
【0017】
第3の発明では、第3止水部材は、たとえばスポンジ系ゴム等で形成される帯状体であって、少なくとも第1内筒の下端部外周面または外筒の下部内面に設けられる。第3止水部材は、湛水時に第1内筒によって排水流入口を閉じた状態にする際に、排水流入口の開口縁と第1内筒の下端部外周面との間の隙間を塞ぐ。
【0018】
第3の発明によれば、湛水時に田面水を排水して水位調整するときに、排水流入口から外筒内への水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0019】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、第1内筒の下端部が排水流入口を閉じた状態で、当該第1内筒の内部が排出口と連通する。
【0020】
第4の発明では、第1内筒の下端部は、たとえば一方側面から斜め方向に切り欠かれた楔形状に形成され、第1内筒の下端部によって排水流入口を閉じたときに、第1内筒の内部が外筒の排出口と連通する状態となる。
【0021】
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、第1内筒の内周面に形成されて第2内筒の下端を係止する第1突起部をさらに備え、第2内筒の下端部は、その軸方向長さが周方向で異なるように形成される。
【0022】
第5の発明では、第1内筒の内周面には、第2内筒の下端を係止する第1突起部が形成される。また、第2内筒の下端部は、その下端から上端までの長さ(下端部自体の軸方向長さ)が、周方向で異なるように形成される。これによって、第2内筒を上下動させるときには、第2内筒を周方向に回転させつつ上下動させることによって、どの高さ位置においても、第1内筒の第1突起部に第2内筒の下端を係止させた状態にすることが可能となる。
【0023】
第5の発明によれば、第2内筒の意図しない下がりを確実に防止することができる。
【0024】
第6の発明は、第5の発明に従属し、第2内筒の下端は、階段状に形成される。
【0025】
第6の発明では、第2内筒の下端が階段状に形成される。これによって、第2内筒の下端と突起部とが水平方向に面接触するようになり、第2内筒に対して下方向に大きな力が作用した場合でも、第2内筒が回転しながら下降してしまうことが防止される。
【0026】
第6の発明によれば、第2内筒の意図しない下がりをより確実に防止することができる。
【0027】
第7の発明は、第1ないし第6のいずれかの発明に従属し、第1内筒の下端部外周面に形成される上下方向に延びるキー溝、および外筒の内周面に形成されてキー溝に嵌り合う第2突起部をさらに備える。
【0028】
第7の発明では、第1内筒の下端部外周面には、上下方向に延びる条溝であるキー溝が形成される。また、外筒の外周面には、第1内筒のキー溝と嵌合する第2突起部が形成される。
【0029】
第7の発明によれば、第1内筒がキー溝と第2突起部との嵌合によって回り止めされ、第1内筒の周方向の位置決めが確実に行われる。
【0030】
第8の発明は、第1ないし第7のいずれかの発明に従属し、外筒の上端部と第1内筒の上端部とを連結し、外筒からの第1内筒の抜けを防止する抜止部材をさらに備える。
【0031】
第8の発明では、外筒の上端部と第1内筒の上端部とを連結するチェーン等の抜止部材をさらに備える。これによって、外筒からの第1内筒の抜けを防止できる。
【0032】
第9の発明は、第1ないし第8のいずれかの発明に従属し、排水流入口に設けられるゴミ除去フィルタをさらに備える。
【0033】
第9の発明では、外筒の排水流入口には、ゴミ除去フィルタが設けられる。これによって、深溝水や地中水に混ざるゴミが、排水路へ流出してしまうことを防ぐことができる。
【0034】
第10の発明は、第9の発明に従属し、ゴミ除去フィルタは、側壁に複数の孔を有する筒状に形成され、一方端部は排水流入口に接続され、他端部はその内壁同士が接触するように閉口される。
【0035】
第10の発明では、ゴミ除去フィルタは、側壁に複数の孔を有する筒状体であって、その一方端部が排水流入口に接続される。また、ゴミ除去フィルタの他端部は、その内壁同士が接触するように閉口される。
【0036】
第10の発明によれば、ゴミ除去フィルタと地中水または深溝水との接触面積を大きくすることができるので、地中水または深溝水の排出性能(排水流入口からの地中水または深溝水の流入性能)を確保できる。
【0037】
第11の発明は、第1ないし第8のいずれかの発明に従属し、排水流入口には、地中に埋設された暗渠管または弾丸暗渠が接続される。
【0038】
第11の発明では、外筒に形成される排水流入口には、地中に埋設された有孔排水管などの暗渠管または弾丸暗渠が接続される。
【0039】
第11の発明によれば、圃場の全域から効率的に排水を集めることができるようになるので、排水性能をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、第1内筒を用いて排水流入口を開閉することによって、深溝または地中からの排水の可否を制御でき、第2内筒を用いて田面水流入口の高さを調整することによって、田面水の水位を調整できる。すなわち、排水装置を三重筒構造にするという簡単な構成で、設定水位以上の田面水を排水してその水位を調整できると共に、深溝または地中からの排水を排出できる。
【0041】
また、構成が簡単であるので、製作コストおよび設置コストを安価に抑えることができる。さらに、排水流入口の開閉は、第1内筒を上下動または周方向に回転させるだけでよく、田面水流入口の高さ調整は、第2内筒を上下動させるだけでよいので、設置後の作業も容易である。
【0042】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1を参照して、この発明の一実施例である排水装置10は、外筒12、第1内筒14および第2内筒16を含み、田畑輪換を行う圃場100等に埋設されて使用される。そして、湛水時、つまり圃場100を水田として使用するときには、設定水位以上の田面水を排水してその水位調整を行うと共に、乾田時、つまり圃場100を乾田化して畑として使用するときには、深溝水または地中水を排水する。ただし、排水装置10は、数年ごとに田畑輪換を行う圃場100だけでなく、冬期に裏作を行う圃場や、単に水を抜いて乾田化する時期のある圃場などにも適宜利用される。
【0045】
以下、
図2−
図6を参照して、排水装置10の構成について具体的に説明する。
図2および
図3に示すように、排水装置10は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂などによって形成される。排水装置10は、縦管状の外筒12と、外筒12に対して上下動可能に嵌入される第1内筒14と、第1内筒14に対して上下動可能に嵌入される第2内筒16とを含む3重筒構造を有する。詳細は後述するように、第1内筒14は、上下動することで外筒12に形成される排水流入口20を開閉することができ、第2内筒16は、上下動することでその上端部に形成される田面水流入口42の高さ位置を変更することができる。なお、第1内筒14および第2内筒のそれぞれの上端部は、その最下位置において、外筒12および第1内筒14のそれぞれの上端から突出する状態となる。第1内筒14および第2内筒16を最下位置にした状態における排水装置10の上下方向の長さ(高さ)は、たとえば420mmである。
【0046】
図4に示すように、外筒12は、略円筒状に形成される側壁12aとその下端に設けられる底壁12bとを含む、上端開放の有底縦管状に形成される。また、側壁12aの下端部には、排水流入口20および排出口22が互いに対向し合う位置に形成される。排水流入口20および排出口22の内径は、たとえば150mmである。
【0047】
排水流入口20は、圃場100に形成される深溝または地中からの排水を外筒12内に流入させるための開口であり、側壁12aの下端部から横方向に突出する短管状に形成される。一方、排出口22は、外管12内に流入した水を外部に排出するための開口であると共に、排水路104まで延びる排水管106(
図1参照)との接続部としても利用され、側壁12aの下端部から横方向に突出する短管状に形成される。
【0048】
この実施例では、側壁12aの下端部は、横管状に形成されており、その横管状部分の両端部が排水流入口20および排出口22として利用される。また、横管状部分の中央底部が外筒12の底壁12bとなる。なお、このような外筒12の基本構造は、汎用のチーズ継手(90°Y)に対して汎用の直管を接続するだけで形成できるので、排水装置10の製作コストを抑制することができる。
【0049】
また、外筒12の側壁12a上端部の内周面には、周方向に延びる環状溝24が形成され、この環状溝24には、合成ゴムまたはエラストマ等によって形成されるゴム輪などの第1止水部材26が装着される。第1止水部材26は、環状溝24の全長に亘って延びる環状に形成されており、環状溝24の内面(つまり外筒12の内周面)および第1内筒14の外周面のそれぞれと密着して、この間の止水性を確保する。さらに、側壁12aの内周面には、後述する第1内筒14のキー溝30と嵌合する突起部(第2突起部)28が形成される。突起部28は、略直方体状や半円球状などの突起であって、排水流入口20の上方に形成される。ただし、突起部28の形成位置は、これに限定されず、キー溝30の形成位置に応じて適宜変更可能である。
【0050】
図5に示すように、第1内筒14は、両端開放の円筒状に形成される。この第1内筒14の下端部14aは、一方側面から斜め方向に切り欠かれた楔形状に形成される。つまり、第1内筒14の下端の開口14bは、外筒12の排出口22に向かって斜め下向きに開口しており、第1内筒14の下端部14aが排水流入口20を閉じた状態で、第1内筒14の内部が排出口22と連通する(
図3参照)。
【0051】
第1内筒14の外周面には、上述の外筒12の突起部28と嵌合するキー溝30が形成される。キー溝30は、下端部14aの最長部側などに形成される上下方向に延びる条溝である。突起部28をキー溝30内に嵌め込んだ状態で第1内筒14を上下動させることによって、第1内筒14の周方向の位置決めがされ(周方向の回転が防止され)、第1内筒14の下端部14aの最長部と外筒12の排水流入口20の中心部と確実に合わせることができる。また、図示は省略するが、キー溝30の下端部には、横方向に分岐する係止溝が形成される。第1内筒14を上昇させるときには、第1内筒14を周方向に少し回転させて係止溝と突起部28とを嵌合させ、係止溝によって突起部28を係止させるとよい。第1内筒14は、第1止水部材26の密着力(抵抗力)によっても上昇時の位置を保持できるが、キー溝30の係止溝によって突起部28を係止させることで、第1内筒14の意図しない下がりを確実に防止することができる。
【0052】
また、第1内筒14の内周面には、第2内筒16の下端を係止する突起部(第1突起部)32が形成される。突起部32は、略直方体状などの突起であって、開口14bの上端縁よりも上の位置に形成される。この実施例では、突起部32は、第2内筒16の最下位置を規定するものであり、第1内筒14内への第2内筒16の入り込みを確実に防止する。
【0053】
さらに、第1内筒14の上端部内周面には、周方向に延びる環状溝34が形成され、この環状溝34には、合成ゴムまたはエラストマ等によって形成されるゴム輪などの第2止水部材36が装着される。第2止水部材36は、環状溝34の全長に亘って延びる環状に形成されており、環状溝34の内面(つまり第1内筒14の内周面)および第2内筒16の外周面のそれぞれと密着して、この間の止水性を確保する。また、第2止水部材36は、その密着力(抵抗力)により、第2内筒16を所望の高さ位置で保持する保持部材としても機能する。
【0054】
また、第1内筒14の上端部外周面には、外方に突出する環状突起である鍔部38が形成される。鍔部38は、第1内筒14を上下動させる際の把持部として利用される。
【0055】
さらに、第1内筒14の下端部14aには、第3止水部材40が設けられる。第3止水部材40は、スポンジ系ゴムなどで形成される帯状体であって、第1内筒14の下端面の下半周部分に設けられると共に、下端部14aの外周面上を上下方向に延び、下端部14aの上端に沿って排出口22側の外周面半周部分を延びるように第1内筒14に設けられる。このような第3止水部材40は、第1内筒14が最下位置に位置する状態(排水流入口20を第1内筒14の下端部14aで閉じた状態)において、排水流入口20の開口縁と第1内筒14の下端部14a外周面との間に生じる隙間を塞ぎ、排水流入口20から外筒12内に浸入する水を止める。
【0056】
なお、第3止水部材40は、第1内筒14に単に貼り付けるだけでもよいが、第3止水部材40を設ける位置に浅溝を形成しておいて、この浅溝に嵌め込むようにして第3止水部材40を設けることもできる。また、第3止水部材40を設ける位置は、
図5に示す態様に限定されない。たとえば、第1内筒14の下端部14aの外周面であって、排水流入口20の開口縁と対向する環状位置に対して第3止水部材40を設けるようにしてもよい。また、外筒12の内面側に第3止水部材40を設けることもできる。
【0057】
図6に示すように、第2内筒16は、両端開放の円筒状に形成される。第2内筒16の上端の開口は、圃場100に供給された余剰の田面水を外筒12内に流入させるための田面水流入口42として機能する。第1内筒16の上下方向の長さは、たとえば220mmであり、その内径は、たとえば130mmである。また、第2内筒16の上端部には、略C字状の取っ手44が取り付けられる。取っ手44は、その両端部を支点として第2内筒16に対して回動可能とされる。
【0058】
また、
図2および
図3に示すように、外筒12の上端部と第1内筒14の上端部(鍔部38)とは、チェーン等の線状体である抜止部材46によって連結される。抜止部材46は、第1内筒14を上昇させて排水流入口20を開いたときに少し余裕ができる程度の長さを有し、外筒12からの第1内筒14の抜けを防止する。
【0059】
このような排水装置10は、
図1に示すように、圃場100等に埋設されて使用される。たとえば、2000−4000m
2の圃場面積に対して1つの排水装置10を配置するという割合で、圃場100に排水装置10が設けられる。具体的には、圃場100の作付面積を減少させないように、畦畔102の圃場100側の一部が掘削され、そこに排水装置10が埋設される。この際、排水装置10は、第1内筒14および第2内筒16が最下位置の状態において、第2内筒16の上端が圃場100の地表面と略面一となるように埋設される。また、排出口22には、排水路104まで延びる排水管106が接着接合またはゴム輪接合などによって接続され、排水流入口20は、そのまま地中に配置される。
【0060】
そして、湛水時には、
図7に示すように、第1内筒14を最下位置にして第1内筒14の下端部14aで排水流入口20を閉じた状態で、第2内筒16の上端、つまり田面水流入口42が田面水の所望水位の高さ位置にくるように、第2内筒16を上昇させてその位置を調整する。この際、第2内筒16は、第2止水部材34によって所望の高さ位置で固定保持される。このような状態で圃場100に用水が供給されると、田面水の水位が第2内筒16の田面水流入口42の高さ位置に達した後、設定水位以上の余剰の用水は、田面水流入口42から外筒12(排水装置10)内に流入し、排出口22から排出される。そして、排出管106を通って排水路104まで搬送される。これによって、圃場100の田面水の水位は、第2内筒16の田面水流入口42の高さ位置に保たれるようになる。なお、この実施例では、第2内筒16を上下動させることにより、田面水流入口42の高さ位置、つまり田面水の水位を0−170mmの間で調整することが可能である。
【0061】
一方、乾田時には、
図8に示すように、第1内筒14を上昇させて外筒12の排水流入口20を開く。この際、第1内筒14は、周方向に少し回転させてキー溝30に形成される係止溝と外筒12の突起部28とを嵌合させることによって、上昇位置で固定保持される。なお、第2内筒16は、第1内筒14の上昇に伴い上昇する。排水流入口20が開かれると、余剰の地中水(または深溝水)が排水流入口20から外筒12内に流入し、排出口22から排出される。そして、排出管106を通って排水路104まで搬送される。これによって、圃場100は、乾田状態となって畑作を好適に行うことができるようになる。
【0062】
この実施例によれば、第1内筒14を用いて排水流入口20を開閉することによって、深溝または地中からの排水の可否を制御でき、第2内筒16を用いて田面水流入口42の高さを調整することによって、田面水の水位を調整できる。すなわち、排水装置10を三重筒構造にするという簡単な構成で、設定水位以上の田面水を排水してその水位を調整できると共に、深溝または地中からの排水を排出できる。
【0063】
また、排水装置10は構成が簡単であるので、製作コストおよび設置コストを安価に抑えることができる。さらに、排水流入口20の開閉、または田面水流入口42の高さ調整は、地上から第1内筒14または第2内筒16を上下動させるだけでよいので、設置後の作業も容易である。
【0064】
さらにまた、排水流入口20を排出口22と同じ高さ位置に設けているので、排水装置10を低背化でき、排水先の排水路104が浅い場合にも対応可能となる。つまり、用排水分離などの基盤整備が十分にされていないような小規模な圃場100にも好適に利用できる。
【0065】
なお、上述の実施例では、排水流入口20をそのまま地中に配置するようにしたが、これに限定されない。たとえば、排水流入口20は、圃場100の地中に設けられた有孔排水管等の暗渠管または弾丸暗渠などの下流側端部に接続されてもよいし、圃場100に設けられた深溝の下流側端部の底部に配置されるようにしてもよい。このように、暗渠管、弾丸暗渠または深溝などと排水流入口20を接続する場合には、暗渠管などを敷設する分だけ高コストとなるが、圃場100の全域から効率的に排水を集めることができるようになるので、排水性能をより向上させることができる。
【0066】
また、上述の実施例では、排水流入口20および排出口22を互いに対向し合う位置、つまり周方向に180°ずらした位置に設けるようにした。しかし、排水流入口20と排出口22との周方向における位置関係は、特に限定されず、90°や120°等の適宜な角度だけずらした位置に排水流入口20および排出口22を設けることもできる。また、排水流入口20は、排出口22よりも高い位置に形成することもできる。
【0067】
また、上述の実施例では、排水流入口20を短管状に形成しているが、排水流入口20の形状は適宜変更可能である。たとえば、排水流入口20は、外筒12の側壁12aに形成される単なる開口であってもよい。また、排出口22の形状も、排水管106と水密的に接続できる形状であれば適宜変更可能である。たとえば、排出口22は、受口形状とする代わりに、差口形状とすることもできる。
【0068】
さらに、上述の実施例では、第2内筒16を、上端面と下端面とが平行である円筒状に形成したが、これに限定されない。たとえば、
図9および
図10に示す実施例のように、第2内筒16の下端部16aを一方側面から斜め方向に切り欠かれた楔形状に形成することもできる。すなわち、
図9および
図10に示す実施例では、第2内筒16の下端部16aは、その下端16bから上端16cまでの長さ(つまり下端部16a自体の軸方向長さ)が、周方向で異なるように形成される。これにより、第2内筒16を上下動させるときには、第2内筒16を周方向に回転させつつ上下動させることによって、どの高さ位置においても、第1内筒14の突起部(第1突起部)32に下端部16bの下端(つまり第2内筒16の下端)16bを係止(当接)させた状態にすることが可能となるので、第2内筒16の意図しない下がりを確実に防止することができる。つまり、
図9および
図10に示す実施例では、突起部32は、第1内筒14内への第2内筒16の入り込みを防止するだけでなく、第2内筒16を所望の高さ位置で係止して保持する保持部としても機能する。
【0069】
また、
図11に示す実施例のように、第2内筒16の下端16bを階段状に形成することによって、第2内筒16の下端部16aの軸方向長さを周方向で異なるようにすることもできる。
図9および
図10に示す実施例では、第2内筒16の下端16bが斜面状に形成されていることから、第2内筒16に対して下方向に大きな力が作用した場合には、第2内筒16の下端16bが突起部32上を滑り、第2内筒16が回転しながら下降してしまう可能性がある。これに対して、
図11に示す実施例では、第2内筒16の下端16bが階段状に形成されるので、第2内筒16の下端16bと突起部32とが水平方向に面接触するようになり、第2内筒16に対して下方向に大きな力が作用した場合に第2内筒16が回転しながら下降してしまうことが防止される。したがって、
図11に示す実施例によれば、第2内筒16の意図しない下がりをより確実に防止することができる。
【0070】
さらにまた、上述の各実施例では、第1内筒14の下端部14aを楔形状に形成しているが、第1内筒14の下端部14aの形状は適宜変更可能である。たとえば、
図12に示す実施例のように、第1内筒14の下端部14aを排出口22に向かって湾曲させるように形成して、第1内筒14の下端部14aを、田面水流入口42から垂直方向に流下してくる田面水を排出口22に案内するための案内部として機能させるようにしてもよい。これによって、田面水流入口42から流入する田面水を排出口22から円滑に排出することができる。なお、この場合の第3止水部材40は、第1内筒14の下端部14aの上端に沿って排水流入口20側の外周面半周部分を延びたあと、下端部14aの外周面を上下方向に円弧状に延びるように第1内筒14に設けられる。
【0071】
また、上述の各実施例では、第1内筒14を上下動させることによって外筒12の排水流入口20を開閉させる構成としたが、
図13および
図14に示す実施例のように、第1内筒14を周方向に回転させることによって外筒12の排水流入口20を開閉させる構成にすることもできる。以下、
図13および
図14を参照して、第1内筒14を回転させるタイプの実施例について説明するが、上述の各実施例と同様の部分については、説明を省略または簡略化する。
【0072】
図13および
図14に示すように、外筒12は、円筒状に形成される側壁12aとその下端に設けられる平板状の底壁12bとを含む、上端開放の有底縦管状に形成される。側壁12aの下端部には、短筒状の排水流入口20および排出口22が互いに対向し合う位置に形成される。また、底壁12bの上面側には、円柱状、方形状または十字状などの嵌合穴12cが形成される。
【0073】
図13および
図14と共に、
図15を適宜参照して、第1内筒14は、円筒状の側壁を有する。第1内筒14の下端部14aには、外筒12の排水流入口20および排出口22のそれぞれと対応する位置に、流入口14cおよび流出口14dが形成される。また、第1内筒14には、流入口14cと流出口14dとを連結するインバートを有する底壁14eが設けられる。底壁14eの下面側には、外筒12の嵌合穴12cと嵌り合う円柱状、方形状または十字状の突起14fが設けられており、嵌合穴12cと突起14fとが嵌合することによって、第1内筒14が位置決めされる。なお、嵌合穴12cおよび突起14fを方形状または十字状などに形成しておけば、第1内筒14を回り止めすることも可能である。
【0074】
さらに、第1内筒14の下端部14aの外周面には、第3止水部材40が設けられる。この実施例では、第3止水部材40は、下端部14aの上端および下端に沿って(つまり流入口14cおよび流出口14dの上縁および下縁のそれぞれを結ぶように)周方向全長に亘って延びると共に、流入口14cおよび流出口14のそれぞれの両側において上下方向に延びるように第1内筒14に設けられる。
【0075】
図13および
図14に示す実施例では、湛水時には、第1内筒14の流入口14cおよび流出口14dの位置を外筒12の排水流入口20および排出口22の位置から周方向に90°ずらした位置にして、第1内筒14の下端部14aで排水流入口20を閉じる。そして、この状態で、第2内筒16の上端、つまり田面水流入口42が田面水の所望水位の高さ位置にくるように、第2内筒16を上昇させてその位置を調整する。
【0076】
一方、湛水時には、第1内筒14を周方向に90°回転させ、第1内筒14の流入口14cおよび流出口14dの位置と、外筒12の排水流入口20および排出口22の位置とを合わせた状態にする。これにより、地中水(または深溝水)は、排水流入口20から外筒12内に流入し、排出口22から排出される。
【0077】
図13および
図14に示す実施例においても、排水装置10を三重筒構造にするという簡単な構成で、田面水を排水してその水位を調整できると共に、深溝または地中からの排水を排出できる。また、排水流入口20の開閉は、第1内筒14を周方向に回転させるだけでよく、田面水流入口42の高さ調整は、第2内筒16を上下動させるだけでよいので、設置後の作業も容易である。
【0078】
また、
図13および
図14に示す実施例では、田面水流入口42からの表面排水を行いながら、排水流入口20からの地中排水を同時に行うこともできる。もちろん、第1内筒14を上下動させることによって外筒12の排水流入口20を開閉させるタイプの
図2等に示す実施例においても、地表および地中からの同時排水を行うことは可能であるが、この上下動タイプの実施例では、同時排水時における田面水の水位調整可能範囲が上方に移動する。この点、第1内筒14を周方向に回転させることによって外筒12の排水流入口20を開閉させるタイプの
図13および
図14に示す実施例では、同時排水時においても田面水の水位調整可能範囲は変わらないので、地表および地中からの同時排水を行うことに適している。
【0079】
なお、
図13および
図14に示す実施例では、第1内筒14の下端部14aに流入口14cおよび流出口14dを形成するようにしたが、
図4等に示す各実施例と同様に、第1内筒14の下端部14aを一方側面から斜め方向に切り欠かれた楔形状に形成することもできる。
【0080】
さらに、他の実施例として、外筒12の排水流入口20には、外筒12内へのゴミの流入を防ぐためのゴミ除去フィルタ50を設けることもできる。たとえば、
図16に示すように、ゴミ除去フィルタ50は、側壁に複数の孔を有する筒状体であって、その一方端部が排水流入口20に接着接合などによって接続される。また、ゴミ除去フィルタ50の他端部は、その内壁同士が接触するように融着等させることによって閉口される。
【0081】
図16に示す実施例によれば、外筒12の排水流入口20にゴミ除去フィルタ50を設けたので、深溝水や地中水に混ざるゴミの排水路104への流出を防ぐことができる。また、ゴミ除去フィルタ50を
図16に示すような形状に形成することによって、ゴミ除去フィルタ50と地中水または深溝水との接触面積を大きくすることができ、地中水または深溝水の排出性能(排水流入口20から外筒12内への地中水または深溝水の流入性能)を確保できる。
【0082】
ただし、ゴミ除去フィルタ50の形状は、特に限定されず、たとえば、単に排水流入口20を覆う平板状に形成することもできるし、ゴミ除去フィルタ50を円筒状に形成して、その一方端部を排水流入口20に接続し、その他端部をキャップ等で封止するようにすることもできる。
【0083】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。