(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性基板と、前記導電性基板の一方の表面側に、第2の電極を介して接合された、窒化物からなる半導体層と、前記導電性基板の他方の表面に形成された金属層と、前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と、前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と、を備える縦型窒化物半導体素子であって、
前記導電性基板は、他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有し、
前記半導体層の前記接合表面と、前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と、前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であり、
前記フランジ部の延出長さが、前記半導体層の長さに対して0.1〜0.5倍であることを特徴とする縦型窒化物半導体素子。
前記接合層は、前記第2の電極の表面に形成された第1の接合層、および、前記導電性基板の表面に形成された第2の接合層の少なくとも一層を有することを特徴とする請求項1に記載の縦型窒化物半導体素子。
前記分割工程は、前記導電性基板の他方の表面側から、前記導電性基板の残部に分割線を形成することによって前記積層素子を分割することを特徴とする請求項3に記載の縦型窒化物半導体素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード等に利用される窒化物半導体素子には、サファイア基板の上に窒化物からなるn型半導体層と活性層とp型半導体層とが順に積層された半導体素子がある。このような半導体素子は、サファイア基板が絶縁性であり基板側から電極を取り出すことができないので、窒化物半導体層の同一面に正電極と負電極とが設けられた、いわゆる横型窒化物半導体素子である。
【0003】
近年、高効率高出力な窒化物半導体素子の需要が増えている。そして、高出力半導体素子の場合には、半導体素子の発熱量が大きくなり易い。特に、前記の横型窒化物半導体素子では、正電極と負電極が水平方向に並んでいるため、電流が水平方向に流れ、電流密度が局部的に高くなり、発熱量が大きくなる。その結果、横型窒化物半導体素子では、高効率高出力を達成することができなかった。
【0004】
そのため、高効率高出力を得る手段として、半導体素子の発熱を効率よく放熱可能な半導体素子構造が要望され、いわゆる縦型窒化物半導体素子が開発されてきている。ここで、縦型窒化物半導体素子とは、導電性基板および半導体層を挟んで2つの電極が対向するように上下方向に配置された半導体素子構造を持つものを言う。
【0005】
例えば、特許文献1には、導電性のn−AlGaN単結晶基板の上に、半導体層としてのn−GaNバッファ層、n−AlGaNクラッド層、n−GaNガイド層、InGaN多重量子井戸構造活性層、p−GaN光ガイド層、p−AlGaNクラッド層、p−GaNキャップ層が順に積層、接合され、p−GaNキャップ層の上にはp側オーミック電極が形成され、n−AlGaN単結晶基板の底面にはn側オーミック電極が形成された縦型窒化物半導体素子が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、導電性基板に形成されているパターン面と、パターン面上に形成されている多層金属層と、多層金属層上に形成されている多層半導体層と、を含み、多層金属層及び多層半導体層の主面は、パターン面よりも面積が小さい窒化物系半導体発光素子が記載されている。この窒化物系半導体発光素子は、溝を付けた導電性基板上に、面積の小さい基板側多層金属層を設けたものと、下地基板上に、多層半導体層および半導体側多層金属層を設けたものと、を貼り合わせ、その後、下地基板を分離し、半導体側多層金属層と基板側多層金属層とが貼り付けられていない領域(未貼付領域)で分離を行い、チップ状に分割することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された縦型窒化物半導体素子では、導電性基板全面と半導体層全面が接合しているため、実装して使用する際に、パッケージ側となる導電性基板の底面の面積と半導体層の接合面積が同一となる。その結果、半導体層で発生する熱を、導電性基板の底面から十分に放熱することができず、高効率高出力を達成できないという問題がある。
また、特許文献2に記載された窒化物系半導体発光素子は、半導体側多層金属層と基板側多層金属層との未貼付領域にて分離を行うため、多層金属層及び多層半導体層の主面は、パターン面よりも面積が小さくなっており、発光面積が小さいという問題がある。また、この窒化物系半導体発光素子は製造方法も複雑であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、導電性基板からの放熱が十分で、パッケージとの密着性を向上し、高効率高出力が達成できる縦型窒化物半導体素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る縦型窒化物半導体素子は、導電性基板と、前記導電性基板の一方の表面側に、第2の電極を介して接合された、窒化物からなる半導体層と、前記導電性基板の他方の表面に形成された金属層と、前記半導体層の接合表面と対向する表面に形成された第1の電極と、前記導電性基板と前記第2の電極との間に形成された電極材料または導電性材料からなる接合層と、を備える縦型窒化物半導体素子であって、前記導電性基板は、他方の表面側に前記導電性基板の側面の一部から延出するフランジ部を有し、前記半導体層の前記接合表面と、前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と、前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積であ
り、前記フランジ部の延出長さが、前記半導体層の長さに対して0.1〜0.5倍である。また、前記接合層は、前記第2の電極の表面に形成された第1の接合層、および、前記導電性基板の表面に形成された第2の接合層の少なくとも一層を有することが好ましい。
【0011】
前記構成によれば、導電性基板の他方の表面の面積を半導体層の接合表面の面積よりも大きくするように、導電性基板の他方の表面側に、導電性基板の側面から延出するフランジ部を有し、そのフランジ部が、導電性基板と半導体層とを接合した後、半導体層の側面と導電性基板の側面が露出するように、半導体層から導電性基板の厚さ方向の一部までを切削して形成される導電性基板の残部を分割することによって形成される。そのため、導電性基板の他方の表面(底面)の面積が半導体層の接合表面の面積よりも大きくなり、実装して使用された際に、パッケージ側となる導電性基板の底面での放熱性が向上し、半導体層での温度上昇が抑制される。また、パッケージと導電性基板との密着性が向上する。
【0012】
本発明に係る縦型窒化物半導体素子の製造方法は、導電性基板と、絶縁性基板の表面に形成され、第2の電極が接合された窒化物からなる半導体層とを準備し、前記導電性基板および前記第2の電極の少なくとも一方に接合層を形成する準備工程と、前記導電性基板の一方の表面に前記接合層を介して前記準備工程で準備した前記半導体層を接合する接合工程と、前記半導体層から前記絶縁性基板を除去する基板除去工程と、前記半導体層に第1の電極を形成すると共に、前記導電性基板に金属層を形成する電極・金属層形成工程と、前記半導体層の側面と前記導電性基板の側面が露出
して、前記半導体層の前記接合表面と、前記接合表面と対向する前記半導体層の前記表面と、前記導電性基板の一方の前記表面とが同一面積となるように
、前記半導体層から前記導電性基板の厚さ方向の一部までを切削することによって当該導電性基板の残部を複数形成して、前記導電性基板の残部で互いが連結された複数の積層素子を作製する切削工程と、前記導電性基板の残部を分割し、前記フランジ部を有する複数の縦型窒化物半導体素子を作製する分割工程と、を含む。
【0013】
前記手順によれば、切削工程と分割工程とを含むことによって、導電性基板の他方の表面側に側面から延出するフランジ部が形成されるため、導電性基板の他方の表面(底面)の面積が半導体層の接合表面の面積よりも大きくなる。その結果、実装して使用された際に、パッケージ側となる導電性基板の底面での放熱性が向上し、半導体層での温度上昇が抑制される。また、パッケージと導電性基板との密着性が向上する。
【0014】
前記分割工程は、前記導電性基板の他方の表面側から、前記導電性基板の残部に分割線を形成することによって前記積層素子を分割することが好ましい。これにより、実装側の電極を必要以上出っ張らなくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る縦型窒化物半導体素子によれば、導電性基板からの放熱が十分で、パッケージと導電性基板との密着性にも優れるため、高効率高出力が達成できる。また、本発明に係る縦型窒化物半導体素子の製造方法によれば、導電性基板からの放熱が十分で、パッケージと導電性基板との密着性にも優れることによって高効率高出力を達成した縦型窒化物半導体素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<縦型窒化物半導体素子>
本発明に係る縦型窒化物半導体素子の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、縦型窒化物半導体素子100は、導電性基板20と、半導体層30と、金属層70と、第1の電極50と、第2の電極60と、接合層40とを備える。そして、導電性基板20は、フランジ部21を有する。
なお、本発明において、縦型窒化物半導体素子100とは、導電性基板20および半導体層30を挟んで第1の電極50、第2の電極60および金属層70とが対向するように上下方向(積層方向)に配置された半導体素子構造を持つものを言う。
以下、縦型窒化物半導体素子(以下、半導体素子と称する)100の各構成について説明する。
【0018】
(導電性基板)
導電性基板20は、導電性材料からなるウェハ状の基板であって、導電性材料としては、例えば、Si、SiC、GaAs、GaP、InP、ZnSe、ZnS、ZnO、CuW等が用いられる。このうち、放熱性に優れているCuWなどの材料が好ましい。
【0019】
導電性基板20は、その底面20a側に導電性基板20の側面20bから外側に延出するフランジ部21を有し、底面20aの面積M2が半導体層30の接合表面30aの面積M1よりも大きくなる。そして、フランジ部21を有し、底面20aの面積M2が大きくなることによって、実装して使用された際に、パッケージ(図示せず)側となる導電性基板20の底面20aでの放熱性が向上し、半導体層30での温度上昇が抑制される。また、パッケージと導電性基板20との密着性が向上する。
【0020】
導電性基板20の厚さT1は、特に限定されないが、100μm〜500μmであることが好ましい。また、フランジ部21の厚さT2は、導電性基板20にCuWを用いる場合、10μm〜100μmであることが好ましい。
【0021】
図2(a)に示すように、フランジ部21の延出長さD1は、半導体層30の一辺の長さD3に対して0.1〜0.5倍であることが好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。これにより半導体層30からの熱を実装基板側に効率よく伝達することができ、放熱性を高めることができる。
【0022】
図2(b)に示すように、フランジ部21は、その一部に欠損部21aを有してもよい。欠損部21aの形成位置、その形状は、特に限定されるものではないが、フランジ部21の外周四隅を除く、外周の略中央部に、半円状または矩形状の欠損部21aを少なくとも1個形成していてもよい。
【0023】
そして、フランジ部21の形成方法の詳細は、後記する半導体素子100の製造方法の欄で説明するが、
図4、
図5に示すように、導電性基板20と半導体層30とを接合した後、半導体層30の側面30bと導電性基板20の側面20bが露出するように、半導体層30をエッチングし、エッチング後、導電性基板20の厚さ方向の一部までを切削して形成される導電性基板20の残部22を分割することによってフランジ部21が形成される。
【0024】
導電性基板20にフランジ部21を形成せず、導電性基板20をダイサーのみで完全に切削した場合、導電性基板20の端面にバリが発生する。それに対し、導電性基板20の一部をダイサーで切削して残部22を形成すると共に、その切削されたラインに沿って残部22をブレイク等で分割することで、フランジ部21を形成した場合(
図5(b)参照)では、導電性基板20の端面にバリが発生するのを防止することができる。
【0025】
(半導体層)
半導体層30は、導電性基板20の一方の表面20cに、後記する第2の電極60および接合層40を介して接合された、窒化物からなる半導体として機能する層である。そして、半導体層30は、ドナー不純物がドープされたn型半導体層31、発光作用を有する活性層32およびアセプター不純物がドープされたp型半導体層33の三層がこの順で積層したダブルヘテロ構造をなすものが好ましい。なお、n型半導体層31、活性層32およびp型半導体層33の各層は、一層に限らず、二層以上で構成してもよい。
【0026】
半導体層30は、後記するように、絶縁性基板10の表面に形成されたもので、導電性基板20と半導体層30が接合された後、絶縁性基板10は半導体層30から除去される。
【0027】
(絶縁性基板)
絶縁性基板10は、ウェハ状の基板であって、導電性基板20とほぼ同じ大きさの基板が用いられる。絶縁性基板10の基板材料には、サファイア、スピネル、ニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等が用いられ、表面に形成される半導体層30の結晶性を向上させるためにサファイア、スピネルが好ましい。
【0028】
(金属層)
金属層70は、導電性基板20の他方の表面20aに形成され、外部電源とワイヤ等で電気的に接続されることによって、導電性基板20に電流を流すためのものである。また、金属層70は、Au−Sn等の金属材料からなる。
【0029】
(電極)
半導体素子100においては、半導体層30の接合表面30aに形成された第2の電極60と、接合表面30aと対向する表面30cに形成された第1の電極50とを備える。第1の電極50は、半導体層30のn型半導体層31に電気的に接続するn側電極である。また、第2の電極60は、半導体層30のp型半導体層33に電気的に接続するp側電極である。さらに、第2の電極(p側電極)60の両側面は、SiO
2等からなる絶縁膜80で覆われていることが好ましい。このように、半導体素子100の上下方向(積層方向)に第1の電極(n側電極)50、第2の電極(p側電極)60、および、後記する金属層70を備え、図示しない外部電源とワイヤ等で接続されることによって、半導体素子100の上下方向に電流が流れることとなり、半導体素子100は、横型半導体素子に比べて素子の発熱量が少ない縦型半導体素子となる。
【0030】
第1の電極(n側電極)50には、Ti−Al−Ni−AuまたはW−Al−W−Pt−Auの多層電極を用いることが好ましく、その厚さは0.1〜3.0μmが好ましい。第2の電極(p側電極)60には、Ag、Rh、Ni、Au、Pd、Ir、Ti、Pt、W、Alからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属材料、例えば反射率の高いAgを用いることが好ましく、その厚さは0.05〜1.0μmが好ましい。
【0031】
(接合層)
接合層40は、導電性基板20と半導体層30(第2の電極60)との間に形成される層で、電極材料または導電性材料からなる。また、接合層40は、半導体層30に設けられた第2の電極60及び絶縁膜80の表面に形成された第1の接合層41と、導電性基板20の一方の表面20c、すなわち、半導体層30と接合する側の表面に形成された第2の接合層42と、の少なくとも一層からなることが好ましい。なお、
図1では両層を形成した場合を記載した。また、第1の接合層41、第2の接合層42、接合層40の厚さは、特に限定されないが、第1の接合層41と第2の接合層42の合計厚さで10〜30μmであることが好ましい。接合層40を構成する導電性材料としては、Au−Sn、Au、Pt、Ti等の材料が用いられる。
【0032】
接合層40は、接合層40を介して導電性基板20と半導体層30とを接合した後、導電性基板20にフランジ部21を形成する際に、接合層40の側面41b、42bが露出するように、半導体層30をエッチング後、絶縁膜80と導電性基板20の一部と共に、接合層40が厚さ方向に切削される(
図5(b)参照)。
【0033】
<縦型窒化物半導体素子の製造方法>
次に、本発明に係る縦型窒化物半導体素子の製造方法について、図面を参照して説明する。
図3に示すように、縦型窒化物半導体素子の製造方法は、準備工程S1と、接合工程S2と、基板除去工程S3と、電極・金属層形成工程S4と、切削工程S5と、分割工程S6とを含む。以下、各工程を説明する。
【0034】
(準備工程)
準備工程S1では、
図4(a)、(b)に示すように、サファイア等の絶縁性基板10に形成された窒化物からなる半導体層30と、導電性基板20と、が準備されると共に、半導体層30(第2の電極60)および導電性基板20の少なくとも一方に接合層40を形成する。なお、半導体層30上には第2の電極60と絶縁膜80とが形成され、その第2の電極60および絶縁膜80上に第1の接合層41が形成されると共に、導電性基板20の上に第2の接合層42が形成されることが好ましい。
【0035】
ただし、この第1の接合層41及び第2の接合層42はいずれか一方のみでもよいが、ここでは両方を用いたもので説明する。
第1の接合層41、第2の接合層42とも、スパッタ法、真空蒸着法、化学気相成長法等で形成することができる。
【0036】
半導体層30の形成方法としては、絶縁性基板10の表面に半導体層30が形成できれば特に限定されないが、結晶性に優れた半導体層30が形成される点で、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシー)、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相エピタキシー)等の気相成長法を用いることが好ましい。半導体層30は、サファイア等の絶縁性基板10上にn型半導体層31、活性層32、p型半導体層33の順に積層する。その後、p型半導体層33上に第2の電極60を形成し、さらに所定の位置にSiO
2等の絶縁膜80を形成する。
【0037】
また、導電性基板20に第2の接合層42が形成される前若しくは後に、後述する金属層70を導電性基板20に形成してもよい。この場合、導電性基板20の一方の表面20cに第2の接合層42が形成され、他方の表面20aに金属層70が形成される。
【0038】
(接合工程)
接合工程S2では、
図4(b)に示すように、導電性基板20の一方の表面20c側に、前記工程で準備した半導体層30を接合する。詳しくは、半導体層30に設けられた第1の接合層41と、導電性基板20に設けられた第2の接合層42と、とを接合し、接合層40を形成する。導電性基板20と半導体層30とが接合できれば特に限定されないが、接合性に優れている点でウェハ接合法が好ましい。ウェハ接合法は、第1の接合層41の表面と、第2の接合層42の表面とを鏡面として、それら鏡面同士を貼り合わせた後、加熱圧着する方法をいう。ウェハ接合に代えて、加熱圧着とすることもできる。
【0039】
(基板除去工程)
基板除去工程S3では、
図4(c)に示すように、前記工程の半導体層30から絶縁性基板10が除去される。
絶縁性基板10の除去方法としては、絶縁性基板10が除去できれば特に限定されず、研磨、エッチング、電磁波照射、または、これらの方法を組み合わせた方法を用いることができ、作業性に優れる点で、レーザを用いた電磁波照射が好ましい。レーザ照射では、半導体層30が形成されていない絶縁性基板10の表面にレーザを全面照射して、絶縁性基板10と半導体層30の界面を分解することによって、半導体層30から絶縁性基板10を除去できる。また、レーザ照射によって絶縁性基板10が除去された半導体層30の表面を、半導体層30の厚さ調整、または、後記する第1の電極50の形成をし易くするために、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)処理してもよい。
【0040】
(電極・金属層形成工程)
電極・金属層形成工程S4では、
図5(a)に示すように、半導体層30の接合表面と対向する表面30cに、第1の電極50を形成すると共に、導電性基板20の他方の表面(底面)20aに、金属層70を形成する。この第1の電極50の形成と、金属層70の形成とは、別々に行われるが、同時に行ってもよい。
【0041】
第1の電極50の形成方法としては、電極が形成できれば特に限定されないが、スパッタ法、真空蒸着法、化学気相成長法を用いることができ、作業性に優れている点でスパッタ法が好ましい。
【0042】
金属層70の形成方法としては、特に限定されず、スパッタ法、真空蒸着法、化学気相成長法を用いることができ、作業性に優れている点でスパッタ法が好ましい。導電性基板20の表面20a全面に金属層70を形成する。
【0043】
(切削工程)
切削工程S5では、
図5(b)に示すように、半導体層30の側面30bと導電性基板20の側面20bが露出するように、絶縁性基板10が除去された半導体層30側から導電性基板20の厚さ方向の一部までを切削することによって導電性基板20の残部22を複数形成して、導電性基板20の残部22で互いが連結された複数の積層素子110を作製する。
【0044】
詳細には、絶縁性基板10が除去された半導体層30の表面側から、SiO2等の絶縁膜80までRIE(Reactive Ion Etching)を行い、その後、絶縁膜80、接合層40および導電性基板20をダイサー等により切削する。例えばダイサー等により切込みを入れて厚さ方向に切溝を形成すると共に、導電性基板20の一部を残すように導電性基板20の厚さ方向の一部を切削する。このように切溝を厚さ方向の一部まで形成することによって、半導体層30の側面30b、接合層40の側面41b、42bおよび導電性基板20の側面20bを露出させる溝部23と溝部23に対向する導電性基板20の残部22とを複数形成して、導電性基板20の残部22で互いが連結された複数の積層素子110を作製する。
【0045】
溝部23の間隔Lは、作製する複数の積層素子110(半導体素子)の大きさに相当する。そして、積層素子110(半導体素子)の大きさによって適宜設定するが、例えば、間隔Lは、ダイサーの刃の厚みにもよるが0.5mm〜3.0mmである。また、溝部23の深さT3は、導電性基板20の残部22の厚さが、前記したフランジ部21の厚さT2となるように、適宜設定する。ここで、フランジ部21の厚さT2は、導電性基板20にCuWを用いる場合、10μm〜100μmであることが好ましい。
【0046】
溝部23の形成方法としては、溝部23が形成できれば特に限定されないが、電子線照射、ダイサー等を用いることができ、作業性に優れる点でダイサーを用いることが好ましい。その場合、ダイサーの幅が、溝部23の幅D2に相当することとなる。なお、ダイシングにおいて、溝部23の幅D2は、導電性基板20の残部22を分割して形成されるフランジ部21の延出長さD1(
図1参照)の略2倍となる。前記したように、フランジ部21の延出長さD1は10μm〜100μmが好ましいため、溝部23の幅D2は、20μm〜200μmが好ましい。
【0047】
(分割工程)
分割工程S6では、
図5(c)に示すように、導電性基板20の他方の表面(底面)20a側から、導電性基板20の残部22の略中央部に分割線24を形成することによって積層素子110(導電性基板20の残部22)を分割して、フランジ部21を有する複数の半導体素子100を作製する。
【0048】
分割線24の形成方法(分割方法)としては、分割線24が形成できれば特に限定されないが、導電性基板20(導電性基板20の残部22)の底面20aを治具等で叩く方法を用いることができる。このような分割線24で積層素子110(導電性基板20の残部22)を分割してフランジ部21を形成することによって、導電性基板20をダイサー等で完全に切削してフランジ部21を形成しない方法に比べて、導電性基板20の端面でのバリの発生を少なくすることができる。
【0049】
本工程では、導電性基板20の残部22が分割線24によって分割されるため、作製される半導体素子100のフランジ部21の延出長さD1(
図1参照)は、溝部23の幅D2(
図5(b)参照)の略半分となる。分割線24の形成の有無は、センサ等で検出することが好ましい。
【0050】
半導体素子100の製造方法は、以上説明したとおりであるが、半導体素子100の製造を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間または前後に、他の工程を含めてもよい。
例えば、第1の電極50を除くn型半導体層31上に保護膜を形成してもよい。またn型半導体層31上だけでなく、半導体層30の側面にも保護膜を形成してもよい。この保護膜形成工程は、電極・金属層形成工程の際、若しくは、分割工程の前若しくは後に行ってもよい。