【実施例】
【0032】
<実施例1>
ポテトチップスの適性に優れたジャガイモ(品種名:トヨシロ)を洗浄し、ピーラーで皮むきした後、スライサーで1.0mm〜1.1mmの厚さにスライスした。このスライス片を広げて、スライスしたジャガイモの重量に対して2%の重量のパームオレイン油を噴霧し、付着させた。
このスライスしたジャガイモを、第一加熱工程として、水分を付与しながら高温高速の気流を吹き付ける加熱処理を30秒ずつ2回行なった。
【0033】
すなわち、コンベアの上方に多数の細筒状の噴射ノズルを有する高温高速気流熱処理装置(荒川製作所製THERMOZONE(登録商標)、流動層(エアーベッド)式熱処理装置)を用いて、装置の加熱庫内に蒸気流量180kg/hで飽和蒸気を吹き込んで水分を付与しながら、ジャガイモ表面に当たる温度が150℃、風速が65m/sの高温高速の気流をコンベア上のスライスしたジャガイモに30秒間吹き付けることにより加熱処理し、庫外に出して再び10秒後に同様に加熱処理した。
【0034】
水分を付与しながらの第一加熱工程の後、庫外に出して、10秒後に第二乾燥工程として、再び上記の高温高速気流装置を用い、今度は飽和蒸気を吹き込まずに、温度200℃、風速60m/sの高温高速の気流を3分間吹き付けて加熱処理した。
最後に、温度85℃、風速4m/sの熱風乾燥機内で水分含量が2%になるまで60分間仕上げ乾燥を行い、ノンフライポテトチップスを製造した。
【0035】
実施例1のノンフライポテトチップスの油脂含量を測定した所8%であり、カロリーは約410kcal/100gであった。すなわち、実施例1のノンフライポテトチップスは、油で揚げた市販品の一般的な商品(油脂含量40%前後、カロリー570kcal/100g)と対比して、油脂含量およびカロリーが格段に低減されており、またアクリルアミドノ含有量も100ppb以下であった。
【0036】
<比較例1>
市販のノンフライポテトチップス(商品名「ポテかるっ」、サッポロファインフーズ株式会社製)を購入してきて、比較例1とした。
【0037】
<比較例2>
比較例2として、先行技術文献中特許文献6の特開2005−245389号公報を参考にし、マイクロウェーブで加熱した後、そのまま高温高速の気流で加熱して膨化させ、続いて通常の熱風乾燥で乾燥させる方法で比較例2のノンフライポテトチップスを作成した。
【0038】
具体的には、実施例1と同様に、ポテトチップスの適性に優れたジャガイモ(品種名:トヨシロ)を洗浄し、ピーラーで皮むきした後、スライサーで1.0mm〜1.1mmの厚さにスライスした。このスライスしたジャガイモ20gを、出力500Wの電子レンジを用いて、マイクロ波により150秒間加熱し、水分含量を20%までにした。
【0039】
マイクロ波による加熱後、本願実施例1と同じ高温高速気流熱処理装置を用いて、風速60m/s、温度200℃の高温高速の気流を、スライスしたジャガイモに1分間吹き付けることにより、焦げない程度に加熱処理した。
続いて、油脂含量が8%となるようにパームオレイン油をスライスしたジャガイモに噴霧し、付着させた。最後に、温度85℃、風速4m/sの熱風乾燥機内で1時間、水分含量が約2%になるまで仕上げ乾燥を行い、ノンフライポテトチップスを製造した。
【0040】
<比較例3>
前述の実施例1において、第一加熱工程において水分を付与せずに加熱、すなわち、蒸気を吹き込まずに高温高速の気流だけで、加熱工程(第一、第二加熱工程)を行い、第一加熱工程における水分付与の効果を比較した。
【0041】
具体的には、実施例1と同様に、スライスしたジャガイモの重量に対して2%の重量のパームオレイン油を噴霧して付着させ、このスライスしたジャガイモ100gを、実施例1と同じ高温高速気流熱処理装置を用いて、該庫内に蒸気を吹き込まずに、スライスしたジャガイモ表面に当たる温度が150℃、風速が65m/sとなるよう、高温高速の気流を30秒間吹き付けて2回加熱した。
【0042】
前記の蒸気吹き込みなしの高温高速での加熱処理後、一旦庫外に出し、20秒後再び蒸気を吹き込まずに、実施例1の第二乾燥工程と同様に、再び上記の高温高速気流熱処理装置を用い、飽和蒸気を吹き込まずに、温度200℃、風速60m/sの高温高速の気流で3分間吹き付けて加熱処理し、最後に、温度85℃、風速4m/sの熱風乾燥機内で水分含量が2%になるまで60分間仕上げ乾燥を行い、比較例3のノンフライポテトチップスを製造した。
【0043】
以上のように製造した実施例1と比較例2,3、および比較例1の市販されているノンフライポテトチップスを、5人のパネラーで官能評価した。官能評価基準は、次の通りである。なお、評価結果は、全てのパネラーがいずれも同じ答えであった。
結果は表1に示す。
A:サクサクとして口溶けが良く、油で揚げたポテトチップスに匹敵する食感である。
B:油で揚げたポテトチップスには少し劣るが、充分にサクサクした食感であり、ノンフライであることを指摘されないと気付かない。
C:ガリガリ又はパリパリとした食感で、油で揚げたポテトチップスとは異なる食感である。
本発明は上記の内、A又はB、究極的にはAに該当する食感を目指すものであり、A又はBに該当するものが、本発明の効果を有するものである。
【0044】
【表1】
【0045】
<比較試験1>第一加熱工程の検討
上記実施例1の製造方法において、水分を付与する第一加熱工程を1回としてその時間を振って、第一加熱工程の好ましい加熱時間について検討した。
具体的には、実施例1と同じ高温高速気流熱処理装置を用いて、装置の加熱庫内に蒸気流量180kg/hの飽和蒸気を、15秒(実施例2)、30秒(実施例3)、60秒(実施例4)、120秒(実施例5)それぞれ吹き込んで水分を付与しながら、上記流量スライスしたジャガイモ表面に当たる温度が150℃、風速が65m/sとなるように、それぞれ連続で(1回)加熱し、第一加熱工程とした。
【0046】
上記、処理時間を振った第一加熱工程の後、庫外に出して、10秒後に第二乾燥工程として、再び実施例1同様に、上記の高温高速気流装置を用い、今度は飽和蒸気を吹き込まずに、温度200℃、風速60m/sの高温高速の気流で3分間吹き付けて加熱処理した。
最後に、温度85℃、風速4m/sの熱風乾燥機内で水分含量が2%になるまで60分間仕上げ乾燥を行い、ノンフライポテトチップスを製造した。なお、比較するために、水分を付与する第一加熱工程を行わずに第二加熱工程のみとしたものを比較例4として比較した。結果を表2に示す。なお官能評価は前記と同じ。
【0047】
【表2】
【0048】
<参考試験>
本発明は水分を付与しつつ高温高速の気流で加熱する第一加熱工程と、その後に水分の付与を減らして、好ましくは水分を供給せずに高温高速の気流で加熱する第二加熱工程を有することで、サクサクとしたノンフライポテトチップスが製造できるものであるが、本発明者らの研究の結果、第一加熱工程を過熱蒸気による加熱工程又は、マイクロ波と過熱蒸気の組み合わせによる加熱工程に置き換えることができることが判っている。
【0049】
当該マイクロ波加熱+過熱蒸気による加熱(本発明の第一加熱工程に相当)を行った後、高温高速の気流による加熱(第二加熱工程)を行なった実験系において、噴霧による油脂の付着を第一加熱工程の前に行ったもの、第一加熱工程の後に行ったもの、及び、第二加熱工程の高温高速の気流の温度を変更した参考試験を行なっている。以下にそのデータを示すことで、油脂の付着が第一加熱工程の前でも後でもよいこと、及び第二加熱工程の好ましい加熱条件を明らかにする。
【0050】
<参考例1>
本発明の上記実施例1同様にジャガイモをスライスし、スライスしたジャガイモの重量に対して2%の重量のパームオレイン油を噴霧し、付着させた。このスライスしたジャガイモ20gを重なりが2枚以下になるようにして、出力500Wの電子レンジを用いて、マイクロ波により20秒間加熱した。マイクロ波による加熱後、蒸気流量180kg/hの過熱蒸気庫内で、スライスしたジャガイモ表面に当たる温度が190℃となるよう過熱蒸気により30秒間加熱した(第一加熱工程に相当)。
【0051】
続いて、本発明実施例1と同じコンベアの上方に多数の細筒状の噴射ノズルを有する高温高速気流熱処理装置を用いて、最大風速60m/s、温度200℃の高温高速の気流をスライスしたジャガイモに3分間吹き付けることにより加熱処理した。
最後に、温度85℃、風速4m/sの熱風乾燥機内で水分含量が2%になるまで60分間仕上げ乾燥を行い、ノンフライポテトチップスを製造した。
【0052】
参考例1のノンフライポテトチップスの油脂含量を測定した所8%であり、カロリーは414kcal/100gであった。すなわち、実施例1のノンフライポテトチップスは、油で揚げた市販品の一般的な商品(油脂含量40%前後、カロリー570kcal/100g)と対比して、油脂含量およびカロリーが格段に低減されていた。
【0053】
<参考例2>油脂の付着工程の検討
参考例1の製造方法において、スライスしたジャガイモの重量に対して2%の重量のパームオレイン油を噴霧する工程を、過熱蒸気による加熱の後、高温高速の気流による加熱の前に行ったこと以外は、参考例1と同様にノンフライポテトチップスを製造した。
【0054】
<参考例3〜5>第二加熱工程の条件検討
上記参考例1の製造方法において高温高速の気流による加熱処理(本発明の第二加熱工程に相当)200℃3分間に換えて、300℃1分30秒(参考例3)、250℃2分(参考例4)、180℃4分30秒(参考例5)とし、他の条件は参考例1と同様にノンフライポテトチップスを製造した。
【0055】
製造したポテトチップスはアクリルアミドの含有量を測定した。アクリルアミドの測定方法は、(財)食品総合研究所の方法(Food Additives and Contaminants, 2003,20,215-220)に基づきGC/MSで測定した。なお、農林水産省のHP(食品中のアクリルアミドに関する情報詳細編)によると、市販のフライドポテトチップスの場合で、アクリルアミドの含量は117ppb〜3770ppbである。結果を表3に示す。官能評価は前記と同じ。
【0056】
【表3】