【実施例】
【0075】
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例1では、以下のようにポリエン系偏光フィルム及び積層偏光フィルムを作製した。
【0076】
(第1のステップ)
まず、溶媒である水にポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(VAN & POVAL)社製 JC−25)を投入した。ついで、水及びポリビニルアルコールの混合液を撹拌しながら加熱することで、ポリビニルアルコールを水に十分溶解させた。次いで、ポリビニルアルコール水溶液に、パラトルエンスルホン酸及びレベリング剤(DIC株式会社のメガファック(MEGAFACE))を投入し、攪拌することで、コーティング液を作製した。ここで、コーティング液中の水、ポリビニルアルコール、及びパラトルエンスルホン酸の含浸比(質量比)は89.5質量%:10質量%:0.5質量%であった。また、レベリング剤の質量比は外数であり、具体的には、水、ポリビニルアルコール、及びパラトルエンスルホン酸の総質量に対して0.002質量%であった。
【0077】
ついで、イソフタル酸(isophthalic acid)共重合ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成される無延伸フィルムを基板として用意し、コーティング液を基板上にコーティングした。次いで、コーティング液を乾燥することで、ポリビニルアルコールフィルムを作製した。ポリビニルアルコールフィルムの膜厚は12μmであった。
【0078】
(第2のステップ)
ポリビニルアルコールフィルムを110℃に予熱したオーブンに投入し、ポリビニルアルコールフィルム及び基板をまとめて所定方向に4.2倍ドライ延伸した。これにより、ドライ延伸フィルムを作製した。ついで、ドライ延伸フィルムを110〜130℃で120秒加熱することで、ドライ延伸フィルム中のポリビニルアルコールに脱水反応を行わせた。すなわち、ドライ延伸フィルムにポリエン(炭素二重結合)を形成した。これにより、脱水処理されたドライ延伸フィルム(脱水フィルム)を作製した。
【0079】
(第3のステップ)
ついで、85℃に調整した7.0質量%ホウ酸水溶液(ホウ酸水溶液総質量に対して7.0質量%のホウ酸を含むホウ酸水溶液、pH=3.9)を水和用水溶液として用意し、この水和用水溶液にドライ延伸フィルムを投入した。ついで、ドライ延伸フィルムを水和用水溶液浴に60min浸漬した。ここで、ドライ延伸フィルムの浸漬は、ドライ延伸フィルムが縮まない程度の力をドライ延伸フィルムに掛けながら行われた。これにより、ドライ延伸フィルムを水和した。すなわち、水和フィルムを作製した。
【0080】
(第4のステップ)
ついで、65℃に調整した7.0質量%ホウ酸水溶液浴中に水和フィルムを投入し、水和フィルムをホウ酸水溶液浴中でドライ延伸と同じ方向に1.25倍ウエット延伸した。これにより、ポリビニルアルコールフィルムを合計5.25倍延伸した。これにより、ウエット延伸フィルムを作製した。
【0081】
(第5のステップ)
85℃に調整した7.0質量%ホウ酸水溶液(ホウ酸水溶液総質量に対して7.0質量%のホウ酸を含むホウ酸水溶液、pH=3.9)を第4のステップのホウ酸水溶液とは別に用意した。ついで、このホウ酸水溶液にpHメータの値を見ながら水酸化ナトリウムの顆粒粉末を添加することで、pH=6.2の中和用水溶液を作製した。次いで、この中和用水溶液浴にウエット延伸フィルムを投入した。ついで、ウエット延伸フィルムを中和用水溶液浴に2min浸漬した。ここで、ウエット延伸フィルムの浸漬は、ウエット延伸フィルムが縮まない程度の力をウエット延伸フィルムに掛けながら行われた。これにより、ウエット延伸フィルムを中和した。すなわち、中和フィルムを作製した。
【0082】
次いで、中和フィルムを100℃に予熱したオーブンに投入し、100℃で2分間乾燥した。これにより、実施例1に係るポリエン系偏光フィルムを作製した。ポリエン系偏光フィルムの膜厚は5μmであった。
【0083】
(積層処理)
ついで、下記配合のUV接着剤を作製した。
【0084】
(a)90質量%(b)10質量%(c)1質量%(d)2質量%をスターラーを用いて混合した。なお、(c)、(d)の含有比は(a)+(b)の質量に対する外数である。
(a)4HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート)
(b)セロキサイド2021P(CEL2021P)(3,4―エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(3,4−epoxycyclohexylmethyl−3,4−epoxycyclohexane carblxylate))(株式会社ダイセル製)
(c)TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル‐ジフェニル‐フォスフィンオキサイド(trimethylbenzoyl−diphenyl−phosphine oxide))(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)社製)
(d)CPI−110P(p−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム(phenylthiophenyldiphenylsulfonium)PF
6塩)(サンアプロ(SAN−APRO)社製)
【0085】
ついで、ポリエン系偏光フィルムの表面(ポリエン系偏光フィルム及び基板からなる積層膜の表裏面のうち、ポリエン系偏光フィルムが露出する面)にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、UV接着剤を勘合するようにして膜厚50μmの保護フィルム(紫外線吸収剤含有トリアセチルセルロース系フィルム:富士フィルム社製「フジタック(FUJITAC)」)をポリエン系偏光フィルムの表面にラミネート(laminate)した。これにより、ポリエン系偏光フィルム及び基板からなる積層膜を保護フィルムに貼りつけた。次いで、1000mJのUV光を積層膜に照射することで、UV接着剤を硬化させた。ついで、ポリエン系偏光フィルムから基板を剥離した。
【0086】
ついで、ポリエン系偏光フィルムの裏面(上記剥離により露出した面)にUV接着剤を厚さ2μmで塗布した。ついで、ポリエン系偏光フィルムの裏面に膜厚50μmの位相差フィルム(1/4波長板、帝人化成社製「WRS」)をポリエン系偏光フィルムの光学吸収軸と1/4波長板の遅相軸とが45度となるように貼り付けた。ついで、上記と同様の処理によりUV接着剤を硬化させた。これにより、評価用の積層偏光フィルムを作製した。
【0087】
(実施例2)
実施例2では、変形例に対応する偏光フィルムを作製した。具体的には、以下の処理を行うことで、実施例2に係る積層偏光フィルムを作製した。すなわち、ポリビニルアルコールフィルム(膜厚60um,Kuraray社製)を0.05mol%塩酸水に1分含浸後、24℃で30分乾燥させた。これにより酸触媒含浸フィルムを作製した。
【0088】
ついで、酸触媒含浸フィルムを表面温度450℃のIRヒーターに投入し、この温度で18秒間加熱した。これにより、酸触媒含浸フィルムに脱水反応を行わせた。一方、酸触媒含浸フィルムに脱水反応を行わせると同時に、酸触媒含浸フィルムを3.3倍にドライ延伸した。これにより、脱水フィルムを作製した。
【0089】
ついで、脱水フィルムを温度65℃の7質量%ホウ酸浴中で1.79倍にウエット延伸した。これにより、ウエット延伸フィルムを作製した。ウエット延伸フィルムのTotal延伸倍率は5.9倍であった。その後は実施例1の第5のステップ以降の処理を行うことで、実施例2に係る積層偏光フィルムを作製した。すなわち、実施例2では、第5のステップ以外は従来と同様の処理により積層偏光フィルムを作製した。
【0090】
(実施例3)
中和用水溶液のpHを4.6とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0091】
(実施例4)
中和用水溶液のpHを5.2とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0092】
(実施例5)
中和用水溶液のpHを7.1とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0093】
(実施例6)
中和用水溶液のpHを8.0とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0094】
(比較例1)
単体透過率T=44.3(%)のヨウ素系偏光フィルム(CEHIL INDUSTRIES社製)を用意し、このヨウ素系偏光フィルムを用いて実施例1と同様に積層偏光フィルムを作製した。
(比較例2)
比較例2では、第5のステップを行わなかった他は実施例2と同様の処理を行うことで、比較例2に係る積層偏光フィルムを作製した。すなわち、比較例2に係るポリエン系偏光フィルムは、従来の製造方法により作製されたポリエン系偏光フィルムである。
【0095】
(比較例3)
ウエット延伸時のホウ酸水溶液のpHを6.2としたこと、及び第5のステップを行わないこととした他は、実施例1と同様の処理を行うことで、比較例3に係る積層偏光フィルムを作製した。すなわち、比較例3では、ウエット延伸と中和処理とを同時に行ったが基板が破断したため、積層偏光フィルムを作製できなかった。
【0096】
(比較例4)
中和用水溶液のpHを3.2とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、比較例4に係る積層偏光フィルムを作製した。
【0097】
(比較例5)
中和用水溶液のpHを3.9とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、比較例5に係る積層偏光フィルムを作製した。
【0098】
(比較例6)
中和用水溶液のpHを4.0とした他は実施例1と同様の処理を行うことで、比較例6に係る積層偏光フィルムを作製した。
【0099】
(比較例7)
中和用水溶液のpHを8.8とした他は実施例1と同様の処理を行ったが、中和処理中に基板が破断したため、積層偏光フィルムを作製できなかった。
【0100】
(光学特性の評価)
実施例1〜6及び比較例1〜6に係る積層偏光フィルムの偏光度及び透過率(単体透過率)を以下の処理により評価した。
測定装置:紫外可視分光光度計(島津製作所社製UV−2550)
測定方法:偏光素子の単体透過率T(%)、平行透過率Tp(%)、直交透過率Tc(%)を測定。これらは、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行ったY値である。偏光度Pを上記の透過率を用い、次式(1)により求めた。
偏光度P(%)= √{(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}×100・・・(1)
測定結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
この評価によれば、実施例1〜6に係る積層偏光フィルムは、実施例2を除き、高偏光度及び高透過率を両立させていることがわかる。具体的には、透過率が44.5%以上であり、かつ偏光度が98.0%以上となっている。
【0103】
さらに、実施例1、3〜6では、コーティング液に酸触媒である有機酸を混入しているので、高濃度の酸触媒がポリビニルアルコール内に均一に分散している。さらに、有機酸は低揮発性なので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。さらに、脱水処理とドライ延伸とを別工程で行なっている。さらに、水和処理を行なっている。したがって、実施例1、3〜6では、偏光度及び透過率がいずれも実施例2よりも高い。
【0104】
(信頼性の比較試験)
次に、実施例1〜6及び比較例1、2、4〜6に係る偏光フィルムの信頼性を比較する比較試験を行った。なお、比較例3、7は基板が破断したため、比較試験を行わなかった。
【0105】
具体的には、各偏光フィルムを高温高湿(60℃95RH%(相対湿度))の環境下に設置し、各フィルムの透過率及び偏光度の時間変化を測定した。なお、透過率及び偏光度の測定は上述した(評価)と同様に行った。測定結果を
図2及び
図3に示す。
【0106】
図2は、各フィルムの透過率の時間変化を示し、
図3は各フィルムの偏光度の時間変化を示す。横軸は試験開始時点からの時間、縦軸は各測定時点での測定値から試験開始時点での測定値(初期値)を減算した値を示す。なお、比較例2は比較例4とほぼ同様の挙動を示したので、図示を省略した。
図2及び
図3に示されるように、比較例1、2、4〜6の透過率は、試験開始直後から大きく増加し、偏光度は大きく低下しているのに対し、実施例1〜6の透過率及び偏光度は、試験開始後からほとんど変動していない。なお、偏光フィルムを有機発光表示装置に適用する場合、その偏光フィルムには、試験開始から500時間経過後の測定値と初期値との差分が±3以内であることが要求されることが多い。これに対し、実施例1〜6に係る偏光フィルムの測定値はこの要件を満たす。しかし、比較例1、2、4〜6の偏光フィルムは、特に偏光度においてこの要件を満たさない。したがって、本実施例1〜6に係るポリエン系偏光フィルムは、ヨウ素系偏光フィルムよりも信頼性(ここでは耐熱性)に優れ、かつ、有機発光表示装置にも好適となる。
【0107】
次に、上述した第1〜第4のステップの効果を確認するために、以下の実施例、比較例を行った。
(水和による効果の確認)
(実施例7)
実施例1の第1〜第4のステップを行うことで、ポリエン系偏光フィルムを作製し、このポリエン系偏光フィルムに実施例1の積層処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0108】
(実施例8)
ポリビニルアルコールフィルム(膜厚60um,Kuraray社製)を0.05mol%塩酸水に1分含浸後、24℃で30分乾燥させた。これにより作製された酸触媒含浸フィルムを表面温度450℃のIRヒーターに投入し、この温度で18秒間加熱した。これにより、酸触媒含浸フィルムに脱水反応を行わせた。一方、酸触媒含浸フィルムに脱水反応を行わせると同時に、酸触媒含浸フィルムを3.3倍にドライ延伸した。これにより、脱水フィルムを作製した。その後は、実施例7と同様の処理を行うことで、実施例8に係る積層偏光フィルムを作製した。
【0109】
(実施例9)
第3のステップ及び第4のステップの順序を逆にした(すなわち、第2のステップ後に第4のステップを行い、その後第3のステップを行った)こと以外は実施例7と同様の処理を行った。これにより、実施例9に係る積層偏光フィルムを作製した。
【0110】
(評価)
測定装置に紫外可視分光光度計(日本分光社製V7100)を使用した他は、実施例1と同様の測定方法により単体透過率T(%)、平行透過率Tp(%)、直交透過率Tc(%)を測定した。さらに、上述した式(1)により偏光度P(%)を求めた。測定結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
この評価によれば、実施例7〜9に係る積層偏光フィルムは、高偏光度及び高透過率を両立させていることがわかる。具体的には、特に実施例7〜9では、透過率が44.5%以上であり、かつ偏光度が98.0%以上となっている。その一方、比較例2に係る積層偏光フィルムは、透過率が44.5%未満となっている。
【0113】
さらに、実施例7、9では、コーティング液に酸触媒である有機酸を混入しているので、高濃度の酸触媒がポリビニルアルコール内に均一に分散している。さらに、有機酸は低揮発性なので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。さらに、脱水処理とドライ延伸とを別工程で行なっている。したがって、実施例7、9では、偏光度及び透過率がいずれも実施例8よりも高い。
【0114】
(水和用水溶液のpHの検討)
次に、第3のステップ(フィルムの水和処理)に使用される水和用水溶液に必要なpHを検討するために、以下の実施例10−1、10−2及び比較例8〜10を行った。
【0115】
(実施例10−1)
実施例7において、水和用水溶液のpHを3.0とした(ホウ酸の質量%を15.0質量%とした)こと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0116】
(実施例10−2)
実施例7において、水和用水溶液のpHを3.7とした(ホウ酸の質量%を10.0質量%とした)こと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0117】
(比較例8)
実施例7において、水和用水溶液のpHを5.4とした(ホウ酸の質量%を1.0質量%とした)こと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0118】
(比較例9)
実施例7において、水和用水溶液のpHを4.7とした(ホウ酸の質量%を3.0質量%とした)こと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0119】
(比較例10)
実施例7において、水和用水溶液のpHを4.2とした(ホウ酸の質量%を5.0質量%とした)こと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0120】
(評価)
実施例10−1、10−2及び比較例8〜10に係る積層偏光フィルムの偏光度及び透過率(単体透過率)を上述した(水和による効果の確認)と同様の方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
この評価によれば、実施例7、10−1、10−2では透過率が44.5%以上、偏光度が98.0%以上となるが、比較例8〜10では偏光度が98.0%未満となる。したがって、水和用水溶液のpHは3.0以上4.0以下であることを要することがわかる。
【0123】
(水和用水溶液の温度の検討)
次に、第3のステップ(フィルムの水和処理)に使用される水和用水溶液に必要な温度を検討するために、以下の実施例11、及び比較例11、12を行った。
【0124】
(実施例11)
実施例7において、水和用水溶液の温度を90℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0125】
(比較例11)
実施例7において、水和用水溶液の温度を65℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0126】
(比較例12)
実施例7において、水和用水溶液の温度を75℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0127】
(評価)
実施例11及び比較例11、12に係る積層偏光フィルムの偏光度及び透過率(単体透過率)を上述した(水和による効果の確認)と同様の方法により評価した。その結果を表4に示す。
【0128】
【表4】
【0129】
この評価によれば、実施例7、11では透過率が44.5%以上、偏光度が98.0%以上となるが、比較例11〜12では透過率が44.5%未満、偏光度が98.0%未満となる。したがって、水和用水溶液の温度は85℃以上100℃以下であることを要することがわかる。
【0130】
(水和時間)
次に、水和に要する時間を検討するために、以下の実施例12〜14及び比較例13〜15を行った。
【0131】
(実施例12)
実施例7において、水和時間(ウエット延伸フィルムを水和用水溶液に含浸させる時間)を0.5minとしたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0132】
(実施例13)
実施例7において、水和時間を1.0minとしたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0133】
(実施例14)
実施例7において、水和時間を50minとしたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0134】
(比較例13)
実施例7において、水和時間を0.1minとしたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0135】
(比較例14)
実施例7において、水和時間を65minとしたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0136】
(比較例15)
実施例7の第4のステップにおいて、ウエット延伸フィルムに水和用水溶液を含浸させる代わりにウエット延伸フィルムを60℃95RH%の環境下に15時間静置した。ここで、静置の際には、ウエット延伸フィルムにウエット延伸フィルムが縮まない程度の力(Tension)が掛けられた。この処理以外は実施例7と同様の処理を行った。これにより、積層偏光フィルムを作製した。
【0137】
(評価)
実施例12〜14及び比較例13〜15に係る積層偏光フィルムの偏光度及び透過率(単体透過率)を上述した(水和による効果の確認)と同様の方法により評価した。その結果を表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
この評価によれば、実施例7、12〜14では透過率が44.5%以上、偏光度が98.0%以上となるが、比較例13〜15では偏光度が98.0%未満となる。したがって、水和は酸性雰囲気で行われる必要が有ること、また、水和時間は0.5min〜60minであることを要することがわかる。
【0140】
(ウエット延伸時の温度)
次に、第3のステップ(ウエット延伸)に使用されるホウ酸水溶液に必要な温度を検討するために、以下の実施例15、及び比較例16、17を行った。
【0141】
(実施例15)
実施例7において、ウエット延伸時のホウ酸水溶液の温度を55℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0142】
(比較例16)
実施例7において、ウエット延伸時のホウ酸水溶液の温度を75℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0143】
(比較例17)
実施例7において、ウエット延伸時の水和用水溶液の温度を85℃としたこと以外は実施例7と同様の処理を行うことで、積層偏光フィルムを作製した。
【0144】
(評価)
実施例15及び比較例16、17に係る積層偏光フィルムの偏光度及び透過率(単体透過率)を上述した(水和による効果の確認)と同様の方法により評価した。その結果を表6に示す。
【0145】
【表6】
【0146】
この評価によれば、実施例7、15では透過率が44.5%以上、偏光度が98.0%以上となるが、比較例16〜17では偏光度が98.0%未満となる。したがって、ウエット延伸時のホウ酸水溶液の温度は65℃以下であることを要することがわかる。
【0147】
以上により、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの製造方法は、ウエット延伸後(または水和処理後)に中和処理を行うので、ポリエン系偏光フィルムの信頼性を向上させることができる。
【0148】
さらに、中和処理とウエット延伸処理とを別の浴で行うので、これらの処理を効率的に行うことができる。
【0149】
さらに、本実施形態では、ウエット延伸処理の前または後にフィルムの水和処理を行う。このため、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの製造方法は、透過率44.5%以上かつ偏光度98.0%以上という非常に高い透過率を実現しつつ、偏光度も高い値を実現できる。さらに、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムの製造方法は、偏光フィルムを薄膜化(具体的には、10μm以下の膜厚にする)ことができる。すなわち、本実施形態では、光学特性が良好な偏光フィルムを作製することができる。
【0150】
さらに、本実施形態では、酸触媒及びポリビニルアルコールを含むコーティング液を用いてポリビニルアルコールフィルムを作製するステップを含む。
【0151】
したがって、ポリビニルアルコールフィルム内に高濃度の酸触媒を均一に分散させることができるので、従来のように環境温度等を正確に制御しなくても、多数の炭素二重結合が均一に形成されたポリエン系偏光フィルムを作製することができる。したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、高偏光度及び高透過率を両立させたポリエン系偏光フィルム、すなわち光学特性が良好な偏光フィルムを安定して製造することが可能となる。さらに、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムは、信頼性(安定性)がヨウ素型偏光フィルムよりも優れている。
【0152】
さらに、本実施形態では、ポリビニルアルコールフィルムのドライ延伸と脱水処理とを別工程で行うステップを含むので、この点においても、高い透過率及び偏光度を有する偏光フィルムを作製することができる。
【0153】
したがって、このような高偏光度及び高透過率を有するポリエン系偏光フィルムは、今後の普及が予想される有機発光表示装置(有機発光ダイオードを使用した有機発光表示装置)の反射防止積層偏光フィルムに好適である。すなわち、偏光フィルムを有機発光表示装置に適用する場合、偏光フィルムには、高い透過率、及び偏光度の他、高い信頼性も要求される。これに対し、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムは、中和処理が施されているので、高温高湿に対する耐久性(信頼性)が強い。さらに、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムは、高い透過率及び偏光度を有する。すなわち、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムは、光学特性が良好だけでなく、信頼性も大きい。したがって、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムは、有機発光表示装置に好適であり、本実施形態に係るポリエン系偏光フィルムを有機発光表示装置に適用することで、有機発光表示装置に要求される光学特性(高透過率、高偏光度、及び高信頼性)が全て満たされる有機発光表示装置が提供される。
【0154】
さらに、酸触媒は低揮発性の酸触媒であるので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。したがって、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン生成時であってもポリビニルアルコール内の酸濃度をより均一にすることができる。
【0155】
さらに、酸触媒は、100℃での重量減少率が3質量%未満であるので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。したがって、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン生成時であってもポリビニルアルコール内の酸濃度をより均一にすることができる。
【0156】
さらに、酸触媒は有機酸であるので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。したがって、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン生成時であってもポリビニルアルコール内の酸濃度をより均一にすることができる。
【0157】
さらに、有機酸は、カルボキシル基及びスルホ基からなる群から選択されるいずれか1つの官能基を有するので、ポリエン生成時に蒸発しにくい。したがって、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン生成時であってもポリビニルアルコール内の酸濃度をより均一にすることができる。
【0158】
さらに、本実施形態に係る製造方法では、コーティング液はポリビニルアルコールの質量に対して酸触媒を2質量%以上10質量%以下で含有し、より好ましくは4.0質量%以上10.0質量%以下で含有する。したがって、本実施形態に係る製造方法は、より高偏光度かつ高透過率のポリエン系偏光フィルムを作製することができる。
【0159】
さらに、酸触媒の含有量はポリビニルアルコールの質量に対して5質量%であるので、本実施形態に係る製造方法は、より高偏光度かつ高透過率のポリエン系偏光フィルムを作製することができる。
【0160】
さらに、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン系偏光フィルムを薄膜化することができる。具体的には、本実施形態に係る製造方法は、ポリエン系偏光フィルムの膜厚を10μm未満とすることができる。これにより、ポリエン系偏光フィルムを大画面有機発光表示装置に適用した場合であっても、ポリエン系偏光フィルムの収縮を低減することができ、ひいては、有機発光表示装置の反りを低減することができる。
【0161】
さらに、脱水反応は、ポリビニルアルコールフィルムをオイルバスに浸漬することで行われるので、高偏光度かつ高透過率のポリエン系偏光フィルムを容易に作製することができる。また、この観点により作製されたポリエン系偏光フィルムは、品質が安定する。
【0162】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。