特許第6245988号(P6245988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6245988
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】グリセリンカーボネートに基づく重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/02 20060101AFI20171204BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   C08G65/02
   C08G65/26
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-553861(P2013-553861)
(86)(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公表番号】特表2014-505775(P2014-505775A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】EP2012051601
(87)【国際公開番号】WO2012113616
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年9月25日
【審判番号】不服2015-16095(P2015-16095/J1)
【審判請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】11155403.6
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】レーター,ロマン,ベネディクト
【合議体】
【審判長】 小柳 健悟
【審判官】 堀 洋樹
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0144978(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0054271(US,A1)
【文献】 特開平8−157590(JP,A)
【文献】 特開2010−30835(JP,A)
【文献】 特開昭60−71634(JP,A)
【文献】 特開昭61−140534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00-64/42,C08G65/00-67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の塩基の存在下で行われる、成分a)及び成分b):
a)少なくとも一種のアルキレンオキシド又は式(I)の環状カーボネート、
【化1】

(式中、
nは、1〜10であり、
mは、0〜3であり、
R1は、C1〜C10-アルキル、C2〜C10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)、
b)グリセリンカーボネート
からなるモノマーの重合により調製される、エステル結合を有しない重合体。
【請求項2】
成分a)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド若しくは1-ドデセンオキシドから選択されるモノマーをアルキレンオキシドとして含み、及び/又は、式(I)の環状カーボネートがエチレンカーボネート若しくはプロピレンカーボネートから選択される、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
成分a)が、少なくとも一種のアルキレンオキシドである、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
成分a)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド、1-ドデセンオキシドから選択されるアルキレンオキシドである、請求項2又は3に記載の重合体。
【請求項5】
成分a)が、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項6】
KOH、KOCH3、KO(t-Bu)、KH、NaOH、NaO(t-Bu)、NaOCH3、NaH、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチル高級アルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2,2-ジメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選択される塩基を重合において用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
塩基が、(重合体量基準で)0.05〜20重量%の量で用いられる、請求項6に記載の重合体。
【請求項8】
ランダム共重合体、ブロック共重合体、櫛形重合体、マルチブロック共重合体又はグラジエント共重合体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項9】
式(II)から式(IV)の1以上のフラグメント:
【化2】

(式中、A、B及びCは、互いに独立に成分a)から形成され、
Glyは、成分b)から形成され、
式(II)において、nとmとは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、pは0〜1000の間の値であり、
式(III)において、n、m、p及びqは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、
式(IV)において、n、m、p、v及びyは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、q、s、t、u、w及びxは、互いに独立に0〜1000の間の値である)
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項10】
少なくとも一種の塩基の存在下で、成分a)及び成分b)を重合に供する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の重合体を調製する方法。
【請求項11】
重合が、CO2放出を伴って行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
成分a)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド若しくは1-ドデセンオキシドから選択されるモノマーをアルキレンオキシドとして含み、及び/又は、式(I)の環状カーボネートがエチレンカーボネート若しくはプロピレンカーボネートから選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
成分a)が、少なくとも一種のアルキレンオキシドである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
成分a)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド、1-ドデセンオキシドから選択されるアルキレンオキシドである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
成分a)が、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
KOH、KOCH3、KO(t-Bu)、KH、NaOH、NaO(t-Bu)、NaOCH3、NaH、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチル高級アルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2,2-ジメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選択される塩基を重合において用いる、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
起泡抑制剤としての;整泡剤としての;起泡力増進剤としての;分散剤としての;乳化剤としての、乳化重合における乳化剤としての;湿潤剤としての;潤滑剤としての;固体を分散させるための、コンクリート希釈用セメントを分散させるための;水溶液を増粘させるための;医薬品のための担体又は充填物質としての;洗浄又は清浄目的の界面活性剤としての;保湿剤としての;化粧製剤、医薬製剤又は作物保護製剤における;活性成分に対するアジュバント又は可溶化剤としての;塗料における;インクにおける;顔料製剤における;コーティング組成物における;粘着剤における;革脱脂組成物における;織物工業用、繊維加工用、水処理用又は飲料水の製造用製剤における;食品工業における;製紙業における;建築用助剤としての;重付加物又はポリエステルなどの重合体の調製のためのジ-又はポリオールとしての;冷却剤及び潤滑剤としての;発酵のための;金属精錬又は電気めっき部門での選鉱又は金属加工における、請求項1〜9のいずれか一項に記載の重合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体と、関連する重合法と、例えば、乳化剤としての、整泡剤としての、起泡力増進剤としての、起泡抑制剤としての、固体を分散させるための、硬表面に対する湿潤剤としての、又は洗浄若しくは清浄目的の界面活性剤としての本発明の重合体の使用とに関する。本発明の重合体はグリセリンカーボネートに基づく。用いられるコモノマーは、エチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド、又はエチレンカーボネート若しくはプロピレンカーボネートなどの下記に定義される式(I)の環状カーボネートの少なくとも一種である。本発明の重合は少なくとも一種の塩基の存在下で行われる。
【背景技術】
【0002】
グリセリンカーボネートは、広い応用分野のある基礎化学品であり、例えば、無水物と反応してエステル結合を形成でき、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成できる。また、グリセリンカーボネートは、化粧品又は医薬における溶媒として用いられる。グリセリンカーボネート自体の、低有毒性、低蒸発速度、低可燃性及び保湿性により、グリセリンカーボネートは、化粧品材料の湿潤剤や、医学的に効果的な物質の担体溶媒に適している。また、グリセリンカーボネートは、重合体調製における出発物質として用いることもできる。グリセリンカーボネートの代わりに、エピクロロヒドリン、グリシドール又はグリセリンも重合体調製に用いることができ、出発物質として用いられるこれらのグリセリン誘導体により、それによって調製されるオリゴマー又は重合体の構造を変えることができる。
【0003】
US-A 5,041,688は、環状生成物の割合の少ないポリグリセリンの調製方法であって、リン酸などの酸の存在下においてグリセリンとエピクロロヒドリンとを反応させ、次いで長鎖カルボン酸によりエステル化を行う方法に関する。
【0004】
しかしながら、上記重合方法においては、低い縮合度、幅広い分子量分布、及び、グリセリンの縮合における高熱応力により引き起こされる生成物の黒い、タール状のコンシステンシーが問題となる。
【0005】
これらの問題は、DE-A 199 47 631及びEP-A 1785410に開示されるように、グリセリン又はエピクロロヒドリンの代わりに、グリシドールを用いることによって、少なくとも部分的には打開することができた。他方、グリシドール自身の発がん性及び高い不安定性のために、グリシドールの使用はさらなる問題と関係している。
【0006】
DE-A 199 47 631は、重合度1〜300、多分散性1.7未満、且つ約30%(13C-NMR分光法により決定される)以下の分岐単位含有量を有する、グリシドールに基づくポリオールの製造方法に関する。上記関連方法では、グリシドールを希釈形態で含む溶液を、塩基性触媒とともに、水素活性出発化合物と反応させる。グリシドールに基づく重合体のさらなる調製方法としては、n-アルキル鎖が10〜20の長さを有する長鎖n-アルキルグリセリルエーテルアルコールの調製を可能とした方法がUS-A 4,298,764に記載されている。
【0007】
EP-A 1 785 410は、30個以下の炭素原子を有するアルコールとグリシドールとからの塩基性触媒作用によって調製される、非分岐ポリグリセリンモノエーテルに関する。上記方法で調製されるポリグリセリンモノエーテルは、グリセリン及び/又はグリシドールの構造ブロックに基づく少なくとも二つのフラグメントを含む。該ポリグリセリンモノエーテルは、少なくとも75%のモノエーテル部分と、5%以下のジエーテル部分とを有するものであり、上記特定の部分は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により決定される。
【0008】
グリシドール出発物質の代替として、グリセリンから容易に入手できるグリセリンカーボネート(4-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン)が、塩基触媒重合によるオリゴグリセリンの合成のために提案されてきた。例えば、G. Rokickiら、Green Chemistry、2005、7、529〜539ページには、グリセリンカーボネートをモノマーとして用いて得られる超分岐脂肪族ポリエーテルの調製方法が開示されている。該超分岐脂肪族ポリエーテルは、さらに、二つの第一級ヒドロキシ基を有する末端単位を備えている。グリセリンカーボネートの開環重合は、アルコキシドを用いて塩基触媒作用により行われる。
【0009】
出発物質としてグリセリンカーボネートを用いた、両親媒性のグリセリン又はポリグリセリンモノアルキルエーテルの類似した調製方法が、JP-A 2000 1119 205又はJP-A 11 335 313に記載されている。一部の例では、炭素原子が24個以下のアルキル基を有する長鎖の出発アルコールを使用することもできる。
【0010】
WO 2010/012562は、再生可能資源から得られる環状カーボネートの重合の触媒プロセスに関する。環状カーボネートの環サイズは5〜7原子であり、開環重合は、トリフラートなどの金属塩とアルコールとを含む系の存在下で行われる。グリセリンカーボネートを環状カーボネートとして用いることもできる。上記方法において得られる重合体は、炭酸エステル構造ブロックを有し、すなわち、上記重合は、酸性触媒として働く金属塩の存在下において行われるので、CO2の脱離を伴わずに起こる。
【0011】
DE-A 44 33 959は、アルキル及びアルキレンオリゴ配糖体グリセリンエーテルと、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び/又は両性若しくは双性イオンの界面活性剤とを含む、改善した発泡挙動を備えた発泡洗浄剤混合物に関する。洗浄剤混合物中に存在するアルキル及び/又はアルケニルオリゴ配糖体グリセリンエーテルは、アルキル及び/若しくはアルケニルオリゴ配糖体とグリセリングリシン、グリセリンカーボネートとのエーテル化、又はグリセリン及び/若しくは工業銘柄のオリゴグリセリン混合物との直接エーテル化により生成する。類似のアルキル及び/又はアルケニルオリゴ配糖体グリセリンエーテルがDE-A 43 35 947に開示されている。
【0012】
N. Kiharaら(Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry、第31巻(1993)、2765〜2773ページ)には、分子量Mnが20000〜30000のポリヒドロキシウレタンの調製方法であって、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンと二つの環状カーボネートフラグメントを有する化合物とを、70〜100℃で24時間重付加によって反応させる方法が開示されている。環サイズが5の環状カーボネートが、室温で第一級脂肪族アミンと容易に反応して2-ヒドロキシエチルウレタンを形成できることも開示されている。しかしながら、環状カーボネートとアルコール又はカルボン酸との対応する反応、及びエステルのアミノ分解は、これらの反応条件下では起こらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US-A 5,041,688
【特許文献2】DE-A 199 47 631
【特許文献3】EP-A 1785410
【特許文献4】DE-A 199 47 631
【特許文献5】US-A 4,298,764
【特許文献6】EP-A 1 785 410
【特許文献7】JP-A 2000 1119 205
【特許文献8】JP-A 11 335 313
【特許文献9】WO 2010/012562
【特許文献10】DE-A 44 33 959
【特許文献11】DE-A 43 35 947
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】G. Rokickiら、Green Chemistry、2005、7、529〜539
【非特許文献2】N. Kiharaら、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry、第31巻(1993)、2765〜2773ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
グリセリンカーボネートと、アルキレンオキシド及び/又はエチレンカーボネートなどのグリセリンカーボネートとは異なる環状カーボネートを含むコモノマーとを、重合体の調製に同時に用いることは、未だ開示されていない。
【0016】
それゆえ、本発明の目的は、グリセリンカーボネートに基づく別の重合体及び関連する重合法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は、少なくとも一種の塩基の存在下で行われる、
a)少なくとも一種のアルキレンオキシド又は式(I)の環状カーボネート、
【化1】
【0018】
(式中、
nは、1〜10であり、
mは、0〜3であり、
R1は、C1〜C10-アルキル、C2〜C10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)、
b)グリセリンカーボネート
の重合により調製される本発明の重合体により達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の重合体は、重合体が直鎖及び分岐構造の両方を備えることを特徴とする。選択される重合条件 (例えば、温度)及び/又は使用するモノマー(出発物質)によって、異なる構造、すなわち、例えば異なる分岐度を有し、また、その結果として可変の応用プロファイルを有する重合体を調製することができる。
【0020】
グリセリンカーボネートをモノマーとして用いるので、本発明の重合体は、遊離OH官能基の数が増える。組み込まれたグリセリンカーボネートモノマーの各々が、重合体において付加的な可能な結合部位をもたらし、分岐度を制御することができる。遊離OH官能基によって、増大した水溶性、改善した塩相溶性(より大きな塩耐性)及びより高い曇り点が達成される。
【0021】
さらなる利点は、使用する出発物質及び/又は重合条件によって、エーテル結合のみを有し、エステル結合を有しない重合体が調製されることである。それゆえ、本発明の重合体は、両親媒性分子又は重合体の疎水性部分と親水性部分とがエステル結合を介して互いに結合する従来の重合体に比べて、改善されたpH安定性を有する。モノマーの選択により、本発明の重合体は、両親媒性、親水性又は疎水性であり得る。
【0022】
さらに、重合におけるモノマーとしてグリシドールの代わりにグリセリンカーボネートを用いることは、グリセリンカーボネートが、CO2の脱離を伴い容易に重合できる、取り扱いやすく、且つ非毒性化合物であるという利点を有する。このこととは対照的に、グリシドールは(既に上述されているように)、毒性のある非常に有害な物質であり、且つ高価であり、そのうえ、公の事業承認を必要とする国が多い。さらに、グリセリンカーボネートを用いる場合には、保護基は必要とされない。加えて、本発明の重合体の分岐度は、グリセリンカーボネートを用いることで容易に制御できるので、結果として、異なる使用目的での多数の重合体を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、C1〜C10-アルキルなどの定義は、例えば、上述の式(I)における基R1に対する定義のように、この置換基(基)が、炭素原子数が1〜10個のアルキル基であることを意味する。該アルキル基は、直鎖又は分岐のいずれでもよく、また任意で環状でもよい。環状成分と直鎖成分の両方を有するアルキル基も同様に上記定義を満たす。このことは、例えば、C1〜C3-アルキル基又はC1〜C30-アルキル基などの他のアルキル基についても該当する。アルキル基は、任意で、アミノ、アミド、エーテル、ビニルエーテル、イソプレニル、ヒドロキシ、メルカプト、カルボキシ、ハロゲン、アリール又はヘテロアリールなどの官能基によって一置換又は多置換されていてもよい。特に断らない限り、アルキル基は、好ましくは、置換基として官能基を有しない。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、sec-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシル、第三級ブチル(tert-bu/t-Bu)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、シクロヘキシル、オクチル、ノニル又はデシルが挙げられる。
【0024】
本発明において、C2〜C10-アルケニルなどの定義は、例えば、上述の式(I)における基R1に対する定義のように、この置換基(基)が、炭素原子数が2〜10個のアルケニル基であることを意味する。該炭素基は、好ましくは一不飽和であるが、任意で二不飽和又は多不飽和とすることもできる。直鎖、分岐、環状部分及び任意の存在する置換基については、上述のC1〜C10-アルキル基についての定義と類似の詳細を適応することができる。好ましくは、本発明においては、C2〜C10-アルケニルは、ビニル、1-アリル、3-アリル、2-アリル、cis-又はtrans-2-ブテニル、ω-ブテニルである。
【0025】
本発明において、用語「アリール」は、例えば、上述の式(I)における基R1に対する定義のように、該置換基(基)が芳香族であることを意味する。該芳香族は、単環式、二環式又は任意で多環式の芳香族であってよい。多環式芳香族の場合、個々の環は、任意で、完全に又は部分的に飽和したものでよい。アリールの好ましい例としては、フェニル、ナフチル又はアントラシルが挙げられ、特にフェニルが挙げられる。アリール基は、上述のC1〜C10-アルキルに関して定義したように、任意で、官能基により一置換又は多置換されたものであってもよい。
【0026】
本発明において、用語、アラルキルは、例えば、上述の式(I)における基R1に対する定義のように、アルキル基(アルキレン)が、今度は、アリール基で置換されていることを意味する。該アルキル基は、例えば、上述のC1〜C10-アルキルについて上記に定義したとおりのものとしてよい。
【0027】
上記の式(I)において、基R1は、一個(m=1)又は複数個(m=2又は3)存在してよい。ここで、該基R1は、その個数に対応して、環状カーボネートの任意の所望の炭素原子上の1以上の水素原子を置き換えていてもよい。二つ以上の基R1が存在する場合、これらの基は同一の炭素原子又は異なる炭素原子に結合していてよい。m=0の場合については、対応する環状カーボネートは非置換である。
【0028】
本発明は以下においてより詳細に示される。
【0029】
本発明は、第一に、少なくとも一種の塩基の存在下で行われる、
a)少なくとも一種のアルキレンオキシド又は式(I)の環状カーボネート、
【化2】
【0030】
(式中、
nは、1〜10であり、
mは、0〜3であり、
R1は、C1〜C10-アルキル、C2〜C10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)、
b)グリセリンカーボネート
の重合により調製される重合体を提供する。
【0031】
したがって、本発明の重合体は、水及び/又は少なくとも一種の塩基の存在下における、上記において定義された成分a)及び成分b)の重合により調製される。重合方法それ自体は当業者に公知のとおりであり、該方法は本発明の重合方法に関する下記の記載においてより詳細に定義される。
【0032】
成分a)としては、少なくとも一種のアルキレンオキシド又は上記において定義した式(I)の環状カーボネートが用いられる。成分a)としては、アルキレンオキシド及び/又は式(I)による環状カーボネートの二種以上の混合物も用いることができる。好ましくは、成分a)は、アルキレンオキシド又は式(I)による環状カーボネートを含む。
【0033】
アルキレンオキシドそれ自体、及び式(I)を満たす化合物も、原則として当業者に公知である。存在する場合、式(I)による基R1は好ましくは非置換であり、特に非置換のC1〜C10-アルキルである。R1は、特に好ましくはメチル、エチル又はプロピルである。好ましくはmは0又は1であり、特に、mは0である。好ましくはnは2又は3である。
【0034】
好ましくは、成分a)は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、エポキシプロピオン酸及びその塩、エポキシプロピオン酸アルキルエステル、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド、又は、1-ドデセンオキシドから選択されるモノマーを含むアルキレンオキシドである。さらに、成分a)は、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートから選択される式(I)の環状カーボネートであることが好ましい。エポキシプロピオン酸アルキルエステルの例としては、対応するメチル又はエチルエステル、及び、高級エステルが挙げられる。
【0035】
成分a)は、特に好ましくは、少なくとも一種のアルキレンオキシドであり、特に、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。
【0036】
グリセリンカーボネートは成分b)として用いられる。グリセリンカーボネート及びその調製方法は当業者に公知のものである。好ましくは、グリセリンカーボネートはグリセリンから製造される。
【0037】
成分a)及び成分b)は、互いに対して、いかなる所望の比で存在してもよい。例えば、成分b)は、0.5〜99.5重量%、好ましくは2〜98重量%(成分a)及び成分b)の合計量基準)で用いられる。
【0038】
本発明の重合体は、当業者に公知の重合方法により調製することができ、重合は少なくとも一種の塩基の存在下で行われる。好ましくは、重合は塩基開始重付加として行われる。したがって、塩基は開始剤として用いられる。本発明の重合体の調製に関する重合方法それ自体は、下記においてより詳細に記載される。
【0039】
重合方法に好適な塩基は当業者に公知であり、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、又はアルカリ土類金属、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属アルコラート、並びに第三級及び複素芳香族アミンを該目的において用いることができる。
【0040】
当業者に公知の全ての化合物を、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物として用いることができる。好ましいアルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化セシウムであり、好ましいアルカリ土類金属水酸化物は、水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムであり、好ましいアルカリ金属アルコラートは、ナトリウムメタノラート、ナトリウムt-ブチラート並びにカリウムメタノラート及びカリウムt-ブチラートである。好ましいアミンは、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、及びその他のN,N-ジメチル置換第三級アミン又はイミダゾール及びその誘導体である。
【0041】
好ましい塩基は、KOH、KOCH3、KO(t-Bu)、KH、NaOH、NaO(t-Bu)、NaOCH3、NaH、Na、K、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン及びN,N-ジメチル高級アルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2,2-ジメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール並びに2-エチル-4-メチルイミダゾールから選択される。N,N-ジメチル高級アルキルアミンは、アルキル置換基が六つを超える炭素原子を有するアミンの全てを指すものと解される。
【0042】
特に好ましい塩基は、KO(t-Bu)(ここで、t-Buは第三級ブチル基である)、KOH又はNaOHである。
【0043】
塩基は、好ましくは0.05重量%〜20重量%の量で用いられ、好ましくは、塩基は0.1〜10重量%の量で用いられ、特に、0.1〜1重量%の量で用いられる(各々の場合において、重合体(生成物)の量基準)。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、塩基は溶解された状態で用いられる。使用できる溶媒は、対応する塩が溶解する当業者に公知の全ての溶媒である。好ましくは、塩基についての溶媒として、特にアルカリ金属水酸化物の場合において、水を用いるものが挙げられる。塩基は、好ましくは40〜60重量%の量で用いられる(塩基の溶媒を基準にして)。
【0045】
本発明の重合体は、好ましくは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、櫛形重合体、マルチブロック共重合体又はグラジエント共重合体である。このことは、選択された重合条件によって、重合に供されるモノマー(上記に定義された成分a)及び成分b))を異なる方法で本発明の重合体に重合により組み込むことができることを意味する。
【0046】
好ましくは、本発明の重合体は、1以上の下記式(II)から式(IV)によるフラグメントを含む:
【化3】
【0047】
(式中、A、B及びCは、互いに独立に成分a)から形成され、
Glyは、成分b)から形成される)。
【0048】
式(II)において、nとmとは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、pは0〜1000の間の値である。Bが存在する場合、AとBとは、成分a)の異なるモノマーから形成されることが好ましい。
【0049】
式(III)において、n、m、p及びqは、互いに独立に1〜1000の間の値である。
【0050】
式(IV)において、n、m、p、v及びyは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、q、s、t、u、w及びxは、互いに独立に0〜1000の間の値である。
【0051】
完全を期すために、本発明の重合体は、同じ式の二つ以上の前述のフラグメントを含むものであってもよいことを記載しておく。それゆえ、本発明の重合体が、式(II)のフラグメント二つと、例えば式(III)のフラグメント一つとを含むことが考えられる。個々のフラグメントにおいては、A又はBなどの可変物は異なる意味を有することができる。式(II)から式(IV)のフラグメントは、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体又は本発明に定義される他の重合体配列の配列とすることができる。例えば、エチレンオキシドを成分a)として用い、グリセリンカーボネートを成分b)として用いる場合、式(II)におけるA及びBの可変物は同じ意味(エチレンオキシドの重合生成物)を有する。例えば、二つの異なる成分a)として、エチレンオキシドとプロピレンカーボネートとを用いて重合する場合、式(II)におけるA及びBの可変物は、例えば、異なる意味を有する。一方の可変物は重合されたエチレンオキシドを表し、他方の可変物は重合されたポリプロピレンカーボネートを表すことになる。
【0052】
本発明の重合体におけるフラグメントの具体例としては、以下のものも挙げられる。
【0053】
(EO)n-(Gly)3-(EO)n (グリセリンブロック)
(EO)n/2-(Gly)1-(EO)n/2-(Gly)1-(EO)n/2 (ランダムに分布したグリセリン)
これらの例において、EOは重合されたエチレンオキシドであり、Glyは重合されたグリセリンカーボネートを意味する。
【0054】
1以上の式(II)のフラグメントを含む好ましい重合体は、成分a)としての、エチレンオキシドとプロピレンオキシド又はエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートに基づく重合体である。特に好ましいのは、1以上の式(II)のフラグメントを含む重合体、又は、成分a)としてのエチレンオキシド若しくはエチレンカーボネートに基づく重合体である。特により好ましいのは、成分a)としてのエチレンカーボネートに基づく重合体である。これらの(共)重合体は、好ましくは、ランダム共重合体、ブロック重合体、マルチブロック共重合体又はグラジエント共重合体として存在してよい。好ましくは、式(II)によるフラグメントの全ての成分が同一の桁内で存在し、すなわち、A、Gly及びBのモル比が、約1:0.5:0から1:1:1を経由し0:0.5:1である。
【0055】
1以上の式(III)のフラグメントを含む好ましい重合体は、エチレンオキシド及び/若しくはプロピレンオキシド、又はエチレンカーボネート及び/若しくはプロピレンカーボネートに基づく共重合体、特に好ましくは、エチレンオキシド又はエチレンカーボネート、特により好ましくはエチレンオキシドに基づく共重合体であり、それらはグリセリンカーボネート由来の単位の割合が比較的少ない。ここで、好ましいのは、ブロック重合体、櫛形重合体又はランダム重合体である。式(III)のフラグメントを含む重合体の分岐度の増加は、さらなるアルコキシル化工程を経て実施できる。
【0056】
1以上の式(IV)によるフラグメントを含む好ましい重合体は、好ましくは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンカーボネート及び/又はエチレンカーボネートに基づくブロック状若しくはランダム重合体又は櫛形若しくはグラジエント重合体として存在できる。1以上の式(IV)によるフラグメントを含む重合体は、特に好ましくは、好ましくはエチレンオキシド及び/又はエチレンカーボネートに基づくブロック状若しくはランダム重合体又は櫛形若しくはグラジエント重合体として存在できる。1以上の式(IV)によるフラグメントを含む重合体は、特により好ましくは、好ましくはエチレンオキシドに基づくブロック状若しくはランダム重合体又は櫛形若しくはグラジエント重合体として存在できる。
【0057】
本発明の一つの実施形態では、本発明により調製される重合体は、少なくとも一種の塩基の存在下で行われる、
a)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートから選択される少なくとも一種のモノマー、
b)グリセリンカーボネート
の重合により得られる。
【0058】
塩基は、好ましくは、KO(t-Bu)、KOH又はNaOHである。
【0059】
本発明はさらに、上記に定義された重合体の調製方法を提供する。本発明の方法では、成分a)及び成分b)が重合に供される。それぞれの成分a)及び成分b)は、個別に又は共に重合に供され、また、それら全部を、又は段階的に重合に供することができる。
【0060】
本発明の方法は、当業者に公知の重合方法の温度範囲において行われ、好ましくは、昇温下、例えば、80〜220℃において行われる。
【0061】
本発明の方法は、環状カーボネート(成分a)として)を反応させる場合、好ましくは昇温下、より好ましくは150℃〜220℃、特に好ましくは160〜210℃において行われる。
【0062】
本発明の方法は、アルキレンオキシド(成分a)として)を反応させる場合、好ましくは昇温下、より好ましくは80℃〜220℃、特に好ましくは120℃〜205℃において行われる。
【0063】
本発明の方法は、溶媒の存在下で行ってもよい。用いることができる溶媒は、重合方法を実施するための当業者に公知の全ての溶媒である。好ましい溶媒は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)又はジオキサンである。好ましくは、溶媒は、成分a)及び成分b)の全量を基準として、20〜90重量%、特に30〜70重量%の量で用いる。
【0064】
好ましくは、本発明の方法において重合は、塩基開始重付加として、及び/又はCO2放出を伴って行われる。
【0065】
また、本発明の方法において、系中に存在する水を除去する、特に完全に除去することが好ましい。水は、例えば蒸留により除去できる。好ましくは、水は重合前に除去される。除去される水は、好ましくは、塩基について溶媒として用いられる水である。
【0066】
本発明はまた、起泡抑制剤としての;整泡剤としての;起泡力増進剤としての;分散剤としての;乳化剤、特に乳化重合における乳化剤としての;湿潤剤、特に硬表面に対する湿潤剤としての;潤滑剤としての;固体を分散させるための、特にコンクリート希釈用セメントを分散させるための;水溶液を増粘させるための;医薬品のための担体又は充填物質としての;洗浄又は清浄目的の界面活性剤としての;硬表面の清浄のための界面活性剤としての;保湿剤としての;化粧製剤、医薬製剤又は作物保護製剤における;活性成分に対するアジュバント又は可溶化剤としての;塗料における;インクにおける;顔料製剤における;コーティング組成物における;粘着剤における;革脱脂組成物における;織物工業用、繊維加工用、水処理用又は飲料水の製造用製剤における;食品工業における;製紙業における;建築用助剤としての;重付加物又はポリエステルなどの重合体の調製のためのジ-又はポリオールとしての;冷却剤及び潤滑剤としての;発酵のための;金属精錬又は電気めっき部門などの選鉱又は金属加工における、上記において定義された本発明の重合体の使用を提供する。
【0067】
本発明は実施例を参照することにより、以下に示される。
【実施例】
【0068】
50%の濃度の水酸化カリウム水溶液1gを初期投入物として反応器に導入し、窒素で3回不活性にし、その後、窒素下(初期圧5バール)、撹拌下で170℃に加熱する。その後、エチレンオキシド66gとグリセリンカーボネート60.3gとを、120分かけて同時に計り入れ、混合物を170℃でさらに18時間保持する。次いで、反応溶液を窒素でフラッシュし、80℃及びウォータージェット真空下で2時間脱気する。
【0069】
上記操作により、IRにおいてカルボニル基の存在を示すシグナルを全く示さない透明な、わずかに粘稠な液体が得られる。得られた重合体の重量平均分子量は、1400g/mol(GPC、ポリスチレン標準)である。本発明の実施形態として以下を挙げることができる。
[実施形態1]
少なくとも一種の塩基の存在下で行われる、
a)少なくとも一種のアルキレンオキシド又は式(I)の環状カーボネート、
【化4】

(式中、
nは、1〜10であり、
mは、0〜3であり、
R1は、C1〜C10-アルキル、C2〜C10-アルケニル、アリール又はアラルキルである)、
b)グリセリンカーボネート
の重合により調製される重合体。
[実施形態2]
成分a)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ペンテンオキシド、スチレンオキシド、エピクロロヒドリン、グリシドール、エポキシプロピオン酸及びその塩、エポキシプロピオン酸アルキルエステル、1-ヘキセンオキシド、1-ヘプテンオキシド、1-オクテンオキシド、1-ノネンオキシド、1-デセンオキシド、1-ウンデセンオキシド若しくは1-ドデセンオキシドから選択されるモノマーをアルキレンオキシドとしてを含み、及び/又は、式(I)の環状カーボネートがエチレンカーボネート若しくはプロピレンカーボネートから選択される、実施形態1に記載の重合体。
[実施形態3]
成分a)が、少なくとも一種のアルキレンオキシド、好ましくは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである、実施形態1又は2に記載の重合体。
[実施形態4]
重合が、塩基開始重付加として行われ、及び/又は、KOH、KOCH3、KO(t-Bu)、KH、NaOH、NaO(t-Bu)、NaOCH3、NaH、Na、K、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン及びN,N-ジメチル高級アルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N",N"-ペンタメチルジエチレントリアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2,2-ジメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4,5-トリメチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールから選択される塩基を重合において用いる、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
[実施形態5]
塩基が、(重合体量基準で)0.05〜20重量%の量で用いられる、実施形態4に記載の重合体。
[実施形態6]
ランダム共重合体、ブロック共重合体、櫛形重合体、マルチブロック共重合体又はグラジエント共重合体である、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の重合体。
[実施形態7]
1以上の、式(II)から式(IV)のフラグメント:
【化5】

(式中、A、B及びCは、互いに独立に成分a)から形成され、
Glyは、成分b)から形成され、
式(II)において、nとmとは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、pは0〜1000の間の値であり、
式(III)において、n、m、p及びqは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、
式(IV)において、n、m、p、v及びyは、互いに独立に1〜1000の間の値であり、q、s、t、u、w及びxは、互いに独立に0〜1000の間の値である)
を含む、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の重合体。
[実施形態8]
少なくとも一種の塩基の存在下で、成分a)及び成分b)を重合に供する、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の重合体を調製する方法。
[実施形態9]
重合が、塩基開始重付加として、及び/又はCO2放出を伴って行われる、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
起泡抑制剤としての;整泡剤としての;起泡力増進剤としての;分散剤としての;乳化剤、特に乳化重合における乳化剤としての;湿潤剤、特に硬表面に対する湿潤剤としての;潤滑剤としての;固体を分散させるための、特にコンクリート希釈用セメントを分散させるための;水溶液を増粘させるための;医薬品のための担体又は充填物質としての;洗浄又は清浄目的の界面活性剤としての;硬表面の清浄のための界面活性剤としての;保湿剤としての;化粧製剤、医薬製剤又は作物保護製剤における;活性成分に対するアジュバント又は可溶化剤としての;塗料における;インクにおける;顔料製剤における;コーティング組成物における;粘着剤における;革脱脂組成物における;織物工業用、繊維加工用、水処理用又は飲料水の製造用製剤における;食品工業における;製紙業における;建築用助剤としての;重付加物又はポリエステルなどの重合体の調製のためのジ-又はポリオールとしての;冷却剤及び潤滑剤としての;発酵のための;金属精錬又は電気めっき部門などの選鉱又は金属加工における、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の重合体の使用。