(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下から数えて奇数番目のソース層は前記偏った位置に配置されているソース層であり、下から数えて偶数番目のソース層は前記中央領域に配置されているソース層である、請求項2〜5のいずれか1項記載の食品。
【背景技術】
【0002】
電子レンジの普及が進み、食品をマイクロ波で加熱調理することが日常的に行われている。マイクロ波加熱は、マイクロ波が食品の内部に透過して当該食品に含まれる水分子を直接加熱することにより、短時間で効率よく食品を加熱することができるという利点を有する。
【0003】
逆に、マイクロ波加熱の欠点としては、解凍が不均一になる加熱ムラがある。食品をマイクロ波加熱する場合、食品周辺部は早く、逆に食品中心部は遅く解凍する。そのため、冷凍食品をマイクロ波加熱しても、周辺部が適温に解凍された時点では中心部付近はまだ凍ったままという場合がある一方で、冷凍食品全体が解凍されるまでマイクロ波加熱すると、加熱され過ぎた周辺部分が硬くなったり焦げたりすることがあった。また、マイクロ波は氷よりも水を強く加熱するため、特に、ソースなどの水分含量が多い冷凍食品をマイクロ波加熱する場合は、加熱ムラが顕著になっていた。
【0004】
冷凍食品のマイクロ波加熱の際の加熱ムラを防止するための電子レンジ用容器や容器入り冷凍食品が提案されている。特許文献1には、麺塊の上部にソースをかけた状態の冷凍食品において、麺塊上面の中心部付近にソースがかけられず、麺塊が上方に露出する部分を有する電子レンジ調理用冷凍食品が提案されている。特許文献2には、容器入り冷凍食品において、食材上面の周辺部にマイクロ波減衰体を環状に配置することが提案されている。特許文献3には、容器の周壁外周にマイクロ波を遮蔽する金属製の遮蔽部材を設け、周壁から離れた底の中央部に周壁と略等しい高さで突起する少なくとも一つの突起部を設けた電子レンジ用容器が提案されている。しかしながら、特許文献1〜3では、適用される食品や容器を特定のものにする必要があり、食品の形状や配置によっては効果が得られないなどの問題があった。
【0005】
ラザニアは、シート状の形状を有するパスタの1種又はこれを用いる食品の名称である。ラザニアを用いた食品としては、底の深い容器の底にソースを充填し、その上に、茹でたシート状パスタを敷き、更にソースとシート状パスタとを順次積層し、最上層にソースをかけて焼成した形態のものが広く知られている。ラザニアは、シート状パスタとソースを積層するため、全体に高さがありかつソースにより中央部が盛り上がった構造を有する。そのため、冷凍したラザニアを電子レンジで解凍すると、解凍ムラが起こりやすく、一方で全体が充分に加熱されるまで電子レンジにかけると食感が低下しがちである。また一般的なラザニアは、ソース4〜6層、シート状パスタ3〜5層程度で構成されているが、層数が増加するほど冷凍状態から電子レンジ解凍することが困難になり、一方層数が少ないとボリュームや食感が不足する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品は、2層以上のソース層と1層以上のシート状パスタ層とが積層された層状構造を有する。シート状パスタ層とソース層とを積層する順番については順不同でもよいが、好ましくは最下層と最上層はソース層である。また好ましくは、ソース層とシート状パスタ層は交互に積層されている。すなわち、最下層にソース層を配置し、その上にシート状パスタを載置し、さらにその上にソース層を積層する。これを1〜10回程度繰り返し、最後に最上層にソース層を配置して、層状構造を作る。好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品は、3〜5層のシート状パスタ層と、4〜6層のソース層とを有する。
【0013】
また好ましくは、上記最上層のソース層の上にさらにチーズなどのトッピングを載せると、シート状パスタ食品をオーブンで焼成した際に、特有の香りと風味が生まれ、焼成後のシート状パスタ食品が非常に良好な品質となる。
【0014】
本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品において、上記2層以上のソース層のうちの少なくとも1層は、該ソース層が接するシート状パスタ層の面の中心に対して偏った位置に配置されている。なお、本明細書において、「ソース層が接するシート状パスタ層の面」とは、通常は、該ソース層が載置されるシート状パスタ層の面であればよい。ただし、該ソース層が最下層の場合は、当該ソース層と接する上層のシート状パスタ層(つまり一番下のシート状パスタ層)の面であればよい。
【0015】
本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品は、冷凍状態からマイクロ波により加熱解凍して食するための食品である。上記のように、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品には、食品内部にソースが配置されていない空隙部分があるため、マイクロ波を照射すると食品の中心部までマイクロ波が届きやすく、食品が十分に加熱解凍される。したがって、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品によれば、従来の冷凍シート状パスタ食品をマイクロ波加熱解凍したときに生じていた加熱ムラや未解凍部分の発生を防止することができる。
【0016】
本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品の材料は、従来からパスタ用やラザニア用として利用されている材料を好適に用いることができる。
【0017】
本発明において、上記シート状パスタ層に使用されるシート状パスタは、一般的な手順に従って、原料粉と水から調製した生地から作製することができる。原料粉としては、小麦粉を主体とする原料粉が好ましく用いられる。「小麦粉を主体とする」とは、原料粉における小麦粉の含有量が60質量%以上であることを意味し、小麦粉の含有量は100質量%でもよい。原料粉に用いる小麦粉としては、パスタ類に用い得るものであれば特に制限はなく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉及びデュラムセモリナが挙げられる。これらの小麦粉は、単独で用いてもよいが、二種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
生地を調製する際に原料粉に加えられる水(練り水)としては、水、食塩水、かん水など、パスタ類に用いられる水を特に制限なく使用することができる。練り水の添加量は、原料粉100質量部に対して、好ましくは15〜35質量部、更に好ましくは18〜35質量部である。生地の調製は常法に従って実施可能であり、例えば、原料粉に所定量の練り水を加えて混捏することによって生地を調製することができる。得られた生地を、シート状に押出し又は圧延してシート状パスタに成形する。
【0019】
シート状パスタは、生パスタの状態で本発明のシート状パスタ食品の製造に用いてもよいが、茹で調理した後に用いるのが好ましい。あるいは、生のシート状パスタを一旦乾燥した後、茹で調理したものを本発明のシート状パスタ食品の製造に用いてもよい。
【0020】
各シート状パスタ層は、シート状パスタを1枚又は並べて敷き詰めた単層であってもよいが、複数枚のシート状パスタを重ねて敷き詰めた複層であってもよい。各シート状パスタ層の大きさ及び形状は特に限定されないが、好ましくは、厚さ1〜3mmであり、かつ1辺の長さが5〜20cm程度の正方形や長方形、略長方形、略多角形など、あるいは直径又は長軸の長さが5〜20cm程度の円形、楕円形、略円形、略楕円形などである。
【0021】
本発明において、上記ソース層に用いるソースとしては、単一のソースを用いてもよく、複数種のソースを用いてもよい。ソースの種類は特に限定されないが、ミートソース、トマトソース、ホワイトソースなどが好適である。ミートソースは、ボロネーゼとも呼ばれる肉とトマトを主体とするソースであり、トマトやトマトペーストをベースとして、挽き肉やたまねぎ、にんじん等を適量加えて煮込むことにより製造される。トマトソースはトマトを主体とするソースであり、トマトやトマトペーストをベースとして、たまねぎ等を適量加えて煮込むことにより製造される。ホワイトソースとしては、小麦粉と牛乳をベースとしたベシャメルソースや、生クリームをベースとしたクリームソースなどが挙げられる。これらのソースは、市販の調理済みソースを用いてもよい。
【0022】
上記ソースの粘度は、品温1〜90℃の冷凍前又は解凍後の状態において、好ましくは1〜10
6mPa・s、より好ましくは8〜10
5mPa・s程度である。粘度が低いと、ソースが流れてしまい、後述する特定の範囲にソースを充填することが難しくなる。市販の調理済みソースを用いる場合は、適宜水で薄めたり、煮詰めるなどして粘度を上記範囲に調整することが好ましい。
【0023】
各ソース層は、最下層のソース層から最上層のソース層まで同じ種類のソースを使用してもよく、2種類のソースを交互に積層してもよく、又は順不同に複数種のソースを積層してもよい。また例えば、ソース層の直上に異なる種類のソース層をさらに重ね、その上にパスタ層を重ねてもよい。例えば、下層から、ホワイトソース、パスタシート、ミートソース、パスタシート、ミートソース、パスタシート、ホワイトソースの順に合計7層のシート状パスタ食品としてもよく、又は最下層にトマトソースを置き、その上にホワイトソースを積層し、さらにその上にシート状パスタを積層後、その上にミートソースを載置してもよい。各ソース層は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5〜4.5mmの厚さを有する。
【0024】
いずれの場合も、上記ソース層のうちの少なくとも1層は、それが接するシート状パスタ層の面の中心に対して偏った位置に配置されたソース層(以下「偏心ソース層」とも称する)である。
【0025】
言い換えると、偏心ソース層は、それが接するシート状パスタ層の面上に引かれた、該面の中心を通る1つの直線(中心線)に対して非対称に配置されているソース層である。すなわち、ある1つの中心線で、偏心ソース層が接する当該シート状パスタ層の面を2等分すると、ソースがより多く配置されている側と、より少なく配置されているか又は配置されていない側とに分けられる。当該ソースがより多く配置されている側における偏心ソース層の占める面積は、該側の全面積(該シート状パスタ層の面の全面積の半分)の60〜100%である。また当該ソースがより少なく配置されているか又は配置されていない側における偏心ソース層の占める面積は、該側の全面積の0〜40%である。偏心ソース層の全面積は、該偏心ソース層が接するシート状パスタ層の面の全面積に対して30〜70%、好ましくは50〜70%である。
【0026】
偏心ソース層は、それが接するシート状パスタ層の面の中心線に跨っている必要はなく、パスタ層の面の半側のみに配置されていてもよい。また、偏心ソース層の端部は、シート状パスタ層の端部と接している必要はないが、接している方が好ましい。
【0027】
ソース層が接するシート状パスタ層の面の面積及び中心は、該面の形状に基づいて決定することができる。例えば、シート状パスタ層の面の形状が楕円又は略楕円の場合、該面の面積は該楕円又は略楕円の面積であり、該面の中心は該楕円又は略楕円の長軸と短軸との交点である。また例えば、シート状パスタ層の面の形状が長方形、略長方形又は略多角形の場合、該面の面積は該長方形、略長方形又は略多角形の面積であり、該面の中心は該長方形、略長方形又は略多角形の対角線の交点である。ソース層が接するシート状パスタ層の面における、ソースがより多く配置されている側とより少なく配置されている側の面積は、いずれも該シート状パスタ層の面の全面積の1/2である。
【0028】
偏心ソース層の面積及び中心は、該偏心ソース層を構成する一連の領域の形状に基づいて決定することができる。例えば、該一連の領域の形状が楕円又は略楕円の場合、該領域の面積は該楕円又は略楕円の面積であり、該領域の中心は該楕円又は略楕円の長軸と短軸との交点である。また例えば、該一連の領域の形状が長方形、略長方形又は略多角形の場合、該領域の面積は該長方形、略長方形又は略多角形の面積であり、該領域の中心は該長方形、略長方形又は略多角形の対角線の交点である。
【0029】
好ましくは、該少なくとも1層の偏心ソース層は、少なくとも本発明のシート状パスタ食品の最下層に配置される。より好ましくは、本発明のシート状パスタ食品の少なくとも最下層及びソース層の下から3番目は、偏心ソース層である。
【0030】
好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品において、上記偏心ソース層以外のソース層は、該ソース層が接するシート状パスタ層の面の中央領域に配置されたソース層(以下「中央ソース層」とも称する)である。該中央ソース層は、それが接するシート状パスタ層の面の全体に配置されてもよいが、好ましくは、該面の全面積に対して30〜75%、より好ましくは33〜73%、さらに好ましくは50〜75%、なお好ましくは51〜73%の面積を有する中央領域に配置される。より好ましくは、該中央ソース層が接するシート状パスタ層の面と同心の領域であって、該面の全面積に対して30〜75%、より好ましくは33〜73%、さらに好ましくは50〜75%、なお好ましくは51〜73%の面積を有する領域に配置される。より好ましくは、該中央ソース層が接するシート状パスタ層の面と同心かつ相似形の領域であって、かつ該面の全面積に対して30〜75%、より好ましくは33〜73%、さらに好ましくは50〜75%、なお好ましくは51〜73%の面積を有する領域に配置される。
【0031】
上記偏心ソース層及び中央ソース層においては、ソースは連続的に存在していてもよく、又ははしご状、ドット状、格子状などのソースが存在する部分と存在しない部分が交互に現れるパターン状で存在していてもよく、又はソースが連続的に存在する部分とパターン状で存在する部分とが混在していてもよい。本発明においては、上記ソースが連続的に又はパターン状で存在する一連の領域をソース層とみなし、該一連の領域の面積を該ソース層の面積とする。偏心ソース層及び中央ソース層のいずれにおいても、実際にソースが配置されている部分の面積は、該ソース層の全面積に対して好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0032】
好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品において、最下層は偏心ソース層であり、かつ下から2番目のソース層は中央ソース層である。より好ましくは、最下層は偏心ソース層であり、下から2番目のソース層は中央ソース層であり、下から3番目のソース層は偏心ソース層である。さらに好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品において、偏心ソース層と中央ソース層は、シート状パスタ層を挟んで交互に積層される。例えば、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品における、下から数えて奇数番目のソース層は偏心ソース層であり、下から数えて偶数番目のソース層は中央ソース層である。より具体的には、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品は、下から、第一の偏心ソース層、シート状パスタ層、第一の中央ソース層、シート状パスタ層、第二の偏心ソース層、シート状パスタ層、第二の中央ソース層・・・という順に、ソース層とシート状パスタ層とが積層された多層構造を有する。好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品において、最上層のソース層は中央ソース層である。より好ましくは、該最上層のソース層は、シート状パスタ層の上面全体に配置されている。
【0033】
上記多層構造に複数の偏心ソース層が含まれている場合、好ましくは、ある1つの偏心ソース層の上下の偏心ソース層の位置は、該1つの偏心ソース層の位置に対して、それが接するシート状パスタ層の面の中心を軸に90〜270度回転された配置をとる。より好ましくは、ある1つの偏心ソース層の位置と、その上下の偏心ソース層の位置は、該1つの偏心ソース層が接するシート状パスタ層の面の中心線に対して、互いに線対称の配置をとる。つまり、該1つの偏心ソース層がより少なく配置されている側に偏るように、その上下の偏心ソース層が配置される。
【0034】
ただし、各々の偏心ソース層は、同一の形状、範囲又は面積で配置されている必要はなく、各々が、それらが接するシート状パスタ層の面の中心に対して偏った位置に配置されている限り(さらに好ましくは、各々がその上下の偏心ソース層に対して回転された又は線対称の配置にある限り)、異なる形状、範囲又は面積で配置されていてもよい。
【0035】
また、各々の中央ソース層は、同一の形状、範囲又は面積で配置されている必要はなく、中央領域に配置されている限り、異なる形状、範囲又は面積で配置されていてもよい。
【0036】
本発明のマイクロ波加熱用冷凍シート状パスタ食品は、少なくとも1層のソース層が偏心ソース層であることによって、マイクロ波加熱解凍の際の解凍ムラが減少する。さらに、該冷凍シート状パスタ食品の最下層が偏心ソース層であり、下から2番目のソース層が中央ソース層であると、マイクロ波加熱解凍したときの解凍ムラがより減少し、かつ解凍時間を短縮することができるため好ましい。さらに、該冷凍シート状パスタ食品を偏心ソース層と中央ソース層とをシート状パスタ層を挟んで交互に配置した多層構造とすることにより、マイクロ波加熱解凍の際の解凍ムラを極めて減少させることができる。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品は、マイクロ波調理用冷凍ラザニアであり、シート状パスタ層と、ミートソース又はトマトソース層と、ホワイトソース層とを含有する。ホワイトソース層を加えることで、コクが増し風味が向上するとともに、解凍後の喫食の際に、他のソースとホワイトソースが相俟って、良好な外観を呈することができる。好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍ラザニアを製造する際、ホワイトソースとミートソースは互いに接触しないように配置する。より好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍ラザニアは、下層から偏心ソース層であるホワイトソース層、シート状パスタ層、中央ソース層であるミートソース又はトマトソース層、シート状パスタ層、再び偏心ソース層であるホワイトソース層・・・の順で、シート状パスタ層を挟んでホワイトソース層とミートソース又はトマトソース層とを交互に積層した多層構造を有する。好ましくは、本発明のマイクロ波調理用冷凍ラザニアは、3〜5層のシート状パスタ層と、4〜6層のソース層を有する。
【0038】
上記マイクロ波調理用冷凍ラザニアの好ましい実施形態において、各シート状パスタ層は略楕円形又は略四角形の1枚のシート状パスタである。各々の偏心ソース層は、各パスタの一端から充填されて、該略楕円のパスタと円弧を一部共有する部分円形状をなすか、又は該略四角形のパスタと一辺を共有する略四角形をなす。各偏心ソース層の面積は、該パスタの全面積に対して30〜70%、好ましくは50〜70%である。各々の偏心ソース層は、その上下の偏心ソース層と相補的な位置にある。例えば、最下層の偏心ソース層がパスタと共有する円弧又は辺と、その次の偏心ソース層がパスタと共有する円弧又は辺とは、対向する関係にある。
【0039】
図1に、本発明のマイクロ波調理用冷凍ラザニアの一例を模式的に示す。このラザニアは、4層のシート状パスタ層と5層のソース層からなる9層構造を有しており、下からソース層とパスタ層が交互に積層されて最下層と最上層はソース層である。
図1Aは断面図である。
図1Aでは下から1番目と3番目のホワイトソース層はいずれも中央から偏って配置されており、また互いに対称的な位置に配置されている。一方下から2番目と4番目のミートソース層は中央に配置されている。最上層のホワイトソース層はパスタの全面を覆っている。
図1Bは、下から1番目と3番目のホワイトソース層のパスタに対する配置を表した模式的下面図であり、シート状パスタの半側に偏って左右対称に配置されているのが分かる。
【0040】
上記のようにソース層とシート状パスタ層とを積層して製造されたシート状パスタ食品を、必要に応じて焼成し、凍結させることにより、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品を製造することができる。例えば、該シート状パスタ食品を容器に収納し、必要に応じて焼成した後、凍結させるか、あるいは、該シート状パスタ食品を必要に応じて焼成した後、凍結させて容器に収容するか、又は未凍結の状態で容器に収容して凍結させることにより、本発明のマイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品を製造してもよい。食品の焼成や凍結には公知の方法を採用することができる。凍結処理としては急速冷凍、緩慢冷凍いずれも採用できるが、急速冷凍が好ましい。
【0041】
上記シート状パスタ食品を容器に収容する際には、食品の容器への張り付き防止のため、最下層のソース層の下に、さらに油脂やソースを薄く敷いておいてもよい。例えば、該張り付き防止用の油脂やソースは、極薄く、好ましくは1mm以下の厚さで、容器の底面に塗布しておけばよく、また該油脂やソースの種類は特に限定されない。該張り付き防止用の油脂やソースは、上述した本発明の冷凍シート状パスタ食品におけるソース層には含まれない。
【0042】
上記シート状パスタ食品を容器に収容する容器としては、マイクロ波加熱に供することができる容器であると、冷凍された食品をそのままマイクロ波加熱調理することができるため好ましい。したがって、容器の材料としては、マイクロ波透過性であり、かつ冷凍食品のマイクロ波加熱に耐えられる耐熱性及び耐水性を有する材料が好ましい。このような材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、結晶化ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の耐熱性プラスチック、耐熱耐水コートを施した紙、及びこれらの複合材料などが挙げられる。
【0043】
上記容器の形状としては、解凍中や解凍後のソースの流出や漏出を防止できる、冷凍食品を収納した状態で底面と側壁を有する形状、例えば、トレイ、ピロー袋、ガゼット付袋、箱、平底のボウルなどが挙げられる。必要に応じて、当該容器は蓋やトップシールを備えていてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0045】
(製造例1〜7)
デュラム小麦粉(日清製粉;デュエリオ)100質量部に対して水33質量部を混合し、混練して生地を調製した。調製した生地を、ロール圧延機を用いて、厚さ1.5mmのシート状に押出し、約130mm×130mmの正方形形状に切り出して、シート状パスタを得た。このシート状パスタを、茹で歩留まりが200%になるように沸騰水中で茹で調理した。得られた調理済みシート状パスタをトリミングし、14cm×14cmの正方形形状とした。
【0046】
電子レンジ対応のグラタン容器を用意した。該容器の底に、左端から表1に示した範囲にホワイトソースを載置し(第1ホワイトソース層)、この第1ホワイトソース層の上に調理済みシート状パスタを1枚敷いた。該シート状パスタの上面全体にミートソースを載置し(ミートソース層)、さらにこのミートソース層の上に2枚目の調理済みシート状パスタを敷いた。さらにその2枚目のパスタの上面の右端から、第1ホワイトソース層と同じ面積になるようホワイトソースを載置し(第2ホワイトソース層)、この第2ホワイトソース層の上にさらに3枚目の調理済みシート状パスタを敷いた。最後に、3枚目のパスタの上面全体にミートソースを載置した。なお、各ソース層の厚みは、1.5〜4.5mmの範囲で、各製造例間で共通とした。得られた食品の上にチーズをトッピングした後、オーブンで焼成し、次いで−35℃で急速冷凍し、冷凍シート状パスタ食品を製造した。
【0047】
(試験例1)
各冷凍シート状パスタ食品を−18℃で1週間保存した後、電子レンジ(600W)で解凍し、中心部が60度に加熱されるまでの時間を解凍時間として計測した。さらに解凍済みのシート状パスタ食品の食感を、10名のパネラーにより下記評価基準に従って評価し、平均点を求めた。
【0048】
(食感の評価基準)
5点:加熱ムラがなく、ソースとパスタに一体感があり、非常に良好な食感。
4点:加熱ムラがわずかにあるが、ソースとパスタに一体感があり、良好な食感。
3点:加熱ムラがややあるが、概ねソースとパスタに一体感があり、やや良好な食感。
2点:加熱ムラがあり、ソースとパスタに一体感がやや不足し、やや不良な食感。
1点:加熱ムラが多く、ソースとパスタの一体感に乏しく、不良な食感。
【0049】
結果を表1に示す。表1には、第1及び第2ホワイトソース層を真上から見た際の配置を模式的に示した。四角形はパスタ、グレーはソースを表し、ホワイトソース層を非対称に2分するパスタの中心線が点線で示されている。また表1に、第1及び第2ホワイトソース層それぞれについて、該中心線で分けられるパスタの左右半側のそれぞれの面積に対するソースが載置された面積の割合を示した。
ホワイトソース層の載置範囲に一定の非対称性をもたせた場合、冷凍シート状パスタ食品のマイクロ波加熱解凍に要する時間が短縮され、また解凍後の食感が向上した。ただし、非対称に載置した場合でも、載置範囲が小さすぎると充分な効果は得られなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
(製造例8〜14)
製造例1〜7と同様の手順で、ただし第2ホワイトソース層を載置する範囲をシート状パスタの上面全体に変更して、マイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品を製造した。
【0052】
(試験例2)
試験例1と同様の手順で、製造例8〜14の各マイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品の解凍時間及び食感を評価した。
【0053】
結果を下記表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(製造例15〜18)
製造例4と同様の手順で、ただしミートソース層を載置する範囲を表3のとおりに変更して、マイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品を製造した。
【0056】
(試験例3)
試験例1と同様の手順で、製造例15〜18の各マイクロ波調理用冷凍シート状パスタ食品の解凍時間及び食感を評価した。
【0057】
結果を下記表3に示す。なお、表3には製造例4の結果を再掲する。
非対称に載置したソース層の間のソース層をパスタの中央領域の所定の範囲に載置した場合、冷凍シート状パスタ食品の解凍後の食感がより向上した。
【0058】
【表3】