(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が10nm以下であり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーションRth(550)が−60〜60nmである支持体と、
前記支持体の少なくとも片面上に配置された、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを含み、厚みが10μm未満である導電層と、
前記導電層上に隣接して配置されたハードコート層と、を有する導電性フィルム。
前記支持体が、セルロースアシレート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および、シクロオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の導電性フィルム、および、タッチパネル付き表示装置について詳述する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明における図は模式図であり、各層の厚みの関係や位置関係などは必ずしも実際のものとは一致しない。
【0013】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレタデーション、および、厚さ方向のレタデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、またはWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、液晶化合物の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、またはWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、および入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、および式(B)よりRthを算出することもできる。
【0015】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。dは測定フィルムの厚みを示す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0016】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、上記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。
【0017】
本発明の導電性フィルムの特徴点の一つとしては、まず、所定の光学特性を示す支持体を使用している点が挙げられる。つまり、本発明においては、面内レタデーションおよび厚み方向のレタデーションが低い支持体(低位相差フィルム)を使用することにより、光透過率の向上、PETフィルムで発生しやすい干渉ムラ解消が図られている。
なお、上述したように、導電層として汎用されているITO層は、通常、高温条件を伴うドライプロセスによって製造されるが、上記低位相差フィルムは一般的にPETフィルムと比較して耐熱性や機械的強度に劣るため、ドライプロセス中に分解などが生じやすく、そもそも適用が難しい。
それに対して、本発明の導電性フィルムの他の特徴点として、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を使用している点が挙げられる。後段にて詳述するように、フラーレン官能基化カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブに共有結合した1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子を含む。フラーレン官能基化カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ由来の機械的な柔軟性に加え、フラーレン官能基を加えた効果としてカーボンナノチューブよりも高い導電性を示す材料である。導電層中においては、フラーレン官能基化カーボンナノチューブ同士が絡まりながらネットワーク構造を形成しやすく、更にフラーレン官能基が隣接するフラーレン官能基化カーボンナノチューブと接触し、結果として優れた導電特性を示す導電層となる。また、後述するように、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を作製する際には、高温真空条件を必要としない。そのため、ドライプロセスによりITO膜を作製する場合と比較して、支持体の性能劣化を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明の導電性フィルムにおいては、ハードコート層由来のシワなどが生じにくい。その理由の詳細は不明だが、以下のように推測される。まず、上述したように、導電層においては、フラーレン官能基化カーボンナノチューブ同士が絡まりながらネットワーク構造を形成しているため、導電層にかかる応力を緩和しやすい。そのため、ハードコート層に隣接して配置される導電層がいわゆる応力緩和層としても機能し、導電性フィルム全体のシワが生じることを抑制していると推測される。
【0019】
本発明の導電性フィルムは、所定の光学特性を示す支持体と、支持体上に配置されたフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層と、支持体上に隣接して配置されたハードコート層とを少なくとも有する。
以下、導電性フィルムに含まれる部材(支持体、導電層、ハードコート層など)について詳述する。
【0020】
<支持体>
支持体は、導電層を支持する基材である。
波長550nmにおける支持体の面内レタデーションRe(550)は10nm以下であり、導電性フィルムの光学特性がより優れる点で、7nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0nmである。
波長550nmにおける支持体の厚み方向のレタデーションRth(550)は−60〜60nmであり、導電性フィルムの光学特性がより優れる点で、−45〜45nmが好ましく、−35〜35nm以下がより好ましい。
【0021】
支持体の厚みは特に制限されないが、表示装置の薄型化の点で、10〜80μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。
なお、上記厚みは平均値であり、任意の10点の支持体の厚みを測定して、それらを算術平均した値である。
【0022】
支持体としては上述した光学特性を満たすものであれば特に制限されず、公知の透明支持体を使用することができるが、例えば、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロースに代表される、セルロースアシレート系樹脂や、シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等)や、(メタ)アクリル系樹脂や、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0023】
支持体の好適態様の一つとしては、セルロールエステルフィルムを使用できる。
(セルロースエステル)
セルロースエステルフィルムは、セルロースエステルを含んでなる。
本発明においては、たとえば、粉末、粒子状、またはペレット化されたセルロースエステルを用いてフィルムを作製することでセルロースエステルフィルムとすることができる。
セルロースエステルフィルムは、1種類のセルロースエステルから構成してもよいし、2種類以上のセルロースエステルから構成してもよい。
セルロースエステルとしては、セルロースアシレートが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、特に限定されない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0025】
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて簡単に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
全アシル置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は1.5〜3.0であることが、好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましく、2.5〜3.0であることが更にまた好ましく、2.7〜3.0であることが更に好ましく、2.70〜2.98であることが特に好ましい。また、製膜性の観点からは、場合により、2.80〜2.95であることが好ましく、2.85〜2.90であることが特にまた好ましい。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度である(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は全アシル置換度に対する6位のアシル置換度の割合であり、以下「6位のアシル置換率」とも言う。
【0026】
セルロースアシレートの分子量は数平均分子量(Mn)で40000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものがより好ましい。本発明で用いられるセルロースアシレートはMw/Mn比が4.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.4〜2.3である。
本発明において、セルロースアシレート等の平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、国際公開WO2008−126535号公報に記載の方法により、その比を計算することができる。
【0027】
セルロースアシレートのアシル基の種類については、特に制限はないが、炭素数2〜10のものが好ましく、炭素数2〜6のものがより好ましく、炭素数2〜4のものがさらに好ましい。具体的には、セルロースアシレートのアシル基はアセチル基またはプロピオニル基であることが好ましく、特にアセチル基であることが好ましい。即ち、セルロースアシレートは、セルロースアセテートであることが好ましい。
【0028】
使用するセルロースアシレートは本発明の請求を逸脱しない範囲で可塑剤やUV吸収剤等の添加剤を1種類以上含有してもよい。添加量は特に制約はないが、透明性やブリードアウトの観点から30重量%以下が望ましく、3〜25重量%が更に好ましく、3〜20重量%が最も望ましい。
【0029】
使用する添加剤は特に制約はないが、例えば、芳香族ジカルボン酸を含有するエステルオリゴマー(芳香族エステルオリゴマー)を使用することができる。芳香族ジカルボン酸含有エステルオリゴマーはジカルボン酸由来の繰り返し単位とジオール由来の繰り返し単位を有し、ジカルボン酸由来の繰り返し単位中、脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をm、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をnとしたときm:nが0:10〜3:7であることが好ましい。また、分子量としては、数平均分子量(Mn)が、600〜3000であることが好ましく、600〜2000がより好ましく、600〜1500がさらに好ましい。
【0030】
使用される芳香族エステルオリゴマーは、炭素数2〜10のジオールと炭素数4〜10のジカルボン酸とから合成することが好ましい。合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、または、グリコールへの無水ジカルボン酸の付加および脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。芳香族エステルオリゴマーは、ジカルボン酸である芳香族ジカルボン酸とジオールとの合成により得られるポリエステル系オリゴマーであることが好ましい。
【0031】
また、本発明に使用するアシレートフィルムの添加剤に関しては、例えば、特開2013−117009の段落番号0039〜0063、0068〜0095の記載を参考にすることができる。
【0032】
(セルロースアシレートフィルムの製造方法)
セルロースアシレートフィルムを製造する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製膜することができる。例えば、溶液流延製膜法および溶融製膜法のいずれを利用して製膜してもよいが、フィルムの平滑性の観点からは溶液流延製膜法を利用して製造するのが好ましい。以下、溶液流延製膜法を用いる場合を例に説明するが、本発明は溶液流延製膜法に限定されるものではない。なお、溶融製膜法を用いる場合については、公知の方法を用いることができる。
【0033】
−ポリマー溶液−
溶液流延製膜方法では、セルロースアシレート、および、必要に応じて各種添加剤を含有するポリマー溶液(セルロースアシレート溶液)を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができるポリマー溶液(以下、適宜セルロースアシレート溶液と称する場合もある)について説明する。
【0034】
−溶媒−
本発明で用いられるセルロースアシレートは溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材上に流延しフィルムを形成させる。この際に、押し出し、または、流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒を用いることが好ましい。
さらに、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ、流延用基材を溶解しないものである。また、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、セルロースアシレートと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合してもよい。
ここで、上記セルロースアシレートに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0035】
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよび塩化メチレンが好ましい。
【0036】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。
これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(金属支持体上にセルロースアシレートのドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースアシレートの溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
【0037】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。
これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からメタノール、エタノールが好ましい。エタノールがもっとも好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースアシレートに対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
【0038】
セルロースアシレートの原料であるセルロースアシレートは、水酸基やエステル、ケトン等の水素結合性の官能基を含むため、全溶媒中に5〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは8〜20質量%のアルコールを含有することが流延支持体からの剥離の観点から望ましい。
また、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めたりするのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
【0039】
本発明におけるポリマー溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例については、例えば、特開2009−262551号公報に挙げられている。
また、必要に応じて、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とすることもでき、詳細な記載は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載がある。
【0040】
ポリマー溶液中のセルロースアシレート濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。
セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
【0041】
添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、芳香族エステルオリゴマーやUV吸収剤は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または、直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0042】
このような条件を満たし好ましい高分子化合物であるセルロースアシレートを高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
【0043】
(1)溶解工程
セルロースアシレートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中でセルロースアシレート、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロースアシレート溶液に添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
セルロースアシレートの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送ることが好ましい。
【0044】
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0045】
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(セルロースアシレートフィルムの完成品となる前の状態であって、まだ溶媒を多く含むものをこう呼ぶ)を金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
【0046】
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め、製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0047】
また、剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、更に10〜120質量%とすることが好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)=[(M−N)/N]×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0048】
(5)乾燥または熱処理工程、延伸工程
上記剥離工程後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥することが好ましい。
【0049】
熱処理をする場合、熱処理温度はTg−5℃未満であり、Tg−20℃以上Tg−5℃未満であることが好ましく、Tg−15℃以上Tg−5℃未満であることがより好ましい。
また、熱処理温度は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分程度であることが特に好ましい。
【0050】
乾燥および熱処理の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。使用する溶媒によって、温度、風量及び時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて条件を適宜選べばよい。
【0051】
延伸処理は、MDおよびTDのいずれか一方向に行ってもよいし、双方の方向に2軸延伸してもよい。寸法安定性の観点からは2軸延伸が好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、引張り弾性率は、使用するセルロースアシレートの種類やアシル置換度を調整したり、添加剤の種類を選択することで、又はその割合を調整したりすることで、上記範囲に調整することができる。
【0052】
フィルム搬送方向MDへの延伸における延伸倍率は、0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0〜10%であることが特に好ましい。延伸の際のウェブの延伸倍率(伸び)は、金属支持体速度と剥ぎ取り速度(剥ぎ取りロールドロー)との周速差により達成することができる。例えば、2つのニップロールを有する装置を用いた場合、入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、搬送方向(縦方向)にフィルムを好ましく延伸することができる。このような延伸が施されることによって、MDの引張り弾性率を調整できる。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
【0053】
フィルム搬送方向に直交する方向TDへの延伸における延伸倍率は、0〜30%であることが好ましく、1〜20%であることがより好ましく、20〜15%であることが特に好ましい。
なお、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向TDに延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
【0054】
2軸延伸の際に縦方向に、例えば、0.8〜1.0倍に緩和させて所望のリターデーション値を得ることもできる。延伸倍率は目的の光学特性に応じて設定される。セルロースアシレートフィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。
【0055】
延伸の際の温度が、Tg以下であると、延伸方向の引張り弾性率が上昇するので好ましい。延伸温度は、Tg−50℃〜Tgであることが好ましく、Tg−30℃〜Tg−5℃であることがより好ましい。一方、上記温度条件で延伸すると、延伸方向の引張り弾性率が上昇する一方で、それに直交する方向の引張り弾性率は低下する傾向がある。従って、延伸によりMD及びTDの双方の方向の引張り弾性率を上昇するためには、上記温度範囲で、双方の方向に延伸処理する、即ち2軸延伸処理するのが好ましい。
【0056】
なお、延伸工程後に乾燥してもよい。延伸工程後に乾燥する場合、使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。本発明では、延伸工程後の乾燥温度は、延伸工程の延伸温度よりも低い方が、フィルムを液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストを上昇させる観点から好ましい。
【0057】
(6)巻き取り
以上のようにして得られた、フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。フィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3〜50mmが好ましく、より好ましくは5〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0058】
このようにして得られたウェブを巻き取り、セルロースアシレートフィルムを得ることができる。
【0059】
(ロール状セルロースアシレートフィルム)
セルロースアシレートフィルムとしては、長尺状のセルロースアシレートフィルムをロール状に巻いてなるロール状セルロースアシレートフィルムを用いてもよい。ロール状のフィルムの長さや幅に制約はないが、長さは1300m〜10400mが望ましく、2600m〜10400mが更に望ましく、3900m〜9800mが最も望ましい。生産効率の観点からは長尺の方が望ましいが、長すぎるとフィルムの重量による変形やハンドリングの懸念がある。幅は1000mm〜3000mmが望ましく、1150mm〜2800mmが更に望ましく、1300mm〜2500mmが最も望ましい。
【0060】
(層構成)
セルロースアシレートフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と外層(表層、スキン層と呼ばれることもある)の2層からなる積層構造であることや、外層、コア層、外層の3層からなる積層構造であることも好ましく、これらの積層構造を共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合、外層には、さらにマット剤を添加することが好ましい。マット剤としては、例えば特開2011−127045号公報に記載のものなどを用いることができ、例えば平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子などを用いることができる。
【0061】
<導電層>
導電層には、フラーレン官能基化カーボンナノチューブが含まれる。フラーレン官能基化カーボンナノチューブに関しては、後段で詳述する。
導電層の厚みは10μm未満であり、導電性フィルムの光透過性がより優れる点で、9μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、7μm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、導電性フィルムの導電性の点で、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。
導電層の厚みを10μm未満に調整することにより、フラーレン官能基化カーボンナノチューブによる光吸収の程度を小さくできる。
なお、上記厚みは平均値であり、任意の10点の導電層の厚みを測定して、それらを算術平均した値である。
【0062】
導電層中におけるフラーレン官能基化カーボンナノチューブの含有量は特に制限されないが、導電性フィルムの平坦性がより優れる点(以後、単に「本発明の効果がより優れる点」とも称する)、および/または、導電層の導電性がより優れる点で、導電層全質量に対して、60質量%が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%が挙げられる。
なお、導電層中にはフラーレン官能基化カーボンナノチューブ以外の添加剤が含まれていてもよく、その含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点、および/または、導電層の導電性がより優れる点で、導電層全質量に対して、0.01〜40質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜10質量%以上がさらに好ましい。
【0063】
導電層は、少なくとも支持体の片面上に配置され、支持体の両面に配置されていてもよい。導電層が支持体の両面に配置される場合、後述するハードコート層も支持体両面に配置された導電層それぞれの上に隣接して配置される。
導電層は、支持体表面(主面)の全面に配置されていても、支持体表面の一部の領域に配置されていてもよい。特に、後述するように、タッチパネルに適用する場合は、導電層は所定のパターン状に配置されることが好ましい。
【0064】
導電層の作製方法としては、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層が作製できれば特に制限されず、例えば、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを溶媒中に分散させて支持体上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を実施する方法や、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを含むエアロゾルを支持体に吹き付ける方法が挙げられる。
なお、支持体上に直接導電層を作製する以外にも、一旦、仮支持体上でフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を作製して、支持体上に転写する方法も挙げられる。
【0065】
上述したように、導電層は所定のパターン状に配置してもよい。
導電層を所定のパターンに形成する方法としては特に制限されないが、例えば、支持体上に所定のパターンにマスクしたものに対して、支持体上にフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を堆積させた後、マスクを除去することにより所定パターンの導電層を得る方法、導電層上に所定のパターンのレジストを用意し、強酸、酸化性または腐食性の大きな薬剤、強アルカリ等のウェットプロセスでエッチングを行う方法、スクリーン印刷によるパターニング方法などが挙げられるが、本発明においては、ドライエッチングプロセスでパターニングを行うことが好ましい。
以下にその例を示すが、本発明はこれに限定されない。
導電層上に、マスクとなるアルミニウム膜を形成し、続いて、アルミニウム膜上にパターン形成するためにレジストを塗布する。続いて、上記レジストをパターンと合わせて露光・現像を行なう。続いて上記パターニングされたレジストをマスクに、アルミニウム膜をエッチングする。続いてレジストを剥離する。続いてドライエッチング装置、たとえば、O
2プラズマアッシング装置を用いて、表面に露出している導電層を燃焼させることによって除去する。ここで燃焼とは、試料温度を上げる場合ばかりでなく、基板温度を上げずに活性化したO
2プラズマおよびラジカルで酸化させる方法、つまり、アッシングも含む。最後に、導電層上のアルミニウム膜を燐酸、特に加熱した燐酸によりウェットエッチングにより除去することで、導電層をパターニングできる。
なお、上記ではO
2プラズマアッシングを用いて説明したが、他のドライエッチング方法、たとえば、スパッタエッチング、化学エッチング、反応性エッチング、反応性スパッタエッチング、イオンビームエッチング、反応性イオンビームエッチングによるエッチングが可能である。
【0066】
ガスエッチングまたはラジカル含有のエッチングは化学エッチングまたは反応性エッチングで、炭素と反応除去できる酸素、水素等の反応性ガスを用いて、フラーレン官能基化カーボンナノチューブまたはカーボンを主とするナノパーティクルを除去できる。フラーレン官能基化カーボンナノチューブまたはカーボンナノパーティクル、触媒金属表面を被うアモルファスカーボンのカーボン結合は6員環または5員環より構成されるが、フラーレン官能基化カーボンナノチューブに比較してカーボンナノパーティクル、触媒金属表面被うアモルファスカーボンの結合は不完全で5員環が多く、反応性ガスに対して反応しやすい。
従って、カーボンナノパーティクル、触媒金属表面を被うアモルファスカーボンを含むフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層をパターンニングする場合には、ガスエッチングまたはラジカルを含むエッチングがより効果的である。さらに、ガスエッチングまたはラジカルを含むエッチングでは等方性のエッチングであることより、パターニングするナノチューブの表面ばかりでなく、反応性ガスが表面近傍のナノチューブ、ナノパーティクルの側壁や裏面にも回りこみ、選択的に炭素と反応し、触媒金属以外をすばやく除去できる。さらに、触媒金属のみを除去する工程を追加することにより、ナノパーティクルを含有するフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層をパターニングすることができる。反応生成物は、例えば、酸素の場合、COやCO
2などのガスとなるため支持体への再付着がなく、表面汚染の問題がない。特に酸素をもちいた燃焼は簡便であり、好ましい。
【0067】
次に、イオン性のスパッタ効果を用いた場合を検討する。パターニングする時に残したい導電層に、例えば、スパッタや蒸着を用いてアルミニウムを被覆するが、導電層の表面は凹凸が大きい場合には、特に凹の内部では十分にアルミニウムを被うことができない場合がある。反応性ガスを用いた場合には、ガスの回り込みがあり、エッチング時間が長時間の場合、保護膜が十分に被覆していない部分より、導電層がエッチングされる。一方、イオン性のスパッタエッチングを用いた場合、イオン種の直進性が強く、上面よりイオン種が進入するため、厚い被覆膜の下部に位置する導電層に対してダメージを与えにくい。さらに、異方性のエッチングであるため、マスクパターンに忠実にしかも垂直にエッチングできる。したがって、ナノパーティクルのうち特に触媒金属の含有がないフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を除去するのに好ましく、また微細なパターニング形成に好ましい。
【0068】
イオンビームエッチング、反応性イオンビームエッチングではマスクがなく、エッチングすることが可能であるが、ビームを変調する必要があり、面積当たりのプロセス時間が必要である。大面積ディスプレイよりは小型のディスプレイに適している。
【0069】
また、上記O
2プラズマアッシング時のマスクとしてアルミニウム膜を使用した例を示したが、除去する際に導電層にダメージを与えない金属、例えば、チタン、金、モリブデン、タングステン、銀などを使用してもよい。チタンでは硝酸、金では王水、モリブデンでは熱濃硫酸または王水、タングステンではフッ化水素酸と硝酸の混合液により速やかに除去できる。しかし、長時間の処理では硝酸、硫酸、フッ化水素では導電層が徐々にではあるが劣化するため、ダメージを受けない条件、特に温度、濃度と所定の時間内で処理する必要がある。室温では硝酸65%、硫酸90%、フッ化水素45%およびそれらの混合物で1時間以内の処理でダメージなく処理することができる。アルミニウムは他の金属に比べ安価であり、また、導電層の被覆状態、特にアルミニウムの結晶粒が密で被覆率が高く、しかもエッチング液である燐酸に対して導電層の劣化が見られず、他の金属よりも好ましい。
【0070】
一方、原子量の大きい金属はイオンによるスパッタ率が小さく、スパッタ効果が主なドライエッチングの場合にマスク材として相応しい。特に金、タングステン、モリブデンはアルミニウム、チタンよりスパッタに対する耐性が2倍以上あり、マスク直下でのダメージを受けにくく、したがって、ナノパーティクルのうち特に触媒金属の含有がないフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を除去するのに好ましく、また微細なパターニング形成に好ましい。
また、金属以外でも、O
2プラズマアッシングでのダメージを受けず、除去する際に導電層にダメージを与えない物質、たとえば二酸化珪素、酸化アルミニウムなどであれば、使用することが可能である。
【0071】
(フラーレン官能基化カーボンナノチューブ)
フラーレン官能基化カーボンナノチューブ(本明細書では、CBFFCNTとも呼ぶ)は、カーボンナノチューブに共有結合した1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子を含む。つまり、CBFFCNTは、フラーレンおよびフラーレン系分子からなる群から選択される1種または複数種が共有結合を介して導入されたカーボンナノチューブである。
【0072】
カーボンナノチューブとは、炭素原子によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層または多層の同軸管状になった物質である。カーボンナノチューブは、炭素原子のみから構成されていてもよく、炭素原子と1種または複数種の他の原子(例えば、ヘテロ原子)を含んでいてもよい。カーボンナノチューブは、末端が開放および/または閉鎖された、円筒形または管状の構造を有することができる。また、他のカーボンナノチューブ構造も可能である。
【0073】
フラーレンとは、炭素原子を含み、かつ、その構造が実質的に球形、楕円形またはボール状である分子である。フラーレンは、表面が閉鎖された中空の構造を有していてもよく、または、完全に閉鎖されるのではなく、1つまたは複数の開結合(open bonds)を有する実質的に球形の構造を有していてもよい。フラーレンは、例えば、実質的に半球体のような形状および/または任意の他の球のような形状を有することもできる。
フラーレン系分子とは、上述のフラーレンのいずれかであって、分子内の1つまたは複数の炭素原子が、1つまたは複数の、例えば、炭素原子以外の原子(例えば、ヘテロ原子)、分子、基および/または化合物で置換されている分子や、上述のフラーレン分子のいずれかであって、1つまたは複数の追加の原子(例えば、ヘテロ原子)、分子、基および/または化合物がフラーレン内に組み込まれている分子や、上述のフラーレンのいずれかであって、1つまたは複数の追加の原子(例えば、ヘテロ原子)、分子、基および/または化合物がフラーレンの表面にくっ付いている分子を意味する。
なお、1種または複数種の他のフラーレンをカーボンナノチューブ表面にくっ付けることができるという点について触れておくことができるが、これは単なる1つの非限定例である。
【0074】
1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子は、カーボンナノチューブの外面および/または内面、好ましくは外面に共有結合させることができる。フラーレンおよび/またはフラーレン系分子は、20〜1000個の原子を含むことができる。フラーレンおよび/またはフラーレン系分子は、1種または複数種の架橋原子団を介してカーボンナノチューブに共有結合させてもよいし、カーボンナノチューブに直接共有結合させてもよい。
架橋原子団とは、カーボンナノチューブへの共有結合を可能にするのに用いられる任意の原子、元素、分子、基および/または化合物を意味する。好適な架橋原子団は、例えば、元素周期表の第IV族、第V族、第VI族の任意の元素を含むことができる。好適な架橋原子団は、例えば、酸素、水素、窒素、硫黄、アミノ基、チオール基、エーテル基、エステル基および/またはカルボン酸基および/または他の任意の好適な基および/またはそれらの誘導体を含むことができる。好適な架橋原子団は、炭素含有基を含むことができる。
また、上述したように、もう一つの選択肢として、またはこれに加えて、フラーレンおよび/またはフラーレン系分子はカーボンナノチューブへ直接共有結合してもよい。例えば、フラーレンおよび/またはフラーレン系分子は、1つまたは複数の炭素結合を介して直接共有結合してもよい。
【0075】
カーボンナノチューブは、単一壁、二重壁、若しくは多重壁のカーボンナノチューブ、または、複合カーボンナノチューブを含むことができる。カーボンナノチューブは、気体、液体および/または固体の分散体、固体構造体、粉末、ペーストおよび/またはコロイド懸濁液の中で配合することができ、および/または、表面上で析出させ、および/または、合成することができる。
フラーレン官能基化カーボンナノチューブは、1つまたは複数のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子を介して、1つまたは複数のカーボンナノチューブおよび/またはフラーレン官能基化カーボンナノチューブに結合させることができる。言い換えれば、例えば、共通のフラーレン分子を介して、2つのフラーレン官能基化カーボンナノチューブを互いに付着することができる。
【0076】
(フラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造方法)
1種または複数種のフラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造方法としては、1種または複数種の触媒粒子、炭素源および/または試薬を互いに接触させ、反応器内で加熱して、1種または複数種のカーボンナノチューブに共有結合した1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子を含む1種または複数種のカーボンナノチューブを製造することを含む。
1種または複数種の触媒粒子、炭素源および/または試薬を互いに接触させるステップは、例えば、それらを互いに接触させる任意の好適な方法(例えば、混合)により実施できる。この方法は、反応器内で実施されることが好ましい。このようにして、1種または複数種のフラーレン官能基化カーボンナノチューブは製造される。
【0077】
フラーレン官能基化カーボンナノチューブは、エアロゾルのような気相中で、および/または、基材上で製造できる。さらに、この方法は、連続流れであるか、バッチプロセスであるか、または、バッチサブプロセスと連続サブプロセスの組み合わせにすることができる。
フラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造においては、種々の炭素含有物質を炭素源として使用できる。また、炭素源を形成する炭素含有前駆物質も使用できる。炭素源は、1種または複数種のアルカン、アルケン、アルキン、アルコール、芳香族炭化水素および任意の他の好適なグループ、化合物または材料からなる群より選択できる。また、炭素源は、例えば、気体の炭素化合物(メタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、一酸化炭素など)、液体の揮発性炭素源(ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、およびオクタノールなど)および他の任意の好適な化合物と、それらの誘導体からなる群より選択できる。チオフェンも炭素源として使用できる。なかでも、一酸化炭素ガスが、炭素源として好ましい。
炭素源としては、1種または複数種を使用できる。
炭素前駆物質を使用する場合、炭素前駆物質は、例えば、加熱されたフィラメントまたはプラズマを用いて、反応器中の所望の場所で活性化させることができる。
【0078】
1つの実施態様では、1種または複数種の炭素源は、1種または複数種の触媒粒子源、試薬、試薬前駆物質および/または追加の試薬としても機能する。
炭素源は、5〜10000ccm、好ましくは50〜1000ccm、例えば約300ccmの割合で反応器に導入することができる。この方法で用いる種々の材料(例えば、炭素源)の圧力は、0.1〜1000Pa、好ましくは1〜500Paにすることができる。
1種または複数種の試薬を、フラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造において使用できる。試薬はエッチング剤であってよい。試薬は、水素、窒素、水、二酸化炭素、亜酸化窒素、二酸化窒素および酸素よりなる群から選択できる。さらに、試薬は、例えば、有機および/または無機の酸素含有化合物(オゾン(O
3)など)および種々の水素化物から選択できる。この方法に用いる1種または複数種の試薬は、一酸化炭素、オクタノールおよび/またはチオフェンから選択できる。
好ましい試薬(1種または複数種)は、水蒸気および/または二酸化炭素である。また他の任意の好適な試薬も、本発明による方法に用いることができる。他の試薬および/または試薬前駆物質を炭素源として用いることもでき、その逆も同様である。そのような試薬の例は、例えば、ケトン、アルデヒド、アルコール、エステルおよび/またはエーテルおよび/または他の任意の好適な化合物である。
【0079】
これら1種または複数種の試薬、および/または、試薬前駆物質を、例えば、炭素源と一緒かまたは別個に反応器に導入できる。1種または複数種の試薬/試薬前駆物質は、1〜12000ppm、好ましくは100〜2000ppmの濃度で反応器に導入できる。
【0080】
カーボンナノチューブに共有結合する1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子の濃度は調整できる。この調整は、使用する1種または複数種の試薬の量(例えば、濃度)を調整することにより、加熱温度を調整することにより、さらに/または滞留時間を調整することにより、行うことができる。調整は合成方法に応じて行われる。加熱は、250〜2500℃、好ましくは600〜1000℃の温度で行うことができる。例えば、H
2OおよびCO
2を試薬として用いる場合、試薬の濃度は、水の場合には45〜245ppmの間、好ましくは125〜185ppmの間にし、CO
2の場合には2000〜6000ppmの間、好ましくは約2500ppmにすることができる。このようにして1フラーレン/nmより高いフラーレン密度にすることができる。1種または複数種の試薬の特定濃度でも、加熱温度に最適範囲があることを見出すことができる。
【0081】
炭素源の分解/不均化の過程を触媒する種々の触媒材料(触媒粒子)を使用できる。
用いる触媒粒子は、例えば、種々の金属および/または非金属の材料を含んでよい。好ましい触媒粒子は、1種類の金属、好ましくは1種類の遷移金属および/または金属(複数種)および/または遷移金属(複数種)の組み合わせを含む。触媒粒子は、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン、パラジウムおよび/または他の任意の類似元素を含むことが好ましい。触媒粒子は、化学前駆物質(例えば、フェロセン)から、例えば、フェロセン蒸気の熱分解によって形成させることができる。触媒粒子は、金属または金属含有物質を加熱することにより製造できる。
【0082】
触媒粒子/触媒前駆物質は、10〜10000ccm、好ましくは50〜1000ccm(例えば、約100ccm)の割合で反応器に導入できる。
本発明による方法に用いる触媒粒子は、種々の方法で製造できる。そのような方法の例としては、例えば、触媒前駆物質の化学蒸気分解(chemical vapor decomposition)、物理的蒸気核形成(physical vapor nucleation)がある。また、他の方法としては、触媒粒子は、例えば、エレクトロスプレー、超音波噴霧、空気噴霧などによって、例えば、金属塩溶液並びにコロイド状金属ナノ粒子溶液から作られる液滴から製造できるか、あるいは、熱乾燥および分解および/または任意の他の適用可能な方法および/またはプロセスおよび/または材料を使用して製造できる。粒子を製造するための他の任意の手順、例えば、ノズル内での断熱膨張、アーク放電および/またはエレクトロスプレーシステムも、触媒粒子の形成に使用できる。熱ワイヤー式発生器(hot wire generator)を触媒粒子の製造に使用することもできる。本発明によれば、金属蒸気を発生させるために金属を含有した塊を加熱および/または蒸発させる他の手段も可能である。
【0083】
触媒粒子はあらかじめ合成しておくこともでき、それから反応器に導入することができる。しかし、一般に、CBFFCNTの製造に必要な粒度範囲の粒子は、取り扱いおよび/または貯蔵が困難なので、製造プロセスにおける統合ステップとして反応器の近くで粒子を製造することが好ましい。
エアロゾルおよび/または表面担持の触媒粒子を、フラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造に使用できる。触媒粒子前駆物質を触媒粒子の製造に使用できる。
基材担持のフラーレン官能基化カーボンナノチューブの製造の場合、触媒粒子は基材上で直接製造することができ、および/または、拡散、熱泳動(thermophoresis)、電気泳動、慣性衝突および/または他の任意の手段によって気相から析出させることができる。
触媒粒子の化学的製造方法の場合、金属有機化合物、有機金属化合物および/または無機化合物、例えば、メタロセン化合物、カルボニル化合物、キレート化合物および/または他の任意の好適な化合物を、触媒前駆物質として使用できる。
【0084】
触媒粒子の物理的製造方法の場合、例えば、純金属またはその金属の合金を、抵抗加熱、誘導加熱、プラズマ加熱、伝導加熱もしくは放射加熱、または、化学反応などの種々のエネルギー源を用いて蒸発させ(ここで、生成された触媒蒸気の濃度は、放出の場所での核形成に必要なレベルより低い)、その後で過飽和蒸気から核形成、凝縮、および/または凝結させることができる。物理的方法において触媒粒子の形成につながる過飽和蒸気の生成手段としては、例えば、抵抗加熱されたワイヤーの回りでの対流熱伝達、伝導性熱伝達および/または放射熱伝達および/または(例えば、ノズル内の)断熱膨張による気体冷却がある。
【0085】
触媒粒子の熱分解製造方法の場合、例えば、種々の金属および/または他の任意の好適な物質の硝酸塩、炭酸塩、塩化物および/またはフッ化物などの、無機塩を使用できる。
本発明の方法は、1種または複数種の追加試薬を導入するステップをさらに含むことができる。追加試薬は、カーボンナノチューブの形成を促進するため、炭素源の分解速度を変化させるため、カーボンナノチューブの製造中および/または製造後の無定形炭素と反応させるため、および/または(例えば、カーボンナノチューブの精製、ドーピングおよび/またはさらなる官能基化のために)カーボンナノチューブと反応させるために使用できる。触媒粒子前駆物質、触媒粒子、炭素源、無定形炭素および/またはカーボンナノチューブ(1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子が共有結合しているもの)との化学反応に関与させるための追加試薬を、本発明に従って使用できる。1種または複数種の追加試薬は、炭素源と一緒または別個に導入できる。
【0086】
本発明によるCBFFCNT形成用の促進剤(すなわち、追加試薬)として、硫黄、リンおよび/または窒素元素および/またはそれらの化合物(チオフェン、PH
3、NH
3など)などの追加試薬を使用できる。追加の促進剤試薬は、H
2O、CO
2、NOおよび/または任意の他の好適な元素および/または化合物から選択できる。
精製工程では、場合によっては、例えば、望ましくない無定形炭素コーティングおよび/またはCBFFCNT内に封入された触媒粒子を除去する必要がありうる。本発明では、1つまたは複数の加熱される別個の反応器/反応器セクションを設けることが可能であり、1つの反応器または反応器の1つのセクションはCBFFCNTを製造するのに使用し、残りのもの(1つまたは複数)は、例えば、さらなる精製、さらなる官能基化および/またはドーピングに使用する。上記のステップを組み合わせることも可能である。
無定形炭素を除去するための化学物質として、任意の化合物、その化合物の誘導体および/またはその化合物の分解生成物(反応器中においてその場で形成される)を使用できるが、それは好ましくは、黒鉛化炭素とではなく無定形炭素と反応する。そのような試薬の例として、1種または複数種のアルコール、ケトン、有機酸および/または無機酸を使用できる。さらに、H
2O、CO
2および/またはNOなどの酸化剤を使用できる。本発明によれば、他の追加試薬も可能である。
【0087】
1つの実施態様では、CBFFCNTをさらに官能基化するために1種または複数種の追加試薬を使用できる。CBFFCNTに付着する化学基および/またはナノ粒子により、製造されるCBFFCNTの性質が変わる。例として、ホウ素、窒素、リチウム、ナトリウム、および/またはカリウム元素によってCBFFCNTをドーピングすると、CBFFCNTの伝導率が変化する。すなわち、超伝導性を有するCBFFCNTが得られる。フラーレンによってカーボンナノチューブを官能基化すると、付着したフラーレンによってカーボンナノチューブのさらなる官能基化が可能になる。本発明では、CBFFCNTの形成前、その形成中、および/またはその形成の後に適切な試薬を導入することにより、その場で官能基化および/またはドーピングを行うことができる。
【0088】
1つの実施態様では、1種または複数種の追加試薬は、炭素源、キャリヤーガスおよび/または触媒粒子源としても振る舞うことができる。
1つの実施態様では、この方法は、1種または複数種の添加剤を反応器に導入してフラーレン官能基化カーボンナノチューブ複合材料を製造するステップをさらに含む。例えば、製造されたCBFFCNTをコーティングし、および/または、CBFFCNTと混合して、CBFFCNT複合材を作るために、1種または複数種の添加剤を使用できる。添加剤の目的は、例えば、マトリックスに付着したCBFFCNTの触媒効率を増大させること、および/または、マトリックスの性質(硬さ、剛性、化学反応性、光学特性および/または熱伝導率および/または電気伝導率および/または膨張係数など)を制御することである。CBFFCNT複合材料用のコーティングまたはエアロゾル化粒子添加剤として、好ましくは1種または複数種の金属含有材料および/または有機材料(ポリマーなど)および/またはセラミック、溶剤および/またはそれらのエアロゾルを使用できる。本発明によれば、他の任意の好適な添加剤も使用できる。
得られた複合材は、例えば、直接回収し、マトリックスに付着させ、および/または表面上に付着させることができる。これは、電気力、熱泳動(thermophoretic)力、慣性力、拡散力、乱流移動(turbophoretic)力、重力および/または他の好適な力によって行って、例えば、厚膜または薄膜、糸、構造体および/または層状材料を形成させることができる。CBFFCNTは、1種または複数種の添加する固体または液体および/または固体または液体粒子によってコーティングして、CBFFCNT複合材を構成することができる。
【0089】
添加剤は、例えば、過飽和蒸気の凝縮、すでに付着している層との化学反応、ドープ剤および/または官能基により、および/または他の手段によって、あるいは添加剤が粒子である場合、気相中で混合および凝集させて、CBFFCNT上に表面コーティングとして付着させることができる。さらに、CBFFCNTへの気体および粒子の付着を組み合わせることができる。
【0090】
1つの実施態様では、反応器へ上記の物質を導入するのに、必要に応じて1種または複数種のキャリヤーガスを使用することができる。キャリヤーガスは、所望される場合には、炭素源、触媒粒子源、試薬源および/または追加試薬源として機能することもできる。
1つの実施態様では、この方法は、固体、液体または気体の分散体(dispersion)、固体構造体、粉末、ペースト、コロイド懸濁液として、および/または表面付着物として、製造された1種または複数種のフラーレン官能基化カーボンナノチューブおよび/またはフラーレン官能基化カーボンナノチューブ複合材料を回収するステップをさらに含む。
1つの実施態様では、この方法は、製造されたフラーレン官能基化カーボンナノチューブおよび/またはフラーレン官能基化カーボンナノチューブ複合材料の分散体、例えば、気体分散体を、表面上および/またはマトリックスおよび/または層状構造体および/またはデバイスの中に付着させるステップをさらに含む。
種々の手段(慣性衝突、熱泳動および/または電界内での移動が含まれるが、これらに限定されない)により、合成された材料の付着の制御を行って、電気伝導率および/または熱伝導率、不透明度および/または機械的強度、硬さおよび/または延性などの所望の性質を有する、所望の形状(例えば、糸、点、膜または三次元構造体)に形成させることができる。合成された材料の付着の制御を行う手段として、電気伝導率および/または熱伝導率、不透明度および/または機械的強度、硬さおよび/または延性などの所望の性質を有する所望の形状(例えば、糸、点または膜)を形成させる、重力沈降、ファイバーおよびバリヤー濾過、慣性衝突、熱泳動および/または電界内での移動がさらにあるが、これらに限定されない。
【0091】
以下、1種または複数種のフラーレン官能基化カーボンナノチューブを製造するための装置について述べる。その装置は、1種または複数種の触媒粒子、炭素源および/または試薬を加熱するための反応器を具備し、その加熱は、1種または複数種のカーボンナノチューブに共有結合した1種または複数種のフラーレンおよび/またはフラーレン系分子を含んだ1種または複数種のカーボンナノチューブを製造するために行われる。
かかる装置は、触媒粒子の製造手段;1種または複数種の触媒粒子の導入手段;1種または複数種の触媒粒子前駆物質の導入手段;1種または複数種の炭素源の導入手段;1種または複数種の炭素源前駆物質の導入手段;1種または複数種の試薬の導入手段;1種または複数種の試薬前駆物質の導入手段;1種または複数種の追加試薬の導入手段;1種または複数種の添加剤の導入手段;製造された1種または複数種のフラーレン官能基化カーボンナノチューブおよび/またはフラーレン官能基化カーボンナノチューブ複合材料の回収手段;製造されたフラーレン官能基化カーボンナノチューブおよび/またはカーボンナノチューブ複合材料の分散体(例えば、気体分散体)を付着させる手段;触媒粒子の製造手段および/または反応器へエネルギーを供給する手段の、1つまたはそれ以上をさらに具備することができる。上記の種々の材料を、例えば、反応器および/または装置の他の任意の部分へ導入するのに使用される手段は、例えば、1つの同じ手段または種々の手段を具備することができる。例えば、本発明の1つの実施態様では、1種または複数種の炭素源および試薬は、1つの同じ手段を用いて反応器に導入することができる。さらに、必要に応じて,装置は反応器内に混合手段を具備することができる。
【0092】
装置は、1つまたは複数の反応器を具備することができ、それによって、CBFFCNT、さらに官能基化されたCBFFCNT、ドーピングされたCBFFCNTおよび/またはそれらのCBFFCNTの複合材料の連続製造および/またはバッチ製造が可能である。反応器の構成は、直列および/または並列にして、種々の最終組成物を得ることができる。さらに、反応器は、完全なバッチ手順または部分的なバッチ手順で操作することができる。
【0093】
反応器は、例えば管、例えば、セラミック材料、鉄、ステンレス鋼および/または任意の他の好適な材料を含む管を具備することができる。本発明の1つの実施態様では、反応器の表面は、反応器に(例えば、上流で)導入される1種または複数種の試薬前駆物質から、CBFFCNTの製造に必要な1種または複数種の試薬を触媒的に製造する材料を含んでなることができる。
【0094】
1つの実施態様では、管の内径は、例えば、0.1〜200cm、好ましくは1.5〜3cmにすることができ、管の長さは、例えば、1〜2000cm、好ましくは25〜200cmにすることができる。任意の他の寸法(例えば、工業的用途におけるもの)も適用できる。
【0095】
本発明による装置を使用する場合、反応器内の作業圧力は、例えば、0.1〜10気圧,好ましくは0.5〜2気圧(例えば、約1気圧)にすることができる。さらに、反応器内の温度は、250〜2500℃、例えば、600〜1000℃にすることができる。
【0096】
触媒粒子の製造手段は、例えば、予備反応器(pre‐reactor)を具備することができる。この手段は、例えば、熱ワイヤー式発生器を具備することができる。装置は、触媒粒子を製造するための他の任意の好適な手段をさらに具備することができる。この手段は、反応器とは間隔をあけて分離することができる。あるいは、反応器に組み込まれた一部にすることもできる。本発明による装置を使用する場合、触媒粒子の製造手段は、例えば、反応器温度が250〜2500℃、好ましくは350〜900℃となる場所に置くことができる。
【0097】
1つの好ましい実施態様では、例えば、予備反応器(例えば、熱ワイヤー式発生器)を通過する流れは、好ましくは水素と窒素の混合物であり、ここで水素の率は好ましくは1%から99%の間、より好ましくは5から50%の間、もっとも好ましくはおよそ7%である。流量、例えば、熱ワイヤー式発生器中を通過する流量は、1〜10000ccm、好ましくは250〜600ccmにすることができる。
【0098】
本発明によれば、種々のエネルギー源を用いて、例えば、化学反応および/またはCBFFCNT合成を、例えば、促進し、および/または妨げることができる。例として、抵抗、伝導、放射および/または原子力および/または化学反応で加熱された反応器および/または予備反応器があるが、これらに限定されない。その他のエネルギー源を反応器および/または予備反応器に使用することもできる。例えば、高周波、マイクロ波、音、レーザーによる誘導加熱および/またはその他の何らかのエネルギー源(化学反応など)を使用できる。
【0099】
<ハードコート層>
ハードコート層は、上記導電層に隣接して配置される層であり、導電層の傷付きを防止する機能を有する。ハードコート層は、上記導電層上に隣接して配置される。つまり、ハードコート層と導電層とは接している。
ハードコート層を形成することで導電性フィルムの鉛筆硬度が上昇する。実用的には、ハードコート層積層後の鉛筆硬度(JIS K5400)はH以上が好ましく、更に好ましくは2H以上であり、最も好ましくは3H以上である。
ハードコート層の厚みは、0.4〜35μmが好ましく、1〜30μmがより好ましく、1.5〜20μmがさらに好ましい。
ハードコート層は1層でも複数でもかまわない。ハードコート層が複数層の場合、全てのハードコート層の膜厚の合計が上位範囲であることが好ましい。
また、必要に応じて、表面凹凸や内部散乱付与のためにハードコート層に透光性粒子を含有させることもできる。
【0100】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、公知の方法が採用されるが、一般的には、所定の成分を含むハードコート層形成用組成物を導電層上に塗布して、必要に応じて、硬化処理(例えば、加熱処理および/または光照射処理)を実施する方法が挙げられる。
ハードコート層形成用組成物の態様においては、後段にて詳述する。
塗布方法としては、公知の塗布方法を採用し得る。例えば、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピナーコート等が挙げられる。
【0101】
ハードコート層形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、溶媒を除去するために、組成物の塗布層に対して乾燥処理を施してしてもよい。乾燥処理の方法は特に制限されず、風乾処理や、加熱処理などが挙げられる。
【0102】
上記塗布により得られた組成物の塗布層を重合硬化させる方法は特に制限されず、加熱処理または光照射処理などが挙げられる。
加熱処理の条件は使用される材料により異なるが、反応効率がより優れる点で、40〜200℃(好ましくは50〜150℃)で0.5分〜10分(好ましくは1分〜5分)処理することが好ましい。
【0103】
光照射処理の条件は特に制限されず、紫外線を発生させて照射して光硬化させるという紫外線照射法が好ましい。このような方法に用いる紫外線ランプとして、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、パルス型キセノンランプ、キセノン/水銀混合ランプ、低圧殺菌ランプ、無電極ランプが挙げられる。これらの紫外線ランプの中でも、メタルハライドランプまたは高圧水銀ランプを用いることが好ましい。
また、照射条件はそれぞれのランプの条件によって異なるが、通常、照射露光量は20〜10000mJ/cm
2の範囲であればよく、100〜3000mJ/cm
2の範囲であることが好ましい。
なお、前述の好ましい条件の範囲内で、条件を変更しつつ、段階的な加熱処理や光照射を行なってもよい。また、シワが発生しにくいフィルム温度を制御する目的でUV照射時に接触するロールの温度を制御してもよい。
【0104】
以下、ハードコート層を形成するために使用されるハードコート層形成用組成物の好適実施態様について詳述する。
【0105】
[ハードコート層形成用組成物(その1)]
本発明において、ハードコート層は、不飽和二重結合を有する化合物、重合開始剤、必要に応じて、透光性粒子、含フッ素またはシリコーン系化合物、溶剤を含有する組成物を、導電層上に直接または他の層を介して塗布・乾燥・硬化することにより形成することができる。
以下、ハードコート層形成用組成物(その1)に含まれる各成分について説明する。
【0106】
(不飽和二重結合を有する化合物)
ハードコート層形成用組成物には不飽和二重結合を有する化合物を含有することができる。不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。これらモノマーは、1または2官能のモノマーと3官能以上のモノマーを併用して用いることもできる。
【0107】
不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基およびC(O)OCH=CH
2が好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0108】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0109】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0110】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0111】
不飽和二重結合を有する化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、導電層との密着性、低カール、後述する含フッ素またはシリコーン系化合物の固定性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0112】
ハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の無機成分を除いた全固形分に対して、50質量%以上が好ましく、60〜99質量%がより好ましく、70〜99質量%が更に好ましく、80〜99質量%が特に好ましい。
【0113】
ハードコート層形成用組成物に、分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を有する化合物を用いることも好ましい。このような化合物を用いることで、ハードコート層に低透湿性を付与することができる。ハードコート性を高めるために、分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を2以上有する化合物を用いることがより好ましい。
ハードコート層形成用組成物が分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を有する化合物を含有する場合、分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を有する化合物はハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物中、1〜90質量%が好ましく、2〜80質量%がより好ましく、5〜70質量%がさらに好ましい。
【0114】
ハードコート層形成用組成物が分子内に環状脂肪族炭化水素と不飽和二重結合を有する化合物を含有する場合、更に5官能以上の(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
ハードコート層形成用組成物が更に、5官能以上の(メタ)アクリレートを含有する場合、5官能以上の(メタ)アクリレートは、ハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物中、1〜70質量%が好ましく、2〜60質量%がより好ましく、5〜50質量%が特に好ましい。
【0115】
(透光性粒子)
ハードコート層に透光性粒子を含有させることで、ハードコート層表面に凹凸形状を付与したり、内部ヘイズを付与したりすることもできる。
ハードコート層に用いることができる透光性粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子(屈折率1.49)、架橋ポリ(アクリル−スチレン)共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン樹脂粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、ポリスチレン粒子(屈折率1.60)、架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)、シリカ粒子(屈折率1.46)、アルミナ粒子(屈折率1.63)、ジルコニア粒子、チタニア粒子、または中空や細孔を有する粒子等が挙げられる。
なかでも、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられ、これらの粒子の中から選ばれた各透光性粒子の屈折率にあわせてバインダーの屈折率を調整することにより、ハードコート層に好適な表面凹凸、表面ヘイズ、内部ヘイズ、全ヘイズを達成することができる。バインダー(透光性樹脂)の屈折率は、1.45〜1.70が好ましく、1.48〜1.65がより好ましい。
また、透光性粒子と、ハードコート層のバインダーとの屈折率の差(「透光性粒子の屈折率」−「透光性粒子を除くハードコート層の屈折率」)は、絶対値として、好ましくは0.05未満であり、より好ましくは0.001〜0.030、更に好ましくは0.001〜0.020である。ハードコート層中の透光性粒子とバインダーとの屈折率の差を0.05未満にすると、透光性粒子による光の屈折角度が小さくなり、散乱光が広角まで広がらず、悪化作用が無く好ましい。
【0116】
上記の粒子とバインダーの屈折率差を実現するためには、透光性粒子の屈折率を調節しても、バインダーの屈折率を調節してもよい。
好ましい第1の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダー(硬化後の屈折率が1.50〜1.53)とアクリル含率50〜100質量パーセントである架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子を組み合わせて用いることが好ましい。低屈折率であるアクリル成分と高屈折率であるスチレン成分の組成比を調節することで、透光性粒子とバインダーとの屈折率差を0.05未満にすることが容易である。アクリル成分とスチレン成分の比率は質量比で50/50〜100/0が好ましく、更に好ましくは60/40〜100/0であり、最も好ましくは65/35〜90/10である。架橋ポリ(メタ)アクリレート/スチレン重合体からなる透光性粒子の屈折率としては、1.49〜1.55が好ましく、更に好ましくは1.50〜1.54であり、最も好ましくは1.51〜1.53である。
好ましい第2の態様としては、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを主成分としたバインダーに対して、1〜100nmの平均粒子サイズの無機微粒子を併用することで、モノマーと無機微粒子からなるバインダーの屈折率を調節し、既存の透光性粒子との屈折率差を調節するものである。無機粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物、具体例としては、SiO
2、ZrO
2、TiO
2、Al
2O
3、In
2O
3、ZnO、SnO
2、Sb
2O
3、ITO等が挙げられる。好ましくは、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3などが挙げられる。これら無機粒子は、モノマーの総量に対して1〜90質量%の範囲で混合して用いることができ、好ましくは5〜65質量%である。
ここで、透光性粒子を除くハードコート層の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0117】
透光性粒子の平均粒径は、1.0〜12μmが好ましく、より好ましくは3.0〜12μm、更に好ましくは4.0〜10.0μm、最も好ましくは4.5〜8μmである。屈折率差および粒子サイズを上記範囲に設定することで、光の散乱角度分布が広角にまで広がらず、ディスプレイの文字ボケ、コントラスト低下を引き起こしにくい。添加する層の膜厚を厚くする必要がなく、カールやコスト上昇といった問題が生じにくい点で、12μm以下が好ましい。更に上記範囲内にすることは、塗工時の塗布量を抑えられ、乾燥が速く、乾燥ムラ等の面状欠陥を生じにくい点でも好ましい。
透光性粒子の平均粒径の測定方法は、粒子の平均粒径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、好ましくは透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とできる。
【0118】
透光性粒子の形状は特に限定されないが、真球状粒子の他に、異形粒子(例えば、非真球状粒子)といった形状の異なる透光性粒子を併用して用いてもよい。特に非真球状粒子の短軸をハードコート層の法線方向にそろえると、真球粒子に比べ、粒子径が小さなものが使用できるようになる。
【0119】
透光性粒子は、ハードコート層全固形分中に0.1〜40質量%含有されるように配合されることが好ましい。より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%、である。透光性粒子の配合比を上記範囲にすることで内部ヘイズを好ましい範囲に制御することができる。
また、透光性粒子の塗布量は、好ましくは10〜2500mg/m
2、より好ましくは30〜2000mg/m
2、更に好ましくは100〜1500mg/m
2である。
【0120】
透光性粒子の製造法は、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、シード重合法等を挙げることができ、いずれの方法で製造されてもよい。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人社)130頁および146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜290、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、および特許第2543503号明細書、同第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0121】
透光性粒子の粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御、塗布面状の均質性から単分散性粒子が好ましい。粒子径の均一さを表すCV値は15%以下が好ましく、より好ましくは13%以下、更に好ましくは10%以下である。更に平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒度分布を持つ粒子は、調製または合成反応後に、分級することも有力な手段であり、分級の回数を上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。
分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
【0122】
(光重合開始剤)
ハードコート層形成用組成物には光重合開始剤を含有させることが好ましい。
ハードコート層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0123】
(紫外線吸収剤)
導電性フィルムは、タッチパネル付き表示装置の部材などに使用されるが、液晶等の劣化防止の観点から、UV硬化を阻害しない範囲でハードコート層に紫外線吸収剤を含有させることで、導電性フィルムに紫外線吸収性を付与することもできる。
【0124】
(溶剤)
ハードコート層形成用組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、モノマーの溶解性、透光性粒子の分散性、塗工時の乾燥性等を考慮し、各種溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−プチロラクトン、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、更に好ましくは40〜70質量%である。
【0125】
[ハードコート層形成用組成物(その2)]
次に、帯電防止反射防止フィルムに用いる(帯電防止性)ハードコート層形成用組成物について説明する。
以下、ハードコート層形成用組成物(その2)に含まれる各種成分について詳述する。
【0126】
(4級アンモニウム塩基を有する化合物)
本ハードコート層形成用組成物は、4級アンモニウム塩基を有する化合物を含有する。
4級アンモニウム塩基を有する化合物としては、低分子型または高分子型のいずれを用いることもできるが、ブリードアウト等による帯電防止性の変動がないことから高分子型のカチオン化合物がより好ましく用いられる。
高分子型の4級アンモニウム塩基を有するカチオン化合物としては、公知化合物の中から適宜選択して用いることができるが、イオン伝導性が高い観点から、4級アンモニウム塩基含有ポリマーであることが好ましく、下記一般式(I)〜(III)で表される構造単位の少なくとも1つの単位を有するポリマーが好ましい。
【0128】
一般式(I)中、R
1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはCH
2COO
−M
+を表す。Yは水素原子またはCOO
−M
+を表す。M
+はプロトンまたはカチオンを表す。Lは−CONH−、−COO−、−CO−またはO−を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、またはこれらを組み合わせてなる基を表す。Qは下記群Aから選ばれる基を表す。
【0130】
式中、R
2、R
2’およびR
2’’は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Jはアルキレン基、アリーレン基、またはこれらを組み合わせてなる基を表す。X
−はアニオンを表す。pおよびqは、それぞれ独立に、0または1を表す。
【0133】
一般式(II)中、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、アルキル基を表し、R
3とR
4およびR
5とR
6はそれぞれ互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。
一般式(II)中のAおよびB、並びに、一般式(III)中のDは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−R
7COR
8−、−R
9COOR
10OCOR
11−、−R
12OCR
13COOR
14−、−R
15−(OR
16)
m−、−R
17CONHR
18NHCOR
19−、−R
20OCONHR
21NHCOR
22−または−R
23NHCONHR
24NHCONHR
25−を表す。
一般式(III)中のEは、単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−R
7COR
8−、−R
9COOR
10OCOR
11−、−R
12OCR
13COOR
14−、−R
15−(OR
16)
m−、−R
17CONHR
18NHCOR
19−、−R
20OCONHR
21NHCOR
22−、−R
23NHCONHR
24NHCONHR
25−または−NHCOR
26CONH−を表す。R
7、R
8、R
9、R
11、R
12、R
14、R
15、R
16、R
17、R
19、R
20、R
22、R
23、R
25およびR
26はアルキレン基を表す。R
10、R
13、R
18、R
21およびR
24は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基およびアルキレンアリーレン基から選ばれる連結基を表す。mは1〜4の正の整数を表す。
X
‐はアニオンを表す。
Z
1、Z
2は−N=C−基と共に5員または6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、≡N
+[X
−]−なる4級塩の形でEに連結してもよい。
nは5〜300の整数を表す。
【0134】
一般式(I)〜(III)の基について説明する。
ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。
アルキル基は、炭素数1〜4の分岐または直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。
アルキレン基は、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
アリーレン基は、炭素数6〜15のアリーレン基が好ましく、フェニレン、ジフェニレン、フェニルメチレン基、フェニルジメチレン基、ナフチレン基がより好ましく、フェニルメチレン基が特に好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。
アルケニレン基は、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、アリーレンアルキレン基は、炭素数6〜12のアリーレンアルキレン基が好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。
各基に置換してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0135】
一般式(I)において、R
1は水素原子またはメチル基が好ましい。
Yは、好ましくは水素原子である。
Lは、好ましくは−COO−である。
Jは、好ましくはフェニルメチレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。
Qは、下記一般式(VI)で表される基であり、R
2、R
2’およびR
2’’は各々メチル基である。
X
−は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。
pおよびqは、好ましくは0または1であり、より好ましくはp=1、q=1である。
【0137】
一般式(II)において、R
3、R
4、R
5およびR
6は、好ましくは炭素数1〜4の置換または無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(II)中のAおよびB、並びに、一般式(III)中のDは、好ましくはそれぞれ独立に、炭素数2〜10の置換または無置換のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表し、好ましくはフェニルジメチレン基である。
X
−は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。
Eは、好ましくは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表す。
Z
1、Z
2が、−N=C−基と共に形成する5員または6員環としては、ジアゾニアビシクロオクタン環等を例示することができる。
【0138】
以下に、一般式(I)〜(III)で表される構造単位を有する化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、下記の具体例における添え字(m、x、y、rおよび実際の数値)の内、mは各ユニットの繰り返し単位数を表し、x、y、rは各々のユニットのモル比を表す。
【0144】
上記で例示した導電性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を併用して用いることもできる。また、帯電防止剤の分子内に重合性基を有する帯電防止化合物は、帯電防止層の耐擦傷性(膜強度)も高めることができるので、より好ましい。
【0145】
4級アンモニウム塩基を有する化合物としては、市販品を用いることもでき、例えば製品名「ライトエステルDQ−100」(共栄社化学(株)製)、製品名「リオデュラスLAS−1211」(東洋インキ製造(株)製)、製品名「紫光UV−AS−102」(日本合成化薬(株)製)、「NKオリゴU−601、201」(新中村化学(株)製)などが挙げられる。
【0146】
4級アンモニウム塩基含有ポリマーは、上記一般式(I)〜(III)で表される構造単位(イオン性構造単位)の他に、他の構造単位(繰り返し単位)を有していてもよい。4級アンモニウム塩基を有する化合物がイオン性構造単位以外の構造単位を持つことにより、組成物を作製する際に溶媒への溶解性、不飽和二重結合を有する化合物や光重合開始剤との相溶性を高めることができる。
【0147】
上記(I)〜(III)で表される構造単位以外の構造単位を導入するために使用される重合性化合物としては特に限定されないが、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノベンジルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノテトラデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノヘキサデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノオクタデシルエーテルポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートオクチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートオクタデシルエーテル、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートノニルフェニルエーテル等のアルキレンオキサイド鎖を有する化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートや、スチレン、メチルスチレン等から選ばれる重合性化合物およびその組み合わせが挙げられる。
【0148】
ハードコート層形成用組成物中の4級アンモニウム塩基を有する化合物の含有量は、帯電防止性を付与するのに十分な量でかつ膜硬度を減損しにくいという観点から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
【0149】
(不飽和二重結合を有する化合物)
ハードコート層形成用組成物には、不飽和二重結合を有する化合物を含有することができる。不飽和二重結合を有する化合物としては、上述した[ハードコート層形成用組成物(その1)]にて説明した化合物と同義である。
ハードコート層形成用組成物中の不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、40〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。
【0150】
(光重合開始剤)
ハードコート層形成用組成物は、光重合開始剤を含有することができる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、および好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、および、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0151】
ハードコート層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0152】
(溶剤)
ハードコート層形成用組成物は種々の有機溶剤を含有してもよい。
本発明においては、イオン伝導性化合物との相溶性得る観点で、親水性溶媒を含んでいることが好ましい。親水性溶媒としては、アルコール系溶媒、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒などが挙げられ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ジメチルカーボーネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルn−プロピルカーボネート、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、アセトン、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン等が挙げられ、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0153】
また、上記以外の溶剤を用いてもよい。例えば、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0154】
ハードコート層形成用組成物中の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、最も好ましくは40〜70質量%である。
【0155】
(界面活性剤)
ハードコート層形成用組成物には各種の界面活性剤を使用することも好適である。一般的に界面活性剤は乾燥風の局所的な分布による乾燥バラツキに起因する膜厚ムラ等を抑制したり、帯電防止層の表面凹凸や塗布物のハジキを改良できることがある。更には、帯電防止化合物の分散性を向上させることで、より安定で高い導電性を発現できる場合があり好適である。
界面活性剤としては、具体的には、フッ素系界面活性剤、または、シリコーン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、低分子化合物よりもオリゴマーやポリマーであることが好ましい。
【0156】
界面活性剤を添加すると、塗布された液膜の表面に界面活性剤が速やかに移動して偏在化し、膜乾燥後も界面活性剤がそのまま表面に偏在することになるので、界面活性剤を添加したハードコート層の表面エネルギーは、界面活性剤によって低下する。ハードコート層の膜厚不均一性やハジキ、ムラを防止するという観点からは、膜の表面エネルギーが低いことが好ましい。
【0157】
フッ素系界面活性剤としては、特に、ハジキ、ムラ等による点欠陥を防止する観点から、下記一般式(F1)で表されるフルオロ脂肪族基を含有するモノマーに由来する繰り返し単位と、下記一般式(F2)で表されるフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーに由来する繰り返し単位とを含むフルオロ脂肪族基含有共重合体が好ましい。
一般式(F1)
【0159】
(式中、R
0は水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基を表す。Lは2価の連結基を表す。nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式(F2)
【0161】
(式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基を表す。L
1は2価の連結基を表す。Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基、または置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
【0162】
一般式(F1)で表されるフルオロ脂肪族基を含有するモノマーは、下記一般式(F1−1)で表されるフルオロ脂肪族基を含有するモノマーであることも好ましい。
一般式(F1−1)
【0164】
(式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基を表す。Xは酸素原子、硫黄原、または−N(R
2)−を表す。mは1以上6以下の整数を表す。nは1以上18以下の整数を表す。R
2は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0165】
上記フルオロ脂肪族基含有共重合体の好ましい態様、および具体例は、特開2007−102206号公報の段落番号[0023]〜[0080]に記載されており、本発明においても同様である。
【0166】
シリコーン系界面活性剤の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはポリエーテル基、アルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アリール基、シンナモイル基、オキセタニル基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、などを含む基が挙げられる。
【0167】
分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることがより好ましく、1000〜30000であることが特に好ましく、1000〜20000であることが最も好ましい。
【0168】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学工業(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、““X22−164C”、“X−22−176D”、(以上商品名);チッソ(株)製の、“FM−7725”、“FM−5521”、“FM−6621”、(以上商品名);Gelest製の“DMS−U22”、“RMS−033”(以上商品名);東レ・ダウコーニング(株)製の“SH200”、“DC11PA”、 “ST80PA”、 “L7604”、“FZ−2105”、 “L−7604”、“Y−7006”、“SS−2801”、(以上商品名);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製の“TSF400” (商品名);などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
界面活性剤は、ハードコート層形成用組成物の全固形分中に0.01〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.01〜0.3質量%がより好ましい。
【0169】
なお、上述したハードコート層形成用組成物(その1)およびハードコート層形成用組成物(その2)以外にも、例えば、特開2012−78528号公報の感光性組成物を上記ハードコート層形成用組成物として使用してもよい。
【0170】
<導電性フィルムおよびその用途>
本発明の導電性フィルムは、上述した、支持体、導電層、および、ハードコート層を有する。
導電性フィルムのシート抵抗値は特に制限されないが、導電性がより優れる点で、10〜150Ω/□が好ましく、10〜100Ω/□がより好ましい。
シート抵抗値は、三菱ケミカルコーポレーションLoresta−GP(MCP−T600)を用いて、四探針法によりJIS K 7194に準拠して測定した値とする。
【0171】
なお、上述したように、導電性フィルムにはシワは存在しないことが望ましい。ハードコート層を形成後の導電性フィルムを透過光、反射光の環境下で目視観察し、視認できないレベルであれば実用上は問題とならない。実用上問題ない範囲を定量的に示す事は難しいが、例えば、非接触式のレーザー変位計(キーエンス社製LK−G5000)を用いて、表裏の膜厚測定を行う方法が挙げられる。即ち、任意の定点から導電性フィルムの幅方向に100mm以上の長さで表と裏の両方を個別に測定し、凹凸の平均的な周期(例えば、凹部間の距離)を求める。周期が100μ以下であることが望ましく、50μ以下が更に望ましく、10μm以下である事が最も望ましい。
導電性フィルムは、種々の用途に適用することができ、例えば、タッチパネル用(または、タッチパネルセンサー用)などが挙げられる。
【0172】
なお、上述した導電性フィルムは、偏光子を組み合わせて、偏光板として用いることができる。偏光子との貼合面は特に制約はなく、導電層側でもよいし、支持体側でもよい。また、接着に適した表面エネルギーに制御する目的で、コロナ処理等の公知の表面処理を行なってから接着してもよい。例えば、支持体としてセルロースアシレートを用いて、支持体側と偏光子を接着する場合にはセルロースアシレートの表面をけん化処理した後、接着してもよい。
以下、使用される偏光子について詳述する。
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材であればよく、吸収型偏光子および反射型偏光子を利用することができる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、およびポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第5048120号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
反射型偏光子としては、複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子、選択反射域を有するコレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた偏光子などが用いられる。
なかでも、後述する導電層との密着性がより優れる点で、ポリビニルアルコール系樹脂(特に、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つ)を含む偏光子であることが好ましい。
【0173】
偏光子の厚みは特に制限されないが、表示装置の薄型化の点から、35μm以下が好ましく、3〜30μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。
なお、上記厚みは平均値であり、任意の10点の偏光子の厚みを測定して、それらを算術平均した値である。
【0174】
(タッチパネル用途)
以下、導電性フィルムをタッチパネルに適用した場合の好適態様について詳述する。
上述した導電性フィルムは、タッチパネル(好ましくは、静電容量式タッチパネル)に好適に使用できる。より具体的には、タッチパネルを構成する部材として適用することができ、導電層は、静電容量の変化を感知する検出電極(センサー電極)や、検出電極に電圧を印加するため引き出し配線(周辺配線)などに好適に適用できる。
【0175】
(第1の実施態様)
以下、本発明の導電性フィルムを適用したタッチパネル付き表示装置の第1の実施態様について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明のタッチパネル付き表示装置の一例を示す概略断面図である。なお、
図1は、タッチパネル付き表示装置の層構成に対する理解を容易にするために模式的に表したものであり、各層の配置を正確に表した図面ではない。
【0176】
図1に例示するように、本発明のタッチパネル付き表示装置10は、保護基板12と、上部粘着層14と、第1ハードコート層16Aと、第1タッチパネル用導電層18Aと、支持体20と、第2タッチパネル用導電層18Bと、第2ハードコート層16Bと、下部粘着層22と、表示装置24とをこの順で有する。第1ハードコート層16A、第1タッチパネル用導電層18A、支持体20、第2タッチパネル用導電層18B、および、第2ハードコート層16Bは、導電性フィルム26を構成する。また、保護基板12と、上部粘着層14と、導電性フィルム26と、下部粘着層22とは、静電容量式タッチパネル28を構成する。後述するように、第1タッチパネル用導電層18Aおよび第2タッチパネル用導電層18Bには、上述したフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層が含まれる。つまり、上記導電性フィルム26は、本発明の導電性フィルムに該当する。
なお、このタッチパネル付き表示装置10においては、保護基板12表面(タッチ面)に指が近接、接触すると、指と導電性フィルム26中の検出電極との静電容量が変化する。ここで、図示しない位置検出ドライバは、指と検出電極との間の静電容量の変化を常に検出している。この位置検出ドライバは、所定値以上の静電容量の変化を検出すると、静電容量の変化が検出された位置を入力位置として検出する。このようにして、タッチパネル付き表示装置10は、入力位置を検出することができる。
以下、タッチパネルに含まれる各部材について詳述する。まず、導電性フィルム26について詳述する。
【0177】
図2に、導電性フィルム26の平面図を示す。
図3は、
図2中の切断線A−Aに沿って切断した断面図である。
導電性フィルム26は、支持体20と、支持体20の一方の主面上(表面上)に配置された第1タッチパネル用導電層18Aと、第1ハードコート層16Aと、支持体20の他方の主面上(裏面上)に配置される第2タッチパネル用導電層18Bと、第2ハードコート層16Bと、さらに、フレキシブルプリント配線板38とを有し、タッチパネルセンサーとして機能する。第1タッチパネル用導電層18Aは第1検出電極30および第1引き出し配線32を有し、第2タッチパネル用導電層18Bは第2検出電極34および第2引き出し配線36を有する。
第1検出電極30、第1引き出し配線32、第2検出電極34、および、第2引き出し配線36には、フラーレン官能基化カーボンナノチューブが含まれる。つまり、第1検出電極30、第1引き出し配線32、第2検出電極34、および、第2引き出し配線36が、上述した導電層に該当する。なお、本発明はこの態様に限定されず、第1検出電極30および第2検出電極34のみが、上述したフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層であってもよい。
また、第1ハードコート層16Aおよび第2ハードコート層16Bは、本発明の導電性フィルムに含まれるハードコート層に該当し、その態様は上述の通りである。
なお、第1検出電極30および第2検出電極34がある領域は、操作者によって入力操作が可能な入力領域E
I(物体の接触を検知可能な入力領域(センシング部))を構成し、入力領域E
Iの外側に位置する外側領域E
Oには第1引き出し配線32、第2引き出し配線36およびフレキシブルプリント配線板38が配置される。
【0178】
第1検出電極30および第2検出電極34は、静電容量の変化を感知するセンシング電極であり、感知部(センシング部)を構成する。つまり、指先をタッチパネルに接触させると、第1検出電極30および第2検出電極34の間の相互静電容量が変化し、この変化量に基づいて指先の位置をIC回路によって演算する。
第1検出電極30は、入力領域E
Iに接近した操作者の指のX方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指との間に静電容量を発生する機能を有している。第1検出電極30は、第1方向(X方向)に延び、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に所定の間隔をあけて配列された電極である。
第2検出電極34は、入力領域E
Iに接近した操作者の指のY方向における入力位置の検出を行う役割を有するものであり、指との間に静電容量を発生する機能を有している。第2検出電極34は、第2方向(Y方向)に延び、第1方向(X方向)に所定の間隔をあけて配列された電極である。
図2においては、第1検出電極30は5つ、第2検出電極34は5つ設けられているが、その数は特に制限されず複数あればよい。
【0179】
第1引き出し配線32および第2引き出し配線36は、それぞれ第1検出電極30および第2検出電極34に電圧を印加するための役割を担う部材である。
第1引き出し配線32は、外側領域E
Oの支持体20上に配置され、その一端が対応する第1検出電極30に電気的に接続され、その他端はフレキシブルプリント配線板38に電気的に接続される。
第2引き出し配線36は、外側領域E
Oの支持体20上に配置され、その一端が対応する第2検出電極34に電気的に接続され、その他端はフレキシブルプリント配線板38に電気的に接続される。
なお、
図2においては、第1引き出し配線32は5本、第2引き出し配線36は5本記載されているが、その数は特に制限されず、通常、検出電極の数に応じて複数配置される。
【0180】
フレキシブルプリント配線板38は、基板上に複数の配線および端子が設けられた板であり、第1引き出し配線32のそれぞれの他端および第2引き出し配線36のそれぞれの他端に接続され、導電性フィルム26と外部の装置(例えば、表示装置)とを接続する役割を果たす。
【0181】
保護基板12は、上部粘着層14上に配置される基板であり、外部環境から後述する導電性フィルム26や表示装置24を保護する役割を果たすと共に、その主面はタッチ面を構成する。保護基板として、透明基板であることが好ましく、プラスチック板(プラスチックフィルム)、ガラス板などが用いられる。基板の厚みはそれぞれの用途に応じて適宜選択することが望ましい。
また、保護基板12としては、偏光板、円偏光板などを用いてもよいし、複数の基板(例えば、ガラス板と偏光板)を組み合わせて使用してもよい。
【0182】
表示装置24は、画像を表示する表示面を有する装置であり、表示画面側に各部材(例えば、下部粘着層22)が配置される。なお、表示装置中には、装置を構成する各種部材(例えば、偏光板、カラーフィルタ、液晶セル、TFTBackplene、バックライトなど)が含まれる。
表示装置24の種類は特に制限されず、公知の表示装置を使用することができる。例えば、陰極線管(CRT)表示装置、液晶表示装置(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)表示装置、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)または電子ペーパー(E−Paper)などが挙げられる。
【0183】
上部粘着層14および下部粘着層22は、各部材間を接続する層であり、公知の粘着層を使用することができる。
【0184】
(第2の実施態様)
以下、本発明の導電性フィルムを適用したタッチパネル付き表示装置の第2の実施態様について、
図4を参照して説明する。
図4に例示するように、本発明のタッチパネル付き表示装置110は、保護基板12と、上部粘着層14と、第1ハードコート層16Aと、第3タッチパネル用導電層18Cと、支持体20と、下部粘着層22と、表示装置24とをこの順で有する。第1ハードコート層16A、第3タッチパネル用導電層18C、および、支持体20は、導電性フィルム126を構成する。また、保護基板12と、上部粘着層14と、導電性フィルム126と、下部粘着層22とは、静電容量式タッチパネル128を構成する。後述するように、第3タッチパネル用導電層18Cには、上述したフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層が含まれる。つまり、上記導電性フィルム126は、本発明の導電性フィルムに該当する。
図4に示すタッチパネル付き表示装置110は、第3タッチパネル用導電層18Cの点を除いて、
図1に示すタッチパネル付き表示装置10と同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略し、以下、主に、第3タッチパネル用導電層18Cについて詳述する。
【0185】
図5に、導電性フィルム126の平面図を示す。
図6は、
図5中の切断線B−Bに沿って切断した断面図である。
導電性フィルム126は、支持体20と、支持体20上に配置された第3タッチパネル用導電層18Cと、第3タッチパネル用導電層18C上に配置された第1ハードコート層16Aと、さらに、フレキシブルプリント配線板38とを有し、タッチパネルセンサーとして機能する。第3タッチパネル用導電層18Cは、第1の電極40、第2の電極42、第1の接続部44、第2の接続部46、絶縁層48、および、引き出し配線50を有する。
第1の電極40、第2の電極42および引き出し配線50には、フラーレン官能基化カーボンナノチューブが含まれる。つまり、第1の電極40、第2の電極42および引き出し配線50が、上述した導電層に該当する。なお、本発明はこの態様に限定されず、第3タッチパネル用導電層18Cが、上述したフラーレン官能基化カーボンナノチューブを含む導電層を有していればよく、第1の電極40、第2の電極42および引き出し配線50以外の第1の接続部44、および、第2の接続部46にも、フラーレン官能基化カーボンナノチューブが含まれていてもよい。
なお、以下に、第3タッチパネル用導電層18Cに含まれる各部材について詳述する。
【0186】
詳述すると、複数(
図5では4個)の第1の電極40がx方向(
図5では横方向)に直線状に並べられ、それぞれが第1の接続部44で連結され、第1の電極列をなしている。そして、この第1の電極列が支持体20上に平行に複数(
図5では4列)並べられている。この第1の電極列は、いわゆる検出電極に該当する。
また、複数(
図5では4個)の第2の電極42がx方向に直交するy方向(
図5では縦方向)に直線状に並べられ、それぞれが第2の接続部46で連結され、第2の電極列をなしている。そして、この第2の電極列が支持体20上に平行に複数(
図5では4列)並べられている。この第2の電極列は、いわゆる検出電極に該当する。
さらに、第1の接続部44と第2の接続部46とが重なるように上記第1の電極列と上記第2の電極列とが交差して配されているので、第1の電極40と第2の電極42とは支持体20上に格子状に配置されている。
さらに、第1の接続部44と第2の接続部46とが重なっているので、第1の接続部44と直交する第2の接続部46の導通を防止し絶縁するために、第1の接続部44と第2の接続部46との間に絶縁層48が介装されている。
さらに、第1の電極列と第2の電極列にそれぞれ接続する引き出し配線50が、支持体20上に配置されていて、これらの第1の電極40および第2の電極42とフレキシブルプリント配線板38とが引き出し配線50により接続されている。
なお、第1の電極40および第2の電極42がある領域は、操作者によって入力操作が可能な入力領域E
I(物体の接触を検知可能な入力領域(センシング部))を構成し、入力領域E
Iの外側に位置する外側領域E
Oには引き出し配線50、および、フレキシブルプリント配線板38が配置される。
【0187】
タッチパネル付き表示装置に含まれる導電性フィルムの態様は、上記態様に限定されず、他の態様であってもよい。
例えば、上述した第1の実施態様で述べた、支持体20と、支持体20の一方の主面上(表面上)に配置された第1タッチパネル用導電層18Aと、第1ハードコート層16Aとを備える片面導電層付き導電性フィルムを2枚用意して、第1タッチパネル用導電層18A中の第1検出電極30同士が直交する位置で、第1タッチパネル用導電層18A同士が対向するように、2枚の片面導電層付き導電性フィルムを粘着層にて貼り合せて得られる積層型導電性フィルムも、タッチパネルに好適に適用できる。
なお、2枚の片面導電層付き導電性フィルムを貼り合せる際には、一方の片面導電層付き導電性フィルムの第1タッチパネル用導電層18Aと、他方の片面導電層付き導電性フィルムの支持体20とが対向するように、2枚の片面導電層付き導電性フィルムを粘着層にて貼り合せてもよい。
【実施例】
【0188】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0189】
<実施例1>
(フラーレン官能基化カーボンナノチューブ(CBFFCNT)の合成)
触媒粒子源としてフェロセン、試薬(1種または複数種)として水蒸気および/または二酸化炭素を用い、炭素源としての一酸化炭素からのCBFFCNTの合成を行った。以下に、その条件を詳述する。
炭素源:CO。触媒粒子源:フェロセン(反応器内の蒸気分圧は0.7Pa)。使用炉温:800、1000、および、1150℃。使用流量:300ccmのCOの内部流(フェロセン蒸気を含む)および100ccmのCOの外部流。試薬:水蒸気(150および270ppm)および/または二酸化炭素(1500〜12000ppm)。
この合成は、特表2009−515804の
図3(a)に示す態様で実施した。この実施態様では、触媒粒子はその場でフェロセン蒸気分解によって成長した。室温のCOを、ガスボンベ(2)から(300ccmの流量で)フェロセン粉末を満たしたカートリッジ(4)を通過させることにより、前駆物質を蒸発させた。その後、フェロセン蒸気を含んだ流れを、水冷プローブ(5)を通してセラミック管反応器の高温ゾーンに導入し、100ccmの流量の追加のCO流れ(1)と混合した。
次に、酸化エッチング剤(例えば、水および/または二酸化炭素)を、炭素源と一緒に導入した。さらに、反応器内のフェロセンの蒸気分圧を0.7Paに維持した。その後、反応器の壁の設定温度は、800℃から1150℃まで変化させた。
エアロゾル生成物は、銀円板フィルターまたは透過型電子顕微鏡(TEM)のグリッドのいずれかによって反応器の下流で回収した。これらエアロゾル生成物中に、カーボンナノチューブとフラーレンが共有結合したCBFFCNTがあることが確認された。
【0190】
得られたエアロゾルを直径2.45cmのニトロセルロースのフィルターを用いて、フィルタリングすることで、フィルター上にCBFFCNTを含む導電層を作製した。なお、フィルタリングする際のフィルター表面の温度は45℃であった。
次に、フィルター上に配置された導電層を、支持体(市販のセルロールアシレートフィルムTD60UL(富士フイルム(株)製)、厚み:60μm)上に転写して、支持体上に導電層(厚み:9μm)を配置した。
【0191】
次に、得られた導電層上に、以下に記載の方法によりハードコート層(厚み:6μm)を作製し、導電性フィルムを得た。
(ハードコート層作製手順)
イルガキュア184(光重合開始剤、BASFジャパン社製)4質量部を、メチルエチルケトン(MEK)/メチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶剤中に添加して攪拌し溶解させて、最終固形分が40質量%の溶液を調製した。この溶液に、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とU−4HA(4官能ウレタンオリゴマー、重量平均分子量600、新中村化学社製)とU−15HA(15官能ウレタンオリゴマー、重量平均分子量2300、新中村化学社製)とポリマー(7975−D41、アクリル二重結合当量250、重量平均分子量15000、日立化成工業社製)を、固形分比で、25質量部:25質量部:40質量部:10質量部となるように添加して攪拌した。この溶液に、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)を固形分比で0.2質量部添加して撹拌し、ハードコート層形成用組成物を調製した。
このハードコート層形成用組成物を、導電層上に、スリットリバースコートにより塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を70℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量150mJ/cm
2で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成した。
【0192】
<実施例2〜11および比較例2>
実施例1にして使用した支持体の種類を変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性フィルムを得た。
【0193】
<比較例1>
支持体としてPET(東洋紡(株)社製コスモシャイン)基板を使用し、かつ、CBFFCNTを含む導電層を作製する代わりに、以下の手順に従って、ITO層を作製した以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性フィルムを得た。
【0194】
(ITO層作製)
PET(東洋紡(株)社製コスモシャイン)基板にAr流量300sccm、出力700V/0.05Aにてプラズマ処理を施し、スパッタリング装置内に配置し、真空排気を行いながらローラーを140℃に加熱し、圧力を2×10
-1Paに保持し、アルゴンガスおよび酸素ガス流入下で、ターゲットとして質量比In
2O
3/SnO
3=90/10の酸化物混合体を用いたスパッタリングにより、PET基板のプラズマ処理を施した面に、ITOからなる透明導電層を厚さ200オングストロームで積層して、導電層を得た。
【0195】
<比較例3>
支持体としてT25UL(セルロースアシレートフィルム、富士フイルム(株)社製、膜厚25μm)を使用し、かつ、CBFFCNTを含む導電層を作製しなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、導電性フィルムを得た。
【0196】
上記で得られた各実施例および比較例の導電性フィルムを用いて、以下の評価を実施した。なお、得られた結果は表1にまとめて示す。
【0197】
<平坦性評価>
作製した導電性フィルム(実施例1〜11、比較例3)を、ハードコート層を上(空気側)にして平滑な机上にセットした。上部から白色光を当てて反射法でフィルム面状を観察し、目視によりシワの有無を判別した。シワがなく、平坦性に優れる場合を「A」、シワが確認でき、平坦性に劣る場合を「B」とした。
【0198】
<光透過率測定(全光線透過率測定)>
光透過率は、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0199】
<シート抵抗値測定>
作製した導電性フィルムから80mm×50mmのサンプルを切り出し、三菱ケミカルコーポレーションLoresta−GP(MCP−T600)を用いて、四探針法によりJIS K 7194に準拠して、シート抵抗値を測定した。
【0200】
表1中、「CNB」とは、フラーレン官能基化カーボンナノチューブを用いて導電層を作製したことを意図し、「ITO」とは、酸化インジウムスズを用いて導電層を作製したことを意図する。
【0201】
【表1】
【0202】
表1中の「支持体」欄に記載の各記号で表される支持体の種類を以下に示す。
・TD40:セルロースアシレートフィルム(フジタックTD40UC、富士フイルム(株)製)
・T25:セルロースアシレートフィルム(T25UL,富士フイルム(株)製)
・TG40:セルロースアシレートフィルム(フジタックTG40UL、富士フイルム(株)製)
・TJ25:セルロースアシレートフィルム(フジタックTJ25UL、富士フイルム(株)製)
・ZRD40:セルロースアシレートフィルム(フジタックZRD40、富士フイルム(株)製)
・アクリル:アクリルフィルム(テクノロイS001G,住友化学(株)製)
・シクロオレフィン:シクロオレフィンフィルム(ZF14,日本ゼオン(株)製)
・PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡(株)製コスモシャイン)
【0203】
(サンプルAの作製方法)
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
----------------------------------------------------------------
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
エステルオリゴマーA 10質量部
下記の添加剤B 4質量部
紫外線吸収剤C 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶媒) 64質量部
----------------------------------------------------------------
【0204】
(エステルオリゴマーA)
芳香族ジカルボン酸(アジピン酸:フタル酸比率3:7)とジオール(エチレングリコール)の共重合体(末端はアセチル基)。分子量1000
【0205】
(添加剤B)
【化1】
【0206】
(紫外線吸収剤C)
【化1】
【0207】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアセテート溶液を調製した。
----------------------------------------------------------------
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶媒) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
----------------------------------------------------------------
【0208】
(セルロースアシレートフィルムの作製)
コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、残留溶剤が3〜15%の状態で、横方向に1.1倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚さ40μmのセルロースアシレートフィルム(サンプルA)を作製した。
【0209】
(サンプルB)
膜厚を15μmに調整したこと以外はサンプルAと同様に製膜し、サンプルBを作製した。
【0210】
(サンプルC)
下記の素材を使用し、フィルム作製を行なった。
ペレット状のアートン(JSR製、Tg 120℃) 20質量部
添加剤1(スミライザーGP(住友化学製)) 0.1質量%
マット剤1(二酸化ケイ素微粒子(粒子サイズ20nm)) 0.02質量%
なお、上記「質量%」は、添加剤1(または、マット剤1)のアートン全質量に対する、割合(質量%)を表す。
【0211】
(フィルムの作製)
混練押出し機で、260℃で溶融し、ギアポンプから押し出された溶融樹脂は、ろ過精度5μmのリーフディスクフィルターでろ過した。続いて、スリット間隔1.0mm、260℃のハンガーコートダイから、ガラス転移温度Tgに設定したキャストロール(CR)上に溶融樹脂を押出し、クラウン形状のタッチロールを接触させた。なお、タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した(但し、薄肉金属外筒厚みは3mmとした)。この後、続けてTg+5℃、Tg−10℃に温度を設定したキャストロールを通過させた。
続いて、一対のニップロールを有する延伸ゾーンで搬送方向に延伸し、さらにTg+40℃で熱緩和した後、両端(全幅の各5%)をトリミングして、所望のフィルムを得た。なお、レタデーションは延伸温度を調整して制御した。
【0212】
表1に示すように、本発明の導電性フィルムは、平坦性に優れると共に、光透過性にも優れていた。
一方、所定の支持体を使用していない比較例1および2においては光透過性が劣っており、所定の導電層を用いていない比較例3においては平坦性に劣っていた。
【0213】
<実施例13:タッチパネルの作製>
実施例1の手順に従って、支持体の両面に導電層を配置した。その後、後述する手順に従って、
図2に示すような、第1検出電極、第1引き出し配線、第2検出電極、および、第2引き出し配線に位置する部分の導電層のみを残して、他の導電層をエッチングにより除去した。その後、実施例1の手順に従って、パターン状の導電層上にハードコート層をそれぞれ配置して、導電性フィルムを得た。
なお、第1検出電極の長さは170mmであり、本数は32本であり、第2検出電極の長さは300mmであり、本数は56本であった。
次に、得られた導電性フィルムと共に、保護基板、上部粘着層、導電性フィルム、下部粘着層、および、液晶表示装置を用いて、
図1に示すような積層順にて貼り合せて、タッチパネル付き表示装置を得た。
【0214】
(導電層のエッチング方法)
支持体上に配置された導電層に対して、紫外線レーザーを用いたレーザーエッチング法(例えば、WO2013/176155参照)で、所望のパターンを形成した。
【0215】
なお、上記では、支持体上に導電層を配置してエッチング処理を施し、その後、パターン状の導電層上にハードコート層を配置したが、それ以外にも、支持体上に導電層およびハードコート層を配置した後、上記エッチング方法にて所定のパターン状の導電層を作製して、上記手順に従って、タッチパネル付き表示装置を作製した。
【0216】
また、支持体の一方の面上に導電層は配置して、上記導電層のエッチングパターンを変えて、
図5に示す、第3タッチパネル用導電層18Cに示すパターンに変更した以外は、上記手順に従って、
図4に示すタッチパネル付き表示装置を得た。