特許第6246393号(P6246393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246393
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置、設置方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20171204BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20171204BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20171204BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20171204BHJP
   H01J 37/248 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H01J37/28 B
   H01J37/16
   H01J37/09 Z
   H01J37/18
   H01J37/248 C
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-564285(P2016-564285)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2016056694
(87)【国際公開番号】WO2016174921
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-91732(P2015-91732)
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】藪 修平
(72)【発明者】
【氏名】古賀 直人
(72)【発明者】
【氏名】赤津 光男
(72)【発明者】
【氏名】高平 功
(72)【発明者】
【氏名】富田 真一
(72)【発明者】
【氏名】能田 弘行
(72)【発明者】
【氏名】増田 藍
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55-96558(JP,U)
【文献】 実開昭61-79450(JP,U)
【文献】 特開平9-82258(JP,A)
【文献】 特開2007-3397(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013323(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/061625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/16
H01J 37/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ユニットと補助ユニットを有する荷電粒子線装置であって、
前記本体ユニットは、
荷電粒子を生成する荷電粒子源、
前記荷電粒子を試料に対して照射する光学系、
前記試料を載置する試料ステージ、
前記試料ステージを収容する試料室、
を収容し、
前記補助ユニットは、
前記本体ユニットに対して電力を供給する電源部を収容し、
前記補助ユニットの上に前記本体ユニットを着脱できるように構成されている
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記本体ユニットの底面面積は、前記補助ユニットの上面面積以下に構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記補助ユニットの上に前記本体ユニットを載置したときに、前記試料ステージの試料設置位置が地面から505〜800mmの位置にある
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
前記補助ユニットは、前記補助ユニットを床面に載置した状態で運搬するための運搬部品を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項5】
前記補助ユニットと設置面との間に前記補助ユニットに対して加えられる振動を抑制する制振機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記荷電粒子線装置は、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置したとき前記本体ユニットと前記補助ユニットを締結する締結部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項7】
前記荷電粒子線装置は、前記光学系と前記試料室を排気する排気装置を備え、
前記補助ユニットは、前記排気装置を収容する空間を有する
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項8】
前記本体ユニットは、前記本体ユニットの振動が前記試料室に対して伝搬することを抑制する防振部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項9】
前記防振部材は、前記試料室の側面に配置されている
ことを特徴とする請求項8記載の荷電粒子線装置。
【請求項10】
前記本体ユニットは、搬送機器が前記本体ユニットを搬送するとき使用するリフトアームをガイドするガイド機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項11】
前記補助ユニットは、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置するとき前記本体ユニットを位置決めする位置決め部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項12】
前記荷電粒子線装置は、前記光学系と前記試料室を排気する排気装置を備えるとともに、前記排気装置と前記光学系および前記排気装置と前記試料室を接続する排気管を備え、
前記本体ユニットは、前記排気装置と前記排気管を収容し、
前記荷電粒子線装置はさらに、一端が前記試料室に接続され、他端が前記排気管に接続された排気管支持部材を備える
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項13】
前記荷電粒子線装置はさらに、
前記本体ユニットと前記補助ユニットとの間に配置されるオプションユニット、
前記本体ユニットと前記オプションユニットを締結する部材、
前記補助ユニットと前記オプションユニットを締結する部材、
を備えることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項14】
前記オプションユニットは、前記荷電粒子線装置が提供する機能を実装した装置のうち前記本体ユニットと前記補助ユニットのいずれも収容していないものを収容する
ことを特徴とする請求項13記載の荷電粒子線装置。
【請求項15】
補助ユニットの上に本体ユニットを着脱できるように構成されている荷電粒子線装置の設置方法であって、
荷電粒子を生成する荷電粒子源、前記荷電粒子を試料に対して照射する光学系、前記試料を載置する試料ステージ、および前記試料ステージを収容する試料室、を収容する前記本体ユニットと、前記本体ユニットに対して電力を供給する電源部を収容する前記補助ユニットを分離して個別に、または前記補助ユニットの上に前記本体ユニットを載置して、設置場所に対して搬送する搬送ステップ、
前記本体ユニットと前記補助ユニットを前記設置場所においてそれぞれ設置する設置ステップ、
を有することを特徴とする設置方法。
【請求項16】
前記搬送ステップにおいては、前記本体ユニットと前記補助ユニットを分離して個別に搬送し、
前記設置ステップにおいては、前記本体ユニットと前記補助ユニットを分離したままそれぞれ設置する
ことを特徴とする請求項15記載の設置方法。
【請求項17】
前記搬送ステップにおいては、前記本体ユニットと前記補助ユニットを分離して個別に搬送し、
前記設置ステップにおいては、前記補助ユニットを前記設置場所において設置した後、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置する
ことを特徴とする請求項15記載の設置方法。
【請求項18】
前記搬送ステップにおいては、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置した状態で前記荷電粒子線装置を搬送し、
前記設置ステップにおいては、前記本体ユニットと前記補助ユニットを分離して個別に設置する
ことを特徴とする請求項15記載の設置方法。
【請求項19】
前記搬送ステップにおいては、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置した状態で前記荷電粒子線装置を搬送し、
前記設置ステップにおいては、前記本体ユニットを前記補助ユニットの上に載置した状態で前記設置場所において前記荷電粒子線装置をそのまま設置する
ことを特徴とする請求項15記載の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、試料を収束された電子ビームで走査し、それによって試料から発生する電子を検出し、その検出された信号を用いて画像表示装置に試料の走査電子像を表示する。走査電子顕微鏡は、電子線を発生させるのに用いられる電子銃の性質から数十キロボルトの高電圧が必要である。また、安定した電子線のため、電子顕微鏡内は真空に保たれていなければならない。したがって従来の走査電子顕微鏡は大型となる傾向がある。
【0003】
下記特許文献1は、電子顕微鏡の構成を開示している(図2)。同文献記載の電子顕微鏡においては、電子源、電子光学系、試料室、ステージ、排気系等を備える電子顕微鏡本体と、電子顕微鏡本体を制御する制御装置や観察画像を表示するモニタとが別々の架台に保持される。
【0004】
下記特許文献1はさらに、テーブルや作業台に設置することができる卓上型の電子顕微鏡の構造を開示している(図1)。卓上型の電子顕微鏡においては、電子源、電子光学系、試料室、ステージ、排気系等を備える電子顕微鏡本体と制御装置等が同一筺体内に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/013323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図2記載の構成によれば、高性能な装置を提供できるが、大型で設置面積が大きいため、広い設置スペースを確保する必要がある。また、移動の際はリフター等の搬送機が必須であり、搬送時は大型のトラックで運ぶ必要があるので、手間がかかる。そのため、電子顕微鏡の無いところで作製された試料を観察する必要が生じた場合、これを電子顕微鏡がある研究所などに搬送して観察しなければならず、時間的観点からも不便である。
【0007】
特許文献1の図1記載の卓上型電子顕微鏡は、設置面積が小さく搬送も容易である反面、卓上設置できるようにしている性質上、装置の小型軽量化のために装置の性能を制限する必要がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、小型ながら高性能で搬送も容易な荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、荷電粒子線に関する機能部を有する本体ユニットを、本体ユニットに電力を供給する電源部を有する補助ユニットの上に着脱できるように構成されている荷電粒子線装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本体ユニットを軽量化することにより、小型かつ高性能な荷電粒子線装置を提供することができる。また本体ユニットと補助ユニットを分離することにより、容易に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。
図2】補助ユニット14内にロータリーポンプ8を収納したときの様子を示す図である。
図3】ユーザ40が椅子41に座って荷電粒子線装置100を操作する様子を示す側面図である。
図4】無理のない試料交換ができる高さを示す図である。
図5】ユーザ40が試料ステージ4を本体ユニット15から引き出した際のサイズ例を示す図である。
図6】本体ユニット15と補助ユニット14を分離して設置する例を示す図である。
図7】実施形態2に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。
図8】本体ユニット15の正面図である。
図9】実施形態3に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本実施形態1に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。荷電粒子線装置100は、本体ユニット15と補助ユニット14を備える。本体ユニット15は、荷電粒子線源1、電子光学系鏡体2(集束レンズ、対物レンズ、検出器を含む)、試料室3、試料ステージ4、ターボ分子ポンプ5(主排気ポンプ)、ターボ分子ポンプ5と電子光学系鏡体2や試料室3との間をつなぐ排気管6、各部を制御する制御基板7を収容する。補助ユニット14は、電源ユニット9、コンピュータ16と通信する制御基板10を収容する。
【0013】
補助ユニット14の下部には、補助ユニット14を設置するための脚部12と補助ユニット14を搬送するためのキャスタ13が備えられている。キャスタ13以外の搬送部材を用いてもよい。ロータリーポンプ8は補助排気ポンプであり、本体ユニット15および補助ユニット14の外部に設置され、排気管等を通じてターボ分子ポンプ5に接続されている。
【0014】
本体ユニット15は、補助ユニット14の上部に載置することができる。このとき本体ユニット15と補助ユニット14との間は締結部材17によって締結することができる。本体ユニット15と補助ユニット14を重ねて設置することにより、本体ユニット15の設置面積を確保することなく補助ユニット14の設置面積のみで荷電粒子線装置100全体を設置することができる。
【0015】
本体ユニット15のフットプリントと補助ユニット14のフットプリントはほぼ同じに構成することが望ましい。具体的には、本体ユニット15の底面積は補助ユニット14の上面面積と略同一(または以下)にすることが考えられる。これによりユーザは、2つのユニットを積層した状態でも荷電粒子線装置100全体としての一体感を得ることができる。
【0016】
締結部材17を用いて本体ユニット15と補助ユニット14を締結することにより、本体ユニット15と補助ユニット14全体を1つの剛体とみなすことができる。荷電粒子線装置100が外力Fを受けたとき、荷電粒子線装置100が受ける加速度aは、荷電粒子線装置100の重量をmとして「a=F/m」により表すことができる。つまり、2つのユニットを締結することによりmが大きくなり、締結せずに重ねた場合に比べ外力を受けたときの振動などの影響を小さくできる。
【0017】
ターボ分子ポンプ5など一部の構成要素は、動作温度に制限(例えば60℃以下)がある。荷電粒子線装置100を小型化すると各構成要素が密集するため、制御基板10や電子光学系鏡体2などから発生する熱が装置内部にこもり、装置内部温度が上がり易い。装置内部温度が動作温度を超えるとその構成要素は停止もしくは異常動作してしまう。大きな熱を発生する制御基板10や電源ユニット9を補助ユニット14内に配置することにより、本体ユニット15内の温度上昇を防ぐことができる。また、本体ユニット15内に設置する排熱ファンの数を減らすことができ、振動源となる排熱ファンを電子光学系鏡体2から遠ざけることができる。さらに、本体ユニット15の底板や補助ユニット14の上板のように各ユニットを仕切る板があるため、補助ユニット14から発生する熱や電磁ノイズ等を本体ユニット15に対して伝えにくくすることができる。
【0018】
試料室3や電子光学系鏡体2において振動が生じると、荷電粒子線装置100の性能に対して悪影響を及ぼす。例えば荷電粒子線装置100が走査電子顕微鏡として構成されている場合、観察像の精度が低下するので、特に高倍率の観察時は外部振動の影響を受けにくくする必要がある。そこで本体ユニット15の底面と試料室3との間には、防振マウント11が配置されている。防振マウント11は、例えばダンパなどの振動吸収部材を用いて構成することができる。防振マウント11により、試料室3や電子光学系鏡体2に対して伝搬する外部振動を抑制することができる。
【0019】
脚部12は、制振機構18を備える。制振機構18は、例えばゴムなどの振動吸収部材を用いて構成することができる。制振機構18により、地面で発生した振動が補助ユニット14や本体ユニット15に伝搬するのを抑制することができる。その結果、試料室3や電子光学系鏡体2に対して伝搬する振動を小さくできる。
【0020】
補助ユニット14の下部には、キャスタ13が設けられている。キャスタ13により、補助ユニット14と本体ユニット15を重ねた状態(あるいはさらに締結部材17により締結した状態)で2つのユニットを同時に搬送することができる。
【0021】
図2は、補助ユニット14内にロータリーポンプ8を収納したときの様子を示す図である。補助ユニット14内には、電源ユニット9と制御基板10を収容する空間に加えて、ロータリーポンプ8その他部材を収容する空間を設けることができる。これにより、使用時はロータリーポンプ8を荷電粒子線装置100の外に設置する場合であっても、搬送時はこれら機材を同時に搬送することができる。補助ユニット14内の上記空間は、例えば後述する図6のように本体ユニット15と補助ユニット14を分離した際に、両ユニット間を接続する配線等をこの空間に収容するために用いることができる。
【0022】
従来の卓上型電子顕微鏡においては、試料ステージの位置が地上から800〜1000mmであり、ユーザ40が椅子41に座ったまま試料ステージを引き出すためには少し腕を上げる必要がある。また従来の大型電子顕微鏡においても、卓上顕微鏡と同様に試料ステージの位置が地上から1000mm程度であり、腕を上げた状態で試料ステージを引き出す必要がある。また従来の卓上電子顕微鏡においては試料ステージが取り付けられる試料室の下に荷重板が設けられており、荷重板は試料ステージや試料室に比べ周囲方向に大きい(特許文献1の図2参照)。そのため、ユーザ40は椅子41に座ったまま装置に近づくことが困難であり、腕を伸ばすかまたは椅子41から立ち上がってから試料ステージ4を引き出さなければならない。そこで、本実施例の荷電粒子線装置100は、ユーザが無理なく作業できるサイズとしてある。
【0023】
図3は、ユーザ40が椅子41に座って荷電粒子線装置100を操作する様子を示す側面図である。図3において、各部のサイズ例を示す。補助ユニット14の高さは、椅子41の高さと同程度(図3において、椅子41は380〜410mm、補助ユニット14は400mm)である。本体ユニット15の高さは800mmである。ユーザ40が試料交換の際に本体ユニット15から引き出す試料ステージ4は、地面から500〜750mmの位置にある。これはユーザ40が膝の上に手を置いたときの手の高さと同程度である。そのためユーザ40は、椅子に座った状態でも試料ステージ4を楽に引き出すことができる。
【0024】
本実施形態1において、使い勝手の点で最も重要となる高さは、実際にユーザが手を触れる部分となる試料ステージ4の高さ(試料の交換位置)であり、640mmとなっている。この高さは、図4に示すような考え方に基づいて定めた。
【0025】
大柄な人の身体寸法として、95%目の男性(米国人男性 身長189.5cm)を想定し、小柄な人の身体寸法として、5%目の女性(アジア人女性 身長147.1cm)を想定した。また、無理のない試料交換ができる姿勢における手の最大高さとして、肩の角度が体の中心から前方45度で、ひじの角度が90度を想定し、手の最低高さとして、肩の角度が体の中心から0度で、ひじの角度が120度を想定した。この結果、大柄な人が無理なく試料交換ができる試料ステージ4の高さの範囲が505.5mm〜1169mmであり、小柄な人が無理なく試料交換ができる試料ステージ4の高さの範囲が436mm〜800mmであると判明した。この2つの範囲が重なる範囲である505mm〜800mmが、大柄な人から小柄な人までが無理なく試料交換できる最適な試料ステージ4の高さである。本実施例の試料ステージ4の高さ640mmは、この理想範囲のほぼ中間位置であり、多くのユーザ40にとって作業が楽になる利点がある。
【0026】
図5は、ユーザ40が試料ステージ4を本体ユニット15から引き出した際のサイズ例を示す図である。試料43が地面から640mmの高さにあるため、試料ステージ4を引き出す際と同様にユーザ40は腕を上げずに試料43を交換することができる。また、試料ステージ4を引き出したとき試料43を上から見下ろすことができるので、試料ステージ4から試料43を外したり、ユーザ40自身が立ち上がったりすることなく、試料43の様子を観察することができる。一方で従来の卓上顕微鏡や大型電子顕微鏡においては、試料43の高さが地面から1000mm程度であり、ユーザ40が座った状態では試料43を横からもしくは斜めからしか観察できない。図5に示すサイズ例によれば、試料交換時の操作性を向上することができる。
【0027】
本体ユニット15のフットプリントと補助ユニット14のフットプリントは略同じであるため、試料ステージ4を本体ユニット15から引き出した状態で、その下に空間ができる。この空間にユーザ40の足先などを入れることができるので、ユーザ40はより柔軟な姿勢で試料ステージ4に対して作業することができる。
【0028】
図6は、本体ユニット15と補助ユニット14を分離して設置する例を示す図である。締結部材17を取り外すことにより、本体ユニット15と補助ユニット14をそれぞれ別の位置に設置することができる。本体ユニット15と補助ユニット14との間は、制御や電源供給のための配線、バックポンプを接続するための配管により接続される。補助ユニット14とコンピュータ16との間は配線により接続される。
【0029】
クリーンルーム内など立って作業する環境の場合、図1に示すように2つのユニットを重ねた状態よりも図6に示すように本体ユニット15を机23に置いた状態で使用したほうが、試料交換の際にユーザが屈むことなく試料ステージ4を引き出せる。このようにユーザによって荷電粒子線装置100の使用形態が異なるため、各ユニットを着脱自在に構成することにより、幅広いユーザ環境に対応できる。さらに、外部振動が多い環境で高倍率観察を実施する場合、装置下部に除振台を設置する場合がある。従来の大型電子顕微鏡においては装置全体を除振台に載置しなければならず大型の除振台が必要であった。本体ユニット15を分離して除振台の上に載置することにより、除振台の大きさや耐荷重を小さくできる。
【0030】
各ユニットを分離することにより、運搬の際に車高の低い車でも各ユニットを積載することができる。したがって、トラックなどの大型車両を用いずに運搬できる。これにより小型の車でも運搬が可能となり、手軽に荷電粒子線装置100を運搬できるほか、狭い場所へも運搬することができる。
【0031】
図3図5で説明したように、補助ユニット14の上に本体ユニット15を載置した状態でユーザ40が椅子41に座って作業するのに適した高さとなるように構成されているが、本体ユニット15を分離して机23の上に載置することにより、机23によって高さを別途調整することもできる。
【0032】
荷電粒子線装置100の一部が故障した際、本体ユニット15もしくは補助ユニット14の片方を交換することにより、早急に復旧することができる。従来の荷電粒子線装置は大型で搬送が手間だったが、本実施形態1に係る荷電粒子線装置100は小型車でも運搬できるので機動性が高く、ユニット毎に迅速に対応することができる。また故障したユニットを修理した後、再びユニットを入れ替えることもできる。これら特性により、荷電粒子線装置100の稼働率を上げることができる。
【0033】
本体ユニット15と補助ユニット14を分離した際に、両ユニット間を接続する配線が必要である。この配線はノイズ等の原因となるので、なるべく短くすることが望ましい。配線の両端に接続される部材をできる限りユニット内の端に配置することにより、配線を短くすることができる。例えば電源ユニット9を補助ユニット14内の上面近くに配置するとともに、制御基板7を本体ユニット15内の底面近くに配置することが考えられる。
【0034】
以上のように、本実施形態1に係る荷電粒子線装置100においては、卓上設置可能であるという特徴を残しつつ、本体ユニット15とは別の補助ユニット14内に荷電粒子線装置100の性能や機能に影響されない電源ユニット9や制御基板10を配置している。これにより、本体ユニット15の軽量化を図ることができる。本体ユニット15を軽量化した分、荷電粒子線装置100の高機能化や、高真空と低真空に対応可能などの多機能化を図ることができる。
【0035】
本実施形態1に係る荷電粒子線装置100は、本体ユニット15と補助ユニット14を重ねた状態でも使用できるし、これらユニットを分離し例えば本体ユニット15を卓上に設置した状態でも使用できる。各ユニットを重ねた場合は、補助ユニット14による設置面積の拡大を防ぐことができる。各ユニットを分離した場合は、本体ユニット15を机や作業台の上などユーザの所望する場所に設置することができる。すなわち、多様な設置環境に幅広く対応することができる。
【0036】
本実施形態に係る荷電粒子線装置100は、搬送の際に各ユニットを分離することにより、大型搬送車を用いずに搬送することができる。したがって、高性能ながら卓上型電子顕微鏡と同等の搬送性を備えることができる。
【0037】
<実施形態2>
図7は、本実施形態に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。本実施形態においては、実施形態1で説明した防振マウント11に代えて防振マウント35を設けている。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0038】
防振マウント35は、試料室3の側面に固定された防振マウント取付部材36と本体ユニット15の架台に固定された防振マウント土台34との間に取り付けられている。また、排気管6を支持する排気管支持部材31を設け、その一端を排気管6に接続し、他端を試料室3の外壁に接続した。さらに、本体ユニット15の底面にフォーク挿入用ガイド32を設け、補助ユニット14の上面に位置決め部材33を設けた。
【0039】
特許文献1の図2が示す従来の電子顕微鏡においては、試料室の下に配置された荷重板と架台との間に防振マウントが配置される。防振マウントの固有振動数fは、防振マウント上に載置される重量をm、防振マウントのばね定数をkとすると、「f=(k/m)/2」で表される。つまり、重量を重くすることで固有振動数fを小さくできる。振動振幅が一定であれば、周波数が小さいほど加速度が小さくなるので、固有振動数fを小さくするほど防振効果が向上する。特許文献1における荷重板としては鉄などの材料が用いられ、その重量は数10kgと重いので防振効果は高い。しかし実施形態1で説明した構成は、本体ユニット15を卓上載置できるよう、荷重板を除去するとともに試料室3や電子光学系鏡体2などを軽量化しているので、防振マウント11による防振効果が弱まる。また、防振マウント11を試料室3の下部に設けると防振マウント11の大きさが制限され、防振効果が抑制される。
【0040】
そこで本実施形態2においては、防振マウント35を試料室3の側部に設置する。これにともない、本体ユニット15の架台に固定された防振マウント土台34と、試料室3の側面に固定された防振マウント取付部材36を設けた。試料室3の側面には検出器等が取り付けられる空間があるため、防振マウント35を試料室3の側部に設置した場合でも本体ユニット15の幅は大きくならない。つまり。荷電粒子線装置100のサイズを大きくすること無く防振マウント35を実施形態1よりも大きくできる。したがって防振マウントの防振効果を向上できる。
【0041】
図8は、本体ユニット15の正面図である。防振マウント35の上面は荷電粒子線装置100本体の重心45の高さとほぼ一致するように配置されている。これによりピッチングやローリングといった振動モードが生じにくくなる。また、試料43は防振マウント35の上面および重心45とほぼ同じ高さとしている。そのため前記振動モードが発生した場合においても回転中心が試料43付近となり、試料43付近における振動振幅が小さくなるため振動の影響を小さくできる。
【0042】
本実施形態2においては、特許文献1の図2とは異なり、ターボ分子ポンプ5を試料室3の下部に取り付けるのではなく、電子光学系鏡体2や試料室3と接続され装置後方に延びた排気管6に取り付けることにより、本体ユニット15の高さを低くして小型化している。
【0043】
また、ターボ分子ポンプ5の重量は約3kgであるため、これを排気管6に取り付けた場合、片持ち梁に似た構造となる。そのため防振マウント35と排気管6による2自由度振動系が形成され、余分な振動モードが発現し防振性能が低下してしまう可能性がある。そこで本実施形態2においては、試料室3に固定した排気管支持部材31と排気管6を締結し、排気管6を支持する。これにより、排気管6とターボ分子ポンプ5に起因する振動系の固有振動数を高くすることができる。上記構成により、この固有振動数と防振マウント35の固有振動数との間の差が大きくなり、排気管6による振動モードが防振マウント35の振動モードに与える影響を小さくできる。またターボ分子ポンプ5は定常運転時に1500Hz程度で回転しており振動源となる。排気管支持部材31により排気管6の高次モードの固有振動数をターボ分子ポンプ5の回転数と異なる振動数とし、これによりターボ分子ポンプ5の回転による振動の影響を小さくできる。
【0044】
本体ユニット15は、従来の電子顕微鏡に比べて軽いものの、例えば約80kg程度の重量を有する。そのため、各ユニットの着脱時、本体ユニット15を卓上に設置するとき、および各ユニットの搬送時に、リフター等を用いることが想定される。そこで、本体ユニット15の下部に2つの矩形上のフォーク挿入用ガイド32を固定する。本体ユニット15の重心を考慮して、2つのフォーク挿入用ガイド32の中央に本体ユニット15の重心がくるように配置することが望ましい。フォーク挿入用ガイド32にリフター等のフォークを挿入すると、安定した状態で本体ユニット15を持ち上げることができ、フォークを挿入する位置はフォーク挿入用ガイド32によって毎回同一となるため、作業者に依存せずに持ち上げたときの安定性を確保できる。
【0045】
位置決め部材33は、本体ユニット15を補助ユニット14の上に載置する際の位置決めを補助する部材である。例えば、フォーク挿入用ガイド32にスリットを設け、そのスリットに位置決め部材33が嵌合するように構成する。これにより、本体ユニット15を毎回同じ位置に載置できる。なお図7において位置決め部材33は荷電粒子線装置100の前後方向(図面に向かって左右方向)のみ位置決めするように配置されているが、荷電粒子線装置100の左右方向(図面に向かって奥行方向)の位置決めをする部材を設けてもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態2に係る荷電粒子線装置100は、防振マウント35を試料室3の側部に配置することにより、本体ユニット15のサイズを抑えつつ防振性能を高めることができる。また排気管6を支持する部材を設けることにより、ターボ分子ポンプ5に起因する振動の影響を抑えることができる。
【0047】
本実施形態2に係る荷電粒子線装置100は、本体ユニット15を補助ユニット14の上に載置する作業を補助するため、位置決め部材33とフォーク挿入用ガイド32を備える。これら部材により、各ユニットの設置や分離合体などの作業を効率的に実施することができる。
【0048】
荷電粒子線装置100を搬送および設置する際には、設置環境、搬送設備、設置環境までの距離などの条件に鑑みて、以下のいずれかの態様をとることができる:(a)補助ユニット14の上に本体ユニット15を載置して搬送車やキャスタ13により搬送し、(a1)設置場所において両ユニットを分離してそれぞれ設置するか、または(a2)設置場所において補助ユニット14の上に本体ユニット15を載置した状態でそのまま設置する、(b)補助ユニット14と本体ユニット15を分離して個別に搬送車やキャスタ13により搬送し、(b1)設置場所において両ユニットを分離した状態でそのまま設置するか、または(b2)設置場所において補助ユニット14の上に本体ユニット15を載置して設置する。
【0049】
<実施形態3>
実施形態1〜2では、本体ユニット15と補助ユニット14を備える構成例について説明した。ユーザの要望によっては、検出器などの構成要素を追加的に装着する必要が生じる場合があり、その検出器を動作させるための制御基板も追加する必要がある。本実施形態3では、そのような状況においても可搬性を維持しつつ設置面積も変えない構成例である。以下、実施形態1〜2との相違点を中心に説明する。
【0050】
図9は、本実施形態3に係る荷電粒子線装置100の全体構成を示す側面図である。試料室3内には、オプション検出器50が設置されている。本体ユニット15と補助ユニット14の間に、オプション検出器50を制御するための制御基板51を収容するオプションユニット52を設置する。各ユニットはそれぞれ重ねることができる。本体ユニット15とオプションユニット52との間、および補助ユニット14とオプションユニット52との間は、それぞれ締結部材17により締結される。オプション検出器50、制御基板51、電源ユニット9などはそれぞれ配線により接続される。オプションユニット52のフットプリントは本体ユニット15や補助ユニット14とほぼ同じにする。
【0051】
オプションユニット52を追加することにより、荷電粒子線装置100全体の設置面積を大きくすることなく、本体ユニット15内や補助ユニット14内に設置できない構成要素を追加することができる。オプションユニット52が収容する構成要素は、追加する構成要素に応じて適宜変更することができる。具体的には、荷電粒子線装置100が提供する機能を実装する装置や部材のうち本体ユニット15と補助ユニット14いずれも収容していないものを収容すればよい。
【0052】
オプションユニット52内に収容する構成要素は1つに限らず、例えばその他制御基板や電源を収容することもできる。また、オプションユニット52を複数増設することもできる。各ユニットは重ねることができるように構成しているので、オプションユニット52により荷電粒子線装置100の機能を追加しても設置面積は変わらず、装置の使用感やデザイン性が維持される。また、キャスタ13により一度に全てのユニットを搬送することができる。
【0053】
オプションユニット52は、本体ユニット15の高さを調整するために用いることもできる。ユーザによって体格や使用感が異なるので、オプションユニット52を高さ調整用のスペーサとして用いることにより、本体ユニット15の地面からの高さを可変できる。これにより、幅広いユーザに高い操作性を提供できる。また、オプションユニット52を防振台とすることで防振効果を向上できる。
【0054】
<本発明の変形例について>
本発明は上記した実施形態の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1:荷電粒子線源、2:電子光学系鏡体、3:試料室、4:試料ステージ、5:ターボ分子ポンプ、6:排気管、7:制御基板、8:ロータリーポンプ、9:電源ユニット、10:制御基板、11:防振マウント、12:脚部、13:キャスタ、14:補助ユニット、15:本体ユニット、 16:コンピュータ、17:締結部材、18:制振機構、 23:机、31:排気管支持部材、32:フォーク挿入用ガイド、33:位置決め部材、34:防振マウント土台、35:防振マウント、36:防振マウント取付部材、40:ユーザ、41:椅子、43:試料、45:重心、50:オプション検出器、51:制御基板、52:オプションユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9