特許第6246486号(P6246486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246486キャリア付銅箔及びその製造方法、銅張積層板の製造方法及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246486
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】キャリア付銅箔及びその製造方法、銅張積層板の製造方法及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/20 20060101AFI20171204BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20171204BHJP
   C25D 1/04 20060101ALI20171204BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20171204BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B32B15/20
   B32B15/04 A
   C25D1/04 311
   C25D7/06 A
   H05K1/09 C
【請求項の数】10
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-88816(P2013-88816)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201061(P2014-201061A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本多 美里
(72)【発明者】
【氏名】古曳 倫也
(72)【発明者】
【氏名】永浦 友太
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/031913(WO,A1)
【文献】 特許第5175992(JP,B2)
【文献】 特開2014−015650(JP,A)
【文献】 特開2014−027046(JP,A)
【文献】 特開2014−136825(JP,A)
【文献】 特開2014−201829(JP,A)
【文献】 キャリア箔付き極薄銅箔(耐熱ピーラブル銅箔)「F−HP」,古河電工時報,2010年 8月,第126号,p.31−32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C25D 5/00−7/12
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、
前記極薄銅層は10cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をW10とし、標準偏差をσ10としたときの厚み精度:P10=3σ10×100/W10としたとき、P10が3.0%以下であり、
前記中間層はNiを含み、
以下の(A)または(B)のいずれか一つ以上を満たすキャリア付銅箔。
(A)前記極薄銅層にBT樹脂からなる絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm2以下であり、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが30.0%以下を満たす、
(B)JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm2以下であり標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たす。
【請求項2】
以下の(C)または(D)のいずれか一つ以上を満たす請求項1に記載のキャリア付銅箔。
(C)前記極薄銅層は5cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をW3とし、標準偏差をσ5としたときの厚み精度:P5=3σ5×100/W5としたとき、P5が3.0%以下である、
(D)前記極薄銅層は四探針法で測定した厚みの平均値をTとし、標準偏差をσTとしたときの厚み精度:PT=3σT×100/Tとしたとき、PTが10.0%以下である。
【請求項3】
以下の(E)〜(M)のいずれか一つ以上を満たす請求項1または2のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
(E)前記中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されている、
(F)前記中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されており、且つ、前記クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がクロメート処理層を含む、
(G)前記中間層は、亜鉛を含む、
(H)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−モリブデン合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されている、
(I)前記中間層は、前記キャリア上に、
ニッケル層またはニッケル−亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、
ニッケル−亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2、クロムの付着量が5〜100μg/dm2、亜鉛の付着量が1〜70μg/dm2である、
(J)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である、
(K)前記中間層は、前記キャリア上に少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2である、
(L)前記(J)または(K)のいずれかの項目を満たし、且つ、前記中間層が有機物を厚みで25nm以上80nm以下含有する、
(M)前記中間層は、前記キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層および、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金、モリブデンニッケル合金、モリブデンニッケル合金のいずれか1種以上を含む層の順で積層されて構成されており、
前記中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm2であり、モリブデンが含まれる場合にはモリブデンの付着量が10〜1000μg/dm2、コバルトが含まれる場合にはコバルトの付着量が10〜1000μg/dm2である。
【請求項4】
以下の(N)〜(P)のいずれか一つを満たす請求項1〜3のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
(N)前記極薄銅層表面に粗化処理層を有する、
(O)前記極薄銅層の表面に粗化処理層を有し、かつ、当該粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する、
(P)前記極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【請求項5】
前記極薄銅層上に樹脂層を備える請求項1〜のいずれかに記載のキャリア付銅箔。
【請求項6】
前記粗化処理層上または前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える請求項4に記載のキャリア付銅箔。
【請求項7】
ロール・ツウ・ロール搬送方式により長さ方向に搬送される長尺状の銅箔キャリアの表面を処理することで、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された剥離層と、剥離層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔を製造する方法であり、
搬送ロールで搬送される銅箔キャリアの表面に剥離層を形成する工程と、
搬送ロールで搬送される前記剥離層が形成された銅箔キャリアをドラムで支持しながら、電解めっきにより前記剥離層表面に極薄銅層を形成する工程と、
を含む請求項1〜のいずれかに記載のキャリア付銅箔の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いてプリント配線板を製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載のキャリア付銅箔を用いて銅張積層板を製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、
その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付銅箔、プリント配線板、プリント回路板、銅張積層板及びプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
プリント配線板はここ半世紀に亘って大きな進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子機器に使用されるまでに至っている。近年の電子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に伴い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波化が進展し、プリント配線板に対して導体パターンの微細化(ファインピッチ化)や高周波対応等が求められており、特にプリント配線板上にICチップを載せる場合、L(ライン)/S(スペース)=20μm/20μm以下のファインピッチ化が求められている。
【0003】
プリント配線板はまず、銅箔とガラスエポキシ基板、BT樹脂、ポリイミドフィルムなどを主とする絶縁基板を貼り合わせた銅張積層体として製造される。貼り合わせは、絶縁基板と銅箔を重ね合わせて加熱加圧させて形成する方法(ラミネート法)、または、絶縁基板材料の前駆体であるワニスを銅箔の被覆層を有する面に塗布し、加熱・硬化する方法(キャスティング法)が用いられる。
【0004】
ファインピッチ化に伴って銅張積層体に使用される銅箔の厚みも9μm、さらには5μm以下になるなど、箔厚が薄くなりつつある。ところが、箔厚が9μm以下になると前述のラミネート法やキャスティング法で銅張積層体を形成するときのハンドリング性が極めて悪化する。そこで、厚みのある金属箔をキャリアとして利用し、これに中間層を介して極薄銅層を形成したキャリア付銅箔が登場している。極薄銅層の表面を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後に、キャリアを中間層を介して剥離するというのがキャリア付銅箔の一般的な使用方法である。
【0005】
キャリア付銅箔を用いた一般的な微細回路形成方法は、配線回路を極薄銅層上に形成した後に、極薄銅層を硫酸−過酸化水素系のエッチャントでエッチング除去する手法(MSAP:Modified−Semi−Additive−Process)である。そのため、極薄銅層の厚みは均一なものが好ましい。
【0006】
ここで、電解メッキの箔厚精度はアノード−カソード間の極間距離に大きく影響を受ける。一般的な極薄銅層形成方法は、銅箔キャリア(12〜70μm)上に中間層を形成し、さらにその表面に極薄銅層(0.5〜10.0μm)並びに粗化粒子を形成する。銅箔キャリア形成以降の工程に関しては、従来は図1のような銅箔キャリアへのドラムによる支持がない九十九折による運箔方式を用いて行っていた(特許文献1)。
【0007】
また、従来、キャリア箔の表面に、拡散防止層、剥離層、電気銅めっきをこの順番に形成し、剥離層としてCrまたはCr水和酸化物層を、拡散防止層としてNi、Co、Fe、Cr、Mo、Ta、Cu、Al、Pの単体または合金を用いることで加熱プレス後の良好な剥離性を保持する方法が特許文献2開示されている。
【0008】
または、剥離層としてCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pまたはこれらの合金またはこれらの水和物で形成することが知られている。更に、加熱プレス等の高温使用環境における剥離性の安定化を図る上で、剥離層の下地にNi、Feまたはこられの合金層をもうけると効果的であることが特許文献3および4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開2000−309898号公報
【特許文献2】 特開2006−022406号公報
【特許文献3】 特開2010−006071号公報
【特許文献4】 特開2007−007937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電解メッキで形成した極薄銅層の厚み精度はアノード−カソード間の極間距離に大きく影響を受けるため、特許文献1に記載の銅箔キャリアへのドラムによる支持がない九十九折による運箔方式を用いた場合、電解液並びに運箔テンション等の影響により、極間距離を一定にするのが難しく、厚みのバラツキが大きくなる問題が発生していた。
【0011】
また、キャリア付銅箔においては、絶縁基板への積層工程前にはキャリアからキャリア付銅箔が容易に剥離してはならず、一方、絶縁基板への積層工程後にキャリア付銅箔からキャリアが容易に剥離する必要がある。また、積層後にキャリア付銅箔からキャリアを剥離した後、キャリア付銅箔上にMSAP法で回路を形成するため、良好なエッチング性を保持させるために有機物やエッチングされ難い金属および金属酸化物、金属水和酸化物の存在量を低減させる必要がある。
【0012】
特許文献2については、加熱プレス後の剥離性は良好であるが、キャリア付銅箔表面の状態に関しては言及されていない。
【0010】
また、同特許文献では、拡散防止層と剥離層の順番はどちらでも良いと記載されているが、記載の実施例は全てキャリア箔、剥離層、拡散防止層、電気銅めっきの順番であり、剥離の際に剥離層/拡散防止層界面は剥離する恐れがある。そうなると電気銅めっき(極薄銅層)の表面に拡散防止層が残り、回路を形成する際のエッチング不良に繋がる。
【0013】
特許文献3、4については、キャリア/キャリア付銅箔間の剥離強度等の特性を十分に検討したと考えられる記載が見られず、未だ改善の余地が残っている。
【0014】
そこで、本発明は、エッチング性が良好で、キャリア上の極薄銅層の厚み精度が良好なキャリア付銅箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねたところ、キャリア上の極薄銅層の厚み精度を向上させ、極薄銅層表面に残存するエッチング阻害成分を制御することが、エッチング性の向上に極めて効果的であることを見出した。
【0016】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、
前記極薄銅層は10cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をW10とし、標準偏差をσ10としたときの厚み精度:P10=3σ10×100/W10としたとき、P10が3.0%以下であり、前記中間層はNiを含み、前記極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm以下であり、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが30.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
【0017】
本発明は別の一側面において、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔であって、前記極薄銅層は10cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をW10とし、標準偏差をσ10としたときの厚み精度:P10=3σ10×100/W10としたとき、P10が3.0%以下であり、前記中間層はNiを含み、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm以下であり標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たすキャリア付銅箔である。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、ロール・ツウ・ロール搬送方式により長さ方向に搬送される長尺状の銅箔キャリアの表面を処理することで、銅箔キャリアと、銅箔キャリア上に積層された剥離層と、剥離層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔を製造する方法であり、搬送ロールで搬送される銅箔キャリアの表面に剥離層を形成する工程と、搬送ロールで搬送される前記剥離層が形成された銅箔キャリアをドラムで支持しながら、電解めっきにより前記剥離層表面に極薄銅層を形成する工程とを含む本発明のキャリア付銅箔の製造方法である。
【0019】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント配線板である。
【0020】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造したプリント回路板である。
【0021】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を用いて製造した銅張積層板である。
【0022】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エッチング性が良好で、キャリア上の極薄銅層の厚み精度が良好なキャリア付銅箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の九十九折の運箔方式を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態1に係るキャリア付銅箔の製造方法に係る運箔方式を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態2に係るキャリア付銅箔の製造方法に係る運箔方式を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態3に係るキャリア付銅箔の製造方法に係る運箔方式を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態4に係るキャリア付銅箔の製造方法に係る運箔方式を示す模式図である。
図6】実施例における回路パターンの幅方向の横断面の模式図、及び、該模式図を用いたエッチングファクター(EF)の計算方法の概略である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層の上に積層された極薄銅層とを備える。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0026】
極薄銅層に絶縁基板を所定の条件で熱圧着させて、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後、キャリアの剥離面のNi付着量、及び、その面内分布のバラツキが大きいと、剥離強度の面内分布のバラツキも大きくなり、キャリア/キャリア付銅箔界面での剥離性が不良となり、さらに、極薄銅層のエッチング性も不良となる。このような観点から、本発明のキャリア付銅箔は、極薄銅層に絶縁基板を大気中、圧力:20kgf/cm、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、JIS C 6471に準拠して前記キャリアを剥がしたとき、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm以下であり、前記極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数をX=σ×100/Aとすると、Xが30.0%以下を満たすように制御されている。当該Niの付着量の平均値:Aは、3〜300μg/dmを満たすように制御されているのが好ましく、3〜200μg/dmを満たすように制御されているのがより好ましく、5〜100μg/dmを満たすように制御されているのがさらにより好ましい。当該Xは、1.0〜25.0%を満たすように制御されているのが好ましい。なお、上記「220℃×2時間の条件下で熱圧着」は、キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着する場合の典型的な加熱条件を示している。
【0027】
また、絶縁基板との熱圧着をしないで、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後、キャリアの剥離面のNi付着量、及び、その面内分布のバラツキが大きいと、剥離強度の面内分布のバラツキも大きくなり、キャリア/キャリア付銅箔界面での剥離性が不良となり、さらに、極薄銅層のエッチング性も不良となるおそれがある。このような観点から、本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471に準拠してキャリアを剥がしたとき、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量を幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値:A’が400μg/dm以下であり標準偏差をσ’とし、Ni付着量の変動係数をX’=σ’×100/A’とすると、X’が20.0%以下を満たすように制御されているのが好ましい。当該Niの付着量の平均値:A’は、3〜300μg/dmを満たすように制御されているのが好ましく、3〜200μg/dmを満たすように制御されているのがより好ましく、5〜100μg/dmを満たすように制御されているのがさらにより好ましい。当該X’は、1.0〜15.0%を満たすように制御されているのが好ましく、1.0〜14.0%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.0〜13.0%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.5〜12.0%を満たすように制御されているのがより好ましく、1.5〜10.0%を満たすように制御されているのがより好ましい。
【0028】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCDフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0029】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。
【0030】
<中間層>
キャリアの片面又は両面上には中間層を設ける。中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されているのが好ましい。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素を含む合金のことをいう。また、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であることが好ましい。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素を含む合金のことをいう。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であることが好ましい。クロム合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、中間層は、中間層は、前記キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−モリブデン合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されていてもよい。また、中間層は、亜鉛を含んでもよい。また、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
また、中間層は、キャリア上に、ニッケル層またはニッケル−亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル−亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dm、クロムの付着量が5〜100μg/dm、亜鉛の付着量が1〜70μg/dmであってもよい。
また、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層、及び、少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dmであってもよい。
また、中間層は、キャリア上に少なくとも窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dmであってもよい。
また、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケルを含む合金層および、モリブデン、コバルト、モリブデンコバルト合金、モリブデンニッケル合金のいずれか1種以上を含む層の順で積層されて構成されており、中間層におけるニッケルの付着量が100〜40000μg/dmであり、モリブデンが含まれる場合にはモリブデンの付着量が10〜1000μg/dm、コバルトが含まれる場合にはコバルトの付着量が10〜1000μg/dmであってもよい。
ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロメート処理層との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。また、中間層にクロムめっきではなくクロメート処理層を形成するのが好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで極薄銅層を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、極薄銅層を電気めっきで形成する際の抵抗になりにくく、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、極薄銅層を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。
【0031】
前述の有機物は厚みで25nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
【0032】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10−7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO換算)
【0033】
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。そして、中間層の有機物厚みが厚い場合、Niの極薄銅層側への拡散を抑制するという、有機物の効果が大きくなる傾向にある。
【0034】
また、中間層形成時のキャリア搬送速度(ライン速度)を遅くし、および/またはめっき処理での電流密度を低くすると、ニッケル層またはニッケルを含む合金層の密度および有機物の密度が高くなる傾向にある。ニッケル層またはニッケルを含む合金層の密度および有機物の密度が高くなると、ニッケル層またはニッケルを含む合金層のニッケルが拡散し難くなり、剥離後で、所定の条件下でのデスミア処理後の極薄銅層表面のNi量を制御することができる。
【0035】
中間層は、キャリア上に、ニッケルと、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金またはモリブデン−ニッケル合金とがこの順で積層されて構成されていることが好ましい。ニッケルと銅との接着力は、モリブデンまたはコバルトと銅との接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金またはモリブデン−ニッケル合金との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。
【0036】
また、前述のモリブデンはモリブデンを含む合金であっても良い。ここで、モリブデンを含む合金とはモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素とを含む合金のことをいう。また、モリブデンを含む合金はモリブデンと、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であってもよい。また、前述のコバルトはコバルトを含む合金であっても良い。ここで、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素とを含む合金のことをいう。また、コバルトを含む合金とはコバルトと、モリブデン、鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金であってもよい。
【0037】
モリブデン−コバルト合金はモリブデン、コバルト以外の元素(例えばニッケル、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素)を含んでも良い。
【0038】
中間層のうちモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層またはモリブデン−ニッケル合金層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層を設けずにモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しない場合があり、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層またはモリブデン−ニッケル合金層がなくニッケル層と極薄銅層を直接積層した場合はニッケル層におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない場合がある。
【0039】
また、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層またはモリブデン−ニッケル合金層がキャリアとニッケル層の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう場合がある、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない場合がある。このような状況は、キャリアとの界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層またはモリブデン−ニッケル合金層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にモリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層またはモリブデン−ニッケル合金層を設けたとしてもモリブデン量またはコバルト量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルとは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、モリブデンまたはコバルトと銅とは固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、モリブデンまたはコバルトまたはモリブデン−コバルト合金層と銅との界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のモリブデンまたはコバルトしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる場合がある。
【0040】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には2〜5μmである。キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるのが好ましい。
【0041】
本発明に係るキャリア付銅箔は、以下の各実施形態に示す運箔方式にて製造することができる。図2は、本発明の実施形態1に係るキャリア付銅箔の製造方法に係る運箔方式を示す模式図である。本発明の実施形態1に係るキャリア付銅箔の製造方法は、ロール・ツウ・ロール搬送方式により長さ方向に搬送される長尺状のキャリアの表面を処理することで、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔を製造する方法である。本発明の実施形態1に係るキャリア付銅箔の製造方法は、搬送ロールで搬送されるキャリアをドラムで支持しながら、電解めっきによりキャリア表面に極薄銅層を形成する工程と、中間層が形成されたキャリアをドラムで支持しながら、電解めっきにより中間層表面に極薄銅層を形成する工程と、キャリアをドラムで支持しながら、電解めっきにより極薄銅層の中間層と反対側の表面に粗化処理層を形成する工程とを含む。各工程ではドラムにて支持されているキャリアの処理面がカソードを兼ねており、このドラムと、ドラムに対向するように設けられたアノードとの間のめっき液中で各電解めっきが行われる。
【0042】
本発明では、長尺状のキャリアをロール・ツウ・ロール搬送方式で搬送するために、キャリアの長さ方向に張力をかけながら搬送している。張力は、各搬送ロールを駆動モーターと接続する等によりトルクをかけることで調整することができる。キャリアの搬送張力は0.01〜0.2kg/mmが好ましい。搬送張力が0.01kg/mm未満ではドラムとの密着力が弱く、所望の厚みに各層を形成することが困難となる。また、装置の構造にもよるがスリップ等の問題が生じやすく、さらにキャリアの巻きが緩くなり、巻きずれ等の問題が生じやすい。一方、搬送張力が0.2kg/mm超では、わずかなキャリアの位置ズレでもオレシワが発生しやすく、装置管理の観点からも好ましくない。また、巻きが硬く、巻き締まりシワ等が生じやすい。キャリアの搬送張力は、より好ましくは0.02〜0.1kg/mmである。
【0043】
実施形態1では、中間層と粗化処理層とを、いずれも、ドラムで銅箔キャリアを支持しながら、電解めっきにより形成しているが、これに限定されない。例えば、実施形態2として、図3に示すように、粗化処理層の形成を従来の銅箔キャリアへのドラムによる支持がない九十九折による運箔方式を用いた電解めっきにより形成してもよい。また、実施形態3として、図4に示すように、中間層及び粗化処理層の形成を、いずれも従来の銅箔キャリアへのドラムによる支持がない九十九折による運箔方式を用いた電解めっきにより形成してもよい。さらに、実施形態4として、図5に示すように、中間層の形成を、従来の銅箔キャリアへのドラムによる支持がない九十九折による運箔方式を用いた電解めっきにより形成してもよい。ただし、実施形態2〜4は、実施形態1にように全ての工程をドラムを用いた運箔方式で行っていないため、実施形態1に比べて、電解めっきの際の極間距離を一定にするのが難しく、中間層及び/又は粗化処理層の厚み精度は劣る。九十九折による運箔方式を用いた電解めっきの場合には、搬送ロール間の距離を短くすること、ガイドロール等を用いて箔の振れを防止すること、搬送張力を通常の3〜5倍とすることにより、電解めっきにおけるアノード−カソード間の極間距離を安定させることにより、板厚精度を良好なものとすることができる。
【0044】
本発明は、上述のように、キャリアをドラムで支持することで電解めっきにおけるアノード−カソード間の極間距離が安定する。このため、形成する層の厚みのバラツキが良好に抑制され、厚み精度の高い極薄銅層を有するキャリア付銅箔の作製が可能となる。
【0045】
このように作製されたキャリア付銅箔は、極薄銅層において、10cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をW10とし、標準偏差をσ10としたときの厚み精度:P10=3σ10×100/W10としたとき、P10が3.0%以下であり、極めて厚み精度が良好となっている。なお、下限は特に限定する必要は無いが、例えば0.05%以上、あるいは0.1%以上、あるいは0.2%以上である。
ここで、重量厚み法による厚み精度の測定方法を説明する。まず、キャリア付銅箔の重量を測定した後、極薄銅層を引き剥がし、再度キャリアの重量を測定し、前者と後者との差を極薄銅層の重量と定義する。測定対象となる極薄銅層片はプレス機で打ち抜いた10cm角シートとする。重量厚み精度を調査するため、各水準ともに、幅方向で等間隔に5点、長さ方向で3点(4cm間隔)、計15点の極薄銅層片の重量厚み測定値の平均値W10並びに標準偏差σ10を求める。重量厚み精度の算出式は次式とする。
厚み精度P10(%)=3σ10×100/W10
この測定方法の繰り返し精度は0.2%である。
【0046】
また、このように作製されたキャリア付銅箔は、極薄銅層において、5cm角シートとして、重量厚み法で算出した重量厚み測定値の平均値をWとし、標準偏差をσとしたときの厚み精度:P=3σ×100/Wとしたとき、Pが3.0%以下であるのが好ましい。なお、下限は特に限定する必要は無いが、例えば0.05%以上、あるいは0.5%以上、あるいは0.7%以上、あるいは1.0%以上である。
【0047】
また、このように作製されたキャリア付銅箔は、極薄銅層において、極薄銅層は四探針法で測定した厚みの平均値をTとし、標準偏差をσとしたときの厚み精度:P=3σ×100/Tとしたとき、Pが10.0%以下であるのが好ましい。
ここで、四探針法による厚み精度の測定方法を説明する。まず、四探針にて厚み抵抗を測定することでキャリア付銅箔の厚みを求めた後、極薄銅層を引き剥がし、再度キャリアの厚み抵抗による厚みを測定し、前者と後者との差を極薄銅層の厚みと定義する。厚み精度を調査するため、各水準ともに、幅方向で5mm間隔で測定をし、計280点の測定点の平均値T並びに標準偏差σを求める。四探針による厚み精度の算出式は次式とする。
厚み精度:P(%)=3σ×100/T
この測定方法の繰り返し精度は1.0%である。
【0048】
<粗化処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0049】
また、キャリアと、キャリア上に中間層が積層され、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔は、前記極薄銅層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群から選択された表面処理層を一つ以上備えても良い。
【0050】
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
【0051】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0052】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂などを含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。
【0053】
これらの樹脂を例えばメチルエチルケトン(MEK),トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。
【0054】
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリヤを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0055】
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張り積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0056】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線墓板を製造することができるという利点がある。
【0057】
この樹脂層の厚みは0.1〜80μmであることが好ましい。
【0058】
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0059】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0060】
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0061】
プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0062】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0063】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0064】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0065】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0066】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0067】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0068】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0069】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0070】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0071】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0072】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0073】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0074】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0075】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0076】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0078】
キャリアとして、厚さ18μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)を用いた。この銅箔のシャイニー面に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続ラインで以下の条件で表1、3に記載の中間層、極薄銅層、粗化処理層の各形成処理を行った。ここで、実施例1〜3、14、比較例1、7は上述の図4で示した実施形態3に係る方式で作製したものであり、実施例4、5、7、8、比較例5、6、8は、上述の図3で示した実施形態2に係る方式で作製したものであり、実施例6、9、10、13、16〜18、比較例3、4、14、15は上述の図2で示した実施形態1に係る方式で作製したものであり、実施例11、12、15、比較例10、11は上述の図5で示した実施形態4に係る方式で作製したものである。また、比較例2、9、16は上述の図1で示した従来方式で作製したものである。また、比較例12、13は、中間層をドラム式で形成し、極薄銅層及び粗化処理層を九十九折り式で形成したものである。
【0079】
(A)九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:銅箔キャリア処理面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成(NiSO:100〜300g/L)
・電解めっき液pH:1.5〜3.5
・電解めっきの浴温:40〜60℃
・電解めっきの電流密度:0.5〜10A/dm
・電解めっき時間:3〜15秒
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持された銅箔キャリア表面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成(NiSO:100〜300g/L)
・電解めっき液pH:1.5〜3.5
・電解めっきの浴温:40〜60℃
・電解めっきの電流密度:0.5〜10A/dm
・電解めっき時間:3〜15秒
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
【0080】
(極薄銅層形成)
(A)九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:銅箔キャリア処理面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成(Cu:30〜120g/L、HSO:30〜100g/L、Cl:20〜70ppm)
・電解めっきの浴温:40〜65℃
・電解めっきの電流密度:10〜70A/dm
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持された銅箔キャリア表面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成((Cu:30〜120g/L、HSO:30〜100g/L、Cl:20〜70ppm)
・電解めっきの浴温:40〜65℃
・電解めっきの電流密度:10〜70A/dm
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
【0081】
(粗化処理層形成)
(A)九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:銅箔キャリア処理面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成(Cu:5〜30g/L、HSO:30〜100g/L)
・電解めっきの浴温:30〜50℃
・電解めっきの電流密度:20〜45A/dm
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持された銅箔キャリア表面
・極間距離(表1、3に示す)
・電解めっき液組成(Cu:5〜30g/L、HSO:30〜100g/L)
・電解めっきの浴温:30〜50℃
・電解めっきの電流密度:20〜45A/dm
・銅箔キャリア搬送張力:0.05kg/mm
【0082】
中間層の形成は、表1、3の「中間層形成方法」の項目に記載の処理順により行った。すなわち、例えば「Ni−Zn/純クロメート」と表記されているものは、まず「Ni−Zn」の処理を行った後、「純クロメート」の処理を行ったことを示している。また、当該「中間層形成方法」の項目において、「Ni」と表記されているのは純ニッケルめっきを行ったことを意味し、「Ni−Zn」と表記されているのはニッケル亜鉛合金めっきを行ったことを意味し、「純クロメート」と表記されているのは純クロメート処理を行ったことを意味し、「Ni−Mo」と表記されているのはニッケルモリブデン合金めっきを行ったことを意味し、「亜鉛クロメート」と表記されているのは亜鉛クロメート処理を行ったことを意味し、「BTA処理」と表記されているのはベンゾトリアゾールを用いた表面処理を行ったことを意味し、「MBT処理」と表記されているのはメルカプトベンゾトリアゾールを用いた表面処理を行ったことを意味する。以下に、各処理条件を示す。なお、各金属の付着量を多くする場合には、電流密度を高めに設定すること、および/または、めっき時間を長めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を高くすることを行った。また、各金属の付着量を少なくする場合には、電流密度を低めに設定すること、および/または、めっき時間を短めに設定すること、および/または、めっき液中の各元素の濃度を低くすることを行った。また、めっき液等の液組成の残部は水である。
【0083】
・「Ni」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、クエン酸三ナトリウム:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(液温)55〜65℃
(電流密度)1〜11A/dm
(通電時間)1〜20秒
【0084】
・「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
【0085】
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にモリブデン酸ナトリウムの形態のモリブデンを添加し、モリブデン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルモリブデン合金めっきを形成した。
【0086】
・「純クロメート」:純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛:0g/L
(pH)2〜4、7〜10
(液温)40〜60℃
(電流密度)0.1〜2.6A/dm
(クーロン量)0.5〜90As/dm
(通電時間)1〜30秒
【0087】
・「亜鉛クロメート」:亜鉛クロメート処理
上記電解純クロメート処理条件において、液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整して亜鉛クロメート処理を行った。
【0088】
・BTA処理:ベンゾトリアゾールを用いた表面処理
(液組成)ベンゾトリアゾール:0.1〜20g/L
(pH)2〜5
(液温)20〜40℃
(浸漬時間)5〜30s
【0089】
・MBT処理:メルカプトベンゾチアゾールを用いた表面処理
(液組成)2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム:0.1〜20g/L
(pH)7〜10
(液温)40〜60℃
(電圧)1〜5V
(通電時間)1〜30秒
【0090】
・「Mo−Co」:モリブデンコバルト合金めっき
(液組成)硫酸コバルト:10〜200g/L、モリブデン酸ナトリウム:5〜200g/L、クエン酸ナトリウム:2〜240g/L
(pH)2〜5
(液温)10〜70℃
(電流密度)0.5〜10A/dm
(通電時間)1〜20秒
【0091】
・「スパッタNi」:スパッタリングによるNiめっき
Ni:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてニッケル層を形成した。
ターゲット:Ni:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
【0092】
・「スパッタCr」:スパッタリングによるCrめっき
Cr:99mass%の組成のスパッタリングターゲットを用いてクロム層を形成した。
ターゲット:Cr:99mass%
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
【0093】
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO:200〜400g/L、HSO:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(液温)45〜60℃
(電流密度)10〜40A/dm
(通電時間)1〜20秒
【0094】
・「Ni−Co」:ニッケルコバルト合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にコバルト酸ナトリウムの形態のコバルトを添加し、コバルト濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルコバルト合金めっきを形成した。
【0095】
・「Ni−Zn」:ニッケル亜鉛合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整してニッケル亜鉛合金めっきを形成した。
【0096】
・「Ni−Sn」:ニッケルスズ合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にスズ酸ナトリウムの形態のスズを添加し、スズ濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルスズ合金めっきを形成した。
【0097】
・「Ni−W」:ニッケルタングステン合金めっき
上記ニッケルめっきの形成条件において、ニッケルめっき液中にタングステン酸ナトリウム形態のタングステンを添加し、タングステン濃度:0.1〜10g/Lの範囲で調整してニッケルタングステン合金めっきを形成した。
【0098】
上記のようにして得られた実施例及び比較例のキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
【0099】
<極薄銅層の厚み>
作製したキャリア付銅箔の極薄銅層の厚みは、FIB−SIMを用いて観察した(倍率:10000〜30000倍)。極薄銅層の断面を観察することで30μm間隔で5箇所測定し、平均値を求めた。
【0100】
<中間層の金属付着量>
ニッケル付着量はサンプルを濃度20質量%の硝酸で溶解してICP発光分析によって測定し、モリブデン、亜鉛、コバルト、マンガン及びクロム付着量はサンプルを濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで測定した。
【0101】
<重量厚み法による厚み精度の評価A>
まず、キャリア付銅箔の重量を測定した後、極薄銅層を引き剥がし、再度キャリアの重量を測定し、前者と後者との差を極薄銅層の重量と定義した。測定対象となる極薄銅層片はプレス機で打ち抜いた5cm角シートとした。重量厚み精度を調査するため、各水準ともに、幅方向で等間隔に5点、長さ方向で3点(4cm間隔)、計15点の極薄銅層片の重量厚み測定値の平均値並びに標準偏差(σ)を求めた。重量厚み精度の算出式は次式とした。
厚み精度(%)=3σ×100/重量厚み測定値の平均値
この測定方法の繰り返し精度は0.2%であった。
また、重量計は、株式会社エー・アンド・デイ製HF−400を用い、プレス機は、野ロプレス株式会社製HAP−12を用いた。
【0102】
<重量厚み法による厚み精度の評価B>
まず、キャリア付銅箔の重量を測定した後、極薄銅層を引き剥がし、再度キャリアの重量を測定し、前者と後者との差を極薄銅層の重量と定義した。測定対象となる極薄銅層片はプレス機で打ち抜いた10cm角シートとした。重量厚み精度を調査するため、各水準ともに、幅方向で等間隔に5点、長さ方向で3点(4cm間隔)、計15点の極薄銅層片の重量厚み測定値の平均値並びに標準偏差(σ10)を求めた。重量厚み精度の算出式は次式とした。
厚み精度(%)=3σ10×100/重量厚み測定値の平均値
この測定方法の繰り返し精度は0.2%であった。
また、重量計は、株式会社エー・アンド・デイ製HF−400を用い、プレス機は、野ロプレス株式会社製HAP−12を用いた。
【0103】
<四探針法による厚み精度の評価>
四探針にて厚み抵抗を測定することでキャリア付銅箔の厚みを求めた後、極薄銅層を引き剥がし、再度キャリアの厚み抵抗による厚みを測定し、前者と後者との差を極薄銅層の厚みと定義した。厚み精度を調査するため、各水準ともに、幅方向で5mm間隔で計280点の測定点の平均値並びに標準偏差(σ)を求めた。四探針による厚み精度の算出式は次式とした。
厚み精度(%)=3σ×100/平均値
この測定方法の繰り返し精度は1.0%であった。
また、四探針は、OXFORD INSTRUMENTS社製CMI−700を用いた。
【0104】
<Ni平均転写量(Ni付着量)及びその変動係数>
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)の基板に、大気中、圧力:20kgf/cm、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。その後、JIS C 6471(方法A)に準拠して極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、サンプルサイズを幅200〜2000mm×長さ200〜2000mmとして、濃度7質量%の塩酸にて溶解して、原子吸光法により定量分析を行うことで極薄銅層の剥離面のNiの付着量を測定した。また、当該極薄銅層の剥離面について、幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定したときの平均値をAとし、標準偏差をσとし、Ni付着量の変動係数:X=σ×100/Aを求めた。また、樹脂基板へ貼り合わせる前のキャリア付銅箔の極薄銅層についても、同様に、Cr付着量の変動係数:X’=σ’×100/A’を測定しておいた。
【0105】
<エッチング性>
キャリア付銅箔をポリイミド基板に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着し、その後、極薄銅層をキャリアから剥がした。続いて、ポリイミド基板上の極薄銅層表面に、感光性レジストを塗布した後、露光工程により50本のL/S=5μm/5μm幅の回路を印刷し、銅層の不要部分を除去するエッチング処理を以下のスプレーエッチング条件にて行った。
(スプレーエッチング条件)
エッチング液:塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
液温:60℃
スプレー圧:2.0MPa
エッチングを続け、回路トップ幅が4μmになるまでの時間を測定し、さらにそのときの回路ボトム幅(底辺Xの長さ)及びエッチングファクターを評価した。エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。図5に、回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このXは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。なお、a=(X(μm)−4(μm))/2で計算した。エッチングファクターは回路中の12点を測定し、平均値をとったものを示す。これにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。また、12点のエッチングファクターの標準偏差も算出することで、エッチングにより形成した回路の直線性の良し悪しを判定することができる。
本発明では、エッチングファクターが5以上をエッチング性:○、2.5以上5未満をエッチング性:△、2.5未満或いは算出不可または回路形成不可をエッチング性:×、剥離不可をエッチング性:−と評価した。また、エッチングファクターの標準偏差は小さいほど回路の直線性が良好であると云える。エッチングファクターの標準偏差が0.5未満を直線性:○、0.5〜1.0未満を直線性:△、1.0以上を直線性:×と判断した。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様にエッチング性を測定しておいた。
【0106】
<剥離強度>
キャリア付銅箔を極薄銅層側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。続いて、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、90°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して、幅方向および長手方向に20mm間隔で10点ずつ測定した剥離強度の平均値および標準偏差から得られる変動係数:((標準偏差×100)/平均値)を求めた。また、上記樹脂との加熱圧着前の各試料についても、同様に剥離強度を測定し、変動係数を求めておいた。
試験条件及び試験結果を表1〜4に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
(評価結果)
実施例1〜18は、いずれも重量厚み法で算出した厚み精度:P10が3.0%以下であり、極薄銅層の中間層側表面のNiの付着量の平均値:Aが400μg/dm以下であり、Ni付着量の変動係数Xが30.0%以下であったため、剥離性及びエッチング性が良好であった。
比較例1は、中間層が存在しないため、基板貼り合せ前後で剥離できなかった。
比較例2、16は、箔厚精度が悪かったため、回路の直線性が悪くなった。
比較例3、4は、中間層にNiが存在しないため、基板貼り合せ前後で剥離できなかった。
比較例5は、中間層にCrが存在しないため、基板貼り合せ後に剥離できなかった。
比較例7、10、11は、極薄銅層表面にNi付着量の変動係数が大きいため、回路の直線性が悪くなった。
比較例6、8は、中間層のCrの付着量が少なかったため、プレス後に剥離できなかった。
比較例9は、中間層のZnの付着量が多かったため、プレス後に剥離できなかった。
比較例12、13は、極薄銅層表面のNi付着量の変動係数が大きく、箔厚精度が悪いため、回路の直線性が悪くなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6