特許第6246561号(P6246561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6246561レーザー加工方法およびレーザー加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246561
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】レーザー加工方法およびレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/53 20140101AFI20171204BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20171204BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20171204BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20171204BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B23K26/53
   B23K26/40
   B23K26/00 N
   B23K26/064 Z
   B23K26/00 M
   H01L21/78 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-228363(P2013-228363)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-85376(P2015-85376A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】森重 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】岩城 邦明
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3408805(JP,B2)
【文献】 Yuan Liu et. al.,High-power narrow-linewidth quasi-CW diode-pumped TEM00 1064 nm Nd:YAG ring laser,APPLIED OPTICS,米国,Optical Society of America,2012年 4月 1日,Vol. 51, No. 10,C27-C31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向に相対的に移動せしめる加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備し、
該レーザー光線発振手段は、励起光源と、レーザー媒質と、光共振器とを含み、
該光共振器は、該励起光源が発した光を一方向に循環させる循環光学系を備え、
該循環光学系は、該励起光源側に配設される第1のハーフミラーと、該第1のハーフミラーとで該レーザー媒質を挟むように配設されるQスイッチと、該Qスイッチを通過した光を直線偏光に変換する直線偏光素子と、該直線偏光素子によって直線偏光に変換された光のスペクトル線幅を縮小させるエタロンと、該エタロンによってスペクトル線幅が縮小された光の偏光面を45度回転し逆方向からの光を遮断するファラデーローテータと、該ファラデーローテータによって回転された偏光面を元に戻す1/2波長板と、該1/2波長板を通過した光を反射して循環経路に導く第2のハーフミラーと、該循環経路に配設され、該第2のハーフミラーによって反射された光を該第1のハーフミラーに戻す組ミラーとから構成されており、
該エタロンによってレーザー光線のスペクトル線幅は10pm以下に設定される、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該レーザー光線発振手段のレーザー媒質はYAGであり、レーザー光線の波長は1064nmに設定されている、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたレーザー加工装置を用いたレーザー加工方法であって、
被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を被加工物の内部に位置付けて照射し、被加工物の内部に改質層を形成することを特徴とするレーザー加工方法。
【請求項4】
被加工物はシリコン基板であり、レーザー光線の波長は1064nmに設定される、請求項3に記載のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工方法およびレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する方法として、ウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を位置付けてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法が試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、ウエーハの一方の面側からウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成し、この改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、ウエーハを個々のデバイスに分割する技術である。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
上述したレーザー加工技術は、例えばシリコンウエーハに対して透過性を有する1320nmの波長のパルスレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応する内部に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し、ウエーハの内部に分割予定ラインに沿って改質層を連続的に形成するもので、分割予定ラインの幅を狭くできるメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、レーザー光線はデバイスが形成されていない裏面側から照射するため、改質層の形成に寄与しなかったレーザー光線が抜け光となって表面に形成されたデバイスを損傷させるという問題がある。
また、抜け光を抑制するためにシリコンウエーハに対して透過性は有するものの吸収端に近い1064nmの波長のレーザー光線を用いて改質層を形成すると、ウエーハの厚み方向における改質層の幅が30μm程度となり、厚みが100μを超えるウエーハに対しては改質層を何層も積層して形成する必要があり生産性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、抜け光を抑制することができるとともに被加工物の厚み方向における改質層の幅を広くすることができるレーザー加工方法およびレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物をレーザー加工するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向に相対的に移動せしめる加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置であって、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段から発振されたレーザー光線を集光して該チャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器とを具備し、
該レーザー光線発振手段は、励起光源と、レーザー媒質と、光共振器とを含み、
該光共振器は、該励起光源が発した光を一方向に循環させる循環光学系を備え、
該循環光学系は、該励起光源側に配設される第1のハーフミラーと、該第1のハーフミラーとで該レーザー媒質を挟むように配設されるQスイッチと、該Qスイッチを通過した光を直線偏光に変換する直線偏光素子と、該直線偏光素子によって直線偏光に変換された光のスペクトル線幅を縮小させるエタロンと、該エタロンによってスペクトル線幅が縮小された光の偏光面を45度回転し逆方向からの光を遮断するファラデーローテータと、該ファラデーローテータによって回転された偏光面を元に戻す1/2波長板と、該1/2波長板を通過した光を反射して循環経路に導く第2のハーフミラーと、該循環経路に配設され、該第2のハーフミラーによって反射された光を該第1のハーフミラーに戻す組ミラーとから構成されており、
該エタロンによってレーザー光線のスペクトル線幅は10pm以下に設定される、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0009】
上記レーザー光線発振手段のレーザー媒質はYAGであり、レーザー光線の波長は1064nmに設定されている。
【0010】
また、本発明によれば、上記レーザー加工装置を用いたレーザー加工方法であって、
被加工物に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を被加工物の内部に位置付けて照射し、被加工物の内部に改質層を形成することを特徴とするレーザー加工方法が提供される。さらに、被加工物はシリコン基板であり、レーザー光線の波長は1064nmに設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、レーザー光線発振手段が発振するレーザー光線のスペクトル線幅が10pm以下に設定され、波長の純度の高いレーザー光線によってレーザー加工するので、被加工物の内部に厚み方向に広い改質層を形成でき生産性が向上するとともに、レーザー光線の殆どが改質層の形成に費やされるので抜け光が抑制され被加工物としてのウエーハを構成するシリコン基板の表面に形成されるデバイスを損傷させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段のブロック構成図。
図3図1に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
図4】被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
図5図4に示す半導体ウエーハを環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
図6図1に示すレーザー加工装置によって実施する改質層形成工程の説明図。
図7】レーザー光線のスペクトル線幅を10pmにしてシリコン基板に改質層を形成した状態を示す説明図。
図8】レーザー光線のスペクトル線幅を100pmにしてシリコン基板に改質層を形成した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるレーザー加工方法およびレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、基台2上に配設されたレーザー光線照射手段としてのレーザー光線照射ユニット4とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第1の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持された支持テーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361の上面である保持面上に被加工物である例えば円板形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、半導体ウエーハ等の被加工物を保護テープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第1の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための割り出し送り手段38を具備している。割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0019】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42に配設されたレーザー光線照射手段5と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7を具備している。なお、撮像手段7は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0020】
上記レーザー光線照射手段5について、図2を参照して説明する。
レーザー光線照射手段5は、パルスレーザー光線発振手段6と、該パルスレーザー光線発振手段6から発振されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器60を具備している。
【0021】
パルスレーザー光線発振手段6は、励起光源61と光共振手段63とを含んでいる。励起光源61から発振された光は、集光レンズ62によって集光され光共振手段63に導かれる。
【0022】
光共振手段63は、上記励起光源61から発振され集光レンズ62によって集光された光を一方向に循環させる循環光学系64を備えている。この循環光学系64は、上記励起光源61から発振された光を集光する集光レンズ62側に配設された第1のハーフミラー641と、該第1のハーフミラー641を介して導かれた光の光路に配設されたレーザー媒質642と、上記第1のハーフミラー641とでレーザー媒質642を挟むように配設されるQスイッチ643と、該Qスイッチ643を通過した光を直線偏光に変換する直線偏光素子644と、該直線偏光素子644によって直線偏光に変換された光のスペクトル線幅を縮小させるエタロン645と、該エタロン645によってスペクトル線幅が縮小された光の偏光面を45度回転し逆方向からの光を遮断するファラデーローテータ646と、該ファラデーローテータ646によって回転された偏光面を元に戻す1/2波長板647と、該1/2波長板647を通過した光を反射して循環経路640に導く第2のハーフミラー648と、該循環経路640に配設され該第2のハーフミラー648によって反射された光を上記第1のハーフミラー641に戻すための第1のミラー649aと第2のミラー649bとからなる組ミラー649とから構成されている。なお、上記レーザー媒質642はYAGであり、光の波長は1064nmに設定されている。
【0023】
図示の実施形態におけるパルスレーザー光線発振手段6を構成する光共振手段63は以上のように構成されており、励起光源61から発振され集光レンズ62によって集光された光を循環させ、エタロン645を通過する度にスペクトル線幅を縮小する。このようにエタロン645を通過する度にスペクトル線幅が縮小されつつ循環する光は、後述する制御手段によって制御されるQスイッチ643が繰り返し周波数に対応して作動することにより第2のハーフミラー648を通しパルスレーザー光線として発振される。このようにしてパルスレーザー光線発振手段6から発振されたパルスレーザー光線は、後述する制御手段によって制御される出力調整手段66によって所定の出力に調整され、集光器60に導かれる。
【0024】
上記集光器60は、パルスレーザー光線発振手段6から発振されたパルスレーザー光線を下方に向けて方向変換する方向変換ミラー601と、該方向変換ミラー601によって方向変換されたレーザー光線を集光する対物集光レンズ602からなっている。このように構成された集光器60は、上記パルスレーザー光線発振手段6を構成する光共振手段63によってスペクトル線幅が10pm以下になったパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図3に示す制御手段8を具備している。制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、入力インターフェース84および出力インターフェース85とを備えている。制御手段8の入力インターフェース84には、撮像手段7等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース85からは、上記加工送り手段37、割り出し送り手段38、レーザー光線照射手段5の励起光源61およびQスイッチ643、出力調整手段66等に制御信号を出力する。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図4の(a)および(b)には、被加工物としての半導体ウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図4の(a)および(b)に示す半導体ウエーハ9は、厚みが150μmのシリコン基板90の表面90aに絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された機能層91によって複数のIC、LSI等のデバイス92がマトリックス状に形成されている。そして、各デバイス92は、格子状に形成された分割予定ライン93(図示の実施形態においては幅が50μmに設定されている)によって区画されている。なお、図示の実施形態においては、機能層91を形成する絶縁膜は、SiO2膜または、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっており、厚みが10μmに設定されている。
【0027】
上述した半導体ウエーハ9を構成するシリコン基板90の内部に分割予定ライン93に沿って改質層を形成する改質層形成工程について説明する。
先ず、半導体ウエーハ9を構成する機能層91の表面91aにダイシングテープを貼着し該ダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図5に示すように、環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープTの表面に半導体ウエーハ9を構成する機能層91の表面91aを貼着する。従って、ダイシングテープTの表面に貼着された半導体ウエーハ9は、シリコン基板90の裏面90bが上側となる。
【0028】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に半導体ウエーハ9のダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ダイシングテープTを介して半導体ウエーハ9をチャックテーブル36上に吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル36上にダイシングテープTを介して保持された半導体ウエーハ9は、シリコン基板90の裏面90bが上側となる。
【0029】
上述したように半導体ウエーハ9を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段7の直下に位置付けられる。このようにしてチャックテーブル36が撮像手段7の直下に位置付けられると、撮像手段7および制御手段8によって半導体ウエーハ9のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段7および制御手段8は、半導体ウエーハ9の所定方向に形成されている分割予定ライン93と、分割予定ライン93に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5を構成する集光器60との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ9に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン93に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ9の分割予定ライン93が形成されている機能層91の表面91aは下側に位置しているが、撮像手段7が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、シリコン基板90の裏面90bから透かして分割予定ライン93を撮像することができる。
【0030】
以上のようにしてチャックテーブル36上に保持されている半導体ウエーハ9に形成されている分割予定ライン93を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図6の(a)で示すようにチャックテーブル36をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段5の集光器60が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン93の一端(図6の(a)において左端)をレーザー光線照射手段5の集光器60の直下に位置付ける。そして、集光器60から基板90に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブルを図6の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる。そして、図6の(b)で示すように集光器60の照射位置に分割予定ライン93の他端(図6の(b)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この改質層形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ9を構成するシリコン基板90の分割予定ライン93に対応する厚み方向中間部に位置付ける。この結果、図6の(b)に示すように半導体ウエーハ9を構成するシリコン基板90の内部に分割予定ライン93に沿って改質層900が形成される。上述した改質層形成工程を半導体ウエーハ9に形成された全ての分割予定ライン93に沿って実施する。
【0031】
上記改質層形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー光線の波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
平均出力 :1.2W
パルス幅 :400ns
集光スポット径 :φ1μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0032】
上述した改質層形成工程の加工条件においては、レーザー光線のスペクトル線幅を10pm以下に設定することが重要である。
ここで、厚みが150μmのシリコン基板にスペクトル線幅を10pmに設定したレーザー光線と、スペクトル線幅を100pmに設定したレーザー光線を用い、上記加工条件に基づいて改質層形成工程を実施し、シリコン基板に形成された厚み方向における改質層の幅と、抜け光の割合を検証した実験結果について説明する。
【0033】
[実験1]
図7の(a)は上記図2に示すレーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段6を構成する光共振手段63にエタロン645を配設することにより、波長が1064nmのレーザー光線のスペクトル線幅を10pmにした状態のパワーを示す図である。このようにスペクトル線幅を10pmにしたレーザー光線を用い、シリコン基板の裏面(上面)から75μmの位置に集光点を位置付けて上記加工条件によって改質層形成工程を実施した結果、厚み方向における改質層の幅は図7の(b)に示すように50μmであり、抜け光は全出力の7%であった。
【0034】
[実験2]
一方、図8の(a)は上記図2に示すレーザー光線照射手段5のパルスレーザー光線発振手段6を構成する光共振手段63のエタロン645を除去したもので、波長が1064nmのレーザー光線のスペクトル線幅が100pmの状態のパワーを示す図である。このようにスペクトル線幅が100pmのレーザー光線を用い、シリコン基板の裏面(上面)から75μmの位置に集光点を位置付けて上記加工条件によって改質層形成工程を実施した結果、厚み方向における改質層の幅は図8の(b)に示すように30μmであり、抜け光は全出力の32%であった。
【0035】
以上のように、レーザー光線のスペクトル線幅を10pmにした波長の純度の高いレーザー光線を用いることにより、スペクトル線幅が100pmのレーザー光線を用いた場合と比較して、改質層のシリコン基板の厚み方向における幅が60%以上大きくなるとともに、抜け光が1/4以下となる。従って、被加工物の内部に厚み方向に広い改質層を形成でき生産性が向上するとともに、レーザー光線の殆どが改質層の形成に費やされるので抜け光が抑制され被加工物としてのウエーハを構成するシリコン基板の表面に形成されるデバイスを損傷させることはない。
【符号の説明】
【0036】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット
5:レーザー光線照射手段
6:パルスレーザー光線発振手段
60:集光器
61:励起光源
62:集光レンズ
63:光共振手段
64:循環光学系
66:出力調整手段
7:撮像手段
8:制御手段
9:半導体ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8