特許第6246566号(P6246566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246566
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ドレス方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/12 20060101AFI20171204BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20171204BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B24B53/12 Z
   B24B53/00 K
   B24B49/12
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-233093(P2013-233093)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-93341(P2015-93341A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】牧野 香一
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264575(JP,A)
【文献】 特開2013−146831(JP,A)
【文献】 特開2013−027949(JP,A)
【文献】 特開2013−041972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/12
B24B 49/12
B24B 53/00
B24B 27/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを装着したスピンドルを有する切削手段と、該保持テーブルに保持された被加工物の表面を撮像する撮像手段と、を少なくとも備えた切削装置において、ドレッサーボードを使用して該切削ブレードのドレスを行うドレス方法であって、
該ドレッサーボードは、
表面が平坦で且つ該切削ブレードで切削可能な材質で形成された板形状の剛性基板と、
該剛性基板の面積よりも小さい外形の板形状に形成され該剛性基板の表面に固定された、該切削ブレードをドレスするためのドレス部材と、から構成され、
該ドレッサーボードの該剛性基板側を該保持テーブルの該保持面上に保持する保持工程と、
該保持工程を実施した後に、該ドレス部材に該切削ブレードを切り込み該切削ブレードのドレスを行うドレス工程と、
該ドレス工程を実施した後に、該ドレス部材が固定されていない該剛性基板の表面から該切削手段を垂直に下降させて所定高さで切り込み切削痕を形成し該撮像手段により該切削痕を撮像して長さを検出し、検出された該切削痕の長さと該スピンドルの軸心高さ位置から該剛性基板の上面高さ位置までの距離とから該切削ブレードの外径サイズを算出する外径サイズ算出工程と、から構成されるドレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリミングダイサーにおける切削ブレードの刃先形状を整形するドレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被加工物の外周縁は、製造工程中の割れや発塵防止のために面取りが施され、断面視円弧状に形成されている。このため、被加工物の裏面を研削して被加工物を薄化すると、被加工物の外周縁にはナイフエッジが残存し、被加工物の割れや欠けによるデバイス品質低下の原因となる。そこで、被加工物の裏面を研削するのに先立って、切削ブレードで被加工物の面取り部を除去する外周加工方法(エッジトリミング加工)が採用されている(例えば、特許文献1参照)。エッジトリミング加工においては、切削ブレードの先端が摩耗するため、定期的に切削ブレードの先端をドレッサーボードによりフラットに整形するフラットドレスが行われる(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
切削加工する際には、切削ブレードを被加工物に対して好適な高さに位置付ける必要がある。切削ブレードを好適な高さに位置付ける際には、切削ブレードの先端位置を検出するセットアップが行われる。セットアップでは、切削ブレードでセットアップ用サンプルを所定量切り込み、撮像手段によって切削痕の長さを検出して、切削ブレードの先端位置を算出している(例えば、特許文献3参照)。セットアップに用いられるセットアップ用サンプルは、通常、被加工物を保持する保持テーブルとは別に設けられたサブテーブルに保持される(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−173961号公報
【特許文献2】特開2010−588号公報
【特許文献3】特開2013−27949号公報
【特許文献4】特開平07−283171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削ブレードをドレスする際には、保持テーブル上にドレッサーボードが保持され、保持テーブル上で切削ブレードがドレスされる。さらに、ドレス後の切削ブレードをセットアップする際には、特許文献4のようにセットアップ用サンプルが保持されたサブテーブルが保持テーブルから離れていると、切削ブレードの移動距離が大きくなる。このため、セットアップ作業に時間がかかり、効率的なセットアップを行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、切削ブレードのドレス後におけるセットアップを効率的に行うことができるドレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明のドレス方法は、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、保持テーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを装着したスピンドルを有する切削手段と、保持テーブルに保持された被加工物の表面を撮像する撮像手段と、を少なくとも備えた切削装置において、ドレッサーボードを使用して切削ブレードのドレスを行うドレス方法であって、ドレッサーボードは、表面が平坦で且つ切削ブレードで切削可能な材質で形成された板形状の剛性基板と、剛性基板の面積よりも小さい外形の板形状に形成され剛性基板の表面に固定された、切削ブレードをドレスするためのドレス部材と、から構成され、ドレッサーボードの剛性基板側を保持テーブルの保持面上に保持する保持工程と、保持工程を実施した後に、ドレス部材に切削ブレードを切り込み切削ブレードのドレスを行うドレス工程と、ドレス工程を実施した後に、ドレス部材が固定されていない剛性基板の表面から切削手段を垂直に下降させて所定高さで切り込み切削痕を形成し撮像手段により切削痕を撮像して長さを検出し、検出された切削痕の長さとスピンドルの軸心高さ位置から剛性基板の上面高さ位置までの距離とから切削ブレードの外径サイズを算出する外径サイズ算出工程と、から構成されることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、剛性基板の表面にドレス部材が固定されて一体に形成されていることから、保持テーブル上でドレス部材及び剛性基板に切削ブレードを切り込ませることができる。よって、保持テーブルにおいて切削ブレードのドレスと切削ブレードのセットアップを行うことができ、切削ブレードの移動距離を短くすることができる。この結果、切削ブレードのセットアップにかかる時間が短縮され、効率よくセットアップを行うことができる。また、保持テーブルとは別にサブテーブルを用意する必要がなく、装置構成を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剛性基板の表面にドレス部材を固定して一体化したことで、切削ブレードのドレス後におけるセットアップを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。
図2】本実施の形態に係るドレッサーボードの斜視図である。
図3】本実施の形態に係るドレス及びセットアップの説明図である。
図4】本実施の形態に係る切削装置の動作の流れを示す図である。
図5】本実施の形態に係る外径サイズ算出工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図3を参照して、本実施の形態に係るドレッサーボードが使用される切削装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。図2は、本実施の形態に係るドレッサーボードの斜視図である。図3は、本実施の形態に係るドレス及びセットアップの説明図である。本実施の形態においては、エッジトリミング加工を実施する切削装置にドレッサーボードが使用される構成について説明するが、この構成に限定されない。ドレッサーボードは、切削ブレードを用いて切削加工する切削装置であれば、どのような切削装置に使用されてもよい。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る切削装置1は、エッジトリミング加工によって摩耗した切削ブレード131(図3参照)に対してドレスとセットアップを実施するように構成されている。切削装置1には、被加工物Wだけでなく、切削ブレード131に対してドレス及びセットアップを行うためのドレッサーボード3がカセット4に収容された状態で搬入される。被加工物Wは、略円板状に形成されており、外周縁に製造工程中の割れや発塵防止のために面取りが施されている。なお、被加工物Wは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウェーハでもよい。
【0014】
図2に示すように、ドレッサーボード3は、略円板状の剛性基板32の表面に上面視矩形状のドレス部材31を固定して構成される。剛性基板32は、セットアップ用サンプルとして使用されるものであり、表面が平坦で且つ切削ブレード131(図3参照)で切削可能な材質、例えば、厚めのシリコン基板やカーボン基板で板状に形成されている。ドレス部材31は、切削ブレード131の先端形状を整形するものであり、剛性基板32の面積よりも小さい外形の板形状に形成されている。ドレス部材31は、切削ブレード131の砥粒径よりも小さいホワイトアランダム、グリーンカーボン等の砥粒を樹脂等で結合して形成される。
【0015】
なお、剛性基板32は、被加工物Wと同じ材質で形成されてもよいし、異なる材質で形成されてもよい。また、剛性基板32は、被加工物Wと略同径に形成されているが、保持テーブル5で保持可能であれば特に大きさは限定されない。また、ドレス部材31は、剛性基板32の表面にセットアップ用の切削領域を残すように、剛性基板32上に固定されていればよい。よって、剛性基板32の中心とドレス部材31の中心とが一致している必要はない。
【0016】
図1に戻り、切削装置1の基台2の上面中央には、X軸方向に延在するように開口が形成されており、開口を覆うように蛇腹状の防水カバー6が設けられている。防水カバー6上には、被加工物Wを保持する円板状の保持テーブル5が設けられている。防水カバー6の下方には、保持テーブル5をX軸方向に移動させるボールねじ式の移動手段(不図示)が設けられている。保持テーブル5は、移動機構が駆動されることで、一対の切削手段13の下方で被加工物Wが切削される加工位置と被加工物Wが受け渡される移載位置との間で往復移動される。
【0017】
保持テーブル5には、保持面51から被加工物Wを持ち上げるリフタ52が設けられている。リフタ52は、保持テーブル5の中央に昇降可能に収容されている。また、保持面51にはリフタ52を囲むように環状の吸着面53が形成されている。リフタ52の上面が保持面51よりも上昇することで、保持面51から被加工物Wの外周を浮かせて、被加工物Wの受け渡しが実施される。リフタ52の上面が保持面51に面一になることで被加工物Wの外周側が吸着面53に保持される。なお、リフタ52が保持面51よりも沈み込んで、被加工物Wの下面からリフタ52を離間させる構成にしてもよい。
【0018】
基台2上には、保持テーブル5の移動経路を挟むようにして、カセット4が載置されるエレベータ手段7と加工済みの被加工物Wを洗浄する洗浄手段8とが設けられている。エレベータ手段7では、ステージ71上にカセット4が載置され、昇降機構(不図示)によってカセット4内の被加工物Wの出し入れ位置が調整される。洗浄手段8では、スピンナテーブル81上の被加工物Wが基台2内に降下され、洗浄水が噴射されて被加工物Wが洗浄された後、乾燥エアが吹き付けられて被加工物Wが乾燥される。
【0019】
基台2の上方には、カセット4及び保持テーブル5の相互間で被加工物Wを搬送するロボットピック9と、保持テーブル5及び洗浄手段8の相互間で被加工物Wを搬送するエッジクランプ式の搬送手段10とが設けられている。ロボットピック9は、略C字の板状の保持部によって、カセット4に対して被加工物Wを出し入れすると共に、リフタ52に対して被加工物Wを受け渡しするように構成されている。搬送手段10は、3つのクランプ部101によって被加工物Wの外周を挟み込むことで、被加工物Wを保持した状態で搬送するように構成されている。
【0020】
また基台2上には、基台2中央の開口を跨ぐように門型の柱部11が立設されている。柱部11には、一対の切削手段13をY軸方向及びZ軸方向に移動させるブレード移動手段12が設けられている。ブレード移動手段12は、柱部11に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール121と、一対のガイドレール121にスライド可能に設置されたモータ駆動の一対のY軸テーブル123とを有している。また、ブレード移動手段12は、各Y軸テーブル123の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール122と、各一対のガイドレール122にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル124とを有している。
【0021】
各Z軸テーブル124には、それぞれ切削手段13が設けられている。また、各Y軸テーブル123及び各Z軸テーブル124の背面には、それぞれナット部(不図示)が形成され、これらナット部にボールネジ125、126が螺合されている。そして、ボールネジ125、126の一端部に連結された駆動モータ127、128が回転駆動されることで、一対の切削手段13がガイドレール121、122に沿ってY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0022】
切削手段13には、スピンドル132のスピンドル軸(不図示)の先端に切削ブレード131が装着されている(図3参照)。切削ブレード131は、ダイアモンド砥粒をレジンボンドで固めて円形にしたレジンブレードで構成されている。また、切削ブレード131は、被加工物Wの面取りの幅寸法よりも大きな厚みを有している。切削手段13は、切削ブレード131を高速回転させ、不図示の噴射ノズルから切削部分に切削水を噴射しつつ、被加工物Wに対してエッジトリミング加工を実施する。スピンドル132の側面には、保持テーブル5に保持された被加工物Wの表面を撮像する撮像手段14が設けられている。
【0023】
基台2の内部には、切削装置1の各部を統括制御する制御手段15が設けられている。制御手段15は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。メモリには、被加工物Wに対するエッジトリミング加工だけでなく、切削ブレード131(図3参照)に対するドレス及びセットアップを制御するプログラム等が記憶されている。
【0024】
このように構成された切削装置1では、カセット4から被加工物Wが取り出され、切削手段13によってエッジトリミング加工が実施される。エッジトリミング加工が実施された被加工物Wは、洗浄手段8によって洗浄された後、再びカセット4に収容される。また、エッジトリミング加工では、切削ブレード131(図3参照)の片面側だけが切削に寄与するため、切削ブレード131の両面の摩耗量に差が生じて偏摩耗し易くなっている。そこで、本実施の形態では、定期的にカセット4からドレッサーボード3が取り出されて、切削ブレード131のドレス(フラットドレス)及びセットアップが実施される。
【0025】
図3Aに示すように、切削ブレード131のドレス時には、ドレッサーボード3の中央に配置されたドレス部材31の上方に切削ブレード131が位置付けられる。そして、高速回転した切削ブレード131にドレス部材31の表面を僅かに切り込ませた状態で、ドレス部材31に対して切削ブレード131が、加工送り方向(X軸方向)に直交する割出送り方向(Y軸方向)に相対移動される。これにより、エッジトリミング加工によって摩耗した切削ブレード131の先端形状が平坦になるように整形される。なお、ドレス部材31に対して切削ブレード131を加工送り方向に相対移動させて目立てを行う構成にしてもよい。
【0026】
図3Bに示すように、切削ブレード131のセットアップ時には、ドレッサーボード3のドレス部材31の周囲に露出した剛性基板32の上方に切削ブレード131が位置付けられる。そして、高速回転した切削ブレード131を垂直に下降させて、剛性基板32の表面に切削痕16を形成する。この切削痕16が撮像手段14で撮像されて、画像処理等によって切削痕16の長さが検出される。切削痕16の長さ及びスピンドル軸の高さ(剛性基板32の表面高さ位置からスピンドル132の軸心高さ位置までの距離)から切削ブレード131の外径サイズが算出される。これにより、切削ブレード131の先端高さが精度よく算出され、高精度なセットアップが実施される。
【0027】
ここで、本実施の形態に係る切削装置の動作について説明する。以下の説明では、保持工程、ドレス工程、外径サイズ算出工程を含むドレス方法が実施された後、エッジトリミング工程が実施される一連の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る切削装置の動作の流れを示す図である。図5は、本実施の形態に係る外径サイズ算出工程の説明図である。
【0028】
図4Aに示すように、まず保持工程が実施される。保持工程では、ドレッサーボード3の剛性基板32側が保持テーブル5の保持面51上に保持される。ドレッサーボード3は、ドレス部材31の長手方向が切削ブレード131の回転軸方向に向くように位置付けられる。このため、ドレス部材31の短手方向(紙面に対する垂直方向)が加工送り方向(X軸方向)となり、ドレス部材31の長手方向(紙面の左右方向)が割出送り方向(Y軸方向)になる。
【0029】
図4Bに示すように、保持工程の後にはドレス工程が実施される。ドレス工程では、切削ブレード131がドレス部材31の上方に移動され、ドレス部材31の長手方向の一端に位置付けられる。切削ブレード131は、回転した状態でドレス部材31の一端に向けて下降され、ドレス部材31の一端が僅かに切り込まれる。続いて、切削ブレード131がドレス部材31の長手方向、すなわち割出送り方向(Y軸方向)に沿って移動される。これにより、切削ブレード131の先端がドレス部材31の表面に削られて、切削ブレード131の先端形状が平坦になるように整えられる。
【0030】
このようにして、ドレッサーボード3のドレス部材31によって切削ブレード131の先端がフラットドレスされる。また、このフラットドレスによってドレス部材31の表面に溝18(図3参照)が形成されることで、ドレス部材31の表裏の応力バランスに崩れが生じる。しかしながら、ドレス部材31が剛性基板32に固定されているため、ドレス部材31が応力バランスの崩れの影響を受けることがない。よって、ドレスを行うことで薄くなったドレス部材31が使用される場合であっても、ドレス部材31の形状変化に伴う反りが抑えられる。
【0031】
図4Cに示すように、ドレス工程が実施された後には外径サイズ算出工程(セットアップ工程)が実施される。外径サイズ算出工程では、ドレス部材31の上方の切削ブレード131が、割出送り方向に移動されてドレス部材31が固定されていない剛性基板32の上方に位置付けられる。切削ブレード131が回転した状態で剛性基板32の表面から垂直に下降され、所定の高さで剛性基板32が切り込まれることで切削痕16が形成される。続いて、撮像手段14によって剛性基板32の表面が撮像され、撮像画像を画像処理することで切削痕16の長さが検出される。
【0032】
このとき、図5A及び図5Bに示すように、切削痕16の長さDとスピンドル132の軸心高さ位置から剛性基板32の上面高さ位置までの距離Zとによって、切削ブレード131の外径サイズ2rが算出される。この場合、撮像画像にエッジ検出処理が施されて、撮像画像に含まれる切削痕16の長さDが検出される。このときの切削ブレード131の位置情報である距離Zは制御手段15(図1参照)に設定されており、さらに切削痕16の長さDが制御手段15に入力される。そして、以下の式(1)によって切削ブレード131の外径サイズ2rが算出される。
【数1】
【0033】
式(1)によって算出された切削ブレード131の外径サイズ2rに基づいて、被加工物Wを加工する際のスピンドル132の軸心位置が調整(セットアップ)される。また、外径サイズ算出工程によって算出された切削ブレード131の外径サイズ2rを制御手段15(図1参照)に記録/記憶させ、被加工物Wの加工後に再度切削ブレード131の外径サイズ2rを検出することで、切削ブレード131の摩耗量を算出することができる。これにより、切削ブレード131の摩耗量に基づいて適切な時期に切削ブレード131を交換することができる。
【0034】
このように、保持テーブル5に保持されたドレッサーボード3上でドレス部材31及び剛性基板32に切削ブレード131を切り込ませて、ドレス工程及び外径サイズ算出工程が実施される。よって、保持テーブル5においてドレス工程及び外径サイズ算出工程が行われるため、ドレス工程から外径サイズ算出工程に移行する際の切削ブレード131の移動距離を短くすることができる。この結果、セットアップに係る時間を短縮することができ、セットアップの効率化を図ることができる。
【0035】
また、同じ保持テーブル5でドレス工程及び外径サイズ算出工程が行われるため、別途テーブルを設ける必要がなく、装置構成を簡略化することができる。さらに、外径サイズ算出工程では、エッジトリミング時の加工位置の近くで剛性基板32が切削されるため、実際の被加工物Wの加工状況に近づけて外径サイズ2rを算出することができる。なお、被加工物Wの材質と剛性基板32の材質とを同一にすることによって、さらに実際の被加工物Wの加工状況に近づけることができる。
【0036】
図4Dに示すように、外径サイズ算出工程が実施された後にはエッジトリミング工程が実施される。この場合、ドレッサーボード3がカセット4(図1参照)に戻され、カセット4から新たな被加工物Wが保持テーブル5に搬送される。エッジトリミング工程では、被加工物Wの中心が保持テーブル5の回転中心に一致するように、保持テーブル5上に被加工物Wが保持される。また、切削ブレード131は、被加工物Wの外周の面取り部分17の上方に位置付けられている。このとき、切削ブレード131の回転軸(Y軸)が被加工物Wの中心線と一致するように位置合わせされている。
【0037】
そして、切削ブレード131を高速回転させた状態で切削手段13が下降され、被加工物Wの面取り部分17が切り込まれる。続いて、保持テーブル5がZ軸回りに回転することで、被加工物Wの面取り部分17が除去される。この場合、切削ブレード131によって、後工程の研削加工における仕上げ厚みよりも深く切り込まれている。このため、後工程の研削加工で被加工物Wが薄化されても、被加工物Wの外周がナイフエッジ状に残ることがない。なお、切削ブレード131のドレスは、エッジトリミング加工の繰り返しによって刃先形状が摩耗した時点(例えば、50回)で実施されるが、セットアップは数回(例えば、3回)おきに実施されてもよい。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る剛性基板32の表面にドレス部材31が固定されて一体に形成されていることから、保持テーブル5上でドレス部材31及び剛性基板32に切削ブレード131を切り込ませることができる。よって、保持テーブル5において切削ブレード131のドレスと切削ブレード131のセットアップを行うことができ、切削ブレード131の移動距離を短くすることができる。この結果、切削ブレード131のセットアップにかかる時間が短縮され、効率よくセットアップを行うことができる。また、保持テーブル5とは別にサブテーブルを用意する必要がなく、装置構成を簡略化することができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0040】
例えば、上記した実施の形態においては、ドレス部材31に対して切削ブレード131を割出送り方向(Y軸方向)に移動させてドレスするフラットドレスについて説明したが、この構成に限定されない。切削ブレード131は、ドレス部材31に対して切削ブレード131を加工送り方向(X軸方向)に移動させてドレスする目立てドレスが実施されてもよい。また、フラットドレス及び目立てドレスの両方が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明は、切削ブレードのドレス後におけるセットアップを効率的に行うことができるという効果を有し、特に、トリミングダイサーにおける切削ブレードの刃先形状を整形するドレッサーボード及びドレス方法に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 切削装置
3 ドレッサーボード
5 保持テーブル
13 切削手段
14 撮像手段
16 切削痕
31 ドレス部材
32 剛性基板
51 保持面
131 切削ブレード
132 スピンドル
D 切削痕の長さ
W 被加工物
Z 距離
2r 外径サイズ
図1
図2
図3
図4
図5