特許第6246598号(P6246598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6246598
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】チャックテーブル及び研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20171204BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20171204BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B24B41/06 L
   B24B49/04 Z
   H01L21/304 622H
   H01L21/304 631
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-2856(P2014-2856)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-131354(P2015-131354A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
(72)【発明者】
【氏名】諏訪野 純
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−187098(JP,A)
【文献】 特開2007−290078(JP,A)
【文献】 米国特許第06152807(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 49/04
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の板状ワークを矩形の保持面で吸引保持する吸引保持部と、該保持面を露出させて該吸引保持部を囲繞する外形が円形の枠体と、を備え、該枠体は、該吸引保持部を吸引源に連通させる吸引連通路を有し、
該吸引保持部と該枠体とを接合させ、板状ワークを研削する前に、該保持面と該保持面を囲繞する該枠体の最上面とを研削にて同一高さに成形することに供される円板形状のチャックテーブルであって、
該枠体の上面は、
該枠体の外周から中心に向かって所定幅で環状に形成され、且つ、該保持面と同一高さとなる環状エリアと、
該環状エリア以外において、環状に配置した研削砥石を上下方向に延びる軸回りに回転して該研削砥石の下面を該環状エリアと該保持面とに接触させる研削にて該環状エリアと該保持面とを同一高さに形成する際の該研削砥石が該枠体の上面に接触する領域での研削負荷を調節する研削負荷調整エリアとを有するチャックテーブル。
【請求項2】
該研削負荷調整エリアは、該枠体の上面において該枠体の最上面より低く形成した領域である請求項1記載のチャックテーブル。
【請求項3】
該研削負荷調整エリアは、該枠体の上面に複数の孔もしくは溝を形成した領域である請求項1記載のチャックテーブル。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持される板状ワークを研削する研削手段と、該研削手段で研削される板状ワークの上面高さを測定する第1の高さ測定器と、該チャックテーブルの上面高さを測定する第2の高さ測定器と、該第1の高さ測定器が測定した値から該第2の高さ測定器が測定した値を差し引き、該板状ワークの厚みを算出する算出部とを備えた研削装置であって、
該第2の高さ測定器は、該チャックテーブルの該環状エリアの上面高さを測定可能な位置に配設され、該第1の高さ測定器は、該チャックテーブルが保持する板状ワークの上面高さを連続的に測定可能な位置に配設される研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブル及び研削装置に関し、特に、矩形の板状ワークを吸引保持することができるチャックテーブル及び研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状ワークを研削する場合、板状ワークをチャックテーブルに吸引保持させる研削加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この研削加工装置による研削は、チャックテーブルに吸引保持された板状ワークの上面に対し、回転する研削砥石を接触させる。そして、板状ワークが所定の厚みになるまで研削砥石による研削が継続される。ここで、板状ワークの厚みを均一とするためには、研削砥石において板状ワークに接触する研削面と、研削面に接触する板状ワークの被研削面とを平行に配設することが望ましい。そのため、板状ワークを研削する前に、研削砥石によってチャックテーブルの上面を研削するセルフグラインドと呼ばれる処理が行われている。このセルフグラインドを行うことによって、研削砥石の研削面とチャックテーブルの上面とが平行になり、セルフグラインド後に研削された板状ワークを均一な厚みにすることができる。
【0003】
ところで、研削対象となる板状ワークが矩形になる場合、チャックテーブルの保持面を板状ワークに応じて矩形に形成する構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のチャックテーブルは、保持面を形成する多孔質材料からなる吸引保持部と、吸引保持部を囲繞して外形が円形となる枠体とを有している。かかるチャックテーブルでは、円形の枠体の上面中央に矩形の保持面が配設されるので、枠体の外周から保持面の外周までの距離が長いところと短いところがある。また、特許文献2のチャックテーブルでは、板状ワークの研削中、回転する枠体の上面に対して高さ測定器が接触している。この高さ測定機の接触によって枠体が削られないようにするため、枠体の硬度を高めるべく、多孔質材料より硬いアルミナセラミック等によって枠体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73785号公報
【特許文献2】特許第5230982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2において、枠体と吸引保持部とでは、硬度が異なるので、セルフグラインド時に研削砥石に加わる負荷も異なることとなる。従って、例えば、多孔質材料で形成される吸引保持部は容易に研削し得る一方、アルミナセラミックで形成される枠体の研削では研削砥石に目つぶれが生じやすくなる。つまり、吸引保持部に比べて枠体の方が研削されにくくなる。しかも、枠体の外周から矩形の保持面の外周までの距離が変化し、この距離が長くなる方が研削されにくくなる。このため、セルフグラインドによって、枠体の外周から矩形の保持面の外周までの距離が長いところでは、枠体上面及び保持面の高さが高くなり、その距離が短いところでは、枠体及び保持面の高さが低くなる高低差が生じる。かかるチャックテーブルに板状ワークを保持して研削すると、保持面の高低差に起因して板状ワークを均一な厚みで研削することができなくなる、という問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、吸引保持する矩形の板状ワークを研削することによって板状ワークを均一な厚みにすることができるチャックテーブル及び研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のチャックテーブルは、矩形の板状ワークを矩形の保持面で吸引保持する吸引保持部と、保持面を露出させて吸引保持部を囲繞する外形が円形の枠体と、を備え、枠体は、吸引保持部を吸引源に連通させる吸引連通路を有し、吸引保持部と枠体とを接合させ、板状ワークを研削する前に、保持面と保持面を囲繞する枠体の最上面とを研削にて同一高さに成形することに供される円板形状のチャックテーブルであって、枠体の上面は、枠体の外周から中心に向かって所定幅で環状に形成され、且つ、保持面と同一高さとなる環状エリアと、環状エリア以外において、環状に配置した研削砥石を上下方向に延びる軸回りに回転して研削砥石の下面を環状エリアと保持面とに接触させる研削にて環状エリアと保持面とを同一高さに形成する際の研削砥石が枠体の上面に接触する領域での研削負荷を調節する研削負荷調整エリアとを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、研削負荷調整エリアを枠体の上面に有しているので、枠体の外周から矩形の保持面の外周までの距離が変わっても、その距離に拘らず、セルフグラインド時に枠体の研削による研削負荷が均一になるように調節することができる。これにより、セルフグラインドにおいて、研削領域における保持面の高さに高低差が生じることを抑制でき、保持面で保持する板状ワークを均一な厚みに研削することができる。
【0009】
また、本発明のチャックテーブルでは、研削負荷調整エリアは、枠体の上面において枠体の最上面より低く形成した領域、又は、枠体の上面に複数の孔もしくは溝を形成した領域であるとよい。この構成によれば、枠体における簡単な形状変更や設計変更によって、研削負荷調整エリアを形成でき、枠体の高さが低い領域や孔、溝の形成領域、形成数を変えることで研削負荷を容易に調節することもできる。
【0010】
また、本発明の研削装置は、上記チャックテーブルと、チャックテーブルで保持される板状ワークを研削する研削手段と、研削手段で研削される板状ワークの上面高さを測定する第1の高さ測定器と、チャックテーブルの上面高さを測定する第2の高さ測定器と、第1の高さ測定器が測定した値から第2の高さ測定器が測定した値を差し引き、板状ワークの厚みを算出する算出部とを備えた研削装置であって、第2の高さ測定器は、チャックテーブルの環状エリアの上面高さを測定可能な位置に配設され、第1の高さ測定器は、チャックテーブルが保持する板状ワークの上面高さを連続的に測定可能な位置に配設されることを特徴とする。この構成では、高さ測定器によって削られない硬度に枠体を形成しても、研削負荷調整エリアにより、セルフグラインドでの枠体の研削による研削負荷の均一化を図ることができる。これにより、保持面の高さに高低差が生じることを抑制し、研削手段の研削領域と、これに応じた吸引保持部の保持面との間隔が変化することを回避でき、板状ワークを均一な厚みに研削することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸引保持する矩形の板状ワークを研削することによって板状ワークを均一な厚みにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る研削装置の一例を示す斜視図である。
図2図2Aは、上記研削装置を構成するチャックテーブル及び板状ワークを上から見た分解斜視図であり、図2Bは、チャックテーブルを下から見た斜視図である。
図3】チャックテーブル及びその周辺の断面模式図である。
図4】チャックテーブルの平面図である。
図5図5Aは、図4のC−a4間の断面図であり、図5Bは、図4のC−b4間の断面図である。
図6図6A及び図6Bは、変形例に係るチャックテーブルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る研削装置の一例を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、研削装置1は、略直方体形状の基台2の上部に設けられた保持手段3と、研削手段4とを備えており、研削手段4によって保持手段3が保持する板状ワークWを研削するように構成されている。保持手段3の左側領域には検出手段5が設けられている。
【0015】
研削装置1における被加工物である板状ワークWとしては、シリコンウエーハや、パッケージ基板を採用することができる。このような板状ワークWは、たとえば、ビッカーズ硬度2000以上の硬質を有する、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、アルチック(AlTiC)またはアルミナセラミック(Al)などの材料により構成される。板状ワークWは、矩形状(本実施の形態では正方形状)に形成されている。
【0016】
保持手段3は、板状ワークWを吸引保持する円板形状のチャックテーブル7と、チャックテーブル7を下方から支持する略正方形状のテーブル支持台8とを備えている。テーブル支持台8は、基台2の上面に形成された開口部2a内に配設され、開口部2aは、Y軸方向に延在する矩形状をなす。また、テーブル支持台8は、図示しない駆動機構に接続されており、この駆動機構から供給される駆動力によって、開口部2a内をY軸方向にスライド移動する。これにより、チャックテーブル7は、加工前の板状ワークWを供給し、また、加工後の板状ワークWを回収する載せ替え位置と、後述する研削砥石14と板状ワークWとが対向する研削加工位置との間をスライド移動する。
【0017】
開口部2aの内側は、テーブル支持台8に加え、蛇腹状のカバー部材9で覆われている。カバー部材9は、テーブル支持台8の前面および後面に取り付けられるとともに、その移動位置に応じて伸縮可能に設けられている。
【0018】
研削手段4では、円筒状のスピンドル軸11の下端にホイールマウント12が設けられ、ホイールマウント12の下面に対し、研削ホイール13が装着されている。研削ホイール13は、ホイール基台の下面に複数の研削砥石14を環状に配置して構成されている。研削砥石14は、たとえば、ビトリファイドボンド砥石で構成される。研削砥石14は、スピンドル軸11の駆動に伴ってZ軸まわりに高速回転し、下面側が板状ワークWに接触して研削する。研削砥石14の外径寸法は、チャックテーブル7の外径寸法より小さく形成され、本実施の形態では、チャックテーブル7の外径の2/3程度に設定されている。なお、スピンドル軸11は、駆動モータ16の出力軸に固定されている。従って、研削ホイール13は、駆動モータ16の駆動によってスピンドル軸11を介して回転される。
【0019】
研削手段4は、コラム18に設けられた研削送り手段19によって駆動されて上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成され、研削手段4と保持手段3とを相対的に接近および離反させることが可能である。研削送り手段19は、Z軸テーブル20を有しており、Z軸テーブル20の前面側に取り付けられた支持部21を介して研削手段4が支持されている。Z軸テーブル20の背面には、後方に突出したナット部(不図示)が設けられている。Z軸テーブル20のナット部には、コラム18の前面に設けられたボールネジ22が螺合されている。そして、ボールネジ22の一端部に連結されたサーボモータ23が回転駆動されることで、研削手段4が上下方向(Z軸方向)に移動される。
【0020】
検出手段5は、基台2上に垂直に設けられた支持部5aと、支持部5aの上部に設けられた2つの測定用のプローブ5b,5cと、を含んで構成される。第1の高さ測定器としての一方のプローブ5bは、保持手段3に保持された板状ワークWの上面に接触して板状ワークWの上面高さを連続的に測定可能な位置に配設されている。第2の高さ測定器としての他方のプローブ5cは、チャックテーブル7の後述する環状エリア29aに接触して環状エリア29aの上面高さを連続的に測定可能な位置に配設されている。
【0021】
基台2内には、研削装置1の各部を統括制御する制御手段24が設けられている。制御手段24は、各種処理を実行するプロセッサや、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。制御手段24は、一方のプローブ5bが測定した値から他方のプローブ5cが測定した値を差し引き、板状ワークWの厚みを算出する算出部24aを有している。また、制御手段24は、たとえば、算出部24aで算出した板状ワークWの厚み等に応じ、研削装置1の各部の駆動するタイミングや駆動量を制御する。
【0022】
続いて、図1に加え、図2乃至図4を参照して、保持手段3を構成するチャックテーブル7について詳細に説明する。図2Aは、チャックテーブルを上から見た分解斜視図であり、図2Bは、チャックテーブルを下から見た斜視図である。図3は、チャックテーブル及びその周辺の断面模式図であり、図4は、チャックテーブルの平面図である。
【0023】
図2及び図3に示すように、チャックテーブル7は、上面に矩形の保持面27を形成する概略直方体状の吸引保持部26と、外形が平面視で円形に形成された枠体28とを有して円板形状を呈している。チャックテーブル7は、図示しないチャック回転手段によって円板中心を軸に回転可能に設けられている。ここで、チャックテーブル7の上面は、吸引保持部26の保持面27及び枠体28の上面29によって連続的に形成され、且つ、チャックテーブル7の回転中心を頂点とする緩傾斜の円錐状になる。チャックテーブル7は、不図示の傾き調整手段によって研削手段4に対する傾きが調整される。なお、図3におけるチャックテーブル7の上面は、図示説明の便宜上、傾斜角度を急勾配にしたものであり、実際に設定される傾斜角度とは異なっている。
【0024】
吸引保持部26は、表裏の面にわたって連通する真空吸引用の多数の気孔(真空吸引孔)が全域にわたって形成されているポーラスセラミックス等の多孔質材料によって構成されている。保持面27の形状は、板状ワークWの平面形状と同一若しくは若干小さい矩形状に形成されている。
【0025】
枠体28は、アルミナセラミック等、多孔質材料からなる吸引保持部26より硬い材料で構成されている。枠体28の中央には、矩形状の凹部28aが形成され、この凹部28aに吸引保持部26が嵌合された状態で枠体28に接合される。従って、枠体28に吸引保持部26を接合させた状態で、枠体28は、保持面27を露出させて吸引保持部26を囲繞している。凹部28aの底側には、複数の吸引連通孔28b(図3では不図示)が形成され、吸引連通孔28bを通じて吸引保持部26が吸引源(不図示)に連通し、保持面27で板状ワークWが吸引保持される。
【0026】
図4にも示すように、枠体28は、その上面29に、環状エリア29a、保持面囲繞エリア29b及び研削負荷調整エリア29cを有している。環状エリア29aは、枠体28の外周から中心に向かう所定幅で環状に形成されている。保持面囲繞エリア29bは、保持面27の外縁に隣接して囲う位置で所定幅に形成されている。研削負荷調整エリア29cは、上面29における環状エリア29a、保持面囲繞エリア29b及び凹部28aの形成領域以外の領域とされる。言い換えると、研削負荷調整エリア29cは、上面29において、凹部28aの四辺近傍の4箇所領域に形成される。4箇所の研削負荷調整エリア29cの平面形状は、枠体28の径寸法より若干小さい概略四分円弧と、この四分円弧の両端を結ぶ弦とで囲まれる形状にそれぞれ形成され、向きがそれぞれ異なっている。また、研削負荷調整エリア29cは、隣接する環状エリア29a及び保持面囲繞エリア29bより低くなるように凹んだ形状に形成されている(図2A及び図3参照)。ここで、環状エリア29a及び保持面囲繞エリア29bは、枠体28の最上面として同一の円錐面上に形成され、この円錐面上に保持面27も位置して、それらが同一高さに配設される。
【0027】
ここで、本実施の形態の研削装置1におけるセルフグラインドについて説明する。本実施の形態の研削装置1においては、板状ワークWを研削する前に、図3に示すように、研削砥石14によってチャックテーブル7の上面を予め研削するセルフグラインドと呼ばれる処理が行われる。セルフグラインドは、チャックテーブル7を回転させながら、研削手段4を下降させ、回転する研削砥石14をチャックテーブル7の上面に押圧させることにより行われる。
【0028】
セルフグラインドにおいて、チャックテーブル7と研削砥石14との相対位置関係は、図4に示すように、研削砥石14の外周縁がチャックテーブル7の回転中心を通った状態が維持される。従って、研削砥石14は、チャックテーブル7に対し、例えば、図4中符号14Aで示す研削砥石の位置から符号14Bで示す研削砥石の位置に変位する。ここで、チャックテーブル7の上面が緩傾斜の円錐状(図3参照)になり、研削砥石14に対するチャックテーブル7の傾きを調整することで、チャックテーブル7に対する研削砥石14の接触領域は、研削砥石14の外縁に沿って円弧状に延びる線状又は帯状となる。具体的には、チャックテーブル7に対する研削砥石14Aの接触領域は、図4において、チャックテーブル7の回転中心となる点Cからチャックテーブル7の外周上の点a4の間の円弧に沿う線状又は帯状となる。チャックテーブル7に対する研削砥石14Bの接触領域は、点Cからチャックテーブル7の外周上の点b4の間の円弧に沿う線状又は帯状となる。
【0029】
ここにおいて、研削砥石14及びチャックテーブル7では、上記接触領域が研削領域となる。また、セルフグラインドでは、回転するチャックテーブル7が研削領域に位置する際に、枠体28の最上面に位置する環状エリア29a及び保持面囲繞エリア29bの高さと、保持面27の高さとを同一高さに成形される。
【0030】
図5Aは、図4における点Cから点a4を通る円弧でのチャックテーブル7の断面図を示し、図5Bは、点Cから点b4を通る円弧でのチャックテーブル7の断面図を示す。ここで、本実施の形態と従来構造との比較のため、従来構造として、図4図5A及び図5Bにおいて、枠体28の上面29に研削負荷調整エリア29cが形成されていない構成を仮定する。この構成にて、研削砥石14Aでの研削と、研削砥石14Bでの研削とを比べると、研削砥石14A,14Bの吸引保持部26に対する接触長さ(点C〜点a1、点C〜点b1)は、研削砥石14Aの方が短くなる。一方、研削砥石14A,14Bの枠体28に対する接触長さ(点a1〜点a4、点b1〜点b4)は、研削砥石14Aの方が長くなる。また、多孔質材料からなる吸引保持部26に比べ、アルミナセラミックからなる枠体28の方が硬いために研削負荷が大きく研削されにくくなる。このため、研削砥石14Bの位置での研削に比べ、研削砥石14Aの位置での研削の方が、研削量が小さくなり、チャックテーブル7の高さが変化して不揃いになる。具体的には、チャックテーブル7の回転角に応じて、研削砥石14A,14Bの枠体28に対する接触長さが変化し、この接触長さが長くなる程、チャックテーブル7の研削領域での高さが高くなる高低差が生じる。
【0031】
本実施の形態に説明を戻すと、本実施の形態では、枠体28の上面29を凹ませるように研削負荷調整エリア29cが形成され、研削負荷調整エリア29cに研削砥石14A,14Bが非接触となる。従って、研削砥石14A,14Bの枠体28に対する接触領域は、保持面囲繞エリア29b(点a1〜点a2、点b1〜点b2)と、環状エリア29a(点a3〜点a4、点b3〜点b4)となり、研削砥石14A,14Bで概略同一になる。言い換えると、従来構造に比べ、研削負荷調整エリア29cを形成したことによって、枠体28の研削で研削砥石14A,14Bに加わる研削負荷が略同一になる。なお、本実施の形態においても、従来構造と同様に、研削砥石14A,14Bの吸引保持部26に対する接触長さ(点C〜点a1、点C〜点b1)は研削砥石14Aの方が短くなる。しかし、多孔質部材からなる吸引保持部26は、枠体28に比べて硬度が相当低いため、研削砥石14A,14Bとの接触長さが変化しても、研削負荷が殆ど変化しない。総じて、本実施の形態では、保持面囲繞エリア29bと、環状エリア29aとの間に研削負荷調整エリア29cを形成することによって、研削砥石14A,14Bに加わる研削負荷が均一になるように調節される。これにより、チャックテーブル7の回転によって、研削砥石14の枠体28に対する接触長さが変わっても、研削領域でチャックテーブル7の高さが均一になるようにセルフグラインドを行うことができる。
【0032】
次いで、本実施の形態の研削装置1による板状ワークWの研削方法について説明する。上記のセルフグラインド後、先ず、図1に示すように、板状ワークWをチャックテーブル7の保持面27で吸引保持した後、チャックテーブル7を回転しつつ、研削砥石14を回転させながら研削手段4を下降させる。研削手段4の下降が進み、研削砥石14が回転する板状ワークWの表面に達すると研削加工が開始される。研削加工中は、検出手段5のプローブ5bが板状ワークWに接触し、プローブ5cが環状エリア29aに接触することで、それらの上面高さが連続的に測定され、算出部24aで板状ワークWの厚さがリアルタイムに算出される。その算出結果が目標の仕上げ厚みに近付くようにサーボモータ23による研削手段4の送り量が制御され、板状ワークWが仕上げ厚みまで研削される。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、枠体28の上面29に研削負荷調整エリア29cを形成したので、セルフグラインドにおいて、チャックテーブル7及び研削砥石14の研削領域が変わっても、研削領域における保持面囲繞エリア29bと、環状エリア29aとの長さの均一化を図ることができる。これにより、研削領域における保持面27の高さに高低差が生じることを抑制でき、保持面27で保持する板状ワークWを均一な厚みに研削することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
例えば、研削負荷調整エリア29cは、上記実施の形態と同様に、チャックテーブル7の上面を研削する際の研削負荷を調節できる限りにおいて、図6A及び図6Bに示す構成等、他の構成に変更してもよい。図6A及び図6Bは、変形例に係るチャックテーブルの平面図である。図6Aに示すチャックテーブル7において、研削負荷調整エリア29cは、枠体28の上面29において、凹部28a及び環状エリア29a以外の領域に複数の孔を形成することにより構成される。また、図6Bに示すチャックテーブル7において、研削負荷調整エリア29cは、図6Aで孔を形成した領域に、複数の溝を形成することにより構成される。これら変形例の構成によっても、セルフグラインド時の研削砥石14と枠体28との接触領域を調整でき、研削負荷を調節することができる。
【0036】
また、上記実施の形態における研削負荷調整エリア29cの構成に代え、枠体28の上面29の材質を部分的に変えることによって、セルフグラインド時の研削負荷を調節してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明は、矩形状の板状ワークを矩形の保持面で吸引保持する吸引保持部が円形の枠体によって囲繞されたチャックテーブル及びこれを用いた研削装置に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 研削装置
3 保持手段
4 研削手段
5b プローブ(第1の高さ測定器)
5c プローブ(第2の高さ測定器)
7 チャックテーブル
24a 算出部
26 吸引保持部
27 保持面
28 枠体
28b 吸引連通孔
29 上面
29a 環状エリア
29c 研削負荷調整エリア
W 板状ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6